以下、本発明の二次電池用非水電解液について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の二次電池用非水電解液は、嵩高いシクロアルキル基と直鎖アルキル基とを有する前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物を含有するところに特徴がある。
前記一般式(1)において、R1は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表わす。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、シクロオクチル、ジメチルシクロヘキシル等が挙げられる。R1としては、リチウムイオンの移動への悪影響が少なく充電特性が良好であることから、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましく、シクロペンチル及びシクロヘキシルが更に好ましく、シクロヘキシルが最も好ましい。
前記一般式(1)において、R2は炭素数1〜8のアルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−ブチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−ヘプチル、2−オクチル、t−ブチル、t−ペンチル等の分岐アルキル基が挙げられる。R2としては、高温での安定性が高いことから直鎖アルキル基が好ましい。中でも、リチウムイオンの移動への悪影響が少なく充電特性が良好であることから、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル及びブチルがより好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物のうち、R1がシクロペンチルである化合物としては、例えば、シクロペンチルジフルオロメチルシラン、シクロペンチルエチルジフルオロシラン、シクロペンチルジフルオロプロピルシラン、シクロペンチルジフルオロイソプロピルシラン、シクロペンチルブチルジフルオロシラン、シクロペンチルイソブチルジフルオロシラン、シクロペンチル−2−ブチルジフルオロシラン、シクロペンチル−t−ブチルジフルオロシラン、シクロペンチルジフルオロペンチルシラン、シクロペンチルジフルオロイソペンチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−ペンチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−t−ペンチルシラン、シクロペンチルジフルオロヘキシルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−ヘキシルシラン、シクロペンチルジフルオロヘプチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−ヘプチルシラン、シクロペンチルジフルオロオクチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−オクチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−メチルペンチルシラン、シクロペンチルジフルオロ−2−エチルヘキシルシラン等が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物のうち、R1がシクロヘキシルである化合物としては、例えば、シクロヘキシルジフルオロメチルシラン、シクロヘキシルエチルジフルオロシラン、シクロヘキシルジフルオロプロピルシラン、シクロヘキシルジフルオロイソプロピルシラン、ブチルシクロヘキシルジフルオロシラン、イソブチルシクロヘキシルジフルオロシラン、2−ブチルシクロヘキシルジフルオロシラン、t−ブチルシクロヘキシルジフルオロシラン、シクロヘキシルジフルオロペンチルシラン、シクロヘキシルジフルオロイソペンチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−ペンチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−t−ペンチルシラン、シクロヘキシルジフルオロヘキシルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−ヘキシルシラン、シクロヘキシルジフルオロヘプチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−ヘプチルシラン、シクロヘキシルジフルオロオクチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−オクチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−メチルペンチルシラン、シクロヘキシルジフルオロ−2−エチルヘキシルシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジフルオロシラン等が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物のうち、R1がシクロヘプチルである化合物としては、例えば、シクロヘプチルジフルオロメチルシラン、シクロヘプチルエチルジフルオロシラン、シクロヘプチルジフルオロプロピルシラン、シクロヘプチルジフルオロイソプロピルシラン、ブチルシクロヘプチルジフルオロシラン、イソブチルシクロヘプチルジフルオロシラン、2−ブチルシクロヘプチルジフルオロシラン、t−ブチルシクロヘプチルジフルオロシラン、シクロヘプチルジフルオロペンチルシラン、シクロヘプチルジフルオロイソペンチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−ペンチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−t−ペンチルシラン、シクロヘプチルジフルオロヘキシルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−ヘキシルシラン、シクロヘプチルジフルオロヘプチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−ヘプチルシラン、シクロヘプチルジフルオロオクチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−オクチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−メチルペンチルシラン、シクロヘプチルジフルオロ−2−エチルヘキシルシラン、シクロヘプチルシクロペンチルジフルオロシラン等が挙げられる。
本発明の二次電池用非水電解液において、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物の含有量があまりに少ない場合には、十分な効果を発揮できず、またあまりに多い場合は、含有量に見合う増量効果は得られないばかりか、二次電池の内部抵抗が増加する場合があることから、本発明の二次電池用非水電解液中の、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜3質量%が更に好ましく、0.05〜2質量%が最も好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液に使用される有機溶媒は、二次電池用非水電解液に通常用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。このような有機溶媒としては、飽和環状カーボネート化合物、飽和環状エステル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、アマイド化合物、飽和鎖状カーボネート化合物、鎖状エーテル化合物、環状エーテル化合物、飽和鎖状エステル化合物等が挙げられる。
前述の有機溶媒のうち、飽和環状カーボネート化合物、飽和環状エステル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物及びアマイド化合物は、比誘電率が高いため、二次電池用非水電解液の誘電率を上げる役割を果たす。これらの中でも、特に飽和環状カーボネート化合物が好ましい。斯かる飽和環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,3−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,1,−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。また、前記飽和環状エステル化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−オクタノラクトン等が挙げられる。前記スルホキシド化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、チオフェン等が挙げられる。前記スルホン化合物としては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホンともいう)、3−メチルスルホラン、3,4−ジメチルスルホラン、3,4−ジフェニメチルスルホラン、スルホレン、3−メチルスルホレン、3−エチルスルホレン、3−ブロモメチルスルホレン等が挙げられ、これらの中でも、スルホラン及びテトラメチルスルホランが好ましい。前記アマイド化合物としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
また、前述の有機溶媒のうち、飽和鎖状カーボネート化合物、鎖状エーテル化合物、環状エーテル化合物及び飽和鎖状エステル化合物は、二次電池用非水電解液の粘度を低くすることができ、電解質イオンの移動性を高くすることができる等、出力密度等の電池特性を優れたものにすることができる。また、低粘度であるため、低温での二次電池用非水電解液の性能を高くすることができる。これらの中でも、飽和鎖状カーボネート化合物が好ましい。斯かる飽和鎖状カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、t−ブチルプロピルカーボネート等が挙げられる。前記鎖状エーテル化合物又は環状エーテル化合物としては、例えば、ジメトキシエタン(DME)、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)プロパン、エチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル、プロピレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル、エチレングリコールビス(トリフルオロメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル等が挙げられ、これらの中でも、ジオキソランが好ましい。
前記飽和鎖状エステル化合物としては、分子中の炭素数の合計が2〜8であるモノエステル化合物及びジエステル化合物が好ましく、具体的な化合物としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル、コハク酸メチル、コハク酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジアセチル、プロピレングリコールジアセチル等が挙げられ、これらの中でも、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルが好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液に使用される有機溶媒が、前記の飽和環状カーボネート化合物、飽和環状エステル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物及びアマイド化合物からなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒(溶媒Aとする)と、前記の飽和鎖状カーボネート化合物、鎖状エーテル化合物、環状エーテル化合物及び飽和鎖状エステル化合物からなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒(溶媒Bとする)との混合物である場合には、サイクル特性に優れるばかりでなく、二次電池用非水電解液の粘度、得られる電池の電気容量・出力等のバランスのとれた二次電池用非水電解液が提供できることから好ましく、前記溶媒Aとして飽和環状カーボネート化合物、前記溶媒Bとして飽和鎖状カーボネート化合物を使用した混合物であることが更に好ましい。本発明の二次電池用非水電解液で使用される有機溶媒が、前記の溶媒Aと溶媒Bとの混合物である場合、その混合割合
(質量基準)は1:10〜10:1が好ましく、3:10〜10:3がより好ましい。
二次電池用非水電解液は、低温において急激に電池特性が低下する場合があるが、このような低温における電池特性の低下を改善する目的で、本発明の二次電池用非水電解液には、有機溶媒の一部として、前記飽和鎖状エステル化合物を含有することが好ましく、特に、有機溶媒が、前記の飽和環状カーボネート化合物と飽和鎖状カーボネート化合物と飽和鎖状エステル化合物との混合物である場合に、低温における電池特性の低下を大幅に改善できる。本発明の二次電池用非水電解液において、前記飽和鎖状エステル化合物の含有量は、前記有機溶媒中、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
その他、有機溶媒としてアセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタンやこれらの誘導体を用いることもできる。
本発明の二次電池用非水電解液に用いられる電解質塩としては、従来公知の電解質塩が挙げられ、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiB(CF3SO3)4、LiB(C2O4)2、LiBF2(C2O4)、LiSbF6、LiSiF5、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlF4、LiAlCl4、NaClO4、NaBF4、NaI、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、及びLiC(CF3SO2)3並びにLiCF3SO3の誘導体、及びLiC(CF3SO2)3の誘導体からなる群から選ばれる1種以上を用いることが、電気特性に優れるので好ましい。
前記電解質塩は、本発明の二次電池用非水電解液中の濃度が、0.1〜3.0mol/L、特に0.5〜2.0mol/Lとなるように、前記有機溶媒に溶解することが好ましい。該電解質塩の濃度が0.1mol/Lより小さいと、充分な電流密度を得られないことがあり、3.0mol/Lより大きいと、二次電池用非水電解液の安定性を損なう恐れがある。
本発明の二次電池用非水電解液は、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物との優れた相乗効果が得られることから、更に、下記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物又は下記一般式(3)で表される不飽和リン酸エステル化合物を含有することが好ましい。
(式中、R
3及びR
4は各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、R
5は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表わす。)
(式中、R
6及びR
7は各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、R
8は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表わし、mは1又は2の数を表わす。)
前記一般式(2)において、R3及びR4は各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記一般式(1)のR2の説明で例示したアルキル基が挙げられる。R3及びR4としては、リチウムイオンの移動への悪影響が少なく充電特性が良好であることから、水素原子、メチル、エチル及びプロピルが好ましく、水素原子及びメチルが更に好ましく、水素原子が最も好ましい。
前記一般式(2)において、R5は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記一般式(1)のR2の説明で例示したアルキル基が挙げられる。炭素数2〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、3−ブテニル、イソブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル、7−オクテニル等が挙げられる。炭素数2〜8のアルキニル基としては、例えば、エチニル、2−プロピニル(プロパギルともいう)、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル等が挙げられる。炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基としては、例えば、クロロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3−フルオロプロピル、2−クロロプロピル、3−クロロプロピル、2−クロロ−2−プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、2−クロロブチル、3−クロロブチル、4−クロロブチル、3−クロロ−2−ブチル、1−クロロ−2−ブチル、2−クロロ−1,1−ジメチルエチル、3−クロロ−2−メチルプロピル、5−クロロペンチル、3−クロロ−2−メチルプロピル、3−クロロ−2,2−ジメチル、6−クロロヘキシル等が挙げられる。R5としては、非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、2−プロピニル、3−クロロプロピル、3−クロロブチル及び4−クロロブチルが好ましく、メチル、エチル、プロピル及び2−プロピニルが更に好ましく、エチル及び2−プロピニルが最も好ましい。
前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物のうち、R3及びR4が水素原子である化合物としては、例えば、メチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、エチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、プロピルビス(2−プロピニル)フォスフェート、ブチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、ペンチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、アリルビス(2−プロピニル)フォスフェート、トリス(2−プロピニル)フォスフェート、2−クロロエチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリフルオロエチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリクロロエチルビス(2−プロピニル)フォスフェート等が挙げられる。
前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物のうち、R3がメチルでありR4が水素原子である化合物としては、例えば、メチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、エチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、プロピルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、ブチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、ペンチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、アリルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、2−プロピニルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、トリス(1−メチル−1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、2−クロロエチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリフルオロエチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリクロロエチルビス(1−メチル−2−プロピニル)フォスフェート等が挙げられる。
前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物のうち、R3及びR4がメチルである化合物としては、例えば、メチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、エチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、プロピルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、ブチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、ペンチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、アリルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、2−プロピニルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、2−クロロエチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリフルオロエチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート、2,2,2−トリクロロエチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニル)フォスフェート等が挙げられる。
前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物としては、メチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、エチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、プロピルビス(2−プロピニル)フォスフェート、ブチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、ペンチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、トリス(2−プロピニル)フォスフェート及び2−クロロエチルビス(2−プロピニル)フォスフェートが好ましく、エチルビス(2−プロピニル)フォスフェート、プロピルビス(2−プロピニル)フォスフェート、ブチルビス(2−プロピニル)フォスフェート及びトリス(2−プロピニル)フォスフェートが更に好ましく、エチルビス(2−プロピニル)フォスフェート及びトリス(2−プロピニル)フォスフェートが最も好ましい。
前記一般式(3)において、R6及びR7は各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記一般式(1)のR2の説明で例示したアルキル基が挙げられる。R6及びR7としては、リチウムイオンの移動への悪影響が少なく充電特性が良好であることから、水素原子、メチル、エチル及びプロピルが好ましく、水素原子及びメチルが更に好ましく、水素原子が最も好ましい。
前記一般式(3)において、R8は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記一般式(1)のR2の説明で例示したアルキル基が挙げられる。炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基及び炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基としては、例えば、前記一般式(2)のR5の説明で例示した炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基が挙げられる。R5としては、非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、2−プロピニル、3−クロロプロピル、3−クロロブチル及び4−クロロブチルが好ましく、メチル、エチル、プロピル及び2−プロピニルが更に好ましく、メチル及びエチルが最も好ましい。
前記一般式(3)において、mは1又は2の数を表わす。原料となるアルキンジオールからのリン酸エステル反応が容易であることからmは2であることが好ましい。
前記一般式(3)で表される不飽和リン酸エステル化合物のうちmが1である化合物としては、例えば、2−ブチン−1,4−ジオールテトラメチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラエチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラプロピルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトライソプロピルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラブチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラペンチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(3−クロロプロピル)ジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(3−クロロブチル)ジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(4−クロロブチル)ジフォスフェート等が挙げられ、これらの中でも、2−ブチン−1,4−ジオールテトラメチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラエチルジフォスフェート、2−ブチン−1,4−ジオールテトラプロピルジフォスフェート、及び2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェートが好ましく、2−ブチン−1,4−ジオールテトラメチルジフォスフェート及び2−ブチン−1,4−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェートが更に好ましい。
また、前記一般式(3)で表される不飽和リン酸エステル化合物のうちmが2である化合物としては、例えば、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラメチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラエチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラプロピルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトライソプロピルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラブチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラペンチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(3−クロロプロピル)ジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(3−クロロブチル)ジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(4−クロロブチル)ジフォスフェート等が挙げられ、これらの中でも、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラメチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラエチルジフォスフェート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラプロピルジフォスフェート、及び2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェートが好ましく、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラメチルジフォスフェート、及び2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラキス(2−プロピニル)ジフォスフェートが更に好ましい。
前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物及び前記一般式(3)で表される不飽和リン酸エステル化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよいが、1種のみを使用する場合は、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物との相乗効果が大きいことから、前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物を使用することが好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液において、前記一般式(2)で表される不飽和リン酸エステル化合物及び前記一般式(3)で表される不飽和リン酸エステル化合物の含有量が、あまりに少ない場合には十分な効果を発揮できず、またあまりに多い場合は、含有量に見合う増量効果は得られないばかりか、却って二次電池用非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあることから、これら不飽和リン酸エステル化合物の含有量は、本発明の二次電池用非水電解液中、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜4質量%が更に好ましく、0.05〜3質量%が最も好ましい。また、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物に対するこれら不飽和リン酸エステル化合物の割合は質量比で、0.01〜100であることが好ましく、0.05〜20であることが更に好ましく、0.2〜10であることが最も好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液は、正極表面への分解物の蓄積による内部抵抗の増加を抑制できることから、更に、亜硫酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、アルカリ金属のイミド塩、他のフルオロシラン化合物、及び有機ジシラン又は有機ジシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(以下、(E)成分という場合がある)を含有することが好ましい。
前記亜硫酸エステル化合物としては、例えば、ジメチルスルフィナート、ジエチルスルフィナート等の脂肪族鎖状亜硫酸エステル化合物;エチレンスルフィナート、1,2−プロピレンスルフィナート、1,3−プロピレンスルフィナート、1,2−ブチレンスルフィナート、1,3−ブチレンスルフィナート、1,4−ブチレンスルフィナート、2,3−ブチレンスルフィナート等の環状亜硫酸エステル化合物等が挙げられ、これらの中でも、環状亜硫酸エステル化合物が好ましく、エチレンスルフィナートが更に好ましい。前記亜硫酸エステル化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記スルホン酸エステル化合物としては、例えば、メタンスルホン酸メチルエステル、メタンスルホン酸エチルエステルの脂肪族鎖状モノスルホン酸エステル化合物;1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,1,1−トリフロオロ−2,4−ブタンスルトン、4,4,4−トリフロオロ−1,3−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブチレンスルトン等の環状モノスルホン酸エステル化合物;メチレンメタンジスルホネート(下記式(4)で表わされる化合物)、エチレンメタンジスルホネート(下記式(5)で表わされる化合物)等の環状ジスルホン酸エステル化合物等が挙げられ、これらの中でも、環状モノスルホン酸エステル化合物及び環状ジスルホン酸エステル化合物が好ましく、環状モノスルホン酸エステル化合物が更に好ましく、1,3−プロパンスルトンが最も好ましい。前記スルホン酸エステル化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記アルカリ金属のイミド塩としては、例えば、アルカリ金属のフルオロアルキルスルホニルイミド塩等が挙げられ、中でも、リチウムのフルオロアルキルスルホニルイミド塩が好ましく、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム[Li(CF3SO2)2N]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム[Li(C2F5SO2)2N]等が挙げられ、これらの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが好ましい。前記アルカリ金属のイミド塩は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
本発明において、他のフルオロシラン化合物とは、Si−F結合を分子中に少なくとも1つ有する化合物であって、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物以外の化合物をいう。斯かる他のフルオロシラン化合物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
(式中、R
9及びR
10は各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルケニル基を表わし、Xはフッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基、下記一般式(7)表される基又は下記一般式(8)表される基を表わす。但し、R
9及びR
10のどちらか一方が炭素数1〜8のアルキル基であり、他方が炭素数5〜8のシクロアルキル基である場合は、Xはフッ素原子ではない。)
(式中、R
9及びR
10は前記一般式(6)と同義であり、R
11は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表わす。)
(式中、R
12は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わし、R
13は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表わし、Yは酸素原子、−C(=O)−O−基又はO−C(=O)−基を表わす。)
前記一般式(6)において、R9及びR10は各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、及び炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルケニル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記一般式(1)のR2の説明で例示したアルキル基が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、前記一般式(1)のR1の説明で例示したシクロアルキル基が挙げられる。炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基及び炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基としては、前記一般式(2)のR5の説明で例示したアルケニル基、アルキニル基及びハロゲン化アルキル基が挙げられる。
炭素数5〜8のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等が挙げられる。
ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、ブチルフェニル、t−ブチルフェニル、ペンチルフェニル、t−ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル(p−クミルフェニルともいう)、ジノニルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,3−ジフルオロフェニル、4,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2,3,4−トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル等が挙げられる。
炭素数7〜18のアラルキル基としては、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェニル−2−プロピル、3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル等が挙げられる。
R9及びR10としては、本発明の非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、R9及びR10の少なくとも一方がメチル又はエチルであることが好ましく、少なくとも一方がメチルであることが更に好ましく、両方がメチルであることが最も好ましい。
前記一般式(6)において、Xは、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、前記一般式(7)で表される基又は前記一般式(8)で表される基を表わすが、R9及びR10のどちらか一方が炭素数1〜8のアルキル基であり他方が炭素数5〜8のシクロアルキル基である場合は、Xはフッ素原子ではない。炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基及び炭素数7〜18のアラルキル基としては、R9及びR10の説明で例示したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよいアリール基及びアラルキル基が挙げられる。Xとしては、炭素数1〜8のアルキル基及び前記一般式(7)で表される基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基及び前記一般式(7)で表される基が更に好ましく、前記一般式(7)で表される基が最も好ましい。
前記一般式(7)において、R9及びR10は前記一般式(6)と同義であり、R11は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表わす。炭素数1〜15の2価の炭化水素基としては、例えば、メタンジイル(メチレンともいう)、1,2−エタンジイル(エチレンともいう)、1,3−プロパンジイル(トリメチレンともいう)、1,4−ブタンジイル(テトラメチレンともいう)、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル(ヘキサメチレンともいう)、1,7−ヘプタンジイル、1,8−オクタンジイル、2−メチル−1,4−ブタンジイル、1,2−エテンジイル(エテニレン又はビニレンともいう)、2−ブテン−1,4−ジイル、1,2−ジメチル−1,2−エテンジイル、1,2−エチンジイル(エチニレンともいう)、1,4−シクロヘキサンジイル、1,2−フェニレン、1,4−フェニレン、(1,1'−ビフェニル)−4,4’−ジイル等が挙げられる。R11としては、本発明の非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル、1,7−ヘプタンジイル、1,8−オクタンジイル、2−メチル−1,4−ブタンジイル、1,2−エチンジイル及び1,2−フェニレンが好ましく、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル及び1,4−ブタンジイルが更に好ましく、1,2−エタンジイルが最も好ましい。
前記一般式(8)において、R12は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基及び炭素数7〜18のアラルキル基としては、R9及びR10の説明で例示したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよいアリール基及びアラルキル基が挙げられる。R12としては、本発明の非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が最も好ましい。
前記一般式(8)において、R13は炭素数1〜15の2価の炭化水素基を表わし、例えば、R11の説明で例示した炭素数1〜15の2価の炭化水素基が挙げられる。R13としては、本発明の非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル、1,7−ヘプタンジイル、1,8−オクタンジイル、2−メチル−1,4−ブタンジイル、1,2−エチンジイル及び1,2−フェニレンが好ましく、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル及び1,4−ブタンジイルが更に好ましく、1,2−エタンジイルが最も好ましい。
前記一般式(8)において、Yは酸素原子、−C(=O)−O−基又はO−C(=O)−基を表わす。
Xがフッ素原子である前記一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、ブチルメチルジフルオロシラン、イソブチルメチルジフルオロシラン、ペンチルメチルジフルオロシラン、ヘキシルメチルジフルオロシラン、ヘプチルメチルジフルオロシラン、オクチルメチルジフルオロシラン、ジシクロペンチルジフルオロシラン、ジシクロヘキシルジフルオロシラン等が挙げられる。
Xが炭素数1〜8のアルキル基である前記一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、トリメチルフルオロシラン、エチルジメチルフルオロシラン、プロピルジメチルフルオロシラン、イソプロピルジメチルフルオロシラン、ブチルジメチルフルオロシラン、第二ブチルジメチルフルオロシラン、t−ブチルジメチルフルオロシラン、ペンチルジメチルフルオロシラン、ヘキシルジメチルフルオロシラン、ヘプチルジメチルフルオロシラン、オクチルジメチルフルオロシラン、2−エチルヘキシルジメチルフルオロシラン、トリフルオロメチルジメチルフルオロシラン、テトラフルオロエチルジメチルフルオロシラン、ヘプタフルオロプロピルジメチルフルオロシラン、2,2,2−トリフルオロエチルジメチルフルオロシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、アリルジメチルフルオロシラン、1−プロペニルジメチルフルオロシラン、イソプロペニルジメチルフルオロシラン、2−ブテニルジメチルフルオロシラン、1,3−ブタジエニルジメチルフルオロシラン、2−ペンテニルジメチルフルオロシラン、2−オクテニルジメチルフルオロシラン、エチニルジメチルフルオロシラン、1−プロピニルジメチルフルオロシラン、2−プロピニルジメチルフルオロシラン、1−ブチニルジメチルフルオロシラン、2−ブチニルジメチルフルオロシラン、3−ブチニルジメチルフルオロシラン、フェニルジメチルフルオロシラン、2−フルオロフェニルジメチルフルオロシラン、3−フルオロフェニルジメチルフルオロシラン、4-フルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2,4−ジフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、3,5−ジフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2,6−ジフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2,3−ジフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、4,5−ジフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2,4,6−トリフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2,3,4−トリフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、テトラフルオロフェニルジメチルフルオロシラン、2−メチルフェニルジメチルフルオロシラン、3−メチルフェニルジメチルフルオロシラン、4−メチルフェニルジメチルフルオロシラン、2,4−ジメチルフェニルジメチルフルオロシラン、3,5−ジメチルフェニルジメチルフルオロシラン等が挙げられる。
また、Xが前記一般式(7)で表される基である、前記一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジ(ジメチルフルオロシリル)エタン、1,2−ジ(ジエチルフルオロシリル)エタン、1,2−ジ(ジプロピルフルオロシリル)エタン、1,2−ジ(ジブチルフルオロシリル)エタン、1,3−ジ(ジメチルフルオロシリル)プロパン、1,2−ジ(ジエチルフルオロシリル)プロパン、1,3−ジ(ジプロピルフルオロシリル)プロパン、1,3−ジ(ジブチルフルオロシリル)プロパン、1,4−ジ(ジメチルフルオロシリル)ブタン、1,4−ジ(ジエチルフルオロシリル)ブタン、1,4−ジ(ジプロピルフルオロシリル)ブタン、1,4−ジ(ジブチルフルオロシリル)ブタン、1,5−ジ(ジメチルフルオロシリル)ペンタン、1,5−ジ(ジエチルフルオロシリル)ペンタン、1,5−ジ(ジプロピルフルオロシリル)ペンタン、1,5−ジ(ジブチルフルオロシリル)ペンタン、1,6−ジ(ジメチルフルオロシリル)ヘキサン、1,6−ジ(ジエチルフルオロシリル)ヘキサン、1,6−ジ(ジプロピルフルオロシリル)ヘキサン、1,6−ジ(ジブチルフルオロシリル)ヘキサン、1,7−ジ(ジメチルフルオロシリル)ヘプタン、1,7−ジ(ジエチルフルオロシリル)ヘプタン、1,7−ジ(ジプロピルフルオロシリル)ヘプタン、1,7−ジ(ジブチルフルオロシリル)ヘプタン、1,8−ジ(ジメチルフルオロシリル)オクタン、1,8−ジ(ジエチルフルオロシリル)オクタン、1,8−ジ(ジプロピルフルオロシリル)オクタン、1,8−ジ(ジブチルフルオロシリル)オクタン、1,4−ジ(ジメチルフルオロシリル)−2−メチルブタン、1,4−ジ(ジエチルフルオロシリル)−2−メチルブタン、1,4−ジ(ジプロピルフルオロシリル)−2−メチルブタン、1,4−ジ(ジブチルフルオロシリル)−2−メチルブタン、1,2−ジ(ジメチルフルオロシリル)アセチレン、1,2−ジ(ジエチルフルオロシリル)アセチレン、1,2−ジ(ジプロピルフルオロシリル)アセチレン、1,2−ジ(ジブチルフルオロシリル)アセチレン、1,4−ジ(ジメチルフルオロシリル)ベンゼン、1,3−ジ(ジメチルフルオロシリル)ベンゼン、1,2−ジ(ジメチルフルオロシリル)ベンゼン等が挙げられる。
また、Xが前記一般式(8)で表される基であり、該一般式(8)中のYが酸素原子である、前記一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、3−メトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−エトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−プロポキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ブトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ペントキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ヘキソキシプロピルジメチルフルオロシラン、4−メトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−エトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−プロポキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ブトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ペントキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ヘキソキシブチルジメチルフルオロシラン等が挙げられる。
また、Xが前記一般式(8)で表される基であり、該一般式(8)中のYが酸素原子である、前記一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、3−メトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−エトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−プロポキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ブトキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ペントキシプロピルジメチルフルオロシラン、3−ヘキソキシプロピルジメチルフルオロシラン、4−メトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−エトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−プロポキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ブトキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ペントキシブチルジメチルフルオロシラン、4−ヘキソキシブチルジメチルフルオロシラン等が挙げられる。
また、Xが前記一般式(8)で表される基であり、該一般式(8)中のYが−C(=O)−O−基である化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、酢酸−2−(ジメチルフルオロシリル)エチル、酢酸−3−(ジメチルフルオロシリル)プロピル、酢酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ブチル、酢酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ペンチル、酢酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ヘキシル、プロピオン酸−2−(ジメチルフルオロシリル)エチル、プロピオン酸−3−(ジメチルフルオロシリル)プロピル、プロピオン酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ブチル、プロピオン酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ペンチル、プロピオン酸−3−(ジメチルフルオロシリル)ヘキシル、ブタン酸−2−(ジメチルフルオロシリル)エチル、ブタン酸−3−(ジメチルフルオロシリル)プロピル、ブタン酸−4−(ジメチルフルオロシリル)ブチル、ブタン酸−5−(ジメチルフルオロシリル)ペンチル、ブタン酸−6−(ジメチルフルオロシリル)ヘキシル等が挙げられる。
また、Xが前記一般式(8)で表される基であり、該一般式(8)中のYが−O−C(=O)−基である、一般式(6)で表される化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、ジメチルフルオロシリル酢酸メチル、ジメチルフルオロシリル酢酸エチル、ジメチルフルオロシリル酢酸ブチル、ジメチルフルオロシリル酢酸ペンチル、ジメチルフルオロシリル酢酸ヘキシル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸メチル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸エチル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸プロピル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸ブチル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸ペンチル、3−(ジメチルフルオロシリル)プロピオン酸ヘキシル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸メチル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸エチル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸プロピル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸ブチル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸ペンチル、4−(ジメチルフルオロシリル)ブタン酸ヘキシル等が挙げられる。
前記他のフルオロシラン化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記有機ジシラン化合物は、分子中にSi−Si結合を1つ有する化合物であり、前記有機ジシロキサン化合物は、分子中にSi−O−Si結合を1つ有する化合物である。(E)成分として好ましい有機ジシラン又は有機ジシロキサン化合物としては、下記一般式(9)で表わされる化合物が挙げられる。
(式中、R
14及びR
15は各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わし、R
16は炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わし、aは0又は1の数を表わす。)
前記一般式(9)において、R14及びR15は各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わし、R16は炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基を表わす。炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよい炭素数6〜18のアリール基及び炭素数7〜18のアラルキル基としては、前記一般式(6)のR9及びR10の説明で例示したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子を有してもよいアリール基又はアラルキル基が挙げられる。
炭素数2〜8のアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシエチル、メトキシブチル、エトキシプロピル、プロポキシエチル、メトキシペンチル、エトキシブチル、プロポキシプロピル、ブトキシエチル、ペントキシエチル、ブトキシプロピル、へキソキシエチル、ペントキシプロピル等が挙げられる。
R14及びR15としては、非水電解液二次電池の内部抵抗が小さくなることから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、3−クロロプロピル、3−クロロブチル及び4−クロロブチルが好ましく、メチル、エチル及びプロピルが更に好ましく、メチル及びエチルが最も好ましい。同様の理由から、R16としては、ビニル及びエチニルが好ましく、ビニルが更に好ましい。
前記一般式(9)において、aは0又は1の数を表わす。aが0の場合、前記一般式(9)は有機ジシラン化合物を表し、aが1の場合、前記一般式(9)は有機ジシロキサン化合物を表す。
aが0の場合、すなわち、有機ジシラン化合物の好ましい具体例としては、例えば、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラプロピルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラブチルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラペンチルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラヘキシルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラプロピルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラブチルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラペンチルジシラン、1,2−ジエチニル−1,1,2,2−テトラヘキシルジシラン等が挙げられる。
aが1の場合、すなわち、有機ジシロキサン化合物の好ましい具体例としては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラプロピルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラブチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラペンチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラヘキシルジシロキサン、1,3−ジエチニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエチニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,3−ジエチニル−1,1,3,3−テトラプロピルジシロキサン、1,3−ジエチニル−1,1,3,3−テトラペンチルジシロキサン、1,3−ジエチニル−1,1,3,3−テトラヘキシルジシロキサン等が挙げられる。
前記有機ジシラン又は有機ジシロキサン化合物としては、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラプロピルジシロキサンが好ましく、1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサンが更に好ましい。前記有機ジシラン又は有機ジシロキサン化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記(E)成分としては、前記の亜硫酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、アルカリ金属のイミド塩、他のフルオロシラン化合物、及び有機ジシラン又は有機ジシロキサン化合物を、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。単独で用いる場合は、亜硫酸エステル化合物又はスルホン酸エステル化合物が好ましく、組み合わせて用いる場合には、亜硫酸エステル化合物又はスルホン酸エステル化合物と他の(E)成分とを組み合わせて配合することが好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液において、前記(E)成分の含有量が、あまりに少ない場合には十分な効果を発揮できず、あまりに多い場合は、含有量に見合う増量効果は得られないばかりか、却って二次電池用非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあることから、前記(E)成分の含有量は、本発明の二次電池用非水電解液中、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜4質量%が更に好ましく、0.05〜3質量%が最も好ましい。
本発明の二次電池用非水電解液は、安定性の点から、正極負極それぞれの活物質の特性にあった電極表面の被膜を形成するために、不飽和環状カーボネート化合物、不飽和鎖状カーボネート化合物、不飽和ジエステル化合物、及びハロゲン含有環状カーボネート化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(以下、(F)成分という場合がある)を含有することが好ましい。尚、本発明において、不飽和環状カーボネート化合物とは、カーボネート基を有する環の環内又は環外に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物を言う。
前記不飽和環状カーボネート化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、1−メチルビニレンカーボネート、1,2−ジメチルビニレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート、エチリデンエチルカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、1,2−ジフェニルエチレンカーボネート、カテコールカーボネート等が挙げられる。
前記不飽和鎖状カーボネート化合物としては、例えば、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、メチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、t−ブチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、プロパルギルメチルカーボネート、エチルプロパルギルカーボネート、ビス(1−メチルプロパルギル)カーボネート、ビス(1,1−ジメチルプロパルギル)カーボネート、2−ブチン−1,4−ジオールジメチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオールジイソプロピルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオールビス(3−クロロプロピル)ジカーボネート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールジメチルジカーボネート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールジイソプロピルジカーボネート、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールビス(3−クロロプロピル)ジカーボネート等が挙げられる。
前記不飽和ジエステル化合物としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘプチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジペンチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジヘプチル、フマル酸ジオクチル、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アセチレンジカルボン酸ジエチル、アセチレンジカルボン酸ジプロピル、アセチレンジカルボン酸ジブチル、アセチレンジカルボン酸ジペンチル、アセチレンジカルボン酸ジヘキシル、アセチレンジカルボン酸ジヘプチル、アセチレンジカルボン酸ジオクチル等が挙げられる。
前記ハロゲン含有環状カーボネート化合物としては、例えば、クロロエチレンカーボネート、1,2−ジクロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
前記(F)成分としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アセチレンジカルボン酸ジエチル、クロロエチレンカーボネート及びジクロロエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、アセチレンジカルボン酸ジメチル及びクロロエチレンカーボネートが更に好ましく、ビニレンカーボネート、ジプロパルギルカーボネート及びクロロエチレンカーボネートが最も好ましい。
前記(F)成分は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。本発明の二次電池用非水電解液において、(F)成分の含有量があまりに少ない場合には十分な効果を発揮できず、またあまりに多い場合は、含有量に見合う増量効果は得られないばかりか、却って二次電池用非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあることから、前記(F)成分の含有量は、本発明の二次電池用非水電解液中、0.005〜10質量%が好ましく、0.02〜5質量%が更に好ましく、0.05〜3質量%が最も好ましい。
また、本発明の二次電池用非水電解液には、難燃性を付与するために、ハロゲン系、リン系、その他の難燃剤を適宜添加することができる。難燃剤の添加量が、あまりに少ない場合には十分な難燃化効果を発揮できず、またあまりに多い場合は、含有量に見合う増量効果は得られないばかりか、却って二次電池用非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあることから、本発明の二次電池用非水電解液を構成する有機溶媒中、5〜100質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。
次に、本発明の非水電解液二次電池について説明する。
本発明の非水電解液二次電池を構成する電極材料としては、正極及び負極があり、二次電池の正極としては、正極活物質と結着剤(バインダー)と導電材とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布・乾燥し、必要に応じて圧延してシート状にしたものが使用される。
前記正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はないが、リチウムと少なくとも1種の遷移金属とを含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物等が挙げられ、これらを混合して用いてもよい。リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはバナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2等のリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO3等のリチウムマンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をアルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、ジルコニウム等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.80Co0.17Al0.03O2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMn1.8Al0.2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、バナジウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をアルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
本発明の非水電解液二次電池の正極に使用される正極活物質としては、高い電圧が安定して得られることからリチウムコバルト複合酸化物が好ましいが、高い電圧が得られ、原料も安価であることから、マンガン、ニッケル又は鉄を含有する正極活物質が好ましく、特に活物質がリチウムニッケル含有複合酸化物又はそのニッケル原子の一部が他の金属で置換したもの、リン酸鉄リチウム化合物又はその鉄原子の一部が他の金属で置換したものであることが更に好ましい。ニッケルや鉄を含有する正極活物質を有する正極は、電解液の高温劣化反応が起こりやすいという問題があるが、本発明の非水電解液二次電池は、非水電解液中に前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物を含有していることにより、電解液の分解が少なく、高温保存を経ても小さな内部抵抗と高い電気容量が維持することが可能になった。
前記正極活物質の結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム、ポリアクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されない。尚、前記結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部が更に好ましい。
正極の導電材としては、例えば、グラファイトの微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー等が使用されるが、これらに限定されない。尚、前記導電材の使用量は、正極活物質100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましい。
スラリー化する溶媒としては、結着剤を溶解する有機溶媒もしくは水が使用される。該有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、ポリエチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これに限定されない。尚、前記溶媒の使用量は、正極活物質100質量部に対し、30〜300質量部が好ましく、50〜200質量部が更に好ましい。
正極の集電体には、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
負極としては、通常、負極活物質と結着剤(バインダー)とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。
負極活物質としては、例えば、リチウム、リチウム合金、スズ・ケイ素化合物等の無機化合物、チタン酸化物、炭素質材料、導電性ポリマー等が挙げられる。特に、安全性の高いリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料が好ましい。この炭素質材料は、黒鉛と無定形炭素に大別され、無定形炭素は熱による結晶化(黒鉛化)の起こりやすさにより、2000℃程度の熱処理により黒鉛化が進行するソフトカーボン(易黒鉛化炭素ともいう)と2800℃以上の熱処理によっても黒鉛化の進みにくいハードカーボン(難黒鉛化炭素ともいう)とに分けられる。黒鉛としては、例えば、メソフィーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)等の人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。ソフトカーボンとしては、例えば、コークス、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維等が挙げられる。ハードカーボンとしては、例えば、フェノール樹脂焼成物、フラン樹脂焼成物、酸化石油ピッチ焼成物、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)等が挙げられる。
負極活物質の結着剤及びスラリー化する溶媒としては、前記の正極活物質の結着剤及び溶媒と同様のものが挙げられる。また、負極の集電体には、通常、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。尚、前記結着剤の使用量は、前記負極活物質100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部が更に好ましく、0.01〜2質量部が最も好ましい。前記溶媒の使用量は、前記負極活物質100質量部に対し、30〜300質量部が好ましく、50〜200質量部が更に好ましい。
本発明の非水電解液二次電池では、正極と負極との間にセパレータを用いることが好ましく、該セパレータとしては、通常用いられる高分子の微多孔フィルムを特に限定なく使用できる。該フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の種々のセルロース類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその種々のエステル類等を主体とする高分子化合物やその誘導体、これらの共重合体や混合物からなるフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、単独で用いてもよいし、これらのフィルムを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。更に、これらのフィルムには、種々の添加剤を用いてもよく、その種類や含有量は特に制限されない。これらのフィルムの中でも、本発明の非水電解液二次電池には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンからなるフィルムが好ましく用いられる。
これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化がなされている。この微多孔化の方法としては、高分子化合物と溶剤の溶液をミクロ相分離させながら製膜し、溶剤を抽出除去して多孔化する「相分離法」と、溶融した高分子化合物を高ドラフトで押し出し製膜した後に熱処理し、結晶を一方向に配列させ、更に延伸によって結晶間に間隙を形成して多孔化をはかる「延伸法」等が挙げられ、用いられるフィルムによって適宜選択される。
本発明の非水電解液二次電池において、電極材料、非水電解液及びセパレータには、より安全性を向上する目的で、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物等を添加してもよい。
前記構成からなる本発明の非水電解液二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状とすることができる。
図1は、本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の一例を、 図2及び 図3は円筒型電池の一例をそれぞれ示したものである。
図1に示すコイン型の非水電解液二次電池10において、1はリチウムイオンを放出できる正極、1aは正極集電体、2は正極から放出されたリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料よりなる負極、2aは負極集電体、3は本発明の電池用非水電解液、4はステンレス製の正極ケース、5はステンレス製の負極ケース、6はポリプロピレン製のガスケット、7はポリエチレン製のセパレータである。
また、 図2及び図3に示す円筒型の非水電解液二次電池10'において、11は負極、12は負極集電体、13は正極、14は正極集電体、15は本発明の電池用非水電解液、16はセパレータ、17は正極端子、18は負極端子、19は負極板、20は負極リード、21は正極板、22は正極リード、23はケース、24は絶縁板、25はガスケット、26は安全弁、27はPTC素子である。
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。但し、以下の実施例等により本発明はなんら制限されるものではない。尚、実施例中の「部」や「%」は、特にことわらないかぎり質量によるものである。
〔合成例1〕化合物A1の合成
還流器を付けた500ml三口フラスコにシクロヘキシルジメトキシメチルシラン188gを仕込み、窒素雰囲気下でトリフルオロボランジエチルエテラ−ト94.6gを滴下ロートから水冷しながら滴下した。滴下後、更に室温で6時間反応させてから、反応を完結させた。反応後、減圧蒸留によって精製することによって、目的物である化合物A1[シクロヘキシルジフルオロメチルシラン]131g(収率80%)を得た。
〔合成例2〕化合物A2の合成
還流器を付けた500ml三口フラスコにシクロペンチルジメトキシメチルシラン174gを仕込み、窒素雰囲気下でトリフルオロボランジエチルエテラ−ト94.6gを滴下ロートから水冷しながら滴下した。滴下後、更に室温で6時間反応させてから、反応を完結させた。反応後、減圧蒸留によって精製することによって、目的物である化合物A2[シクロペンシルジフルオロメチルシラン]119g(収率79%)を得た。
〔合成例3〕化合物A3の合成
還流器を付けた500ml三口フラスコにシクロオクチルジメトキシメチルシラン216gを仕込み、窒素雰囲気下でトリフルオロボランジエチルエテラ−ト94.6gを滴下ロートから水冷しながら滴下した。滴下後、更に室温で6時間反応させてから、反応を完結させた。反応後、減圧蒸留によって精製することによって、目的物である化合物A3[シクロオクチルジフルオロメチルシラン]156g(収率81%)を得た。
〔実施例1〜24及び比較例1〜26〕
以下の実施例及び比較例において、非水電解液二次電池(リチウム二次電池)は、以下の作製手順に従って作製された。
<作製手順>
a.正極の作製
〔正極Aの作製〕
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日本化学工業(株)CELLSEED NMC)90質量部、導電材としてアセチレンブラック5質量部、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部を混合して、正極材料とした。この正極材料をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)140質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体に塗布し、乾燥後、プレス成型して、正極板とした。その後、この正極板を所定の大きさにカットして円盤状正極Aを作製した。
〔正極Bの作製〕
正極活物質としてLiFePO478質量部、導電材としてアセチレンブラック18質量部、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を混合して、正極材料とした。この正極材料をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)140質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体に塗布し、乾燥後、プレス成型して、正極板とした。その後、この正極板を所定の大きさにカットして円盤状正極Bを作製した。
b.負極の作製
〔負極Aの作製〕
負極活物質として人造黒鉛97.0質量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム2.0質量部、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.0質量部を混合して、負極材料とした。この負極材料を水120質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーを銅製の負極集電体に塗布し、乾燥後、プレス成型して、負極板とした。その後、この負極板を所定の大きさにカットし、円盤状負極Aを作製した。尚、使用したカルボキシメチルセルロースは、エーテル化度0.9、1質量%水溶液の20℃における粘度が1600となるナトリウム中和物である。
〔負極Bの作製〕
負極活物質としてハードカーボン97.0質量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム2.0質量部、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.0質量部を混合して、負極材料とした。この負極材料を水120質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーを銅製の負極集電体に塗布し、乾燥後、プレス成型して、負極板とした。その後、この負極板を所定の大きさにカットし、円盤状負極Bを作製した。尚、使用したカルボキシメチルセルロースは、エーテル化度0.9、1質量%水溶液の20℃における粘度が1600となるナトリウム中和物である。
c.非水電解液の調製
〔電解質溶液Aの調製〕
エチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート40体積%、ジメチルカーボネート25体積%及び酢酸プロピル5体積%からなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し電解質溶液Aを調製した。
〔電解質溶液Bの調製〕
エチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート40体積%及びジメチルカーボネート30体積%からなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し電解質溶液Bを調製した。
〔電解質溶液Cの調製〕
フルオロエチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート40体積%及びジメチルカーボネート30体積%からなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し電解質溶液Cを調製した。
〔電解質溶液Dの調製〕
エチレンカーボネート30体積%、及びジエチルカーボネート70体積%からなる混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し電解質溶液Dを調製した。
〔非水電解液の調製〕
電極添加材として合成例1〜3で得られた化合物A1〜A3、下記の比較の化合物B1〜B3、化合物C1〜C2、化合物D1〜D2を表1又は表2に示す割合で電解質溶液A〜Dに溶解し、本発明の非水電解液及び比較の非水電解液を調製した。尚、表1及び表2中の( )内の数字は、非水電解液中の濃度(質量%)を表す。
〔比較の化合物B1〕
シクロヘキシルフルオロジメチルシラン
〔比較の化合物B2〕
ヘキシルジフルオロメチルシラン
〔比較の化合物B3〕
ジフルオロフェニルメチルシラン
〔化合物C1〕
エチルビス(2−プロピニル)フォスフェート
〔化合物C2〕
トリス(2−プロピニル)フォスフェート
〔化合物C3〕
2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールテトラエチルジフォスフェート
〔化合物D1〕
ビニレンカーボネート
〔化合物D2〕
プロパンスルトン
d.電池の組み立て
得られた円盤状正極A又は正極Bと円盤状負極A又はBとを、厚さ25μmのポリエチレン製の微多孔フィルムを挟んでケース内に保持した。その後、本発明の非水電解液又は比較の非水電解液と正極及び負極との組合せが表1又は表2となるように、それぞれの非水電解液をケース内に注入し、ケースを密閉、封止して、φ20mm、厚さ3.2mmのコイン型リチウム二次電池を製作し、実施例1〜24及び比較例1〜26のリチウム二次電池とした。
実施例1〜24及び比較例1〜26のリチウム二次電池を用いて、下記試験法により、初期特性試験及びサイクル特性試験を行った。初期特性試験では、放電容量比及び内部抵抗比、サイクル特性試験では、放電容量維持率及び内部抵抗増加率を求めた。
<正極Aの場合の初期特性試験方法>
a.放電容量比の測定方法
リチウム二次電池を、20℃の恒温槽内に入れ、充電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で4.3Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で3.0Vまで定電流放電する操作を5回行った。その後、充電電流0.3mA/cm2で4.3Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2で3.0Vまで定電流放電した。この6回目に測定した放電容量を、電池の初期放電とし、下記式に示すように、放電容量比(%)を、実施例1の初期放電容量を100とした場合の初期放電容量の割合として求めた。
放電容量比(%)=[(初期放電容量)/(実施例1における初期放電容量)]×100
b.内部抵抗比の測定方法
上記6回目の放電容量を測定後のリチウム二次電池について、先ず、充電電流1.5mA/cm2(1C相当の電流値)でSOC60%になるように定電流充電し、交流インピーダンス測定装置(IVIUM TECHNOLOGIES製、商品名:モバイル型ポテンショスタットCompactStat)を用いて、周波数100kHz〜0.02Hzまで走査し、縦軸に虚数部、横軸に実数部を示すコール−コールプロットを作成した。続いて、このコール−コールプロットにおいて、円弧部分を円でフィッティングして、この円の実数部分と交差する二点のうち、大きい方の値を、電池の初期内部抵抗とし、下記式に示すように、内部抵抗比(%)を、実施例1の初期内部抵抗を100とした場合の初期内部抵抗の割合として求めた。
内部抵抗比(%)=「(初期内部抵抗)/(実施例1における初期内部抵抗)]×100
<正極Bの場合の初期特性試験方法>
リチウム二次電池を、20℃の恒温槽内に入れ、充電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で4.0Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で2.0Vまで定電流放電する操作を5回行った。その後、充電電流0.3mA/cm2で4.0Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2で2.0Vまで定電流放電した。この6回目に測定した放電容量を、電池の初期放電容量とし、正極Aの場合の初期特性試験方法と同様にして、放電容量比(%)を求めた。また、6回目の放電容量を測定後のリチウム二次電池について、正極Aの場合の初期特性試験方法と同様にして、内部抵抗比(%)を求めた。
<正極Aの場合のサイクル特性試験方法>
a.放電容量維持率の測定方法
初期特性試験後のリチウム二次電池を、60℃の恒温槽内に入れ、充電電流1.5mA/cm2(1C相当の電流値、1Cは電池容量を1時間で放電する電流値)で4.3Vまで定電流充電し、放電電流1.5mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行うサイクルを300回繰り返して行った。この300回目の放電容量をサイクル試験後の放電容量とし、下記式に示すように、放電容量維持率(%)を、各電池の初期放電容量を100とした場合のサイクル試験後の放電容量の割合として求めた。
放電容量維持率(%)=[(サイクル試験後の放電容量)/(初期放電容量)]×100
b.内部抵抗増加率の測定方法
サイクル試験後、雰囲気温度を20℃に戻して、20℃における内部抵抗を、上記内部抵抗比の測定方法と同様にして測定し、この時の内部抵抗を、サイクル試験後の内部抵抗とし、下記式に示すように、内部抵抗増加率(%)を、各電池の初期内部抵抗を100とした場合のサイクル試験後の内部抵抗の増加の割合として求めた。
内部抵抗増加率(%)=「(サイクル試験後の内部抵抗−初期内部抵抗)/(初期内部抵抗)]×100
<正極Bの場合のサイクル特性試験方法>
初期特性試験後のリチウム二次電池を、60℃の恒温槽内に入れ、充電電流1.5mA/cm2(1C相当の電流値、1Cは電池容量を1時間で放電する電流値)で4.0Vまで定電流充電し、放電電流1.5mA/cm2で2.0Vまで定電流放電を行うサイクルを300回繰り返して行った。この300回目の放電容量をサイクル試験後の放電容量とし、正極Aの場合のサイクル特性試験方法と同様にして、放電容量維持率(%)を求めた。また、サイクル試験後のリチウム二次電池について、正極Aの場合のサイクル特性試験方法と同様にして、内部抵抗増加率(%)を求めた。
表3及び表4の結果から明らかなように、前記一般式(1)で表されるジフルオロシラン化合物を含有する非水電解液を有する非水電解液二次電池は、60℃でのサイクル試験後においても、内部抵抗及び放電容量の面で優れており、優れた電池特性を維持できることが確認できた。
産業上の利用の可能性
本発明の非水電解液二次電池用は、小さな内部抵抗と高い放電容量を長期使用及び温度変化の大きい場合においても維持することが出来る。かかる非水電解液二次電池は、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯音楽プレーヤー、サウンドレコーダー、ポータブルDVDプレーヤー、携帯ゲーム機、ノートパソコン、電子辞書、電子手帳、電子書籍、携帯電話、携帯テレビ、電動アシスト自転車、電池自動車、ハイブリッド車等様々な用途に用いることができ、中でも、高温状態で使用される場合がある、電池自動車、ハイブリッド車等の用途に好適に使用できる。