JP2011217068A - 音場制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】音場効果を再生環境に応じて補正できるようにする。
【解決手段】テスト音生成部111は、テスト音信号を生成し、テスト音を発生させる。解析部112は、テスト音を収音して得られる測定音を表す測定信号に基づき、再生環境における直接音と反射音の特性を解析する。音場生成部113は、入力信号に対して音場効果音を付与するための効果音信号を生成する。補正部114は、解析部112の解析結果を用いて、効果音信号に対して直接音と反射音の比率に応じた補正を行う。この補正に用いられる反射音は、例えば、直接音の収音タイミング後のある期間において、音圧レベル最大である1つの反射音のみである。
【選択図】図2

Description

本発明は、再生環境に応じた音場効果を付与するための技術に関する。
いわゆるAVアンプには、特定の仮想音源分布に基づく音場効果を付与する機能を有するものがある。ここでいう音場効果は、例えば、自宅にいながらにして映画館やコンサートホールにいるような臨場感を聴取者に与えるものであり、残響音などを付与することで実現されるものである(例えば、特許文献1参照)。つまり、音場効果は、ある再生環境にいながら別の再生環境にいるような感覚を聴取者に与えようとするものである。
特許第2755208号公報
このような音場効果は、あらかじめ決められた理想的な再生環境を基準に設定されている。しかし、聴取者の実際の再生環境をかかる基準の再生環境と同一にすることは、現実的には非常に困難である。そうすると、聴取者の再生環境においては、音場効果が想定よりも強く効きすぎてしまったり、あるいは弱すぎたりしてしまう可能性がある。
そこで、本発明の目的は、音場効果を再生環境に応じて補正できるようにすることにある。
本発明の一態様に係る音場制御装置は、オーディオ信号を入力する入力手段と、前記オーディオ信号に対して音場効果音を付与するための効果音信号を生成する音場生成手段と、再生環境において放音されたテスト音を収音したときの直接音及び反射音の音圧レベルを表す測定信号を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された測定信号から、直接音の収音タイミング後の定められた期間において、音圧レベルが最大である反射音を特定する特定手段と、前記直接音の音圧レベルに対する前記特定手段により特定された反射音の音圧レベルの比率に基づいて、前記音場生成手段により生成される効果音信号を補正する補正手段と、前記入力手段により入力されたオーディオ信号と前記補正手段により補正された効果音信号とを出力する出力手段とを備える。
好ましい態様において、前記特定手段は、前記期間において、音圧レベルが最大である反射音と、音圧レベルが当該反射音に次ぐ1以上の反射音とを特定し、前記補正手段は、前記特定手段により特定された複数の反射音の音圧レベルを組み合わせて用いて前記効果音信号を補正する。
別の好ましい態様において、前記補正手段は、前記比率を第1の係数とし、前記再生環境とは異なる再生環境において収音ないし想定される直接音と反射音の音圧レベルの比率を第2の係数とした場合に、前記第1の係数に対する前記第2の係数の比率を用いて前記効果音信号を補正する。
さらに別の好ましい態様において、前記音場制御装置は、前記期間を設定する設定手段を備える。
本発明によれば、音場効果を再生環境に応じて補正することが可能になる。
オーディオシステムの構成を示すブロック図 信号処理部の構成をより詳細に示すブロック図 直接音及び反射音を説明するための図 測定信号の一例を示す図
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態であるオーディオシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のオーディオシステム10は、音場制御装置100と、再生装置200と、マイクロホン(以下単に「マイク」と表記する。)300と、スピーカ装置400とを備える。
オーディオシステム10は、ある聴取者の再生環境において使用されるものである。ここにおいて、再生環境とは、音が再生される環境のことをいうものである。再生環境は、ある空間の音響的な特性を表すものであり、その空間を他の空間と隔てる物(壁、床、天井など)や、その空間の内部にある物(家具、カーテンなど)の影響を受けて変化する。これらの物は、再生環境の構成物であるといえる。再生環境は、典型的には、聴取者が音楽や映画を視聴するための部屋(リスニングルーム)である。
再生装置200は、音声を表すオーディオ信号を音場制御装置100に供給するものである。再生装置200が音場制御装置100に供給するオーディオ信号のことを、以下においては「入力信号」という。再生装置200は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤやチューナである。なお、再生装置200は、音声とともに映像も再生するものであってもよい。ただし、ここでは、映像の再生に関する説明を省略するものとする。
マイク300は、聴取者の再生環境の所定の位置において音声を収音する手段である。マイク300が収音する位置のことを、以下においては「受音点」という。受音点は、望ましくは、音楽等を聴取するときの聴取者の位置と一致する。マイク300は、受音点において収音された音声を表す測定信号を音場制御装置100に供給する。測定信号は、聴取者の再生環境に応じた音場効果を付与するために用いられるオーディオ信号である。
スピーカ装置400は、音場制御装置100により出力されたオーディオ信号(以下「出力信号」という。)に応じた音声を放音する。スピーカ装置400は、聴取者の再生環境のいずれかの位置に設置されるスピーカを備える。なお、スピーカ装置400は、設置位置が異なる複数のスピーカを備えることが可能である。この場合、スピーカの配置は、あらかじめ決められていればどのようなものであってもよい。
音場制御装置100は、再生装置200により入力された入力信号に対して各種の信号処理を実行し、出力信号をスピーカ装置400に出力する手段である。音場制御装置100が実行する信号処理には、入力信号に対して聴取者の再生環境に応じた音場効果を付与する処理が少なくとも含まれる。音場制御装置100による音場効果は、聴取者の再生環境と異なるあらかじめ決められた再生環境を基準にして付与されるものであるが、聴取者の再生環境に応じた補正が行われることを特徴とするものである。基準となる再生環境は、メーカ等によって設計された再生環境であり、一般的には、残響が比較的少ない再生環境である。音場制御装置100は、マイク300により入力された測定信号を用いてこの補正の態様を決定する。これを実現するために、音場制御装置100は、信号処理部110と、入力部120と、取得部130と、出力部140と、記憶部150と、UI(User Interface)部160と、制御部170とを備える。
入力部120は、再生装置200により供給される入力信号の入力を受け付ける手段である。入力部120は、入力信号に応じて、A/D変換(アナログ−デジタル変換)、デコード等の処理を実行してもよい。入力部120は、かかる処理を実行した入力信号を、信号処理部110に供給する。
取得部130は、マイク300により供給される測定信号の入力を受け付け、信号処理部110に供給する手段である。取得部130も、必要に応じて、入力部120と同様の処理を実行してもよい。
なお、取得部130は、測定信号を取得することが可能な構成であれば足り、マイク300に直接接続された構成に限定されるものではない。例えば、聴取者の再生環境においてあらかじめ録音(収音)された測定信号が記憶手段(いわゆるメモリカード等)に記憶された状態で得られる場合にあっては、取得部130は、かかる記憶手段から測定信号を読み出すための駆動装置(ドライブ)であってもよい。
信号処理部110は、入力部120により供給される入力信号と、取得部130により供給される測定信号とに基づき、入力信号に対して聴取者の再生環境に応じた音場効果を付与するための信号処理を実行する手段である。信号処理部110により実行される主たる処理は、測定信号を得るためのテスト音を放音する第1の処理と、第1の処理によって得られた測定信号を解析する第2の処理と、入力信号に基づいて音場効果を付与するための効果音信号を生成する第3の処理と、第3の処理によって生成された効果音信号を第2の処理の解析結果に応じて補正する第4の処理の4種類である。信号処理部110は、これらの処理を実行し、入力信号と(補正後の)効果音信号とを加算して出力する。信号処理部110は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)によって実現される。
出力部140は、入力部120により供給される入力信号と、信号処理部110により供給される効果音信号とを出力する手段である。出力部140は、これらのオーディオ信号をスピーカ装置400に供給する前に、遅延、ミキシング、D/A変換(デジタル−アナログ変換)、増幅等の処理を実行してもよい。また、出力部140は、スピーカ装置400に代えて、他の手段(例えば記憶手段)にオーディオ信号を出力するものであってもよい。
記憶部150は、信号処理部110が信号処理を実行するときに用いるデータを記憶する手段である。記憶部150は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶手段を備える。記憶部150は、後述する係数a及びbや、音場効果音を発生させるための効果音情報などを記憶する。なお、係数aは、記憶部150にあらかじめ記憶されているが、係数bは、信号処理部110が解析を実行することで記憶部150に記憶されるものである。
UI部160は、聴取者の操作を受け付けるための手段である。UI部160は、聴取者の操作を受け付けるボタンやスイッチを備え、受け付けた操作に応じた操作信号を制御部170に供給する。使用者による操作には、テスト音の測定を指示するものや、音場効果の種類(モード)を選択するものが含まれ得る。また、UI部160は、リモートコントローラからの操作信号を無線により受信する手段を有していてもよい。さらに、UI部160は、聴取者に各種の情報を提示し、聴取者の操作を補助するために、液晶ディスプレイ等の表示手段を備えていてもよい。
制御部170は、信号処理部110の動作を制御する手段である。制御部170は、例えば、UI部160を介して受け付けられた聴取者の操作に応じて、信号処理部110に所定の処理を実行させる。制御部170は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。
図2は、信号処理部110の構成をより詳細に示すブロック図である。信号処理部110は、図2に示すように、テスト音生成部111と、解析部112と、音場生成部113と、補正部114とを備える。
テスト音生成部111は、上述した第1の処理に対応する手段であり、テスト音を発生させるためのものである。テスト音生成部111は、聴取者による操作に応じて、テスト音を表すオーディオ信号(以下「テスト音信号」という。)を供給する。本実施形態において、テスト音は、音圧レベルがあらかじめ決められたインパルス音(時間的な幅をできるだけ短くした音)である。
解析部112は、上述した第2の処理に対応する手段であり、放音されたテスト音を収音して得られる音(以下「測定音」という。)を解析するものである。解析部112は、本発明に係る特定手段の一例に相当するものである。解析部112は、測定音を表す測定信号を取得し、テスト音に対する再生環境の応答を解析する。具体的には、解析部112は、まず、測定信号により表される測定音の音圧レベルに基づき、テスト音に対する直接音とその音圧レベルを特定する。次に、解析部112は、直接音の収音タイミングに応じて反射音を探索する期間(以下「探索期間」という。)を特定し、この探索期間において、音圧レベルが最大である反射音を特定する。さらに、解析部112は、探索期間において特定した反射音の音圧レベルの直接音の音圧レベルに対する比率を算出し、これを補正部114による補正の係数として記憶部150に記憶させる。以下においては、このとき解析部112によって算出される係数を「b」という。係数bは、本発明に係る第1の係数の一例に相当するものである。
ここにおいて、直接音とは、測定音のうち、再生環境の構成物(壁等)による反射を受けることなく収音された音をいう。また、反射音とは、測定音のうち、再生環境の構成物による反射を受けて収音された音をいう。換言すれば、反射音は、テスト音の収音結果のうち、直接音以外の音であるともいえる。なお、反射音は、音の到達が直接的ではなく間接的であるという意味で、間接音ともいう。つまり、反射音は、直接音よりも時間的に遅れて到達し、収音される音である。
図3は、直接音及び反射音を説明するための図であり、正方形の壁に囲まれた再生環境を上方から示した模式図である。図3において、点Pは、受音点であるとする。また、点P1及びP2は、スピーカが設置された位置であるとする。直接音は、点P1及びP2から受音点Pに向かい、図中に実線の矢印で示したように到達する音である。つまり、直接音は、点P1及びP2から放音され、受音点Pで収音される音のうち、受音点Pに最も早く到達する音である。一方、反射音は、図中に破線の矢印で示したように、再生環境の構成物でいったん反射してから受音点Pに到達する音である。
なお、反射音は、図3に示したものに限らず、実際には無数に存在する。また、反射音には、壁を反射するものだけではなく、天井や床を反射するものも含まれる。さらに、反射音には、再生環境の構成物に複数回反射した音も含まれる。
また、本実施形態において、探索期間は、直接音が収音されたタイミングから15ms(ミリ秒)後を始期とし、50ms後を終期とする期間であるとする。探索期間は、以下の複数の要素を総合的に考慮して定められている。
第一に、人間の聴覚は、異なる2つの音を区別するためには、各音に少なくとも30ms程度の時間差が必要であるとされている。つまり、人間は、2つの音が極めて短い間隔で放音されているときには、これらを正確には区別できないということである。よって、本実施形態の探索期間は、このような聴覚的に直接音と区別できない期間を除外するために、直接音の収音タイミング直後を含まないものとしている。
第二に、室内の初期反射音は、直接音の収音後から50〜100ms程度までとされているのが一般的である。それ以降の反射音、すなわち後期残響音は、幾度も反射を繰り返した多数の反射音が複雑に混ざり合って構成されており、反射に伴う減衰の影響を受けて音圧レベルが小さく、時間変化が平坦化している。そのため、初期反射音のように一つ一つを区別できる音にはなっていないのが一般的である。よって、本実施形態の探索期間は、後期残響音を特定の対象から除外するために適当な終期を定めることとしている。
第三に、直接音の直後の反射音は、一次反射音(反射が1回だけの反射音)が支配的である。一次反射音は、再生環境の特徴を良く表すものであるが、(反射する構成物の相違に起因する)各音の音圧レベル差も顕著であり、音毎に大きく上下する。他の反射音よりも突出して大きな反射音があった場合、このような反射音は、再生環境の全体としての特徴を表しているとはいえないことがある。そこで、本実施形態の探索期間は、かかる反射音の判定結果への影響を緩和するために、直接音の収音タイミング直後を含まないものとしている。
第四に、音場効果音を付与するに当たり、反射音の再生開始のために設定されている遅延は、多くのモードで15〜35msである。この時刻から数十msの期間に再生される音場効果音は付与する効果の特徴を良く表しており、同時刻に発生している直接音の再生環境での反射は音場効果に対する影響が大きい。したがって、15〜35ms以降の期間を探索期間に含めるものとしている。本実施形態の探索期間は、このような経験的に得られている一般的な事実をあわせて考慮したものである。
なお、解析部112は、探索期間を聴取者の操作などに応じて異ならせることも可能である。例えば、音場制御装置100によって付与可能な音場効果のモードが複数ある場合、解析部112は、かかるモードに応じた探索期間をそれぞれ設定するようにしてもよい。また、再生環境の空間の大きさやスピーカと視聴者の間の距離などの情報をもとに初期反射と後部残響の期間を推定することで、より試聴環境に最適化された探索期間を定めることもできる。このようにすれば、解析部112は、本発明に係る設定手段を実現することができる。また、このとき解析部112は、探索期間の長さを変えずに、時期だけをずらしてもよいし、探索期間の長さ自体を変えてもよい。
音場生成部113は、上述した第3の処理に対応する手段であり、入力信号に基づいて効果音信号を生成するものである。音場生成部113は、記憶部150に記憶された効果音情報を用いて効果音信号を生成する。記憶部150は、音場効果に複数のモードがある場合、それぞれのモードに対応した効果音情報を記憶している。この場合、音場生成部113は、聴取者により選択されているモードに応じた効果音情報を記憶部150から読み出し、効果音信号を生成する。音場生成部113は、例えば、仮想音源を実現するための遅延や音量調整などを適宜実行することにより、さまざまな音場効果を実現する。なお、効果音情報は、基準の再生環境に基づいてあらかじめ決められているものである。
補正部114は、上述した第4の処理に対応する手段であり、音場生成部113によって生成された効果音信号を解析部112による解析結果に応じて補正するものである。補正部114は、記憶部150に記憶された係数a及びbを用いて補正を行う。具体的には、補正部114は、係数aの係数bに対する比率(a/b)の平方根を補正係数として用いて、効果音信号をこの補正係数に応じた補正量で補正する処理を実行する。
ここにおいて、係数bは、上述したとおり、探索期間において特定した反射音の音圧レベルの直接音の音圧レベルに対する比率である。すなわち、係数bは、聴取者の実際の再生環境に応じて変化する値であり、0<b<1を満たす。一方、係数aは、同様の比率を基準の再生環境において求めた値であり、基準の再生環境における直接音の音圧レベルに対する反射音の最大音圧レベルの比率を表すものである。係数aは、基準の再生環境においてテスト音を実際に発生させ、これを収音した測定音を解析することによって求められてもよいが、シミュレーション等によって得られる音圧レベルの想定値によって決められていてもよい。係数aは、0≦a<1を満たす値である。
オーディオシステム10の構成は、以上のとおりである。聴取者は、かかる構成のオーディオシステム10を所定の再生環境において用いて、再生装置200により再生されるコンテンツ(映画、音楽等)を視聴する。視聴者は、コンテンツの視聴に先立ち、所定の操作を行うことにより、テスト音の放音及び収音をオーディオシステム10に行わせる。このとき、視聴者は、マイク300を受音点に設置し、テスト音を発生させるための操作を音場制御装置100に対して行う。音場制御装置100は、この操作に応じてテスト音信号を生成し、スピーカ装置400にテスト音を放音させる。また、音場制御装置100は、このように放音されたテスト音を収音して得られる測定信号をマイク300から取得し、係数bを算出する。なお、テスト音の放音及び収音は、再生環境が変わらないのであれば、1回行えば十分である。よって、聴取者は、これらの操作を、コンテンツを視聴する毎に行う必要はない。
図4は、測定信号の一例を示す図である。図4において、縦軸は音圧レベルを表し、横軸は時間を表している。また、この例において、時間t0において出現しているのが直接音に相当する信号であり、時間t1〜t2が探索期間であるとする。
このような測定信号が取得された場合、音場制御装置100は、探索期間内で最大となる音圧レベルを特定し、係数bを算出する。例えば、図4に示すように、直接音の音圧レベルがL0であり、特定した反射音の音圧レベルがLmaxである場合であれば、係数bはL0/Lmaxである。
なお、音場制御装置100は、探索期間外の反射音については、その音圧レベルを考慮しない。よって、音場制御装置100は、探索期間後の測定信号については、音圧レベルの比較などを行わなくてよい。換言すれば、解析部112は、探索期間の終了後は、測定信号の解析をそれ以上行わなくてもよいということである。また、音場制御装置100は、上述したLmaxよりも大きな値が探索期間外の測定信号にあったとしても、これを係数bの算出には考慮しなくてよい。
このようにして係数bを算出し、これを記憶部150に記憶させると、音場制御装置100は、この係数bを用いて音場効果音を補正する。補正係数は、上述したとおり、a/bの平方根である。よって、音場制御装置100は、係数aが一定の場合、係数bが小さいほど音場効果音を強める(大きくする)ように補正し、係数bが大きいほど音場効果音を弱める(小さくする)ように補正する。ここにおいて、係数bは、直接音の音圧レベルL0が一定の場合、反射音の音圧レベルLmaxが大きいほど小さい値になる。したがって、音場制御装置100による補正は、聴取者の再生環境における反射音が大きいほど音場効果音を強める方向に作用するものになる。
以上のとおり、音場制御装置100による補正は、聴取者の再生環境における反射音の大きさ(音圧レベル)に応じて変化するものであり、反射音が大きいほど補正の作用を強めるものである。すなわち、音場制御装置100による補正は、聴取者の再生環境における反射音が音場効果の付与に対してどの程度妨げとなっているかを数値化し、その妨げの度合いが大きければ音場効果音も大きくなるようにするものである。かかる補正により、聴取者は、音場効果に対する妨げの度合いとの比率が同程度になるような音場効果音を聴取することが可能になる。
[変形例]
本発明は、上述した実施形態の態様に限定されず、以下に例示するような他の態様によっても実施可能である。また、本発明は、以下の変形例を組み合わせた態様でも実施可能である。
(変形例1)
解析部112は、探索期間において、音圧レベルが最大であるものを含む複数の反射音を特定する構成であってもよい。すなわち、解析部112は、探索期間において、音圧レベルが他よりも大きい1以上の反射音を特定すればよい。また、解析部112は、例えば、音圧レベルが最大である反射音と、音圧レベルが当該反射音に次ぐ1つの反射音とを特定する場合(すなわち2つの反射音を特定する場合)、これらを1つの探索期間から特定するようにしてもよいし、探索期間を2つの期間に分割し、分割したそれぞれの期間から音圧レベルが最大の反射音をそれぞれ特定するようにしてもよい。このようにすれば、他の反射音よりも突出して大きな反射音が探索期間内にあった場合に、その反射音による(過剰気味な)補正の作用を緩和することが可能になる。なお、探索期間を2つの期間に分割する場合、それぞれの期間は、時間的に連続していなくてもよい。
複数の反射音を特定する場合、解析部112は、係数bを算出するに当たり、特定した複数の反射音の音圧レベルを組み合わせて用いる。また、補正部114は、このようにして組み合わせて算出された係数bを効果音信号の補正に用いる。係数bを組み合わせる方法は、例えば、複数の係数bを平均して1つの値にするものや、複数の係数bのそれぞれについて比率(a/b)を算出し、算出した複数の比率を平均して1つの値にするものが考えられる。この場合の平均は、相加平均、相乗平均、一般化平均(二乗平均平方根等)のいずれであってもよい。
また、係数bを組み合わせる方法には、重み付け平均が用いられてもよい。この場合、重み付けは、反射に伴うエネルギー(音響エネルギー)の減衰を考慮し、直接音から遅れて収音された反射音ほど大きな重みを与えるものであってもよいし、収音された時間によらずに、それぞれの反射音の音圧レベルの大小に応じて重みを与えるものであってもよい。
(変形例2)
本発明に係るテスト音は、測定信号としてインパルス応答が得られるようなものであれば、インパルス音に限定されない。例えば、テスト音信号は、TSP(Time Stretched Pulse)信号、チャープ信号、M系列信号などであってもよい。このような信号をテスト音信号に用いる場合、解析部112は、測定信号からインパルス応答を計算して算出する処理を最初に実行し、このインパルス応答に基づいて直接音や反射音の音圧レベルと特定するようにすれば、上述した実施形態と同様の解析を行うことが可能である。
(変形例3)
上述した実施形態において、補正係数、すなわち係数aの係数bに対する比率(a/b)の平方根は、0以上のあらゆる値をとり得る。そうすると、補正係数は、場合によっては、極端に大きな値になったり、あるいは極端に小さな値になったりすることがある。この場合、音場効果の補正が強すぎたり、あるいは弱すぎたりする可能性がある。そこで、補正部114は、効果音信号の補正に際し、補正係数の値に上限又は下限を設けてもよい。このようにすれば、音場効果の補正の範囲を制限し、入力信号に対する効果音信号の音量のバランスが崩れることを抑制することが可能である。
(変形例4)
本発明は、マルチチャネルの再生系に適用可能である。また、基準の再生環境におけるチャネル数(すなわちスピーカの数)と実際の再生環境におけるチャネル数とは、同一でなくてもよい。例えば、チャネル数は、基準の再生環境において「5」であり、実際の再生環境において「4」であってもよい。このような場合には、係数aは、スピーカ毎に、すなわち基準の再生環境におけるチャネル毎に異なる値であってもよい。同様に、係数bも、実際の再生環境におけるチャネル毎に異なる値であってもよい。
係数aや係数bが複数ある場合、補正部114は、それぞれのチャネル毎に応じた係数を用いて補正を行ってもよいが、係数a又はbの代表値を算出し、複数のチャネルに同じ値を用いてもよい。ここにおいて、代表値は、例えば平均値や中央値である。また、補正部114は、係数a及びbの一方のみ代表値を用い、他方はチャネル毎の値を用いて補正係数を算出してもよい。なお、代表値の算出は、補正部114が実行するのではなく、制御部170が記憶部150から係数aや係数bを読み出して実行するものであってもよい。
例えば、上述したように、基準の再生環境におけるチャネル数が「5」であり、実際の再生環境におけるチャネル数が「4」である場合であれば、補正部114は、5つの係数aから1つの代表値を算出し、これを4つの係数bでそれぞれ除することにより、実際の再生環境に応じた各チャネル分の補正係数を算出するようにしてもよい。また、実際の再生環境におけるチャネル数が「4」である場合において、聴取者のフロント側に左右1つずつのスピーカと、聴取者のリア側に左右1つずつのスピーカとがあり、これらが左右対称に配置されている場合であれば、補正部114は、フロント側の左右のスピーカに同一の係数a及びbを用い、リア側の左右のスピーカに(フロント側と異なる)同一の係数a及びbを用いて補正係数を算出することも可能である。
(変形例5)
補正部114は、音場生成部113の後段ではなく、前段にあってもよい。この場合、補正部114は、音場生成部113に入力される入力信号をあらかじめ補正することにより、結果的に、音場生成部113から出力される効果音信号を補正することが可能である。例えば、上述した変形例3のようなマルチチャネルの場合においても、係数a及びbの双方に代表値を用いる場合であれば、補正部114を音場生成部113の前段に設けることが可能である。
(変形例6)
本発明に係る音場制御装置は、その一部又は全部をソフトウェアによって実現することも可能である。例えば、上述した解析部112に相当する構成は、DSPによって実現されるのではなく、CPUによって、すなわち制御部170の一機能として実現されてもよい。
10…オーディオシステム、100…音場制御装置、110…信号処理部、111…テスト音生成部、112…解析部、113…音場生成部、114…補正部、120…入力部、130…取得部、140…出力部、150…記憶部、160…UI部、170…制御部、200…再生装置、300…マイクロホン(マイク)、400…スピーカ装置

Claims (4)

  1. オーディオ信号を入力する入力手段と、
    前記オーディオ信号に対して音場効果音を付与するための効果音信号を生成する音場生成手段と、
    再生環境において放音されたテスト音を収音したときの直接音及び反射音の音圧レベルを表す測定信号を取得する取得手段と、
    前記取得手段により取得された測定信号から、直接音の収音タイミング後の定められた期間において、音圧レベルが最大である反射音を特定する特定手段と、
    前記直接音の音圧レベルに対する前記特定手段により特定された反射音の音圧レベルの比率に基づいて、前記音場生成手段により生成される効果音信号を補正する補正手段と、
    前記入力手段により入力されたオーディオ信号と前記補正手段により補正された効果音信号とを出力する出力手段と
    を備えることを特徴とする音場制御装置。
  2. 前記特定手段は、
    前記期間において、音圧レベルが最大である反射音と、音圧レベルが当該反射音に次ぐ1以上の反射音とを特定し、
    前記補正手段は、
    前記特定手段により特定された複数の反射音の音圧レベルを組み合わせて用いて前記効果音信号を補正する
    ことを特徴とする請求項1に記載の音場制御装置。
  3. 前記補正手段は、
    前記比率を第1の係数とし、前記再生環境とは異なる再生環境において収音ないし想定される直接音と反射音の音圧レベルの比率を第2の係数とした場合に、前記第1の係数に対する前記第2の係数の比率を用いて前記効果音信号を補正する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音場制御装置。
  4. 前記期間を設定する設定手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の音場制御装置。
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