本発明の実施例について以下の順序で説明する。 A.システム構成: B.データ構造: B1.ネットワークデータ: B2.文字データ: B3.地物データ: B4.到着地点の設定: C.地物データの整備: D.経路案内処理: D1.全体処理: D2.到着地点取得処理: D3.案内対象交差点設定処理: D4.案内例: E.変形例:
A.システム構成: 図2は、案内システムの構成を示す説明図である。案内システムは、ナビゲーション装置100として構成される。本実施例では、ナビゲーション装置100は、地図データ等を提供するサーバ200とネットワークNE1で接続されており、サーバ200から地図データベースの更新を受けられるものとした。ナビゲーション装置100は、スタンドアロンで稼働する構成としてもよいし、その機能の一部をサーバ200等で実行する構成としてもよい。 サーバ200は、データベース生成装置としてのパーソナルコンピュータ300とネットワークNE2を介して接続されている。データベース生成装置300は、オペレータの指示に従って、サーバ200に格納されるデータベースの生成および更新を行うための装置である。
サーバ200は、地図データベース記憶部210、送受信部201、およびデータベース管理部202を備えている。送受信部201、データベース管理部202は、ハードウェア的に構成してもよいが、本実施例では、これらの機能を実現するコンピュータプログラムをインストールすることによって、ソフトウェアで構成するものとした。
送受信部201は、ナビゲーション装置100およびデータベース生成装置300とネットワークNE1、NE2を介した通信を行う。本実施例では、地図データベース記憶部210のデータや、その提供・格納に関するコマンド等が通信される。 データベース管理部202は、ナビゲーション装置100、データベース生成装置300から要求された地図情報を、地図データベース記憶部210から読み出したり、データベース生成装置300で生成された地図データを地図データベース記憶部210に格納する。 地図データベース記憶部210には、地物データ211、文字データ212、およびネットワークデータ213が格納されている。地物データ211は、道路や建物など地図に描画すべき地物のポリゴンデータである。文字データ212は、地図上に表示すべき文字情報である。例えば、建物の名称や地名などの文字情報が含まれる。ネットワークデータ213は、道路をノード、リンクのつながりで表したデータである。本実施例のネットワークデータ213には、主ネットワークデータと準ネットワークが含まれる。主ネットワークデータとは、現地調査によって通行規制が十分に整備されたデータであり、車両の経路探索に支障なく用いることができるデータとなっている。準ネットワークデータとは、通行規制の整備が十分とは言えないデータであり、車両の経路探索では、使用しない方が好ましいデータである。
ナビゲーション装置100には、主制御部101の下で稼働する種々の機能ブロックが構成されている。本実施例では、主制御部101および各機能ブロックは、それぞれの機能を実現するソフトウェアをインストールすることによって構成したが、その一部または全部をハードウェアで構成してもよい。 送受信部102は、サーバ200とのネットワークNE1を介した通信を行う。本実施例では、地図データベースおよびその提供を受けるためのコマンドの送受信が主として行われる。 コマンド入力部103は、ナビゲーション装置100に設けられたボタン、レバー、タッチパネル等の操作を通じて、ユーザからの指示を入力する。本実施例における指示としては、経路探索の出発地、目的地の指定などが挙げられる。 GPS入力部104は、GPS(Global Positioning System)を用いてユーザの現在位置を入力する。 地図データベース記憶部105は、サーバ200から提供された地図データベースを格納する。本実施例では、サーバ200が備える地図データベースの全体をナビゲーション装置100内の地図データベース記憶部105にも格納するものとしたが、経路探索や地図表示に必要となる部分のみを、その都度、サーバ200から取得するものとしてもよい。 経路探索部107は、地図データベース記憶部105を参照して、経路探索を行う。 表示制御部106は、地図データベース記憶部105を用いてナビゲーション装置100のディスプレイに地図および探索された経路等の案内を表示する。
データベース生成装置300には、主制御部301の下で稼働する種々の機能ブロックが構成されている。本実施例では、主制御部301および各機能ブロックは、それぞれの機能を実現するソフトウェアをインストールすることによって構成したが、その一部または全部をハードウェア的に構成してもよい。 送受信部302は、サーバ200とのネットワークNE2を介した通信を行う。本実施例では、地図データベースおよびその管理のためのコマンドの送受信が主として行われる。 コマンド入力部303は、キーボードやマウスなどの操作を介してオペレータによる指示を入力する。 表示制御部304は、データベース生成装置300のディスプレイに地図等を表示する。 地図データベース記憶部305は、サーバ200の地図データベース記憶部210に記憶されている地図データベースを格納する。本実施例では、サーバ200の地図データベース全体を格納するものとしたが、処理に必要な部分のみを格納するようにしてもよい。 到着地点算出部307は、地図データベース記憶部305に格納された地物に対して、到着地点を求める。到着地点とは、地物から道路をたどって主ネットワークデータ、つまり経路探索に使用できるネットワークデータが整備された道路まで到達した地点を言う。 データベース整備部306は、到着地点算出部307によって得られた到着地点を地図データベース記憶部305に格納し、サーバ200の地図データベース記憶部210に記憶されている地図データベースを更新する。
B.データ構造: 図3は、地図データベースの構造を示す説明図である。地物データ、文字データ、ネットワークデータに格納される情報の概要を示した。
B1.ネットワークデータ: ネットワークデータとは、道路をリンク、ノードで表したデータである。本実施例では、ネットワークデータとして主ネットワークデータと、準ネットワークデータの2種類が用意されている。図中に実線で示したリンクL1〜L4およびノードN1、N2が主ネットワークデータであり、破線で示したリンクL11〜L13およびノードN11、N12が準ネットワークデータである。 主ネットワークデータおよび準ネットワークデータともに、それぞれに属するリンクデータおよびノードデータを格納している。リンクデータは、識別情報であるリンクID、それぞれのリンクを形成する点列の座標、国道・県道等の種別、車線数その他の属性情報や通行規制情報などを記録している。ノードデータは、識別情報であるノードID、座標、通行規制などを記録し
ている。
B2.文字データ: 文字データ212は、地物の名称や地名などを表示する文字を規定するデータである。図中には、建物BLDの名称を表示するためのデータ例を示した。文字データは、内容、位置、地物、フォント、サイズなどの情報を格納する。 内容は、表示すべき文字列であり、図中の例では、「△△(株)」という会社名称である。 位置は、文字を表示する位置である。本実施例では、文字列の左下の点P5を基準点として、この座標値を指定するものとした。 地物は、文字が関連づけられる地物データのポリゴン名称である。 フォント、サイズは、表示する際のフォントおよびサイズの指定である。 この他、色、太字など、種々の属性を指定可能としてもよい。
B3.地物データ: 地物データ211について、建物H1を例にとって構造を示す。地物データ211は、建物、道路等の地物を描画するためのポリゴンデータであり、名称、形状、代表点、出入り口線、到着地点、属性などを格納している。 名称は、地物の名称である。ポリゴンに固有のIDを用いてもよい。 形状は、地物のポリゴンの頂点を示す座標の列である。図の例では、建物H1のポリゴンの頂点P1、P2、P3、P4の各座標が格納されている。 代表点は、地物の位置を表す地点Cの座標である。代表点は、地物の図心を用いることが多いが、任意に設定可能である。 出入口線は、地物と道路とを関連づけるための情報である。建物H1の場合、玄関から道路に出るための線分Dが出入口線として登録される。具体的には、線分Dの両端の座標が登録されることになる。出入口線は、線分Dのうち、道路上の端点のみを登録するものとしてもよい。また、出入口線は、建物や駐車場など、出入りを伴う地物に設定されるものであり、地物の全てに設定する必要はない。図の例では、建物BLDに対して正面の出入口線DB1および駐車場BLDP側の出入口線DB2、建物H2〜H4に対してそれぞれ出入口線DH2〜DH4、駐車場PKに対して出入口線DPKが設定されている。出入口線に対して、人の出入りに使用する出入口、駐車場などの用途を示す情報を設定しておいてもよい。
到着地点Gは、地物の出入口線の道路上の端点から、いずれかの道路を経てたどりつけるネットワーク上の点の座標である。建物H1の場合、図中に点線で示す通り、出入口線Dが関連づけられている道路R21を経て、リンクL2に至ることができるため、リンクL2上に到着地点Gが設定されている。出入口線Dから道路R21を図中右方向にたどり、ノードN11で右折してノードN2に至る経路をとり、ノードN2を到着地点とすることもできる。本実施例では、建物H1からノードN2に至る道のりよりも、到着地点Gに至る道のりの方が短いから、このように設定した。到着地点は、一つに限定する必要はないから、ノードN2も到着地点に設定してもよい。 図の例では、建物H2〜H4に対する到着地点は点GHと設定されている。建物BLDに対しては、点GHおよび点GBLD2と設定されている。到着地点は、出入口線と同様、駐車場にも設定でき、図の例では、駐車場PKに対して到着地点GPKが設定されている。駐車場PKは、リンクL2に面しているため、出入口線DPKの端点と到着地点GPKが一致した状態となっている。
B4.到着地点の設定: 図4は、到着地点の設定について示す説明図である。建物BLD1の出入口線DBを対象とする到着地点について示した。 建物BLD1の周辺の主ネットワークデータとしては、リンクL7、ノードN7およびリンクL5、L6およびノードN5、N6が存在する。準ネットワークデータとしては、破線で示したリンクL14が存在する。 建物BLD1の出入口線DBからいずれかの道路を経て主ネットワークにたどりつく経路としては、図中に点線で示した3通りがあげられる。道路R24を経てリンクL7にたどりつく経路、道路R25を経てたリンクL6およびリンクL5にそれぞれたどりつく経路である。これらの各経路がリンクL7、L6、L5にたどりつく点が到着地点G7、G6、G5となる。
これらの到着地点は、経路探索によって求めることができる。本実施例では、それぞれの地物は、出入口線によって、いずれかの道路に関連づけられているから、出入口点、つまり地物への出入口に面した道路上の端点を始点とする経路探索によって到着地点を求めればよい。 この経路探索は、主ネットワークデータ、準ネットワークデータおよび道路のポリゴンの全てを用いてもよい。道路のポリゴンは、リンク、ノードで構成されている訳ではないが、隣接するポリゴンを指定するデータは持っているから、ポリゴン同士のつながり関係は規定されており、リンク、ノードと同様に、経路探索に使用することが可能である。出入口点を起点とする経路探索の結果、主ネットワークデータにたどり着いた点を到着地点とすればよい。
図の例のように、到着地点がG7、G6、G5の3点見いだされる場合、これらの3点を建物BLD1の到着地点として用いてもよいし、例えば、地物からの道のりが最短の地点、地物からの距離が最短の地点、地物から到着地点までの経路と準ネットワークデータとの重複部分が多い点、地物から出発点に向かう方角に近い点などの基準で選択してもよい。 図の例においては、地物からの道のりや距離を基準として選べば、建物BLD1に最も近い点G5が到着地点となる。準ネットワークデータとの重複部分を基準として選べば、点G6が到着地点となる。出発地が図の左端方向にある場合には、出発地の方角を基準として選べば、点G7が到着地点となる。
本実施例では、上述の手順で、到着地点を設定し、地物データ211に予め設定しておくものとした。到着地点は、予め設定しておくのではなく、経路探索などの処理の過程で求めるものとしてもよい。
C.地物データの整備: 図5は、地物データ整備処理のフローチャートである。データベース生成装置300のデータベース整備部306、到着地点算出部307が主として実行する処理であり、ハードウェア的には、データベース生成装置300のCPUが実行する処理である。
CPUは、オペレータから指定された範囲の地図データを地図データベース記憶部305から読み込み、ディスプレイに地図を表示する(ステップS10)。 CPUは、処理対象となる地物に対して、名称、地物のポリゴン形状、代表点、属性などの指示を入力する(ステップS11)。既存の地物に対して処理を行う際には、これらの情報は、既に地物データに格納されているから、要更新箇所のみを修正すればよい。 また、CPUは、出入口線および用途の指定を入力する(ステップS12)。出入口線は、地物と道路とを関連づけるための情報である。地物に対して複数の出入口線を設定してもよい。用途は、出入口線ごとに設定することができる。例えば、人の出入りに使用する出入口、駐車場などの形式で指定する。人の出入りに使用する出入口を、玄関、裏口などに細分化して設定してもよい。
CPUは、到着地点探索処理を行って、地物のそれぞれの出入口線に対応する到着地点を求める(ステップS13)。この処理は、図4で説明した出入口点を始点とする経路探索である。 この経路探索は、主ネットワークデータ、準ネットワークデータおよび道路のポリゴンの全てを用いてもよい。道路のポリゴンは、リンク、ノードで構成されている訳ではないが、隣接するポリゴンを指定するデータは持っているから、ポリゴン同士のつながり関係は規定されており、リンク、ノードと同様に、経路探索に使用することが可能である。出入口点を起点とする経路探索の結果、主ネットワークデータにたどり着いた点を到着地点とすればよい。 到着地点は、それぞれの出入口点に対して複数探索されることがある。このような場合、いずれかの到着地点に絞り込んで地物データに登録するようにしてもよいが、本実施例では、探索された到着地点は全て登録しておくものとした。こうすることにより、後述する経路探索における到着地点の選択肢が増え、より適した経路を提示できる可能性が増えるからである。
CPUは、以上の処理を踏まえ、名称、地物ポリゴン形状、代表点、属性、出入口線、用途、および到着地点のデータを地物データに格納し、地物データを更新する(ステップS14)。 処理対象となるべき地物が他にもある場合には、オペレータの指示に従って、この処理を繰り返し実行する。
D.経路案内処理:D1.全体処理: 図6は、経路案内処理のフローチャートである。ナビゲーション装置100の経路探索部107および表示制御部106が主として実行する処理であり、ハードウェア的にはナビゲーション装置100のCPUが実行する処理である。
ナビゲーション装置100は、出発地および目的地を入力する(ステップS20)。出発地は、ユーザが指定してもよいし、GPSなどで取得した現在位置を出発地に設定してもよい。 目的地は、地物を指定してもよいし、座標で指定してもよい。
次に、ナビゲーション装置100は、指定された目的地に対する到着地点を取得する(ステップS30)。本実施例では、到着地点は地物データ211に格納されている。従って、ナビゲーション装置100は、目的地となる地物が指定されている場合は、指定された地物に対応する地物データから到着地点を読み出せばよい。ナビゲーション装置100は、目的地が座標で指定されている場合には、当該座標がいずれのポリゴンに含まれるかを特定し、特定されたポリゴンの地物データに対応する到着地点を読み出せばよい。地物に対して複数の到着地点が得られる場合もある。 到着地点取得処理の内容は後述する。
次に、ナビゲーション装置100は、得られた到着地点を起点とする経路探索を行う(ステップS50)。 到着地点が複数得られている場合には、ナビゲーション装置100は、経路案内の対象とすべき到着地点および経路を選択する。ナビゲーション装置100は、到着地点および経路を地図上に表示して、ユーザに直接、選択させる方法をとってもよい。また、ナビゲーション装置100が何らかの選択条件に従って自動的に選択するようにしてもよい。選択には、種々の選択条件を適用可能であるが、本実施例では、次に示す3つの条件から、ユーザが予め選択した条件を用いるものとした。(1)出発地からそれぞれの到着地点までの経路探索によるコスト(以下、「経路コスト」という)が最小となる到着地点を選択する。(2)経路コストと、目的地からそれぞれの到着地点までのコスト(以下、「到着地点コスト」という)の和が最小となる到着地点を選択する。(3)出発地と目的地とを結ぶ線分までの距離が最短の到着地点を選択する。つまり、出発地と目的地とを結ぶ線分に対して到着地点から垂線をおろし、その距離で評価する条件である。線分に対して垂線を引くことができない位置関係にある到着地点については、目的地までの直線距離を用いるものとする。この条件は、出発地から目的地との間に位置する到着地点を選択すれば、経路コストと到着地点コストとの総和が低い経路が得られるとの考え方に基づくものである。
次に、ナビゲーション装置100は、案内対象交差点設定処理を行う(ステップS60)。本実施例では、ナビゲーション装置100は、経路案内時に、右左折などの経路の案内に加えて、危険箇所の案内など、ユーザに対して通行を支援するための案内を行う。案内対象交差点設定処理は、ナビゲーション装置100は、この案内を行う対象となる交差点を設定する処理である。本実施例で案内対象としたのは、次の2種類の交差点である。 第1は、仮想交差点の案内である。ネットワークデータは、全ての道路に整備されている訳ではないので、ネットワークデータ上は交差点として構成されていない部分であっても、実際には道路が交差している箇所が存在する。このような箇所を、ネットワークデータから見ると仮想的な交差点という意味で、本実施例では、仮想交差点と称する
。本実施例では、ナビゲーション装置100は、このような仮想交差点の中から案内対象交差点を選択し、交差点の存在などをユーザに対して案内する。 第2は、要注意交差点の案内である。住宅に面した道路と交差する交差点では、幼児を含め人の出入りがあり、時には飛び出しなどの危険もある。本実施例では、ナビゲーション装置100は、このような交差点を案内対象交差点として、ユーザに対し注意喚起を行う。 これらの案内を行う案内対象交差点の設定処理の具体的内容については、後述する。
こうして経路案内のために要する情報が揃うと、ナビゲーション装置100は、次の手順で経路案内を行う。 ナビゲーション装置100は、ユーザの現在位置を取得し(ステップS90)、探索された経路および現在位置をディスプレイに表示する(ステップS92)。ナビゲーション装置100は、経路の表示と併せて、経路の音声案内を行っても良い。 また、ナビゲーション装置100は、ユーザが案内対象交差点に近づくと、通行案内を出力する(ステップS94)。先に説明した通り、仮想交差点の存在等を示したり、要注意交差点の注意喚起をしたりするのである。 以上の処理を、ナビゲーション装置100は、ユーザが目的地に到着するまで(ステップS96)、繰り返し実行する。
経路案内処理における処理手順はこの限りではない。たとえば、案内対象交差点設定処理(ステップS60)を経路・現在位置表示処理(ステップS92)の次の処理へ移行する変更を行っても良い。すなわち、ナビゲーション装置100は、ステップS50の到着地点に対して経路探索を行う処理が終了すると、ステップS90の現在位置を取得する処理を行ない、続けて行なったステップS92の経路・現在位置を表示する処理が終了した後に、ステップS60の案内対象交差点設定処理を行なう。そして、ステップS60の案内対象交差点設定処理が終了した後に、ステップS94の通行案内出力の処理を行なう。このような処理手順とした場合、現在位置を取得する処理の後に案内対象交差点設定処理を行なうことにより、1回あたりの案内対象交差点設定処理の実行時間が短くなるので、例えば、リルート直後でも仮想交差点を案内することが可能となる。
D2.到着地点取得処理: 図7は、到着地点取得処理のフローチャートである。経路案内処理(図6)のステップS30に相当する処理であり、指定された目的地に対応する到着地点を得る処理である。 ナビゲーション装置100は、目的地に対応する地物データを読み込む(ステップS32)。目的地が地物を指定している場合には、ナビゲーション装置100は、指定に該当する地物データを読み込めばよい。目的地が座標で指定されている場合には、ナビゲーション装置100は、その座標点を含む地物の地物データを読み込む。 地物データに到着地点が設定されている場合(ステップS34)、ナビゲーション装置100は、設定されている到着地点データを読み込む(ステップS36)。 到着地点が設定されていない場合には(ステップS34)、ナビゲーション装置100は、出入口線データを読み込み(ステップS38)、到着地点探索処理を行って到着地点を得る(ステップS40)。到着地点探索処理は、地物データ整備処理(図5)のステップS13で説明した処理と同じである。
そして、ナビゲーション装置100は、経路探索モードに応じて到着地点を選択する。 到着地点から目的地までは徒歩で向かう旨の探索モードが指定されている場合は(ステップS42)、ナビゲーション装置100は、到着地点から目的地までのコスト、つまり到着地点コストが低い到着地点を優先する(ステップS44)。コストは、経路探索において、各経路を評価するための評価値であり、距離や移動に要する時間などに基づいて設定することができる。コストは、上り/下り坂、階段など道路の構造などに基づく移動負荷を加味して設定してもよい。ステップS44では、到着地点から徒歩で移動することを考慮し、距離が短いなど、移動に要する労力が低い到着地点を選択することを意味している。 「優先」には、一つの到着地点を選択する態様、および複数の到着地点に対して優先度を設定する態様などが含まれる。後者の場合には、ステップS44の条件に基づいて優先度を設定しておき、経路案内処理(図6)のステップS50の処理における選択条件を併せて考慮して、案内対象となる到着地点を選択するようにしてもよい。
到着地点から目的地まで車で移動する旨の探索モードが指定されている場合は(ステップS42)、ナビゲーション装置100は、出入口線の用途を参照し、駐車場の出入口線に対応する到着地点を優先する(ステップS46)。到着地点から目的地までは、通行規制等の調査が十分になされていない道路なので、幅員が足りないなど、車の通行に適しない道路が含まれるおそれもある。しかし、駐車場に対応した到着地点であれば、それ以外の到着地点に比べて、到着地点から目的地までの経路も車の通行に適している可能性が高い。ステップS46の態様によれば、ナビゲーション装置100は、目的地に到着した時に車を駐車できる出入口に案内できるだけでなく、目的地まで車で移動するのに適した到着地点を優先することができる。
D3.案内対象交差点設定処理: 図8は、案内交差点設定処理のフローチャートである。経路案内処理(図6)のステップS60に相当する処理であり、仮想交差点および注意喚起の案内を行う地点を設定する処理である。
ナビゲーション装置100は、経路上の到着地点を抽出し(ステップS62)、未処理の到着地点を処理対象として選択する(ステップS64)。 具体的には、ナビゲーション装置100は、経路周辺の所定範囲に位置する地物を参照して求めた到着地点の座標と、経路に対応するリンクデータを参照して求めたリンクの座標とを比較し、経路上のリンクに重複する到着地点を抽出する。 次に、ナビゲーション装置100は、この到着地点に対応する全ての地物を抽出する(ステップS66)。到着地点は、地物からいずれかの道路をたどって主ネットワークに到達した点であるから、複数の地物に対する到着地点が同一の点となることもある。ステップS66では、ナビゲーション装置100は、地物データから、処理対象の到着地点に対応する地物を全て検索する。
検索された地物に駐車場がある場合(ステップS68)、ナビゲーション装置100は、駐車場の位置に基づき交差点形状を特定し(ステップS70)、交差点となっている箇所について(ステップS72)、仮想交差点に設定する(ステップS74)。
ステップS70〜S74の処理内容について具体例で説明する。 図9は案内対象交差点設定例(1)を示す説明図である。リンクL60の周辺に、駐車場P61〜P65が存在する例を示した。各駐車場にはそれぞれ、代表点C61〜C65、到着地点G61〜G63、出入口線D61〜D65が設定されている。 駐車場P61の場合、ナビゲーション装置100は、到着地点G61はリンクL60上に存在するが、リンクL60に面しており、交差点とはなっていないため、仮想交差点には設定しない。リンクL60を走行しているユーザから視認できる駐車場を案内対象とする必要はないからである。 交差点となっているか否かの判断は、種々の方法を用いることができる。本実施例では、ナビゲーション装置100は、出入口線D61の端点の座標が到着地点G61の座標と一致している場合には交差点ではないと判断し、案内対象から除外するものとした。ナビゲーション装置100は、駐車場P61の代表点C61とリンクL60との距離が道路の幅員程度である場合に交差点でないと判断する方法をとることもできる。
到着地点G62の場合には、到着地点G62に対応する駐車場P62の代表点の座標からリンクL60の右側にのみ駐車場P62が存在することが分かる。従って、ナビゲーション装置100は、「三叉路」と判断する。 到着地点G63の場合には、リンクL60の右側に駐車場P63、P64が存在し、左側に駐車場P65が存在する。従って、ナビゲーション装置100は、「交差点」または「四叉路」と判断する。 このように、駐車場とリンクとの距離、およびリンクの左右いずれに駐車場が配置されているかに応じて、ナビゲーション装置100は交差点形状を判断することができる。
駐車場に関する処理を終えると、ナビゲーション装置100は、到着地点に対応する「住宅」の数が2以上の場合には(ステップS76)、その到着地点を要注意交差点に設定する(ステップS78)。 この処理について具体例で説明する。 図10は案内対象交差点設定例(2)を示す説明図である。リンクL70の周辺に、住宅H71〜H79が存在する例を示した。それぞれは代表点が点C71〜C79であり、到着地点G71〜G73、G75、G77、出入口線D71〜D79が設定されている。
到着地点G71、G72は、対応する住宅数が1軒であるため、ステップS76の判断基準により、要注意交差点から除外される。到着地点G71については、駐車場の場合と同様、住宅H71がリンクL70に面していると判断し、要注意交差点から除外するものとしてもよい。 到着地点G73は、リンクL70の右側に住宅H73、H74の2軒が存在する。到着地点G74は、リンクL70の右側に住宅H75、左側に住宅H76が存在する。到着地点G77は、リンクL70の右側に住宅H77、H78の2軒、左側に住宅H79が存在する。従って、到着地点G73、G75、G77は、それぞれ2軒以上の住宅が対応しているから、要注意交差点に設定される。
ナビゲーション装置100は、以上の処理を経路上の全ての到着地点について行い、案内対象交差点を設定する。 このように、本実施例では、駐車場に対応する到着地点のうち交差点となっている地点、および2軒以上の住宅に対応している到着地点が案内対象交差点として設定されることになる。
なお、ネットワークデータに関連付いた案内対象交差点データを予め持っておく構成としても良い。具体的には、たとえば図11のように、案内対象交差点データはネットワークデータのリンクデータに関連付いており、案内対象交差点ID、基準点、基準ノードからの距離および案内内容の情報が格納されている。「案内対象交差点ID」は案内対象交差点を識別する情報である。「基準点」は、案内対象交差点がどの位置にあるかを表現するための基準となる点の情報であり、リンクの端点の情報であるノードIDが格納されている。「距離」は基準点からの距離の情報が格納されている。「距離」はリンクの長さに対する相対的な距離としても良い。「案内内容」は案内交差点における案内内容が格納されている。具体的には、案内内容は「三叉路」、「交差点」または「四叉路」および「要注意交差点」で表現される。なお、1つのリンクに対して案内対象交差点を複数関連付けることができる。
D4.案内例: 図9を参照しながら、駐車場が存在する場合の案内対象交差点に対する案内例を説明する。 図9に示す通り、点G62、G63の部分に三叉路および四叉路が存在するが、リンクL60にはこれらの点にノードは設けられていないから、リンクL60を見る限り、点G62、G63の交差点は把握することができない。しかし、点G62、G63は、それぞれ駐車場に対する到着地点であるから、これらの地点は、車が出入りできる程度の道路と交差していることが分かる。実施例のナビゲーション装置100は、このような状態を考慮して、点G62、G63の仮想交差点を案内対象交差点と設定し、交差点である旨の案内を行う。
具体的には、ナビゲーション装置100は、交差点G62にさしかかるところで、「前方に三叉路があります」と案内したり、交差点G63にさしかかるところで、「前方に交差点(または四叉路)があります」と案内することができる。これらの案内とともに、「車が出てくる可能性があ
ります」と注意喚起をしてもよい。 また、ナビゲーション装置100は、図9の点G62よりも先の交差点で右折する場合は、点G62の三叉路を踏まえて、「この先、三叉路の次の交差点で右折です」のように案内することも可能である。こうすることにより、ユーザが誤って点G62の交差点を右折してしまうことを回避することができる。
また、ナビゲーション装置100は、点G62のように、進行方向に対して右側にのみ駐車場が位置する場合には、車が出てくることによる危険度は比較的低いと判断して通行上の注意喚起を省略してもよい。また、ナビゲーション装置100は、左側にのみ駐車場が位置する場合には、ユーザの進行する車線に近く危険度が認められると考えて、注意喚起をしてもよいし、左右双方に駐車場が位置する場合に比べれば危険度が低いと考えて、注意喚起を省略するようにしてもよい。
本実施例では、ナビゲーション装置100は、到着地点G62を利用して、駐車場P62までの経路案内をすることもできる。つまり、ネットワークデータを利用して到着地点G62までの経路を探索し、到着地点G62から駐車場P62までの経路は、道路のポリゴンデータを用いて案内するのである。 このような場合、仮にネットワークデータだけを利用した案内を行おうとすれば、ネットワークデータ上は、点G62は交差点と認識されてはいないから、せいぜい「目的地付近です」という程度の案内しかすることができない。 これに対し、本実施例では、ナビゲーション装置100は、点G62を交差点と認識することができることを利用して、「次の交差点を右折です」という経路案内を行っても良い。こうすることにより、ユーザにより適切な情報を提示することが可能となる。
図10を参照しながら、住宅が存在する場合の案内対象交差点に対する案内例を説明する。 住宅に対応する到着地点について、ナビゲーション装置100は、人が飛び出してくる可能性がある要注意交差点として案内を行う。従って、ナビゲーション装置100は、点G73、G75、G77にさしかかるところで、「この先の交差点は、人の出入りがあるかも知れません。注意して下さい」のように案内することができる。 この案内に交差点の形状を反映させてもよい。 例えば、ナビゲーション装置100は、点G73では、「右側から人が出てくるかも知れません」、点G75、G77では、「左右から人が出てくるかも知れません」のように、方向を示して注意を喚起することができる。
注意喚起の方法は、到着地点に対応する住宅数に応じて変化させてもよい。図10の到着地点G73、点G75は2軒が対応しているのに対し、到着地点G77は3軒が対応しているから危険度が高いと判断し、より強調した態様で注意喚起してもよい。例えば、注意喚起するメッセージの内容を変化させてもよいし、音声案内のトーンや音量、画面表示の明度、色などで強調してもよい。
実施例では、住宅数が2以上の交差点を注意喚起の対象としたが(図8のステップS76)、この軒数は任意に設定可能であり、更に多くの軒数を判断基準値としてもよい。判断基準値を大きくすれば、案内が行われる頻度が下がるため、逆に、案内が行われた時のユーザの注意を効果的に喚起することができる。
要注意交差点での案内については、ナビゲーション装置100は、住宅に対応する到着地点が経路に沿って現れる密度を求め、その密度に応じて、注意喚起のための情報提示の内容を設定してもよい。 図10に示す点G77、G75、G73が比較的接近している場合、ナビゲーション装置100によって各交差点に「人が出てくる可能性あります」という案内が行われると、ユーザはこうした案内に麻痺したようになってしまい、注意喚起の効果が低くなることがある。 そこで、このように所定の密度を超えて要注意交差点が存在する場合には、「しばらく飛び出しの危険がある地域を通行いたします」のように地域全体に対する注意喚起の態様をとってもよい。ナビゲーション装置100は、図10のリンクL70を下側から上側に向かって走行している場合には、点G77にさしかかるところで、点G77、G75、G73に対する総合的な案内として、上述のように地域全体に対する注意喚起を行うのである。
別の態様として、要注意交差点の密度が高い場合には、要注意交差点とするか否かの判断基準値(図8のステップS76の値)を増大させ、判断基準を厳しくしてもよい。図10の点G77、G75、G73の地域に対しては、ナビゲーション装置100は、例えば、判断基準値を3軒に変更するのである。こうすることで、点G77のみが要注意交差点となるから、注意喚起が頻繁に行われる事態を回避することができる。具体的な処理態様としては、ナビゲーション装置100は、案内対象交差点設定処理(図8)を実行した後、要注意交差点の密度を算出し、密度が所定値を超える地域に対しては、ステップS76の判断基準値を増大させた上で、再度、案内対象交差点設定処理(図8)を実行する方法をとることができる。
E.変形例: 実施例では、仮想交差点および要注意交差点の例を示したが、実施例の案内は、到着地点の種別に応じて種々の態様で適用することができる。例えば、ナビゲーション装置100は、到着地点がレストランや店舗に対応している場合、その密度に応じて、「右側にレストラン街があります」、「○○店街があります」のような案内を行っても良い。経路探索を行う際に、目的地に向かう途中で食事をとるなどの目的を設定した場合には、ナビゲーション装置100は、レストランに対応した到着地点を抽出し、経路案内の過程で、「右側にイタリアンレストランがあります」のように目的に応じた情報を提示してもよい。このように到着地点と関連づけた地物の種別に応じて情報を提示することにより、ユーザが目的地として選択していない地物について、経路から離れたところにある地物であってもユーザの意図に合致した情報を提示可能となる。
また実施例では、経路案内を行った上で種々の情報提示をする例を示したが、本発明は、経路案内を行わない場合でも適用可能である。 例えば、図10において、リンクL70上をユーザが走行している場合には、ナビゲーション装置100は、ユーザの現在位置を検出し、その前方にある到着点について、「人が出てくる可能性あります」などの注意喚起をすることができる。ユーザの経路がわかっていない場合であっても、現在位置の変化から進行方向は判断できるため、前方に位置する交差点か否かは容易に判断可能である。 音声で注意喚起を行う場合には、注意喚起の対象となる交差点をユーザがほぼ確実に通行すると判断できる時点まで待つようにしてもよい。例えば、図10の点G77からリンクL70を上方に向かってユーザが走行している場合を考える。ユーザは、点G75を通過して直進するかも知れないし、ここで右左折するかも知れない。このような状況で点G73の注意喚起を行うと、かえってユーザを混乱させかねない。しかし、ユーザが点G75を通過した後は、Uターンでもしない限り点G73を通過することが明らかである。このように、ナビゲーション装置100は、ユーザの現在位置および進行方向を考慮して、通過が確実と判断されるまで案内を行うタイミングを遅らせる態様をとることにより、ユーザの混乱を回避することができる。 この判断は、ナビゲーション装置100によって、ユーザの前方に位置する到着地点G73、G72、G71について、ユーザの現在位置(例えば点G75)との間に分岐または他の到着地点が存在するか否かに基づいておこなわれる。到着地点G71、G72と点G77との間には、到着地点G73が存在するのに対し、到着地点G73と点G75との間には分岐等は存在しない。このような場合には、ナビゲーション装置100は、到着地点G73を通過する可能性が高いと判断し、注意喚起を行うようにすればよい。 注意喚起は、音声だけでなく表示によることもできる。例えば、ナビゲーション装置100は、到着地点G73,G72等を危険度に応じて赤などの目立つ色で表示する態様をとることができる。このように表示によって注意喚起する場合には、ユーザの混乱を招くおそれが低いから、現在位置から所定範囲内にある到着地点を対象としても
本発明は、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。 本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
また本発明は以下に示す経路案内方法として構成することもできる。 道路をノード、リンクで表したネットワークデータと、道路を含む地物について、自動車が通行可能な道路として前記ネットワークデータが整備された道路上の点であって、前記地物からいずれかの道路を通行して到着できる点である到着地点のデータを記憶する地物データとを格納する地図データベースを有するコンピュータによって、道路の通行を支援する情報提示を行う案内方法であって、 現在位置を検出する検出ステップと、 前記現在位置に対し所定の位置関係にある到着地点が存在する地点について、該到着地点に対応する地物の種別に応じた情報提示を行う案内ステップとを備える経路案内方法である。
さらに、以下に示すコンピュータプログラムとして構成してもよい。 道路をノード、リンクで表したネットワークデータと、道路を含む地物について、自動車が通行可能な道路として前記ネットワークデータが整備された道路上の点であって、前記地物からいずれかの道路を通行して到着できる点である到着地点のデータを記憶する地物データとを格納する地図データベースを有するコンピュータによって、道路の通行を支援する情報提示を行うためのコンピュータプログラムであって、 現在位置を検出する検出機能と、 前記現在位置に対し所定の位置関係にある到着地点が存在する地点について、該到着地点に対応する地物の種別に応じた情報提示を行う案内機能とをコンピュータによって実現させるためのコンピュータプログラムである。