JP2011080825A - コンクリート表面含浸材の透過抵抗評価試験方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄筋コンクリート等の被検査物の表面に塗布される表面含浸材に対する塩化物イオンや水等の各種透過物に対する透過抵抗を評価する試験方法である。鉄筋を一方端子とし、表面含浸材が塗布された被検査物の表面に他方端子を接合して、両端子間に通電して電気抵抗値を測定する。当該電気抵抗値が大きいときは上記透過抵抗が大きく、当該抵抗値が小さいときは上記透過抵抗が小さいものと評価する。被検査物が既設の鉄筋コンクリート構造物である場合、当該構造物の鉄筋から予めリード線を配設し、上記表面含浸材の塗布面に他方の端子を接合して電気抵抗値を測定する。選択図は電気抵抗値と塩分浸透深さの関係を示すグラフである。
【選択図】図8
Description
同様に、コンクリートに二酸化炭素が浸透すると、鉄筋周囲の不動態被膜が破壊され、腐食が発生する。
更に、コンクリートに水が浸透すると、鋼材腐食やアルカリ骨材反応などを誘発する可能性がある。
したがって、コンクリートの劣化を誘発する物質の浸透を抑制するため、各種の表面含浸材が使用されている。
また、中性化深さ試験としては、「JIS A1153」のコンクリートの促進中性化試験方法が知られている。
更に透水性試験としては、「JIS A6909B」の建築用仕上塗材に記載がある。
図12は、「遮塩型マクロセル腐食対策工法」の開発研究に用いた電気抵抗試験方法を示す説明図である。
しかしながら、例えば図11に示す通り、塩化物イオンが塗膜試験片に塗布された表面含浸材を通過するには長時間を要する。一方、「遮蔽型マクロセル腐食対策工法」の開発研究の際に、図12に示すような電気化学的方法を用いて、遮蔽材50の性能を短時間(約1ヶ月間)で評価している。
一方、「遮蔽型マクロセル腐食対策工法」の開発研究の際に使用した図12に示す電気化学的方法は、実構造物に対しても適用が可能であり、現場での施工後におけるモニタリングも可能である。
すなわち、表面含浸材が塗布されたコンクリートやモルタルの電気抵抗値を測定し、表面含浸材の導電性を算出する。またこの値を、上記の従来の基準などにより測定された「表面含浸材の遮塩性」「表面含浸材の中性化抑制効果」「表面含浸材の遮水性」の測定結果と比較する。
更に、これらの結果を踏まえて、コンクリート用表面含浸材の導電性と物質透過性の関係を整理し、短時間で表面含浸材の物質透過性を評価する方法を構築することが本発明の課題である。
この試験方法は、所定の供試体を用いて検査する場合に限られず、既存の建築物にも容易に適用できる試験方法となり、極めて短時間に表面含浸材の評価試験を行うことができるものとなる。
上記第1の発明においては、表面含浸材の経時的な評価試験ばかりでなく、特定の時点における透過抵抗性の評価試験を行うことができるのであるが、この第2の発明により実験室内での経時的な評価試験が可能となる。
そして、本発明においては後に説明する試験結果から表面含浸材が塗布された後4週間目以降での電気抵抗値がほぼ一定の値を示し、その塗布後4週間以降の抵抗値が透過抵抗性を評価できる数値と判断できたために、その塗布後4週間以降の電気抵抗値を有意数値と判断し、これを請求項2で特定したものである。
(1) モルタルによる電気抵抗試験
図1は、モルタルによる電気抵抗試験において使用した供試体の説明図である。
この図に示した通り、モルタル供試体10は、一方の電極となる鉄筋11を埋設したモルタル(W/C=50%)を打設した後、その一方の端面12(図中右面)に表面含浸材を塗布したものである。
その後、1週間は乾燥気中(20±2℃、60±5%)に暴露し、その後11週間は湿潤気中(20±2℃、90±5%)で暴露する。
この期間中、暴露1週目、4週目、8週目及び12週目に、対極板15を表面含浸材の塗布面である端面12に設置し、供試体10内部に埋設された鉄筋(電極)11との間の電気抵抗値を、抵抗計を用いて測定する。
また、表面含浸材(AからW)としては、各種のものを使用したが、シラン系のものとして12種、ケイ酸塩系のものとして7種、併用系のものとして3種、その他の1種と、合計23種類の表面含浸材を試験対象とした。
勿論、この試験対象である供試体として、表面含浸材を塗布していないブランク供試体をも含むことは言うまでもない。
このグラフから見て取れる通り、表面含浸材が塗布されていないブランク供試体の電気抵抗値は、第1週目から第12週目まで、ほぼ横這いの値で10kΩから30kΩの間であり、第1週目から第4週目までに渡り少し抵抗値が上昇するものの、その後は徐々に低下している。
但し、この横這いの値に関しては、ブランク供試体と比較すれば、その殆どが電気抵抗値として高い値を示している。
即ち、試験に供された表面含浸材の殆どのものは、表面含浸材が塗布されていないブランク供試体よりも、より高い電気抵抗値を提示している。
また、図中、シラン系表面含浸材は、上から順番に「A,B,D,P,Q,R,S,T,U,V,K,W」(12種)で示し、ケイ酸塩系表面含浸材は、「E,H,I,J,L,M,O」(7種)で示し、併用系表面含浸材は、「F,G,C」(3種)で示し、その他1種として「N」で示している。
図2が、コンクリートによる電気抵抗試験において使用した供試体の説明図である。
ここでも、前記モルタル供試体と同様に試験を行う。
この図に示した通り、コンクリート供試体20は、一方の電極となる鉄筋21を埋設したコンクリート(W/C=57.5%)を打設した後、その一側面22(図中右面)に表面含浸材を塗布したものである。
このコンクリート供試体が作製され、表面含浸材が塗布された後、1週間は乾燥気中に暴露し、その後11週間は湿潤気中で暴露する。この環境条件は、前記モルタルの場合と同様である。
その間、暴露1週目、4週目、8週目及び12週目に、対極板25を表面含浸材の塗布面である一側面22に設置し、コンクリート供試体20の内部に埋設された鉄筋(電極)21との間の電気抵抗値を、抵抗計を用いて測定する。
また上記モルタル供試体10の場合と同様に、表面含浸材としては、既にその透過抵抗性が認められている、シラン系のもの12種、ケイ酸塩系のもの7種、併用系のもの3種、その他の1種と、合計23種類(AからWまで)の表面含浸材を使用した。
このグラフから見て取れる通り、表面含浸材が塗布されていないブランク供試体の電気抵抗値は、第1週目から第12週目まで、ほぼ横這いの値で約10kΩ前後であり、第1週目から第8週目までに渡りほんの僅かずつ抵抗値が上昇するものの、その後は徐々に低下している。
但し、この横這いの値に関しては、ブランク供試体と比較すれば、その殆どが電気抵抗値として高い値を示している。
即ち、試験に供された表面含浸材の殆どのものは、表面含浸材が塗布されていないブランク供試体よりも、より高い電気抵抗値を提示している。
即ち、モルタル供試体の試験結果の電気抵抗値の値の高低幅がコンクリート供試体のそれよりも大きいということである。
その他の点に関しては、ほぼ同様の試験結果を提示している。
それ故、表面含浸材が塗布されたモルタル供試体及びコンクリート供試体の電気抵抗値は、表面含浸材が塗布されていない供試体と比較して、その電気抵抗値が高くなる、と結論付けることができるのである。
図5は、上記モルタル供試体10とコンクリート供試体20の暴露4週目における供試体毎の比較を行ったグラフである。
図6は、上記コンクリート供試体20に関して、暴露第8週目における供試体毎の比較を行ったグラフである。
図7は、上記コンクリート供試体20に関して、暴露12週目における供試体毎の比較を行ったグラフである。
ぞれぞれの図においては、それぞれの試験で供試体を2個ずつ使用しているために、これらを「供試体1」「供試体2」と表示している。
JSCE-K524「表面処理材の塩化物イオンの浸透深さ試験方法(案)」に準拠して,表面含浸材の遮塩性を評価した。
すなわち,前述(2)に示す電気抵抗試験と同様に作製された10×10×40cmの直方体のコンクリート供試体を,10×40cmの側面の2面を除いてエポキシ樹脂で被覆し,開放された2面の内1面に対して,表面含浸材を塗布した。
その後,1週間は乾燥気中で暴露した.さらに,12週間に亘り濃度3%のNaCl水溶液へ浸漬した後,供試体を割裂し,0.1N硝酸銀水溶液噴霧により塩分浸透深さを測定した。
JIS A 1153「コンクリートの促進中性化試験方法」に準拠して,表面含浸材の中性化抑制効果を評価した。
すなわち,上記(3)に示す塩分浸透深さ試験と同様の供試体を用い,CO2濃度5%,20±2℃,60±5%の促進中性化環境下へ12週間に亘り暴露し,その後フェノールフタレインアルコール溶液により中性化深さを測定した。
JSCE-K-571「表面含浸材の試験方法(案)」に準拠して,表面含浸材の遮水性を評価した。
すなわち,上記した電気抵抗試験と同様に作製された10×10×10cmのモルタル供試体を用い,表面含浸材を塗布した。
それから1週間は乾燥気中(20±2℃、60±5%)で暴露した後,透水試験に供した.
図8は、第8週目におけるコンクリート供試体の電気抵抗と塩分浸透深さの関係を示すグラフである。図中のアルファベットは、表面処理材の種類を示しており、図2及び図4の場合と同じである。
これによれば、一部例外もあるが、ブランク供試体と比較して、電気抵抗値が大きいほど、塩分浸透深さは小さく、表面処理材の塩分浸透抵抗性は高くなることが確認された。
これによれば、一部例外もあるが、ブランク供試体と比較して、電気抵抗値が大きいほど、透水量は少なく、表面含浸材の透水抵抗性は高くなると認められるが、上記遮塩性との関係ほど明瞭には現れていない。
これによれば、電気抵抗が大きいほど、表面含浸材の中性化抵抗性は高くなる傾向は確認された。
しかしながら、個々に比較すると、逆転しているデータもある。これは、二酸化炭素ガスの透気性は電導性(電気の伝わり易さ)と異なるためと考えられる。
より厳密には、同一条件で、例えば同一濃度のNacl水溶液の液中で両方の測定を行う事によりより明確な関係が見出せる可能性があるが、本発明においては、その他に透水性試験や中性化試験との関係をも見出すために、表面含浸材が塗布されたコンクリート等の供試体を用いて、上記(1)及び(2)のような経時的電気抵抗値測定を行い、その結果と従来の遮塩性試験、透水性試験及び中性化試験との試験結果との比較を行い、これらと電気抵抗値との関係性を見出すことをその目的としたものである。
これにより、新規な表面含浸材が提案された際には、上記(1)や(2)の試験を行い、約4週間程度で、その物質透過抵抗性を評価することができることとなる。これを本願の特許請求の範囲の請求項2において記載している。
他方、上記の試験結果を利用して、既設の建築物に塗布されている表面含浸材に対する物質透過抵抗性の評価或いはモニタリングをも容易に行うことができることとなるのである。これを本願の特許請求の範囲の請求項3において記載している。
但し上述した通り、二酸化炭素ガスの透気性(中性化に対する抵抗性)に関しては、必ずしも上記2種の物質の透過抵抗との関係と異なり、明確な関係を見出すことが出来なかった。
11 鉄筋
12 端面
20 コンクリート供試体
21 鉄筋
22 側面
A〜W 表面含浸材
Claims (3)
- 内部に鉄筋が配設された鉄筋コンクリート等の被検査物の表面に塗布される表面含浸材に対する塩化物イオンや水等の各種透過物に対する透過抵抗を評価する試験方法であって、
鉄筋を一方端子とし、表面含浸材が塗布された被検査物の表面に他方端子としての対極板を接合して、両端子間に通電することによって両端子間の電気抵抗値を測定し、
当該電気抵抗値が大きいときには上記透過抵抗が大きく、当該抵抗値が小さいときには上記透過抵抗が小さいものと評価するコンクリート表面含浸材の透過抵抗評価試験方法。 - 被検査物がその内部に鉄筋を配設した所定サイズの6面体又は略円柱形状を有し、その被検査物の1面に表面含浸材を塗布し、その後約1週間程乾燥気中で乾燥させ、その後12週間程湿潤気中で暴露する期間中の適宜時期に複数回電気抵抗値を測定し、塗布後約4週間以降の電気抵抗値を有意数値として評価することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート表面含浸材の透過抵抗評価試験方法。
- 被検査物が既設の鉄筋コンクリート構造物であって、その表面には建設時に表面含浸材が塗布されたものであり、当該構造物の鉄筋から予めリード線を配設し、上記表面含浸材の塗布面に他方の端子としての対極板を接合して電気抵抗値を測定することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート表面含浸材の透過抵抗評価試験方法。
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