JP2011226045A - 無機繊維不織布用バインダー - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のバインダーに比べて無機繊維積層体中の厚み方向におけるバインダーの分布を均一化することが容易で、表裏面ともに繊維の結着性に優れ毛羽立ちの少ない無機繊維不織布を与えるバインダーを提供する。
【解決手段】 体積平均粒子径DVが100〜250μm、かつ300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合が20重量%以下であるポリエステル樹脂粒子(A)を含有してなり、疎水化度が3〜80である無機繊維不織布用バインダー;並びに、該バインダーで無機繊維積層体を結着してなる無機繊維不織布。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機繊維不織布用バインダーに関する。より詳細には、従来より使用量を低減しても無機繊維の毛羽立ちのない無機繊維不織布を与える無機繊維不織布用バインダーに関する。
無機繊維不織布は、通常、以下の方法で得られる。
(1)数10〜数100本の無機単繊維(繊維径約10μm前後)をサイジング剤で集束させ無機繊維ストランドを得る。
(2)該ストランドを所定の長さに切断して束状の無機繊維チョップドストランドを得る。
(3)該無機繊維チョップドストランドを搬送用ネット上に方向を無秩序に分散させて無機繊維積層体とする。
(4)該積層体にバインダー粉末を散布し、オーブンチャンバーで加熱することにより無機繊維チョップドストランド間をバインダーで結着させて無機繊維不織布を得る。
上記バインダーについては、従来、貯蔵時のブロッキング防止の観点から高級脂肪酸もしくはその塩、珪素もしくは金属の、酸化物、珪素もしくは金属の、炭化物、炭酸カルシウム、タルク、有機樹脂、およびこれらの混合物からなる微粒子等で表面処理された不飽和ポリエステル樹脂が多く使用されてきた(例えば、特許文献1)。
特開2009−263636号公報
しかしながら、従来のバインダーを無機繊維積層体上に散布した場合は、該積層体の厚み方向におけるバインダーの分布が不均一で、専ら積層体のバインダー散布側の片面(表面)に偏在しやすいことから、製造後の不織布はバインダー散布の反対側の片面(裏面)の繊維の結着性が不十分となり、繊維の毛羽立ちが発生するという問題があった。そこで、積層体の裏面側のバインダー量も増やすことを目的にバインダーの散布量を増やす対策が取られているが、不織布表面層にバインダーが過剰に配置するため得られる不織布が全体的に硬くなり、後述する無機繊維強化プラスチック(無機FRP)成形時の、該不織布の型枠への賦形性(柔軟性)に欠けるという問題があった。
本発明の目的は、従来のバインダーに比べて無機繊維積層体中の厚み方向におけるバインダーの分布を均一化することが容易で、表裏面ともに繊維の結着性に優れる無機繊維不織布を与えるバインダーを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、体積平均粒子径DVが100〜250μm、かつ300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合が20重量%以下であるポリエステル樹脂粒子(A)を含有してなり、疎水化度が3〜80である無機繊維不織布用バインダー(C)である。
本発明の無機繊維不織布用バインダーは、下記の効果を奏する。
(1)従来より少ない使用量で均一な機械強度の無機繊維不織布を与える。
(2)該不織布は、表裏面とも繊維の結着性に優れ毛羽立ちが極めて少ない。
[ポリエステル樹脂]
本発明におけるポリエステル樹脂粒子(A)を構成するポリエステル樹脂としては、ポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)との重縮合物、およびカルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の自己重縮合物、およびラクトン(a4)の開環重縮合物等が挙げられる。
ポリカルボン酸(a1)の具体例としては、脂肪族ポリカルボン酸[官能基数2〜6、炭素数(以下Cと略記)3〜30、例えばジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロフタル酸等)]、芳香族ポリカルボン酸[官能基数2〜6、C8〜30、例えばジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸等)、トリメリット酸、ピロメリット酸]、脂環含有ポリカルボン酸[官能基数2〜6、C6〜50、例えばジカルボン酸(1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−および1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸およびダイマー酸等)];これらのポリカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物(例えば無水マレイン酸、無水フタル酸)、低級アルキル(C1〜4)エステル(ジメチルエステル、ジエチルエステル等)(例えばテレフタル酸ジメチル)、酸ハライド(酸クロライド等)等];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、ポリエステル樹脂の着色防止の観点から好ましいのは脂肪族ポリカルボン酸、さらに好ましいのは脂肪族ジカルボン酸である。
上記低分子ポリオール(a2)としては、水酸基1個当たりの数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]が300未満(好ましくは分子量31以上かつMn250以下)の2価〜10価またはそれ以上(好ましくは2〜3価)のポリオールが使用できる。
(a2)としては、2価アルコール(a21)、3価〜10価またはそれ以上の多価アルコール(a22)、およびこれらのアルコールまたは多価(2価〜3価またはそれ以上)フェノールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記。C2〜10)低モル(1〜10モル)付加物(a23);並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
AOとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO、PO、BO、THFおよびMTHFと略記)、1,3−プロピレンオキサイド、イソBO、C5〜12またはそれ以上のα−オレフィンオキサイド、置換AO(スチレンオキシド、エピハロヒドリン等);およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。これらのAOのうちポリエステル樹脂の機械粉砕性および無機繊維不織布用バインダー粒子の貯蔵安定性の観点から好ましいのは単一のAO、とくにEO、POである。
2価アルコール(a21)の具体例としては脂肪族アルコール[直鎖アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下それぞれEG、DEG、1,3−PG、1,4−BD、1,5−PD、1,6−HDと略記)等];分岐鎖を有するアルコール[1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれ1,2−PG、NPGと略記)、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−および2,3−ブタンジオール等];および環を有するアルコール〔脂環含有アルコール[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等]、芳香脂肪族アルコール(m−およびp−キシリレングリコール等)等〕が挙げられる。
3価〜10価またはそれ以上の多価アルコール(a22)の具体例としてはアルカンポリオール[C3〜10、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOと略記)]、該アルカンポリオールの分子間もしくは分子内脱水物[ジPE、ポリGR(重合度2〜8)、ソルビタン等]、糖類およびその誘導体(配糖体)(蔗糖、メチルグルコシド等)が挙げられる。上記(a21)、(a22)のうち無機繊維不織布の機械強度の観点から好ましいのは脂肪族アルコール、さらに好ましいのは1,4−BDおよびNPGである。
前記(a23)の具体例としては、上記(a21)、(a22)のAO低モル付加物、および環を有する多価(2価〜3価またはそれ以上)フェノールのAO低モル付加物が挙げられる。
該多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(C12〜23、好ましくは12〜19、さらに好ましくは12〜15、例えばビスフェノールA、−F、−C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。
前記カルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の具体例としては、C2〜10、例えば乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ラクトンには、C4〜15(好ましくはC6〜12)のもの、例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。
上記の重縮合時の反応温度は、通常100〜300℃、好ましくは130〜220℃である。該重縮合反応は通常常圧または減圧(例えば133Pa以下)で行われる。また、該反応はポリエステル樹脂の着色防止の観点から窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが望ましい。
該重縮合反応時の(a1)と(a2)の反応当量比(カルボキシル基/水酸基の当量比)は、迅速な重縮合反応および得られるポリエステル樹脂の物性の安定性の観点から好ましくは0.9〜1.4、さらに好ましくは0.9〜1.2である。該製造後の該ポリエステル樹脂の酸価(単位はmgKOH/g。以下では数値のみを示す。)は、耐水性の観点から好ましくは20以下、さらに好ましくは0〜15である。
該重縮合反応は、無触媒でも、エステル化触媒を使用してもいずれでもよい。エステル化触媒としては、プロトン酸(リン酸等)、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、2B、4A、4B、5Aおよび5B族金属等)の、カルボン酸(C2〜4)塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、水酸化物、アルコキシド等が挙げられる。
これらのうち反応性の観点から好ましいのは2B、4A、4B、5Aおよび5B族金属の、カルボン酸(C2〜4)塩、酸化物、アルコキシド、生成物の低着色性の観点からさらに好ましいのは三酸化アンチモン、モノ−およびジブチル錫オキシド、テトラブチルチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラブチルジルコネート、酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛である。
エステル化触媒の使用量は、所望の分子量が得られる量であれば特に制限されないが、ポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)の合計重量に基づいて、反応性および低着色性の観点から好ましくは0.005〜3%、さらに好ましくは0.01〜1%である。
また、該反応を促進するため、有機溶剤を加えて還流させることもできる。反応終了後は有機溶剤を除去する。なお、有機溶剤としては、水酸基のように活性水素を有しないものであれば特に制限はなく、例えば炭化水素(トルエン、キシレン等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)が挙げられる。
また、前記のカルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の自己縮合反応、およびラクトン(a4)の開環重縮合反応は、上記ポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)との重縮合反応における反応条件に準じて実施することができる。
上記ポリエステル樹脂のうち迅速な重縮合反応の観点から好ましいのはポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)を構成単位とする重縮合物、後述する繊維強化プラスチック(FRP)への適用におけるスチレンモノマー等の浸透性の観点からさらに好ましいのはジカルボン酸(とくに不飽和ジカルボン酸)とビスフェノール(好ましくはビスフェノールAおよび−F)のAO低モル付加物を構成単位とする重縮合物である。
前記ポリエステル樹脂のうち、後述する疎水化度の観点から好ましいのは、(a1)と(a2)を構成単位とする重縮合物、さらに好ましいのは水酸基を有しないジカルボン酸と多価フェノールのAO低モル(1〜10モル)付加物との重縮合物(例えば、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸と、ビスフェノールのAO低モル付加物との重縮合物)である。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(以下Mwと略記。測定は後述するGPC法による。)とMnは、不織布の機械強度および柔軟性の観点から、Mwは好ましくは5,000〜50,000、さらに好ましくは10,000〜45,000、Mnは好ましくは400〜4,500、さらに好ましくは800〜4,000である。
前記GPCの測定条件は次のとおりである。本発明におけるMn、Mwは下記の測定条件に従うものとする。
<GPC測定条件>
[1]装置 :HLC−8220[東ソー(株)製]
[2]カラム :TSKgel SuperMultiporeHZ−M[東ソー(株)製]
[3]溶離液 :テトラヒドロフラン
[4]基準物質:ポリスチレン
[5]注入条件:サンプル濃度2.5mg/ml、カラム温度40℃
該ポリエステル樹脂の環球法(JIS K2207、「石油アスファルト」の「6.4軟化点試験方法」)による軟化点は、無機繊維不織布の粘着性の発現防止と後加工の作業性の観点、およびバインダーによる無機繊維チョップドストランド間の結着性の観点から好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜140℃である。
該ポリエステル樹脂の示差熱分析によるガラス転移温度(以下Tgと略記。測定はJIS K7121、「プラスチックの転移温度測定法」に準拠。)は、バインダー貯蔵時のブロッキング防止および無機繊維不織布の後加工の作業性の観点から好ましくは40〜60℃、さらに好ましくは45〜55℃である。
[ポリエステル樹脂粒子(A)]
本発明におけるポリエステル樹脂粒子(A)は、上記ポリエステル樹脂を、例えばサンプルミル[型番「SK−M10」、協立理工(株)製]を用いて回転数12,000〜14,000rpmで2〜10分間粉砕して粒子状とした後、篩で篩い分けることにより得ることができる。
ポリエステル樹脂粒子(A)の体積平均粒子径DV(μm)は100〜250、好ましくは110〜230、さらに好ましくは120〜220である。DVが100μm未満では、後述する無機繊維積層体へのバインダーの均一付着性が悪く、得られる無機繊維不織布の機械強度にバラツキが生じて品質が損なわれることとなり、250μmを超えるとバインダーの重い自重で、積層体に付着せずに、積層体の隙間から落下するバインダーが増えること、および積層体の単位重量当たりのバインダー粒子の個数が少なくなり、積層体とバインダーとの結着点が少なくなることから、該不織布作成時のバインダー必要量が増大する。
また、(A)中の、300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合は、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。該割合が20重量%を超えると、バインダーの重い自重で、積層体に付着せずに、積層体の隙間から落下するバインダーが増えること、および積層体の単位重量当たりのバインダー粒子の個数が少なくなり、積層体とバインダーとの結着点が少なくなることから、無機繊維不織布の機械強度が低下する。
ここにおいて、体積平均粒子径DV、および体積基準粒子径はいずれもレーザー回折散乱法により求めることができ、測定装置としては、例えば粒度分布測定機[商品名「マイクロトラックMT3000II粒度分析計」、日機装(株)製]が挙げられる。
[無機繊維不織布用バインダー(C)]
本発明の無機繊維不織布用バインダー(C)の疎水化度は3〜80、好ましくは4〜75、さらに好ましくは5〜70である。疎水化度が3未満では、無機繊維積層体の厚み方向におけるバインダーの分布が不均一となり、製造後の不織布がバインダー散布の反対側の片面(裏面)の繊維の結着性が不足し、繊維の毛羽立ちが発生する。また、疎水化度が80を超えると、積層体にバインダーが付着することなく落下しやすく、該不織布作成時のバインダー必要量が増大し不織布が柔軟性に欠けることとなる。
ここにおいて疎水化度は、(C)をイオン交換水に加え、撹拌下にメタノールを滴定により加え、(C)の全量が水−メタノール混合溶液に懸濁する際の水−メタノール混合溶液中のメタノール濃度(vol%)の値であり、例えば下記の条件で測定することができる。
<疎水化度測定条件>
バインダーサンプル量:5g
水量 :100ml
溶液温度 :25±5℃
無機繊維不織布用バインダー(C)は、(C)を構成するポリエステル樹脂粒子(A)が前記体積平均粒子径DVおよび体積基準粒子径の条件を満足し、(C)が上記疎水化度を有するものである。
該(C)には、ポリエステル樹脂粒子(A)そのものおよび(A)を後述する表面被覆剤(B)で表面処理したものが含まれる。
[表面被覆剤(B)]
本発明における表面被覆剤(B)としては、無機微粒子(B1)、有機微粒子(B2)およびこれらの併用が挙げられ、これらのうち前記疎水化度の観点から好ましいのは疎水化処理[カップリング剤(シランカップリング剤等)修飾法による粒子表面へのアルキル基導入等]が施されたものである。該疎水化処理が施されたものの具体例としては、例えば、アエロジル130の粒子表面へアルキル基を導入したアエロジルR972、アエロジル200の粒子表面へアルキル基を導入したアエロジルR974[いずれも日本アエロジル(株)製]が挙げられる。
無機微粒子(B1)としては、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、珪砂、クレー、雲母、珪灰石、ケイソウ土、各種無機酸化物顔料、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、カーボンブラック、およびこれら2種以上の混合物等が挙げられる。これらのうちバインダー(C)の粉体流動性の観点から好ましいのは二酸化珪素である。二酸化珪素に前記の疎水化処理が施された市販品としては、「アエロジルR972」、「アエロジルR974」[商品名、いずれも日本アエロジル(株)製]等が挙げられる。
有機微粒子(B2)としては、架橋または非架橋の樹脂微粒子、有機顔料、ワックス等が挙げられる。架橋または非架橋の樹脂微粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられる。
有機顔料としては、黄色顔料(ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等)、橙色顔料(モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等)、赤色顔料(パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロン、レッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオミンレーキ、ローダミンレーキB、アザリンレーキ、ブリリアントカーミンB等)、紫色顔料(ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等)、青色顔料(アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファストスカイブルー、インダンスブルーBC等)、緑色顔料(ビグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等)、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
ワックスとしては、環球法による軟化点が80〜180℃のエチレンおよび/またはプロピレン(共)重合体、高融点(60〜100℃)のパラフィンワックス、脂肪酸エステル、およびその部分ケン化物、高級脂肪酸、脂肪酸金属、高級アルコール等の微粒子、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記の表面被覆剤(B)のうち好ましいのは無機微粒子(B1)、さらに好ましいのは二酸化珪素である。また、後述のFRPへの適用におけるスチレンモノマー等の浸透性の観点から好ましいのは有機微粒子(B2)、さらに好ましいのはスチレン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、メタクリル樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子である。
(B)は、通常ポリエステル樹脂を粉砕し、篩い分けされた後のポリエステル樹脂粒子(A)に添加、混合され、得られるバインダー(C)は(A)の表面の少なくとも一部が(B)で被覆されたものである。ここにおいて、混合機としてはプラネタリーミキサー、ナウターミキサー、タンブラーミキサー等の粉体混合機が挙げられる。これらのうち混合効率の観点から好ましいのはプラネタリーミキサー[例えば機器名「HIVIS MIX」、型番「T.K.HIVIS MIX F model.03」、特殊理化工業(株)製。以下同じ。]である。
上記の混合機(例えば、「HIVIS MIX」等)は、凝集した表面被覆剤(B)の1次粒子を解きほぐしながらポリエステル樹脂粒子(A)と混合することで、(A)の表面の(B)による被覆度を調整することができ、これによりバインダーの疎水化度を本発明の範囲とすることができる。
(A)と(B)の混合方法としては、混合すべき(A)、(B)の各全量を一括して仕込み一括混合する方法、(A)と(B)をそれぞれ分割して仕込み少量ずつの混合を連続して複数回行う方法等が挙げられ、後者の方法では疎水化度をより高くすることができる。
バインダー(C)において、ポリエステル樹脂粒子(A)の重量に基づく(B)の割合は、無機繊維不織布の表裏面両方の繊維の結着性およびバインダー必要量低減の観点から0.01〜8%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
[無機繊維不織布]
本発明の無機繊維不織布は、前記無機繊維積層体を上記バインダー(C)で結着して得られる。該不織布は例えば以下の工程で製造することができる。
(1)離型処理して平置された金網上に無機繊維チョップドストランドを方向性無秩序に均一厚みになるよう散布して無機繊維積層体を得る。
(2)所定量の水道水を該積層体の裏側(下側)の表面全体が濡れるように裏側から霧吹きにて噴霧する。
(3)所定量のバインダー(C)を積層体の表側面(上側面)から均一に散布して付着させる。
(4)該積層体が積載された状態で金網面の上下方向に振動を与える。
(5)積層体の表側面の表面全体が湿るように霧吹きにて所定量の水道水を噴霧し、所定量のバインダー(C)を表側面から均一に散布して付着させる。
上記(3)〜(5)の工程は1回でもよいし2回またはそれ以上繰り返してもよい。
(6)上記(5)で得られたバインダー(C)付着積層体を100〜250℃で1〜10分間乾燥させ、バインダー(C)を無機繊維チョップドストランドに融着させる。
(7)室温〜250(好ましくは50〜150)℃に温度調整したプレス機により0.01〜5MPaの圧力でプレスして、融着バインダー(C)で結着された無機繊維不織布を得る。
無機繊維不織布を構成する無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維(ステンレス繊維、チタン繊維等)、岩石繊維等が挙げられる。これらのうちFRPへの適用におけるマトリックス樹脂との接着性の観点から好ましいのはガラス繊維および炭素繊維である。
後述の評価方法で求められる無機繊維積層体の重量に基づくバインダー(C)の結着量は、無機繊維不織布の機械強度およびハンドリング性(柔軟性、後述する繊維強化プラスチック(FRP)成形品作成時の成形型へのフィット性等、以下同じ。)の観点から好ましくは1〜30%、さらに好ましくは2〜20%である。
後述の評価方法で求められる無機繊維不織布の表裏面の鉛筆硬度は、繊維の結着性の観点から、好ましくは6B以下である。ここにおいて、鉛筆硬度はJIS K5600に準拠して測定され、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけ引っ掻き試験を行い、鉛筆硬度は繊維の脱落が起こらない最大の鉛筆硬度を鉛筆硬度とした。
該無機繊維不織布の機械強度の均一性は、引張強さの最大値と最小値の差が小さいことで示され、該引張強さの最大値と最小値の差は、不織布のハンドリング性の観点から好ましくは40N以下、さらに好ましくは35N以下、とくに好ましくは30N以下である。ここにおいて、引張強さは後述のJIS R3420に準拠して測定され、上記引張強さの最大値と最小値の差は、10枚の試験片について得られた値の最大値と最小値の差の平均値で評価される。
本発明の無機繊維不織布が、従来のバインダーより少ない使用量で優れた機械強度を有することは、例えば後述のバインダー結着量(重量%)当りの引張強さに優れることで示される。該バインダー結着量(重量%)当たりの引張強さは、好ましくは40N以上、さらに好ましくは45N以上、とくに好ましくは50N以上である。
[無機繊維強化プラスチック成形品]
本発明の無機繊維強化プラスチック成形品は、その成形法については特に限定されることはなく、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、プリフォーム法、マッチドドダイ法、SMC法等が挙げられる。これらのうち例えばハンドレイアップ法は通常以下の手順で行われる。
(1)成形型表面に離型剤を塗布する。
(2)ローラー等を用いて均一な厚みになるよう室温(15〜25℃)でマトリックス樹脂(不飽和ポリエステル樹脂等)を塗布する。
(3)約40℃に温度調整した温風炉内で該樹脂をゲル化させる。
(4)無機繊維不織布を成形型表面にフィットさせ、マトリックス樹脂をスチレンモノマー等で薄めた溶液をローラー等により無機繊維不織布上に積層し、ローラーにより空気抜きを行う。
(5)積層体を温風炉内で硬化させる。
(6)型から取り出し成形品を得る。
ハンドレイアップ法を含む前記成形法で用いられるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、変性アクリル樹脂、フラン樹脂等)、および熱可塑性樹脂(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂等)が挙げられる。
これらのうち、例えば上記ハンドレイアップ法の場合は、熱硬化性樹脂が用いられ、成形時の作業性の観点から好ましいのは、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂である。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。以下において部は重量部、%は重量%を示す。
製造例1<バインダー(X−1)の製造>
(1)ポリエステル樹脂の製造
冷却管、撹拌棒、温度計および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのEO2.2モル付加物3,365部、フマル酸1,123部、ジブチルスズオキサイド6部を仕込み、窒素雰囲気下180℃で4時間反応させた。その後、3〜4kPaの減圧下で反応させ、210℃まで昇温し、酸価16.0になったところで180℃に冷却して取り出し、ポリエステル(P−1)を得た。(P−1)のMwは30,000、Mnは2,800、軟化点は116℃、Tgは53℃であった。
(2)ポリエステル樹脂粒子(A−1)の製造
(P−1)200部をサンプルミル[機器名「SK−M10」、協立理工(株)製、以下同じ。]を用いて回転数12,000rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粒子を目開き355μmの篩で篩い分け、該篩を通過した樹脂粒子(A−1)を得た。
(3)バインダー(X−1)の製造
(A−1)100部に表面被覆剤(B−1)[商品名「アエロジルR972」、日本アエロジル(株)製、以下同じ。]0.5部を加えた後、HIVIS MIX[機器名「T.K.HIVIS MIX F model.03」、特殊理化工業(株)製、以下同じ。]を用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X−1)を得た。
製造例2<バインダー(X−2)の製造>
(A−1)100部に表面被覆剤(B−1)2部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X−2)を得た。
製造例3<バインダー(X−3)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粒子(A−2)の製造
(P−1)200部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで7分間粉砕した。得られた樹脂粒子を目開き355μmの篩で篩い分け、該篩を通過した樹脂粒子(A−2)を得た。
(2)バインダー(X−3)の製造
(A−2)100部に表面被覆剤(B−1)0.5部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X−3)を得た。
製造例4<バインダー(X−4)の製造>
(A−2)100部に表面被覆剤(B−1)2部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X−4)を得た。
製造例5<バインダー(X−5)の製造>
(A−2)100部に表面被覆剤(B−2)[商品名「アエロジルR974」、日本アエロジル(株)製。以下同じ。]0.2部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数40rpmで70分間混合し、バインダー(X−5)を得た。
製造例6<バインダー(X−6)の製造>
(A−2)33部に表面被覆剤(B−2)2部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数40rpmで5分間混合し、さらに(A−2)33部、(B−2)2部を加えて5分間混合、最後に(A−2)34部、(B−2)2部を加えて全量仕込み完了後、50分間混合してバインダー(X−6)を得た。
比較製造例1<バインダー(X’−1)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粒子(A’−1)の製造
(P−1)200部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで2分間粉砕した。得られた樹脂粒子を目開き355μmの篩で篩い分け、該篩を通過した樹脂粒子(A’−1)を得た。
(2)バインダー(X’−1)の製造
(A’−1)100部に表面被覆剤(B−1)0.5部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X’−1)を得た。
比較製造例2<バインダー(X’−2)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粒子(A’−2)の製造
(P−1)200部をサンプルミルを用いて回転数14,000rpmで8分間粉砕した。得られた樹脂粒子を目開き355μmの篩で篩い分け、該篩を通過した樹脂粒子(A’−2)を得た。
(2)バインダー(X’−2)の製造
(A’−2)100部に表面被覆剤(B−1)0.5部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X’−2)を得た。
比較製造例3<バインダー(X’−3)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粒子(A’−3)の製造
(P−1)200部をサンプルミルを用いて回転数14,000rpmで10分間粉砕した。得られた樹脂粒子を目開き355μmの篩で篩い分け、該篩を通過した樹脂粒子(A’−3)を得た。
(2)バインダー(X’−3)の製造
(A’−3)100部に表面被覆剤(B−1)0.003部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分間混合し、バインダー(X’−3)を得た。
比較製造例4<バインダー(X’−4)の製造>
(A−2)100部に表面被覆剤(B−3)[商品名「アエロジル200」、日本アエロジル(株)製。以下同じ。]0.5部を加えた後、HIVIS MIXを用いて回転数30rpmで60分混合し、バインダー(X’−4)を得た。
上記で得られたポリエステル樹脂粒子(A−1)、(A−2)、(A’−1)〜(A’−3)の体積平均粒子径DV、300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合、およびバインダー(X−1)〜(X−6)、(X’−1)〜(X’−4)、(A−2)の疎水化度の結果は表1に示す。
実施例1<ガラス繊維不織布(IM−1)の作成>
ガラス繊維ストランド(平均ストランド番手:30Tex、ガラス繊維の密度:2.5g/cm3)を東技研(株)製ガラスチョッパーを用いて約5cmの長さに切断し、ガラス繊維チョップドストランドを得た。
縦75cm×横40cmの離型処理したステンレス金網上に該ガラス繊維チョップドストランド135.0gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラス繊維チョップドストランドの重量の30%相当量である40.5gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラス繊維チョップドストランドの重量の1.4%相当量である1.89gのバインダー(X−1)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水40.5g(散布したガラス繊維チョップドストランドの重量の30%相当量)を噴霧し、散布したガラス繊維チョップドストランドの重量の0.3%相当量である0.41gのバインダー(X−1)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて1.0MPaの圧力でプレスして目付量450g/m2のガラス繊維不織布(IM−1)を得た。該不織布の評価結果は表1に示す。
実施例2〜5
実施例1において、バインダー(X−1)に代えてバインダー(X−2)〜(X−6)、および(A−2)をバインダーとして用いたこと以外は同様にして、ガラス繊維不織布(IM−2)〜(IM−7)を得た。後述の評価項目による該ガラス繊維不織布の評価結果は表1に示す。
比較例1〜4
実施例1において、バインダー(X−1)に代えてバインダー(X’−1)〜(X’−4)を用いたこと、およびバインダーの散布量を1回目のバインダー散布量をガラス繊維チョップドストランドの重量の2.0%相当量である2.70gに、2回目のバインダー散布量をガラス繊維チョップドストランドの重量の0.5%相当量である0.68gに変えたこと以外は同様にして、(IM’−1)〜(IM’−4)を得た。後述の評価項目による該ガラス繊維不織布の評価結果は表1に示す。
<評価項目>
(1)軟化点(℃)
JIS K2207「石油アスファルト」の「6.4軟化点試験方法(環球法)」に準拠して、自動軟化点試験器[機器名「ASP−5」、田中科学機器製作(株)製]により測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)(℃)
JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に準拠して、[機器名「RDC−220」、セイコー電子工業(株)製]により測定した。
(3)ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径DV(μm)、300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合(%)
粒度分析計[機器名「マイクロトラックMT3000II粒度分析計」、日機装(株)製]を用いたレーザー回折散乱法により測定した。
(4)バインダーの疎水化度(vol%)
25℃に温度調整したイオン交換水100mlが入った200mlトールビーカーに5gのバインダーを加え、撹拌下に25℃に温度調整したメタノールでビューレットを用いて滴定し、バインダーの全量が水−メタノール混合溶液に懸濁する際の水−メタノール混合溶液中のメタノール濃度(vol%)を、疎水化度とした。
(5)バインダー結着量(%)
JIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」の「7.3.2強熱減量」に準拠して測定される値で、不織布重量に基づく、無機繊維を除く付着バインダー量の割合(重量%)を表す。具体的な測定手順は以下のとおりである。
(i)不織布の一部から試験片(縦50mm×横100mm)を切り出し、これを細断して磁性るつぼに入れ、105℃で30分間乾燥させた後、デシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m1)を測定する。
試験片入り磁性るつぼを625℃の電気炉内に入れ、扉を開いたまま5分間燃焼させた後、扉を閉めさらに10分間燃焼させる。その後、試験片入り磁性るつぼを取り出してデシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m2)を測定する。
(ii)試験片を入れていない空の上記磁性るつぼを、105℃で30分間乾燥させた後、デシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m0)を測定する。
(iii)下記式から該試験片のバインダー結着量(%)を算出する。

バインダー結着量(%)=
100×[(m1)−(m2)]/[(m1)−(m0)]

(iv)不織布の、上記(i)とは異なる10箇所の部分から切り出した同様の試験片について(i)〜(iii)を同様に行って、各試験片のバインダー結着量(%)を算出した。該得られた10個の値の平均値を算出して、これを不織布のバインダー結着量(%)とした。
(6)不織布表裏面の鉛筆硬度
鉛筆硬度はJIS K5600に準拠して測定され、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけ引っ掻き試験を行い、繊維の脱落具合を下記の基準で評価した。
<評価基準>
5B 5Bの鉛筆では繊維の脱落が起こらないが、4Bの鉛筆では繊維の脱落が起こる
もの
6B 6Bの鉛筆では繊維の脱落が起こらないが、5Bの鉛筆では繊維の脱落が起こる
もの
× 6B以上の鉛筆で繊維の脱落が起こるもの
(7)不織布の引張強さの平均値(N)
作成した各無機繊維不織布の一部から試験片(縦50mm×横100mm)を10枚ずつ切り出し、これらをJIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」の「7.4引張強さ」に準拠して測定し、試験片10枚の平均値を求め下記の基準で評価した。引張強さの測定は具体的には次の手順で行った。
(i)試験片を25℃、湿度65%(JIS K7100で規定される標準雰囲気)の条件で1時間、静置する。
(ii)試験片の長さ方向の両端部を上下の各クランプで掴み、クランプ間の距離を10mmに調整する。
(iii)「オートグラフAGS−500D」[機器名、(株)島津製作所製]を用い、引張速度100mm/分で引張試験を行い、試験片が破断するまでに要した力を引張強さとする。
<評価基準>
○ 130N以上
△ 100N以上130N未満
× 100N未満
(8)引張強さの最大値と最小値の差(N)
試験片10枚の引張強さの最大値と最小値の差を求め下記の基準で評価した。
<評価基準>
○ 40N以下
△ 40N超80N以下
× 80N超
(9)バインダー結着量(%)当りの引張強さ(N)
試験片10枚の引張強さの平均値をバインダー結着量(%)で除して得られた値を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○ 40N以上
△ 30N以上40N未満
× 30N未満
Figure 2011226045
表1の結果から、本発明のバインダーを使用して得られたガラス繊維不織布は、比較のバインダーを使用して得られたガラス繊維不織布に比べ、引張強さに優れ、かつそのバラツキも小さく、不織布表裏面の鉛筆硬度が高いことがわかる。また、引張り強度に劣る比較の不織布ではバインダー散布量を増やす必要があるのに対して、本発明の不織布ではバインダー結着量当りの引張強さがより優れることから、本発明のバインダーは従来より少ない使用量で不織布に必要な強度を均一に付与でき、しかも表裏面とも繊維の結着性に優れ毛羽立ちが極めて少ない不織布が得られることもわかる。
本発明のバインダー(C)で無機繊維積層体を結着させてなる無機繊維不織布は、無機繊維強化プラスチック(無機FRP)成形品用の強化材等として用いられ、該成形品は、自動車用部品(成形天井材等)、小型船舶(カヌー、ボート、ヨット、モーターボート等)の船体、住宅用部材(バスタブ、浄化槽等)等幅広い分野に適用できることから、極めて有用である。

Claims (8)

  1. 体積平均粒子径DVが100〜250μm、かつ300μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合が20重量%以下であるポリエステル樹脂粒子(A)を含有してなり、疎水化度が3〜80である無機繊維不織布用バインダー(C)。
  2. (A)の表面の少なくとも一部が表面被覆剤(B)でさらに被覆されてなる請求項1記載のバインダー(C)。
  3. (A)の重量に基づく(B)の割合が0.01〜8%である請求項2記載のバインダー。
  4. (A)が、ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物および不飽和ジカルボン酸を構成単位とするポリエステル樹脂の粒子である請求項1〜3のいずれか記載のバインダー。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載のバインダーで無機繊維積層体を結着してなる無機繊維不織布。
  6. 請求項5記載の不織布を強化材として成形してなる無機繊維強化プラスチック成形品。
  7. 無機繊維強化プラスチック成形品が、自動車成形天井材、小型船舶船体、バスタブまたは浄化槽用である請求項6記載の成形品。
  8. 無機繊維チョップドストランド散布およびバインダー散布からなる工程を経て形成される無機繊維積層体を加熱後、プレス成形して不織布を製造する方法において、請求項1〜4のいずれか記載のバインダーを用いることを特徴とする無機繊維不織布の製造方法。
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