JP2019210699A - コンクリート構造物の補修部材及び補修方法 - Google Patents

コンクリート構造物の補修部材及び補修方法 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な補修強度があり、コンクリート構造物への透水を抑制し、かつコンクリート構造物からの水蒸気透過性を維持することができるコンクリート構造物の補修部材及び補修方法を提供することを目的とする。
【解決手段】珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む組成物が含浸された積層基材及び前記積層基材上に積層された撥水剤層を備え、前記積層基材は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、透液性のシート状部材とが積層された基材であり、前記撥水剤層は、水への浸漬24hr後の吸水率が75%以下、かつ水蒸気透過率が20%以上であるコンクリート構造物の補修部材;ならびにこの補修部材を準備する工程と、該補修部材をコンクリート構造物に貼り付ける工程と、前記補修部材を硬化させる工程と、前記補修部材の表面に、撥水剤を塗布又は含浸して撥水剤層を形成する工程とを含むコンクリート構造物の補修方法。
【選択図】図1

Description

本開示は、コンクリート構造物の補修部材及び補修方法に関する。
コンクリート構造物は、高強度で施工性及び耐久性に優れ、安価であるというメリットがあるため、日本では高度成長期を中心に、多くのコンクリート建造物が作られてきた。その一方、コンクリート建造物は、長年の使用で大気中の二酸化炭素が水分とともに浸透することによって中性化が引き起こされたり、海風や凍結防止剤飛沫に含まれる塩化物イオンが浸透することによって腐食膨張したりして、ヒビ割れが生じることもある。このようなヒビ割れを起点として又はコンクリートに染み込んだ水分の凍結等が原因となり、コンクリート片が剥落することがある。
このようなコンクリートの剥落を防止する試みとして、特許文献1から3等には、メッシュシートと不織布を組み合わせた剥落防止用積層基材に硬化性組成物を含浸させて補修用材料とすること、特許文献4には、無機硬化性組成物を用いることなどが提案されている。
特開2012−26238号公報 特開2013−019146号公報 特開2004−149929号公報 特開2017−186825号公報
しかし、硬化性組成物の粘度によっては、基材への含浸に時間がかかったり、コンクリート構造物の垂直面に基材を貼りつけた場合に、硬化組成物の液だれが生じることがある。また、基材の種類によっては、十分な補修強度が得られないことがある。また、メッシュシートを用いる場合には、その裏側に十分な硬化組成物が供給されず、接着強度が十分に発現しにくい。さらに、吸水性を有する硬化性組成物を用いる場合には、被補修コンクリートへの水分供給を遮断することができず、一方、市販の防水塗料を被補修コンクリートに用いた場合には、コンクリート内部の水分の蒸発により塗料が膨張裂開して防水性が損なわれるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十分な補修強度があり、コンクリート構造物への透水を抑制し、かつコンクリート構造物からの水蒸気透過性を維持することができるコンクリート構造物の補修部材及び補修方法を提供することを目的とする。
本願は以下の発明を含む。
(1)珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物、
積層基材及び
前記積層基材上に積層又は硬化剤組成物の硬化物に含浸された撥水剤層を備え、
前記積層基材は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、透液性のシート状部材とが積層された基材であり、
前記撥水剤層は、水への浸漬24時間後の吸水率が75%以下、かつ水蒸気透過率が20%以上であるコンクリート構造物の補修部材。
(2)前記撥水剤は、シラン、シロキサン及びシリコネートのうち少なくとも1成分を含有する上記記載の補修部材。
(3)コンクリート構造物の補修方法であって、
珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む組成物を積層基材に塗布又は含浸させて補修部材を準備する工程と、
該補修部材をコンクリート構造物に貼り付ける工程と、
前記補修部材を硬化させる工程と、
前記補修部材の表面に撥水剤を塗布又は硬化させた前記補修部材に撥水剤を含浸して撥水剤層を形成する工程とを含むコンクリート構造物の補修方法。
(4)前記撥水剤は、シラン、シロキサン及びシリコネートのうち少なくとも1成分を含有する上記に記載の補修方法。
本発明のコンクリート構造物の補修部材及び補修方法は、十分な補修強度があり、コンクリート構造物への透水を抑制し、かつコンクリート構造物からの水蒸気透過性を維持することができる。
本発明のコンクリート構造物の補修部材(二層構造+撥水層)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修部材(三層構造+撥水層)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。 本発明のコンクリート構造物の補修部材(撥水剤が含浸された撥水層を含む二層構造)を用いたコンクリート構造物の補修方法の一例を示す模式的な断面図である。
<補修部材>
本願の補修部材は、硬化性組成物と、積層基材と、撥水剤層とを備えて構成される。硬化性組成物と積層基材とは、別個に存在させてもよいが、補修の際に、後述するように硬化性組成物を積層基材に含浸させた状態とする。
このような補修部材は、コンクリート構造物の本来の耐火性能を維持して接着強度を確保することができ、透湿性を確保しながら防水性を高めることにより、補修性能を長期にわたり維持することができる。
(硬化性組成物)
硬化性組成物は、積層基材に塗布及び/又は含浸させるものである。硬化性組成物を積層基材に塗布及び/又は含浸させた上で、硬化性組成物を硬化させることにより、コンクリート構造物と補修部材とを接着することができ、補修部材を接着することにより、コンクリート構造物の劣化部分からのコンクリート片の剥落を防止することができる。
硬化性組成物は、25℃での粘度が400mPa・s〜3000mPa・sであるものが好ましい。このような粘度とすることにより、積層基材への含浸性を確保することができる。また、コンクリート構造物に貼着した際の硬化性組成物の液だれを防止することができる。
硬化性組成物は、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂又はこれらの組み合わせ等の有機系材料、セメントスラリー、石膏、ガラス等の無機系材料等種々の材料を用いることができる。なかでも無機系材料を用いることにより、コンクリート構造物の耐火性能を確保することができる。
無機系硬化性組成物としては、特に、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物の水溶液と、ポゾラン活性物質とを含む組成物(以下、「ジオポリマー」という場合がある)が好ましい。
特に、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムは、コンクリート構造物の表面に適用されたときに、コンクリート中の水酸化カルシウムとC−S−Hゲルを生成することができるため、補修部材とコンクリート構造物の接着強度をより強固にすることができる。
ジオポリマーは、珪酸塩水溶液からなる液体成分とポゾラン活性物質とからなる固体成分の比重差が、セメントスラリーに含まれる水とセメントとの比重差に比べて小さいため、硬化性組成物における成分の分離を抑制することができる。
硬化性組成物においてジオポリマーを用いる場合、ポゾラン活性物質は、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるものが好ましく、0.7mS/cm以上であるものがより好ましく、1.2mS/cm以上であることがさらに好ましい。このような電気伝導率差とすることにより、珪酸塩水溶液との反応性を十分に確保でき、補修部材とコンクリート構造物との接着強度を高めることができる。ここでの電気伝導率差は、アルカリ物質により誘発されるポゾラン活性物質の反応性に関連する指標であり、後述する評価方法により得られる飽和水酸化カルシウム水溶液のポゾラン活性物質投入前後の電気伝導率の差を意味する。
ポゾラン活性物質は、水と酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は水酸化アルミニウム等とが反応して硬化する物質である。例えば、シリカダスト、珪藻土、タルク、アエロジル、ホワイトカーボン、カオリン、メタカオリン、活性白土、酸性白土等が挙げられる。なかでも、メタカオリンが好ましい。ポゾラン活性物質は、通常、ポゾラン活性物質中のシリカの含有率が、硬化物の乾燥固形分に対し、SiO2換算した場合、40重量%以上であるものが好ましい。また、ポゾラン活性物質に由来するアルミニウムの含有率は、硬化物の乾燥固形分に対し、Al23に換算して、20重量%〜40重量%であることが好ましい。
ポゾラン活性物質は、粉体をそのまま用いてもよいが、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーの作用等の方法を用いてもよい。これらの方法は併用してもよい。
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。その溶射技術は、好ましくは材料粉末が2000℃〜16000℃の温度で溶融され、30m/秒〜800m/秒の速度で噴霧されるものであり、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が可能である。得られた粉体の比表面積は、0.1m2/g〜100m2/gが好ましい。
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。つまり、粉砕の方法としてはジェットミル、ロールミル、ボールミル等による方法が挙げられる。また、分級の方法としては篩、比重、風力、湿式沈降等の方法が挙げられる。
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等が使用され、作用させる機械的エネルギーは0.5kwh/kg〜30kwh/kgが好ましい。このような機械的エネルギーの範囲とすることにより、粉体を十分に活性化することができるとともに、装置への負荷も抑制することができる。
例えば、ジオポリマーにおける珪酸塩水溶液に由来するナトリウム、カリウム、リチウム又はこれらの混合物は、その合計含有率が、硬化性組成物から得られる硬化物の乾燥固形分に対し、MO(Mはナトリウム、カリウム及びリチウム)に換算して、5重量%〜30重量%であることが好ましい。
また、珪酸塩水溶液を用いる場合、水溶液の下記数式で表される数値nが0.5〜1.1、さらに好ましくは0.7〜1.0であることが望ましい。
n=S×M
(S:水溶液に含まれるケイ素のモル数、M:水溶液に含まれるアルカリ金属のモル数)
(その他の成分)
硬化性組成物は、上記成分に加えて、特開2017−186825号、特開2017−226955号等に開示された成分及び当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。例えば、フィラー、改質剤、分散剤、硬化時間調整剤、顔料、酸化防止剤、ポリマーエマルション等が挙げられる。これらは特に限定されず、公知のものを利用することができる。フィラーとしては、一般に充填剤として使用されるもののいずれであってもよい。例えば、カーボン、セルロース、鉱物質微粉末、合成された無機質結晶粉末などが挙げられる。改質剤としては珪酸塩水溶液と反応することができる各種金属塩が挙げられ、例えば軽焼酸化マグネシウム、亜鉛華等が挙げられる。ポリマーエマルションとしては、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの添加剤は、硬化性組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の含有量で用いることができる。特に、ポリマーエマルションは、硬化性組成物の乾燥固形分の全重量に対して、ポリマーの固形分重量が3重量%〜10重量%となるように配合されていることが好ましい。これにより、硬化性組成物の流動性を向上し、硬化物の接着強度を向上し、硬化物の乾燥収縮を抑制することができる。
(積層基材)
積層基材は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、透液性のシート状部材とが積層して構成される。例えば、第一層を、マルチフィラメントが多軸メッシュ状に組み合わせられたシート状部材、第二層を、透液性のシート状部材とする場合、積層基材4は、図1に示すように、コンクリート構造物側から第一層1及び第二層2がこの順に積層されるようにして構成されることが好ましい。また、積層基材14が3層以上の積層構造の場合、図2に示すように、コンクリート構造物側から第三層3、第一層1及び第二層2がこの順に積層された構成を有していてもよい。
積層基材は、第一層及び第二層がそれぞれ1層でもよいし、2層以上でもよい。また、いずれか一方又は双方が2層以上積層される場合は、第一層同士及び/又は第二層同士が積層されてもよいが、第一層及び第二層が交互に積層されることが好ましい。また、透液性のシート状部材は二層構造であってもよいし、一層のみが透液性のものであってもよいし、二層以上が透液性のものであってよいし、透液性のもののみ積層したものであってもよい。
(マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材)
図1〜3に示すように、第一層1は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であることが好ましい。マルチフィラメントは、長繊維を利用して構成されたものが好ましく、引張強度150N以上のものが好ましい。マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材の式(1)で表される値Xは2.0以上であることが好ましく、2.5以上、2.8以上又は3.0以上であることがより好ましい。
X=A×B (1)
ここで、Aは上記シート状部材の1方向の引張強度kN/50mmを表し、Bは上記シート状部材の軸数を表す。Aは、マルチフィラメントの50mm当たりの本数を変えることにより任意の値をとることができる。Bは、2〜4の範囲を有するものが挙げられる。なかでも、Aは、0.75kN以上であることが好ましく、Bは2〜3であるものが好ましい。
このような第一層1により、コンクリート構造物から落下するコンクリート片を受け止める耐力層としての機能を満たすことができる。
第一層1の材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ビニロンメッシュシート又はガラスメッシュシートからなることが好ましい。ガラス繊維は、ガラスヤーン又はロービングを用いることが好ましい。ガラスヤーンは、ガラス繊維に撚りをかけて合撚糸としたものであり、ロービングは、ガラス繊維を集束したものである。多軸メッシュの織り方は、平織り、綾織り、絡み織り、組布等が挙げられる。多軸メッシュの織り方の方向は、直交する二軸又はそれ以上の多軸織物であってもよい。
第一層の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1mm以下であることがより好ましい。
第一層は、50g/mm2以上の目付量であることが好ましく、60g/mm2以上であることがより好ましく、75g/mm2以上であることがさらに好ましい。
このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修部材の十分な耐力を確保することができる。
第一層は、5mm以上25mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する第二層とコンクリート構造物との又は第二層と第三層との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、第一層の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
第一層は、5mm以上25mm以下の目開きで、50g/mm2以上の目付量の二軸織物であることがより好ましい。また、二軸織物と同等の開口率の多軸織物であってもよい。特に、第一層は、引張強度150N以上のマルチフィラメントを、目開き5mm〜25mmで組み合わせた二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。
(透液性のシート状部材)
図1〜3に示すように、第二層2は、透液性のシート状部材であることが好ましい。第二層は、引裂強度は2.0N以上であることが好ましい。引裂強度を2.0N以上とすることにより、第二層は、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を満たすことができる。
第二層2の形状としては、織布、不織布等が挙げられる。
第二層2の材質としてはポリエステル、ポリオレフィン、ビニロン、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン不織布又はガラス不織布で構成されることが好ましく、特に、長繊維不織布であることがより好ましい。ガラス不織布は、硬化性組成物との相溶性に優れるため、硬化性組成物が浸透しやすく、硬化性組成物を硬化させたときに補修材料をコンクリート構造物に強固に固着させることができる。好適なガラス不織布として、チョップドストランドマット、ガラスペーパー、フェルト等が挙げられる。
ポリプロピレン不織布を用いる場合は、硬化性組成物との相溶性を高めるため、繊維に親水化処理を行うこともできる。親水化処理は、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。
第二層の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。このような厚みの範囲とすることにより、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高める補強層としての機能を満たすとともに、硬化性組成物の基材への含浸量を抑えることができ、経済的にも有利である。
第二層は、30g/mm2以上の目付量であることが好ましく、50g/mm2以上であることがより好ましく、60g/mm2以上であることがさらに好ましい。このような目付量の範囲とすることにより、引張強度を向上させて、コンクリート片剥落時に破断を生じさせることなく、補修材料の十分な耐力を確保することができる。
第二層は、3mm以上30mm以下の目開きの二軸織物であることが好ましい。目開きをこの範囲とすることにより、後述する第三層との接着力を向上させ、補修材料の十分な強度を確保することができる。また、第一層の単位面積当たりの長繊維本数を適度な数として、第一層が第二層を破り出てくる際の抵抗力を高め、補修材料の十分な強度を確保することができる。
第二層は、引張強度10N以上のマルチフィラメントであることが好ましく、二軸又は三軸メッシュのシート状部材であることがより好ましい。また、引裂強度2.0N以上のシート状部材であることが好ましい。
積層基材が、第一層と第二層との二層構造又はそれ以上の積層構造を有する場合、第一層はマルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、第二層が引裂強度2.0N以上の透液性シート状部材であることが好ましく、第一層が引張強度150N以上のマルチフィラメントを目開き5mm〜25mmで多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材であり、第二層が引裂強度2.0N以上の透液性のシート状部材であることが好ましい。
(第三層等)
積層基材が、図2に示したように、三層以上の構造の場合、第一層がコンクリート構造物側、第二層がその外側に配置されるのであれば、第三層目以上の層が、どこに何層配置されていてもよい。このような積層構造により、補修材料の強度とコンクリート構造物への密着性を両立することができる。これらの第三層目以上の層は、上述した第一層及び第二層のなかから選択してもよいし、当該分野で使用されるどのような層であってもよい。使い易さ、経済性等を考慮すると、2層構造、3層構造が好ましい。これらの第三層目以上の層は、上述した第一層及び第二層のなかから選択してもよいし、当該分野で使用されるどのような層であってもよい。
第三層は、気孔率が90%以上かつ透液性のシート状部材であることが好ましい。これにより、硬化性組成物の含浸性を確保することができるため、補修部材5とコンクリート構造物の接着強度を向上させる接着層としての機能を満たすことができる。
第三層4の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがより好ましい。第三層4の厚みがこのような範囲とすることにより、補修部材とコンクリート構造物の接着強度が確保され、硬化性組成物の積層基材への含浸量を抑えることができ経済的に有利である。
(積層一体化)
少なくとも二層のシート状部材を積層して構成される積層基材は、硬化性組成物を含浸することにより一体化してもよいが、予め一体化させておくことが好ましい。一体化させておくことにより、塗布含浸時の各シート部材のズレを防ぐことができる。
一体化の方法は、機械的な繊維交絡、化学的な接着等を利用することができ、例えば、縮絨、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡等が挙げられる。
積層基材の構成にかかわらず、積層基材への硬化性組成物の含浸量は、積層基材の全体にわたって均一に硬化性組成物が保持されていればよく、硬化性組成物の硬化によって積層基材の全体が強固に一体化させることができるように調整することが好ましい。例えば、積層基材:硬化性組成物の質量比は、1:4〜1:12程度であることが好ましく、1:4〜1:10であることがより好ましい。
(撥水剤層)
撥水剤層は、撥水剤が、適当なシート状の部材に含浸されて構成された層であってもよいし、硬化性組成物を塗布及び/又は含浸させて得られる補修部材に撥水剤を塗布することにより得られる層であってもよい。この場合、図1及び図2に示すように、撥水剤層6は、積層基材において、コンクリート構造物とは反対側の表面に配置されていることが好ましい。このような撥水剤層を配置することにより、補修部材の透湿性を確保しながら、防水性を高めることができる。その結果、補修部材自体が、コンクリート構造物の劣化部分からのコンクリート片の剥落を長期にわたり防止することができる。なお、撥水剤層6がコンクリート構造物とは反対側の表面に配置される場合においても、撥水剤の一部は積層基材に含浸し、硬化性組成物とともに一体化している。
また、撥水剤層の別の形態としては、図3に示すように、積層基材に硬化性組成物を塗布及び/又は含浸させて得られる補修部材に撥水剤を含浸することにより得られる層、つまり、撥水剤の少なくとも一部が含浸された撥水層を含む補修部材24の形態であることが好ましい。ただし、この含浸は、撥水剤の略全部が含浸されることもあり得る。
撥水剤は、公知のもののいずれをも利用することができる。例えば、シラン、シロキサン、シリコネートなどの構造を含むものが挙げられる。
シラン系撥水剤は有機ケイ素モノマー化合物であり、R1n−Si−(O−R2)4-nの一般式で表すことができる。ここでR1は炭素数1〜10のアルキル基、R2は炭素数1〜2のアルキル基又は水素を示し、nは1又は2である。具体的には、信越化学株式会社製 商品名KBM−3103C等が挙げられる。
シロキサン系撥水剤はケイ素と酸素とを骨格とするSi−O−Si結合を有し、前記有機ケイ素モノマー化合物の加水分解・縮合により得られる構造を含む。ここで、加水分解・縮合の重合度は1〜数十程度が挙げられ、20以下が好ましい。
シリコネート系撥水剤は有機ケイ酸塩モノマー化合物であり、R1n−Si−(O−M)4-nの一般式で表すことができる。ここでR1は炭素数1〜10のアルキル基、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。具体的には、ダウコーニング社製 商品名OFS−0772等が挙げられる。
撥水剤は、硬化性組成物の意図する作用を損なわない範囲において、任意の量で用いることができる。例えば、積層基材の大きさによって適宜設定することができ、塗布量を、積層基材の面積に対して、撥水剤の有効成分5g/m2〜120g/m2とすることが挙げられ、15g/m2〜75g/m2が好ましい。また、別の観点から、撥水剤層自体を水へ浸漬した24時間後の吸水率が75%以下を示すことが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。また、水蒸気透過量率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。さらに、24時間後の吸水率が75%以下かつ水蒸気透過量率が20%以上であることが好ましく、24時間後の吸水率が70%以下であり、かつ水蒸気透過量率が30%以上であることがより好ましく、24時間後の吸水率が60%以下であり、かつ水蒸気透過量率が50%以上であることがさらに好ましい。このような特性を有する撥水剤層を積層基材に積層することにより、上述した効果をより一層発揮させることができる。
<コンクリート構造物の補修方法>
本願のコンクリート構造物の補修方法は、上述したコンクリート構造物の補修部材を用いて行うことができる。つまり、珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む組成物を積層基材に塗布又は含浸させて補修部材を準備する工程と、この補修部材をコンクリート構造物に貼り付ける工程と、補修部材を硬化させる工程と、補修部材の表面に、撥水剤を塗布して撥水剤層を形成する工程とを含む。
このような補修方法によれば、従来のように、接着剤又は結合剤等の硬化性液状組成物の塗装及び乾燥を繰り返す必要がないことから、簡便かつ効率的に作業することができ、作業性に優れる。
(補修部材の準備)
補修部材を準備するために、まず、上述した硬化性組成物を調製する。また、積層基材を構成する材料を準備する。積層基材への硬化性組成物の塗布又は含浸は、積層基材を形成してから硬化性組成物を含浸させてもよいし、硬化性組成物を含浸させてから積層基材を積層して形成してもよいし、積層基材を形成しながら硬化性組成物を含浸させてもよい。また、積層基材を対象のコンクリート構造物に貼り付ける前後のいずれに硬化性組成物を塗布又は含浸させてもよい。
硬化性組成物を積層基材に塗布又は含浸させる方法としては、例えば、(1)ローラーを使って手作業で塗布するハンドレイアップ法、(2)スプレーにより塗布又は含浸させる方法、(3)金型により積層体の厚みを規定した後に、圧入によって硬化性組成物を積層基材に塗布及び含浸させる方法、(4)減圧により積層体の厚みを規定した後、減圧注入によって硬化性組成物を積層基材に塗布及び浸させる方法、(5)積層基材を硬化性組成物に浸漬し、積層基材に硬化性組成物を連続的に含浸させた後に、ロールによって積層基材の厚みを規定する方法、(6)ロール転写により連続的に塗布及び含浸を行う方法等が挙げられる。これらは組み合わせて利用してもよい。
含浸時の作業性を上げるため、また含浸シートへのゴミの付着、含浸シート同士の付着を防止するため、積層体の表裏面を樹脂製の保護フィルムでカバーしてもよい。この保護フィルムはコンクリート構造物に貼り付ける際に除去すればよい。
(貼付工程)
得られた補修部材を、コンクリート構造物に貼り付ける。この際、補修部材とコンクリート構造物の表面の間に入り込んだ気泡を取り除くことは、特に、補修部材とコンクリート構造物の表面との密着性を高めるために重要である。気泡除去の方法としては、ロールや金へらを使って気泡を補修部材の外側に追い出す方法が好適である。
(硬化工程)
補修部材に含浸された硬化性組成物の硬化は、コンクリート構造物に補修部材を密着させた状態で設置することによって行う。コンクリート構造物の表面に、硬化性組成物を含浸させる時間を確保するという観点から、硬化性組成物の硬化時間は30分間〜300分間であることが好ましく、45分間〜240分間であることがより好ましい。硬化時間は、有機系材料の場合は硬化触媒の量や種類によって、無機系材料の場合は含まれる水分量によって、特にジオポリマーの場合は珪酸塩水溶液に由来するナトリウム、カリウム、リチウム又はこれらの混合物の含有率や珪酸塩水溶液に由来するSiO2とM2O(Mはナトリウム、カリウム及びリチウム)の比率(SiO2/M2O)、そしてポゾラン活性物質の電気伝導率差、アルミニウムの含有率等によって調整することができる。硬化性組成物の硬化が完了すると、コンクリート構造物に補修部材が固着されて、コンクリート構造物の補修を完了させることができる。
(撥水剤層の形成)
撥水剤層は、コンクリート構造物に、硬化性組成物が含浸された積層基材を密着させた状態で、積層基材に塗工することによって形成することができる。なかでも、積層基材に硬化性組成物が含浸され、硬化性組成物の硬化が進行した後に撥水剤を塗工することが好ましい。これによって、撥水剤層6は、図1及び図2に示したように、補修部材の表面に層状に配置することができるか、図3に示したように、補修部材24に撥水剤を含浸させた形態の層として形成することができる。
例えば、硬化性組成物の硬化物又は補修用基材へ含浸性の観点から、硬化性組成物の硬化が進み、表面含水率が8%を下回ってから行うことが好ましい。また別の観点からは、硬化性組成物の作製直後から7日以内に行うことが好ましく、30分〜24時間後に行うことがさらに好ましい。
このように、撥水剤を塗工することにより、硬化性組成物に含まれる水分の蒸散が十分に進み、撥水剤を十分に浸透させることができる。
塗工の方法は、一般的な方法を用いることができ、刷毛、ローラー、スプレーガン等が挙げられる。
撥水剤は有効成分をそのまま用いてもよいが、硬化性組成物全体にわたって均一に行うという観点から溶媒に希釈して用いることが好ましい。溶媒は有効成分によって最適なものから選定され、例えば、水、エタノール、各種石油系溶剤等が挙げられる。希釈された撥水剤の有効成分濃度は、10重量%〜40重量%であることが好ましく、15重量%〜30重量%であることがより好ましい。
希釈された撥水剤の塗布または含浸量は、硬化した硬化性組成物の表面積又は補修部材の表面積に対し、50g/m2〜300g/m2であることが好ましく、100g/m2〜250g/m2であることがより好ましい。
以下、本発明のコンクリート構造物の補修部材及び補修方法を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ビニロンマルチフィラメントからなる三軸メッシュシート(目付量90g/m2、目開き8mm、厚み0.35mm、X=3.0)を、親水化ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付量30g/m2、厚み0.2mm、引裂強度16N)に積層することにより積層基材を作製した。
三軸メッシュシートが「第一層」に相当し、目付量30g/m2のスパンボンド不織布が「第二層」に相当する。
JIS K 1408で規定する3号珪酸ナトリウム水溶液100gと30%水酸化ナトリウム水溶液50g(n=0.7)、ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製 商品名:SR−151)15gを24時間攪拌して珪酸塩水溶液を得た。三菱重工業社製ウルトラファインミル(ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85%、粉砕助剤としてトリエタノールアミン25%、エタノール75%の混合液をメタカオリンの0.6%添加)にて、3.3KW/kgのエネルギーで、3時間処理した焼成カオリン(BASF社製 商品名:SP−33 電気伝導率差1.1mS/cm)130gと10℃の環境条件において混合することにより、硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物の粘度は1000Pa・sであった。
また、硬化物の全重量に対して、硬化物中のNa2O(換算値)の含有率は11.3重量%、Al23(換算値)の含有率は30.9重量%であった。
上記で作製したシート積層体400mm×400mmに、110gの硬化性組成物を23℃の環境下で含浸させ、23℃の環境下で硬化させ、シロキサン系撥水剤(信越化学株式会社製 商品名KBM−3103Cの30%エタノール溶液)11gを均一に塗布することにより、実施例1のコンクリート構造物の補修部材を作製した。
実施例2
実施例1で作製したシート積層体400mm×400mmに、110gの実施例1で作製した硬化性組成物を含浸させ、硬化させ、シリコン塗料系撥水剤(大日精化株式会社製 商品名ダイスコートF600D)11gを均一に塗布することにより、実施例2のコンクリート構造物の補修部材を作製した。上記の作業は全て23℃の環境下で行った。
比較例1
実施例1に対し、シロキサン系撥水剤の塗布を省略した以外、実施例1と同様にしてコンクリート構造物の補修部材を作製した。
比較例2
実施例1に対し、シロキサン系撥水剤ではなく防水塗料レジガードS−9000(大日本塗料(株)製、エポキシ樹脂系ポリマーセメントモルタル)を塗布した以外、実施例1と同様にしてコンクリート構造物の補修部材を作製した。
(粘度)
硬化性組成物の粘度測定は、JIS K 7117に従い、ファンギラブ社製ビスコスタープラスR型を用い、R4ローターにて回転数50/min、23℃の条件下で最初に粘度が安定し始めたタイミングで測定を行った。
(電気伝導率差)
ポゾラン活性物質について『Cement Concrete Research, Vol.19, pp.63−68, 1989』に従い、40±1℃の条件で、Ca(OH)2飽和水溶液200mlの電気伝導率を測定する。続いてメタカオリン5gを投入し、攪拌して2分後の電気伝導率を測定し、投入前の電気伝導率との差を電気伝導率差とした。
(浸漬24時間後の吸水率)
各実施例及び比較例の吸水性能を、JIS A1404「建築用セメント防水剤の試験方法」7.5「吸水試験」を参考として評価した。具体的には、各実施例及び比較例で作製した補修部材を、上述したJISで規定される試験体の40mm×160mmの一面に貼り付け、補修部材貼り付け面に接する側面をアルミテープにより防水処置し、補修部材貼り付け面が水深20mmとなるように水中に半浸漬し、24時間後の吸水量を測定した。その結果を表1に示す。表1中「吸水量」の値は、3回測定した平均値である。各実施例及び比較例の吸水量/比較例1の吸水量を浸漬24時間後吸水率と定義した。つまり、撥水剤層の有無による水への浸漬24時間後の吸水量の割合を吸水率とした。
浸漬24時間後吸水率が75%以下、好ましくは60%以下となる場合、市販の防水塗料と同等の防水性能に達し、雨水浸透に対して十分な防水効果を発揮できる。
(水蒸気透過率)
各実施例及び比較例の水蒸気透過性能を、JIS A1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」7.12「透湿度試験(放湿による試験)」を参考として評価した。具体的には、ろ紙上に各実施例及び比較例で作製した補修部材を貼り付け、JIS規定のアルミカップにエポキシ接着剤により隙間がないようにろ紙を固定し、アルミカップ内部に封入した水の蒸発量に基づき水蒸気透過量を測定した。その結果を表1に示す。表1中「水蒸気透過量」の値は、3回測定した平均値である。各実施例及び比較例の水蒸気透過量/比較例1の水蒸気透過量を水蒸気透過率と定義した。
水蒸気透過率が20%以上、好ましくは50%以上となる場合、市販のコンクリート用透湿性撥水剤と同等の透湿性能に達し、コンクリート構造物の補修部材の積層基材に適用した場合でもコンクリート内部水分の蒸発を妨げない。
各実施例の補修部材の浸漬24時間後吸水率及び水蒸気透過率の評価の結果から、本発明のコンクリートの補修部材は、コンクリート構造物の補修部材の、透湿性を確保しながら防水性を高めることができることが確認された。
本発明の補修部材によれば、コンクリート構造物の寿命を延命することができる。
1 第一層
2 第二層
3 第三層
4、14 補修部材
5 コンクリート構造物
6 撥水剤層
24 撥水剤が含浸された撥水層を含む補修部材

Claims (4)

  1. 珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む硬化性組成物、
    積層基材及び
    前記積層基材上に積層又は硬化剤組成物の硬化物に含浸された撥水剤層を備え、
    前記積層基材は、マルチフィラメントを多軸メッシュ状に組み合わせたシート状部材と、透液性のシート状部材とが積層された基材であり、
    前記撥水剤層は、水への浸漬24時間後の吸水率が75%以下、かつ水蒸気透過率が20%以上であるコンクリート構造物の補修部材。
  2. 前記撥水剤は、シラン、シロキサン及びシリコネートのうち少なくとも1成分を含有する請求項1に記載の補修部材。
  3. コンクリート構造物の補修方法であって、
    珪酸塩水溶液と、電気伝導率差0.4mS/cm以上であるポゾラン活性物質とを含む組成物を積層基材に塗布又は含浸させて補修部材を準備する工程と、
    該補修部材をコンクリート構造物に貼り付ける工程と、
    前記補修部材を硬化させる工程と、
    前記補修部材の表面に撥水剤を塗布又は硬化させた前記補修部材に撥水剤を含浸して撥水剤層を形成する工程とを含むコンクリート構造物の補修方法。
  4. 前記撥水剤は、シラン、シロキサン及びシリコネートのうち少なくとも1成分を含有する請求項3に記載の補修方法。
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