JP2011229295A - 直流モータ保護装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成により、直流モータまたは制御回路に悪影響を及ぼす過電流または過熱の発生を未然に防止し、直流モータまたは制御回路の損傷を確実に防ぐ。
【解決手段】動作設定信号出力回路4から出力される動作設定信号A、Bについて動作設定信号判断回路12により論理演算を行い、動作設定信号A、Bが直流モータ2を正転/逆転駆動状態に設定するものか否かを判断し、動作設定信号A、Bが直流モータ2を正転/逆転駆動状態に設定するものであるときには、タイマ回路13においてタイマをスタートする。その後、何らかの異常により、正転/逆転駆動状態が維持されたまま基準時間が経過した場合には、動作設定信号A、Bの制御回路3への供給を動作制限回路14によりストップし、直流モータ2をフリーラン状態にする。また、直流モータ2がブレーキ状態またはフリーラン状態に設定されたときには、タイマがリセットされる。
【選択図】図1

Description

本発明は、直流モータまたは直流モータを制御する制御回路における過電流または過熱の発生を阻止し、直流モータまたは制御回路を保護する直流モータ保護装置に関する。
直流モータと、直流モータに駆動電流を供給して直流モータの回転駆動を制御するためのフルブリッジ駆動回路等を有する制御回路とを備えた直流モータ装置は一般に知られている。このような直流モータ装置において、フリーラン、正転駆動、逆転駆動、ショートブレーキといった直流モータの動作状態を設定するための動作設定信号を上記制御回路に入力すると、制御回路は、この動作設定信号に従って直流モータを制御する。
直流モータに過負荷が生じた場合、制御回路や配線に異常が生じた場合、動作設定信号の出力に異常が生じた場合等には、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が発生する。この過電流または過熱は直流モータや制御回路の損傷を招来する。このような過電流または過熱から直流モータや制御回路を保護するために、例えば次のような技術が知られている。
すなわち、特許文献1には、直流モータまたは制御回路内で発生した過電流を検出し、直流モータへの駆動電流の供給を停止する技術が記載されている。また、特許文献2には、直流モータまたは制御回路内で発生した過熱を検出し、直流モータへの駆動電流の供給を停止する技術が記載されている。また、特許文献3には、直流モータまたは制御回路内で発生した過電流により溶断するヒューズを設け、ヒューズの溶断により直流モータへの駆動電流の供給を停止する技術が記載されている。
特開平04−285495号公報 実開平05−74141号公報 特開平05−30642号公報
ところが、特許文献1および2に記載の各技術は、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が生じたことを検出した後に、直流モータへの駆動電流を停止する。このため、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が生じてから、この過電流または過熱が検出されるまでの間に、この過電流または過熱により直流モータまたは制御回路が損傷することを防ぐことができない。特に、過電流または過熱を検出する検出手段の検出精度が低い場合や、周囲の温度等の環境により検出感度が低下する場合には、過電流または過熱の検出が遅れ、過電流または過熱による直流モータまたは制御回路の損傷を防ぐことができないことがあり得る。
また、特許文献3に記載の技術は、特許文献1および2に記載の各技術についての上述した問題に加え、過電流によりヒューズが溶断すると、ヒューズを交換しなければ直流モータを駆動させることができないという問題がある。すなわち、特許文献3に記載の技術では、過電流によるヒューズ溶断から復帰するまでに手間と時間がかかる。
一方、本出願の発明者は、直流モータの動作状態を正転駆動状態または逆転駆動状態に設定する動作設定信号が制御回路に連続的に長時間入力され続けるのを防止することで、直流モータの正転駆動状態または逆転駆動状態が長時間連続的に維持されることを防止し、これにより、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が発生することを未然に防ぐアイディアを考え出した。そして、発明者は、以下に述べるように、このアイディアを実際の直流モータ装置に適用して実験を行った。
実験において、発明者が上記アイディアを適用した直流モータ装置は、それぞれハイレベルとローレベルとの間で電圧レベルが切り替わる2つの動作設定信号P1,P2を制御回路に入力することにより、フリーラン、正転駆動、逆転駆動、ショートブレーキといった直流モータの4つの動作状態を設定する構成を有する装置であった。具体的には、直流モータの動作状態をフリーラン状態に設定するときには、動作設定信号P1,P2の電圧レベルをいずれもローレベルにする。また、直流モータの動作状態を正転駆動状態に設定するときには、動作設定信号P1の電圧レベルをローレベルにし、動作設定信号P2の電圧レベルをハイレベルにする。また、直流モータの動作状態を逆転駆動状態に設定するときには、動作設定信号P1の電圧レベルをハイレベルにし、動作設定信号P2の電圧レベルをローレベルにする。また、直流モータの動作状態をブレーキ状態に設定するときには、動作設定信号P1、P2の電圧レベルをいずれもハイレベルにする。
発明者はこのような構成を有する直流モータ装置に上記アイディアを適用するために、2つのタイマ回路W1、W2を用意し、動作設定信号P1がハイレベルになってからの経過時間をタイマ回路W1により測定し、動作設定信号P2がハイレベルになってからの経過時間をタイマ回路W2により測定することとした。さらに、発明者は、動作設定信号P1がハイレベルになってから所定時間Ta経過したときに動作設定信号P1の電圧レベルをローレベルにする信号制御回路X1と、動作設定信号P2がハイレベルになってから所定時間Ta経過したときに動作設定信号P2の電圧レベルをローレベルにする信号制御回路X2を製作した。そして、発明者は、タイマ回路W1、W2および信号制御回路X1、X2を上記直流モータ装置に組み込んだ。以下、タイマ回路W1、W2および信号制御回路X1、X2を組み込んだ上記直流モータ装置を「実験装置」という。
実験装置において、直流モータの動作状態を逆転駆動状態に設定するために動作設定信号P1の電圧レベルをハイレベルにし、動作設定信号P2の電圧レベルをローレベルにすると、動作設定信号P1の電圧レベルがハイレベルになったことを契機にタイマ回路W1がスタートする。そして、動作設定信号P1の電圧レベルがハイレベルになってから所定時間Taが経過したとき、信号制御回路X1により動作設定信号P1の電圧レベルがローレベルとなり、直流モータの動作状態がフリーラン状態に設定される。これにより、直流モータの逆転駆動状態が所定時間Taを超えて連続的に長時間維持されることを防ぎ、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が生じることを未然に防止することができた。
また、実験装置において、直流モータの動作状態を正転駆動状態に設定するために動作設定信号P1の電圧レベルをローレベルにし、動作設定信号P2の電圧レベルをハイレベルにすると、動作設定信号P2の電圧レベルがハイレベルになったことを契機にタイマ回路W2がスタートする。そして、動作設定信号P2の電圧レベルがハイレベルになってから所定時間Taが経過したとき、信号制御回路X2により動作設定信号P2の電圧レベルがローレベルとなり、直流モータの動作状態がフリーラン状態に設定される。これにより、直流モータの正転駆動状態が所定時間Taを超えて連続的に長時間維持されることを防ぎ、直流モータまたは制御回路に過電流または過熱が生じることを未然に防止することができた。
ところが、実験装置において次のような問題が生じた。すなわち、直流モータの動作状態をブレーキ状態に設定するために動作設定信号P1、P2の電圧レベルをいずれもハイレベルにすると、タイマ回路W1,W2の双方がスタートしてしまう。そして、動作設定信号P1、P2の双方の電圧レベルがハイレベルになってから所定時間Taが経過したとき、信号制御回路X1,X2により動作設定信号P1、P2の双方の電圧レベルがローレベルとなり、直流モータの動作状態がフリーラン状態に設定されてしまう。
直流モータのブレーキ状態は、正転駆動状態および逆転駆動状態と異なり、ブレーキ状態が連続的に長時間維持されても過電流または過熱は生じにくい。また、直流モータのブレーキ状態は上記所定時間Taを超えて長時間維持する必要がある。ところが、実験装置では、直流モータのブレーキ状態を、上記所定時間Taを超えて長時間維持することができない。
また、実験装置では、動作設定信号P1の電圧レベルがハイレベルになってからの経過時間Taの測定と、動作設定信号P2の電圧レベルがハイレベルになってからの経過時間Taの測定とを相互に独立した2つのタイマ回路W1、W2を用いてそれぞれ行った。また、動作設定信号P1のレベルの切換と動作設定信号P2のレベルの切換とを相互に独立した2つの信号制御回路X1、X2を用いてそれぞれ行った。このため、タイマ回路W1、W2において双方のタイマが同時にスタートしてから所定時間Taが経過した場合に、タイマ回路W1、W2間または信号制御回路X1、X2間の動作の誤差(例えばスキュー等)により、動作設定信号P1の電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングと、動作設定信号P2の電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングとの間にタイムラグが生じる現象が見られた。この結果、直流モータの動作状態がブレーキ状態からフリーラン状態に切り替わる間に、動作設定信号P1、P2の電圧レベルのいずれか一方がハイレベルで他方がローレベルとなる状態が瞬間的に生じ、直流モータが一瞬、正転または逆転するといった現象が見られた。このように直流モータが一瞬でも予期に反して正転または逆転することは、直流モータの動作精度または動作の安定性を低下させるため、好ましくない。
このように実験の結果、2つの動作設定信号に従って直流モータを制御する直流モータ装置に発明者の上記アイディアを適用することは容易でないことがわかった。また、2つのタイマ回路W1、W2および2つの信号制御回路X1、X2を直流モータ装置に組み込むことにより、直流モータ装置の構成が複雑になり、装置の大型化や製造コストの上昇を招来することも判明した。
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、直流モータまたは制御回路に悪影響を及ぼす過電流または過熱の発生を未然に防止し、直流モータまたは制御回路の損傷を確実に防ぐことができる直流モータ保護装置を提供することにある。
本発明の第2の課題は、2つの動作設定信号に従って直流モータを制御する直流モータ装置において、直流モータまたは制御回路に悪影響を及ぼす過電流または過熱の発生の未然防止を簡単な構成により実現することができる直流モータ保護装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の直流モータ保護装置は、直流モータと、前記直流モータを制御する制御回路と、前記直流モータの動作状態を少なくともフリーラン状態、回転駆動状態およびブレーキ状態のうちのいずれかに選択的に設定するための動作設定信号を前記制御回路に向けて出力する動作設定信号出力回路とを備え、前記動作設定信号出力回路から出力された動作設定信号に従って前記制御回路により前記直流モータを制御する直流モータ装置において、前記直流モータまたは前記制御回路における過電流または過熱の発生を阻止して前記直流モータまたは前記制御回路を保護する直流モータ保護装置であって、前記動作設定信号出力回路から出力された動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号か否かを判断する動作設定信号判断手段と、前記動作設定信号判断手段の判断結果により、前記動作設定信号出力回路から出力された前記動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号であるときにはタイマをスタートさせ、前記動作設定信号出力回路から出力された前記動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号でないときにはタイマをリセットするタイマ手段と、前記タイマ手段においてタイマがスタートしてから所定の基準時間が経過したときに、前記動作設定信号出力回路から前記制御回路への前記動作設定信号の供給をストップさせる動作設定信号停止手段とを備えていることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の第2の直流モータ保護装置は、上述した本発明の第1の直流モータ保護装置において、前記動作設定信号出力回路が出力する前記動作制御信号は第1の動作設定信号および第2の動作設定信号を含み、前記動作設定信号発生回路は、前記直流モータの動作状態をフリーラン状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルをいずれも第1のレベルとし、前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルのいずれか一方を第1のレベルとし他方を第2のレベルとし、前記直流モータの動作状態をブレーキ状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルをいずれも第2のレベルとし、前記動作設定信号判断手段は排他的論理和演算回路であり、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとの排他的論理和を取り、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとが異なるときには第3のレベルを有する排他的論理和信号を前記タイマ手段に向けて出力し、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとが等しいときには第4のレベルを有する排他的論理和信号を前記タイマ手段に向けて出力し、前記タイマ手段は、前記動作設定信号判断手段から出力された排他的論理和信号の電圧レベルが前記第3のレベルのときにはタイマをスタートさせ、前記動作設定信号判断手段から出力された排他的論理和信号の電圧レベルが前記第4のレベルのときにはタイマをリセットし、前記動作設定信号停止手段は、前記タイマ手段においてタイマがスタートしてから前記基準時間を経過したときに、前記動作設定信号出力回路から前記制御回路への前記第1の動作設定信号および前記第2の動作設定信号の供給を同時にストップさせることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の第3の直流モータ保護装置は、上述した第2の直流モータ保護装置において、前記タイマ手段はCRタイマ回路を備え、前記CRタイマ回路は、所定の容量を有するコンデンサと、前記第3のレベルを有する前記排他的論理和信号が供給されたときに前記コンデンサを充電するための充電電流を流す充電回路部と、前記第4のレベルを有する前記排他的論理和信号が供給されたときに前記コンデンサに蓄積された電荷を放電するための放電電流を流す放電回路部とを備え、前記放電電流が前記充電電流よりも大きくなるように、前記放電回路部において前記放電電流を制限する抵抗が前記充電回路部において前記充電電流を制限する抵抗よりも小さく設定されていることを特徴とする。
直流モータまたは制御回路において、過電流または過熱は、直流モータの回転駆動状態が所定の基準時間を超えて長時間連続的に継続したときに発生し易い。本発明の第1の直流モータ保護装置は、直流モータの動作状態が回転駆動状態に設定されてから所定の基準時間が経過したことを認識し、直流モータの動作状態が回転駆動状態に設定されてから所定の基準時間が経過したときには制御回路への動作設定信号の供給をストップさせ、直流モータを例えばフリーラン状態にする。これにより、過電流または過熱の発生を未然に防ぐことができる。また、本発明の第1の直流モータ保護装置は、直流モータの動作状態が回転駆動状態に設定されたことを認識してタイマをスタートさせて経過時間の測定を開始するが、直流モータの動作状態がブレーキ状態に設定されたときには経過時間の測定を行わない。これにより、直流モータのブレーキ状態を、基準時間を超えて長時間維持することができる。また、本発明の第1の直流モータ保護装置は、直流モータの動作状態がフリーラン状態またはブレーキ状態に設定されたことを認識し、直流モータの動作状態がフリーラン状態またはブレーキ状態に設定されたときにはタイマ手段のタイマを自動的にリセットする。これにより、タイマのリセットを効率よく行うことができる。
また、本発明の第2の直流モータ保護装置は、排他的論理和演算回路を用いて2つの動作設定信号の電圧レベルの排他的論理和と取るといった簡単な構成により、直流モータの動作状態が回転駆動状態に設定されたことを認識することができる。また、本発明の第2の直流モータ保護装置は、タイマ手段においてタイマがスタートしてから基準時間が経過したときに、動作設定信号出力回路から制御回路への2つの動作設定信号の供給を同時にストップさせるので、2つの動作設定信号の電圧レベルを同時に変化させることができる。これにより、2つの動作設定信号の電圧レベルの変化に時間差が生じることにより、直流モータが予期しない動作をしてしまうことを防止することができる。
また、本発明の第3の直流モータ保護装置によれば、デジタル式タイマ回路と比較して簡単な構成を有するCRタイマ回路を用いることにより、直流モータ保護装置の構成を簡単化することができ、製造コストを削減することができる。また、デジタル式タイマ回路と比較して高いノイズ耐性を有するCRタイマ回路を用いることにより、直流モータ保護装置の動作の安定性を高めることができる。また、コンデンサの放電を短時間で済ませることができ、タイマのリセットを迅速に行うことができる。
本発明によれば、直流モータまたは制御回路に悪影響を及ぼす過電流または過熱の発生を未然に防止し、直流モータまたは制御回路の損傷を確実に防ぐことができる。また、2つの動作設定信号に従って直流モータを制御する直流モータ装置において、直流モータまたは制御回路に悪影響を及ぼす過電流または過熱の発生の未然防止を簡単な構成により実現することができる。
本発明の実施形態による直流モータ保護装置が設けられた直流モータ装置を示す回路図である。 本発明の実施形態における動作設定信号の状態、直流モータ保護装置内の各種信号の状態および直流モータの動作状態等を示すタイミングチャートである。 図2と異なる時点における動作設定信号の状態、直流モータ保護装置内の各種信号の状態および直流モータの動作状態等を示すタイミングチャートである。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態による直流モータ保護装置が設けられた直流モータ装置を示している。図1において、直流モータ装置1は、直流モータ2、制御回路3および動作設定信号出力回路4を備えている。
直流モータ2は例えばブラシ付き直流モータである。直流モータ装置1は、例えば、タイムレコーダや駐車券発券機、駐車券読取機等の搬送機構を備えた機器の内部にて利用され、搬送対象となるカードや券を限られた範囲で搬送する用途に用いられる。そのため、直流モータ2が連続して正転駆動または逆転駆動する時間は限られた短い時間である。ここで、直流モータ2が連続して正転駆動または逆転駆動する予め定められた最長の時間を連続駆動時間Tcとする。
制御回路3は、動作設定信号出力回路4から出力される動作設定信号A(第1の動作設定信号)および動作設定信号B(第2の動作設定信号)に従って直流モータ2を制御する回路である。制御回路3は、例えばフルブリッジ駆動回路5および信号処理回路6を備えている。信号処理回路6は、動作設定信号出力回路4から出力される動作設定信号A、Bのそれぞれの電圧レベルに基づいて直流モータ2を正転駆動または逆転駆動させ、あるいは直流モータ2にブレーキをかけ、あるいは直流モータ2をフリーラン状態にするための駆動電流をフルブリッジ駆動回路5に供給する回路である。制御回路3として、一般に市販されている直流モータ駆動用のフルブリッジドライバIC等を利用することができる。
動作設定信号出力回路4は直流モータ2の動作状態を設定するための回路である。動作設定信号出力回路4は、直流モータ2の動作状態を、例えばフリーラン状態、正転駆動状態、逆転駆動状態およびブレーキ状態のうちのいずれかに選択的に設定するための2つの動作設定信号A、Bを制御回路3の信号処理回路6に向けて出力する。
ここで、下記の表に示す通り、フリーラン状態は、直流モータ2の両端がハイインピーダンスの状態、すなわちフルブリッジ駆動回路5から切り離された開放状態であり、直流モータ2が回路から拘束を受けない状態である。正転駆動状態は、直流モータ2がフルブリッジ駆動回路5を介して供給される駆動電流により正方向に回転駆動されている状態である。逆転駆動状態は、直流モータ2がフルブリッジ駆動回路5を介して供給される駆動電流により逆方向に回転駆動されている状態である。ブレーキ状態は、直流モータ2の両端が短絡した状態、すなわち、直流モータ2にいわゆるショートブレーキがかけられている状態であり、直流モータ2の回転軸が実質的に固定された状態である。
動作設定信号出力回路4は、下記の表に示す通り、直流モータ2の動作状態をフリーラン状態に設定するときには、動作設定信号Aおよび動作設定信号Bの電圧レベルをいずれもローレベル(「0」、第1のレベル)とする。直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するときには、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルとし、動作設定信号Bの電圧レベルをハイレベル(「1」、第2のレベル)とする。直流モータ2の動作状態を逆転駆動状態に設定するときには、動作設定信号Aの電圧レベルをハイレベルとし、動作設定信号Bの電圧レベルをローレベルとする。直流モータ2の動作状態をブレーキ状態に設定するときには動作設定信号Aおよび動作設定信号Bの電圧レベルをいずれもハイレベルとする。
Figure 2011229295
なお、上記表中のA、Bは動作設定信号A、Bの電圧レベルを示し、H、I、J、Kは制御回路3における信号処理回路6から出力される4つの駆動電圧のレベルを示し、L、Mは直流モータ2の両端子の状態または直流モータ2に流れる駆動電流の状態を示す(図1参照)。
また、直流モータ装置1には、本発明の実施形態による直流モータ保護装置11が設けられている。直流モータ保護装置11は、直流モータ2または制御回路3における過電流または過熱の発生を阻止して直流モータ2または制御回路3を保護する装置である。具体的には、直流モータ保護装置11は、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bが直流モータ2の動作状態を正転駆動状態または逆転駆動状態に設定するためのものか否かを判断し、この判断結果により、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bが直流モータ2の動作状態を正転駆動状態または逆転駆動状態に設定するためのものであるときにはタイマをスタートさせ、タイマがスタートしてから所定の基準時間Trが経過したときに、動作設定信号出力回路4から制御回路3の信号処理回路6への動作設定信号A、Bの供給を同時にストップさせる。基準時間Trは、直流モータ2の上記連続駆動時間Tc以上であり、かつ、直流モータ2が正転駆動または逆転駆動を開始してから連続駆動時間Tcを超えて連続して駆動し続け、直流モータ2または制御回路3に過電流または過熱が発生するおそれがある過電流・過熱発生危険時間Td未満に予め設定されている。なお、基準時間Trは、過電流・過熱発生危険時間Tdに達しない範囲で、連続駆動時間Tcよりも十分に長く設定することが望ましい。これにより、直流モータ2が連続駆動時間Tcを超えて連続して長時間駆動し続けることにより、直流モータ2または制御回路3に過電流または過熱が発生するのを確実に阻止することができる。さらに、直流モータ保護装置11は、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A,Bが直流モータ2の動作状態を正転駆動状態または逆転駆動状態に設定するための動作設定信号でないときにはタイマを自動的にリセットする機能をも備えている。
直流モータ保護装置11は、動作設定信号判断回路12、タイマ回路13および動作制限回路14を備えている。動作設定信号判断回路12は、排他的論理和演算回路(XOR回路)であり、動作設定信号Aの電圧レベルと動作設定信号Bの電圧レベルとの排他的論理和を取り、動作設定信号Aの電圧レベルと動作設定信号Bの電圧レベルとが異なるときには、ハイレベル(第3のレベル)を有する排他的論理和信号Cをタイマ回路13に向けて出力し、動作設定信号Aの電圧レベルと動作設定信号Bの電圧レベルとが等しいときには、ローレベル(第4のレベル)を有する排他的論理和信号Cをタイマ回路13に向けて出力する。
タイマ回路13は、動作設定信号判断回路12から出力された排他的論理和信号Cの電圧レベルがハイレベルのときにはタイマをスタートさせ、動作設定信号判断回路12から出力された排他的論理和信号Cの電圧レベルがローレベルのときにはタイマをリセットする。タイマ回路13はCRタイマ回路により構成されている。具体的に説明すると、タイマ回路13は、所定の容量を有するコンデンサ21と、抵抗器22Aを有し、ハイレベルの排他的論理和信号Cが供給されたときにコンデンサ21を充電するための充電電流を流す充電回路部22と、ダイオード23Aおよび抵抗器23Bを有し、排他的論理和信号Cの電圧レベルがローレベルになったときにコンデンサ21に蓄積された電荷を放電するための放電電流を流す放電回路部23と、コンデンサ21の両端電圧を2値のデジタル信号に変換するヒステリシス入力のシュミットトリガインバータ回路24とを備えている。
このような構成を有するタイマ回路13において、動作設定信号判断回路12からハイレベルの排他的論理和信号Cが供給されると、充電回路部22を介してコンデンサ21に充電電流が流れ込み、コンデンサ21が充電される。コンデンサ21が完全に放電された状態ではコンデンサ21の両端電圧は0Vであるが、コンデンサ21の充電が開始されると、コンデンサ21の両端電圧が、漸次上昇し、コンデンサ21の充電が開始されてから基準時間Trが経過した後、所定の第1の入力スレッシュホールドレベルに達する。コンデンサ21の容量および抵抗器22Aの抵抗値は、コンデンサ21の充電が開始されてからコンデンサ21の両端電圧が第1の入力スレッシュホールドレベルに達するまでの時間が基準時間Trと等しくなるように設定されている。シュミットトリガインバータ回路24には、コンデンサ21の両端電圧に対応する電圧レベルを有する蓄積信号Dが入力される。コンデンサ21の両端電圧が所定の第1の入力スレッシュホールドレベルに達すると、シュミットトリガインバータ回路24に入力される蓄積信号Dの電圧レベルも第1の入力スレッシュホールドレベルに達する。これに応じ、シュミットトリガインバータ回路24はローレベルの動作制限指令信号Eを動作制限回路14に出力する。一方、排他的論理和信号Cの電圧レベルがローレベルになると、コンデンサ21に蓄積された電荷が放電電流となって放電回路部23を流れ、コンデンサ21が放電される。コンデンサ21の放電により、シュミットトリガインバータ回路24に入力される蓄積信号Dの電圧レベルが第2の入力スレッシュホールドレベルを下回る。これに応じ、シュミットトリガインバータ回路24はハイレベルの動作制限指令信号Eを動作制限回路14に出力する。
ここで、タイマ回路13において、放電回路部23において放電電流を制限する抵抗器23Bの抵抗値が、充電回路部22において充電電流を制限する抵抗器22Aの抵抗値よりも小さく設定されている。これにより、放電回路部23を流れる放電電流が、充電回路部22を流れる充電電流よりも大きくなる。この結果、動作設定信号判断回路12から出力される排他的論理和信号Cの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わると、コンデンサ21の放電が短期間のうちに完了し、タイマ回路13が素早くリセットされる。例えば、タイマ回路13において、コンデンサ21の容量を47μF、抵抗器22Aの抵抗値を330kΩ、抵抗器23Bの抵抗値を820Ωとすると、コンデンサ21の充電が開始されてからコンデンサ21の両端電圧が第1の入力スレッシュホールドレベルに達するまでの時間がおよそ14.5秒となり、放電時間がおよそ0.04秒となる。
また、タイマ回路13では、ヒステリシス入力のシュミットトリガインバータ回路24を用いることにより、高いノイズ耐性を有するタイマ回路13を実現している。例えば、ヒステリシス入力なので、シュミットトリガインバータ回路24から出力される動作制限指令信号Eの電圧レベルがノイズ入力により変動しにくい。
タイマ回路13として、このようなCRタイマ回路を採用したことにより、デジタルタイマを採用した場合と比較して、タイマ回路13の構成を簡単化することができると共に、ノイズ耐性を高めることができる。すなわち、クロック信号をカウントするデジタルタイマは、制御方法およびクロック信号源等より回路構成が複雑であると共に、ノイズ信号による誤動作の危険性が高い等のデメリットがあるが、CRタイマ回路の採用によりこのようなデメリットを除去することができる。
動作制限回路14は、タイマ回路13においてタイマがスタートしてから基準時間Trが経過したときに、動作設定信号出力回路4から制御回路3の信号処理回路6への動作設定信号A、Bの供給を同時にストップさせる回路である。動作制限回路14は2つの論理積演算回路(AND回路)14A、14Bを備えている。具体的に説明すると、論理積演算回路14Aには動作設定信号Aおよび動作制限指令信号Eが入力され、論理積演算回路14Bには動作設定信号Bおよび動作制限指令信号Eが入力される。タイマ回路13においてタイマがスタートしてから基準時間Trが経過したとき、シュミットトリガインバータ回路24から出力される動作制限指令信号Eの電圧レベルがローレベルになる。この結果、論理積演算回路14Aからの出力される信号(制限付き動作設定信号)Fの電圧レベルは、動作設定信号Aの電圧レベルにかかわらずローレベルになる。これと同時に、論理積演算回路14Bからの出力される信号(制限付き動作設定信号)Gの電圧レベルは、動作設定信号Bの電圧レベルにかかわらずローレベルになる。一方、タイマ回路13においてタイマがリセットされると、シュミットトリガインバータ回路24から出力される動作制限指令信号Eの電圧レベルがハイレベルになる。この結果、論理積演算回路14Aから出力される制限付き動作設定信号Fの電圧レベルは、動作設定信号Aの電圧レベルと等しくなる。これと同時に、論理積演算回路14Bから出力される制限付き動作設定信号Gの電圧レベルも、動作設定信号Bの電圧レベルと等しくなる。
図2および図3は、動作設定信号出力回路4における直流モータ2の動作状態の設定、動作設定信号A,Bの状態、直流モータ保護装置11内の各種信号C、D、E、F、Gの状態、および直流モータ2の実際の動作状態を示すタイミングチャートである。
図2において、直流モータ装置1が待機状態のときには、直流モータ2の動作状態をフリーラン状態に設定するために、動作設定信号出力回路4は、いずれもローレベルの動作設定信号A、Bを出力する。動作設定信号判断回路12は、動作設定信号A、Bの排他的論理和を取り、ローレベルの排他的論理和信号Cを出力する。これにより、タイマ回路13はリセットされた状態となる。したがって、コンデンサ21は電荷が充電されていない状態となるので、コンデンサ21の両端電圧に対応する電圧レベルを有する蓄積信号Dの電圧レベルはローレベルとなる。これに応じ、シュミットトリガインバータ回路24はハイレベルの動作制限指令信号Eを出力する。動作制限指令信号Eがハイレベルのときには、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される(図2中の制限付き動作設定信号F、G参照)。この結果、直流モータ2の動作状態がフリーラン状態に設定される。
時点t10において、直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するために、動作設定信号出力回路4が、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルに維持し、かつ動作設定信号Bの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換えたとする。これにより、動作設定信号判断回路12は、動作設定信号A、Bの排他的論理和を取り、排他的論理和信号Cの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換える。これに応じ、タイマ回路13においてタイマがスタートする。すなわち、タイマ回路13のコンデンサ21に充電回路部22を介して充電電流が流れ込み、コンデンサ21の充電が開始される。タイマがスタートしてから(コンデンサ21の充電が開始されてから)基準時間Trが経過するまでの間は、コンデンサ21の両端電圧、すなわち蓄積信号Dの電圧レベルは、漸次上昇するものの、第1の入力スレッシュホールドレベルには達しない。蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達しない限り、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルに維持する。したがって、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される(図2中の制限付き動作設定信号F、G参照)。この結果、直流モータ2の動作状態が正転駆動状態に設定され、直流モータ2が正方向に回転する。
時点t10からの経過時間が基準時間Trに達する前に、時点t11において、直流モータ2の動作状態をフリーラン状態に設定するために、動作設定信号出力回路4が、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルに維持し、かつ動作設定信号Bの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り換えたとする。これに応じ、動作設定信号判断回路12は、動作設定信号A、Bの排他的論理和を取り、排他的論理和信号Cの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り換える。これにより、タイマ回路13はリセットされる。すなわち、コンデンサ21に蓄積された電荷が放電回路部23を介して素早く流れ、コンデンサ21の放電が短時間で完了する。これにより、コンデンサ21の両端電圧に対応する電圧レベルを有する蓄積信号Dの電圧レベルは、第1の入力スレッシュホールドレベルに達することなくローレベルとなり、第2の入力スレッシュホールドレベルを下回る。よって、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルに維持するので、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される(図2中の制限付き動作設定信号F、G参照)。この結果、直流モータ2の動作状態がフリーラン状態に設定され、直流モータ2の回転がストップする。
時点t12において、直流モータ2の動作状態を再び正転駆動状態に設定するために、動作設定信号出力回路4が、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルに維持し、かつ動作設定信号Bの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換えたとする。これにより、動作設定信号判断回路12は排他的論理和信号Cの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換える。これに応じ、タイマ回路13においてコンデンサ21の充電が開始されることによりタイマがスタートする。この結果、コンデンサ21の両端電圧、すなわち蓄積信号Dの電圧レベルは、漸次上昇する。蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達しない限り、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルに維持する。したがって、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される。この結果、直流モータ2の動作状態が正転駆動状態に設定され、直流モータ2が正方向に回転する。
何らかの異常により、時点t12から時点t14までの長時間に亘り、動作設定信号出力回路4が、直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するための動作設定信号A、Bを連続的に出力し続けたとする。この場合、タイマがスタートしてから(コンデンサ21の充電が開始されてから)基準時間Trが経過した時点t13(時点t14よりも前の時点)において、蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達する。蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達すると、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り換える。これにより、動作制限回路14は、動作設定信号出力回路4から制御回路3(信号処理回路6)への動作設定信号A、Bの供給を同時にストップさせる。この結果、動作設定信号出力回路4から出力される動作設定信号A、Bの電圧レベルにかかわらず、動作制限回路14から制御回路3(信号処理回路6)に供給される信号(制限付き動作設定信号)F、Gはいずれもローレベルとなる。したがって、直流モータ2の動作状態がフリーラン状態に設定され、直流モータ2の回転がストップする。このように、何らかの異常により、動作設定信号出力回路4が、直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するための動作設定信号A、Bを連続的に出力し続けたとしても、直流モータ2の動作状態が正転駆動状態に設定された時点から基準時間Trが経過すると、直流モータ2がフリーラン状態となる。したがって、直流モータ2の正転駆動状態が連続的に長時間維持されることを防止することで、直流モータ2または制御回路3に過電流または過熱が発生するのを防ぐことができる。
時点t14において、異常が解消したとする。時点t13から時点t14直前までの間は、動作制限回路14の動作により直流モータ2の動作状態はフリーラン状態となっているが、動作設定信号出力回路4からは直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するための動作設定信号A、Bが出力されている。そこで、時点t14において、動作設定信号出力回路4は、直流モータ2の動作状態をフリーラン状態に設定するための動作設定信号A、Bを出力し、動作設定信号出力回路4による設定と直流モータ2の実際の動作状態とを合致させる。すなわち、時点t14において、動作設定信号出力回路4は、いずれもローレベルの動作設定信号A、Bを出力し、これに応じ、動作設定信号判断回路12はローレベルの排他的論理和信号Cを出力する。これにより、タイマ回路13はリセットされ、コンデンサ21が素早く放電し、蓄積電圧Dの電圧レベルがローレベルとなり、第2の入力スレッシュホールドレベルを下回り、シュミットトリガインバータ回路24からの動作制限指令信号Eの電圧レベルがハイレベルとなる。この結果、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給されるようになるので、直流モータ2の動作状態はフリーラン状態に維持される。
続いて、図3中の時点t20において、動作設定信号出力回路4は、直流モータ2の動作状態を正転駆動状態に設定するために、ローレベルの動作設定信号Aおよびハイレベルの動作設定信号Bを出力する。これにより、上述したように直流モータ2が正転駆動する(図2中の時点t10の場合と同様)。
時点t20からの経過時間が基準時間Trに達する前に、時点t21において、直流モータ2の動作状態をブレーキ状態に設定するために、動作設定信号出力回路4が、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換え、かつ動作設定信号Bの電圧レベルをハイレベルに維持したとする。これに応じ、動作設定信号判断回路12は、動作設定信号A、Bの排他的論理和を取り、排他的論理和信号Cの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り換える。これにより、タイマ回路13はリセットされ、コンデンサ21が素早く放電し、蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達することなくローレベルとなり、第2の入力スレッシュホールドレベルを下回る。よって、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルに維持するので、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される。この結果、直流モータ2の動作状態がブレーキ状態に設定され、直流モータ2の回転が瞬時にストップし、回転軸が実質的に固定される。
時点t22において、動作設定信号出力回路4が、いずれもローレベルの動作設定信号A、Bを出力して直流モータ2の動作状態をフリーラン状態に設定した後、時点t23において、動作設定信号出力回路4が、直流モータ2の動作状態を逆転駆動状態に設定するために、動作設定信号Aの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換え、かつ動作設定信号Bの電圧レベルをローレベルに維持したとする。これに応じ、動作設定信号判断回路12は排他的論理和信号Cの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り換える。これにより、タイマ回路13においてコンデンサ21の充電が開始され、タイマがスタートする。この結果、コンデンサ21の両端電圧、すなわち蓄積信号Dの電圧レベルは、漸次上昇する。蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達しない限り、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルに維持する。したがって、動作設定信号出力回路4から出力された動作設定信号A、Bはいずれも動作制限回路14をそのまま通過して制御回路3の信号処理回路6に供給される。この結果、直流モータ2の動作状態が逆転駆動状態に設定され、直流モータ2が逆方向に回転する。
何らかの異常により、時点t23から時点t25までの長時間に亘り、動作設定信号出力回路4が、直流モータ2の動作状態を逆転駆動状態に設定するための動作設定信号A、Bを連続的に出力し続けたとする。この場合、タイマがスタートしてから(コンデンサ21の充電が開始されてから)基準時間Trが経過した時点t24(時点t25よりも前の時点)において、蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達する。蓄積信号Dの電圧レベルが第1の入力スレッシュホールドレベルに達すると、シュミットトリガインバータ回路24は動作制限指令信号Eの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り換える。これにより、動作制限回路14は、動作設定信号出力回路4から制御回路3(信号処理回路6)への動作設定信号A、Bの供給を同時にストップさせる。この結果、動作設定信号出力回路4から出力される動作設定信号A、Bの電圧レベルにかかわらず、動作制限回路14から制御回路3(信号処理回路6)に供給される信号(制限付き動作設定信号)F、Gはいずれもローレベルとなる。したがって、直流モータ2の動作状態がフリーラン状態に設定され、直流モータ2の回転がストップする。このように、何らかの異常により、動作設定信号出力回路4が、直流モータ2の動作状態を逆転駆動状態に設定するための動作設定信号A、Bを連続的に出力し続けたとしても、直流モータ2の動作状態が逆転駆動状態に設定された時点から基準時間Trが経過すると、直流モータ2がフリーラン状態となる。したがって、直流モータ2の逆転駆動状態が連続的に長時間維持されることを防止することで、直流モータ2または制御回路3に過電流または過熱が発生するのを防ぐことができる。
時点t25において異常が解消したとする。異常解消後は、図3に示すように、直流モータ2の動作状態を一旦ブレーキ状態に設定してから、フリーラン状態に設定してもよい。
以上説明した通り、本発明の実施形態による直流モータ保護装置11によれば、直流モータ2の正転駆動状態または逆転駆動状態が連続的に長時間維持されることを防ぐことにより、直流モータ2または制御回路3に過電流または過熱が生じることを防止することができ、過電流または過熱により直流モータ2または制御回路3が損傷するのを防止することができる。また、動作設定信号A、Bの電圧レベルの状態変化に応じてタイマ回路13においてタイマが自動的にスタートし、またはタイマが自動的にリセットされるので、タイマのスタート、リセットを制御するための回路を別途設ける必要がなく、直流モータ保護装置11の構成を簡単化することができる。また、直流モータ2が正転駆動状態または逆転駆動状態となることを認識し、直流モータ2が正転駆動状態または逆転駆動状態となった場合に限りタイマをスタートさせ、直流モータ2がブレーキ状態となった場合にはタイマをスタートさせないので、直流モータ2のブレーキ状態に対してタイマによる時間制限がかかることがなく、直流モータ2のブレーキ状態を長時間維持させることができる。また、直流モータ2がブレーキ状態またはフリーラン状態となったときにタイマをリセットするので、適切なタイミングで効率よくタイマをリセットすることができる。すなわち、直流モータ2は、正転駆動状態から直接、逆転駆動状態に変わることはなく、かつその逆もなく、正転駆動状態または逆転駆動状態となる前には常にブレーキ状態またはフリーラン状態となる。したがって、正転駆動状態または逆転駆動状態の経過時間を測定する直前にはタイマを常にリセット状態にしておくことができる。また、直流モータ保護装置11は、動作設定信号出力回路4と制御回路3との間に設けることができ、直流モータ保護装置11を設けるにあたり、制御回路3の内部を変更する必要がなく、また直流モータ2の駆動機能自体に何ら影響を与えないので、直流モータ保護装置11を直流モータ装置に大幅な設計変更を加えることなく容易に追加することができる。また、上述した実験装置では2つの動作設定信号P1、P2に対応する2つのタイマ回路W1、W2および2つの信号制御回路X1、X2を有する構成であったために、2つの動作設定信号P1、P2の電圧レベルを切り換えるタイミングがずれることで直流モータが予期しない動作するといった問題があったが、本発明の実施形態による直流モータ保護装置11では、1つのタイマ回路13および1つの動作制限回路14を有する構成であり、2つの動作設定信号A,Bの制御回路3への供給を、基準時間Tr経過時に同時にストップさせることができるので、直流モータが予期しない動作をすることがない。
なお、上述した実施形態では、動作設定信号判断回路12を排他的論理和演算回路により構成し、これにより動作設定信号A、Bの電圧レベルの排他的論理和を取ることにより、動作設定信号A、Bが直流モータ2の動作状態を正転駆動状態または逆転駆動状態に設定するものであるか否かを判断する構成としたが、本発明はこれに限らない。動作設定信号A、Bの電圧レベルのハイ、ローの設定(仕様)が上述した実施形態における設定と異なる場合には、それに応じて、動作設定信号判断回路12を他の論理演算回路(複数の論理演算素子を組み合わせた回路を含む)により構成してもよい。
また、本発明の直流モータ保護装置は、ブラシレスの直流モータを搭載した直流モータ装置にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う直流モータ保護装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
1 直流モータ装置
2 直流モータ
3 制御回路
4 動作設定信号出力回路
11 直流モータ保護装置
12 動作設定信号判断回路(動作設定信号判断手段)
13 タイマ回路(タイマ手段)
14 動作制限回路(動作設定信号停止手段)
21 コンデンサ
22 充電回路部
23 放電回路部

Claims (3)

  1. 直流モータと、前記直流モータを制御する制御回路と、前記直流モータの動作状態を少なくともフリーラン状態、回転駆動状態およびブレーキ状態のうちのいずれかに選択的に設定するための動作設定信号を前記制御回路に向けて出力する動作設定信号出力回路とを備え、前記動作設定信号出力回路から出力された動作設定信号に従って前記制御回路により前記直流モータを制御する直流モータ装置において、前記直流モータまたは前記制御回路における過電流または過熱の発生を阻止して前記直流モータまたは前記制御回路を保護する直流モータ保護装置であって、
    前記動作設定信号出力回路から出力された動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号か否かを判断する動作設定信号判断手段と、
    前記動作設定信号判断手段の判断結果により、前記動作設定信号出力回路から出力された前記動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号であるときにはタイマをスタートさせ、前記動作設定信号出力回路から出力された前記動作設定信号が前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するための動作設定信号でないときにはタイマをリセットするタイマ手段と、
    前記タイマ手段においてタイマがスタートしてから所定の基準時間が経過したときに、前記動作設定信号出力回路から前記制御回路への前記動作設定信号の供給をストップさせる動作設定信号停止手段とを備えていることを特徴とする直流モータ保護装置。
  2. 前記動作設定信号出力回路が出力する前記動作制御信号は第1の動作設定信号および第2の動作設定信号を含み、前記動作設定信号発生回路は、前記直流モータの動作状態をフリーラン状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルをいずれも第1のレベルとし、前記直流モータの動作状態を回転駆動状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルのいずれか一方を第1のレベルとし他方を第2のレベルとし、前記直流モータの動作状態をブレーキ状態に設定するときには前記第1の動作設定信号の電圧レベルおよび前記第2の動作設定信号の電圧レベルをいずれも第2のレベルとし、
    前記動作設定信号判断手段は排他的論理和演算回路であり、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとの排他的論理和を取り、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとが異なるときには第3のレベルを有する排他的論理和信号を前記タイマ手段に向けて出力し、前記第1の動作設定信号の電圧レベルと前記第2の動作設定信号の電圧レベルとが等しいときには第4のレベルを有する排他的論理和信号を前記タイマ手段に向けて出力し、
    前記タイマ手段は、前記動作設定信号判断手段から出力された排他的論理和信号の電圧レベルが前記第3のレベルのときにはタイマをスタートさせ、前記動作設定信号判断手段から出力された排他的論理和信号の電圧レベルが前記第4のレベルのときにはタイマをリセットし、
    前記動作設定信号停止手段は、前記タイマ手段においてタイマがスタートしてから前記基準時間を経過したときに、前記動作設定信号出力回路から前記制御回路への前記第1の動作設定信号および前記第2の動作設定信号の供給を同時にストップさせることを特徴とする請求項1に記載の直流モータ保護装置。
  3. 前記タイマ手段はCRタイマ回路を備え、
    前記CRタイマ回路は、
    所定の容量を有するコンデンサと、
    前記第3のレベルを有する前記排他的論理和信号が供給されたときに前記コンデンサを充電するための充電電流を流す充電回路部と、
    前記第4のレベルを有する前記排他的論理和信号が供給されたときに前記コンデンサに蓄積された電荷を放電するための放電電流を流す放電回路部とを備え、
    前記放電電流が前記充電電流よりも大きくなるように、前記放電回路部において前記放電電流を制限する抵抗が前記充電回路部において前記充電電流を制限する抵抗よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の直流モータ保護装置。
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