JP2011221362A - 音場制御装置および音場制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多数のマイクロホンを設置することなく、空間上の音圧と空気粒子速度とを望む状態に制御して所望の音場を作ることが可能な「音場制御装置および音場制御方法」を提供する。
【解決手段】K個(K≧2)の主マイク1と、各主マイク1の近傍において異なる軸方向にX個ずつ(X≧2)設置されたK組の補助マイク2と、フィルタ処理部3のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部5とを備え、主マイク1により検出される音圧と、主マイク1により検出される音圧と補助マイク2により検出される音圧との差分とに基づいて、出力音声信号の音圧および空気粒子速度を制御するためのフィルタ係数を算出することにより、K個の主マイクと(K×X)個の補助マイクがあれば、少なくとも2軸方向に関する音圧と空気粒子速度とを独立して直接的に制御できるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、音場制御装置および音場制御方法に関し、特に、オーディオシステムで再生される音声の存在する空間(音場)を調整あるいは創造するための音場制御装置に用いて好適なものである。
従来、オーディオシステムで再生される音声の存在する空間(音場)を調整あるいは創造するための音場制御装置が数多く提供されている。例えば、本物のコンサートホールや映画館さながらの音場を家庭のオーディオシステムで再現するための技術も開発されている。
これまで提案されてきた音場制御装置は、空間内の音圧のみを制御するものがほとんどであった。しかし、固定点における音圧のみの制御では、音波が伝播する際の空気の流れである粒子速度は制御することができず、音の到来方向に違和感を生じる場合が発生する。これに対して、音圧と粒子速度との積の関係にある音響インテンシティや、音圧と粒子速度との比の関係にある音響インピーダンスを制御する技術も提案されている。
ところが、音響インテンシティや音響インピーダンスの制御は、音圧と粒子速度とを間接的に制御しようとするものであり、必ずしも音圧と粒子速度とを望む状態に制御できるわけではない。例えば、車載オーディオシステムに搭載する音場制御装置においては、車室内のどこに座っている人にも同じように再生音が聞こえるような音場を作ることが望まれるが、従来の音響インテンシティ制御や音響インピーダンス制御の方法では実現することが困難であった。
すなわち、音響インテンシティ制御は、一方向以外の音響インテンシティをゼロに近づけるように制御するものである。そのため、一方向については音響インテンシティを望むものに制御することができない。また、制御条件が悪い場合には、音響インテンシティの流れが望む方向とは逆の方向になってしまう場合も発生する。
図7は、所定の空間内で音響インテンシティを制御した場合の音圧分布と粒子速度分布とを示す図である。所定の空間は、車室内の空間を模擬したものであり、x軸方向(車室の前後方向に相当)は2[m]、x軸方向(車室の幅方向に相当)は1.3[m]、x軸方向(車室の高さ方向に相当)は0.8[m]に設定してある。
図7(a)の音圧分布に示すように、音響インテンシティ制御では、例えばx軸方向(車室の幅方向)の音響インテンシティをゼロに制御することにより、x軸方向に関しては音圧をほぼ均一にすることができるが、x軸方向(車室の前後方向)に関しては音圧を均一にすることができない。図7(a)の例では、車両のフロントガラスや後部座席のヘッドレストに相当する位置では音圧が高くなり過ぎており、逆に、前部座席のヘッドレストに相当する中央の位置では音圧が低くなってしまっている。また、図7(b)に示すように、空気の粒子が車室の後ろ側から前側の方向へと逆流してしまっている。
一方、音響インピーダンス制御は、一方向の音響インピーダンスを空気の特性インピーダンスと等しくなるように制御することで、その一方向については音の反射音をなくそうとするものである。この場合は、一方向以外の方向については音響インピーダンスを望むものに制御することができない。また、制御条件が悪い場合には、音響インピーダンスの流れが望む方向とは逆の方向になってしまう場合も発生する。
図8は、図7と同じ所定の空間内で音響インピーダンスを制御した場合の音圧分布と粒子速度分布とを示す図である。図8(a)の音圧分布に示すように、音響インピーダンス制御においては、例えばx軸方向(車室の幅方向)の音響インピーダンスを空気の特性インピーダンスと等しくなるように制御することにより、x軸方向に関しては音圧をほぼ均一にすることができるが、x軸方向(車室の前後方向)に関しては音圧を均一にすることができない。その結果、図7(a)と同様に、車両のフロントガラスや後部座席のヘッドレストに相当する位置では音圧が高くなり過ぎており、前部座席のヘッドレストに相当する位置では音圧が低くなってしまっている。また、図8(b)に示すように、空気の粒子については、車室の前側から後ろ側への順方向と、後ろ側から前側への逆方向とが混在してしまっている。
なお、音圧の時間的変化と空気粒子速度の空間的変化との関係、音圧の空間的変化と空気粒子速度の時間的変化との関係を求め、その求めた関係に基づいて、空間上において指定された位置の音圧を求めて出力するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3863306号公報
しかしながら、従来提案されてきた制御技術では、音圧と空気粒子速度とを間接的に制御するために、例えば車戴オーディオシステムに適用した場合には制御性能が十分に取れないという問題があった。
また、上記特許文献1に記載の技術では、音圧と空気粒子速度とから指定位置の音圧を求めるのみであり、音響空間の音圧と空気粒子速度とを所望の特性に補正するという目的を対象としていない。そのため、音響空間の音圧と空気粒子速度とを所望の特性に補正するためには、新たな技術を導入する必要がある。
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、空間上の音圧と空気粒子速度とを望む状態に制御して所望の音場を作ることができるようにすることを目的とする。
上記した課題を解決するために、本発明では、空間上の測定点に設置されたK個(K≧2)の主マイクと、K個の主マイクのそれぞれの近傍において異なる軸方向にX個ずつ(X≧2)設置されたK組の補助マイクと、入力音声信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、フィルタ処理された音声信号を出力するM個(M≧1)のスピーカと、フィルタ処理部のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部とを備える。フィルタ係数算出部では、主マイクにより検出される音圧と、主マイクにより検出される音圧と補助マイクにより検出される音圧との差分とに基づいて、出力音声信号の音圧および空気粒子速度を制御するためのフィルタ係数を算出する。
上記のように構成した本発明によれば、フィルタ係数算出部により算出されたフィルタ係数に従って、フィルタ処理部により出力音声信号の音圧と空気粒子速度とが独立して直接的に制御される。また、主マイクにより検出される音圧とX個(X≧2)の補助マイクにより検出される音圧との差分から少なくとも2軸の方向に関する空気粒子速度が制御される。しかも、音圧の差分の測定が、音場形成対象の空間上において空間的な広がりを持つように設定された少なくともK箇所(K≧2)の測定点で行われる。
このため、K個の主マイクと(K×X)個の補助マイク(両方を合わせて{(K+1)×X}個で少なくとも6個のマイク)があれば、K箇所の測定点で定まる一定の広がりを持つ空間上において、出力音声信号の音圧と少なくとも2軸方向の空気粒子速度とを独立して直接的に制御することが可能となる。これにより、空間上の音圧と空気粒子速度とを望む状態に制御して所望の音場を作ることができる。
本実施形態による音場制御装置の構成例を示す図である。 空気の無限小体積要素にかかる音圧を示す図である。 本実施形態による音場制御装置を適用する音響系の例を示す図である。 本実施形態による音場制御装置の他の構成例を示す図である。 本実施形態の音場制御装置を適用した音場の例を示す図である。 本実施形態の音場制御装置を適用した音場の音圧分布および空気粒子速度分布を示す図である。 従来のインテンシティ制御を適用した音場の音圧分布および空気粒子速度分布を示す図である。 従来のインピーダンス制御を適用した音場の音圧分布および空気粒子速度分布を示す図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による音場制御装置の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の音場制御装置は、空間上の測定点に設置されたK個(K≧2)の主マイク1と、当該K個の主マイク1のそれぞれの近傍において異なる軸方向にX個ずつ(X≧2)設置されたK組の補助マイク2−1,2−2,2−3と、入力される音声信号uに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部3と、フィルタ処理された音声信号を出力するM個(M≧1)のスピーカ4と、フィルタ処理部3のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部5とを備えて構成されている。
本実施形態では、フィルタ係数算出部5が、主マイク1により検出される音圧pと、主マイク1により検出される音圧pと補助マイク2−1,2−2,2−3により検出される音圧px1,px2,px3との差分とに基づいて、スピーカ4から出力される音声信号の空間上における音圧および空気粒子速度を制御するためのフィルタ係数wを算出し、フィルタ処理部3に設定する。
本実施形態では、上記音圧の差分(p−px1,p−px2,p−px3)を主マイク1と補助マイク2−1,2−2,2−3との距離(Δx,Δx,Δx)で除算したものを「音圧傾度」と定義し、この音圧傾度を空気粒子速度に換算する。空気粒子速度を直接的に測定することが実用上は難しいからである。そこで、本実施形態では、音圧と、空気粒子速度と一対の関係にある音圧傾度とを、所望の特性に制御する。
具体的には、フィルタ係数算出部5は、主マイク1により検出される音圧pに基づいて、当該音圧pの音響系伝達関数を求める。また、フィルタ係数算出部5は、主マイク1および補助マイク2−1,2−2,2−3により検出されるそれぞれの音圧から求まる音圧傾度を空気粒子速度に換算して、当該空気粒子速度の音響系伝達関数を求める。そして、音圧の音響系伝達関数および空気粒子速度の音響系伝達関数に基づいて、フィルタ処理部3に設定すべきフィルタ係数w(フィルタ処理部3の伝達関数に相当)を算出する。
まず、音圧傾度と空気粒子速度との関係を導出する。ここでは、図2のように互いに直交するx軸,x軸,x軸の3軸から成る空間上において、立方体形状をした空気の無限小体積要素ΔxΔxΔxを考える。気体の圧力は、全方位に力のかかるスカラ量であるため、例えばx軸方向については、ある時間tにおいて左からp(x,x,x,t)、右から−p(x+Δx,x,x,t)の力を受ける。よって、この立方体のx軸方向に働く力の総和Fは、次の(式1)で表せる。
Figure 2011221362
ここで、ニュートンの運動方程式(F=ma)に、上記(式1)と次の(式2)および(式3)とを代入すると、(式4)の関係が得られる。ここで、mは空気の質量、ρは空気の密度、aは加速度、vx1はx軸方向の空気粒子速度である。
Figure 2011221362
軸方向およびx軸方向についても同様に、次の(式5)および(式6)の関係が導かれる。そして、(式4)〜(式6)の3次元方向をまとめて、(式7)のように表すことができる。
Figure 2011221362
ここで、空気粒子速度v(x,t)のフーリエ変換対の関係から、次の(式8)および(式9)が成り立つ。(式8)はフーリエ演算、(式9)は逆フーリエ演算の式である。そして、(式8)を時間微分すると(式10)となり、この(式10)をフーリエ変換することで(式11)の関係が得られる。
Figure 2011221362
したがって、(式7)をフーリエ変換し、それに(式11)を代入することにより、次の(式12)が得られる。一方、(式13)〜(式15)の関係が成り立つ。
Figure 2011221362
この(式13)〜(式15)を(式12)に代入することにより、(式16)〜(式18)ような音圧傾度と空気粒子速度との関係を得ることができる。この(式16)〜(式18)において、左辺が空気粒子速度、右辺が音圧傾度に相当する。
Figure 2011221362
次に、図3のような音響系を想定する。図3に示す音響系では、K個(この例では2個)の主マイク1と、それぞれの近傍におけるX個(この例ではx軸,x軸,x軸の3軸方向に3個)の補助マイク2−1,2−2,2−3とが3軸方向ペアで設置されている。また、M個(この例では4個)のスピーカ4が音源として設置されている。
M個のスピーカ4から出力される音声信号がK個の主マイク1およびK組の補助マイク2−1,2−2,2−3に入力されるまでの音圧の音響系伝達関数をC1−1,C1x1−1,C1x2−1,C1x3−1,・・・,CK−M,CKx1−M,CKx2−M,CKx3−Mとする。各スピーカ4の前段には、フィルタ係数がw,・・・,wのフィルタ処理部3が設置されており、そこに音声信号uが入力されている。このため、各主マイク1および各補助マイク2−1,2−2,2−3での音圧p,px1,px2,px3は、次の(式19)〜(式22)のように表される。
Figure 2011221362
ここで、上記(式19)の各要素は、次の(式23)〜(式25)のように表される。よって、(式16)〜(式18)に示す音圧傾度と空気粒子速度との関係から、(式26)〜(式28)の関係が得られる。なお、Bx1,Bx2,Bx3は、x軸,x軸,x軸の3軸方向に関する空気粒子速度の音響系伝達関数を示す。
Figure 2011221362
一方、音声信号がK個の主マイク1およびK組の補助マイク2−1,2−2,2−3に入力されるまでの空気粒子速度の目標伝達関数をh,h1vx1,h1vx2,h1vx3,・・・,h,hKvx1,hKvx2,hKvx3とする。この目標伝達関数hとして、所望の音場を生成するための特性をフィルタ係数算出部5に設定する。この場合、所望の音場における音声信号の入出力関係は(式29)のように表される。
Figure 2011221362
さらに、(式29)において,音圧についての音響系伝達関数C、空気粒子速度についての音響系伝達関数Bx1,Bx2,Bx3に対し、重み付け係数α, αvx1,αvx2,αvx3をかけて(式30)のようにすることにより、特に重視したい要素について制御を集中することが可能である。
Figure 2011221362
したがって、フィルタ処理部3に設定すべきフィルタ係数wの最適解は、2乗平均誤差を最小にする意味で(式31)のようになる。ここで、右辺の行列の肩に付けた+の記号は、擬似逆行列であることを表す。
Figure 2011221362
フィルタ係数算出部5は、この(式31)に従ってフィルタ処理部3のフィルタ係数wを算出する。すなわち、フィルタ係数算出部5は、主マイク1により検出される音圧pに基づいて、当該音圧pの音響系伝達関数Cを求める。また、フィルタ係数算出部5は、主マイク1および補助マイク2−1,2−2,2−3により検出されるそれぞれの音圧p,px1,px2,px3から求まる音圧傾度を空気粒子速度に換算して、当該空気粒子速度の音響系伝達関数Bx1,Bx2,Bx3を求める。そして、音圧の音響系伝達関数C、空気粒子速度の音響系伝達関数Bx1,Bx2,Bx3および空気粒子速度の目標伝達関数hに基づいて、上記(式31)に従ってフィルタ処理部3のフィルタ係数wを算出する。
なお、ここでは(式29)に重み付け係数α, αvx1,αvx2,αvx3をかけて(式30)のようにして、フィルタ係数算出部5が(式31)に従ってフィルタ係数wを算出するようにしているが、重み付け係数は必須ではない。すなわち、フィルタ係数算出部5は、(式29)を変形した(式32)に従ってフィルタ係数wを算出するようにしてもよい。
Figure 2011221362
上記(式31)または(式32)に示す擬似逆行列を計算する手法は、パソコンなどを用いて事前計算できる場合には有用である。しかし、オーディオ製品に内蔵するDSP(Digital Signal Processor)チップなどで計算するには、処理が重い。そこで、以下のように導出するLMS(Least Mean Square )アルゴリズムに基づく適応フィルタを用いた逐次計算を行うようにしてもよい。
図4は、本実施形態による音場制御装置の他の構成例を示す図である。なお、この図4において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
図4に示す音場制御装置は、フィルタ処理部3のフィルタ係数wを算出するための構成として、図1のフィルタ係数算出部5の代わりにフィルタ係数算出部5’を備えている。また、図4に示す音場制御装置は、入力される音声信号uに対して空気粒子速度の目標伝達関数hに基づくフィルタ係数に従ってフィルタ処理を行う第2のフィルタ処理部6と、第2のフィルタ処理部6により算出される目標応答dとスピーカ4から出力されて各マイク主マイク1,2−1,2−2,2−3に入力される音声信号の実応答rとの誤差Eを算出する誤差演算部7とを更に備えている。フィルタ処理部3、フィルタ係数算出部5’、第2のフィルタ処理部6および誤差演算部7は、DSPチップに内蔵することが可能である。
フィルタ係数算出部5’には、LMSアルゴリズムによる適応フィルタが用いられている。このフィルタ係数算出部5’は、入力される音声信号uと、誤差演算部7により算出される誤差Eとに基づいて、当該誤差Eのパワーが最小となるように動作してフィルタ処理部3のフィルタ係数wを算出する。以下に、このフィルタ係数算出部5’による演算内容を説明する。
上述した(式30)および(式31)の関係から、実応答rと目標応答dとの誤差Eを次の(式33)のように表すと、誤差EのパワーEE(肩のHは行列のエルミート転置であることを示す)は(式34)のようになる。
Figure 2011221362
この(式34)から分かるように、誤差Eのパワーはフィルタ処理部3のフィルタ係数wに起因しており、誤差Eのパワーが最小になるのは、当該フィルタ係数wに対する誤差Eのパワーの瞬時勾配がゼロになるときである。その瞬時勾配は(式35)となるため、LMSに基づく適応フィルタの逐次計算アルゴリズムは(式36)で表される。ここで、μはステップサイズパラメータ、nは適応フィルタの逐次計算更新回数を示す。また、uは入力音声信号uの共役複素数である。
Figure 2011221362
なお、ここでも重み付け係数α, αvx1,αvx2,αvx3を用いる例について説明したが、これは必須ではない。すなわち、フィルタ係数算出部5’は、次の(式37)に従ってフィルタ係数を算出するようにしてもよい。
Figure 2011221362
次に、本実施形態による音場制御装置を実施した場合の効果を説明する。図5は、2000ccクラスのセダン車室内に近い寸法(2000[mm]×1300[mm]×1100[mm])の直方体音場を示すものであり、自動車のフロントドア下部とリアドア上部にあたる位置に4個のスピーカ4を設置している。主マイク1は天井4箇所に設置しており、補助マイク2−1,2−2を各主マイク1のx軸方向およびx軸方向に設置している。主マイク1と補助マイク2−1,2−2との距離Δx,Δxは何れも162.5[mm]である。
空気粒子速度の目標伝達関数h,h1vx1,h1vx2,・・・,h,h4vx1,h4vx2には、自由音場でx軸方向の左から右(車の前から後ろ)に平面波が伝播する特性を設定した。平面波伝播が実現できているかどうかを評価するために、音圧分布および空気粒子速度の評価点を、着座した成人の耳の高さを想定した2次元平面上に設定した。評価点の間隔は、x軸方向に125[mm]間隔で17箇所、x軸方向に162.5[mm]間隔で9箇所とし、合計153箇所のデータを使用した。
図6は、その評価結果を示す図である。図6(a)から明らかなように、本実施形態によれば、音圧分布はピークディップがなく、ほぼ平坦化している。また、図6(b)に示すように、空気粒子速度は左から右の向きへ一定速度となっている。このように、本実施形態によれば、所望とする自由音場において、x軸方向の左から右への平面波伝播を実現できている。
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、フィルタ係数算出部5(またはフィルタ係数算出部5’)により算出されたフィルタ係数wに従って、フィルタ処理部3により出力音声信号の音圧と空気粒子速度とが独立して直接的に制御される。また、主マイク1により検出される音圧とX個(X≧2)の補助マイク2−1,2−2,2−3により検出される音圧との差分から少なくとも2軸の方向に関する空気粒子速度が制御される。しかも、音圧の差分の測定が、音場形成対象の空間上において空間的な広がりを持つように設定された少なくともK箇所(K≧2)の測定点で行われる。
このため、K個の主マイク1と、(K×X)個の補助マイク2−1,2−2,2−3(両方を合わせて{(K+1)×X}個で少なくとも6個のマイク)があれば、K箇所の測定点で定まる一定の広がりを持つ空間(K=2の場合は直線空間、K≧3の場合は平面空間)上において、出力音声信号の音圧と少なくとも2軸方向の空気粒子速度とを独立して直接的に制御することが可能となる。これにより、空間上の音圧と空気粒子速度とを望む状態に制御して所望の音場を作ることができる。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1 主マイク
−1,2−2,2−3 補助マイク
3 フィルタ処理部
4 スピーカ
5,5’ フィルタ係数算出部

Claims (8)

  1. 空間上の測定点に設置されたK個(K≧2)の主マイクと、
    上記K個の主マイクのそれぞれの近傍において異なる軸方向にX個ずつ(X≧2)設置されたK組の補助マイクと、
    入力される音声信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
    上記フィルタ処理部によりフィルタ処理された音声信号を出力するM個(M≧1)のスピーカと、
    上記主マイクにより検出される音圧と、上記主マイクにより検出される音圧と上記補助マイクにより検出される音圧との差分とに基づいて、上記スピーカから出力される音声信号の上記空間上における音圧および空気粒子速度を制御するための上記フィルタ処理部のフィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部とを備えたことを特徴とする音場制御装置。
  2. 上記フィルタ係数算出部は、上記主マイクにより検出される音圧から当該音圧の音響系伝達関数を求めるとともに、上記主マイクにより検出される音圧と上記補助マイクにより検出される音圧との差分を上記主マイクと上記補助マイクとの距離で除算することによって求まる音圧傾度を空気粒子速度に換算して当該空気粒子速度の音響系伝達関数を求め、上記音圧の音響系伝達関数および上記空気粒子速度の音響系伝達関数から上記フィルタ係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の音場制御装置。
  3. 上記フィルタ係数算出部は、X=3の場合、上記空気粒子速度を(数16)により算出することを特徴とする請求項2に記載の音場制御装置。
    Figure 2011221362
  4. 上記フィルタ係数算出部は、X=3の場合、上記フィルタ係数を(数17)により算出することを特徴とする請求項3に記載の音場制御装置。
    Figure 2011221362
  5. 上記フィルタ係数算出部は、X=3の場合、上記フィルタ係数を(数18)により算出することを特徴とする請求項3に記載の音場制御装置。
    Figure 2011221362
  6. 上記フィルタ係数算出部は、X=3の場合、適応フィルタを用いたLMSアルゴリズムに基づき(数19)により上記フィルタ係数を算出することを特徴とする請求項3に記載の音場制御装置。
    Figure 2011221362
  7. 上記フィルタ係数算出部は、X=3の場合、適応フィルタを用いたLMSアルゴリズムに基づき(数20)により上記フィルタ係数を算出することを特徴とする請求項3に記載の音場制御装置。
    Figure 2011221362
  8. 入力される音声信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、上記フィルタ処理部によりフィルタ処理された音声信号を出力するM個(M≧1)のスピーカとを備えた音響系における音場を制御するための音場制御方法であって、
    フィルタ係数算出部が、空間上の測定点に設置されたK個(K≧2)の主マイクにより検出される音圧と、上記K個の主マイクにより検出される音圧と当該K個の主マイクのそれぞれの近傍において異なる軸方向にX個ずつ(X≧2)設置されたK組の補助マイクにより検出される音圧との差分とに基づいて、上記スピーカから出力される音声信号の上記空間上における音圧および空気粒子速度を制御するためのフィルタ係数を算出する第1のステップと、
    上記第1のステップにより算出されたフィルタ係数を上記フィルタ処理部に設定する第2のステップとを有することを特徴とする音場制御方法。
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