以下、本発明のアンテナ装置、及びこれを用いた無線通信装置を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のアンテナ装置を示す図である。
ここでは、実施の形態1のアンテナ装置100を無線通信装置に実装した形態について説明する。
実施の形態1のアンテナ装置100は、アンテナエレメント10、グランドエレメント20、接続回路30、及びPCB(Printed Circuit Board)基板40を含む。なお、ここでは、各構成要素の構造を説明するにあたり、図1に示すX−Y座標を用いる。
アンテナエレメント10は、逆F型のアンテナエレメントであり、接続部11でグランドエレメント20の角部20Aに接続されている。
アンテナエレメント10は、接続部11からPCB基板40の長辺41Aに沿ってグランドエレメント20から離間する方向(図1中で+Y方向)に延伸し、PCB基板40の角部43Aの近傍において折り曲げ部12で直角に(図1中では+X方向に直角に)折り曲げられ、PCB基板40の短辺42Aに沿って端部13まで延伸している。端部13は、PCB基板40の角部43Bの近傍に位置する。
また、アンテナエレメント10は、折り曲げ部12と端部13の間の分岐部14から直角に分岐する給電線路15を有する。給電線路15は、グランドエレメント20の方向(図1中−Y方向)に延伸しており、給電部16となる端部を有する。
このようなアンテナエレメント10は、例えば、PCB基板40の表面に銅箔をパターニングすることによって形成される。また、端部13は、逆F型のアンテナエレメント10の給電部16となる端部側とは異なる端部である。
グランドエレメント20は、PCB基板40の表面に略正方形状にパターニングされており、例えば、銅箔で形成される。グランドエレメント20は、角部20A、20B、20C、20Dを有する。角部20Aは、アンテナエレメント10の接続部11に接続され、角部20C、20Dは、それぞれ、PCB基板40の角部43C、43Dの近傍に位置する。
グランドエレメント20は、例えば、アンテナエレメント10の給電部16に対向する部位を接地点20Eとして、接地される。
アンテナエレメント10への給電、及び、グランドエレメント20の接地は、例えば、給電部16に同軸ケーブル(図示せず)の芯線を接続し、接地点20Eに同軸ケーブルのシールド線を接続することによって実現される。
また、グランドエレメント20は、接地点20Eの近傍からPCB基板40の短辺42Bの方向(図1中−Y方向)に切り欠かれた切欠部であるスリット21を有する。スリット21は、開放端21Aと結合端21Bを有する。
略正方形状のグランドエレメント20の4辺のうち、アンテナエレメント10に近接する辺22(図1中X方向に延伸する辺のうち、アンテナエレメント10に近い方の辺)は、スリット21の開放端21Aにより、辺22Aと辺22Bとに分断されている。以下では、グランドエレメント20の辺22A、22Bの近傍の部位のうち、開放端21Aの両脇に位置する部位を部位23A、23Bと称す。
接続回路30は、スリット21の開放端21Aに設けられており、スリット21によって切り欠かれたグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bの間の接続状態を切り替える。ここで、接続状態の切り替えとは、部位23Aと部位23Bの間を電気的に接続する状態と、部位23Aと部位23Bの間を電気的に接続しない状態とを切り替えることをいう。
接続回路30の接続状態の切り替えはコントローラ120によって制御されるように構成されているが、その詳細については後述する。
また、実施の形態1のアンテナ装置100は、例えば、数GHz程度の高周波信号を送受信するために用いられるため、グランドエレメント20における信号分布は、グランドエレメント20にスリット21が設けられていなければ、角部20A、20B、20C、20Dを結ぶ四辺の近傍に集中する。
しかしながら、実際にはグランドエレメント20はスリット21と接続回路30を含むので、接続回路30で部位23Aと部位23Bの接続状態を切り替えることにより、接続回路30の接続状況に応じてグランドエレメント20における信号分布が切り替えられ、アンテナ装置100の電気的な特性は変化する。アンテナ装置100の特性の変化については後述する。
なお、図1に示す接続回路30は、スリット21の開放端21Aに配設される。このように接続回路30を開放端21Aに配設するのは、上述のように高周波信号はブランドエレメント20の隅に集中的に分布するため、スリット21の開放端21Aの両側の部位23Aと部位23Bとを信号経路として接続することにより、接続回路30をオンにしたときに高周波信号を角部20A、20B、20C、20Dを結ぶ信号経路に導くためである。このため、接続回路30は、スリット21の開放端21側に配設される必要があるが、スリット21の開放端21Aに限られず、開放端21Aよりも少し結合端21B側に入り込んだ位置に配設されてもよい。接続回路30を配設する位置は、スリット21の開放端21A側において、高周波信号の信号分布に応じて決定すればよい。
また、アンテナエレメント10、グランドエレメント20(スリット21を含む)、及び接続回路30は、PCB基板40の表面に形成した銅箔をパターニングすることによって同時に形成することができる。
PCB基板40は、例えば、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂をしみ込ませ熱硬化処理を施したFR4製の基板であればよい。PCB基板40は、長辺41A、41B、短辺42A、42B、及び角部43A〜43Dを有する平面視で長方形状の基板である。
このような実施の形態1のアンテナ装置100において、接続回路30で部位23Aと部位23Bとが接続されていない場合の共振周波数f1と、接続回路30で部位23Aと部位23Bとが接続されている場合の共振周波数f2は異なる。
このため、アンテナ装置100は、接続回路30で部位23Aと部位23Bとの接続状態を切り替えることにより、2つの共振周波数を選択することができる。
なお、一例としてアンテナ装置100の寸法を挙げると、アンテナエレメント10の接続部11から折り曲げ部12までの長さは5mm、折り曲げ部12から端部13までの長さは22mm、アンテナエレメント10の線幅は1mmである。また、グランドエレメント20は、角部20Aから角部20Bまでの長さが22mm、角部20Bから角部20Cまでの長さが22mmである。
また、スリット21は、例えば、長さ(図1中Y方向の長さ)が使用周波数における波長λの1/6波長(λ/6)分の長さである。ここで、λ/6は、使用周波数における波長λの1/4波長(λ/4)分の長さの2/3に相当する。また、スリット21の幅は、例えば、5mmである。
次に、接続回路30について説明する。
図2は、実施の形態1のアンテナ装置100の接続回路30の回路構成を示す図である。
接続回路30は、コンデンサ31、PIN(p-intrinsic-n)ダイオード32、コンデンサ33、高周波チョークコイル(RFC)34、抵抗器35、及び高周波チョークコイル(RFC)36を含む。
コンデンサ31は、一端がグランドエレメント20の部位23Aに接続され、他端がPINダイオード32の入力端に接続される。
PINダイオード32の出力端は、コンデンサ33を介してグランドエレメント20の部位23Bに接続されている。
また、PINダイオード32は、入力端が高周波チョークコイル34を介してコントローラ120に接続されるとともに、出力端が抵抗器35及び高周波チョークコイル36を介して接地されている。コントローラ120は、PINダイオード32のオン/オフを制御するための直流電圧の供給制御を行う。また、高周波チョークコイル36は、例えば、配線等(図示せず)でグランドエレメント20(図1参照)に接続されることによって接地されている。
このような回路構成の接続回路30において、コントローラ120からPINダイオード32の入力端に所定の直流電圧が印加されると、PINダイオード32がオンになり、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bが高周波的に接続される。また、コントローラ120からPINダイオード32の入力端に印加する直流電圧を遮断すると、PINダイオード32がオフになり、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bが高周波的に遮断され、非接続状態にされる。接続回路30のPINダイオード32のオン/オフの制御は、コントローラ120によって行われる。
なお、以下では、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されている状態に接続回路30を切り替えることを接続回路30をオンにすると称し、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されていない状態に接続回路30を切り替えることを接続回路30をオフにすると称す。
次に、接続回路30の実装状態について説明する。
図3は、実施の形態1のアンテナ装置100の接続回路30の実装状態を示す拡大斜視図である。
接続回路30に含まれるコンデンサ31、PINダイオード32、コンデンサ33、高周波チョークコイル34、抵抗器35、及び高周波チョークコイル36は、パッド37、38を介して、図3に示すように接続されている。
コンデンサ31、PINダイオード32、コンデンサ33、高周波チョークコイル34、抵抗器35、及び高周波チョークコイル36としては、図3に示すように、チップ型の素子を用いればよい。また、パッド37、38は、例えば、銅箔で形成することができ、アンテナエレメント10及びグランドエレメント20とともに形成することができる。
次に、コントローラ120を含む実施の形態1の無線通信装置について説明する。
図4は、実施の形態1のアンテナ装置100を含む無線通信装置の構成を示すブロック図である。
無線通信装置110は、例えば、コピー機、FAX機、プリンタ、又はこれらの機能を有する複合機等であり、複数の周波数帯での通信を行えるように構成されている。
無線通信装置110は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)111、RAM(Random Access Memory)112、ROM(Read Only Memory)113、GUI(Graphic User Interface)操作部114、無線制御部115、コントローラ120、及びアンテナ装置100を含む。
CPU111、RAM112、ROM113、GUI操作部114、及び無線制御部115は、バス116で接続されている。また、図2に示すコントローラ120は、図1に示したコントローラ120である。
CPU111は、ROM113に格納されたプログラムを実行し、アンテナ装置100の周波数帯を切り替えるための処理を行う。
RAM112は、CPU111が実行するプログラムを展開し、作業場となるメモリである。
ROM113は、CPU111が実行するプログラムを格納する不揮発性のメモリである。
GUI操作部114は、例えば、座標入力装置(典型的にはタッチパネル)と表示装置(典型的には液晶パネル)を重ね合わせた表示操作部であり、無線通信装置110の操作に必要な操作ボタン等を表示し、利用者の操作入力を受け付ける。利用者の操作入力は、CPU111に伝送される。
無線制御部115は、GUI操作部114に入力される操作入力の内容に応じて、無線通信装置110が使用する周波数を切り替える処理を行う。例えば、上述のように、アンテナ装置100が2つの共振周波数f1、f2を有する場合には、GUI操作部114への操作入力の内容に応じて、共振周波数f1、f2の選択を行う。
コントローラ120は、無線制御部115の選択結果に応じて、アンテナ装置100の接続回路30の接続状態を切り替える。無線制御部115によって共振周波数f1が選択された場合には、接続回路30をオフ(非接続状態)にする。これとは逆に、無線制御部115によって共振周波数f2が選択された場合には、接続回路30をオン(接続状態)にする。
なお、ここでは、無線通信装置110がCPU111、RAM112、ROM113、GUI操作部114、無線制御部115、及びコントローラ120を含むコンピュータを用いてアンテナ装置100の共振周波数切り替える形態について説明するが、アンテナ装置100の共振周波数の切り替えは、コンピュータによって実現されるものに限られるものではない。例えば、特定の用途のために設計、製造される集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて、GUI操作部114に入力される操作入力に応じて、アンテナ装置100の共振周波数を切り替えてもよい。
ここで、図5を用いて、接続回路30のオン/オフを切り替えた際におけるグランドエレメント20での信号経路について説明する。
図5は、実施の形態1のアンテナ装置100のグランドエレメント20における信号経路を示す図である。図5(A)は接続回路30がオフの場合の信号経路を示し、図5(B)は接続回路30がオンの場合の信号経路を示す。
図5(A)に示すように、接続回路30がオフの状態では、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとの間が接続されていない。このため、例えば、数GHz程度の高周波信号を送信又は受信しようとすると、高周波信号は、図5(A)中にドットで示すように、グランドエレメント20のスリット21よりも左側の部分に分布し、スリット21よりも右側には殆ど分布しない状態になる。
一方、接続回路30をオンにすると、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとの間が接続される。このため、例えば、数GHz程度の高周波信号を送信又は受信しようとすると、高周波信号は、図5(B)中にドットで示すように、グランドエレメント20の四隅(角部20A、20B、20C、20D)を通るように分布する。
このように、接続回路30のオン/オフによってグランドエレメント20における高周波信号の分布の状態が切り替わるので、接続回路30のオン/オフによってアンテナ装置100の周波数特性を切り替えることができると考えられる。
次に、実施の形態1のアンテナ装置100のSパラメータを用いて周波数特性について説明する。
図6は、実施の形態1のアンテナ装置100の周波数に対するS11パラメータの特性を示す図である。なお、図6に示すSパラメータは、給電部16で測定したS11パラメータであり、一点鎖線は接続回路30を接続していない状態(接続回路30オフの状態)の特性を示し、破線は接続回路30を接続した状態(接続回路30オンの状態)の特性図である。
接続回路30がオフにされて、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されていない状態では、一点鎖線で示すように、S11パラメータの値は、周波数が約2.5GHzと約4.2GHzのときに極小値(約−17dBと約−14dB)を示している。これにより、接続回路30によってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されていない場合の共振周波数f1は、約2.5GHzと約4.2GHzであることが分かる。
次に、接続回路30をオンにして、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されている状態では、破線で示すように、S11パラメータの値は、周波数が約2.8GHzのときに極小値(約−17dB)を示している。これにより、接続回路30によってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されている場合の共振周波数f2は、約4.8GHzであることが分かる。
この結果より、接続回路30のオン/オフによってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとの接続状態を切り替えることにより、アンテナ装置100の共振周波数を切り替えられることが分かる。
なお、上述の共振周波数f1、f2は、主に、アンテナエレメント10、グランドエレメント20、及びスリット21の寸法や形状等によって任意に設定することができる。
従って、実施の形態1によれば、アンテナエレメント10の共振周波数を自由に設定又は選択することのできる小型のアンテナ装置100、及びこれを用いた無線通信装置110を提供することができる。
ここで、実施の形態1のアンテナ装置100を含む無線通信装置110が例えば複合機である場合の利用形態の一例について説明する。
例えば、携帯電話機A(図示せず)の利用者が自己の携帯電話機Aに記憶されているデータを印刷したい場合に、無線通信装置110としての複合機のGUI操作部114で自己の携帯電話機Aの周波数帯を選択し、無線通信で携帯電話機Aから複合機にデータを送信し、印刷処理等を行うことができる。また、別の利用者が携帯電話機Aとは使用周波数が異なる自己の携帯電話機B(図示せず)に記憶されているデータをFAXで送信したい場合に、GUI操作部114で自己の携帯電話機Bの周波数帯を選択し、無線通信で携帯電話機Bから複合機にデータを送信し、FAXの送信処理等を行うことができる。ここで説明した無線通信装置110の用途は一例に過ぎないが、実施の形態1のアンテナ装置100を含む無線通信装置110は、複数の周波数帯の通信が行える環境において、アンテナの利用者がアンテナエレメントの共振周波数を自由に設定又は選択することができるため、利便性が非常に高い。また、従来のように、共振周波数毎に対応した複数のアンテナを用いる必要がないため、小型のアンテナ装置100を提供することができる。
なお、以上では、図2に示すような接続回路30を用いる形態について説明したが、接続回路30の回路構成は、図2に示したものに限定されるものではない。また、PINダイオード32の代わりに、例えば、高周波FET(Field effect transistor)を用いてもよい。
また、実施の形態1のアンテナ装置100は、例えば、次のように変形することが可能である。
図7は、実施の形態1の変形例のアンテナ装置100Aを示す図である。ここでは、図1に示したアンテナ装置100と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略し、相違点について説明する。
図7に示すように、実施の形態1の変形例のアンテナ装置100Aは、アンテナエレメント10Aが逆L型に形成されている。すなわち、アンテナエレメント10Aは、接続部11が給電点16を兼ねており、給電線15は、接続部11(給電点16)からPCB基板40の角部43Aの方向に延伸する部分となる。
また、グランドエレメント20の接地点20Eは、角部20Aと略同一の位置となる。
このような実施の形態1の変形例においても、実施の形態1のアンテナ装置100と同様に、アンテナエレメント10Aの共振周波数を自由に設定又は選択することのできる小型のアンテナ装置100A、及びこれを用いた無線通信装置110を提供することができる。
<実施の形態2>
実施の形態2のアンテナ装置は、スリットと接続回路を複数組含む点が実施の形態1のアンテナ装置100と異なる。その他の構成は、実施の形態1のアンテナ装置100と同一であるため、同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図8は、実施の形態2のアンテナ装置200を示す図である。
実施の形態2のアンテナ装置200は、グランドエレメント20に形成される切欠部として2つのスリット21、24を有するとともに、それぞれのスリット21、24の開放端21A、24Aに配設される接続回路30A、30Bを有する。なお、スリット24は、結合端24Bを有する。
ここで、接続回路30Aは、実施の形態1のアンテナ装置100における接続回路30に相当する。このため、実施の形態2のアンテナ装置200は、実施の形態1のアンテナ装置100に、スリット24及び接続回路30Bを追加した構成となっている。
また、実施の形態1のアンテナ装置100における辺22Bは、スリット24の開放端24Aにより、辺22B1と辺22B2とに分断されている。以下では、グランドエレメント20の辺22B1、辺22B2の近傍の部位のうち、開放端24Aの両脇に位置する部位を部位25A、25Bと称す。
また、接続回路30A、30Bの接続状態の切り替えは、コントローラ120によって行われる。
以下では、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されている状態に接続回路30を切り替えることを接続回路30Aをオンにすると称し、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続されていない状態に接続回路30Aを切り替えることを接続回路30Aをオフにすると称す。
同様に、グランドエレメント20の部位25Aと部位25Bとが接続されている状態に接続回路30Bを切り替えることを接続回路30Bをオンにすると称し、グランドエレメント20の部位25Aと部位25Bとが接続されていない状態に接続回路30Bを切り替えることを接続回路30Bをオフにすると称す。
なお、実施の形態1において図5を用いて説明したように、実施の形態1の接続回路30(実施の形態2の接続回路30Aに相当する接続回路)をオフにした状態では、グランドエレメント20のうちスリット21よりも右側の領域には、高周波信号は殆ど分布しない。
このため、実施の形態2では、接続回路30Bのオン/オフの切り替えは、接続回路30Aがオンにされている状態で行うこととする。接続回路30Aがオフの状態では、グランドエレメント20のうちスリット21よりも右側の領域には高周波信号は殆ど分布しないため、接続回路30Bのオン/オフを切り替えても、グランドエレメント20における高周波信号の信号分布には殆ど影響が生じず、アンテナ装置200の周波数特性も殆ど変化しないと考えられるからである。
ここで、接続回路30A、30Bをともにオフにした状態(グランドエレメント20のスリット21よりも左側に高周波信号が主に分布する状態)におけるアンテナ装置200の共振周波数をf1とする。また、接続回路30Aをオンにし、接続回路30Bをオフにした状態(グランドエレメント20のスリット24よりも左側に高周波信号が主に分布する状態)におけるアンテナ装置200の共振周波数をf2とする。また、接続回路30A、30Bをともにオンにした状態(グランドエレメント20の四隅(角部20A、20B、20C、20D)を通るように高周波信号が分布する状態)におけるアンテナ装置200の共振周波数をf3とする。
アンテナ装置200の共振周波数f1、f2、f3の切り替えは、例えば、図9のフローチャートに示す処理によって実現される。
なお、接続回路30A、30Bの各々を切り替えるためには、例えば、接続回路30A、30Bに識別子を割り振り、2ビットの制御信号を用いることにより、接続回路30A、30Bのオン/オフを制御することができる。この場合、接続回路30A、30Bの識別子は、ROM113(図4参照)に格納しておけばよい。
次に、図9を用いて、接続回路30A、30Bの切替処理について説明する。
図9は、実施の形態2のアンテナ装置200における接続回路30A、30Bの切替処理を示すフローチャートである。この切替処理は、GUI操作部114(図4参照)への操作入力に基づき、CPU111(図4参照)によって実行される処理である。
処理がスタートすると、CPU111は、GUI操作部114への入力が共振周波数f1を選択する入力であったか否かを判定する(ステップS1)。
CPU111は、ステップS1で共振周波数f1が選択されたと判定した場合は、無線制御装置115に共振周波数f1を選択するための信号(接続回路30A、30Bをともにオフにするための信号)をコントローラ120に伝送する(ステップS2)。この結果、コントローラ120により、接続回路30A、30Bがともにオフの状態にされ、共振周波数がf1にされる。
CPU111は、ステップS1において、選択された共振周波数がf1ではないと判定した場合は、GUI操作部114への入力が共振周波数f2を選択する入力であったか否かを判定する(ステップS3)。
CPU111は、ステップS3で共振周波数f2が選択されたと判定した場合は、無線制御装置115に共振周波数f2を選択するための信号(接続回路30Aをオンにするための信号)をコントローラ120に伝送する(ステップS4)。この結果、コントローラ120により、接続回路30Aがオンの状態にされ、共振周波数がf2にされる。
CPU111は、ステップS3において、選択された共振周波数がf2ではないと判定した場合は、GUI操作部114への入力が共振周波数f3を選択する入力であったか否かを判定する(ステップS5)。
CPU111は、ステップS5で共振周波数f3が選択されたと判定した場合は、無線制御装置115に共振周波数f3を選択するための信号(接続回路30A、30Bをともにオンにするための信号)をコントローラ120に伝送する(ステップS6)。この結果、コントローラ120により、接続回路30A、30Bがともにオンの状態にされ、共振周波数がf3にされる。
CPU111は、ステップS5において、選択された共振周波数がf3ではないと判定した場合は、フローをステップS1にリターンする。
以上のように、実施の形態2のアンテナ装置200によれば、スリット21、24と、接続回路30A、30Bとを含むことにより、3通りの共振周波数を利用者が選択することができる。
次に、実施の形態2のアンテナ装置200のSパラメータを用いて周波数特性について説明する。
図10は、実施の形態2のアンテナ装置200の周波数に対するS11パラメータの特性を示す図である。なお、図10に示すS11パラメータは、給電部16で測定したものである。
図10において、一点鎖線は接続回路30A、30Bをともにオフにした状態の周波数特性(共振周波数f1が得られる周波数特性)を示し、実線は接続回路30Aをオン、接続回路30Bをオフにした状態の周波数特性(共振周波数f2が得られる周波数特性)を示し、破線は接続回路30A、30Bをともにオンにした状態の周波数特性(共振周波数f3が得られる周波数特性)を示す。
図10に示す3つのS11パラメータの周波数特性は、上述のように、接続回路30A、30Bの接続状態を切り替えることによって得られたものである。
接続回路30A、30Bがともにオフにされて、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bと、部位25Aと部位25Bとがともに接続されていない状態では、一点鎖線で示すように、S11パラメータの値は、周波数が約2.6GHzのときに極小値(約−12dB)を示している。これにより、接続回路30A、30Bによってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bと、部位25Aと部位25Bとがともに接続されていない場合の共振周波数f1は、約2.6GHzであることが分かる。
また、接続回路30Aをオン、接続回路30Bをオフにして、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続され、部位25Aと部位25Bが接続されていない状態では、実線で示すように、S11パラメータの値は、周波数が約2.4GHzと約3.8GHzのときに極小値(約−14dBと約−18dB)を示している。これにより、接続回路30Aによってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bとが接続され、接続回路30Bによってグランドエレメント20の部位25Aと部位25Bとが接続されていない場合の共振周波数f2は、約2.4GHzと約3.8GHzであることが分かる。
接続回路30A、30Bがともにオンにされて、グランドエレメント20の部位23Aと部位23Bと、部位25Aと部位25Bとがともに接続されている状態では、破線で示すように、S11パラメータの値は、周波数が約2.8GHzのときに極小値(約−13dB)を示している。これにより、接続回路30A、30Bによってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bと、部位25Aと部位25Bとがともに接続されている場合の共振周波数f3は、約2.8GHzであることが分かる。
この結果より、接続回路30A、30Bのオン/オフによってグランドエレメント20の部位23Aと部位23Bと、部位25Aと部位25Bとの接続状態を切り替えることにより、アンテナ装置200の共振周波数を切り替えられることが分かる。
なお、上述の共振周波数f1、f2、f3は、主に、アンテナエレメント10、グランドエレメント20、及びスリット21、24の寸法や形状等によって任意に設定することができる。
従って、実施の形態2によれば、アンテナエレメント10の共振周波数を自由に設定又は選択することのできる小型のアンテナ装置200、及びこれを用いた無線通信装置110(図4参照)を提供することができる。
なお、実施の形態2では、一例として、2つのスリット21、24と2つの接続回路30A、30Bを含む形態について説明したが、スリットと接続回路の数は幾つであってもよく、また、その配置も任意に設定することができる。
<実施の形態3>
実施の形態3のアンテナ装置300は、アンテナエレメントが分岐されて共振周波数の異なる第1アンテナ部と第2アンテナ部を含む点と、第1アンテナ部と第2アンテナ部のそれぞれに対応するスリットがグランドエレメントに設けられている点とが実施の形態1のアンテナ装置100と異なる。
図11は、実施の形態3のアンテナ装置300を示す図である。
アンテナ装置300は、アンテナエレメント310、グランドエレメント320、及びPCB基板340を含む。
アンテナエレメント310とグランドエレメント320は、PCB基板340の表面に形成されている。アンテナエレメント310、グランドエレメント320は、例えば、PCB基板340の表面に形成した銅箔をパターニングすることによって形成することができる。
PCB基板340は、例えば、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂をしみ込ませ熱硬化処理を施したFR4製の基板であればよい。PCB基板340は、短辺341A、341B、長辺342A、342B、及び角部343A〜343Dを有する平面視で長方形状の基板である。なお、PCB基板340は、実施の形態1のPCB基板40とは長辺と短辺の関係が入れ替わっている。
アンテナエレメント310は、接続部311でグランドエレメント320に接続されており、グランドエレメント320から離間する方向(図11中で+Y方向)に延伸し、折り曲げ部312Aで直角に(図11中では+X方向に直角に)折り曲げられ、さらに、折り曲げ部312Bでグランドエレメント320から離間する方向に直角に(図1中では+Y方向に直角に)折り曲げられ、分岐部312Cまで延伸している。
アンテナエレメント310は、分岐部312Cで左右に分岐されており、第1アンテナ部310Aは分岐部312Cよりも左側に分岐し、第2アンテナ部310Bは分岐部312Cよりも右側に分岐している。
第1アンテナ部310Aは、端部313Aまで延伸している。端部313Aは、PCB基板340の角部343Aの近傍に位置する。第1アンテナ部310Aの分岐部312Cから端部313Aまでの長さは、第1共振周波数f11に応じて設定されている。
第2アンテナ部310Bは、端部313Bまで延伸している。端部313Bは、PCB基板340の角部343Bの近傍に位置する。第2アンテナ部310Bの分岐部312Cから端部313Bまでの長さは、第2共振周波数f12に応じて設定されている。
グランドエレメント320は、角部320A、320B、320C、320Dを有する。角部320A〜320Dのうち、角部320C、320Dは、それぞれ、PCB基板340の角部343C、343Dの近傍に位置する。なお、グランドエレメント320は、図11に示すY軸方向の破線(接地点320Eを通る破線)よりも左側が第1アンテナ部310Aに対応して設けられており、破線(接地点320Eを通る破線)よりも右側は第2アンテナ部310Bに対応して設けられている。
グランドエレメント320は、例えば、アンテナエレメント310の給電部316に対向する部位を接地点320Eとして、接地される。
また、グランドエレメント320は、スリット321、324を有する。スリット321は、グランドエレメント320の幅方向において、角部320Aと接続部311との間からPCB基板340の長辺342Bの方向(図1中−Y方向)に切り欠かれた切欠部である。スリット321は、開放端321Aと結合端321Bを有する。
スリット324は、グランドエレメント320の幅方向において、接地点320Eと角部320Bとの間からPCB基板340の長辺342Bの方向(図1中−Y方向)に切り欠かれた切欠部である。スリット324は、開放端324Aと結合端324Bを有する。
グランドエレメント320の4辺のうち、アンテナエレメント310に近接する辺322(図11中X方向に延伸する辺のうち、アンテナエレメント10に近い方の辺)は、スリット321の開放端321Aと、接続部311と、スリット324の開放端324Aとにより、辺322A、322B、322C、322Dに分断されている。
以下では、グランドエレメント320の辺322A、322Bの近傍の部位のうち、開放端321Aの両脇に位置する部位を部位323A、323Bと称す。同様に、グランドエレメント320の辺322C、322Dの近傍の部位のうち、開放端324Aの両脇に位置する部位を部位325A、325Bと称す。
接続回路30Aは、スリット321の開放端321Aに設けられており、スリット321によって切り欠かれたグランドエレメント320の部位323Aと部位323Bの間の接続状態を切り替える。
同様に、接続回路30Bは、スリット324の開放端324Aに設けられており、スリット324によって切り欠かれたグランドエレメント320の部位325Aと部位325Bの間の接続状態を切り替える。
接続回路30A、30Bの接続状態の切り替えは、実施の形態1、2と同様にコントローラ120によって制御されるように構成されている。
なお、一例としてアンテナ装置300の寸法を挙げると、端部313Aから分岐部312Cまでの長さは22mm、分岐部312Cから端部313Bまでの長さは9mm、アンテナエレメント310の線幅は1mmである。また、グランドエレメント320は、角部320Aから角部320Bまでの長さが32mm、角部320Bから角部320Cまでの長さが22mmである。
以下では、グランドエレメント320の部位323Aと部位323Bとが接続されている状態に接続回路30Aを切り替えることを接続回路30Aをオンにすると称し、グランドエレメント320の部位323Aと部位323Bとが接続されていない状態に接続回路30Aを切り替えることを接続回路30Aをオフにすると称す。
同様に、グランドエレメント320の部位325Aと部位325Bとが接続されている状態に接続回路30Bを切り替えることを接続回路30Bをオンにすると称し、グランドエレメント320の部位325Aと部位325Bとが接続されていない状態に接続回路30Bを切り替えることを接続回路30Bをオフにすると称す。
なお、実施の形態1、2と同様に、接続回路30Aをオフにした状態では、グランドエレメント320のうちスリット321よりも左側の領域には、高周波信号は殆ど分布しない。また、接続回路30Bをオフにした状態では、グランドエレメント320のうちスリット324よりも右側の領域には、高周波信号は殆ど分布しない。
2つの共振周波数f11、f12に応じた線路長の第1アンテナ部310A及び第2アンテナ部310Bを含む実施の形態3のアンテナ装置300は、コントローラ120で接続回路30A、30Bをそれぞれ切り替えることにより、2つの共振周波数f11、f12をそれぞれシフトさせることができる。
図12は、実施の形態3のアンテナ装置300のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
ここでは、接続回路30A、30Bをともにオンにした場合の特性A、接続回路30Aをオンにして接続回路30Bをオフにした場合の特性B、接続回路30Aをオフにして接続回路30Bをオンにした場合の特性C、及び、接続回路30A、30Bをともにオフに特性Dをシミュレーションによって求めた。
図12(A)は、特性A、Bを示し、図12(B)は特性C、Dを示す。
共振周波数f11は、図12(A)に示すように、特性A、Bでは略同一で約2.4GHzであり、そのときのS11パラメータの値は約−12dBであった。
また、図12(B)に示すように、特性Cでは共振周波数f11は約2.0GHzにシフトしており、そのときのS11パラメータの値は約−12dBであった。また、特性Dでは共振周波数f11は約2.1GHzにシフトしており、そのときのS11パラメータの値は約−14dBであった。
また、共振周波数f12は、図12(A)に示すように、特性Aでは約5.0GHzであり、そのときのS11パラメータの値は約−16dBであった。特性Bでは約5.2GHzにシフトし、そのときのS11パラメータの値は約−16dBであった。
また、図12(B)に示すように、特性Cでは共振周波数f12は約5.0GHzであり、そのときのS11パラメータの値は約−16dBであった。また、特性Dでは共振周波数f12は約5.1GHzにシフトしており、そのときのS11パラメータの値は約−19dBであった。
この結果より、接続回路30A、30Bのオン/オフによってグランドエレメント320の部位323Aと部位323Bと、部位325Aと部位325Bとの接続状態を切り替えることにより、アンテナ装置300の共振周波数を切り替えられる(シフトできる)ことが分かる。
なお、上述の共振周波数f11、f12は、主に、アンテナエレメント310、グランドエレメント320、及びスリット321、324の寸法、位置、形状等によって任意に設定することができる。
以上のように、共振周波数の異なる第1アンテナ部310Aと第2アンテナ部310Bを有するアンテナ装置300においても、スリット321、324に設けられた接続回路30A、30Bの接続状態を制御することにより、様々な共振周波数を自由に選択することのできる小型のアンテナ装置300、及びこれを用いた無線通信装置110(図4参照)を提供することができる。
なお、実施の形態3では、一例として、2つのスリット321、324と2つの接続回路30A、30Bを含む形態について説明したが、スリットと接続回路の数は幾つであってもよく、また、その配置も任意に設定することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ装置、及びこれを用いた無線通信装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。