JP2014167096A - 無機繊維不織布用バインダー - Google Patents

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JP2014167096A JP2014003846A JP2014003846A JP2014167096A JP 2014167096 A JP2014167096 A JP 2014167096A JP 2014003846 A JP2014003846 A JP 2014003846A JP 2014003846 A JP2014003846 A JP 2014003846A JP 2014167096 A JP2014167096 A JP 2014167096A
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Masayoshi Fujita
政義 藤田
Tatsuhiko Hasegawa
達彦 長谷川
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Abstract

【課題】 無機繊維チョップドストランド積層体中の無機繊維チョップドストランド交点でのバインダーの溶融特性に優れ、機械的強度にも優れる無機繊維不織布を与えるバインダーを提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体(x)と、ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール(y)とを構成単位とするポリエステル樹脂(PS)を含有してなり、該(PS)の140℃における貯蔵弾性率G’(140)と160℃における貯蔵弾性率G’(160)との比が2〜10である無機繊維不織布用バインダー(X)。
【選択図】 なし

Description

本発明は無機繊維不織布用バインダーに関する。さらに詳しくは、無機繊維チョップドストランド(以下無機CSと略記)の交点におけるバインダーの溶融特性に優れ、かつ優れた機械的強度を有する無機繊維不織布を与える無機繊維不織布用バインダーに関する。本発明において溶融特性に優れるとは、CS交点に付着したバインダーが加熱およびプレス工程を経て溶融しCS交点を適度な面積で被覆して接着することができることを意味するものとする。
無機繊維不織布は通常、以下の方法で得られる。
(1)数10〜数100本の無機単繊維(繊維径約10〜25μm)をサイジング剤で集束させストランドを得る。
(2)該ストランドを所定の長さに切断して無機CSを得る。
(3)該無機CSを、一定速度で進退稼動する搬送用ネット上に方向を無秩序に散布、分散させて無機CS積層体とする。
(4)所定量の水を無機CS積層体の上面または下面側から噴霧する。
(5)該積層体の上面側からバインダーを散布したものをオーブンチャンバーで加熱することにより、融着したバインダーで無機CS同士を結合させ、さらにプレスすることにより無機繊維不織布(以下において、無機CSマットまたは単にマットということがある)を得る。ここにおいて無機繊維不織布は、特に無機繊維がガラス繊維の場合は、ガラスCSマットと呼ばれる。
従来、無機繊維不織布用のバインダーとしては、機械粉砕等により粉末化された不飽和ポリエステル樹脂(例えば特許文献1〜4参照)が知られており、粉体散布機等から無機CS積層体上に、目付量に応じて調整される量のバインダーが散布されている。散布されたバインダーは、得られる無機繊維不織布の機械的強度(引張強さ等、以下同じ。)に通常はその全てが寄与するわけではなく、無機CS交点に付着したものが主として寄与し、該交点へのバインダーの付着が重要とされている。
特許3857224号 特許5044592号 特開2003−48255号公報 特開2004−263124号公報
従来のバインダーでは、無機CS交点に極力付着させて無機繊維不織布に十分な機械的強度を付与するために、多量のバインダー散布が必要となり、機械的強度に寄与しない無機CS交点以外の部分に付着するバインダーが増え、無機繊維不織布の品質および生産コスト等、工業上種々の問題があった。また、たとえバインダーが無機CS交点に付着したとしても、溶融したバインダーが該交点を必ずしも被覆して接着するとは限らないという問題もあった。
本発明の目的は、無機CS積層体中の無機CS交点でのバインダーの溶融特性に優れ、機械的強度にも優れる無機繊維不織布を与えるバインダーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体(x)と、ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール(y)とを構成単位とするポリエステル樹脂(PS)を含有してなり、該(PS)の140℃における貯蔵弾性率G’(140)と160℃における貯蔵弾性率G’(160)との比が2〜10である無機繊維不織布用バインダー(X)である。
本発明の無機繊維不織布用バインダーは、下記の効果を奏する。
(1)無機CS積層体の無機CS交点でのバインダーの溶融特性に優れる。
(2)無機繊維不織布の機械的強度に優れる。
[ポリエステル樹脂(PS)]
ポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂(PS)は、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体(x)と、ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物および(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール(y)とを構成単位とする重縮合物である。
(x)のうち、芳香族ジカルボン酸としては、炭素数(以下Cと略記)8〜30、例えばオルト−、イソ−およびテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸のうち、後述の無機繊維不織布の機械的強度の観点から好ましいのはイソフタル酸、テレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸、さらに好ましいのはイソフタル酸およびテレフタル酸である。
(x)のうち、上記芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、前記芳香族ジカルボン酸の酸無水物(無水フタル酸等)、アルキル(アルキル基はC1〜4、好ましくはC1〜2)エステル[ジアルキルエステル(ジメチルテレフタレート等)、モノアルキルエステル(モノメチルイソフタレート等)]、酸ハライド(テレフタル酸モノ−およびジブロマイド等)等が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体のうち、エステル化の反応効率の観点から好ましいのは酸無水物、ジアルキルエステルおよび酸ハライド、さらに好ましいのは無水フタル酸およびジメチルテレフタレートである。
ジオール(y)のうち、ビスフェノール化合物のAO付加物(y1)としては、ビスフェノール化合物のAO(C2〜10)低モル(2〜10モル)付加物が挙げられる。
ビスフェノール化合物としては、C13〜30、例えばビスフェノールA、−AP、−B、−BP、−E、−Fおよび−Pが挙げられる。これらのうちバインダーの溶融特性および無機繊維不織布の機械的強度の観点から好ましいのはビスフェノールA、−Fおよび−P、さらに好ましいのはビスフェノールAである。
AOとしては、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)、スチレンオキサイド、C5〜10またはそれ以上のα−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリン、およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。
これらのAOのうち、無機繊維不織布の機械的強度、および繊維強化プラスチック(FRP)への適用におけるスチレンモノマー等の無機繊維不織布への浸透性の観点から好ま
しいのは、EO、PO、およびこれらの併用である。
ジオール(y)のうち、(ポリ)アルキレングリコール(y2)としては、水酸基当量〔水酸基1個当たりの分子量もしくは数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述の条件でのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]〕が300以下の(ポリ)アルキレン(アルキレン基はC2〜6)グリコール〔例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール[以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、NPG、1,4−BD、1,6−HDと略記]、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(以下それぞれPEG、PPG、PTMGと略記)〕が挙げられる。
これらの(y2)のうち、溶融特性の観点から好ましいのはEG、DEG、PG、DPG、1,4−BD、PEGおよびPPG、さらに好ましいのはDEGおよびPGである。
ポリエステル樹脂(PS)は、前記芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体(x)とジオール(y)を重縮合反応させることにより製造することができる。
該重縮合反応における(x)と(y)の反応当量比は、無機繊維不織布の機械的強度およびエステル化の反応効率の観点から好ましくは0.8〜1.3、さらに好ましくは0.9〜1.2である。
該重縮合反応は、無触媒でも、エステル化触媒を使用してもいずれでもよい。
エステル化触媒としては、プロトン酸(リン酸等)、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、2B、4A、4Bおよび5B族金属等)含有化合物[カルボン酸(C2〜4)塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、水酸化物、アルコキシド等]が挙げられる。
これらのうち反応性の観点から好ましいのはカルボン酸金属塩[2B、4A、4Bおよび5B族金属のカルボン酸(C2〜4)塩]、金属酸化物および金属アルコキシド、得られるポリエステル樹脂の着色防止の観点からさらに好ましいのは酢酸亜鉛、酢酸ジルコニル、テトラブチルチタネート、ビス〔2,2’−[(2−ヒドロキシエチル)イミノ−κN]−ビス[エタノレート−κO]〕チタネート、三酸化アンチモンおよびジブチルスズオキシドである。
エステル化触媒の使用量は、(x)と(y)の合計重量に基づいて、反応性および着色防止の観点から好ましくは0.005〜3%、さらに好ましくは0.01〜1%である。
また、該反応を促進するため、有機溶剤を加えて還流させることもできる。反応終了後、有機溶剤は除去するのが望ましい。
有機溶剤としては、水酸基のような活性水素を有しないもの、例えば炭化水素(トルエン、キシレン等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)が挙げられる。
ポリエステル樹脂(PS)の酸価(mgKOH/g。以下においては数値のみを示す。測定方法はJIS K0070に準じる。)は、耐水性の観点から好ましくは20以下、さらに好ましくは0〜15である。
ポリエステル樹脂(PS)の、140℃および160℃におけるそれぞれの貯蔵弾性率(単位はdyn/cm2。以下数値のみで表す。)をG’(140)およびG’(160
)とした場合、その比[G’(140)/G’(160)]は2〜10、好ましくは2.5〜9、さらに好ましくは3〜8.5である。該比は溶融特性の指標であり、2未満では無機繊維不織布製造時の加熱工程において溶融状態になり難く、10を超えると過剰な溶融状態となり、いずれの場合も無機CS積層体中の無機CS交点での優れた溶融特性が発揮されず無機繊維不織布の機械的強度低下につながる。なお、溶融特性において、CS交点を被覆する適度な面積は、後述の方法による無機CS交点融着被覆面積率(%)で評価することができ、該面積率は好ましくは55%以上、さらに好ましくは70%以上、とくに好ましくは90%以上である。
前記比[G’(140)/G’(160)]は、高結晶性成分と低結晶性成分の使用割合および芳香環骨格含有量等で調整できる。つまり、該比を大きくするには、芳香環骨格含有量を多くするか、(PS)を形成する(x)および(y)として高結晶性(対称性の高い)構造を有する化合物[例えば、(x)ではテレフタル酸、(y)ではビスフェノールAのEO2モルおよびEO4モル付加物、EG等]を選択し、得られる(PS)のTgを高めにすることで溶融開始の温度と完全溶融時の温度との差を小さくする方法が挙げられる。また、該比を小さくするには、芳香環骨格含有量を少なくするか、(x)および(y)として、逆に低結晶性(対称性の低い)構造を有する化合物[例えば、(x)ではイソフタル酸、(y)ではビスフェノールAのPO付加物、PG等]を選択し、得られる(PS)のTgを低めにすることで、溶融開始の温度と完全溶融時の温度との差を大きくする方法が挙げられる。
(PS)の貯蔵弾性率G’は、無機繊維不織布製造時の加熱工程におけるバインダーの溶融特性および無機繊維不織布の機械的強度の観点からG’(140)は好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは2,000〜10,000、G’(160)は好ましくは100〜10,000、さらに好ましくは200〜5,000である。本発明における(PS)の貯蔵弾性率G’は後述の方法で測定することができる。
(PS)のピークトップ分子量(以下Mpと略記。測定は後述の条件でのGPC法による。)は、前記(PS)の貯蔵弾性率G’(140)と相関性が高く、G’(140)を前記好ましい範囲にするとの観点から好ましくは12,000〜25,000、さらに好ましくは15,000〜22,000である。
上記GPCの測定条件は次のとおりである。
<GPC測定条件>
[1]装置 :HLC−8220[東ソー(株)製]
[2]カラム :TSKgel SuperMultiporeHZ−M
[東ソー(株)製]
[3]溶離液 :THF
[4]基準物質:ポリスチレン
[5]注入条件:サンプル濃度2.5mg/ml、カラム温度40℃
(PS)中の芳香環骨格の含有量(重量%)は、(PS)のG’(140)/G’(160)比を前記範囲および好ましい範囲にするとの観点から好ましくは35〜45%、さらに好ましくは37〜42%である。
ここで芳香環骨格とは炭素原子のみで構成されるベンゼン環およびその縮合環骨格を意味することとする。本発明における芳香環骨格の含有量(重量%)は、後述の紫外可視吸収スペクトル法により求めることができる。
(PS)の重縮合時の反応温度は、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは180〜230℃である。該重縮合反応は通常常圧または減圧(例えば10kPa以下)で行われる。沸点が190℃未満の(x)および/または(y)を使用する場合は、揮発防止のために加圧下で反応させることもできる。また、該反応は得られるポリエステル樹脂の着色防止の観点から窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
(x)および(y)を150〜250℃でMpが12,000〜25,000になるまで反応させることで、G’(140)を1,000〜20,000にすることができる。
[無機繊維不織布用バインダー(X)]
本発明における無機繊維不織布用バインダー(X)は、(PS)を粉砕し、目開きの異なる篩で分級して粒度分布を調整した樹脂粒子(A)を得た後、後述の添加剤(B)を添加することで得られる。
(A)は、例えば分級スクリーン(0.2〜3mmφ丸穴)を装着した防音ケース付き高速衝撃式粉砕機[商品名「MIKRO−PULVERIZER」、型番「AP−BL」、ホソカワミクロン(株)製。以下高速ハンマーミルと表記。]を用いて例えばフィード量11.4〜13.8g/minで(PS)を連続投入しながら、例えば回転数10,000〜20,000rpmで粉砕し、該分級スクリーンを通過してきた粒子を、目開きの異なる篩を組み合わせる等で篩い分けることにより得ることができる。
(A)の体積平均粒子径Dvは、粉体流動性および無機繊維不織布の機械的強度の観点から、好ましくは60〜350μm、さらに好ましくは120〜250μmである。ここにおいて、Dvはレーザー回折散乱法により求めることができ、測定装置としては、例えば粒度分布測定器[商品名「マイクロトラックMT3000II 粒度分析計」、日機装(株)製](以下マイクロトラックと略記)が挙げられる。後述の実施例におけるDvはこの方法に従った。
無機繊維不織布用バインダー(X)は前記(A)を含有してなり、必要に応じて、ブロッキング防止剤(B1)、滑剤(B2)および親水性付与剤(B3)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(B)を含有させることができる。これらの添加剤(B)は、通常(PS)を粉砕し、篩い分けして(A)を得た後に添加される。
(B)の合計の使用量は、(A)の重量に基づいて通常8%以下、添加効果および無機CS間の結合性の観点から好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%である。
ブロッキング防止剤(B1)としては、高級脂肪酸もしくはその塩、ケイ素もしくは金属の酸化物、ケイ素もしくは金属の炭化物、炭酸カルシウム、タルク、有機樹脂、およびこれらの混合物からなる微粒子等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、C8〜24の脂肪酸、例えばラウリン酸、ステアリン酸;高級脂肪酸の塩としては、上記高級脂肪酸の、アルカリ金属(Li、Na、K等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba等)、Zn、Cu、Ni、CoおよびAl等の塩;ケイ素もしくは金属の酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等;ケイ素もしくは金属の炭化物としては、炭化ケイ素、炭化アルミニウム等;有機樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、セルロースパウダー等が挙げられる。これらのうち、(A)のブロッキング防止および粉体流動性の観点から好ましいのは高級脂肪酸金属塩、およびケイ素もしくは金属の酸化物である。ケイ素酸化物の市販品としては、「AEROSIL 200」、「AEROSIL 380」、「AEROSIL R972」[商品名、いずれも日本アエロジル(株)製]等が挙げられる。
(B1)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、バインダーのブロッキング防止および無機CS間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
滑剤(B2)としては、ワックス、低分子量ポリエチレン、高級アルコール、高級脂肪酸(金属塩)、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
ワックスとしては、カルナウバワックス等;低分子量ポリエチレンとしては、Mn1,000〜10,000のポリエチレン等;高級アルコールとしては、C10〜24、例えばステアリルアルコール;高級脂肪酸エステルとしては、前記C8〜24の高級脂肪酸と多価(2〜4)アルコールのAO(C2〜3)付加物とのエステル(EGのEO5モル付加物のモノステアレート等);高級脂肪酸アミドとしては、C10〜40、例えばステアリン酸アミドが挙げられる。
これらのうち、(A)の粉体流動性および無機CS間の結合性の観点から好ましいのは、高級脂肪酸と多価アルコールのAO付加物とのエステルおよび高級脂肪酸アミドである。
(B2)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、(A)の粉体流動性および無機CS間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
親水性付与剤(B3)としてはポリビニルアルコール(Mn1,000〜10,000)、カルボキシルメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、PEG(Mn200〜20,000)、PEG(Mn100〜2,000)鎖含有オルガノポリシロキサン(Mn200〜50,000)、デンプン、ポリアクリル酸ナトリウム(Mn500〜20,000)、第4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリマー等が挙げられる。
これらのうち、後述の無機繊維不織布の製造時に噴霧される水と(X)との親和性および無機CS間の結合性の観点から好ましいのはPEGおよびPEG鎖含有オルガノポリシロキサンである。
(B3)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、後述の無機CS積層体上に噴霧される水と(X)との親和性および無機CS間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
[無機繊維不織布]
本発明の無機繊維不織布は、後述の無機CS積層体中の無機CS間を、前記バインダー(X)で結合して得られる。
ここにおいて無機繊維には、石、スラグ、ガラス等の溶融物を繊維化して得られる鉱物繊維、および炭素繊維等が含まれる。
該溶融物は、所望の物性値を有する石、岩、鉱物等を混合した鉱物組成物を炉内で溶融することにより得られる。該鉱物繊維の具体例としては、ガラス繊維等が挙げられる。これらの製造方法としては、ダイレクトメルト法、マーブルメルト法等が挙げられ特に限定されることはない。
前記ガラス繊維は、クレー(SiO2、Al23)、コレマナイト(B23、CaO)
等をダイレクトメルト法等により溶融し、紡糸される。ガラス繊維には、これらの原料の組成比によってEガラス(一般用)、Cガラス(耐酸性)、Sガラス(高強度)等に区分され、FRP用強化材として広く用いられるのはEガラス、Sガラスである。
前記炭素繊維は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタール等の副成物)
を原料としてこれらを高温で炭化させて形成される繊維であり、アクリル繊維を使った炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチを使った炭素繊維はピッチ(PITCH)系と一般的に称される。
これらの無機繊維のうち、FRP等への適用におけるマトリックス樹脂との接着性の観点から好ましいのはガラス繊維および炭素繊維、さらに好ましいのはガラス繊維である。
本発明の無機繊維不織布は、具体的には例えば以下の工程で製造することができる。
(1)金網上に無機CSを方向性無秩序に均一な厚みになるように散布して無機CS積層体を得る。
(2)所定量の水を該積層体の上面または下面側から該無機CS積層体の表面全体が均一に濡れるように霧吹きにて噴霧する。
(3)所定量のバインダーを該無機CS積層体の上面側から均一に散布して、付着させる。
(4)該無機CS積層体表面の全体が湿るように霧吹きにて所定量の水を上面側から噴霧し、所定量のバインダーを均一に散布して、付着させる。
(5)上記(4)の工程は必要により、さらに1回または2回以上繰り返してもよい。
(6)上記(5)までの工程で得られたバインダー付着積層体を85〜200℃で1〜10分間加熱した後70〜230℃に温度調整した加圧成形機により0.01〜5MPaでプレス(加熱プレス成形)、または該加熱後冷却しながらロール型プレス機(ロール温度は0〜30℃に温度調整しておく)により0.01〜5MPaの圧力でプレス(冷却プレス成形)してバインダーで結合された無機繊維不織布を得る。
該無機繊維不織布の目付量(1m2当たりの無機繊維不織布重量、単位はg/m2、以下、数値のみを示すことがある)は、用途に応じて40〜950が使い分けられる。例えば、自動車天井材用であれば、40〜200、好ましくは80〜150である。また、船舶・建材用であれば200〜950、好ましくは300〜600である。
ここにおいて不織布とは、CS積層体にバインダーを付着させ、加熱して該バインダーを溶融後、該積層体中のCS間を接着したものであり、厚みが0.05〜2mm程度のものを指す。
無機CS積層体の重量に基づくバインダーの付着割合[バインダー付着量(%)]は、用途に応じて無機繊維不織布の機械的強度およびハンドリング性(柔軟性、無機繊維強化プラスチック成形品作成時の成形型へのフィット性等)の観点から好ましい範囲が決まる。たとえば、自動車天井材用であれば、6〜20%、さらに好ましくは8〜15%である。また船舶・建材用であれば、1〜5%、さらに好ましくは2.5〜4%である。
[無機繊維強化プラスチック成形品]
本発明の無機繊維強化プラスチック(FRP)成形品は、本発明の無機繊維不織布を強化材として成形してなる。該成形品の成形法については特に制限されることはなく、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、プリフォーム法、マッチドダイ法およびSMC法等が挙げられる。これらのうち例えばハンドレイアップ法は通常以下の手順で行われる。
(1)成形型表面に離型剤を塗布する。
(2)ローラー等を用いて均一な厚みになるよう室温(15〜25℃)でマトリックス樹脂(不飽和ポリエステル樹脂等)を成形型表面に塗布する。
(3)約40℃に温度調整した温風炉内で該樹脂をゲル化させる。
(4)無機繊維不織布を成形型表面にフィットさせ、マトリックス樹脂をスチレンモノマー等で希釈した溶液をローラー等により無機繊維不織布上に積層し、ローラーにより空気抜きを行う。
(5)積層体を温風炉内で硬化させる。
(6)型から取り出し成形品を得る。
ハンドレイアップ法を含む前記成形法で得られる成形品のマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、変性アクリル樹脂、フラン樹脂等)、および熱可塑性樹脂(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂等)が挙げられる。
これらのうち、例えば上記ハンドレイアップ法の場合は、熱硬化性樹脂が用いられ、成形時の作業性の観点から好ましいのは、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂である。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、%は特記する場合以外は重量%を表す。
実施例1
(1)ポリエステル樹脂(PS−1)の製造
反応容器にPG1,314部、テレフタル酸1,148部、ジブチルスズオキシド1.5部を仕込み、窒素ガスで0.3MPaまで加圧したのち220℃まで昇温した。同温度で6時間反応させ、反応容器内の圧力を0.3MPaから2kPaに減圧し、さらに1時間反応させた。圧力を常圧に戻した後、180℃に冷却した。そこへDEG247.4部を仕込み、常圧のまま同温度で2時間撹拌した後、220℃まで昇温した。同温度で2kPaまで減圧し、Mpが17,500になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−1)を得た。
(2)バインダー(X−1)の製造
(PS−1)100gを高速ハンマーミルを用いてフィード量12.7g/min、回転数12,500rpmで粉砕し、該高速ハンマーミルの粉砕部出口に装着された1.0mmφ丸穴分級スクリーンを通過させて粉砕物を分級した。分級して得られた樹脂粉末を目開き350μmの篩で篩い分け、これを通過した(PS)粒子(A−1)を得た。(A−1)100部にブロッキング防止剤(B−1)[商品名「AEROSIL 200」、日本アエロジル(株)製]0.2部を加えた後、混合しバインダー(X−1)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−1)の製造
ガラスストランド[商品名「ロービングERS2310−821」、セントラル硝子(株)製、以下同じ。]を約5cm長さにカットし、ガラスチョップドストランド(ガラスCS)を得た。離型処理した奥行き21cm×幅27cmのステンレス金網(搬送用ネット)に該ガラスCS24.8gを方向性無秩序に均一厚みになるよう散布して無機繊維積層体とし、次に該積層体の上面側から霧吹きにて水を均一噴霧して、該積層体に7.4gの水[無機繊維積層体の重量に対して30%を付着させた。
次に該積層体の上面側からバインダー(X−1)0.74g[無機繊維積層体重量に対して3%]を均一に付着させた。その後、200℃の循風乾燥機内で3分間、水分の除去およびバインダーの溶融をさせ、つづいてロール温度を30℃に調整したロール型プレス機[機種名「ESTロールプレス DIP−400E」、えびの興産(株)製、以下同じ。]により冷却プレス(プレス圧力0.2MPa、プレス直前積層体表面温度140℃、以下同じ。)し、目付量450g/m2の無機繊維不織布(NW−1)を得た。
実施例2
(1)ポリエステル樹脂(PS−2)の製造
反応容器にビスフェノールAのEO2モル付加物430.9部、ビスフェノールAのPO3モル付加物500.1部、EG296.9部、イソフタル酸1,003部、ジブチル
スズオキシド2.5部を仕込み、窒素雰囲気下180℃、常圧でテレフタル酸が全量溶解するまで約4時間撹拌した。その後、220℃まで昇温し、2kPaの減圧下で反応させ、Mpが13,300になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−2)を得た。
(2)バインダー(X−2)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS−2)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X−2)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−2)の製造
実施例1において(X−1)を(X−2)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW−2)を得た。
実施例3
(1)ポリエステル樹脂(PS−3)の製造
反応容器にビスフェノールAのPO3モル付加物191.0部、PG87.1部、テレフタル酸166.1部、イソフタル酸89.4部、ジブチルスズオキシド0.7部を仕込み、窒素雰囲気下220℃、常圧で7時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下で反応させた。Mpが12,500になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−3)を得た。
(2)バインダー(X−3)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS−3)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X−3)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−3)の製造
実施例1において(X−1)を(X−3)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW−3)を得た。
実施例4
(1)ポリエステル樹脂(PS−4)の製造
反応容器にEG248部、DPG503.9部、テレフタル酸1,053.9部、ジブチルスズオキシド1.3部を仕込み、窒素雰囲気下180℃、常圧で4時間、さらに220℃で3時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下で反応させた。Mpが24,000になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−4)を得た。
(2)バインダー(X−4)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS−4)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X−4)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−4)の製造
実施例1において(X−1)を(X−4)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW−4)を得た。
実施例5
(1)ポリエステル樹脂(PS−5)の製造
反応容器にビスフェノールAのPO3モル付加物1,975.5部、テレフタル酸244.5部、イソフタル酸407.6部、無水フタル酸145.3部、ビス〔2,2’−[(2−ヒドロキシエチル)イミノ−κN]−ビス[エタノレート−κO]〕チタネート3.5部を仕込み、窒素雰囲気下220℃、常圧で8時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下で反応させた。Mpが19,400になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−5)を得た。
(2)バインダー(X−5)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS−5)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X−5)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−5)の製造
実施例1において(X−1)を(X−5)に代えたこと、およびガラスストランドを炭素繊維ストランド[商品名「パイロフィルTR30S3L」、PAN系、目付200mg
/m(繊維1m当たりの重量)、三菱レイヨン(株)製]に代えたこと以外は実施例1と
同様にして無機繊維不織布(NW−5)を得た。
実施例6
[無機繊維不織布(NW−6)の製造]
離型処理した奥行き21cm×幅27cmのステンレス金網(搬送用ネット)に前記ガラスCS5.6gを方向性無秩序に均一厚みになるよう散布して無機繊維積層体とし、次に該積層体の上面側から霧吹きにて水を均一噴霧して、該積層体に6.0gの水[無機繊維積層体の重量に対して107%]を付着させた。
次に該積層体の上面側からバインダー(X−1)0.62g[無機繊維積層体重量に対して11%]を均一に付着させた。その後、200℃の循風乾燥機内で3分間、水分の除去およびバインダーの溶融をさせ、つづいてロール表面30℃に温度調整したロール型プレス機により冷却プレスし、目付量110g/m2の無機繊維不織布(NW−6)を得た。
実施例7
[無機繊維不織布(NW−7)の製造]
離型処理した奥行き21cm×幅27cmのステンレス金網(搬送用ネット)に前記ガラスCS32.8gを方向性無秩序に均一厚みになるよう散布して無機繊維積層体とし、次に該積層体の上面側から霧吹きにて水を均一噴霧して、該積層体に9.8gの水[無機繊維積層体の重量に対して30%]を付着させた。
次に該積層体の上面側からバインダー(X−1)1.2g[無機繊維積層体重量に対して3.7%]を均一に付着させた。その後、200℃の循風乾燥機内で3分間、水分の除去およびバインダーの溶融をさせ、つづいてロール温度を30℃に調整したロール型プレス機により冷却プレスし、目付量600g/m2の無機繊維不織布(NW−7)を得た。
実施例8
(1)ポリエステル樹脂(PS−6)の製造
反応容器に1,4−ブタンジオール410.9部、テレフタル酸330.0部、イソフタル酸420.0部、ビス〔2,2’−[(2−ヒドロキシエチル)イミノ−κN]−ビス[エタノレート−κO]〕チタネート2.0部を仕込み、窒素雰囲気下220℃、常圧で8時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下で反応させた。Mpが25,000になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS−6)を得た。
(2)バインダー(X−6)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS−6)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X−6)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW−8)の製造
実施例1において(X−1)を(X−6)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW−8)を得た。
比較例1
(1)ポリエステル樹脂(PS’−1)
反応容器にビスフェノールAのPO3モル付加物1,638.6部、無水マレイン酸422部、ジブチルスズオキシド0.14部を仕込み、窒素雰囲気下180℃、常圧で5時間反応させた後、200℃に昇温し、2kPaの減圧下でさらに反応させた。Mpが15,000になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS’−1)を得た。
(2)バインダー(X’−1)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS’−1)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X’−1)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW’−1)の製造
実施例1において(X−1)を(X’−1)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW’−1)を得た。
比較例2
(1)ポリエステル樹脂(PS’−2)の製造
反応容器にビスフェノールAのEO2モル付加物1,691.6部、テレフタル酸825.4部、ジブチルスズオキシド1.5部を仕込み、窒素雰囲気下220℃、常圧で7時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下でさらに反応させた。Mpが16,000になったところで取り出し、ポリエステル樹脂(PS’−2)を得た。
(2)バインダー(X’−2)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS’−2)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X’−2)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW’−2)の製造
実施例1において(X−1)を(X’−2)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW’−2)を得た。
比較例3
(1)ポリエステル樹脂(PS’−3)の製造
実施例3(1)ポリエステル樹脂(PS−3)の製造において、ビスフェノールAのPO3モル付加物191.0部を63.7部、PG87.1部を131.7部にそれぞれ代えたこと以外は実施例3(1)と同様に反応させて、Mpが26,000になったところで取り出し、(PS’−3)を得た。
(2)バインダー(X’−3)の製造
実施例1において(PS−1)を(PS’−3)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてバインダー(X’−3)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW’−3)の製造
実施例1において(X−1)を(X’−3)に代えたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維不織布(NW’−3)を得た。
比較例4
(1)ポリエステル樹脂(PS’−4)の製造
反応容器に1,4−シクロヘキサンジオール968.7部、テレフタル酸756.1部、フタル酸504.1部、三酸化アンチモン2.1部を仕込み、窒素雰囲気下220℃常圧で6時間反応させた後、同温度で2kPaの減圧下で反応させた。Mpが18,000になったところで取り出し、(PS’−4)を得た。
(2)バインダー(X’−4)の製造
実施例1の(PS−1)を(PS’−4)に代えたこと以外は実施例1と同様にして(X’−4)を得た。
(3)無機繊維不織布(NW’−4)の製造
実施例1の(X−1)を(X’−4)に代えたこと以外は実施例1と同様にして(NW’−4)を得た。
上記で得られたポリエステル樹脂および無機繊維不織布について以下の方法に従って性能評価した。結果を表1、2に示す。
<評価方法>
(1)貯蔵弾性率G’(dyn/cm2
JIS K7244−10「プラスチック―動的機械特性の試験方法―第10部:平行平板振動レオメータによる複素せん断粘度」に準じて、粘弾性測定装置[機器名「ARES−24A」、レオメトリック(株)製]を用いて以下の手順にてポリエステル樹脂(PS)の貯蔵弾性率G’を測定する。(PS)を直径25mm、厚み2.5mmの円柱形に圧縮成形し、測定装置に取り付けた治具(25mmパラレルプレート)にはさみ、(PS)の軟化点より5℃高い温度で(PS)を溶融させる。完全に溶融したところで、治具のパラレルプレート間の距離を2.13mmに狭め、プレートからはみ出た樹脂を除去する。その後、80℃(測定開始温度)まで冷却する。周波数1.0Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で、170℃になるまで8秒間隔でG’を測定し、140℃および160℃到達時の貯蔵弾性率G’を読み取る。
(2)芳香環骨格含有量(%)
下記の紫外可視吸収スペクトル法により求められる。
<紫外可視吸収スペクトル測定条件>
装置 :UV−3600 [(株)島津製作所製]
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
サンプル濃度:4mg/L
セルの光路長:1mm
芳香環骨格含有量は以下の手順で求められる。
(i)検量線の作成
ビスフェノールAを7.8、15.7、47.1、62.8、78.5および94.2重量%(芳香環骨格含有量として、それぞれ5、10、30、40、50、60重量%)となるようにTHFに溶解させて検量線用サンプルS1〜S6を作成する。さらにS1〜S6自体の濃度が4mg/LとなるようにTHFでさらに希釈し、測定サンプルK1〜K6を作成した。紫外可視吸収スペクトル法により260nmにおけるK1〜K6の各吸光度を縦軸、芳香環骨格含有量を横軸にしてプロットし検量線を得る。
(ii)紫外可視吸収スペクトル法による(PS)の260nmにおける吸光度の測定
(PS)をTHFに溶解させて濃度4mg/Lの溶液とした。この液を光路長1mmのセルに入れ、紫外可視吸収スペクトルで260nmにおける吸光度を測定した。検量線を用いて、芳香環骨格含有量を求めた。
(3)無機繊維不織布の引張強度(kgf)(機械的強度の評価)
各無機繊維不織布を2枚ずつ作成し、無機繊維不織布1枚あたりタテ150mm×ヨコ50mmの試験片を4枚ずつ切り出し、そのうち7枚を引張強度用試験片に供した。[残り1枚は後述(4)の面積率評価用試験片に供した。]
これらについてJIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」の「7.4引張強さ」
に準じて引張強度を測定し、試験片7枚の平均値を求め、該平均値を下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:10kgf以上
○:7kgf以上10kgf未満
△:3kgf以上7kgf未満
×:3kgf未満
(4)無機CS交点融着被覆面積率(%)(バインダーの溶融特性)
以下の手順で求めた。
(i)無機繊維不織布の無機CSに融着したバインダーの染色
ローダミン1g、1%酢酸水溶液2g、水道水98gからなる水溶液(染色液)に無機繊維不織布(タテ150mm×ヨコ50mm)を浸し、47℃で2時間静置した。その後、試験片を取り出し、ソーピング液〔「グランアップAX−08」[商品名、三洋化成工業(株)製、ソーピング剤]0.3g、水道水99.7gからなる水溶液〕100gおよび水道水1,000gで染色液を十分すすぎ流した。
(ii)無機繊維不織布の表面の一部(縦1.74mm×横1.3mmの範囲)をマイクロスコープ[機器名「デジタルHFマイクロスコープVH−8000」、(株)キーエンス製]を用いて倍率175倍のレンズ[製品名「VH−Z25」、被写界深度0.3mm、(株)キーエンス製]で写真撮影した。
得られた画像を画像処理ソフト[製品名「WinROOF」、version5.5、三谷商事(株)製]で解析することにより、ストランド交点(すなわち四角形)の総面積(SA)と、交点に融着して(SA)を被覆する部分のバインダーの総面積(SB)を求め
、下記式から交点融着被覆面積率(%)を求めた。

交点融着被覆面積率(%)=100×SB/SA

該面積率の評価は、無機繊維不織布1枚あたり場所を変えて表側および裏側の表面各10箇所について行い、合計20個の値の平均値を算出してこれを該無機繊維不織布の交点
融着面積率(%)とし、下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:70%以上
○:55%以上70%未満
△:40%以上55%未満
×:40%未満
Figure 2014167096
Figure 2014167096
表1、2の結果から、本発明のバインダーは比較のものに比べ、バインダーの溶融特性に優れ、機械的強度に優れる無機繊維不織布を与えることがわかる。
本発明のバインダーで無機CSを結合させてなる無機繊維不織布は、無機繊維強化プラスチック成形品用の強化材等として用いられ、該成形品は、自動車用部材(成形天井材等)、小型船舶(カヌー、ボート、ヨット、モーターボート等)の船体、住宅用部材(建材、バスタブ、浄化槽等)、風車のブレード等の幅広い分野に適用できることから、極めて有用である。

Claims (8)

  1. 芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体(x)と、ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(ポリ)アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール(y)とを構成単位とするポリエステル樹脂(PS)を含有してなり、該(PS)の140℃における貯蔵弾性率G’(140)と160℃における貯蔵弾性率G’(160)との比が2〜10である無機繊維不織布用バインダー(X)。
  2. (PS)の貯蔵弾性率G’(140)が1,000〜20,000dyn/cm2である請求項1記載のバインダー。
  3. (PS)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のピークトップ分子量が12,000〜25,000である請求項1または2記載のバインダー。
  4. (PS)中の芳香環骨格の含有量が35〜45重量%である請求項1〜3のいずれか記載のバインダー。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載のバインダー(X)を用いて無機繊維チョップドストランド積層体中の無機繊維チョップドストランド間を結合させてなる無機繊維不織布。
  6. 請求項5記載の不織布を強化材として成形してなる無機繊維強化プラスチック成形品。
  7. 成形品が、自動車成形天井材、小型船舶船体、建材、バスタブ、浄化槽または風車のブレード用である請求項6記載のプラスチック成形品。
  8. 無機繊維チョップドストランド積層体にバインダーを付着させ、加熱してバインダーを溶融後、該積層体をプレス成形して無機繊維不織布を製造する方法において、請求項1〜4のいずれか記載のバインダー(X) を用いることを特徴とする無機繊維不織布の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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