JP2011223897A - 調味料用でん粉、その製造方法、及びその用途 - Google Patents

調味料用でん粉、その製造方法、及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】風味立ちが良い調味料用のでん粉を提供する。
【解決手段】本発明の調味料用でん粉は、でん粉原料を分散したでん粉スラリーに、濃硫酸等の鉱酸を添加して酸処理し、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでの粘度が13〜550mPa・sになるように調整したものである。このような調味料用でん粉は、風味立ちが良いだけでなく、スプレードライ等の通常の乾燥法で粉末化することが可能であり、調味料用のでん粉として広く使用することができる。
【選択図】図1

Description

本発明はでん粉に関し、特に、調味料や粉末化基材に使用可能なでん粉に関する。
従来、吸湿性の高い調味料などを粉末化する際に、製造時や粉末化後の吸湿を抑える目的で粉末化基材が使用されてきた。粉末化基材には、デキストリンなどのでん粉の高度加水分解物や、酸化でん粉などが使用されてきた。それらは、吸湿を抑えなければならない程度に応じて使い分けられ、より吸湿性の高い調味料を粉末化する場合には酸化でん粉が使用されていた。
また、液状で流通、使用する調味料では、粘度調整の目的で各種の酸化でん粉や架橋でん粉など各種の化工澱粉が使用されている。
特許第3458113号公報 特開平11-243901号公報 特開2003-219813号公報 特開2003-38119号公報 特開平5-3764号公報 特開平11−19509号公報
これまで粉末調味料の粉末化基材や液状調味料の粘度調整には、溶解後の透明性・粘度の点で優れる次亜塩素酸ナトリウムにて処理した酸化でん粉などが使用されてきた為、でん粉を塩酸や硫酸で軽度に処理した酸処理でん粉は殆ど使用されてこなかった。
しかし、酸化でん粉は、酸化の過程でカルボキシル基が導入され、でん粉分子が化学的に変性している。昨今、食品の天然物志向の高まりにより、酸化でん粉のように、天然分子が化学的に変性したものの、食品への使用を避けるという風潮がある。
さらに、酸化でん粉は、例えば粉末化基材として使用する場合は吸湿しない点では優れているが、風味調味料などの場合、粉末化される素材の風味をマスキングしてしまうという品質上の問題点があった。この品質上の問題は、液状調味料においても同様であった。
酸処理でん粉とは、でん粉粒が残存した状態のまま酸処理剤(塩酸、硫酸などの鉱酸類)で酸処理した状態のでん粉であり、酸化でん粉のように置換基等の導入が無く、化学的変性が少ない。酸処理でん粉は、冷水で可溶ではなく、水溶液状で加熱することで糊化してある程度の粘度が出るが、原料でん粉よりは低粘度化した性質を持つでん粉である。しかし、従来の酸処理でん粉は風味立ちが悪いという欠点があった。
そこで、本発明は、風味立ちが良く、粉末化基材や液状調味料の粘度調整用としても使用可能なでん粉を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、馬鈴薯でん粉を主原料とするでん粉原料が、鉱酸によって酸処理された調味料用でん粉であって、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでの粘度が13〜550mPa・sである調味料用でん粉を提供する。
本発明の調味料用でん粉と、粉末水飴とを含有させ、粉末水飴の含有量が30質量%以下の粉末化基材を作製することができる。また、本発明の調味料用でん粉と、イソマルトオリゴ糖とを含有させ、イソマルトオリゴ糖の含有量が10〜50質量%の調味液を作製することできる。
本発明の調味料用でん粉は、馬鈴薯でん粉を主原料とするでん粉原料を溶媒に分散し、でん粉スラリーとして、前記でん粉スラリーに、濃度10〜60質量%の鉱酸溶液を添加して、前記でん粉原料を酸処理することで製造できる。
また、本発明の調味料用でん粉と、調味料成分とを含む原料液を、噴霧、乾燥して粉末状の調味料を製造することもできる。
本発明の調味料用でん粉は、従来の酸処理でん粉や酸化でん粉に比べて風味立ちが高い上、吸湿性が低いから、調味料等の粉末化基材、調味液等に広く使用することができる。
酸処理馬鈴薯でん粉A〜Gの30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃での粘度の測定結果を示すグラフ。
本発明に用いるでん粉原料は、馬鈴薯でん粉を主原料するものであって、化学変性が加わり置換基が導入される酸化処理や酵素分解等の加水分解処理が行われておらず、でん粉粒が残存した状態のものを用いる。なお、主原料とは含有量が50質量%以上のことである。すなわち、でん粉原料は馬鈴薯でん粉を50質量%以上含む。
でん粉原料には、50質量%以下の範囲で、馬鈴薯でん粉以外の他のでん粉を添加することもできる。他のでん粉は特に限定されず、例えば、とうもろこしでん粉、甘藷でん粉、小麦でん粉、米でん粉、タピオカでん粉、サゴ椰子でん粉などのでん粉である。これらのでん粉は1種類をでん粉原料に添加してもよいし、2種類以上を同一のでん粉原料に添加してもよい。他のでん粉の添加量は特に限定されないが、馬鈴薯でん粉含有量が50質量%以上、より好ましくは80質量%以上となるように、添加量を抑えることが望ましい。
本発明の調味料用でん粉は、上記でん粉原料を酸処理剤で酸処理して得られる。酸処理剤は鉱酸(無機酸)である。酸処理剤としては、硫酸と塩酸のいずれか一方又は両方を用いることができるが、反応速度等の点から硫酸が最も好ましい。
でん粉の酸処理方法は特に限定されない。でん粉の酸処理は、鉱酸の酸濃度1〜5質量%の水溶液に、粉体のでん粉を添加、攪拌するのが一般的ではあるが、本発明は、粉体のでん粉を水等の溶媒に分散したスラリー(懸濁液)に、濃度10〜60質量%の高濃度鉱酸を添加する方法がより適している。
でん粉スラリーに用いる溶媒は、水を50質量%以上含有する物であれば特に限定されない。その溶媒には、必要に応じて分散剤、pH調整剤等の添加剤を添加することもできる。
でん粉スラリーに高濃度鉱酸を添加した後は、温度20℃〜55℃、10〜50時間程度攪拌して酸処理を行うことができ、温度と時間を調整することで、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでの粘度が13〜550mPa・s(ミリパスカル秒)となる調味料用でん粉が得られる。なお、本発明で粘度測定に用いる溶媒は水である。
本発明の調味料用でん粉は、酸処理後、中和し、必要であれば水洗し、乾燥して得られる。中和に用いるアルカリ溶液も特に限定されず、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。
本発明の調味料用でん粉は、食品や調味料の風味をマスキングしない上、水等への溶解性が高く、溶解時の透明性も高いから、粉末調味料用の粉末化基材として非常に適している。ここで、粉末調味料とは、食品の風味付けに用いられる物の他、希釈物をそのまま摂食可能な粉末飲料類(清涼飲料水、スープ類等)も含む。
粉末調味料は、顆粒状又は粉状であって、1種以上の調味料成分と、本発明の調味料用でん粉とを含有する。調味料成分は、例えば、発酵調味料(醤油、味噌、酢、酒等)、タンパク質分解物(アミノ酸類)、酵母エキス、塩、甘味料(ブドウ糖、庶糖等)、香辛料(コショウ、唐辛子等)、油脂類(植物油、動物油)、抽出エキス(畜産物、農産物、又は海産物由来)等である。
粉末調味料の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の調味料用でん粉を、1種類以上の調味料成分と混合して製造することができる。混合工程は、ローラーコンパクター、ロールプレス等を使用し、調味料成分と調味料用でん粉を圧縮成形し、顆粒状にしてもよい。調味料成分は粉状、液状のいずれも使用可能であり、調味料成分が液状の場合、単に調味料用でん粉と混合、吸収させて、粉末調味料を製造することもできる。液状調味料成分の量が多い場合は、混合後に乾燥工程が必要である。
さらに、本発明の調味料用でん粉と、調味料成分とを含む原料液を乾燥して粉末調味料を製造することもできる。原料液は、本発明の調味料用でん粉と、1種以上の調味料成分とを含み、必要であれば水等の希釈剤を添加して作製される。調味料成分は粉状であっても、液状であってもよい。原料液には、分散安定剤、防腐剤、香料、老化防止剤、pH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
原料液を乾燥する際の乾燥方法は特に限定されず、ドラムドライヤー法、エクストルーダー法、真空凍結乾燥、スプレードライヤー法等公知の方法を用いることができるが、粉体粒径の細かさ、成分劣化が少ない等の点で、スプレードライヤー法が最も適している。
スプレードライヤー法は、原料液を噴霧し、霧状の原料液を高温気体と接触させて乾燥する噴霧乾燥法である。スプレードライヤー法は、原料液の粘度が高すぎるとノズルに目詰まりが起こり、正常に噴出されない。原料液を希釈すれば粘度が下がるが、噴霧乾燥に時間がかかり、製造コストが高くなる。
本発明の調味料用でん粉は、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでの粘度が13〜550mPa・sであり、一般的な使用量(5〜50質量%)で原料液に添加した場合、スプレードライヤー法で乾燥可能な程度に低粘度になる。従って、本発明の調味料用でん粉を用いれば、必要以上に原料液を希釈する必要がなく、通常の乾燥法で粉末調味料を製造することができる。
粉末化基材は、本発明の調味料用でん粉のみで構成してもよいが、原料液の粘度調整等の目的で、粉末化基材に粉末水飴を添加することもできる。粉末水飴の添加量が多い程、原料液の粘度が低くなるが、その添加量が粉末化基材全体の30質量%を超えると粉末調味料の吸湿性が高くなるので、粉末水飴の添加量は30質量%以下(0〜30質量%)が好ましい。
なお、粉末水飴は、でん粉の酸分解物又は酵素分解物であって、DE(Dextrose Equibalent)10〜40程度の分解物を脱水乾燥したものである。粉末水飴水溶液の粘度は、本発明の調味料用でん粉よりも低く、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmで13Pa・s未満である。
本発明の調味料用でん粉の用途は粉末化基材に限定されない。本発明の調味料用でん粉は、風味立ちが優れている上、水に溶解させた時の照り、ツヤ、粘度等の特性も優れているので、粉末化しない調味液(液状調味料)に使用することもできる。
調味液は、本発明の調味料用でん粉と、1種以上の調味料成分とを含有する液体であって、必要であれば水等の希釈剤を添加する。本発明の調味料用でん粉が使用可能な調味液は特に限定されず、調味液塗布剤(煎餅用タレ、焼肉用タレ、焼き鳥用タレ等)、ソース(ドレッシング)等である。また、調味液以外にも、飲料(清涼飲料水、スープ類)等に用いることもできる。
調味液には、本発明の調味料用でん粉と、調味料成分の他、分散安定剤、防腐剤、香料、老化防止剤、pH調整剤等の添加剤を添加してもよい。なお、調味液に用いる調味料成分も特に限定されず、粉末調味料と同様、多様なものを1種以上用いることができる。
調味液には、更に、イソマルトオリゴ糖のようなオリゴ糖を、粘度安定等の目的で添加してもよい。イソマルトオリゴ糖は、でん粉の分解物であって、α−1,6グルコシド結合を有する糖質で、とうもろこしでん粉を酵素分解、糖転移させて製造されるものが一般的である。イソマルトオリゴ糖の水溶液は本発明の調味料用でん粉よりも低粘度であり、濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでの粘度が13Pa・s未満である。
イソマルトオリゴ糖の添加量は特に限定されないが、10質量%未満であると照りツヤや風味が劣る。また、その添加量が50質量%を超えると味に影響が出て、しかも、吸湿性が高くなるから、10〜50質量%が好ましい。
<でん粉原料の選定>
1.酸処理でん粉の調整:
とうもろこし、サゴ椰子、馬鈴薯、タピオカ、甘藷由来のでん粉100質量部に対して水110質量部を加え攪拌してスラリーとした後、50質量%硫酸溶液4.8質量部を添加し、スラリーを50℃、28時間攪拌し、酸処理を行った。苛性ソーダ水溶液を加えて中和し、更に水洗、脱水して水分13質量%まで乾燥して各種酸処理でん粉を調整した。
2.測定方法
白度:粉体用白度計(株式会社ケット科学研究所製:C‐100‐3)使用
粘度:200mlのトールビーカーにでん粉40g(D.B.)を量り、水を加えて200gとする。水浴中で加熱攪拌し、90℃到達後、10分間撹拌を続ける。放冷後、水分補正を行い、各温度で粘度を測定する。回転粘度計(B型粘度計)を使用し、回転数60rpmで測定した。
透過率:200mlのトールビーカーにでん粉10g(D.B.)を量り、水を加えて200gとする。水浴中で加熱攪拌し、90℃到達後、10分間撹拌を続ける。30℃で30分間放冷後、水分補正を行い、720nmの吸光度を測定する。
安息角:電磁振動式安息角測定器(筒井理化学器械株式会社製:AOR‐57形)使用
得られた酸処理でん粉の特性は以下の通りであった。
Figure 2011223897
酸処理とうもろこしでん粉、酸処理サゴ椰子でん粉は粘度が高く透過率も低いものであった。酸処理タピオカでん粉、酸処理甘藷でん粉は、粘度は低くなるが透過率が低く安息角の数値は大きく流動性の悪いものであった。酸処理馬鈴薯でん粉は粘度も十分低下し、安息角も比較的低く流動性も良かった。
<粉末調味料の試作>
上記各種原料でん粉を酸処理して得られた酸処理とうもろこしでん粉、酸処理サゴ椰子でん粉、酸処理馬鈴薯でん粉、酸処理タピオカでん粉、酸処理甘藷でん粉を用いて粉末和風調味料を調製した。配合は以下の通りとした。
酸処理でん粉: 49質量部
カツオエキス: 11質量部
鰹節粉末 : 25質量部
コンブ粉末 : 12質量部
酵母エキス : 3質量部
各素材を均一になるまで混合した後、ターボ工業株式会社製のローラーコンパクターで圧縮造粒して顆粒状粉末調味料を作成した。ローラーコンパクターは圧縮圧1.0t/cm、ロールクリアランス0.5mm、回転数15rpmで運転し粗粉砕後篩い分けして粒径0.3mm〜1.0mmの粉末和風調味料を作成した。
得られた粉末和風調味料を、濃度が2質量%となるように温水に溶解し、風味の立ち、溶液の透明性、総合評価に関する官能評価を行った。
官能評価は、10名の専門パネルにて評価し、評点法(5点:非常に良い、4点:良い、3点:普通、2点:少し悪い、1点:悪い)によって点数化した。以下に各種酸処理でん粉で調整した粉末調味料の評価の平均点数を示す。
Figure 2011223897
これらの結果から酸処理馬鈴薯でん粉は、他の原料由来の酸処理でん粉に比べて風味の立ち、透明性、総合評価全ての項目で優れていた。
<酸処理試験>
酸処理試験1:馬鈴薯でん粉100質量部に対して水110質量部を加え攪拌してスラリーとした後、60質量%硫酸溶液4.8質量部をスラリーに添加した。そのスラリーを50℃で5時間攪拌し、酸処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、更に水洗、乾燥して酸処理馬鈴薯でん粉Aを得た。
酸処理試験2〜6:酸処理時間を5時間から10時間、20時間、28時間、32時間、40時間にそれぞれ変えて、酸処理馬鈴薯でん粉B、C、D、E、Fを得た。酸処理時間以外の条件は酸処理試験1と同じとした。
酸処理試験7:馬鈴薯でん粉100質量部に対して水110質量部を加え攪拌してスラリーとした後、60質量%硫酸溶液12質量部を添加し50℃で30時間攪拌し、酸処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、更に水洗、乾燥して酸処理馬鈴薯でん粉Gを得た。
上記酸処理試験1〜7で得られた酸処理馬鈴薯でん粉A〜Gの30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃での粘度を測定した。その測定結果を図1のグラフに示す。
また得られた酸処理馬鈴薯でん粉A〜Gのでん粉の「かつお風味の立ち」について評価を行った。評価試験の結果を、濃度20質量%における30℃、70℃での粘度の測定結果と共に結果を以下に示す。
Figure 2011223897
酸処理後の粘度(20質量%溶液、70℃、60rpm)が550mPa・sを超えたものと、13mPa・s未満のものは、風味の点でダシ風味をマスキングしてしまい調味料としての価値を下げてしまったが、酸処理後の粘度(20質量%溶液、70℃、60rpm)が13〜550mPa・sになるよう酸処理をした酸処理馬鈴薯でん粉は、官能評価の結果が3.2以上であり、風味立ちが優れているのが確認された。これらの中でも、酸処理馬鈴薯でん粉C〜Eは、風味評価の値が3.5を超えており、酸処理後の粘度(20質量%溶液、70℃、60rpm)は20〜55mPa・sがより風味立の点で優れていることが確認された。
さらに各温度における粘度挙動と風味の立ちの関係を見ると、20質量%のでん粉糊溶液を90℃に加熱してから、冷却していくと、60℃から50℃の範囲で急激(3000mPa・s以上)に粘度上昇するような酸処理度合いの酸処理でん粉、すなわち酸処理馬鈴薯でん粉C、酸処理馬鈴薯でん粉D、酸処理馬鈴薯でん粉Eは、さらに風味の立ちが良かった(図1を参照)。
以上の結果から、酸処理後の粘度(20質量%溶液、70℃、60rpm)が13〜550mPa・sであれば、調味料用でん粉として用いた場合の風味立ちがよく、それらの中でも、酸処理後の粘度(20質量%溶液、70℃、60rpm)が20〜55mPa.s、60℃から50℃への温度変化で3000mPa・s以上粘度上昇する物が特に風味立ちに優れていることが確認された。
なお、本試験で得られた酸処理馬鈴薯でん粉のDEを測定したところ、いずれも測定限界以下(DE0)であった。
<酸処理方法の影響>
次に、酸処理でん粉を製造する際の酸の添加方法についても検討した。
酸処理試験8:馬鈴薯でん粉100質量部に対して水110質量部を加え攪拌してスラリーとした後、6質量%硫酸溶液48質量部を添加し50℃で28時間攪拌し、酸処理を行った。苛性ソーダ水溶液を加えて中和し、更に水洗、乾燥して酸処理馬鈴薯でん粉Hを得た。
酸処理試験9:硫酸溶液の濃度を10質量%、添加量を28.8質量部に変えた以外は酸処理試験8と同じ方法で酸処理馬鈴薯でん粉Iを得た。
酸処理試験10:硫酸溶液の濃度を36質量%、添加量を8質量部に変えた以外は酸処理試験8と同じ方法で酸処理馬鈴薯でん粉Jを得た。
酸処理試験11:硫酸溶液の濃度を96質量%、添加量を3質量部に変えた以外は酸処理試験8と同じ方法で酸処理馬鈴薯でん粉Kを得た。
酸処理試験12:2質量%硫酸溶液144質量部に馬鈴薯でん粉100質量部を加え、50℃、28時間攪拌し反応させた。反応後、水酸化ナトリウム水溶液にて中和し、水洗した後、乾燥することによって酸処理でん粉Lを得た。
上記酸処理試験8〜12で得られた酸処理馬鈴薯でん粉H〜Lと、上記酸処理試験4の酸処理馬鈴薯でん粉Dについて粘度とかつお風味の官能検査の結果及び作業適性を以下にまとめた。
Figure 2011223897
酸処理でん粉の製造方法としては、でん粉と水を混合しスラリー状にした後、そこに硫酸を添加して反応する硫酸添加法(酸処理馬鈴薯でん粉A〜G及びH〜K)と、希硫酸溶液にでん粉粉末を添加する希硫酸でん粉添加法がある(酸処理馬鈴薯でん粉L)。
でん粉に対する酸濃度が同じで酸添加方法の異なる酸処理馬鈴薯でん粉Dと酸処理馬鈴薯でん粉Lの風味の立ちを比較すると、スラリー状にしてから硫酸を添加した酸処理馬鈴薯でん粉Dの方が風味の立ちに優れていた(官能評価スコア:でん粉D=3.8、でん粉L=3.0)。
また、硫酸添加法に使用する硫酸濃度によっても風味の違いが見られた。硫酸濃度が低いと希硫酸でん粉添加法に近い反応になるため、風味の立ちが悪くなることが分かった。すなわち硫酸濃度が6質量%の硫酸を加えて製造した酸処理馬鈴薯でん粉Hは、10質量%以上の濃硫酸を加えて製造した酸処理馬鈴薯でん粉I〜K及びDと比べてかつお風味の立ちが悪かった。
濃度96質量%の硫酸溶液を添加して製造した酸処理馬鈴薯でん粉Kは、かつお風味の立ちの点では良好であったが、硫酸濃度が高いため、硫酸溶液を加えると反応系が部分的に発熱してしまった。その結果、でん粉の糊化による可溶化が部分的に起こり、排水負荷の増加、更には製品歩留まりの低下につながり実際の製造には適さないことが分かった。以上のことから、酸処理には、濃度10質量%以上60質量%以下の鉱酸溶液が最も適していることが確認された。
<使用試験:粉末醤油>
酸処理馬鈴薯でん粉の利用方法としては、液体調味液の粉末化基材として使用する場合もある。ここでは粉末調味料として粉末醤油を試作して、他の粉末化基材との比較を行った。粉末醤油は一般的な製造方法によって行った。すなわち、調味料成分である丸大豆醤油(キッコーマン株式会社製)100質量部に対して、粉末化基材を20質量部加え分散させて原料液を作製し、その原料液を80℃で10分間加熱し、スプレードライヤー(入口温度180℃、出口温度95℃)にて噴霧乾燥し粉末醤油を得た。
使用した粉末化基材は、
(1)馬鈴薯でん粉を次亜塩素酸ナトリウムで低粘度化した酸化でん粉、
(2)上記酸処理馬鈴薯でん粉E、
(3)酸処理馬鈴薯でん粉Eと粉末水飴(昭和産業(株)製:VIANDEX-L DE23)を8:2の質量比率で混合したもの、
(4)酸処理馬鈴薯でん粉Eと粉末水飴(昭和産業(株)製:VIANDEX-L DE23)を7:3の質量比率で混合したもの、
(5)酸処理馬鈴薯でん粉Eと粉末水飴(昭和産業(株)製:VIANDEX-L DE23)を6:4の質量比率で混合したもの、又は
(6)低分解粉末水飴(DE10)である。
スプレードライ前の溶液の粘度(80℃にてB型粘度計で測定)、及び得られた粉末醤油の2質量%溶液での風味の官能評価(専門パネル10名による5段階評価の平均点)、30℃相対湿度80%の恒温恒湿に24時間保管した際の固結状態(吸湿性)について評価を行った(◎:全く固結しない、○:僅かに固結、△:固結して塊になる、×:潮解して液状になる)。結果を以下に示す。
Figure 2011223897
スプレードライヤーで原料液を乾燥する際には粉末化基材の粘度が低いことが求められるが、上記(1)〜(6)いずれの粉末化基材を用いた場合もスプレードライヤーでの乾燥を行うことが出来た。風味については、酸処理馬鈴薯でん粉は酸化でん粉よりも風味が良く、固結しにくい特性を持ち、粉末化基材として優れた性質を示した。
また、粉末水飴を混合した(3)〜(5)の粉末化基材については、酸処理でん粉単体(2)よりも粘度・風味が改善された。(3)〜(5)の粉末化基材を用いた粉末醤油は、低DE粉末水飴(6)よりも固結し難く風味が優れていた。
<使用試験:煎餅たれ>
本発明の酸処理馬鈴薯でん粉は煎餅などの調味液塗布剤としての用途でも使用できる。
調味液塗布剤として、下記表6の配合で煎餅タレA〜Eを調整した。なお、酸処理でん粉としては、上記酸処理馬鈴薯でん粉Eを用いた。
Figure 2011223897
上記表6の配合割合で、醤油、イソマルトオリゴ糖シラップ(昭和産業(株)製イソマルト500、水分含有量25質量%)、酸処理馬鈴薯でん粉、かつおエキスを混合した。80℃に加熱後、攪拌機(東京理化機械株式会社製)を用い、回転数800rpm、30分間で攪拌し、煎餅タレA、B、C、D、Eを調整した。攪拌の前後での粘度をB型粘度計にて測定し粘度変化を調べた。得られた煎餅タレを素焼きした煎餅(1枚平均質量10g)に2g塗布し、90℃で30分間乾燥し煎餅A、B、C、D、Eを得た。5種類の煎餅を25℃相対湿度40%で2週間保管して吸湿性、風味、食味、総合評価を評価した。結果を下記表7に示す。(◎:問題なく良好、○:許容される品質、△:やや問題あり、×:問題あり)
Figure 2011223897
また、煎餅タレCの配合において、イソマルトオリゴ糖シラップの代わりに、砂糖20質量部、みりん6質量部、水6部にて調製した後、煎餅に塗布後乾燥した煎餅も同時に調整し煎餅Fを得た。煎餅Cは風味、照り・つやの点で煎餅Fと同等以上に良好であった。
酸処理馬鈴薯でん粉で調整した煎餅タレの粘度は40℃、800rpmにて30分攪拌前後で殆ど変化がなく、実用上十分なシェア耐性を持っていた。(煎餅タレCの場合、攪拌前650mPa・s、攪拌後640mPa・s)。
酸処理馬鈴薯でん粉はイソマルトオリゴ糖と併用することで粘度の安定性を持ち、且つ醤油・かつお風味や、照り・ツヤに優れた煎餅用調味料塗布剤として利用できる。
本発明の調味料用でん粉は、調味料、飲料等の食品分野だけではなく、動物用飼料、化粧品、医薬品等の粉末化基材、添加剤として広く使用することができる。

Claims (5)

  1. 馬鈴薯でん粉を主原料とするでん粉原料が、鉱酸によって酸処理された調味料用でん粉であって、
    濃度20質量%、温度70℃、回転数60rpmでのB型粘度計により測定した粘度が13〜550mPa・sである調味料用でん粉。
  2. 請求項1記載の調味料用でん粉と、粉末水飴とを含有し、
    前記粉末水飴の含有量が30質量%以下である粉末化基材。
  3. 請求項1記載の調味料用でん粉と、イソマルトオリゴ糖とを含有し、
    前記イソマルトオリゴ糖の含有量が10〜50質量%である調味液。
  4. 馬鈴薯でん粉を主原料とするでん粉原料を溶媒に分散し、でん粉スラリーとして、
    前記でん粉スラリーに、濃度10〜60質量%の鉱酸溶液を添加して、前記でん粉原料を酸処理する調味料用でん粉の製造方法。
  5. 請求項4記載の方法で製造された調味料用でん粉と、調味料成分とを含む原料液を、噴霧、乾燥して粉末状の調味料を製造する粉末調味料製造方法。
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