JP3539855B2 - 音場制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音場の伝達特性を位置によらず均一になるように制御する音場制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に音響空間では、壁などによって反射波や定在波などが発生し、音波が相互干渉することによって、音響伝達特性が複雑に乱れる。特に、ガラスのような音が反射しやすいもので囲まれている車室内のような狭い空間では、反射波や定在波の影響が大きいため、音響伝達特性の乱れが音の聴取に与える影響は大きい。このような音響伝達特性の乱れを補正する技術としては、適応等化システムが知られている。適応等化システムによれば、任意の制御点で所定の音場空間を実現することができる。
【0003】
図14は、オーディオ装置に適用される適応等化システムの構成を示す図である。同図に示す適応等化システムは、オーディオソース500、目標応答設定部501、マイクロホン502、演算部504、適応信号処理装置506、スピーカ508を備えている。オーディオソース500は、ラジオチューナやCDプレイヤ等から構成されており、オーディオ信号x(n)を出力する。目標応答設定部501は、目標応答特性(インパルスレスポンス)Hが設定されており、オーディオソース500から出力されるオーディオ信号x(n)が入力されて、これに対応する目標応答信号d(n)を出力する。マイクロホン502は、車室内音響空間の聴取位置(制御点)に設置されており、この観測点における音を検出して音楽信号d’(n)を出力する。演算部504は、マイクロホン502から出力される音楽信号d’(n)と目標応答設定部501から出力される目標応答信号d(n)との誤差を演算して誤差信号e(n)を出力する。適応信号処理装置506は、誤差信号e(n)のパワーが最小となるように信号y(n)を発生する。スピーカ508は、この適応信号処理装置506から出力される信号y(n)に応じた音を車室内音響空間に放射する。
【0004】
目標応答設定部501の目標応答特性Hは、再現したい音場空間に対応する特性が設定されている。例えば、適応フィルタのタップ数の半分程度の遅延時間をtとしたときに、この遅延時間tを有し、全オーディオ周波数帯域でフラットな特性(ゲイン1の特性)が設定されている。なお、この遅延時間tは音響系の逆特性を適応フィルタが精度良く近似するためのものであり、このような目標応答特性を有する目標応答設定部501は、FIR(Finite Impulse Response )型のデジタルフィルタの遅延時間tに対応するタップ係数を1に設定し、それ以外のタップ係数を0に設定することにより実現することができる。
【0005】
適応信号処理装置506は、オーディオ信号x(n)が参照信号として入力されるとともに、上述した演算部504から出力される誤差信号e(n)が入力されており、誤差信号e(n)のパワーが最小となるように適応信号処理を行って信号y(n)を出力する。適応信号処理装置506は、LMS(Least Mean Square )アルゴリズム処理部510と、FIR型のデジタルフィルタ構成の適応フィルタ512と、オーディオ信号x(n)にスピーカ508から聴取位置までの音響伝搬系の伝搬特性(伝達特性)Cを畳み込んで適応信号処理に用いる参照信号(フィルタードリファレンス信号)u(n)を生成する信号処理フィルタ514とを有している。
【0006】
LMSアルゴリズム処理部510は、聴取位置における誤差信号e(n)と信号処理フィルタ514から出力される参照信号u(n)とが入力されており、これらの信号を用いて聴取位置における音楽信号d’(n)が目標応答信号d(n)と等しくなるように、LMSアルゴリズムを用いて適応フィルタ512のタップ係数ベクトルWを設定する。適応フィルタ512は、このようにして設定されたタップ係数ベクトルWを用いてオーディオ信号x(n)に対してデジタルフィルタ処理を施して信号y(n)を出力する。
【0007】
このような適応処理によって誤差信号e(n)のパワーが最小となるように適応フィルタ512のタップ係数ベクトルWが収束すれば、目標応答設定部501に設定した目標応答特性Hを有する空間で音楽を聴取した場合と同様の音楽の聴取が可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した適応等化システムは、制御点においては目標応答特性Hと同様の伝達特性で音楽を聴取することが可能となるが、制御点以外の特性については全く保証していない。このため、適応等化システムによって音響空間内の多くの位置で理想的な音楽の聴取を行おうとすると、制御点を多く設定し、これに対応して多くのスピーカが必要になる。また、制御音源としてのスピーカを多く設置するということは、そのために必要な適応フィルタ512の数も多くなるということであり、回路規模や演算量の増大を招くことになる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、少ないスピーカおよび適応フィルタによって音響空間全体にわたって伝達特性を補正することができる音場制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の音場制御装置は、音響空間内の所定位置に複数のスピーカと複数のマイクロホンとが設置されており、各マイクロホンの出力信号に基づいて音圧分布をモード分解し、各モードのモード振幅が所定の値になるように制御する。各モードのモード振幅を制御することにより、聴取位置が移動したときに音圧が大きく変化するようなモードの影響を少なくしたり、打ち消すことができるため、特に制御点(聴取位置)を増やすことなく、少ないスピーカや適応フィルタによって音響空間全体にわたって伝達特性を補正し、平坦な音圧分布を実現することができる。
【0011】
上述した各モードのモード振幅を制御するには、時間領域の信号に対して適応処理を行う場合と、モード領域の信号に対して適応処理を行う場合が考えられる。いずれの場合であっても、マイクロホンの設置位置での各モードのモード振幅の制御が可能であり、音響空間全体にわたって伝達特性を補正することができる。
【0012】
特に、モード領域の信号に対して処理を行う場合に、スピーカに入力される前に時間領域の信号に戻す処理を含んだ適応処理を行うことにより、音響系の逆フィルタを計算により求め、これを用いて実際にスピーカに入力する信号を導出する処理が不要になり、処理の簡略化が可能となる。
【0013】
また、複数のスピーカは、制御対象となるモードの振動の節に対応する位置以外の位置に配置することが好ましい。振動の節の位置にスピーカを配置しても、対応するモードのモード振幅を制御することはできないが、これを外した位置に配置することにより、そのモードのモード振幅を少なくしたり、打ち消す等の各種の制御が可能になる。
【0014】
また、複数のスピーカのそれぞれは、入力信号の符号をそろえて出力するとともに、打ち消そうとするモードの振動の符号が反対となる全ての位置に配置することが好ましい。これにより、0次モードを残して他の所望のモードのみを打ち消すことができる。
【0015】
また、上述したモード毎の制御は、全てのモードについて行うのではなく、一部のモード、好ましくは0次を除く低次のモードについてのみ行うようにしてもよい。一般に、1次、2次等の低次のモードのモード振幅が大きいため、この低次のモードについてのみ制御することにより、少ない演算量で効率よく音響空間全体にわたって伝達特性を補正することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した一実施形態の音場制御装置は、音圧分布のモード分解を行って分解された各モードの音圧レベルを制御することにより、音響空間全体にわたって伝達特性を補正することに特徴がある。以下、一実施形態の音場制御装置について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(1)モード分解
音響空間のモードを制御するためには、音圧分布のモード分解を行う必要がある。モード分解の手順を以下に示す。内部にM個の音源を有する両端が閉じた一次元音場の波動方程式は、以下に示す(1)式で与えられる。なお、一次元音場とは、音圧が所定の軸方向xのみに応じて変化する音場をいう。
【0018】
【数1】
Figure 0003539855
【0019】
ここで、xはマイクロホンの位置を、ωは角周波数を、p(x,ω)は音圧を、qm はm番目のスピーカへの入力信号を、lm はm番目のスピーカの位置を、Mは全スピーカ数を、ξn'は第n’モードの壁面での減衰比を、N’は全モード数を、Lは音場の長さを、ωn'(=n’πc0 /L)は音場の固有各周波数を、ρ0 は空気密度を、c0 は音速を、δ(n’)はn’=0のとき1でn’≠0のとき0となるクロネッカのデルタ関数をそれぞれ示している。
【0020】
また、(1)式において、
【0021】
【数2】
Figure 0003539855
【0022】
【数3】
Figure 0003539855
【0023】
であり、一方のan'(ω)は第n’モードの振幅であり、ψn'(x)は第n’モードの固有関数を示している。
【0024】
上述した(1)式において、p(x,ω)は一次元音場内におけるマイクロホンの距離xにおける音圧であるから、一次元音場内のK個の点(x1 ,x2 ,…,xK )にマイクロホンを設置した場合の各マイクロホンでの音圧p(x,ω)は、以下のマトリクス表記で表される。
【0025】
【数4】
Figure 0003539855
【0026】
ここで、
【0027】
【数5】
Figure 0003539855
【0028】
である。(4)式をモード固有関数Ψを用いて書き直すと、
【0029】
【数6】
Figure 0003539855
【0030】
となる。
【0031】
(6)式の両辺に固有マトリクス(モード固有関数)の逆行列(逆モード固有関数)Ψ-1を左からかけることにより、以下の(7)式が得られる。
【0032】
【数7】
Figure 0003539855
【0033】
(7)式より、各マイクロホンでの音圧p(xK ,ω)から各モードの振幅an'(ω)を求めることができる。以上の手順によって音圧分布のモード分解が行われる。
【0034】
図1は、モード分解手法を適用して構成したモード分解部の具体例を示す図である。同図に示すモード分解部10は、M個のスピーカ2、K個のマイクロホン4、マイクロホン4の音圧からN個のモード振幅を導出するモード分解フィルタ6を備えている。M個のスピーカ2に信号q1 〜qM が入力されて、音響系Cの一次元音場に音が放射された場合の各マイクロホン4における音圧p1 〜pK は、それぞれ(4)式で与えられる。モード分解フィルタ6は、これらの音圧p1 〜pK が入力され、(7)式によってモード0からモードN−1のモード振幅a0 〜aN-1 を算出して出力する。
【0035】
図2は、音響系に含まれる各モードの周波数特性を示す図である。同図に示すように、0次、1次、2次、…といった各次数のモードが存在しており、オーディオ音声の聴取位置を移動させたときに、音圧レベルが大きく変動するようなモードを小さくしたり、打ち消したりする制御を行うことにより、音響空間全体にわたって変動の少ない伝達特性を得ることができる。
【0036】
図3は、モードの振幅状態を示す図であり、同図(a)には0次モードの振幅状態が、同図(b)には1次モードの振幅状態が示されている。図3(a)に示すように、0次モードでは、音響空間の全体において同位相で振動するため、聴取位置に関係なく同じ音圧レベルでオーディオ音声の聴取が可能となる。ところが、図3(b)に示すように、1次モードでは、その聴取位置によって音圧レベルが大きく変動する。したがって、音響空間に放射される音声内の1次モード成分が大きい場合には、これを小さくしたり、打ち消したりすることにより、聴取位置を移動させた場合であっても音響特性がほぼ均一な音場を実現することができる。また、2次以上の各モードについても同様であり、2次以上の次数成分が大きい場合には、その成分を小さくしたり、打ち消すような制御を行うようにする。
【0037】
(2)モード制御
次に、モード分解によって得られたモード振幅をLMSアルゴリズムを用いて制御する音場制御装置について説明する。このLMSアルゴリズムには、時間領域で適応フィルタが動作するものと、モード領域で適応フィルタが動作するものがあり、モード振幅を制御するという目的は同じであるがそれぞれ別のシステム構成となる。以下に、3通りのアルゴリズムを有する第1〜第3の実施形態の音場制御装置について説明する。
【0038】
(2−1)時間領域で適応フィルタが動作するアルゴリズムを有する第1の実施形態の音場制御装置
第1の実施形態の音場制御装置は、時間領域で動作するLMSアルゴリズムによって制御される適応フィルタを有しており、モード領域で計算した誤差を時間領域に再変換して適応フィルタの係数更新が行われる。
【0039】
図4は、第1の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の音場制御装置は、タップ数がIのM個の適応フィルタを含む制御用フィルタ102と、M個のスピーカ104と、K個のマイクロホン106と、マイクロホン106の各音圧pからN’個のモード振幅を導出するモード分解手段としてのモード分割フィルタ108と、目標とするモード振幅に対する各モード振幅の誤差を算出するN’個の演算部110と、各モードの誤差に重み付けを行うN’個のモード領域誤差重み付け部112と、モード領域の誤差を時間領域の誤差に変換する領域変換フィルタ114とを備えている。
【0040】
m番目の制御用フィルタ102の出力信号ym (n)は、入力信号u(n)と制御用フィルタ102の係数wm との畳み込みとして、以下の(8)式のように表される。
【0041】
【数8】
Figure 0003539855
【0042】
この出力信号ym (n)がm番目のスピーカ104に入力されて、音響系Cの一次元音場に音が放射され、各マイクロホン106に取り込まれる。k番目のマイクロホン106における音圧pk (n)は、次式で与えられる。
【0043】
【数9】
Figure 0003539855
【0044】
ここで、ckm(j)はm番目のスピーカ104からk番目のマイクロホン106までの音響系Cのjタップ目の係数を、wm (i)はm番目の制御用フィルタ102のiタップ目の係数をそれぞれ示している。(9)式を行列表現で書き直すと、
【0045】
【数10】
Figure 0003539855
【0046】
となる。(9)式および(10)式においては、
【0047】
【数11】
Figure 0003539855
【数12】
Figure 0003539855
【0048】
【数13】
Figure 0003539855
【0049】
【数14】
Figure 0003539855
【0050】
【数15】
Figure 0003539855
【0051】
【数16】
Figure 0003539855
【0052】
【数17】
Figure 0003539855
【0053】
である。
【0054】
モード振幅a(n)は、(10)式で得られたマイクロホン106における音圧p(n)に対して、(7)式と同様の手法でモード分解を行うことにより求めることができる。すなわち、モード分割フィルタ108は、
【0055】
【数18】
Figure 0003539855
【0056】
で与えられる演算によってモード振幅a(n)を導出する。(18)式においては、
【0057】
【数19】
Figure 0003539855
【0058】
である。
【0059】
一方、目標応答設定部(後述する)から出力されるk番目の目標インパルス応答の出力dk (n)は、以下の(20)式で与えられる。
【0060】
【数20】
Figure 0003539855
【0061】
ここで、hk (s)はk番目の目標インパルス応答のsタップ目の係数を示している。(20)式を行列表現で書き直すと、
【0062】
【数21】
Figure 0003539855
【0063】
となる。(20)式および(21)式においては、
【0064】
【数22】
Figure 0003539855
【0065】
【数23】
Figure 0003539855
【0066】
【数24】
Figure 0003539855
【0067】
【数25】
Figure 0003539855
【0068】
である。目標応答のモード振幅d’(n)は、(21)式で得られた目標応答信号dk (n)に対して(7)式と同様の手法でモード分解を行うことにより求めることができる。したがって、目標応答のモード振幅d’(n)は、
【0069】
【数26】
Figure 0003539855
【0070】
で与えられる。(26)式においては、
【0071】
【数27】
Figure 0003539855
【0072】
である。
【0073】
モード領域における誤差e’(n)は、(26)式で与えられる目標応答のモード振幅d’(n)から(18)式で与えられるモード振幅a(n)を引くことによって求めることができる。したがって、演算部110は、
【0074】
【数28】
Figure 0003539855
【0075】
で与えられる演算によって、モード領域における誤差e’(n)を導出する。(28)式においては、
【0076】
【数29】
Figure 0003539855
【0077】
である。
【0078】
次に、モード領域誤差重み付け部112は、制御するモードを選択するためにモード領域の誤差e’(n)(e’0 (n)〜e’N-1 (n))に対して、重み付け係数B(b0 〜bN'-1)による重み付けを行う。領域変換フィルタ114は、この重み付けされたモード領域の誤差にモード固有関数Ψをかけて時間領域の誤差e(n)を算出する。モード領域の誤差e’(n)に対する重み付けと、重み付けされたモード領域の誤差から時間領域の誤差への変換は、
【0079】
【数30】
Figure 0003539855
【0080】
で与えられる。(30)式において、
【0081】
【数31】
Figure 0003539855
【0082】
【数32】
Figure 0003539855
【0083】
である。
【0084】
ここで、時間領域における誤差ベクトルe(n)の瞬時パワーe(n)T e(n)をフィルタ係数wで偏微分することによって誤差特性曲面の勾配ベクトルの瞬時推定値を求めると、
【0085】
【数33】
Figure 0003539855
【0086】
となる。したがって、制御用フィルタ102の係数の更新は、次式によって行われる。
【0087】
【数34】
Figure 0003539855
【0088】
ここで、μはLMSアルゴリズムのステップサイズパラメータ(毎回の繰り返しにおける補正の大きさを制御する係数)である。
【0089】
次に、第1の実施形態の音場制御装置の詳細構成について説明する。図5は、第1の実施形態の音場制御装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、音場制御装置100は、タップ数IのM個の適応フィルタを含む制御用フィルタ102、M個のスピーカ104、K個のマイクロホン106、モード分割フィルタ108、N’個の演算部110、N’個のモード領域誤差重み付け部112、領域変換フィルタ114、目標応答設定部116、モード分割フィルタ118、フィルタードx部120、LMSアルゴリズム処理部122を備えている。
【0090】
制御用フィルタ102、スピーカ104、マイクロホン106、モード分割フィルタ108、演算部110、モード領域誤差重み付け部112、領域変換フィルタ114は、それぞれ図4で説明した動作を行う。
【0091】
目標応答設定部116は、再現したい音場空間に対応する特性(目標応答特性H)、例えば制御用フィルタ102を構成するフィルタのタップ数の半分程度の遅延時間を有する特性が設定されている。モード分割フィルタ118は、目標応答設定部116から出力される目標応答信号からN’個のモード振幅を導出して、演算部110に出力する。
【0092】
フィルタードx部120は、入力信号u(n)から参照信号を作成するためのフィルタである。具体的には、フィルタードx部120は、上述したC^、Ψ-1、B、Ψの各特性を有するフィルタを直列接続して構成されている。LMSアルゴリズム処理部122は、領域変換フィルタ114から出力される時間領域の誤差信号e(n)およびフィルタードx部120から出力される参照信号に基づいて、上述した(34)式にしたがって制御用フィルタ102を構成する適応フィルタのフィルタ係数を調整する。
【0093】
このように、音圧分布をモード分解して、振幅の大きいモード、すなわち音響空間の伝達特性に悪影響を与えるモードを制御することにより、音響空間全体の伝達特性を補正することが可能となる。
【0094】
次に、第1の実施形態の音場制御装置の変形例について説明する。図2に示すように、通常は0次を除くと、低次になるほどモード振幅が大きくなる。したがって、低次のモードのみを制御することによって、ほぼ目的とする音響特性を実現することができ、しかも処理量を減らすことができる。但し、図2から分かるように、制御対象から排除した高次モードの信号には、高周波成分が多く含まれているため、この高次モードの信号自体を排除すると、高周波成分が少なくなって好ましくない。このため、M個のスピーカ104の少なくとも1つは非制御音源としても機能するように、入力信号u(n)そのものを入力することが好ましい。
【0095】
図6は、第1の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図であり、低次モードに対してのみ制御を行う音場制御装置の構成が示されている。同図に示す音場制御装置150は、入力信号u(n)を制御用フィルタ102を通さずに、直接スピーカ104から出力しており、その際の遅延量を調整するために遅延器152が備わっている。この遅延器152には、目標応答設定部116に設定された遅延時間から音響系Cを通した場合の遅延時間を差し引いた遅延時間が遅延量βとして設定される。また、モード領域誤差重み付け部112では、例えば制御するモードの重み付け係数bmのみが1に、それ以外が0に設定されており、制御したいモードの誤差信号のみが領域変換フィルタ114に入力され、一部のモードについてのみ制御用フィルタ102による制御が行われるようになっている。
【0096】
このように、一部のモードについてのみ制御を行い、それ以外のモードについては入力信号をそのままスピーカ104から出力することにより、聴取位置の移動による音圧変動が少ない音場を実現することができ、しかも演算量を減少させることができる。
【0097】
(2−2)モード領域で適応フィルタが動作するアルゴリズムを有する第2の実施形態の音場制御装置
上述した第1の実施形態の音場制御装置は、時間領域で適応フィルタが動作するアルゴリズムを有していたが、モード領域で適応フィルタを動作させるアルゴリズムにしたがって動作するようにしてもよい。モード領域で動作させるには、モード領域で計算した誤差をそのまま適応フィルタの係数更新に用いるようにすればよい。
【0098】
図7は、第2の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の音場制御装置は、音響系Cを模擬する音響系モデリングフィルタ202と、音響系モデリングフィルタ202から出力される信号(音圧)からN’個のモード振幅を導出するモード分割フィルタ204と、タップ数IのN’個の適応フィルタを含む制御用フィルタ206と、制御用フィルタ206から出力されるモード領域の信号を時間領域の信号に変換する領域変換フィルタ208と、音響系モデリングフィルタ202によって模擬された音響系C^を元に戻す音響系逆フィルタ210と、M個のスピーカ212と、K個のマイクロホン214と、マイクロホン214の音圧からN’個のモード振幅を導出するモード分割フィルタ216と、各モードの誤差を算出するN’個の演算部218と、各モードの誤差に重み付けを行うN’個のモード領域誤差重み付け部220とを備えている。
【0099】
モード領域で適応フィルタを動作させようとすると、制御用フィルタ206の係数はモード領域で得られるため、制御用フィルタ206への入力信号はモード領域の信号でなければならない。このため、一旦、入力信号u(n)を実際の音響系Cと同等の特性を有する音響系モデリングフィルタ202に通し、その後にモード分割フィルタ204によって、音響系モデリングフィルタ202から出力される時間領域の信号をモード領域の信号に変換している。
【0100】
また、実際にスピーカ212から音を出力する場合には、スピーカ212に入力される信号は時間領域の信号でなければならない。このため、領域変換フィルタ208によって、制御用フィルタ206から出力されるモード領域の信号を再び時間領域の信号に変換している。また、領域変換フィルタ208から出力される時間領域の信号は、音響系モデリングフィルタ202によって音響系C^を通した後の信号(マイクロホン214の位置に相当する信号)であるため、これを音響系逆フィルタ210に通すことにより、スピーカ212の位置に相当する信号に戻している。
【0101】
ところで、音響系Cをモデリングした音響系モデリングフィルタ202のk番目の出力信号pk (n)は、入力信号u(n)と音響系モデリングフィルタ202の畳み込みとして、
【0102】
【数35】
Figure 0003539855
【0103】
で表される。(35)式を行列表現で書き直すと、
【0104】
【数36】
Figure 0003539855
【0105】
となる。これら(35)式および(36)式においては、
【0106】
【数37】
Figure 0003539855
【数38】
Figure 0003539855
【0107】
【数39】
Figure 0003539855
【0108】
【数40】
Figure 0003539855
【0109】
【数41】
Figure 0003539855
【0110】
である。
【0111】
モデリングフィルタ出力のモード振幅a^(n)は、(36)式で得られた音響系モデリングフィルタ202の出力信号p^(n)に対して、逆モード固有関数Ψ-1をかけることにより求めることができる。したがって、モード分割フィルタ204は、
【0112】
【数42】
Figure 0003539855
【0113】
で与えられる演算によってモード振幅a^(n)を導出する。(42)式においては、
【0114】
【数43】
Figure 0003539855
【0115】
である。このモード振幅a^(n)が制御用フィルタ206の入力信号となる。したがって、制御用フィルタ206の出力信号y(n)は、
【0116】
【数44】
Figure 0003539855
【0117】
となる。(44)式においては、
【0118】
【数45】
Figure 0003539855
【0119】
【数46】
Figure 0003539855
【0120】
である。(44)式は、
【0121】
【数47】
Figure 0003539855
【0122】
のように書き換えることもできる。(47)式においては、
【0123】
【数48】
Figure 0003539855
【0124】
【数49】
Figure 0003539855
【0125】
【数50】
Figure 0003539855
【0126】
である。ψn'-1 -1は、逆モード固有関数Ψ-1のn’行目の要素からなるベクトルである。
【0127】
次に、領域変換フィルタ208は、モード領域の信号である制御用フィルタ206の出力信号y(n)にモード固有関数Ψをかけて時間領域の信号に変換する。さらに、この時間領域の信号は音響系モデリングフィルタ202によって音響系C^に模擬された信号であるため、音響系逆フィルタ210は、音響系C^の逆フィルタFをかけて元に戻している。したがって、音響系逆フィルタ210の出力信号y’(n)は、
【0128】
【数51】
Figure 0003539855
【0129】
となる。ここで、
【0130】
【数52】
Figure 0003539855
【0131】
【数53】
Figure 0003539855
【0132】
である。
【0133】
この出力信号y’(n)がスピーカ212に入力されて音響系Cの一次元音場に音が放射され、マイクロホン214によって取り込まれる。マイクロホン214での音圧p(n)は、
【0134】
【数54】
Figure 0003539855
【0135】
で与えられる。ここで、
【0136】
【数55】
Figure 0003539855
【0137】
【数56】
Figure 0003539855
【0138】
【数57】
Figure 0003539855
【0139】
である。
【0140】
モード振幅a(n)は、(54)式で得られたマイクロホン214での音圧p(n)に対して(7)式と同様の手法でモード分解を行うことにより求めることができる。したがって、モード分割フィルタ216は、
【0141】
【数58】
Figure 0003539855
【0142】
で表される演算によってモード振幅a(n)を導出する。ここで、
【0143】
【数59】
Figure 0003539855
【0144】
である。
【0145】
一方、目標応答のモード振幅d’(n)は、(26)式と同様に、
【0146】
【数60】
Figure 0003539855
【0147】
で与えられる。ここで、
【0148】
【数61】
Figure 0003539855
【数62】
Figure 0003539855
【0149】
【数63】
Figure 0003539855
【0150】
【数64】
Figure 0003539855
【0151】
である。
【0152】
モード領域における誤差e’(n)は、(60)式で与えられる目標応答のモード振幅d’(n)から(58)式で与えられるモード振幅a(n)を引くことによって求めることができる。したがって、演算部218は、
【0153】
【数65】
Figure 0003539855
【0154】
で与えられる演算を行うことによって、モード領域における誤差e’(n)を算出する。ここで、
【0155】
【数66】
Figure 0003539855
【0156】
である。
【0157】
次に、モード領域誤差重み付け部220は、以下の(67)式にしたがって、モード領域の誤差e’(n)に対して重み付け係数Bによる重み付けを行う。
【0158】
【数67】
Figure 0003539855
【0159】
ここで、
【0160】
【数68】
Figure 0003539855
【0161】
【数69】
Figure 0003539855
【0162】
である。
【0163】
モード領域における重み付け誤差ベクトルe(n)の瞬時パワーe(n)T e(n)をフィルタ係数wで偏微分することによって、誤差特性曲面の勾配ベクトルの瞬時推定値を求めると、
【0164】
【数70】
Figure 0003539855
【0165】
となる。したがって、制御用フィルタ206の係数の更新は、次式によって行われる。
【0166】
【数71】
Figure 0003539855
【0167】
ここで、μはLMSアルゴリズムのステップサイズパラメータであり、毎回の繰り返しにおける補正の大きさを制御する係数である。
【0168】
次に、第2の実施形態の音場制御装置の詳細構成について説明する。図8は、第2の実施形態の音場制御装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、音場制御装置200は、音響系モデリングフィルタ202、モード分割フィルタ204、タップ数IのN’個の適応フィルタを含む制御用フィルタ206、領域変換フィルタ208、音響系逆フィルタ210、M個のスピーカ212、K個のマイクロホン214、モード分割フィルタ216、N’個の演算部218、N’個のモード領域誤差重み付け部220、目標応答設定部222、モード分割フィルタ224、フィルタードx部226、LMSアルゴリズム処理部228を備えている。
【0169】
音響系モデリングフィルタ202、モード分割フィルタ204、制御用フィルタ206、領域変換フィルタ208、音響系逆フィルタ210、スピーカ212、マイクロホン214、モード分割フィルタ216、演算部218、モード領域誤差重み付け部220は、それぞれ図7で説明した動作を行う。
【0170】
目標応答設定部222は、再現したい音場空間に対応する特性(目標応答特性H)、例えば、音響系逆フィルタ210を構成するフィルタのタップ数の半分程度の遅延時間を有する特性が設定されている。モード分割フィルタ224は、目標応答設定部222から出力される目標応答信号からN’個のモード振幅を導出して、演算部218に出力する。
【0171】
フィルタードx部226は、モード分割フィルタ204の出力信号であるモード振幅a^(n)から参照信号を作成するためのフィルタである。具体的には、フィルタードx部226は、上述したΨ、C^、F、Ψ-1、Bの各特性を有するフィルタを直列接続して構成されている。LMSアルゴリズム処理部228は、モード領域誤差重み付け部220から出力されるモード領域の誤差信号e(n)およびフィルタードx部226から出力される参照信号に基づいて、上述した(71)式にしたがって制御用フィルタ206を構成する適応フィルタのフィルタ係数を調整する。
【0172】
このように、モード領域で制御用フィルタ206による制御を行うことにより、振幅の大きいモード、すなわち音響空間の伝達特性に悪影響を与えるモードを制御することができ、音響空間全体の伝達特性を補正することが可能となる。
【0173】
次に、第2の実施形態の音場制御装置の変形例について説明する。本実施形態の音場制御装置は、時間領域で制御を行う第1の実施形態と同様に、一部のモード(特に低次モード)のみを制御することにしてもよい。
【0174】
図9は、第2の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図であり、一部のモードに対してのみ制御を行う音場制御装置の構成が示されている。同図に示す音場制御装置250は、音響系モデリングフィルタ202から音響系逆フィルタ210までをバイパスして入力信号u(n)を直接スピーカ212から出力しており、その際の遅延量を調整するために遅延器252が備わっている。この遅延器252には、目標応答設定部222に設定された遅延時間から音響系Cの遅延時間を差し引いた遅延時間が遅延量βとして設定される。また、制御用フィルタ206では、例えば制御対象とならない高次のモードに対応したタップ係数が0に設定され、一部のモードについてのみフィルタ演算およびこの演算結果を用いた制御が行われるようになっている。
【0175】
また、図10は、図9に示した音場制御装置の変形例を示す図である。同図に示す音場制御装置260のように、制御しないモード成分については、制御用フィルタ206を通さずに、係数1のアンプ262を通すことによっても、一部のモードのみを制御するという同様の目的を達成することができる。
【0176】
(2−3)モード領域で適応フィルタが動作するアルゴリズムを有する第3の実施形態の音場制御装置
上述した第2の実施形態の音場制御装置は、音響系逆フィルタ210を備える必要がある。このため、システムを構成する際に音響系逆フィルタ210を算出するという準備手続きが1ステップ多くかかることになる。また、音響系Cの変動によってはC^の逆フィルタFに誤差が生じ、正確な制御ができない場合もある。そこで、第3の実施形態の音場制御装置では、第2の実施形態の音場制御装置で用いた領域変換フィルタ208と音響系逆フィルタ210を制御用フィルタ206に取り込むようにする。
【0177】
図11は、第3の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の音場制御装置は、音響系Cを模擬する音響系モデリングフィルタ302と、音響系モデリングフィルタ302から出力される信号(音圧)からN’個のモード振幅を導出するモード分割フィルタ304と、タップ数がIのN’×M個の適応フィルタを含む制御用フィルタ306と、M個のスピーカ312と、K個のマイクロホン314と、マイクロホン314の音圧からN’個のモード振幅を導出するモード分割フィルタ316と、各モードの誤差を算出するN’個の演算部318と、各モードの誤差に重み付けを行うN’個のモード領域誤差重み付け部320とを備えている。
【0178】
本実施形態の音場制御装置に含まれる制御用フィルタ306は、図7等に示した制御用フィルタ206に領域変換フィルタ208と音響系逆フィルタ210を取り込んだものである。そこで、まず図7等に示した音響系逆フィルタ210の出力信号y’(n)を求めると、(44)式より、
【0179】
【数72】
Figure 0003539855
【0180】
となる。ここで、FΨWを改めてWにおき直す、すなわち、図7等に示した制御用フィルタ206に領域変換フィルタ208と音響系逆フィルタ210を取り込んだものを制御用フィルタ306とすると、制御用フィルタ306の出力信号y’(n)は、
【0181】
【数73】
Figure 0003539855
【0182】
で与えられる。(73)式において、
【0183】
【数74】
Figure 0003539855
【0184】
【数75】
Figure 0003539855
【0185】
【数76】
Figure 0003539855
【0186】
【数77】
Figure 0003539855
【0187】
【数78】
Figure 0003539855
【0188】
【数79】
Figure 0003539855
【0189】
【数80】
Figure 0003539855
【0190】
【数81】
Figure 0003539855
【0191】
【数82】
Figure 0003539855
【0192】
【数83】
Figure 0003539855
【0193】
である。
【0194】
この出力信号y’(n)がスピーカ312に入力されて音響系Cの一次元音場に音が放射され、マイクロホン314によって取り込まれる。マイクロホン314での音圧p(n)は、
【0195】
【数84】
Figure 0003539855
【0196】
で与えられる。ここで、
【0197】
【数85】
Figure 0003539855
【0198】
【数86】
Figure 0003539855
【0199】
【数87】
Figure 0003539855
【0200】
である。
【0201】
モード振幅a(n)は、(84)式で得られたマイクロホン314での音圧p(n)に対して、(7)式と同様の手法でモード分解を行うことにより求めることができる。したがって、モード分割フィルタ316は、
【0202】
【数88】
Figure 0003539855
【0203】
で与えられる演算によってモード振幅a(n)を導出する。ここで、
【0204】
【数89】
Figure 0003539855
【0205】
である。
【0206】
一方、目標応答のモード振幅d’(n)は、(26)式と同様に、
【0207】
【数90】
Figure 0003539855
【0208】
で与えられる。ここで、
【0209】
【数91】
Figure 0003539855
【0210】
【数92】
Figure 0003539855
【0211】
【数93】
Figure 0003539855
【0212】
【数94】
Figure 0003539855
【0213】
である。
【0214】
モード領域における誤差e’(n)は、(90)式で与えられる目標応答のモード振幅d’(n)から(88)式で与えられるモード振幅a(n)を差し引くことによって求めることができる。したがって、演算部318は、
【0215】
【数95】
Figure 0003539855
【0216】
で与えられる演算を行うことによってモード領域における誤差e’(n)を算出する。ここで、
【0217】
【数96】
Figure 0003539855
【0218】
である。
【0219】
次に、モード領域誤差重み付け部320は、モード領域の誤差e’(n)に対して重み付け係数Bによる重み付けを行う。この重み付けは、
【0220】
【数97】
Figure 0003539855
【0221】
によって計算される。(97)式において、
【0222】
【数98】
Figure 0003539855
【0223】
【数99】
Figure 0003539855
【0224】
である。
【0225】
ここで、モード領域における重み付け誤差ベクトルe(n)の瞬時パワーe(n)T e(n)をフィルタ係数wで偏微分することによって、誤差特性曲面の勾配ベクトルの瞬時推定値を求めると、
【0226】
【数100】
Figure 0003539855
【0227】
となる。したがって、制御用フィルタ306の係数の更新は、次式によって行われる。
【0228】
【数101】
Figure 0003539855
【0229】
ここで、μはLMSアルゴリズムのステップサイズパラメータであり、毎回の繰り返しにおける補正の大きさを制御する係数である。
【0230】
次に、第3の実施形態の音場制御装置の詳細構成について説明する。図12は、第3の実施形態の音場制御装置の詳細構成を示す図である。同図に示すように、音場制御装置300は、音響系モデリングフィルタ302、モード分割フィルタ304、タップ数IのN’×M個の適応フィルタを含む制御用フィルタ306、M個のスピーカ312、K個のマイクロホン314、モード分割フィルタ316、N’個の演算部318、N’個のモード領域誤差重み付け部320、目標応答設定部322、モード分割フィルタ324、フィルタードx部326、LMSアルゴリズム処理部328を備えている。
【0231】
音響系モデリングフィルタ302、モード分割フィルタ304、制御用フィルタ306、スピーカ312、マイクロホン314、モード分割フィルタ316、演算部318、モード領域誤差重み付け部320は、それぞれ図11で説明した動作を行う。
【0232】
目標応答設定部322は、再現したい音場空間に対応する特性(目標応答特性H)、例えば、制御用フィルタ306を構成するフィルタのタップ数の半分程度の遅延時間を有する特性が設定されている。モード分割フィルタ324は、目標応答設定部322から出力される目標応答信号からN’個のモード振幅を導出して、演算部318に出力する。
【0233】
フィルタードx部326は、モード分割フィルタ304の出力信号であるモード振幅a^(n)から参照信号を作成するためのフィルタである。具体的には、フィルタードx部326は、C^、Ψ-1、Bの各特性を有するフィルタを直列に接続して構成されている。LMSアルゴリズム処理部328は、モード領域誤差重み付け部320から出力されるモード領域の誤差信号e(n)およびフィルタードx部326から出力される参照信号に基づいて、上述した(101)式にしたがって制御用フィルタ306を構成する適応フィルタのフィルタ係数を調整する。
【0234】
このように、領域変換フィルタ208と音響系逆フィルタ210を取り込んだ制御用フィルタ306を用いることにより、逆フィルタFをあらかじめ求めなくてよいため、システムの準備手続きを1ステップ低減することができる。また、逆フィルタFを制御用フィルタに取り込んでいるため、ある程度の音響系Cの変動にも対応できる。
【0235】
次に、第3の実施形態の音場制御装置の変形例について説明する。本実施形態の音場制御装置は、上述した第1および第2の実施形態と同様に、一部のモード(特に低次モード)のみを制御するようにしてもよい。
【0236】
図13は、第3の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図であり、一部のモードに対してのみ制御を行う音場制御装置の構成が示されている。同図に示す音場制御装置350は、音響系モデリングフィルタ302から制御用フィルタ306までをバイパスして入力信号u(n)を直接スピーカ312から出力しており、その際の遅延量を調整するために遅延器352が備わっている。この遅延器352には、目標応答設定部322に設定された遅延時間から音響系Cの遅延時間を引いた遅延時間が遅延量βとして設定される。また、制御用フィルタ306では、例えば制御の対象とならない高次のモードに対応したタップ係数が0に設定され、一部のモードについてのみフィルタ演算およびこの演算結果を用いた制御が行われるようになっている。
【0237】
(3)スピーカの数と配置方法
次に、上述した各実施形態の音場制御装置に含まれるスピーカの数とその最適な配置方法について説明する。上述した(2)式は、音圧分布をモード分解したときの各モードのモード振幅である。この(2)式において制御可能な変数は、m番目のスピーカへの入力信号であるqm (ω)と、m番目のスピーカの位置であるlm との2つである。したがって、例えば第n’モードをキャンセルする場合、すなわち第n’モードのモード振幅を0にする場合は、
【0238】
【数102】
Figure 0003539855
【0239】
が成り立たなければならない。
【0240】
但し、(102)式において、cos(n’πlm /L)の項が0となるような位置にスピーカを配置すると、スピーカへの入力信号qk (ω)がどのような値をとってもこのスピーカによるモード制御は不可能となるため、このような位置にスピーカを配置することはできない。また、cos(n’πlm /L)がなるべく1に近い値になるような位置にスピーカを配置すると、入力信号qk (ω)がモード振幅の制御に与える影響が大きく、すなわち制御に対する入力信号qk (ω)の効率が高くなるため、このような位置にスピーカを配置することが望ましい。
【0241】
また、図3(a)に示したように、0次モードのモード形状は平坦であり、図3(b)に示したように、1次モード(他のモードについても同様)のモード形状はピーク・ディップがある。したがって、上述したように、全音響空間で平坦な音圧分布を実現するためには、0次モードを残して、他のモードをキャンセルする必要がある。
【0242】
0次モードのモード振幅を求めるために、(2)式においてn’=0とすると、
【0243】
【数103】
Figure 0003539855
【0244】
が得られる。この(103)式は、cos(n’πlm /L)の項を含んでいないため、0次モードのモード振幅はスピーカの位置に関係なく、それぞれのスピーカへの入力信号qk (ω)の総和のみに依存していることを示している。つまり、それぞれのスピーカへの入力信号qk (ω)が正負バラバラな値を有していると、総和するときにそれぞれが打ち消し合って、0次モードの振幅が小さくなってしまう。したがって、それぞれのスピーカへの入力信号qk (ω)は常に同符号でなければならない。この条件下で他のモードをキャンセルするためには、他のモードのcos(n’πlm /L)が逆符号となるような位置すべてにスピーカを配置する必要がある。
【0245】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、一次元音場の場合のモード制御について説明したが、3次元音場の場合も同様に考えることができる。3次元音場の場合の波動方程式は、上述した(1)式の代わりに、以下の(104)式を用いる。
【0246】
【数104】
Figure 0003539855
【0247】
但し、x1 、x2 、x3 はマイクロホンの縦、横、高さの位置を、ωは角周波数を、p(x1 ,x2 ,x3 ,ω)は音圧を、qm はm番目のスピーカへの入力信号を、l1m、l2m、l3mはm番目のスピーカの縦、横、高さの位置を、Mは全スピーカ数を、ξn'1 、ξn'2 、ξn'3 は第n’1 、n’2 、n’3 モードの壁面での減衰比を、N’は全モード数を、L1 、L2 、L3 は音場の縦、横、高さの長さを、ωn'1,n'2,n'3 (=πc0 {(n’1 /L1 2 +(n’2 /L2 2 +(n’3 /L3 2 })は音場の固有各周波数を、ρ0 は空気密度を、c0 は音速をそれぞれ示している。
【0248】
また、(104)式においては、
【0249】
【数105】
Figure 0003539855
【0250】
【数106】
Figure 0003539855
【0251】
である。
【0252】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、音場の各モードのモード振幅を制御することにより、聴取位置が移動したときに音圧が大きく変化するようなモードの影響を少なくしたり、打ち消すことができるため、特に制御点を増やすことなく、少ないスピーカや適応フィルタによって音響空間全体にわたって伝達特性を補正し、平坦な音圧分布を実現することができる。
【0253】
この場合に、複数のスピーカは、制御対象となるモードの振動の節に対応する位置以外の位置に配置することにより、そのモードのモード振幅を少なくしたり、打ち消す等の各種の制御が可能になる。また、複数のスピーカのそれぞれは、入力信号の符号をそろえて出力するとともに、打ち消そうとするモードの振動の符号が反対となる全ての位置に配置することが好ましく、これにより、0次モードを残して他の所望のモードのみを打ち消すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】モード分解手法を適用して構成したモード分解部の具体例を示す図である。
【図2】音響系に含まれる各モードの周波数特性を示す図である。
【図3】モードの振幅状態を示す図である。
【図4】第1の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態の音場制御装置の全体構成を示す図である。
【図6】第1の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図である。
【図7】第2の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。
【図8】第2の実施形態の音場制御装置の全体構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図である。
【図10】図9に示した音場制御装置の変形例を示す図である。
【図11】第3の実施形態の音場制御装置の概略構成を示す図である。
【図12】第3の実施形態の音場制御装置の詳細構成を示す図である。
【図13】第3の実施形態の音場制御装置の変形例を示す図である。
【図14】オーディオ装置に適用される適応等化システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
100 音場制御装置
102 制御用フィルタ
104 スピーカ
106 マイクロホン
108、118 モード分割フィルタ
110 演算部
112 モード領域誤差重み付け部
114 領域変換フィルタ
116 目標応答設定部
120 フィルタードx部
122 LMSアルゴリズム処理部

Claims (8)

  1. 音響空間の所定位置に設置されており、入力信号を前記音響空間に放射する複数のスピーカと、
    前記音響空間内に設置されており、前記複数のスピーカから放射された音声を集音する複数のマイクロホンと、
    前記複数のマイクロホンの出力信号に基づいて音圧分布をモード分解するモード分解手段と、
    前記モード分解手段によって分解された各モードのモード振幅が所定の値になるように、前記複数のスピーカに入力される前記入力信号を制御する制御用フィルタと、
    を備えることを特徴とする音場制御装置。
  2. 請求項において、
    前記制御用フィルタは、前記入力信号をモード分解したモード領域の信号に対して適応処理を行うことにより、各モードのモード振幅を制御することを特徴とする音場制御装置。
  3. 請求項において、
    前記制御用フィルタは、時間領域の信号に対して適応処理を行うことにより、各モードのモード振幅を制御することを特徴とする音場制御装置。
  4. 請求項において、
    前記制御用フィルタは、モード領域の信号に対して処理を行った後に、前記スピーカに入力される前に時間領域の信号に戻す処理を含んでおり、これらの処理を含めて適応処理を行うことを特徴とする音場制御装置。
  5. 請求項のいずれかにおいて、
    前記複数のスピーカは、制御対象となるモードの振動の節に対応する位置以外の位置に配置されることを特徴とする音場制御装置。
  6. 請求項のいずれかにおいて、
    前記複数のスピーカのそれぞれは、前記入力信号の符号をそろえて出力するとともに、打ち消そうとするモードの振動の符号が反対となる全ての位置に配置されることを特徴とする音場制御装置。
  7. 請求項1〜のいずれかにおいて、
    前記音響空間に含まれるモードの一部を制御対象とすることを特徴とする音場制御装置。
  8. 請求項において、
    制御対象となる一部のモードは、0次以外の低次モードであることを特徴とする音場制御装置。
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