JP2011225404A - SnO−P2O5系ガラス、封着材料及び封着ペースト - Google Patents

SnO−P2O5系ガラス、封着材料及び封着ペースト Download PDF

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紀彰 益田
Toru Shiragami
徹 白神
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Abstract

【課題】450℃以下の低温域で良好に軟化流動し、且つ耐候性も良好なSnO−P系ガラスを創案することにより、近年の環境的要請を満たしつつ、電子部品や表示装置の長期信頼性を高めること。
【解決手段】本発明のSnO−P系ガラスは、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%で、SnO 50〜70%、P 15〜25%(但し、25.0%を含まない)、B 0.1〜5%(但し、5.0%を含まない)、ZnO 1〜15%を含有し、且つ実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、SnO−P系ガラス、封着材料及び封着ペーストに関し、具体的には、水晶振動子用セラミックパッケージ、プラズマディスプレイ(PDP)、蛍光表示管(VFD)、陰極線管(CRT)、電界放射型ディスプレイ等の封着に好適なSnO−P系ガラス、封着材料及び封着ペーストに関する。
電子部品や表示装置等の封着材料として、従来からPbOを含む封着材料が広く使用されている。この封着材料は、一般的に、PbO−B系ガラス粉末と低膨張の耐火性フィラーの複合粉末材料であり、PbO−B系ガラス粉末とチタン酸鉛の複合粉末材料(例えば、日本電気硝子株式会社製LS−0206、ガラス転移点325℃)が代表的である。
しかし、近年、環境的観点から、封着材料からPbOを除くことが要求されている。このため、PbO−B系ガラスの代替材料として、SnO−P系ガラスの開発が進められており、特許文献1〜3等に記載のSnO−P系ガラスが開発されるに到っている。
特開平7−69672号公報 特開平9−235136号公報 特開平11−209146号公報
一般的に、被封着物の表面を十分に濡らす温度まで封着材料を熱処理すれば、封着強度を高めることができる。電子部品や表示装置の場合、封着温度を高温化すると、封着材料の流動性が向上し、強固な封着強度を確保し易くなるが、電子部品や表示装置の素子等に熱劣化が生じてしまう。
そこで、SnO−P系ガラスを低融点化すると、封着材料の流動性を高めることができ、結果として、低温域(例えば、450℃以下の温度域)でも強固な封着強度を確保することができる。
しかし、SnO−P系ガラスは、低融点である程、ガラスの耐候性が低くなる傾向がある。ガラスの耐候性が低いと、長期間に亘り、気密性を維持することが困難になり、結果として、電子部品や表示装置の長期信頼性が損なわれるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑み、450℃以下の低温域で良好に軟化流動し、且つ耐候性も良好なSnO−P系ガラスを創案することにより、近年の環境的要請を満たしつつ、電子部品や表示装置の長期信頼性を高めることを技術的課題とする。
本発明者等は、鋭意努力の結果、SnO−P系ガラスのガラス組成範囲を厳密に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のSnO−P系ガラスは、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%で、SnO 50〜70%、P 15〜25%(但し、25.0%を含まない)、B 0.1〜5%(但し、5.0%を含まない)、ZnO 1〜15%を含有し、且つ実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。ここで、「実質的にPbOを含有しない」とは、ガラス組成中のPbOの含有量が1000ppm(質量)未満の場合を指す。
SnO−P系ガラスの場合、ガラスを低融点化すれば、特にガラス転移点を330℃以下、好ましくは320℃以下にすれば、450℃以下の温度域で良好に軟化流動し、強固な封着強度を確保することができる。ガラス組成中のSnOの含有量を多くすると、ガラスが低融点化するが、ガラスの熱的安定性が低下し、焼成時の失透によりガラスが軟化流動し難くなる。また、ガラス組成中のPの含有量を少なくすると、ガラスの耐候性が向上するが、ガラスの熱的安定性が低下し、焼成時の失透によりガラスが軟化流動し難くなる。そこで、ガラス組成中にBを0.1〜5モル%(但し、5.0モル%を含まない)添加すれば、ガラスの高融点化を抑制しつつ、ガラスの熱的安定性や耐候性を高めることができる。結果として、低融点特性、熱的安定性及び耐候性を高いレベルで両立させることが可能になる。
本発明のSnO−P系ガラスは、ガラス組成中に実質的にPbOを含有しない。このようにすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。
第二に、本発明のSnO−P系ガラスは、更に、ガラス組成として、Alを0.1〜5モル%含むことを特徴とする。このようにすれば、ガラスの耐候性を更に高めることができる。
第三に、本発明のSnO−P系ガラスは、更に、ガラス組成として、LiO+KO(LiO、KOの合量)を0.1〜2モル%含むことを特徴とする。このようにすれば、ガラスを更に低融点化することができる。
第四に、本発明のSnO−P系ガラスは、ガラス転移点が270〜330℃であることを特徴とする。このようにすれば、450℃以下の温度域でガラスが良好に軟化流動するため、450℃以下の温度域でも強固な封着強度を確保することができる。ここで、「ガラス転移点」は、押棒式熱膨張係数測定(TMA)装置で測定した値を指す。
第五に、本発明の封着材料は、上記のSnO−P系ガラスからなるガラス粉末 40〜99体積%と耐火性フィラー 1〜60体積%とを含有することを特徴とする。このようにすれば、封着材料の熱膨張係数を被封着物の熱膨張係数に整合させ易くなる。また、このようにすれば、封着材料の機械的強度を高めることもできる。
第六に、本発明の封着材料は、耐火性フィラーが、コーディエライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、NbZr(POから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする。
第七に、本発明のペースト材料は、封着材料とビークルを含むペースト材料において、封着材料が上記の封着材料であることを特徴とする。
第八に、本発明のペースト材料は、ビークルが脂肪族ポリオレフィン系カーボネートを含むことを特徴とする。
第九に、本発明のペースト材料は、ビークルが、N,N’-ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキサイド、炭酸ジメチル、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、カプロラクトン、N-メチル−2−ピロリドンから選ばれる一種または二種以上を含むことを特徴とする。
第十に、本発明のペースト材料は、不活性雰囲気における脱バインダー処理に供されることを特徴とする。ここで、「不活性雰囲気」には、Nガス雰囲気、Arガス雰囲気等の中性ガス雰囲気、真空雰囲気等の減圧雰囲気が含まれる。
第十一に、本発明のペースト材料は、不活性雰囲気における封着処理に供されることを特徴とする。
マクロ型DTA装置で測定したときのガラス粉末の軟化点を示す模式図である。
本発明のSnO−P系ガラスにおいて、上記のように、各成分の含有範囲を規制した理由を下記に示す。なお、以下の%表示は、特に断りがない限り、モル%を指す。
SnOは、ガラスの流動性を高める成分であり、必須成分である。その含有量は50〜70%、好ましくは55〜68%である。SnOの含有量が70%より多いと、ガラスの熱的安定性が大幅に低下し、焼成時の失透によりガラスが軟化流動し難くなる。一方、SnOの含有量が50%より少ないと、ガラスの粘性が不当に上昇し、450℃以下の温度域でガラスが軟化流動し難くなる。
は、ガラスのネットワークを形成する成分であり、必須成分である。その含有量は15〜25%(但し、25.0%を含まない)、好ましくは20〜24.5%である。Pの含有量が25.0%以上であると、ガラスの粘性が不当に上昇し、450℃以下の温度域でガラスが軟化流動し難くなるとともに、耐候性が大幅に低下する。一方、Pの含有量が15%より少ないと、ガラスの熱的安定性が大幅に低下し、焼成時の失透によりガラスが軟化流動し難くなる。
は、ガラスの熱的安定性や耐候性を高める成分である。その含有量は0.1〜5%(但し、5.0%を含まない)、好ましくは0.5〜4.9%である。Bの含有量が5.0%以上であると、ガラスの粘性が不当に上昇し、450℃以下の温度域でガラスが軟化流動し難くなるとともに、耐候性が大幅に低下する。一方、Bの含有量が0.1%より少ないと、ガラスの熱的安定性や耐候性を高める効果が乏しくなる。
モル比SnO/(P+B)の値は1.84以上が好ましい。このようにすれば、ガラスの流動性を高め易くなる。
ZnOは、ガラスの熱的安定性を高める成分である。その含有量は1〜15%、好ましくは3〜15%である。ZnOの含有量が15%より多いと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスの熱的安定性が低下し、焼成時の失透によりガラスが軟化流動し難くなる。一方、ZnOの含有量が1%より少ないと、ガラスの熱的安定性を高める効果が乏しくなる。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を添加することができる。
Alは、ガラスの安定性、特に耐候性を高める成分である。その含有量は0〜7%、特に0.1〜5%が好ましい。Alの含有量が7%より多いと、ガラスの溶融性が低下し易くなる。
SiOは、ガラスの安定性、特に耐候性を高める成分である。その含有量は0〜10%、特に0〜5%が好ましい。SiOの含有量が10%より多いと、ガラスの溶融性が低下し易くなる。
LiO+KOは、ガラスの粘性を低下させる成分である。その含有量は0〜6%、特に0.1〜2%である。LiO+KOの含有量が6%より多いと、ガラスの熱的安定性が低下し易くなり、またガラスの耐候性が低下し易くなる。
LiOは、ガラスの粘性を低下させる成分である。その含有量は0〜4%、特に0.1〜2%である。LiOの含有量が4%より多いと、ガラスの熱的安定性が低下し易くなり、またガラスの耐候性が低下し易くなる。
Oは、ガラスの粘性を低下させる成分である。その含有量は0〜3%、特に0.1〜2%である。KOの含有量が3%より多いと、ガラスの熱的安定性が低下し易くなり、またガラスの耐候性が低下し易くなる。
NaOは、ガラスの粘性を低下させる成分である。その含有量は0〜7%、特に0〜3%である。NaOの含有量が7%より多いと、ガラスの熱的安定性が低下し易くなり、またガラスの耐候性が低下し易くなる。
上記成分以外にも、ガラスの熱的安定性等を高めるために、In、Ta、La、MoO、WO、MgO、BaO、F等を10%(好ましくは5%)まで添加してもよい。
本発明の封着材料は、上記のSnO−P系ガラスからなるガラス粉末に耐火性フィラーを添加し、複合材料粉末にすることが好ましい。このようにすれば、封着材料の熱膨張係数を低下できるとともに、封着材料の機械的強度を高めることもできる。その混合量は、ガラス粉末40〜99体積%、耐火性フィラー1〜60体積%、好ましくはガラス粉末50〜90体積%、耐火性フィラー粉末10〜50体積%である。耐火性フィラー粉末の含有量が60体積%より多いと、相対的にガラス粉末の割合が少なくなり、所望の流動性を確保し難くなる。一方、耐火性フィラーの含有量が1体積%より少ないと、耐火性フィラーの効果を享受し難くなる。
耐火性フィラーとして、ジルコン、ジルコニア、酸化錫、石英、β−スポジュメン、コーディエライト、ムライト、石英ガラス、β−ユークリプタイト、β−石英、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、NbZr(PO等の[AB(MO]の基本構造をもつ化合物、
A:Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、Ni、Mn等
B:Zr、Ti、Sn、Nb、Al、Sc、Y等
M:P、Si、W、Mo等
若しくはこれらの固溶体が使用可能である。なお、耐火性フィラーを二種以上混合して使用しても差し支えない。
被封着物の熱膨張係数が低い場合、例えば被封着物の熱膨張係数が50×10−7/℃以下の場合、耐火性フィラーとして、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、NbZr(POが好ましい。これらの耐火性フィラーは、封着材料の熱膨張係数を低下させる効果が大きい。また、封着材料の熱膨張係数を低下させる効果が大きいと、耐火性フィラーの含有量を低減できるため、ガラス粉末の軟化流動が耐火性フィラーにより阻害され難くなり、結果として、封着材料の流動性を高め易くなる。
本発明の封着材料において、耐火性フィラーの平均粒子径D50は0.5〜20μm、特に2〜15μmが好ましい。このようにすれば、封着材料の生産コストを高騰させることなく、封着厚みを狭小化し易くなる。ここで、「平均粒子径D50」は、レーザ回折法で測定した値を指し、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。
本発明の封着材料において、耐火性フィラーの最大粒子径Dmaxは5〜100μm、特に10〜75μmが好ましい。このようにすれば、封着材料の生産コストを高騰させることなく、封着厚みを狭小化し易くなる。ここで、「平均粒子径Dmax」は、レーザ回折法で測定した値を指し、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒子径を表す。
本発明の封着材料において、ガラス転移点は330℃以下、特に270〜320℃が好ましい。ガラス転移点が330℃より高いと、450℃以下の温度域で軟化流動し難くなる。ガラス転移点の下限は特に限定されないが、ガラスの耐候性を考慮すれば、ガラス転移点を270℃以上に規制することが好ましい。
本発明の封着材料において、軟化点は410℃以下、特に400℃以下が好ましい。軟化点が410℃より高いと、450℃以下の温度域で軟化流動し難くなる。軟化点の下限は特に限定されないが、ガラスの耐候性を考慮すれば、軟化点を300℃以上に規制することが好ましい。ここで、「軟化点」とは、窒素雰囲気下において、マクロ型示差熱分析(DTA)装置で測定した値を指し、DTAは室温から測定を開始し、昇温速度は10℃/分とする。なお、マクロ型DTA装置で測定した軟化点は、図1に示す第四屈曲点の温度(Ts)を指す。
本発明の封着材料とビークルを混練し、ペースト材料に加工することが好ましい。このようにすれば、塗布作業性等を高めることができる。なお、ビークルは、通常、樹脂バインダーと溶媒を含むが、高粘性の溶媒のみで構成される場合もあり得る。
本発明のペースト材料において、樹脂バインダーは、脂肪族ポリオレフィン系カーボネート、特にポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネートが好ましい。これらの樹脂バインダーは、熱処理の際にSnO−P系ガラスを変質させ難い特徴を有する。
本発明のペースト材料において、溶媒は、N,N’−ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキサイド、炭酸ジメチル、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、カプロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれる一種または二種以上が好ましい。これらの溶媒は、熱処理の際にSnO−P系ガラスを変質させ難い特徴を有する。
本発明のペースト材料において、ビークルとして、メンタノール等の高粘性アルコールやケトン系溶剤を使用することもできる。このようにすれば、樹脂バインダーを添加しなくても、封着材料をペースト化できるため、熱処理の際にSnO−P系ガラスが変質する事態を防止し易くなる。
本発明のペースト材料は、不活性雰囲気における脱バインダー処理に供されることが好ましく、特にN雰囲気における脱バインダー処理に供されることが好ましい。このようにすれば、脱バインダー処理の際にSnO−P系ガラスが変質する事態を防止し易くなる。
本発明のペースト材料は、不活性雰囲気における封着処理に供されることが好ましく、特にN雰囲気における封着処理に供されることが好ましい。このようにすれば、封着処理の際にSnO−P系ガラスが変質する事態を防止し易くなる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
表1は、本発明のSnO−P系ガラスの実施例(試料A〜E)と比較例(試料No.F、G)を示している。
次のようにして各試料を調製した。まず表1のガラス組成を有するように、原料を調合した後、アルミナ坩堝を用いて、窒素雰囲気下において900〜1000℃で1〜2時間溶融した。次に、溶融ガラスの一部を水冷ローラー間に通過させて、溶融ガラスをフィルム形状に成形した。続いて、ボールミルにてガラスフィルムを粉砕した後、分級して、平均粒子径D50約10μmのガラス粉末を得た。また、その他の溶融ガラスを型枠に流し出し、平板形状に成形した。
試料A〜Gにつき、ガラス転移点、軟化点、熱膨張係数を評価した。その結果を表1に示す。
ガラス転移点はTMA装置で測定した値である。なお、測定試料として、平板形状のガラスを所定形状に加工したものを用いた。
軟化点は、DTA装置で測定した値であり、窒素雰囲気下において室温から測定を開始し、昇温速度を10℃/分とした。なお、測定試料として、平均粒子径D50約10μmのガラス粉末を使用した。
熱膨張係数はTMA装置で測定した値であり、測定温度範囲は30〜250℃である。なお、測定試料として、平板形状のガラスを所定形状に加工したものを用いた。
表1から明らかなように、試料A〜Eは、ガラス転移点が297〜309℃、軟化点が367〜379℃、熱膨張係数が112〜122×10−7/℃であった。また、試料Fは、ガラス転移点が305℃、軟化点が375℃、熱膨張係数が119×10−7/℃であった。さらに、試料Gは、ガラス転移点が324℃、軟化点が398℃、熱膨張係数が105×10−7/℃であった。
次に、表1に記載の各ガラス粉末を用いて、封着材料を作製した。具体的には、表2に記載の混合割合(体積換算)になるように、表1に記載のガラス粉末と表2に記載の耐火性フィラーを混合し、各封着材料(試料No.1〜7)を作製した。
耐火性フィラーとして、リン酸ジルコニウム(ZP)、リン酸タングステン酸ジルコニウム(ZWP)を用いた。耐火性フィラーの粒度は、それぞれ平均粒子径D50:10μm、最大粒子径Dmax:50μmであった。
次に、試料No.1〜7について、ガラス転移点、軟化点、熱膨張係数、流動性、耐候性を評価した。その結果を表2に示す。
ガラス転移点はTMA装置で測定した値である。なお、測定試料として、緻密に焼結させた封着材料を所定形状に加工したものを用いた。
軟化点は、DTA装置で測定した値であり、窒素雰囲気下において室温から測定を開始し、昇温速度を10℃/分とした。
熱膨張係数はTMA装置で測定した値であり、測定温度範囲は30〜300℃である。なお、測定試料として、緻密に焼結させた封着材料を所定形状に加工したものを用いた。
次のようにして、流動性を評価した。まず金型を用いて、各封着材料の密度分に相当する質量の粉末を外径20mmのボタン状にプレスした。次に、このボタンを表2に示す各種基板に載せ、窒素雰囲気中において表2に記載の焼成温度まで10℃/分の速度で昇温して、表2に記載の焼成温度で10分間保持した後、室温まで10℃/分の速度で降温した。最後に、焼成後のボタンの直径を測定した。なお、流動径が20mm以上であると、その焼成温度において流動性が良好であることを意味する。
次のようにして、耐候性を評価した。まず金型を用いて、各封着材料1gを外径10mmのボタン状にプレスした。次に、このボタンを高歪点基板に載せた上で、空気中において10℃/分の速度で昇温して、各封着材料の軟化点より30℃高い温度で10分間保持した後、室温まで10℃/分の速度で降温した。続いて、焼成後のボタンに対し、プレッシャークッカーテスト(以下、PCT)を行った。なお、PCTは、温度121℃、湿度95%、2気圧、48時間保持の条件で行った。最後に、PCT後のボタンの表面を目視観察し、ボタンの表面の全部に光沢があるものを「○」、ボタンの表面の一部または全部に光沢がないものを「×」として評価した。
表2から明らかなように、試料No.1〜5は、ガラス転移点が298〜315℃、軟化点が368〜397℃、熱膨張係数が36〜73×10−7/℃であった。また、試料No.6は、ガラス転移点が308℃、軟化点が379℃、熱膨張係数が70×10−7/℃であった。さらに、試料No.7は、ガラス転移点が331℃、軟化点が414℃、熱膨張係数が68×10−7/℃であった。
また、試料No.1〜6は、各焼成温度で流動性が良好であった。一方、試料No.7は、焼成温度が450℃の場合でも、流動性が不良であった。この原因は、ガラス組成中のBの含有量が5%より多いため、ガラスの粘度が高くなったことによると考えられる。
さらに、試料No.1〜5、7は、耐候性が良好であった。一方、試料No.6は、耐候性が不良であった。この原因は、ガラス組成中のPの含有量が25%より多いため、ガラスの耐水性が低下したことによると考えられる。
本発明のSnO−P系ガラス、封着材料及び封着ペーストは、水晶振動子用セラミックパッケージ、PDP、VFD、CRT、電界放射型ディスプレイ等の封着に好適である。その他にも、有機ELデバイス(有機EL照明、有機ELディスプレイ)、色素増感型太陽電池等の太陽電池、MEMSパッケージ、リチウムイオン二次電池、磁気ヘッド等の封着にも使用可能である。

Claims (11)

  1. ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%で、SnO 50〜70%、P 15〜25%(但し、25.0%を含まない)、B 0.1〜5%(但し、5.0%を含まない)、ZnO 1〜15%を含有し、且つ実質的にPbOを含有しないことを特徴とするSnO−P系ガラス。
  2. 更に、ガラス組成として、Alを0.1〜5モル%含むことを特徴とする請求項1に記載のSnO−P系ガラス。
  3. 更に、ガラス組成として、LiO+KOを0.1〜2モル%含むことを特徴とする請求項1または2に記載のSnO−P系ガラス。
  4. ガラス転移点が270〜330℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のSnO−P系ガラス。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のSnO−P系ガラスからなるガラス粉末 40〜99体積%と耐火性フィラー 1〜60体積%とを含有することを特徴とする封着材料。
  6. 耐火性フィラーが、コーディエライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、NbZr(POから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項5に記載の封着材料。
  7. 封着材料とビークルを含むペースト材料において、
    封着材料が請求項5または6に記載の封着材料であることを特徴とするペースト材料。
  8. ビークルが脂肪族ポリオレフィン系カーボネートを含むことを特徴とする請求項7に記載のペースト材料。
  9. ビークルが、N,N’-ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキサイド、炭酸ジメチル、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、カプロラクトン、N-メチル−2−ピロリドンから選ばれる一種または二種以上を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のペースト材料。
  10. 不活性雰囲気における脱バインダー処理に供されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のペースト材料。
  11. 不活性雰囲気における封着処理に供されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のペースト材料。
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