JP5265412B2 - 音場制御装置 - Google Patents
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Description
W(n+1)=W(n)+2μ・u(n)・C・e1(n)
により適応フィルタ102のタップ係数ベクトルWを設定する。適応フィルタ102は、設定されたタップ係数ベクトルWを用いてオーディオ信号u(n)に対してデジタルフィルタ処理を施して信号y(n)を出力する。
ところで、上述した適応等化システムは、制御点においては目標応答特性Hと同様の伝達特性で音楽を聴取することが可能となるが、制御点以外の特性については保証していない。このため、適応等化システムによって音響空間内の多くの位置で理想的な音楽の聴取を行おうとすると、制御点を多く設定し、これに対応して多くのスピーカ、マイクロホンが必要になる。図6は適応等化アルゴリズムにしたがって複数の制御点(多点)の特性を目標応答特性にする多点適応等化システムのブロック図であり、図5と同一部分には同一番号を付し、オーディオソース、スピーカ、マイクロホンなどは省略している。多点制御のため各部は各点に対応する信号を出力するように構成されている。
多点適応等化システムでは、制御音源としてのスピーカやマイクロホンを多く設置する必要があり、しかも適応フィルタ102の数も多くなり、回路規模や演算量の増大を招く問題がある。
そこで、少ないスピーカおよび適応フィルタによって音響空間全体にわたって伝達特性を補正することができるモード制御アルゴリズムに従った音場制御装置が提案されている(特許文献2)。この音場制御装置は、音響空間内の所定位置に複数のスピーカと複数のマイクロホンを設置し、各マイクロホンの出力信号に基づいて音圧分布をモード分解し、各モードのモード振幅が所定の値になるように制御する。すなわち、各モードのモード振幅を制御することにより、聴取位置が移動したときに音圧が大きく変化するようなモードの影響を少なくし、あるいは、打ち消すことができるため、特に制御点(聴取位置)を増やすことなく、少ないスピーカや適応フィルタによって音響空間全体にわたって伝達特性を補正し、平坦な音圧分布を実現する。
音響空間のモードを制御するためには、音圧分布のモード分解を行う必要がある。図9に示すような内部にM個の音源(スピーカ)2を有する両端が閉じた一次元音場1の波動方程式は、以下に示す(1)式で与えられる。なお、一次元音場とは、音圧が所定の軸方向xのみに応じて変化する音場をいう。
m番目の制御用フィルタ102の出力信号ym (n)は、入力信号u(n)と制御用フィルタ102の係数wm との畳み込みとして、以下の(8)式のように表される。
次に、モード領域誤差重み付け部112は、制御するモードを選択するためにモード領域の誤差e′(n)(e′0 (n)〜e′N-1 (n))に対して、重み付け係数B(b0 〜bN′-1)による重み付けを行う。領域変換フィルタ114は、この重み付けされたモード領域の誤差にモード固有関数Ψをかけて時間領域の誤差e(n)を算出する。モード領域の誤差e′(n)に対する重み付けと、重み付けされたモード領域の誤差から時間領域の誤差への変換は、
目標応答設定部116は、再現したい音場空間に対応する特性(目標応答特性H)、例えば制御用フィルタ102を構成するフィルタのタップ数の半分程度の遅延時間を有する特性が設定されている。モード分割フィルタ118は、目標応答設定部116から出力される目標応答信号からN′個のモード振幅を導出して、演算部110に出力する。
フィルタードx部120は、入力信号u(n)から参照信号を作成するためのフィルタである。具体的には、フィルタードx部120は、上述したC、Ψ−1、B、Ψの各特性を有するフィルタ120a〜120dを直列接続して構成されている。LMSアルゴリズム処理部122は、領域変換フィルタ114から出力される時間領域の誤差信号e(n)及びフィルタードx部120から出力される参照信号に基づいて、上述した(18)式にしたがって制御用フィルタ102を構成する適応フィルタのフィルタ係数を調整する。図13は図12の簡略表現図である。
以上のように音圧分布をモード分解して、振幅の大きいモード、すなわち音響空間の伝達特性に悪影響を与えるモードを制御することにより、音響空間全体の伝達特性を補正することが可能となる。なお、以上は一般的にN′個のモードを対象とした例であるが、対象モードを0次と1次のようにN′=2とすれば、Ψは2×2のマトリックスになる。低次になるほどモード振幅が大きくなるから、低次のモードのみを制御することによってほぼ目的とする音響特性を実現することができ、しかも処理量を減らすことができる。
例えば、車室内の音圧特性は、複数の音響空間モードのうち1次空間モードが支配的であるため、マイクロホン数を2としてこれら0次空間モードと1次空間モードを制御するようにしている。図14は、マイクロホン数を2とした場合においてモード制御を実現する車室内音響空間の説明図であり、車両CARの車室内に2つのスピーカSPKi(i=1,2)、2つのマイクロホンMICi(i=1,2)が設けられている。前後方向の長さ2.048m(メートル)を16等分して分割点に番号1、2、3、・・・17を割り振ったとき、マイクロホンMIC1は分割点4の所定高さの聴取点位置に配置され、マイクロホンMIC2は分割点14の所定高さの聴取点位置に配置されている。SPK1は車両前方に設けられ、SPK2は車両後方に設けられている。FGLはフロントガラス、RGLはリアガラス、STFは前座席、STRは後座席である。
かかる車室内音響空間においてモード制御システムの場合、周波数75Hzのオーディオ信号が入力すると、モード制御後の音圧分布特性は図15の実線で示すようになり、周波数153Hzのオーディオ信号が入力すると、図16の実線で示すようになる。なお、一点差線はモード制御の場合と同一のスピーカ、マイクロホン配置において多点適応制御したときの特性であり、点線は何らの音場制御をしないときの特性である。
これらの図を参照すると、75Hzのような1次のみの音響空間モードの強い周波数では、モード制御により該1次の音響空間モードを抑制することができる。このため、音圧分布が、何らの制御しない場合や多点適応制御(multi point control)の場合と比べて、より平坦になり改善効果が見られる。多点適応制御の特性は、何らの制御しない場合の特性が右方向にシフトしただけで改善は見られない。
一方,153Hzのような1次と2次の音響空間モードの両方が同程度あるような周波数になると、2次の音響空間モードを抑制できなくなり、結果的に音圧分布はフラットにならず、多点適応制御の場合に比べて悪くなる。すなわち、マイクロホンが2本しかないシステムでは2つのモード(0次と1次)しか制御できず、2次の音響空間モードを抑制することは不可能であり、このため、2次の音響空間モードが残り、結果的に音圧分布はフラットにならない。なお、多点適応制御の場合には、モード制御の場合に比べて良好な特性が得られている。
以上より、従来のモード制御アルゴリズムによる音場制御システムは、制御用のマイクロホンが少ないと、周波数により音圧分布特性が良い場合と悪い場合があり、トータル的にフラットな良好な音場を形成することができない問題があった。
以上から本発明の目的は、制御用のマイクロホンが少ない場合であっても、モード制御アルゴリズムのみによる場合に比べて良好な音場を形成できるようにすることである。
図1は本発明の音場制御装置の概略説明図である。
FFT部11は時間領域のオーディオ信号u(t)を周波数領域のオーディオ信号u(f)に変換してモード制御アルゴリズム実行部12と適応等化アルゴリズム実行部13に入力する。
選択部15は保存部14に保存されている保存情報に基づいて周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムの一方の処理結果を選択してIFFT部16に入力し、IFFT部16は入力された周波数領域のオーディオ信号を時間領域のオーディオ信号に変換してスピーカ17に入力する。
以上のように、本発明によれば、モード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムを併用して周波数毎に良好なアルゴリズムの処理結果を選択して周波数領域のオーディオ信号を時間領域のオーディオ信号に変換してスピーカに入力するようにしたからモード制御アルゴリズムのみによる場合に比べて良好な音場を形成することができる。
図2は本発明の音場制御装置の実施例ブロック構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付している。なお、車室内音響空間は図14に示すように車両CARの車室内に2つのスピーカSPKi(i=1,2)、2つのマイクロホンMICi(i=1,2)が設けられているものとする。
音場制御装置は、図1で説明したFFT部11、モード制御アルゴリズム実行部12、適応等化アルゴリズム実行部13、保存部14、選択部15、IFFT部16を備え、その他にFFT部11の出力信号の複素共役を演算して出力する複素共役演算部21、マイクロホン(図示せず)の出力信号を周波数領域に変換するFFT部22を備えている。
選択部15は、2つのスイッチ部15a、15bを備え、保存部14の保存情報を用いて周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムの一方の処理結果を選択してLMSアルゴリズム処理部122に入力する。LMSアルゴリズム処理部122は同様に保存情報に基づいて周波数毎に(19)式あるいは(20)式の演算を行なって制御フィルタ102の係数を決定し、制御フィルタ102は周波数領域のオーディオ信号u(f)に該決定されたフィルタ係数を乗算し、乗算結果をIFFT部16に入力する。IFFT部16は入力された周波数領域のオーディオ信号を時間領域のオーディオ信号に変換してスピーカSPKi(i=1,2)(図14)に入力する。
モード制御アルゴリズム実行部12および適応等化アルゴリズム実行部13は、図6および図13に示す構成要素のうち共通化可能な部分を共通化して構成されており、適応フィルタ(制御フィルタ)102、目標応答設定部116、信号処理フィルタ120a、LMSアルゴリズム処理部122が共通化されている。なお、図2において、図6および図13と同一部分には同一符号を付している。スイッチ部15a、15bが所定周波数について端子B側の信号を選択することにより、図2の音場制御装置は該周波数についてモード制御アルゴリズム実行部12として動作し、端子A側の信号を選択することにより、該周波数について適応等化アルゴリズム実行部13として動作する。
図2の音場制御装置において、スイッチ15a、15bは保存部14の保存情報に基づいて周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムの一方の処理結果を選択して出力するように切り替えられている。
FFT部11は時間領域のオーディオ信号u(t)を周波数領域のオーディオ信号u(f)に変換して出力する。FFT部11以降の図2の音場制御装置は、スイッチ15a、15bによりモード制御アルゴリズムの処理結果(入力端子B側信号)が選択された周波数については、モード制御アルゴリズム実行部12として動作し、適応等化アルゴリズムの処理結果(入力端子A側信号)が選択された周波数については、適応等化アルゴリズム実行部12として動作する。
このため、制御フィルタ102は、スイッチ15a、15bによりモード制御アルゴリズムの処理結果が選択された周波数については、モード制御アルゴリズムの処理結果であるオーディオ信号を出力し、スイッチ15a、15bにより適応等化アルゴリズムの処理結果が選択された周波数については、適応等化アルゴリズムの処理結果であるオーディオ信号を出力する。
IFFT部16は、入力された周波数領域のオーディオ信号を時間領域のオーディオ信号に変換してスピーカSPKi(i=1,2)に入力して車室内に音を出力する。車室内の適所に配置されたマイクロホンMICi(i=1,2) (図14)による検出信号はFFT 22に入力され、ここで周波数領域の検出信号に変換される。
以後、モード制御アルゴリズムあるいは適応等化アルゴリズムにしたがった処理が行われ、スイッチ15a、15bに各処理結果が入力され、該スイッチ15a、15bにより所定の処理結果が選択されて上記制御が繰り返される。
以上より、周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムのうち良好な音場を形成できるアルゴリズムの処理結果を選択するようにしたから、一方のアルゴリズム単独で音場を形成する場合に比べて良好な音場を形成することが可能となった。
車室内の実際の音圧分布と、モード空間周波数を用いて模擬した車室内の音響空間における音圧分布との差(誤差パワー)e2はモード空間周波数により調整することができる。この場合、実際の音圧分布において一次モードが他のモードのレベルより大きければ、図3(A)に示すように、一次モードのモード空間周波数Fn1においてのみ誤差パワーが小さくなる。しかし、実際の音圧分布において一次モードに加えて他のモード(例えば2次モード)のレベルが大きいと、図3(B)に示すように該一次モードのモード空間周波数Fn1および2次モードのモード空間周波数Fn2において誤差パワーが小さくなる。
モード制御アルゴリズムではマイクロホンが2つの場合、0次モードと1次モードを制御できるが、2次モードを抑制制御することができない。したがって、図3(A)に示すように、最小ピーク点が1つの場合には、モード制御アルゴリズムにより良好な音場を形成できるが、最小ピーク点が2つ以上の場合には、良好な音場を形成できず、適応等化アルゴリズムの方が良好な音場を形成することができる。そこで、最小ピーク点が1つの場合には、モード制御アルゴリズムを選択し、最小ピーク点が2つ以上の場合には、適応等化アルゴリズムを選択する。
すなわち、音圧分布算出部33は振幅制御すべきモードのモード中心周波数fcにおける前記伝達関数の実数部分及び虚数部分を計算し、該実数部分が正であれば、前記実数部分と虚数部分の二乗の和の平方根を正の音圧として出力し、負であれば前記平方根を負の音圧として出力する
ついで、誤差パワー調整部35は (22a)式で模擬する音圧分布が前記測定した音圧分布p(xk,fc)と同等となるようにモード空間周波数を調整する。すなわち、次式
以上本発明によれば、制御用のマイクロホンが少ない場合であっても、モード制御アルゴリズムのみによる場合に比べて良好な音場を形成することができる。
12 モード制御アルゴリズム実行部
13 適応等化アルゴリズム実行部
14 保存部
15 選択部
16 IFFT部
17 スピーカ
Claims (1)
- 入力信号を音響空間に放射する複数のスピーカ、前記複数のスピーカから放射された音声を集音する複数のマイクロホンを備え、各マイクロホンの出力信号に基づいて音場の音圧分布を制御する音場制御装置において、
周波数領域においてモード制御アルゴリズムにしたがって、音場の音圧分布をモード分解し、各モードのモード振幅が所定の値になるように制御するモード制御アルゴリズム実行部、
周波数領域において適応等化アルゴリズムにしたがって、各マイクロホン位置において目標応答特性を有する空間と同等の音場を形成するよう制御する適応等化アルゴリズム実行部、
離散的な周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムのどちらのアルゴリズムにより制御したほうが良好な音場を形成できるかの情報を保存する保存部、
該情報に基づいて周波数毎にモード制御アルゴリズムと適応等化アルゴリズムの処理結果を選択する選択部、
周波数領域の処理結果を時間領域に変換してスピーカに入力する変換部、
を備えたことを特徴とする音場制御装置。
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