JP2011225632A - ノルボルネン系共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性、耐熱性、低吸水性、電気絶縁特性に優れた、高分子量のノルボルネン系共重合体を提供する。
【解決手段】アニオン性炭化水素と、周期表第15族の元素を含む中性配位子と、陰性の電子供与性配位子とを構成要素とする遷移金属化合物からなる[M(K)(L1)(L2)]nで表す主触媒と主触媒と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒とからなる触媒系を用いて重合することを特徴とする、ノルボルネン骨格とエステル基の間にメチレン鎖を1つ導入したモノマーユニットを含む特定なノルボルネン系共重合体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】アニオン性炭化水素と、周期表第15族の元素を含む中性配位子と、陰性の電子供与性配位子とを構成要素とする遷移金属化合物からなる[M(K)(L1)(L2)]nで表す主触媒と主触媒と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒とからなる触媒系を用いて重合することを特徴とする、ノルボルネン骨格とエステル基の間にメチレン鎖を1つ導入したモノマーユニットを含む特定なノルボルネン系共重合体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、極性基を有するノルボルネンの共重合体の製造方法に関する。
従来、ノルボルネン系重合体を代表とする環状オレフィン系付加重合体は耐熱性及び透明性に優れる有機材料として、光学フィルム等の分野で工業的に利用されている。このような環状オレフィン系付加重合体はTi、Zr、Cr、Co、Ni、Pdなどの遷移金属化合物を含む触媒を用いて環状オレフィン系モノマーを付加重合することにより製造できることが種々報告されている。
例えば、欧州特許出願公開第0445755号明細書(特許文献1)では、5〜10族元素の遷移金属化合物を主触媒とし、メチルアルミノキサン(MAO)を助触媒として用いることで数平均分子量が100万を超えるノルボルネンの単独付加重合体が製造できることが報告されている。しかし、この触媒系では、極性基を有する、より重合の難易度の高いノルボルネンの重合は実施されておらず、極性基の影響による触媒失活が懸念されると共に、得られた重合体の分子量分布(Mw/Mn)も2.5を超え、単分散性のものではなかった。
一方、米国特許第3330815号明細書(特許文献2)には、極性基を有するノルボルネンの単独付加重合及びノルボルネンとの共重合体が報告されている。しかし、この特許には、数平均分子量が1万を超えた重合体を製造した例が無く、かつ触媒の重合活性も低く、ポリマーの製造法とは言い難いものであった。
さらに、極性基を有するノルボルネンの単独付加重合及びノルボルネンとの共重合を改善する方法が特許第3678754号明細書(特許文献3)や特開2008−31304号公報(特許文献4)に開示されている。これらの方法では、重合活性と重合体の分子量がいずれも向上したものの、実施例で開示されている共重合体の数平均分子量は20万未満であり、種々の機械物性が実用的な値となる数平均分子量が20万以上の共重合体は製造できていなかった。なお、特許文献4の表1では数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)が入れ替わって記載されている。これはMw/Mnが2.5前後であることからも明らかであり、表1を正しく解釈すると、数平均分子量が20万以上の共重合体は存在していなかったことが明白である。
これらの方法に対し、シクロペンタジエニル配位子を有する周期表第8〜10族遷移金属化合物を主触媒とし、これに主触媒と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できる助触媒を組み合わせることにより極性基を有するノルボルネンとノルボルネンとの付加共重合を効率良く実施でき、高分子量の共重合体が得られることが国際公開第06/064814号パンフレット(特許文献5)に開示されている。しかし、この公報に開示されている極性基を有するノルボルネン化合物はノルボルネン骨格に直接エステル基が導入された構造をしており、その炭素−炭素二重結合部と極性基との間の距離が近いために、触媒である遷移金属錯体に容易に配位し、触媒活性の低下を招いていた。従って、ノルボルネン単独付加重合では高活性で高分子量の重合体を製造可能であるが、極性基を有するノルボルネン化合物を使用した場合には高分子量の共重合体が得られるものの触媒活性は低かった。
また、Organometallics,25,p.4588〜4595(2006)(非特許文献1)には、(tBu3P)Pd(Me)Clを主触媒とし、これにナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート{NaB[3,5−(CF3)2C6H3]4}を助触媒として組み合わせることで、極性基を有するノルボルネンとノルボルネンとの付加共重合を実施できることが報告されている。しかし、この報告にある極性基を有するノルボルネン化合物もノルボルネン骨格に直接エステル基が導入された構造をしており、特許文献5に開示されている方法と同様の理由により触媒活性の低下が見られた。さらに、製造された共重合体の数平均分子量は14万程度にとどまっており、高分子量の重合体は製造できていなかった。
これらの先行技術文献の記載から、極性基を有するノルボルネン化合物の付加共重合において数平均分子量が20万以上の高分子量の共重合体を得るには、高活性の触媒系を見出すことに加え、極性基の入ったノルボルネン化合物を触媒活性の低下を抑える構造に限定することも必要であると考えられる。
このように極性基を有するノルボルネン系付加共重合体の製造方法において、高活性な触媒と極性基を有するノルボルネン化合物の組み合わせを実現して、実用的な機械物性を有する共重合体を得た例は無い。従って、高活性な触媒と極性を有するノルボルネン化合物との適切な組み合わせを見出し、実用化が可能な共重合体を効率的に製造する方法が望まれていた。
Organometallics,25,p.4588〜4595(2006)
本発明は、極性基を有するノルボルネン化合物の高分子量の付加共重合体の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アニオン性炭化水素と、周期表第15族の元素を含む中性配位子と、陰性の電子供与性配位子とを構成要素とする遷移金属化合物からなる主触媒と主触媒と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒とからなる触媒系と、重合性炭素−炭素二重結合と極性基(エステル基)との間の距離を遠ざけるためにノルボルネン骨格とエステル基の間にメチレン鎖を1つ導入したノルボルネン化合物を組み合わせることにより、極性基を有するノルボルネン化合物の高分子量付加共重合体を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[15]に関する。
[1]一般式(1)
(式中、Mは1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族元素より選択される1つの遷移金属を表し、Kは炭化水素基を表し、L1は周期表第15族の元素を含む中性の電子供与性配位子を表し、L2は陰性の電子供与性配位子を表し、nは1または2である。)
で示される主触媒(A)と、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒(B)とからなる触媒を用いて重合することを特徴とする、一般式(2)
及び一般式(3)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン系共重合体の製造方法。
[2]式(1)中のMがコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、または白金(Pt)のいずれかである前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[3]式(1)中のMがニッケルまたはパラジウムである前記2に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[4]式(1)中のL1が、価数が3であるリン(P)を含む中性の電子供与性配位子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[5]式(1)中のL1が、炭素数1〜8のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンである前記1または4に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[6]式(1)中のL1が、トリ−t−ブチルホスフィンである前記1、4または5に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[7]式(1)中のKが炭素数1〜6のアルキル基である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[8]式(1)中のKがメチル基である前記7に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[9]式(1)中のL2が、ハロゲン原子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[10]式(1)中のL2が、塩素原子である前記9に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[11]助触媒(B)が、ホウ素を含む非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[12]助触媒(B)がトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである前記11に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[13]数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である前記1〜12のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[14]一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみからなる前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[15]一般式(2)中のR1がメチル基であり、R2、及び一般式(3)中のR3及びR4が水素原子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[1]一般式(1)
で示される主触媒(A)と、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒(B)とからなる触媒を用いて重合することを特徴とする、一般式(2)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン系共重合体の製造方法。
[2]式(1)中のMがコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、または白金(Pt)のいずれかである前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[3]式(1)中のMがニッケルまたはパラジウムである前記2に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[4]式(1)中のL1が、価数が3であるリン(P)を含む中性の電子供与性配位子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[5]式(1)中のL1が、炭素数1〜8のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンである前記1または4に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[6]式(1)中のL1が、トリ−t−ブチルホスフィンである前記1、4または5に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[7]式(1)中のKが炭素数1〜6のアルキル基である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[8]式(1)中のKがメチル基である前記7に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[9]式(1)中のL2が、ハロゲン原子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[10]式(1)中のL2が、塩素原子である前記9に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[11]助触媒(B)が、ホウ素を含む非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[12]助触媒(B)がトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである前記11に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[13]数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である前記1〜12のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[14]一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみからなる前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
[15]一般式(2)中のR1がメチル基であり、R2、及び一般式(3)中のR3及びR4が水素原子である前記1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
本発明によればノルボルネンと極性基を有するノルボルネン化合物の高分子量の付加共重合体を効率よく製造することができる。本発明により得られるノルボルネン系共重合体は優れた透明性、耐熱性、低吸水性、電気絶縁特性などを有し、光学用途、医療用途、電材用途、包装材料用途、構造材料用途などの多くの用途で利用できる。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[製造方法]
本発明の製造方法は、一般式(1)
(式中、Mは1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族元素より選択された1つの遷移金属を表し、Kは炭化水素基を表し、L1は、周期表第15族の元素を含む中性の電子供与性配位子を表し、L2は、陰性の電子供与性配位子を表し、nは1または2である。)
で示される主触媒(A)と、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒(B)とからなる触媒を用いて重合することを特徴とする、一般式(2)
及び一般式(3)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン系共重合体の製造方法である。
[製造方法]
本発明の製造方法は、一般式(1)
で示される主触媒(A)と、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒(B)とからなる触媒を用いて重合することを特徴とする、一般式(2)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン系共重合体の製造方法である。
以下、本発明で用いる主触媒(A)及び助触媒(B)について説明する。
[主触媒(A)]
主触媒(A)は一般式(1)
で示される。
式(1)におけるMは1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族元素より選択される1つの遷移金属を表す。具体例としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)などを挙げることができる。これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から好ましい元素は、コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金であり、ニッケル及びパラジウムを用いることがより好ましい。
[主触媒(A)]
主触媒(A)は一般式(1)
式(1)におけるMは1991年版周期表第8族元素、第9族元素、及び第10族元素より選択される1つの遷移金属を表す。具体例としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)などを挙げることができる。これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から好ましい元素は、コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金であり、ニッケル及びパラジウムを用いることがより好ましい。
式(1)におけるKは炭化水素基を表す。Kの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−シクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基;アリル基、メタリル基などの炭素数2〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基などの炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基が挙げられ、これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
式(1)におけるL1は、周期表第15族の元素を含む中性の電子供与性配位子である。第15族の元素としてはリン(P)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)などを挙げることができる。ここで、中性の電子供与性配位子とは、金属に供与できる電子として非共有電子対を持ち、かつ金属から閉殻構造を持つ形で取り除いたときに形式的に電荷を持たない配位子である。
L1は具体的には、一般式(4)
(式中、Eは周期表第15族元素より選択された1つの元素を表し、Y1、Y2、及びY3は、それぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖状または分枝鎖を有するアルキル基;炭素数3〜20の単環式または多環式シクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基、アルキルアリール基またはアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはアリーロキシ基を表す。)
で示される中性の電子供与性配位子が挙げられる。
で示される中性の電子供与性配位子が挙げられる。
式(4)におけるEの具体例としては、リン(P)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)などを挙げられ、これらのうち、3価のリンが好ましい。
式(4)におけるY1、Y2、及びY3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖を有するアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、ペンタフルオロフェニル基、アニシル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、ビフェニル基、メトキシビフェニル基などの炭素数6〜30のアリール基;ベンジル基、4−メトキシベンジル基などの炭素数6〜30のアラルキル基;エトキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基またはアリールオキシ基が挙げられ、これらは結合して環構造を取っていてもよい。
式(1)におけるL1の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(o−トルイル)ホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイト、トリフェニルアルシン、トリフェニルアンチモンなどを挙げられる。これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から、炭素数1〜8のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンが好ましく、トリ−t−ブチルホスフィン及びトリイソプロピルホスフィンがより好ましい。
式(1)におけるL2は、陰性の電子供与性配位子を表す。ここで、陰性の電子供与性配位子とは、金属に供与できる電子として非共有電子対を持ち、かつ金属から閉殻構造を持つ形で取り去ったときに形式的に負電荷を持つ配位子である。
L2の具体例としては、水素原子;酸素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基などの炭素数6〜20のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(t−ブチル)アミノ基、ジ(イソブチル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などの炭素数1〜20のアルキル置換基を有するジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基;アセチルアセトナト基;炭素数5〜20の置換アセチルアセトナト基;トリメチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;カルボニル基;カルボキシル基;トリフルオロメタンスルホナト基などのスルホナト基などが挙げられる。
L2の具体例としては、水素原子;酸素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基などの炭素数6〜20のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(t−ブチル)アミノ基、ジ(イソブチル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などの炭素数1〜20のアルキル置換基を有するジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基;アセチルアセトナト基;炭素数5〜20の置換アセチルアセトナト基;トリメチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;カルボニル基;カルボキシル基;トリフルオロメタンスルホナト基などのスルホナト基などが挙げられる。
これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点から、L2としてハロゲン原子を用いることが好ましく、塩素原子がより好ましい。
一般式(1)で示される主触媒(A)の好ましい具体例としては、(tBu)3PPd(Me)Cl、(tBu3P)Pd(Me)(OSO2CF3)、{[(o−CH3C6H4)3P]Pd(Me)Cl}2、{[(o−CH3C6H4)3P]Pd(Me)(OSO2CF3)}2、{[tBu2P(biphenyl−2−yl)]Pd(Me)Cl}2、[tBu2P(biphenyl−2−yl)]Pd(Me)(OSO2CF3)、[(iPr3P)Pd(Me)Cl]2などが挙げられる。
このような式(1)で示される遷移金属錯体は、例えばM.Yamashita、I.Takamiya、K.Jin、K.Nozaki、Organometallics、25、p.4588−4595(2006)(非特許文献1)に記載の方法で製造することができる。
[助触媒(B)]
本発明で用いられる助触媒(B)は、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である。これは1種を単独で用いてもよいし、数種類を組み合わせて用いてもよい。また、前記主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物以外にも、助触媒として有機アルミニウム化合物や、主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物を使用することもできる。
本発明で用いられる助触媒(B)は、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物である。これは1種を単独で用いてもよいし、数種類を組み合わせて用いてもよい。また、前記主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物以外にも、助触媒として有機アルミニウム化合物や、主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物を使用することもできる。
<主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物>
主触媒(A)と反応してカチオン性錯体を形成できるイオン性化合物とは、主触媒(A)を構成する陰性の電子供与性配位子(L2)を金属から引き抜くことができるカチオンと、非配位性アニオンとから構成される化合物である。主触媒(A)の金属からL2を引き抜くことによって主触媒(A)の金属上に正電荷が発生した状態がカチオン性錯体である。主触媒(A)が(tBu3P)Pd(Me)Cl、イオン性化合物がトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの場合のカチオン性錯体形成の反応式を以下に示す。
主触媒(A)と反応してカチオン性錯体を形成できるイオン性化合物とは、主触媒(A)を構成する陰性の電子供与性配位子(L2)を金属から引き抜くことができるカチオンと、非配位性アニオンとから構成される化合物である。主触媒(A)の金属からL2を引き抜くことによって主触媒(A)の金属上に正電荷が発生した状態がカチオン性錯体である。主触媒(A)が(tBu3P)Pd(Me)Cl、イオン性化合物がトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの場合のカチオン性錯体形成の反応式を以下に示す。
主触媒(A)と反応してカチオン性錯体を形成できるイオン性化合物としては、以下に挙げる非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物が挙げられる。
非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トルイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニルペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
前記カチオンとしては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、オキソニウムカチオン、フェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンが挙げられる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
オキソニウムカチオンの具体例としては、ヒドロキソニウムカチオン、メチルオキソニウムカチオンなどのアルキルオキソニウムカチオン、ジメチルオキソニウムカチオンなどのジアルキルオキソニウムカチオン、トリメチルオキソニウムカチオン、トリエチルオキソニウムカチオンなどのトリアルキルオキソニウムカチオンなどが挙げられる。
フェロセニウムカチオンの具体例としては、フェロセニウムカチオン、1,1−ジメチルフェロセニウムカチオン、1,1−ジエチルフェロセニウムカチオンなどのジアルキルフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
イオン性化合物の好ましい例は、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(フルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート等である。
これらのうち、触媒の重合活性を高くする観点からトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートを用いることがより好ましい。
<有機アルミニウム化合物>
有機アルミニウム化合物とは、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を有するアルミニウム化合物のことである。その例としては、有機アルミニウム、ハロゲン化有機アルミニウム、水素化有機アルミニウム、有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。
有機アルミニウム化合物とは、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を有するアルミニウム化合物のことである。その例としては、有機アルミニウム、ハロゲン化有機アルミニウム、水素化有機アルミニウム、有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。
このうち、有機アルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどが挙げられる。ハロゲン化有機アルミニウムとしては、例えば、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。水素化有機アルミニウムとしては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
有機アルミニウムオキシ化合物はアルミノキサンとも称され、一般式(−Al(R’)O−)xで示される直鎖状、あるいは環状重合体である。ここで、R’は炭素数1〜l0の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/またはR’O基で置換されたものも含む。xは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。R’としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基が挙げられる。
有機アルミニウム化合物として好ましいものは、ハロゲン化有機アルミニウム及び有機アルミニウムオキシ化合物であり、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、エチルクロロアルミノキサンがより好ましい。
<主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物>
主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物とは、電子を受容できる空の軌道を有する元素が、電子求引性基で置換された化合物である。
主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物とは、電子を受容できる空の軌道を有する元素が、電子求引性基で置換された化合物である。
主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物を構成する、電子を受容できる空の軌道を有する元素の具体例としては、ホウ素(B)、及びアルミニウム(Al)などを挙げることができる。
主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物を構成する、電子求引性基の具体例としては、フェニル基、4−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ナフチル基などの置換アリール基;フッ素、塩素などのハロゲン原子などを挙げることができる。
主触媒(A)をなす錯体の配位子の解離を促進する化合物の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(モノフルオロフェニル)ボロン、トリス(ジフルオロフェニル)ボロン、トリフェニルボロンなどが挙げられる。
本発明の好ましい態様の1つは、主触媒(A)として、一般式(1)において、Mがニッケル(Ni)またはパラジウム(Pd)であり、Kがメチル基(−CH3)であるか、フェニル基(−C6H5)であり、L1がトリアルキルホスフィンであるか、トリアリールホスフィンであり、L2が塩素(Cl)であるか、臭素(Br)である錯体を用い、助触媒(B)として、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}またはメチルアルミノキサン(MAO)を用いて、ノルボルネン系重合体を製造する方法である。
また、本発明の最も好ましい態様は、主触媒(A)として、一般式(1)において、Mがパラジウム(Pd)であり、Kがメチル(CH3)であり、L1がトリ(t−ブチル)ホスフィンであり、L2が塩素(Cl)であり、助触媒(B)として、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}を用いて、ノルボルネン系共重合体を製造する方法である。
[重合反応]
本発明の方法では、前記一般式(2)及び一般式(3)のモノマーユニットの元となる単量体並びに必要に応じて第三の単量体を、主触媒(A)及び助触媒(B)からなる触媒を用いる重合反応によりノルボルネン系共重合体を得る。一般式(2)及び一般式(3)のモノマーユニットの元となる単量体ならびに第三の単量体は、それぞれ主触媒(A)との反応性が異なるため、これらの単量体の仕込み比と、得られた共重合体中に含まれるモノマーユニットのモル比は必ずしも一致しない。
本発明では、上記主触媒(A)及び助触媒(B)を用いたノルボルネン系単量体の重合は懸濁重合、溶液重合、乳化重合のいずれで行ってもよい。溶液中で重合を行う場合には、触媒活性に悪影響を与えない溶媒を使用する必要がある。使用可能な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は混合して使用してもよい。
本発明の方法では、前記一般式(2)及び一般式(3)のモノマーユニットの元となる単量体並びに必要に応じて第三の単量体を、主触媒(A)及び助触媒(B)からなる触媒を用いる重合反応によりノルボルネン系共重合体を得る。一般式(2)及び一般式(3)のモノマーユニットの元となる単量体ならびに第三の単量体は、それぞれ主触媒(A)との反応性が異なるため、これらの単量体の仕込み比と、得られた共重合体中に含まれるモノマーユニットのモル比は必ずしも一致しない。
本発明では、上記主触媒(A)及び助触媒(B)を用いたノルボルネン系単量体の重合は懸濁重合、溶液重合、乳化重合のいずれで行ってもよい。溶液中で重合を行う場合には、触媒活性に悪影響を与えない溶媒を使用する必要がある。使用可能な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は混合して使用してもよい。
本発明の方法における主触媒(A)と助触媒(B)との使用割合は、各種の条件により異なるため一義的には定められないが、通常は(A)/(B)(モル比)で1/0.1〜1/10,000であり、好ましくは1/0.5〜1/5,000、より好ましくは1/1〜1/2,000である。
重合温度も特に制限されないが、一般には、−50℃〜150℃、好ましくは−10℃〜120℃、より好ましくは10℃〜60℃である。温度が低すぎると重合速度が遅くなり、温度が高すぎると触媒の活性が低下する。上記範囲内で重合温度を選択することにより、重合速度や分子量などを調整することができる。
重合時間も特に制限はなく、例えば1分間〜20時間であり、好ましくは1時間〜2時間である。また、反応は窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
重合反応終了後、生成物であるノルボルネン系共重合体は、公知の操作、処理方法(例えば、再沈殿など)により後処理を行い、ろ過分別後、乾燥を行うことで単離される。
[ノルボルネン系共重合体]
本発明の方法で得られる共重合体は、下記一般式(2)
及び一般式(3)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示されるモノマーユニットからなるノルボルネン系共重合体である。本発明の触媒を用いることにより、数平均分子量(Mn)は200,000〜2,000,000のノルボルネン系共重合体を得ることができる。
本発明の方法で得られる共重合体は、下記一般式(2)
で示されるモノマーユニットからなるノルボルネン系共重合体である。本発明の触媒を用いることにより、数平均分子量(Mn)は200,000〜2,000,000のノルボルネン系共重合体を得ることができる。
一般式(2)におけるR1が表す炭素数1〜10のアルキル基のうち、炭素数3〜10のアルキル基は直鎖状でも分岐していてもよい。
直鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ぺンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などが挙げられる。
分岐を有するアルキル基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基などが挙げられる。
分岐を有するアルキル基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基などが挙げられる。
これらの中でもR1としては、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が経済性の面で好ましい。モノマー製造コストの観点からは、メチル基がより好ましい。
一般式(2)におけるR2及び一般式(3)におけるR3及びR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、直鎖状あるいは分岐していてもよい。これらのアルキル基としては前述のR1のアルキル基と同様のものが挙げられる。これらの中でもモノマー製造コストの観点から、水素原子が好ましい。
本発明のノルボルネン系共重合体は前記一般式(1)及び一般式(2)のモノマーユニットの元となる単量体を前記の触媒を用いて重合することにより得ることができる。本発明の重合は付加重合であるので、元の単量体は一般式(1)及び一般式(2)のモノマーユニットの主鎖部分が炭素−炭素二重結合になっているものである。
例えば、R2が水素原子である場合、一般式(2)で示されるモノマーユニットの元になるノルボルネン系単量体は、R1が炭素数1の直鎖状のアルキル基のとき、5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン、R1が炭素数2の直鎖状のアルキル基のとき、5−[(エチルカルボニルオキシ)メチル]−2−ノルボルネン、R1が炭素数3の直鎖状のアルキル基のとき、5−[(プロピルカルボニルオキシ)メチル]−2−ノルボルネンとなる。
R3及びR4が水素原子である場合、一般式(3)で示されるモノマーユニットの元になるノルボルネン系単量体はノルボルネンとなる。
例えば、R2が水素原子である場合、一般式(2)で示されるモノマーユニットの元になるノルボルネン系単量体は、R1が炭素数1の直鎖状のアルキル基のとき、5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン、R1が炭素数2の直鎖状のアルキル基のとき、5−[(エチルカルボニルオキシ)メチル]−2−ノルボルネン、R1が炭素数3の直鎖状のアルキル基のとき、5−[(プロピルカルボニルオキシ)メチル]−2−ノルボルネンとなる。
R3及びR4が水素原子である場合、一般式(3)で示されるモノマーユニットの元になるノルボルネン系単量体はノルボルネンとなる。
本発明のノルボルネン系共重合体の製造方法においては、本発明の効果を損なわない範囲で第三のモノマーユニットを含んでいてもよい。第三のモノマーには特に制限はないが、エチレン性炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。なかでもエチレン、プロピレン、1−ブテンのようなオレフィン化合物やスチレンのような芳香族ビニル化合物がより好ましい。
本発明に係るノルボルネン系共重合体をフィルム、シート等へ成形する際に必要となる溶媒への適度な溶解性と低吸水性を両立する観点から、一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量は10〜70モル%であることが好ましい。一般式(2)で示されるモノマーユニットが10モル%未満であると共重合体の疎水性が高くなり、吸水性が低くなる傾向はあるが、溶媒に対する溶解性は低下する。一方、70モル%を超えると共重合体が親水性となり、溶媒に対する溶解性が向上するが、吸水性が高くなる傾向がある。また、一般式(3)で示されるモノマーユニットの含有量は30〜90モル%であることが好ましい。一般式(3)で示されるモノマーユニットが30モル%未満であると溶媒に対する溶解性は向上するが、吸水性が高くなる傾向がある。また、一般式(3)で示されるモノマーユニットが90モル%を超えると吸水性が低くなる傾向はあるが、溶媒に対する溶解性は低下する。従って、一般式(2)で示されるモノマーユニット及び一般式(3)で示されるモノマーユニットの含有量を調整することにより、共重合体の溶媒への溶解性と吸水性を制御することが可能である。なお、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットの含有量は粉末状もしくはフィルム状の共重合体を適当な重水素化溶媒に溶解させ、1H−NMRを測定し、その積分値より算出することができる。
本発明のノルボルネン系共重合体の製造方法において、各モノマーユニットの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロック、交互のいずれをもとり得るが、共重合体の物性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
本発明の方法によるノルボルネン系共重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は200,000〜2,000,000である。ポリスチレン換算数平均分子量が200,000未満であると機械強度が不十分である。ポリスチレン換算数平均分子量が2,000,000を超えると、キャストフィルムを成形する際に溶媒への溶解度が低下するばかりでなく、溶液粘度が高くなり、成形加工性が低下する。前記数平均分子量は230,000〜1,000,000が好ましく、250,000〜600,000がより好ましい。また、分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.00〜2.50が好ましく、1.10〜2.30がより好ましい。分子量分布が広いとキャストフィルム成形時の溶液が均一になりにくいため、良好なフィルムが作製しにくくなる。
本発明の方法によるノルボルネン系共重合体の23℃における飽和吸水率は、通常、0.001〜1質量%、好ましくは0.005〜0.7質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%である、飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差、位相差の均一性、及び寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離などが発生しない。また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。なお、上記飽和吸水率はJIS K7209に準拠し、23℃水中で24時間浸漬して増加質量を測定することにより求められる値である。
本発明の方法によるノルボルネン系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性で測定されるtanδ(貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)との比(E”/E’))の温度分散のピーク温度で測定できる。Tgは共重合体の構成モノマー単位の種類、組成比、添加剤等の有無により異なるが、通常、80〜350℃、好ましくは100〜320℃、より好ましくは120〜300℃である。Tgが上記範囲よりも低いと、熱変形温度が低くなり、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、成形物が光学フィルムの場合には温度による光学特性の変化が大きくなることがある。また、Tgが上記範囲よりも高いと、延伸加工時にTg近辺まで加熱する場合に樹脂が熱劣化する可能性が高くなる。
本発明の方法によるノルボルネン系共重合体には、透明性・耐熱性を損なわない範囲で公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップリング剤、石油樹脂、可塑剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、シリコーンオイル、発泡剤などを配合して使用することができる。
熱可塑性樹脂としては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしてはオレフィン系、スチレン系の各種熱可塑性エラストマーが使用可能である。
熱可塑性エラストマーとしてはオレフィン系、スチレン系の各種熱可塑性エラストマーが使用可能である。
ゴム質重合体としてはアクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソブチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。
有機微粒子としては各種ポリマーエマルジョンから得られたポリマー粒子が使用可能である。
無機微粒子は以下の物質の微粒子が挙げられる。銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、CaO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、珪素化合物、種々のカーボンブラック、金属錯体。
無機微粒子は以下の物質の微粒子が挙げられる。銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、CaO・Al2O3・SiO2系無機ガラス、珪素化合物、種々のカーボンブラック、金属錯体。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール系、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート等の硫黄系、トリスノニルフェニルホスファイト等のリン系の酸化防止剤が使用可能である。
紫外線吸収剤としては2−(2’−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、4−t−ブチルフェニルサリシラート等のサリシラート類、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバシートなどのヒンダートアミン類が挙げられる。
離型剤としてはステアリン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、フッ素系化合物類、シリコン化合物類が例示される。
難燃剤としてはテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤が使用可能である。
抗菌剤としてはペニシリン系抗菌剤、セフェム系抗菌剤、アミノグリコシド系抗菌剤、マクロライド系抗菌剤、テトラサイクリン系抗菌剤、ニューキノロン系抗菌剤が挙げられる。
カップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤が例示できる。
石油樹脂としてはビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン等のC9系石油留分の重合体である芳香族系石油樹脂、イソプレン、シクロペンタジエン等のC5系石油留分の重合体である脂肪族系石油樹脂が挙げられる。
石油樹脂としてはビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン等のC9系石油留分の重合体である芳香族系石油樹脂、イソプレン、シクロペンタジエン等のC5系石油留分の重合体である脂肪族系石油樹脂が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、エポキシ化植物油、ポリエステルが挙げられる。
着色剤としてはアントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系などの有機顔料、アゾイック染料、硫化染料などの有機染料、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。
滑剤としては流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ステアリルアルコール、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤が挙げられる。
帯電防止剤としてはグリセリンモノ脂肪酸エステル、アセチル化モノグリセライド、有機酸モノグリセライド、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル、エチレンオキシド付加物が挙げられる。
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
発泡剤としては炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等の無機発泡剤、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の有機発泡剤が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
各実施例で得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。また、共重合体中のノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの組成比は、1H−NMRにより得られたピーク[δ:3.5−4.5ppm,5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの「−COOCH2−」ユニット]とδ:0.5−3.0(ノルボルネン及び5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの「CH3COO−」、「−CH2−」及び「−CH=」ユニット)]の積分比から求めた。
実施例及び比較例で合成した物質の諸物性は、以下の通りに測定した。
1.1H−NMR,13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子社製)、
測定方法:重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
2.FT−IR
使用機種
システム:Spectrum GX(パーキンエルマー社製)、
ATR:MIRacleTM(Pike Technologies社製)。
測定方法
1回反射ATR法により測定した。
1.1H−NMR,13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子社製)、
測定方法:重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
2.FT−IR
使用機種
システム:Spectrum GX(パーキンエルマー社製)、
ATR:MIRacleTM(Pike Technologies社製)。
測定方法
1回反射ATR法により測定した。
3.ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+KF−806L×2(昭和電工社製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工社製)。
測定条件
溶媒:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II (システム インスツルメンツ社製)。
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+KF−806L×2(昭和電工社製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工社製)。
測定条件
溶媒:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II (システム インスツルメンツ社製)。
合成例1:5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの合成
1Lのステンレス製オートクレーブにジシクロペンタジエン(和光純薬工業社製,165.00g,1.248mol)、酢酸アリル(東京化成工業社製,312.40g,3.120mol)及びヒドロキノン(和光純薬工業社製,0.50g,0.0045mol)を加えた。系内を窒素置換した後、400rpmで撹拌しながら、このオートクレーブを180℃まで昇温し、5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、内容物を蒸留装置に移し、減圧下に蒸留を行い、50Pa、38℃の留分として、無色透明液状物207.56gを得た。
得られた液状物の1H−NMRを測定し、目的の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンであることを確認した。また、得られた5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンのエキソ異性体とエンド異性体のモル比率はエキソ/エンド=80/20であった。
1Lのステンレス製オートクレーブにジシクロペンタジエン(和光純薬工業社製,165.00g,1.248mol)、酢酸アリル(東京化成工業社製,312.40g,3.120mol)及びヒドロキノン(和光純薬工業社製,0.50g,0.0045mol)を加えた。系内を窒素置換した後、400rpmで撹拌しながら、このオートクレーブを180℃まで昇温し、5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、内容物を蒸留装置に移し、減圧下に蒸留を行い、50Pa、38℃の留分として、無色透明液状物207.56gを得た。
得られた液状物の1H−NMRを測定し、目的の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンであることを確認した。また、得られた5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンのエキソ異性体とエンド異性体のモル比率はエキソ/エンド=80/20であった。
合成例2:(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1)の合成
シュレンクフラスコを窒素置換し、それにジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(東京化成工業社製、271mg,1.02mmol)を投入し、塩化メチレン1mlで溶解した。そこへ、トリ−t−ブチルホスフィン(和光純薬工業社製、0.25ml,1.03mmol)を添加して室温で5分間反応させた。反応終了後、反応液をヘキサンに注いで析出物として目的の錯体244mgを得た(収率:66%)。
得られた析出物の1H−NMRを測定し、目的の(tBu)3PPd(Me)Clであることを確認した。
1H−NMR(CDCl3,400MHz) 1.51(d,J=13Hz,27H),1.77(s,3H).
シュレンクフラスコを窒素置換し、それにジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(東京化成工業社製、271mg,1.02mmol)を投入し、塩化メチレン1mlで溶解した。そこへ、トリ−t−ブチルホスフィン(和光純薬工業社製、0.25ml,1.03mmol)を添加して室温で5分間反応させた。反応終了後、反応液をヘキサンに注いで析出物として目的の錯体244mgを得た(収率:66%)。
得られた析出物の1H−NMRを測定し、目的の(tBu)3PPd(Me)Clであることを確認した。
1H−NMR(CDCl3,400MHz) 1.51(d,J=13Hz,27H),1.77(s,3H).
合成例3:[(iPr3P)Pd(Me)Cl]2(主触媒A2)の合成
シュレンクフラスコを窒素置換し、それにジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(東京化成工業社製、296mg,1.12mmol)を投入し、塩化メチレン4mlで溶解した。そこへ、トリイソプロピルホスフィン(185mg,1.15mmol)をヘキサン2.5mlに溶解した溶液(ストレム社製)を添加して室温で210分間反応させた。反応終了後、溶媒を留去した後にヘキサンで洗浄して目的の錯体322mgを得た(収率:91%)。得られた析出物の1H−NMRを測定し、目的の[(iPr3P)Pd(Me)Cl]2であることを確認した。
1H−NMR(CDCl3,400MHz) 0.677(br,6H),1.338(br,36H),2.375(br,6H).
シュレンクフラスコを窒素置換し、それにジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(東京化成工業社製、296mg,1.12mmol)を投入し、塩化メチレン4mlで溶解した。そこへ、トリイソプロピルホスフィン(185mg,1.15mmol)をヘキサン2.5mlに溶解した溶液(ストレム社製)を添加して室温で210分間反応させた。反応終了後、溶媒を留去した後にヘキサンで洗浄して目的の錯体322mgを得た(収率:91%)。得られた析出物の1H−NMRを測定し、目的の[(iPr3P)Pd(Me)Cl]2であることを確認した。
1H−NMR(CDCl3,400MHz) 0.677(br,6H),1.338(br,36H),2.375(br,6H).
実施例1:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの付加共重合
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,5.0g,53.6mmol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(8.5g,51.4mmol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;東ソー・ファインケム社製,55mg,0.060mmol)を加え、トルエン60mlで溶解した。そこへ合成例2で調製した(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;3.6mg,0.010mmol)をトルエン0.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、室温で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に80℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー2.1gを得た。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン(THF)やクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=301,000、分子量分布はMw/Mn=1.59であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は14.1mol%であった。1H−NMRスペクトルを図1、IRスペクトルを図2、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)チャートを図3に示す。
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,5.0g,53.6mmol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(8.5g,51.4mmol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;東ソー・ファインケム社製,55mg,0.060mmol)を加え、トルエン60mlで溶解した。そこへ合成例2で調製した(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;3.6mg,0.010mmol)をトルエン0.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、室温で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に80℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー2.1gを得た。
得られたポリマーはテトラヒドロフラン(THF)やクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=301,000、分子量分布はMw/Mn=1.59であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は14.1mol%であった。1H−NMRスペクトルを図1、IRスペクトルを図2、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)チャートを図3に示す。
実施例2:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの付加共重合
主触媒A1の使用量を(tBu)3PPd(Me)Cl(7.2mg,0.020mmol)としたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行い、白色粉末状のポリマー6.2gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=213,000、分子量分布はMw/Mn=1.34であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は19.2mol%であった。
主触媒A1の使用量を(tBu)3PPd(Me)Cl(7.2mg,0.020mmol)としたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行い、白色粉末状のポリマー6.2gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=213,000、分子量分布はMw/Mn=1.34であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は19.2mol%であった。
実施例3:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの付加共重合
触媒系を(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;7.2mg,0.020mmol)、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;34mg,0.037mmol)としたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行い、白色粉末状のポリマー4.8gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=274,000、分子量分布はMw/Mn=1.64であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は19.1mol%であった。
触媒系を(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;7.2mg,0.020mmol)、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;34mg,0.037mmol)としたこと以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行い、白色粉末状のポリマー4.8gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=274,000、分子量分布はMw/Mn=1.64であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は19.1mol%であった。
実施例4:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの付加共重合
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(1.9g,20.5mmol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(3.6g,21.5mmol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;33mg,0.036mmol)を加え、トルエン20mlで溶解した後、フラスコをオイルバスへ浸し、撹拌しながら60℃まで昇温した。そこへ合成例3で調製した([iPr)3PPd(Me)Cl]2(主触媒A2;5mg,0.0079mmol)をトルエン1.0mlに溶解した触媒溶液を添加することで反応を開始し、60℃で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に80℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー0.75gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=235,000、分子量分布はMw/Mn=2.20であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は18.9mol%であった。
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(1.9g,20.5mmol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(3.6g,21.5mmol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;33mg,0.036mmol)を加え、トルエン20mlで溶解した後、フラスコをオイルバスへ浸し、撹拌しながら60℃まで昇温した。そこへ合成例3で調製した([iPr)3PPd(Me)Cl]2(主触媒A2;5mg,0.0079mmol)をトルエン1.0mlに溶解した触媒溶液を添加することで反応を開始し、60℃で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に80℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー0.75gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=235,000、分子量分布はMw/Mn=2.20であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は18.9mol%であった。
比較例1:ノルボルネンと5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルの付加共重合(非特許文献1に記載の方法)
非特許文献1には、以下のような方法が記載されている。すなわち、「シュレンクフラスコをアルゴン置換し、そこへ(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;3.6mg,0.010mmol)及びナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート{NaB[3,5−(CF3)2C6H3]4}(助触媒B2;8.9mg,0.010mmol)を投入し、クロロホルム1mlで溶解し、この溶液を3回のfreeze−pump−thaw−cycleによって脱気した。また、別のシュレンクフラスコにノルボルネン(273mg,2.90mmol)及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(0.45ml,2.9mmol)を投入し、クロロホルム4.0mlで溶解し、この溶液を3回のfreeze−pump−thaw−cycleによって脱気した後、前出のパラジウム錯体を含む溶液0.099mlを添加し、室温で2時間反応させた。反応終了後、反応液を酸性のエタノールに注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で加熱して乾燥し、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの数平均分子量はMn=140,000、分子量分布はMw/Mn=1.2であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルモノマーユニットの組成は11mol%であった。」と記載されている。非特許文献1には、得られたポリマーの収量は記載されていないが、「ポリマー中のノルボルネンモノマーユニットもしくは5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルモノマーユニットのモル数の、それぞれの仕込みモル数に対する比率である収率が、それぞれ78%及び10%であった。」と記載されている。これらの収率の値と、仕込み量の値とから、ポリマーの収量は0.257gであったことがわかる。
非特許文献1には、以下のような方法が記載されている。すなわち、「シュレンクフラスコをアルゴン置換し、そこへ(tBu)3PPd(Me)Cl(主触媒A1;3.6mg,0.010mmol)及びナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート{NaB[3,5−(CF3)2C6H3]4}(助触媒B2;8.9mg,0.010mmol)を投入し、クロロホルム1mlで溶解し、この溶液を3回のfreeze−pump−thaw−cycleによって脱気した。また、別のシュレンクフラスコにノルボルネン(273mg,2.90mmol)及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(0.45ml,2.9mmol)を投入し、クロロホルム4.0mlで溶解し、この溶液を3回のfreeze−pump−thaw−cycleによって脱気した後、前出のパラジウム錯体を含む溶液0.099mlを添加し、室温で2時間反応させた。反応終了後、反応液を酸性のエタノールに注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で加熱して乾燥し、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの数平均分子量はMn=140,000、分子量分布はMw/Mn=1.2であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルモノマーユニットの組成は11mol%であった。」と記載されている。非特許文献1には、得られたポリマーの収量は記載されていないが、「ポリマー中のノルボルネンモノマーユニットもしくは5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルモノマーユニットのモル数の、それぞれの仕込みモル数に対する比率である収率が、それぞれ78%及び10%であった。」と記載されている。これらの収率の値と、仕込み量の値とから、ポリマーの収量は0.257gであったことがわかる。
比較例2:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンのシクロペンタジエニル(η3−アリル)パラジウムを用いた付加共重合(特許文献5に記載の方法による重合)
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(11.80g,0.125mol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(41.50g,0.250mol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;185mg,0.200mmol)を加え、トルエン60mlで溶解した。そこへShawらの合成法(Shaw.B.L.,Proc.Chem.Soc.,1960,247)に従って合成したシクロペンタジエニル(η3−アリル)パラジウム[(C5H5)Pd(C3H5)](主触媒A3;43mg,0.200mmol)とトリシクロヘキシルホスフィン[P(C6H11)3](配位子;ストレム社製,56mg,0.200mmol)をトルエン15mlに溶解した触媒溶液を添加し、室温で1.5時間重合反応を行った。その後、その反応溶液に、反応性が高く先に消費されるノルボルネンを補充するために別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,11.80g,0.125mol)をトルエン60mlで溶解した溶液を加え、さらに3時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー50.0gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=303,700、分子量分布はMw/Mn=1.22であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は37.5mol%であった。
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(11.80g,0.125mol)、合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(41.50g,0.250mol)及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3C][B(C6F5)4](助触媒B1;185mg,0.200mmol)を加え、トルエン60mlで溶解した。そこへShawらの合成法(Shaw.B.L.,Proc.Chem.Soc.,1960,247)に従って合成したシクロペンタジエニル(η3−アリル)パラジウム[(C5H5)Pd(C3H5)](主触媒A3;43mg,0.200mmol)とトリシクロヘキシルホスフィン[P(C6H11)3](配位子;ストレム社製,56mg,0.200mmol)をトルエン15mlに溶解した触媒溶液を添加し、室温で1.5時間重合反応を行った。その後、その反応溶液に、反応性が高く先に消費されるノルボルネンを補充するために別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,11.80g,0.125mol)をトルエン60mlで溶解した溶液を加え、さらに3時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー50.0gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=303,700、分子量分布はMw/Mn=1.22であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は37.5mol%であった。
比較例3:ノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンのアリルパラジウムクロライドダイマーを用いた付加共重合(特許文献4の方法による重合)
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それに合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(15.5g,0.093mol)を加え、トルエン50mlで溶解した。さらに、アリルパラジウムクロライドダイマー[[(C3H5)PdCl]2](主触媒A4;和光純薬工業社製,2.3mg,0.0063mmol)をトルエン0.5mlに溶解した溶液、トリシクロヘキシルホスフィン[P(C6H11)3](配位子;ストレム社製,3.5mg,0.050mmol)をトルエン0.25mlに溶解した溶液、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C6H5)(CH3)2NH][B(C6F5)4](助触媒B3,ストレム社製,15mg,0.019mmol)をジクロロメタン0.63mlに溶解した溶液をそれぞれ順番に加えた後、フラスコをオイルバスに浸し、撹拌しながら90℃まで昇温した。これに別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,7.1g,0.075mol)をトルエン8.2mlに溶解した溶液を添加することで反応を開始し、90℃で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー7.0gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=158,000、分子量分布はMw/Mn=2.34であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は27.1mol%であった。
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それに合成例1で調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(15.5g,0.093mol)を加え、トルエン50mlで溶解した。さらに、アリルパラジウムクロライドダイマー[[(C3H5)PdCl]2](主触媒A4;和光純薬工業社製,2.3mg,0.0063mmol)をトルエン0.5mlに溶解した溶液、トリシクロヘキシルホスフィン[P(C6H11)3](配位子;ストレム社製,3.5mg,0.050mmol)をトルエン0.25mlに溶解した溶液、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C6H5)(CH3)2NH][B(C6F5)4](助触媒B3,ストレム社製,15mg,0.019mmol)をジクロロメタン0.63mlに溶解した溶液をそれぞれ順番に加えた後、フラスコをオイルバスに浸し、撹拌しながら90℃まで昇温した。これに別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,7.1g,0.075mol)をトルエン8.2mlに溶解した溶液を添加することで反応を開始し、90℃で1時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー7.0gを得た。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=158,000、分子量分布はMw/Mn=2.34であった。また、1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンモノマーユニットの組成は27.1mol%であった。
実施例1〜4及び比較例1〜3について、用いた触媒(主触媒、助触媒)、仕込みノルボルネン(NB)と5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(PNB)のモル比(NB/PNB)、付加共重合で得られた共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)、共重合体中のNBとPNBのモル比(NB/PNB)をまとめて表1に示す。比較例1は分子量、触媒活性とも低い。比較例2は分子量は比較的大きいが、触媒活性が低く、実用的ではないことがわかる。比較例3は触媒活性は高いが、分子量と分子量分布のバランスがよくない。
本発明の製造方法により得られる高分子量のノルボルネン系共重合体は優れた透明性、耐熱性、低吸水性、電気絶縁特性等を有することにより、レンズや偏光フィルムなどの光学用成形品、フィルム、キャリアテープ、フィルムコンデンサー、フレキシブルプリント基板などの電気絶縁材料、プレススルーパッケージ、輸液バック、薬液バイアルなどの医療用容器、ラップやトレイなどの食品包装成形品、電気器具などのケーシング、インナーパネルなどの自動車内装部品、カーポートやグレージングなどの建材などに利用可能である。
Claims (15)
- 一般式(1)
で示される主触媒(A)と、主触媒(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物よりなる助触媒(B)とからなる触媒を用いて重合することを特徴とする、一般式(2)
で示されるモノマーユニットを含むノルボルネン系共重合体の製造方法。 - 式(1)中のMがコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、または白金(Pt)のいずれかである請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のMがニッケルまたはパラジウムである請求項2に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のL1が、価数が3であるリン(P)を含む中性の電子供与性配位子である請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のL1が、炭素数1〜8のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンである請求項1または4に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のL1が、トリ−t−ブチルホスフィンである請求項1、4または5に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のKが炭素数1〜6のアルキル基である請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のKがメチル基である請求項7に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のL2が、ハロゲン原子である請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 式(1)中のL2が、塩素原子である請求項9に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 助触媒(B)が、ホウ素を含む非配位性アニオンとカチオンとを組み合わせたイオン性化合物である請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 助触媒(B)がトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項11に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である請求項1〜12のいずれかに記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみからなる請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
- 一般式(2)中のR1がメチル基であり、R2、及び一般式(3)中のR3及びR4が水素原子である請求項1に記載のノルボルネン系共重合体の製造方法。
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CN116284691B (zh) * | 2023-03-27 | 2023-11-17 | 天津大学 | 一种具有抑菌性高透明的离子型环烯烃共聚物及其制备方法 |
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