JP2011236485A - 電気防食工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気防食工法を施したコンクリート構造物において、陽極材の周囲のコンクリート構造物が劣化するのを防止しうる電気防食工法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物1中に埋設された鋼材Aと陽極材2との間に電流を流して鋼材の腐食を防止する電気防食工法であって、コンクリート構造物1の表面に、撥水性及び通気性を有する表面処理剤3を塗布することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンクリート構造物中に埋設された鋼材と陽極材との間に電流を流して鋼材の腐食を防止する電気防食工法に関する。
コンクリート構造物中に埋設されている鉄筋などの鋼材は、表面に不動態被膜が形成されているため、本来、腐食から保護されている。ところが、沿岸地域や凍結防止剤などが頻繁に使用される地域などでは、コンクリート構造物の経時的な劣化によって形成された亀裂やコンクリート構造物内の間隙などを通って、水分に溶解した塩素成分がコンクリート構造物の内部にまで侵入してしまう場合がある。このような場合、侵入した塩素成分によって鋼材の不動態被膜が破壊され、鋼材が腐食(酸化)する虞がある。
この際、腐食した鋼材の表面では、腐食した部分と腐食していない部分とで酸化反応(アノード反応)と還元反応(カソード反応)とが同時に進行する。これにより、鋼材表面に生じたアノード部とカソード部との間に電位差が生じ、アノード部からカソード部へとコンクリート構造物中に腐食電流が流れることとなる。そして、この腐食電流が鋼材の腐食を更に進行させる要因となる。
このような腐食の進行を防止する方法としては、チタンなどの素材を用いて形成された陽極材をコンクリート構造物中に埋設し、陽極材と鋼材との間に電流(防食電流)を継続的に流すことによって、鋼材表面の電位差を解消して腐食電流が発生するのを防止する電気防食工法が知られている(特許文献1参照)。コンクリート構造物中に陽極材を埋設する方法としては、例えば、鋼材が埋設されたコンクリート本体の表面に形成した溝部内に陽極材を配置し、セメントモルタルなどの被覆材で溝部を埋め込む方法などが採用されている。
特開2006−206953号公報
しかしながら、上記のような電気防食工法を用いた場合、コンクリート構造物の表面に形成された亀裂や間隙から、塩素成分が陽極材の周囲に侵入する場合がある。斯かる場合において、亀裂などに侵入した水分の影響によってコンクリート内部の電気抵抗が極端に低下したり電源設備の故障によって設定以上の電流が流れてしまったりすると、陽極材の電位が過度に貴側へ移行し、陽極材の周辺に次亜塩素酸が発生して陽極材の周囲のコンクリート構造物を劣化させる虞がある。そして、陽極材の周囲のコンクリート構造物が劣化すると、陽極材からの電流が鋼材へ供給され難くなってしまったり、劣化した部分が崩壊して陽極材が露出してしまったりする虞がある。このため、劣化した部分の補修を行なうことが必要となり、多大な手間と費用を要することとなる。
そこで、本発明は、電気防食工法を施したコンクリート構造物において、陽極材の周囲のコンクリート構造物が劣化するのを防止しうる電気防食工法を提供することを課題とする。
斯かる課題に鑑みて本発明者らが鋭意研究したところ、電気防食を施したコンクリート構造物の表面に表面処理剤を塗布し、塩素成分を含有する水分が陽極材の周辺に侵入するのを防止することで、該陽極材周辺での次亜塩素酸の発生を防止し、陽極材周囲のコンクリート構造物が劣化するのを防止し得ることを見出し、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明に係る電気防食工法は、コンクリート構造物中に埋設された鋼材と陽極材との間に電流を流して鋼材の腐食を防止する電気防食工法であって、コンクリート構造物の表面に、撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布することを特徴とする。
斯かる構成によれば、鋼材と陽極材とが埋設されたコンクリート構造物の表面に、撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布することで、コンクリート構造物の表面に形成された亀裂や間隙に表面処理剤が入り込んだり亀裂や隙間を閉塞したりするため、コンクリート構造物の表面が撥水性を有することとなる。
このため、コンクリート構造物の表面から塩素成分を含有する水分が陽極材の周囲に侵入するのを防止することができ、陽極材の周辺で次亜塩素酸が生成するのを防止することができる。これにより、陽極材の周囲のコンクリート構造物が次亜塩素酸によって劣化されるのを防止することができる。
また、一般的に、電気防食工法では、コンクリート構造物内に酸素ガスが発生するが、表面処理剤が通気性を有していることで、コンクリート構造物の表面から酸素ガスを外部へ放散させることができる。
また、もともとコンクリート構造物の内部に存在していた塩素成分によって次亜塩素酸ガスが発生した場合であっても、斯かるガスが外部へ放散されるため、陽極材の周辺のコンクリート構造物と次亜塩素酸ガスとの接触時間が低減され、コンクリート構造物の劣化を抑制することができる。
また、前記コンクリート構造物は、鋼材を埋設したコンクリート本体に陽極材が被覆材で覆われた状態で設置されてなるものであって、コンクリート構造物の表面に露出した被覆材の表面と、該被覆材の表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面とに、前記表面処理剤を塗布することが好ましい。
斯かる構成によれば、コンクリート構造物の表面に露出した被覆材の表面と、該被覆材の表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面とに、前記表面処理剤を塗布することで、被覆材及びコンクリート本体の表面から塩素成分を含有する水分が陽極材の周囲に侵入するのを防止することができ、コンクリート本体及び被覆材が次亜塩素酸によって劣化されるのを防止することができる。
また、もともとコンクリート構造物の内部に存在していた塩素成分によって次亜塩素酸ガスが発生した場合であっても、斯かるガスが外部へ放散されるため、コンクリート本体及び被覆材が次亜塩素酸ガスと接触する時間を低減することができ、コンクリート本体及び被覆材の劣化を抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、陽極材の周囲に次亜塩素酸が生成するのを防止して陽極材の周囲のコンクリート構造物が劣化するのを防止することができる。
本発明を適用できる電気防食工法の一例におけるコンクリート構造物の断面図。 本発明を適用できる電気防食工法の他の例におけるコンクリート構造物の断面図。 本発明を適用できる電気防食工法の他の例におけるコンクリート構造物の断面図。
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
本発明に係る電気防食工法は、コンクリート構造物中に埋設された鋼材と陽極材との間に電流を流して鋼材の腐食を防止するものである。詳しくは、鋼材を埋設したコンクリート本体に被覆材で覆われた状態で陽極材を設置してコンクリート構造物を形成し、陽極材と鋼材との間に電流を流して鋼材の腐食を防止するものである。特に、塩害が発生する地域において、陽極材の周囲のコンクリート構造物(具体的には、陽極材を覆っている被覆材やコンクリート本体)が劣化してしまうのを防止する際に用いられる。前記コンクリート本体は、塩害が発生する地域で既に施工された状態のもの(道路や壁材など)や、新たに施工されるものなどである。
前記被覆材としては、セメントモルタルなどの水硬性を有する材料から形成されたものを用いることができる。セメントモルタルとしては、ポリマー成分を含有するもの、或いは含有しないものなどを用いることができる。例えば、ポリマー成分を含有しない場合には、セメント40〜45重量%、混和剤(膨張剤など)3〜5重量%、砂45〜50重量%からなるセメントモルタルを用いることができ、斯かるセメントモルタルを用いて陽極材を覆う際にはセメントモルタルの重量に対して15〜18重量%の水分と混練されて用いられる。一方、ポリマー成分を含有する場合には、セメント38〜43重量%、混和剤(膨張剤など)3〜5重量%、ポリマー成分1〜2重量%、砂45〜50重量%からなるセメントモルタルを用いることができ、斯かるセメントモルタルを用いて陽極材を覆う際にはセメントモルタルの重量に対して15〜18重量%の水分と混練されて用いられる。
また、陽極材と鋼材との間の電流の流れを良好にする点で、被覆材の電気抵抗値は、100kΩ・cm以下であることが好ましい。特にセメントモルタルがポリマー成分を含有する場合には、含有しない場合よりも電気抵抗が高くなるため、ポリマー成分の含有量をセメントモルタル全体の0.1〜10.0重量%程度にすることが好ましく、0.1〜5.0重量%程度にすることがより好ましい。
コンクリート本体に陽極材を設置する方法としては、特に限定されるものではなく、用いる陽極材の形状などに応じて適宜選択することができる。例えば、図1に示すように、陽極材2の形状が面状である場合、鋼材Aの腐食が予測されるコンクリート本体1の表面に陽極材2を配置し、硬化前の被覆材(セメントモルタル)3で陽極材2の全体を覆って被覆材3を養生して硬化させることで、コンクリート本体1に陽極材2を設置することができる(第1設置方法)。この際、陽極材2及び鋼材Aは、陽極材2と鋼材Aとの間に電流が流れるようにするための電源(図示せず)に電線(図示せず)を介して連結される。このような設置状態とすることで、面状の陽極材2が設置された領域の鋼材Aに対して均一に電流を供給することができる。
また、図2に示すように、陽極材2が帯状である場合、コンクリート本体1の表面にコンクリートカッター等を用いて陽極材2に対応した形状の溝部4を複数形成し、各溝部4内に陽極材2を配置する。そして、硬化前の被覆材3で陽極材2の全体を覆うように溝部4を埋め込んで被覆材3を養生して硬化させることで、コンクリート本体1に陽極材2を設置することができる(第2設置方法)。この際、上述した場合と同様に、各陽極材2及び鋼材Aは、電線(図示せず)を介して電源(図示せず)に連結される。このような設置状態とすることで、鋼材Aの腐食が予測される領域に流れる電流密度を溝部4同士の間隔(即ち、陽極材2同士の間隔)を変更することで調整することができる。
また、図3に示すように、陽極材2が棒状である場合、コンクリート本体1の表面から鋼材A側へ向かってドリル等を用いて孔5を複数形成し、各孔5に陽極材2を差し込んだ後、硬化前の被覆材3で陽極材2の全体が覆われるように孔(差込孔)5を被覆材3で埋め込むことで、コンクリート本体1に陽極材2を設置することができる(第3設置方法)。この際、上述した場合と同様に、各陽極材2及び鋼材Aは、電線(図示せず)を介して電源(図示せず)に連結される。このような設置状態とすることで、鋼材Aの腐食が部分的に発生する場合に、その部分の近傍に差込孔5を形成して陽極材2を差し込むことができるため、腐食部分との間に効率的に電流を流すことができる。
なお、陽極材と鋼材との間の電流密度は、埋設されている鋼材量や鋼材の表面状態、埋設方法等によって異なるが、通常、5〜30mA/m2(コンクリート構造物の表面積当り)程度であることが好ましい。
陽極材を形成する素材としては、一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、面状や帯状の陽極材の場合、チタン製の素材を用いて形成されたチタンメッシュ等を用いることができる。また、棒状の陽極材の場合、チタン素材を棒状に形成したもの等を用いることができる。
本発明に係る電気防食工法は、コンクリート構造物の表面(具体的には、コンクリート構造物の表面に露出した被覆材の表面と、該被覆材の表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面)に、撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布するものである。
撥水性とは、表面処理剤を塗布したコンクリート構造物に対してJSCE−K571(土木学会 表面含浸材の試験方法)に規定の「6.3 透水量試験」に準拠した試験を行なった際に、100ml/m2・日以下、好ましくは30ml/m2・日以下となる試験結果が得られるものである。
透水量試験の方法について簡単に説明すると、まず始めに、上記の規定に基づいて作製した試験体(100mm×100mm×100mm)の上面に上述した表面処理剤を塗布(塗布量:150g/m2)する。
次に、斯かる上面に漏斗を一方の開口部(口径:75mm)が下方となるように載置し、試験体の上面と漏斗の開口部との間に隙間が生じないようにシールする。また、漏斗の他方の開口部(一方の開口部よりも小径となる方の開口部)には、ゴム管を介してメスピペット(最小目盛り:0.05ml、呼び容量:5ml、JIS R 3505に規定するもの)を連結する。この際、メスピペットの軸線が垂直となると共に、当該軸線上に漏斗の両開口部の中心が位置するように連結する。
そして、メスピペットの上方の開口部から漏斗及びメスピペットの内部に水(JIS K 0050に規定するもの)を供給し、メスピペット内の水面の高さ位置(水頭高さ)の目盛りを読み取る。さらに、7日後の水頭高さの目盛りを読み取り、試験開始直後と7日後との水量の差を算出する。そして、斯かる水量、水と接する試験体の上面の面積及び試験日数から透水量(ml/m2・日)を算出する。
一方、通気性とは、表面処理剤を塗布したコンクリート構造物に対して阪神高速道路公団「第2編 コンクリート構造物表面保護要領(案)」の「透湿性試験」に準拠した試験を行なった際に、未塗布の状態に対して透湿度が50%以上となる試験結果が得られるものである。
透湿性試験の方法について簡単に説明すると、まず始めに、上記の規定に基づいて作製した試験体(直径68mm×10mm)の上面に上述した表面処理剤を塗布(150g/m2)する。
次に、斯かる試験体が隙間無く納まる円筒状の枠体内に試験体を嵌め込んで接着剤で隙間なく固定する。該枠体は、一端部に径方向内方に向かって延出するリブ状部を備え、該リブ状部が一端部の周方向全域に亘って一体的に形成されている。これにより、枠体の一端側の開口部の内径(直径56.5mm)が他端側の開口部の内径よりも小さくなるように構成されている。そして、一端側の開口部から枠体内に嵌め込まれた試験体の上面が外部へ露出するように構成されている。
そして、試験体が嵌め込まれた枠体の他端部を所定量の塩化カルシウムが収容された円筒状の容器の開口部に嵌め込んで固定し、測定容器を形成する。これにより、試験体が嵌め込まれた枠体によって容器が密閉された状態となる。
上記の測定容器を40±1℃、90±2%RHの環境下に30日間放置し、30日後の塩化カルシウムの重量を測定する。そして、測定された重量と試験開始前の重量との差から透湿量を算出し、斯かる透湿量、試験体の上面の露出面積及び試験日数から透湿度(g/m2・day)を算出する。
前記表面処理剤としては、例えば、アルキルアルコキシシランなどのシラン系表面処理剤、ポリオルガノシロキサンなどのシロキサン系表面処理剤、シリコネート系表面処理剤、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩系表面処理剤、コロイダルシリカ系表面処理剤の何れか1つ又は複数からなるものを用いることができる。
特に好ましいものは、ケイ酸塩系、コロイダルシリカ系の表面処理剤であり、斯かる表面処理剤は、コンクリート構造物の表面に形成された亀裂や間隙を閉塞する効果を有するため、塩素成分を含有する水分の侵入をより効果的に防止することができる。
表面処理剤を塗布する方法としては、被覆材の表面及びその表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面に(即ち、コンクリート構造物の表面に)表面処理剤を含む処理液を刷毛やローラーを用いて塗りつける方法やリシンガンや噴霧器を用いて噴霧したり散布したりする方法を採用することができる。
具体的には、上述のようにコンクリート本体に陽極材を設置した後、コンクリート構造物の表面全体に表面処理剤を含有する処理液を塗布し、所定時間乾燥させることで、被覆材の表面及びその周囲に位置するコンクリート本体の表面に表面処理剤を塗布することができる。
又は、陽極材を設置する前のコンクリート本体の表面に処理液を塗布して所定時間乾燥させることで、表面処理剤が塗布されたコンクリート本体を作製しておき、斯かるコンクリート本体に上記のように陽極材を設置した後、被覆材の表面にのみ処理液を塗布して乾燥させることで、コンクリート構造物の表面全体に表面処理剤が塗布されるようにしてもよい。
なお、コロイダルシリカ系の表面処理剤を用いた場合には、7〜28日程度コンクリート構造物の表面に水分の噴霧が行なわれる。これにより、コンクリート構造物の表面がコロイダルシリカによって緻密化されることとなる。
表面処理剤を塗布する量(塗布量)としては、10〜1000g/m2であることが好ましく、50〜300g/m2であることがより好ましい。これにより、陽極材よりもコンクリート構造物の表面側の領域に撥水性及び通気性を有する撥水通気層が形成されやすい。該撥水通気層は、埋設された陽極材よりもコンクリート構造物の表面側に形成されることが好ましい。例えば、陽極材がコンクリート構造物の表面から10〜25mm程度の位置に埋設されている場合には、撥水通気層の厚みとしては、表面から7〜15mm程度であることが好ましい。
以上のように、本発明に係る電気防食工法によれば、陽極材の周囲に次亜塩素酸が生成するのを防止してコンクリート構造物が劣化するのを防止することができる。
即ち、コンクリート構造物の表面に露出した被覆材の表面と、該被覆材の表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面とに(即ち、コンクリート構造物の表面に)、撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布することで、被覆材の表面やコンクリート本体の表面に形成された亀裂や間隙に表面処理剤が入り込んだり閉塞したりするため、コンクリート構造物の表面、即ち、被覆材及びコンクリート本体の表面が撥水性を有することなる。
このため、コンクリート構造物の表面から塩素成分を含有する水分が陽極材の周囲に侵入するのを防止することができ、陽極材の周辺で次亜塩素酸が生成するのを防止することができる。これにより、コンクリート本体や被覆材が次亜塩素酸によって劣化されるのを防止することができる。
また、一般的に、電気防食工法では、コンクリート構造物内に酸素ガスが発生するが、表面処理剤が通気性を有していることで、コンクリート構造物の表面から酸素ガスを外部へ放散させることができる。
また、もともとコンクリート構造物の内部に存在していた塩素成分によって次亜塩素酸ガスが発生した場合であっても、斯かるガスがコンクリート構造物内に停滞せずに外部へ放散されるため、コンクリート本体や被覆材が次亜塩素酸ガスと接触する時間を低減することができ、コンクリート本体や被覆材の劣化を抑制することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
<コンクリート本体>
直径9mmの異形鉄筋からなる6本の鋼材が埋設され、外形サイズが30×30×10cmとなるように形成したコンクリート本体(水セメント比:60%、s/a:45.5%、スランプフロー:8±2cm、最大骨材径:20mm)を用いた。前記6本の鋼材は、10cm間隔で平行に配置された3本の鋼材のセットが格子状となるように配置され、コンクリート本体の表面から5.5cmの位置に埋設されている。
<陽極材>
陽極材として、チタンメッシュを用いて形成された帯状の陽極材(30×1.27cm、厚さ1mm)を用いた。
<被覆材>
被覆材として、水分と混練されて硬化した際に電気抵抗が3.0kΩ・cmとなるものを用いた。具体的には、被覆材としてセメントモルタル(ポルトランドセメント45重量%、混和剤5重量%、砂50重量%)を用い、セメントモルタルの重量に対して18重量%の水分と前記セメントモルタルとを混練した。なお、被覆材の電気抵抗は、四電極法によって測定されるものである。
<表面処理剤>
表面処理剤としては、下記のものを用いた。
(イ)シラン系表面処理剤として、住友大阪セメント社製、「リフレパセットスーパーシラン」(撥水性を示す前記透水量試験の結果が2.7ml/m2・日となり、通気性を示す前記透湿性試験の結果が90%となるもの)を用いた。
(ロ)シリコネート系表面処理剤として、コーティング・テクノロジーズ・インターナショナル社製、「B&Bプルーフ」(撥水性を示す前記透水量試験の結果が3.8ml/m2・日となり、通気性を示す前記透湿性試験の結果が95%となるもの)を用いた。
(ハ)コロイダルシリカ系表面処理剤として、SNC社製、「SNCウルトラシリカ」(撥水性を示す前記透水量試験の結果が3.0ml/m2・日となり、通気性を示す前記透湿性試験の結果が100%となるもの)を用いた。
(ニ)ケイ酸塩系表面処理剤として、アストン社製、「CS21」(撥水性を示す前記透水量試験の結果が3.2ml/m2・日となり、通気性を示す前記透湿性試験の結果が100%となるもの)を用いた。
(ホ)エポキシ樹脂系表面処理剤として、日本特殊塗料社製、「タフバリアー」(撥水性を示す前記透水量試験の結果が0ml/m2・日となり、通気性を示す前記透湿性試験の結果が0%となるもの)を用いた。
<実施例1〜4>
1.供試体の作製
平行して埋設された3本の各鋼材の上方に位置するコンクリート本体の表面(30×30cm)に各鋼材に沿って凹溝(深さ:25cm)を3本形成し、該凹溝内に陽極材を配置した。
そして、硬化前のセメントモルタル(被覆材)で凹溝を埋め込んで、セメントモルタルを硬化させてコンクリート構造物を作製した。
次に、セメントモルタルの表面及びその周囲のコンクリート本体の表面に、上記(イ)〜(ニ)の各表面処理剤を塗布し、供試体を作製した。具体的には、表面処理剤の塗布量が下記表1に示す通りとなるように、コンクリート構造物の表面に表面処理剤を塗布し、自然乾燥させて供試体とした。各実施例で使用した表面処理剤については、下記表1に示す通りである。
2.試験方法
鋼材及び陽極材を、電線を介して電源に連結し、陽極材と鋼材との間の電流密度が100mA/m2となるように電流を流した状態で、陽極材が埋め込まれている供試体の表面に対して模擬海水(マリンエッセンスを用いて塩化物イオン濃度が約3%となるようにしたもの)を散布した。散布方法としては、1時間当り60l/m2の散布量で4時間散布後、20時間常温で乾燥させる操作を繰り返した。そして、3ヶ月後及び6ヶ月後の状態について評価を行なった。
3.評価方法1
上記の試験後、陽極材周辺のセメントモルタルを除去し、除去したセメントモルタルの陽極材と接触していた部分に次亜塩素酸が発生しているか否かを確認した。確認方法としては、次亜塩素酸が発生している場合に赤褐色に変色する検出試薬(共立理化学研究所製、製品名:パックテスト WAK−ClO・DPから取り出したもの)を当該部分に散布し、赤褐色に変色しなかった場合を「○」、変色した場合を「×」として下記表1に記載した。なお、検出試薬は、海水などの塩素イオンには反応しないものである。
4.評価方法2
上記の試験後、被覆材の外観を目視にて確認し、変色(脱色)の有無や、表面の膨れ・剥がれの有無を確認した。評価結果については、下記表1に示す。
<比較例1>
表面処理剤を塗布しなかったこと以外は、実施例と同一条件で供試体を作製し、試験及び評価を行なった。評価結果については、下記表1に示す。
<比較例2>
上記(ホ)の表面処理剤を用いたこと以外は、実施例と同一条件で供試体を作製し、試験及び評価を行なった。評価結果については、下記表1に示す。
Figure 2011236485
<まとめ>
次亜塩素酸の検出結果において、実施例1〜4と比較例1とを比較すると、表面処理剤を塗布した各実施例の方は、6ヶ月経過後においても次亜塩素酸の発生が確認されなかった。これに対し、比較例1では、6ヶ月経過後に次亜塩素酸の発生が確認された。
また、外観の評価においては、各実施例では、外観に異常は見られなかったが、比較例1では、6ヶ月経過後に被覆材の変色が確認された。このような変色は、次亜塩素酸の発生によって被覆材が劣化した際に生じるものである。
以上の結果から、本発明の如き表面処理剤を塗布することによって、模擬海水が供試体の内部へ侵入するのが防止され、長期間に亘って次亜塩素酸の発生を防止することができると認められる。
次に、実施例1〜4と比較例2とを比較すると、各実施例も比較例2も次亜塩素酸の発生は確認されず、何れの場合も模擬海水が供試体の内部へ侵入するのが防止されたことが認められる。しかし、外観の評価では、比較例2のみに膨れや剥がれが確認された。このような膨れや剥がれは、陽極材と鋼材との間に電流を流すことによって発生した酸素ガスが供試体の表面から放散されずに供試体の表面に溜まってしまったために生じるものである。
以上の結果から、本発明の如き表面処理剤を塗布することによって、供試体の内部で発生したガス成分を外部へ放散させることができ、被覆材の外観に異常が生じるのを防止することができると認められる。
つまり、上記のような撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布することによって、塩素成分を含有する水分が陽極材の周辺に侵入するのを防止することができ、次亜塩素酸の発生を防止することができると共に、発生したガス成分を外部へ放散させることができ、コンクリート構造物の外観に異常が生じるのを防止することできると認められる。

Claims (5)

  1. コンクリート構造物中に埋設された鋼材と陽極材との間に電流を流して鋼材の腐食を防止する電気防食工法であって、
    コンクリート構造物の表面に、撥水性及び通気性を有する表面処理剤を塗布することを特徴とする電気防食工法。
  2. 前記コンクリート構造物が、鋼材を埋設したコンクリート本体に陽極材が被覆材で覆われた状態で設置されてなるものであって、
    コンクリート構造物の表面に露出した被覆材の表面と、該被覆材の表面の周囲に位置するコンクリート本体の表面とに、前記表面処理剤を塗布することを特徴とする請求項1に記載の電気防食工法。
  3. 前記表面処理剤が、シラン系、シロキサン系、シリコネート系、ケイ酸塩系、コロイダルシリカ系の何れか1つ又は複数からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気防食工法。
  4. 前記表面処理剤の塗布量が、10〜1000g/m2であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電気防食工法。
  5. 前記被覆材が、電気抵抗値が100kΩ・cm以下のセメントモルタルであることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の電気防食工法。
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