JP2011241470A - 鉄系材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
鋼中に高濃度のCおよび合金元素を必ずしも含有させることなく、冷間加工性と強度を兼備し、更には高温使用環境における強度特性にも優れた機械部品が製造可能な、機械構造用材料を提供する。
【解決手段】
Feおよび不可避的不純物からなる鉄形材料を窒化して、その一部または全体に、N:8at%以上11at%以下含有し、硬さがHv700以上の硬質相を有する鉄系材料とする。
【選択図】なし
Description
(1)Feおよび不可避的不純物からなる材料の表層または全体を窒化して得た硬質相を有し、該硬質相は、N:8at%以上11at%以下を含有し、かつ硬さがHV700以上であることを特徴とする鉄系材料。
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02 mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
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Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02 mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
(組成の限定理由)
N:8〜11at%
Nは、本発明の硬質相を形成する上で必須の元素である。先述のとおり、本発明においては、鉄系材料に窒化処理を施して鉄系材料の少なくとも表層部をオーステナイト組織とし、これを急冷して窒化処理時に形成された上記オーステナイト組織を、α(フェライト)中に微細なγ´(Fe4N)が分散した組織とすることにより硬質相を形成する。そのため、本発明の鉄系材料においては、硬質相を形成すべき部分に、オーステナイト形成元素であり且つγ´(Fe4N)の構成元素であるNを所要量含有させる必要がある。Nは、Feおよび不可避的不純物からなる材料あるいはこれに後述するC、Cr、Al、Ti、Nb、V、Mo、Mn、Si、CuおよびCoを所定量含有させた材料に対して、表層または全体を窒化することにて含有させる。
本発明においてCは必須成分ではない。しかしながら、本発明において特にHV700以上の硬質相を鉄系材料の表層のみに形成する場合、Cは鉄系材料内部の強度を確保する上で有効な元素であるので必要に応じて含有する。ただし、その含有量が0.6mass%を超えると、機械部品の寸法精度や冷間加工性に悪影響を及ぼすため、C含有量を0.6mass%以下とする。
なお、本発明において、硬さHVは、荷重25gf(0.245N)、荷重保持時間15sの条件にて測定したビッカース硬さを意味する。
本発明の鉄系材料は、所定の組成を有する鉄系素材に、590℃以上の温度で窒化処理を施して該鉄系素材の一部または全体にN:8at%以上11at%以下を含有させた後、500℃以下の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後、100〜500℃の温度域に加熱保持してHV700以上の硬質相を形成する方法により好適に製造することができる。
窒化処理温度を590℃以上とすることにより、鉄系素材中への十分な窒素の拡散速度を得ることが可能になるとともに、窒化処理中に安定なオーステナイト相を得ることが可能となる。ただし、窒化温度を極端に高くすると、窒化処理中の窒化進行速度の制御が困難になるとともに、窒化処理中に組織のオーステナイト粒の粗大化を引き起こし、窒化処理後の鉄系材料の延性および靱性に悪影響を及ぼす。そのため、窒化処理温度は1000℃以下にすることが好ましい。
上記条件で窒化処理を施した鉄系材料の少なくとも表層部は、N:8at%以上11at%以下を含有するオーステナイト組織が形成されている。本発明においては、これを1℃/s以上の冷却速度で500℃以下の温度まで冷却することにより、上記オーステナイト組織を室温近傍まで残留させる。冷却速度が1℃/s未満である場合には、冷却中にフェライト相が形成してしまい、冷却終了時点におけるオーステナイト含有量が減少するため、その後の熱処理により所望の硬度を有する硬質相が得られない。なお、冷却速度の上限値は特に限定しないが、簡易な冷却方法で達成するために、50℃/s以下とすることが好ましい。
なお、1℃/s以上の冷却速度での冷却は、500℃まで行えばよく、500℃に達した後の冷却速度は任意である。
上記冷却工程を経た鉄系材料は、少なくともその表層部に軟質なオーステナイト組織を有する。しかし、この鉄系材料を100〜500℃の温度域に保持することにより、上記オーステナイト組織がα(フェライト)中に微細なγ´(Fe4N)が分散した組織に変化し、HV700以上の硬質相が形成される。保持温度が100℃未満では上記の組織変化が不十分となり、所望の硬度を有する硬質相が形成されない。また、保持温度が500℃を超えると、形成される組織の粗大化を生じるとともに、表層部で脱窒が発生し、やはり硬質相の硬度が不十分となる。また、鉄系材料を所望の組織とするためには、上記温度における保持時間を60min以上とする。上記温度における保持時間を60min未満とすると、組織変化が不十分となり、HV700以上の硬質相が得られない。なお、60000minを超えて保持しても、それ以上の硬度の上昇は望めないため、6000min以下とすることが好ましい。
すなわち、表2に示す条件にて、窒化処理、冷却、その後の硬化熱処理(硬質相形成処理)を行った。窒化処理後の鉄系材料および、硬化熱処理後の鉄系材料について、EPMAを用いて、表面から深さ20μm近傍の窒素濃度(at%)を測定した。また、窒化処理後および、硬化熱処理後の鉄系材料について、表面から深さ20μm部を光学顕微鏡により観察し、構成ミクロ組織の判定を行うとともに、その部分のビッカース硬さを測定した。さらに、硬化熱処理後の鉄系材料については、20μm間隔で深さ方向にビッカース硬さ測定を行い、硬さがHV700を超える領域の厚さを測定した。
ここで、ビッカース硬さの測定はいずれも、荷重25gf(0.245N)、荷重保持時間15sの条件にて行った。
また、No.7およびNo.9は、窒化冷却によりオーステナイト(γ)組織が得られたが、No.7ではその後の硬化熱処理温度が低いため、また、No.9では硬化熱処理時間が短いため、窒化冷却処理で得られたオーステナイトからの組織変化が十分に進行せず、結果として硬化熱処理後の構成ミクロ組織がオーステナイト(γ)となり、十分な硬さが得られなかった。
さらに、No.8の場合、窒化冷却によりオーステナイト(γ)組織が得られているものの、その後の硬化熱処理温度が高いため、オーステナイト(γ)相からの組織変化によって形成されたフェライト(α)相および、γ´(Fe4N)相が粗大化し、十分な硬さが得られなかった。
Claims (6)
- Feおよび不可避的不純物からなる材料の表層または全体を窒化して得た硬質相を有し、該硬質相は、N:8at%以上11at%以下を含有し、かつ硬さがHV700以上であることを特徴とする鉄系材料。
- 請求項1に記載の鉄系材料が、更にC:0.6mass%以下を含有することを特徴とする鉄系材料。
- 請求項1または2に記載の鉄系材料が、更に
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02 mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。 - Feおよび不可避的不純物からなる鉄系素材に、590℃以上の温度で窒化処理を施して該鉄系素材の一部または全体にN:8at%以上11at%以下を含有させた後、500℃以下の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後、100〜500℃の温度域に60min以上保持してHV700以上の硬質相を形成することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
- 請求項4に記載の鉄系素材が、更にC:0.6mass%以下を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
- 請求項4または5に記載の鉄系素材が、更に
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
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の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
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