JP2011216827A - 配線形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハを放置した場合であっても、そのシリコンウェハ上に、その表面の平滑性を損なうことなく、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成する。
【解決手段】表面に酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成する場合に、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去することにより、シリコンウェハ10表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させ、その後、有機汚染層12が除去された酸化膜11上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインク22によって配線を印刷する。
【選択図】図3

Description

本発明は、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハ上に配線を形成する配線形成方法に関し、特に、シリコンウェハ上に印刷によって配線を形成する配線形成方法に関する。
従来より、様々な電子機器等に用いられている電子基板や半導体基板においては、シリコンウェハ上に導電性材料からなる配線が形成され、その配線に接続されるように電子部品や半導体部品が搭載されて構成されている。このように、シリコンウェハ上に配線を形成する場合、一般的に、シリコンウェハの全面に導電性材料を積層し、この導電性材料のうち配線となる領域以外の部分をエッチングによって除去することが行われている。
近年、非接触型ICカード等のRF−IDメディアにおいては、樹脂や紙等からなる基板上に印刷によってアンテナを形成することが行われている。そこで、上述したような電子基板や半導体基板においても、印刷によって配線を形成することが考えられる。このように印刷によって配線を形成する場合、導電性材料を含むインクを用いることになるが、導電性材料を含むインクの中でもβ−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いることが好ましい。β−ケトカルボン酸銀を含むインクは、基板上に印刷された場合に薄い銀被膜を構成するため、銀ナノインク等に比べて薄い状態においても抵抗値が低く、また、特許文献1に開示されているように、低温〜室温において安定に保存が可能であることにより、低温下にて保存した場合であってもその後安定した印刷を行うことができる。
ところで、上述したようなシリコンウェハ上に配線を形成する場合は、絶縁性を向上させるためにシリコンウェハの表面に酸化膜を形成し、その上に配線を形成することになるが、酸化膜は、放置しておくとその表面に有機汚染層が成長されていくため、製造工程によっては、酸化膜上に有機汚染層が成長したシリコンウェハ上に印刷によって配線を形成することになる。
しかしながら、酸化膜上に成長した有機汚染層上では、上述したβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性が悪いため、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いて配線を印刷した場合、有機汚染層上でインクがはじかれたり滲んだりしてしまい、微細な配線を形成することが困難となってしまう。
ここで、シリコンウェハ上に溝を形成し、その溝内にインクを充填することにより、シリコンウェハ上にインクを定着させる技術が考えられており、特許文献2に開示されている。この技術を用いれば、シリコンウェハの表面が、インクが定着しにくい状態となっていても、シリコンウェハ上にインクを定着させることができるようになる。
特開2009−114232号公報 特開平10−68810号公報
しかしながら、上述したようにシリコンウェハ上に溝を形成し、その溝内にインクを充填することにより、シリコンウェハ上にインクを定着させるものにおいては、インクが充填されるために十分な大きさを有する溝を形成する必要があり、そのため、シリコンウェハ表面の平滑性が損なわれてしまうという問題点がある。
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハを放置した場合であっても、そのシリコンウェハ上に、その表面の平滑性を損なうことなく、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成することができる配線形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、
表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハ上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成する配線形成方法であって、
前記酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することにより、前記シリコンウェハ表面における前記β−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させる表面改質処理と、
前記有機汚染層が除去された前記酸化膜上に、前記β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって前記配線を印刷する配線印刷処理と、
前記配線が印刷された前記シリコンウェハを加熱する加熱処理とを有する。
上記のように構成された本発明においては、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハ上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成する場合、まず、酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することにより、シリコンウェハ表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させる表面改質処理を行い、その後、有機汚染層が除去された酸化膜上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって配線を印刷する配線印刷処理を行う。シリコンウェハの表面に形成された酸化膜は、シリコンウェハが放置されることによってその表面に有機汚染層が成長しており、この有機汚染層上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷を施した場合、酸化膜上に成長した有機汚染層上では、β−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性が悪いため、有機汚染層上でインクがはじかれたり滲んだりしてしまう。そのため、表面改質処理において、酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することにより、酸化膜が形成されたシリコンウェハ表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させ、その後、酸化膜上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって配線を印刷し、配線が印刷されたシリコンウェハを加熱する加熱処理を行うことにより、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハ上に配線を形成する。
このように、シリコンウェハ上に形成された酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することによってシリコンウェハ表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させてから、酸化膜上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって配線を印刷するので、シリコンウェハが放置されることによってその表面に有機汚染層が成長している場合であっても、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハの表面に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクが定着しやすくなって印刷によって配線を形成することができ、その際、表面の平滑性が損なわれることがない。
また、配線が形成される領域のみに表面改質処理を行えば、表面改質処理を行う領域の面積を縮小することができるとともに、その領域のみにおいてインクの定着性が向上し、それにより、配線を形成しない領域にインクが付着しにくくなる。
以上説明したように本発明においては、シリコンウェハ上に形成された酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することによってシリコンウェハ表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させた後、酸化膜上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって配線を印刷する構成としたため、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハの表面に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクが定着しやすくなった状態で印刷によって配線が形成されることとなり、それにより、表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハを放置することによって酸化膜上に有機汚染層が成長している場合であっても、そのシリコンウェハ上に、その表面の平滑性を損なうことなく、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成することができる。
また、配線が形成される領域のみに表面改質処理を行うものにおいては、表面改質処理を行う領域の面積を縮小することができるとともに、その領域のみにおいてインクの定着性が向上し、それにより、配線を形成しない領域にインクを付着しにくくすることができる。
本発明の配線形成方法によって製造された配線基板の実施の一形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図である。 図1に示した配線基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図1に示した配線基板にて配線が形成されていく状態を示す図である。 図2に示した製造方法による効果を説明するための図であり、(a)は表面改質処理を行わずに配線を形成した場合の表面図、(b)は表面改質処理を行った後に配線を形成した場合の表面図である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の配線形成方法によって製造された配線基板の実施の一形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図である。
本形態における配線基板は図1に示すように、シリコンウェハ10上に複数の配線20が形成されて構成されており、この配線20上に半導体材料が搭載または塗布されることにより半導体回路が形成される。シリコンウェハ10の配線20が形成される側の表面には、絶縁性を高めるために酸化膜11が形成されており、配線20は、この酸化膜11上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって形成されている。なお、酸化膜11の厚さは、例えば300nm程度であり、配線20の厚さは、例えば300nm以下程度である。
以下に、上記のように構成された配線基板1の製造方法、すなわち、配線基板1における配線20の形成方法について説明する。
図2は、図1に示した配線基板1の製造方法を説明するためのフローチャートであり、図3は、図1に示した配線基板1にて配線20が形成されていく状態を示す図である。
図1に示した配線基板1を製造する場合は、まず、表面に酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10の酸化膜11が形成された面をIPA(イソプロピルアルコール)で拭く(ステップS1)。ここで、シリコンウェハ10の表面に形成された酸化膜11においては、シリコンウェハ10を放置しておくとその表面に有機汚染層12が成長されていく。そのため、表面に酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10は、図3(a)に示すように、放置されることによって酸化膜11の表面が有機汚染層12によって覆われた状態となっている。この有機汚染層12上においては、β−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性が悪いため、この状態のまま、酸化膜11上にβ−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いて配線を印刷した場合、有機汚染層12上でインクがはじかれたり滲んだりしてしまい、微細な配線を形成することが困難となってしまう。
そこで、シリコンウェハ10の酸化膜11が形成された側の表面をIPAで拭くと、図3(b)に示すように、酸化膜11上に成長した有機汚染層12が除去される。
次に、シリコンウェハ10を加熱し、酸化膜11の表面に付着したIPAを除去する(ステップS2)。このように、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去することによって、シリコンウェハ10表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させる。このステップS1〜S2の処理が、本願発明における表面改質処理となる。
このようにして、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去することによって濡れ性が向上したシリコンウェハ10に対して、酸化膜11上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインク22を用いて配線20を印刷する(ステップS3)。このステップS3の処理が、本願発明における配線印刷処理となる。配線20が印刷される酸化膜11は、その表面に有機汚染層12が存在していないため、酸化膜11の表面にβ−ケトカルボン酸銀を含むインク22を用いた印刷が施されると、図3(c)に示すように、インク22が酸化膜11の表面に定着しやすくなる。なお、この配線印刷処理においては、シリコンウェハ10の表面に形成された酸化膜11上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインク22を塗布することができるものであれば、その印刷方法は特に限定されず、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法等が挙げられ、インクジェット印刷法が好ましい。
その後、配線20が印刷されたシリコンウェハ10を加熱することによって焼成し、シリコンウェハ10上に配線20を形成する(ステップS4)。このステップS4の処理が、本願発明における加熱処理となる。なお、この加熱処理は、例えば80℃以上200℃以下、好ましくは80℃以上150℃以下、より好ましくは140℃で行うことが考えられる。
図4は、図2に示した製造方法による効果を説明するための図であり、(a)は表面改質処理を行わずに配線20を形成した場合の表面図、(b)は表面改質処理を行った後に配線20を形成した場合の表面図である。なお、図4に示した写真は、図1に示した配線20の一部を拡大して撮影したものである。
図1に示した配線基板1について、上述したような表面改質処理を行わずにシリコンウェハ10上に配線20を形成した場合は、図4(a)に示すように、シリコンウェハ10上において、β−ケトカルボン酸銀を含むインクがはじかれ、配線20が断線した状態となって正しく形成されなくなってしまう。
一方、図1に示した配線基板1について、上述したような表面改質処理を行った後にシリコンウェハ10上に配線20を形成した場合は、図4(b)に示すように、シリコンウェハ10上において、β−ケトカルボン酸銀を含むインクがはじかれることなく定着し、配線20が正しく形成されることになる。そのため、配線20の幅が微細なものであっても、断線することなく配線20を形成することができる。
このように、本形態においては、シリコンウェハ10の表面に形成された酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去することによって、シリコンウェハ10表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させ、その後、酸化膜11上にβ−ケトカルボン酸銀を含むインク22によって配線20を印刷するので、表面に酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインク22が定着しやすくなって印刷によって配線20を形成することができる。そして、このようにして製造された配線基板1においては、溝等が形成されていないため、表面の平滑性が損なわれることがない。
ここで、配線20を形成するために用いられるインク22について詳細に説明する。
配線20を形成するために用いられるインク22としては、下記式(I)で表されるβ−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物とを含むインクを用いることが考えられる。
Figure 2011216827
このインクにおいて、Rが直鎖の飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基またはR1−CY2−(Yは水素原子)であり、Xは互いに異なり、それぞれが水素原子と、直鎖の飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基またはベンジル基とであるのが好ましい。
また、上記インクにおいて、孤立電子対を有する化合物が、アミン化合物、チオール化合物及びリン化合物からなる群から選択される1以上であるのが好ましい。
また、配線20を形成するために用いられるインクは、さらに溶剤を含むのが好ましく、溶剤が、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素及び水からなる群から選択される1以上であるのが好ましい。
また、インク調整用キットとしては、上記式(I)において、Rは、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基、R1−CY2−、CY3−、R1−CHY−、R2O−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、R54N−、水酸基、アミノ基、または、(R3O)2CY−である。
ただし、Yは、同一または異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子であり、R1は直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基であり、R2は、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基であり、R3は、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C16脂肪族炭化水素基であり、R4及びR5は、同一であるかまたは異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C18脂肪族炭化水素基である。
上記式(I)において、Xは、同一または異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基、R6O−、R6S−、R6−CO−、R6−CO−O−、ハロゲン、ベンジル基、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基である。
ただし、R6は、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。
Rが直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基である場合、Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。また、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基は、1以上の水素基が、フッ素原子、塩素原子または臭素原子に置換されてもよい。
Rが、置換されたフェニル基である場合、その置換基としては、R3−、R3O−、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等があげられ、フェニル基のo、m、pのいずれが置換されてもよい。
RにおけるYは、同一または異なってもよく、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子である。
RにおけるR1は、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基である。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜19の整数)で表される基であってもよい。
2は、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。
3は、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C16脂肪族炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜16の整数)で表される基であってもよい。
4及びR5は、同一または異ってもよく、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C18脂肪族炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜18の整数)で表される基であってもよい。
上記式(I)において、Xは、同一でも異なってもよく、水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基、R6O−、R6S−、R6-CO−、R6-CO−O−、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ベンジル基、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル−3−アミノプロピル基、2-エトキシビニル基(C25-O-CH=CH-)である。ただし、R6は、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。
Xが、置換されたフェニル基、ベンジル基もしくはジフェニル基の場合、その置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基等があげられ、o,m,pのいずれが置換されてもよい。
Xが、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基である場合、Xとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜20の整数)で表される基であってもよい。
XのR6O−、R6S−、R6-CO−、R6-CO−O−において、R6としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、例えば、−Cn2n+1、−Cn2n-1、または−Cn2n-3(nは1〜10の整数)で表される基であってもよい。また、R6は、前述のように、チオフェニル基、フェニル基、ジフェニル基、または、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基であってもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)等があげられ、o,m,pのいずれが置換されてもよい。
また、上記式(I)において、一方のXには、基が結合しておらず、他方のXのみに、=CH−C64−NO2が結合した構造であってもよい。
なお、上記式(I)において、「アルキル基」とは、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等が挙げられ、「アルケニル基」とは、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基等が挙げられる。また、「アルキニル基」とは、特に限定されないが、例えば、エチニル基及びプロパルギル基等が挙げられ、「シクロアルキル基」とは、特に限定されないが、例えば、シクロペンチル基及びシクロへキシル基等が挙げられ、「シクロアルケニル基」とは、特に限定されないが、例えば、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基及びシクロペンタジエニル基等が挙げられる。また、上記式(I)において、各種炭化水素基は、1以上の水素基が、フッ素原子、塩素原子または臭素原子に置換されてもよい。
上記インクにおいて、上述したように、上記式(I)において、Rが直鎖の飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基であり、Xは互いに異なり、それぞれが水素原子と、直鎖の飽和C1〜C20脂肪族炭化水素基またはベンジル基とであるのが好ましく、Rが直鎖の飽和C1〜C6脂肪族炭化水素基であり、Xは互いに異なり、それぞれが水素原子と、直鎖の飽和C1〜C6脂肪族炭化水素基またはベンジル基であるのがより好ましい。
上記インクにおいて、上記式(I)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、アセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、α−エチルアセト酢酸銀及びα−n−ブチルアセト酢酸銀が好ましい。上記式(I)で表される化合物の中でも、これらのβ−ケトカルボン酸銀は、焼結により金属銀への分解を行った際に、得られる金属銀に残存する原料や不純物の濃度を十分に低減できることから特に好ましい。相対的に不純物が少ない金属銀である程、例えば、さらに、相対的に析出する銀どうしの接触が良くなり、導通がし易くなり、抵抗率が下がるという効果に優れた性質となる。
本発明の配線形成方法にて用いられるインク22に含有される孤立電子対を有する化合物は、上述したように、アミン化合物、チオール化合物及びリン化合物からなる群から選択される1以上であるのが好ましい。
孤立電子対を有する化合物のうち、アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、4級アミン塩化合物及び環状アミン化合物が挙げられる。
1級アミンとしては、モノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(シクロアルキル)アミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、置換されたモノアルキルアミン、置換されたモノアリールアミン、置換されたモノシクロアルキルアミン、置換されたモノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
モノアルキルアミンとしては、例えばモノC1-19アルキルアミンが挙げられる。モノアルキルアミンとしては、プロピルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、t−ブチルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)が好ましく、プロピルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、t−ブチルアミンがより好ましい。
モノアリールアミンとしては、例えば、モノC6-10アリールアミンが挙げられる。
モノ(シクロアルキル)アミンとしては、例えば、モノC3-7シクロアルキルアミンが挙げられる。モノ(シクロアルキル)アミンとしては、シクロヘキシルアミンが好ましい。
モノ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種類以上の原子を1以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含むモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
置換されたモノアルキルアミンの置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。また、置換されたモノアリールアミンの置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。置換されたモノシクロアルキルアミン、置換されたモノ(ヘテロアリール)アミン等の置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
置換されたモノアルキルアミンとしては、例えばアリール基で置換されたモノC1-9アルキルアミンが挙げられる。置換されたモノアルキルアミンとしては、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミンが好ましく、2−フェニルエチルアミンがより好ましい。
置換されたモノアリールアミンとしては、例えば、臭素原子で置換されたモノC6-10アリールアミンが挙げられる。置換されたモノアリールアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが好ましい。
置換されたモノ(シクロアルキル)アミンとしては、例えば、C1-5アルキルで置換されたモノC3-7シクロアルキルアミンが挙げられる。置換されたモノ(シクロアルキル)アミンとしては、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。
置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種類以上の原子を1以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含む置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、C1-10アルキレンジアミンが挙げられる。ジアミンとしては、エチレンジアミンが好ましい。
2級アミンとしては、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、ジ(ヘテロアリール)アミン、置換されたジアルキルアミン、置換されたジアリールアミン、置換されたジシクロアルキルアミン、置換されたジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
ジアルキルアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1-9アルキルを含むジC1-9アルキルアミンが挙げられる。ジアルキルアミンとしては、メチルヘキシルアミンが好ましい。
ジアリールアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6-10アリールを含むジC6-10アリールアミンが挙げられる。
ジ(シクロアルキル)アミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC3-7シクロアルキルを含むジC3-7シクロアルキルアミンが挙げられる。
ジ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種類以上の原子を1以上含む、6〜12員の、互いに同一または異なっていてもよいヘテロアリール基を含むジ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
置換されたジアルキルアミンの置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。また、置換されたジアリールアミンの置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。置換されたジシクロアルキルアミン、置換されたジ(ヘテロアリール)アミン等の置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
置換されたジアルキルアミンとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい、水酸基で置換されたC1-9アルキルを含むジC1-9アルキルアミンが挙げられる。置換されたジアルキルアミンとしては、ジエタノールアミン、メチルベンジルアミン等が好ましい。
置換されたジ(ヘテロアリール)アミンとしては、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種類以上の原子を1以上含む、6〜12員のヘテロアリール基を含む置換されたモノ(ヘテロアリール)アミンが挙げられる。
3級アミンとしては、トリアルキルアミン、モノアリールジアルキルアミン、モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミン等が挙げられる。
トリアルキルアミンとしては、例えばトリ(C1-19アルキル)アミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、ジメチルオクタデシルアミン等が好ましい。
モノアリールジアルキルアミンとしては、例えばモノC6-10アリールジ(C1-6アルキル)アミンが挙げられる。
モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミンとしては、例えばモノ(C3-7シクロアルキル)ジ(C1-6アルキル)アミンが挙げられる。モノ(シクロアルキル)ジアルキルアミンとしては、ジメチルシクロヘキシルアミン等が好ましい。
4級アミン塩としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物等が挙げられる。
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物としては、例えばテトラ(C1-19アルキル)アンモニウムハロゲン化物が挙げられる。テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムブロミド等が好ましい。
環状アミン化合物としては、ピリジンが好ましい。
孤立電子対を有する化合物のうち、チオール化合物としては、モノアルキルチオール、モノアリールチオール等が挙げられる。
モノアルキルチオールとしては、例えばモノ(C1-19アルキル)チオールが挙げられる。モノアルキルチオールとしては、トデシルチオール等が好ましい。
孤立電子対を有する化合物のうち、リン化合物としては、(アルキル)3P、(アリール)3P、(置換アルキル)3P、(置換アリール)3P、ホスホン酸エステル等が挙げられる。
(アルキル)3Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1-9アルキルを含む(C1-9アルキル)3Pが挙げられる。(C1-9アルキル)3Pとしては、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンが好ましい。
(アリール)3Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6-10アリールを含む(C6-10アリール)3Pが挙げられる。
(置換アルキル)3Pの「置換アルキル」の置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。また、(置換アリール)3Pの「置換アリール」の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
(置換アルキル)3Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C1-9アルキルを含む(置換C1-9アルキル)3Pが挙げられる。(置換C1-9アルキル)3Pとしては、亜リン酸トリブチルが好ましい。
(置換アリール)3Pとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C6-10アリールを含む(置換C6-10アリール)3Pが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、例えば、アルキルホスホン酸ジアルキルエステル、置換アルキルホスホン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。アルキルホスホン酸ジアルキルエステルとしては、C1-6アルキルホスホン酸ジ(C1-6アルキル)エステルが挙げられる。置換アルキルホスホン酸ジアルキルエステルとしては、置換C1-6アルキルホスホン酸ジ(C1-6アルキル)エステルが挙げられ、ジエチルホスホノ酢酸エチルが好ましい。
本発明のインクにおいて、式(I)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物としては1級アミン化合物、リン化合物、2級アミン化合物及びチオール化合物が好ましく、1級アミン化合物、リン化合物がより好ましく、1級アミン化合物がさらに好ましい。
本発明に用いられるインクにおいて、上記式(I)で表わされるβ−カルボン酸銀と孤立電子対を有する化合物との含有率は、β−カルボン酸銀(A)と孤立電子対を有する化合物(B)のモル比(A):(B)として、例えば、1:1.5以上200以下、好ましくは1:2以上200以下、より好ましくは1:3以上200以下である。
本発明に用いられるインクは上述したように、さらに溶剤を含んでもよい。その溶剤としては、上述したようにアルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素及び水からなる群から選択される1以上であるのが好ましい。アルコールとしては、例えば、水酸基を1〜5個有する炭素数1〜9までの脂肪族炭化水素が挙げられる。水酸基を1〜5個有する炭素数1〜9までの脂肪族炭化水素としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナンノール、エチレングリコール、グリセロール等が挙げられる。アルコールとしては、例えば、水酸基を1〜3個有する炭素数1〜5の脂肪族炭化水素が好ましい。水酸基を1〜3個有する炭素数1〜5の脂肪族炭化水素としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセロール等が挙げられる。
ケトンとしては、(アルキル)2C=O、(アルキル)(アリール)C=O、(アリール)2C=O、(置換アルキル)2C=O、(置換アルキル)(アリール)C=O、(アルキル)(置換アリール)C=O、(置換アリール)2C=O、環状ケトン等が挙げられる。
(アルキル)2C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1-9アルキルを含む(C1-9アルキル)2C=Oが挙げられる。(アルキル)2C=Oとしては、2,2−ジメチル−3−ヘキサノンが好ましい。
(アルキル)(アリール)C=Oとしては、(C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=Oが挙げられる。
(アリール)2C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC6-10アリールを含む(C6-10アリール)2C=Oが挙げられる。
(置換アルキル)2C=O及び(置換アルキル)(アリール)C=Oの「置換アルキル」の置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。また、(アルキル)(置換アリール)C=O及び(置換アリール)2C=Oの置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
(置換アルキル)2C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C1-9アルキルを含む(置換C1-9アルキル)2C=Oが挙げられる。
(置換アルキル)(アリール)C=Oとしては、例えば(置換C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=Oが挙げられる。
(アルキル)(置換アリール)C=Oとしては、例えば(C1-9アルキル)(置換C6-10アリール)C=Oが挙げられる。
(置換アリール)2C=Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよい置換C6-10アリールを含む(置換C6-10アリール)2C=Oが挙げられる。
環状ケトンとしては、例えばC4-10シクロアルカノンが挙げられる。環状ケトンとしては、シクロヘキサノンが好ましい。
エステルとしては、例えば、炭素数2〜20のカルボン酸と、炭素数1〜6の脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メチルブチルエステル、ヘキサン酸エチルが好ましい。
エーテルとしては、(アルキル)2O等が挙げられる。(アルキル)2Oとしては、例えば、互いに同一または異なっていてもよいC1-9アルキルを含む(C1-9アルキル)2Oが挙げられる。(アルキル)2Oとしては、ジエチルエーテルが好ましい。
芳香族炭化水素としては、炭素数6〜24の芳香族炭化水素及び置換された炭素数6〜24の芳香族炭化水素が挙げられる。方向族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン等が挙げられ、トルエンが好ましい。
脂肪族炭化水素としては、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素が挙げられる。炭素数1〜9までの脂肪族炭化水素としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、イソオクタン等が挙げられ、イソオクタンが好ましい。
シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素としては、シアノ基またはハロゲン原子で1〜6置換された炭素数1〜9の脂肪族炭化水素が挙げられる。シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素としては、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられ、アセトニトリル、クロロホルムが好ましい。
アリール基で置換されたモノC1-9アルキルアミン、ジC1-9アルキルアミン、(C1-9アルキル)3P、(置換C1-9アルキル)3P、(C1-9アルキル)2C=O、(C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=O、(置換C1-9アルキル)2C=O、(置換C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=O、(C1-9アルキル)(置換C6-10アリール)C=O、(C1-9アルキル)2O等における炭素数1〜9までのアルキル(C1-9アルキル)とは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、sec−ペンチル、t−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、4−エチルペンチル、1,1−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、1,1−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、1−プロピルペンチル、及び2−プロピルペンチル等の直鎖状または分岐状のアルキルであり、好適には炭素数3〜6のものである。
モノC6-10アリールアミン、C6-10アリールアミン、モノC6-10アリールジ(C1-6アルキル)アミン、(C6-10アリール)3P、(置換C6-10アリール)3P、(C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=O、(C6-10アリール)2C=O、(置換C1-9アルキル)(C6-10アリール)C=O、(C1-9アルキル)(置換C6-10アリール)C=O、(置換C6-10アリール)2C=O等における炭素数6〜10のアリール(すなわちC6-10アリール)としては、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
モノC3-7シクロアルキルアミン、ジC3-7シクロアルキルアミン、モノ(C3-7シクロアルキル)ジ(C1-6アルキル)アミン等における炭素数3〜7のシクロアルキル(すなわちC3-7シクロアルキル)としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル等が挙げられ、より好適には炭素数1〜4のもの、シクロプロピル、シクロブチルが挙げられる。
窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種類以上の原子を1以上含む、3〜12員のヘテロアリールとしては、窒素原子1〜4個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル等;酸素原子1個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えばフラニル等;硫黄原子1個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えばチエニル等;酸素原子1〜2個及び窒素原子1〜3個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、モルホリニル等;硫黄原子1または2個及び窒素原子1〜3個を有する3〜8員、好ましくは5または6員の複素単環基、例えば、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル等;窒素原子1〜5個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えばインドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリジル、テトラゾロピリダジニル、ジヒドロトリアゾロピリダジニル等;硫黄原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ジチアナフタレニル、ベンゾチオフェニル等;酸素原子1〜2個及び窒素原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル等;硫黄原子1または2個及び窒素原子1〜3個を有する7〜12員、好ましくは9または10員の縮合複素環基、例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル等;等を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
本発明に用いられるインクは、粘度が例えば0.5mPa・s以上50000mPa・s以下、好ましくは0.5mPa・s以上100mPa・s以下、より好ましくは0.5mPa・s以上20mPa・s以下である。粘度が0.5mPa・s以上16mPa・s以下の範囲にあれば、そのインクを例えばインクジェット方法において好適に用いることが可能である。また、粘度が10mPa・s以上50000mPa・s以下の範囲にあれば、そのインクを例えばグラビア印刷方法において好適に用いることが可能である。なお、粘度は、振動式粘度測定方法により、室温下で測定した。
また、本発明に用いられるインクは、表面張力が例えば5mN/m以上100mN/m以下、好ましくは10mN/m以上80mN/m以下、より好ましくは20mN/m以上60mN/m以下である。表面張力が5mN/m以上100mN/m以下の範囲にあれば、そのインクを例えばインクジェット方法において好適に用いることが可能である。なお、表面張力は、気泡発生時の圧力変化測定方法により、室温下、気泡周波数0.1Hzから10Hzの条件下で測定した。
また、本発明に用いられるインクにおいて、上記式(I)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物が1級アミン化合物、2級アミン化合物である場合、溶剤としては、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、イソオクタン等の低級炭化水素、シアノ基またはハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素が好ましく、アルコール、エーテル、エステル、ケトンがさらに好ましい。また、上記式(I)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀は、孤立電子対を有する化合物がリン化合物である場合、溶剤としては、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトンの様な酸素原子を含む溶媒が好ましく、アルコールがさらに好ましい。
本発明に用いられるインクは、上述したように、印刷時、すなわち印刷に要する時間において十分に安定であるため、安定した印刷が可能である。また、本発明に用いられるインクは、低温〜室温において安定に保存が可能であり、例えば、比較的長期にわたって低温(冷蔵庫等)で保存した後のインクを用い、室温下で安定して印刷することができる。
以下に、上述したようなβ−ケトカルボン酸銀を含むインクについてシリコンウェハ10表面における濡れ性について説明する。なお、濡れ性評価に用いたβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの組成は、βケトカルボン酸銀25質量部、2−エチルヘキシルアミン50質量部、エタノール25質量部を混合したものに、サーフィノール61(揮発性アセチレンアルコール;日信化学工業株式会社製)を1質量部添加したものからなるものである。
まず、シリコンウェハ10表面の極性について説明する。
図1に示したシリコンウェハ10について、上述した表面改質処理を行う前と行った後の接触角を調べたところ、下記表1に示すような結果が得られた。なお、測定機器は、英弘精機株式会社製のOCA H200を使用し、いずれも滴下物を滴下して2秒後の接触角を測定した。
Figure 2011216827
図1に示したシリコンウェハ10に対して上述した表面改質処理を行う前においては、約5μリットルの水滴を垂らした場合、表1の(a)に示すように、その接触角が30度程度であったのに対して、上述した表面改質処理を行った後においては、表1の(b)に示すように、その接触角が50〜60度程度となった。すなわち、図1に示したシリコンウェハ10に対して上述した表面改質処理を行うと、その表面の疎水性が向上することがわかった。この疎水性の変化は、酸化膜11上に成長した有機汚染層12の有無によるものと考えられ、それを実証するために、シリコンウェハ10の表面が表1の(b)に示したような接触角を有するものとなっている状態からシリコンウェハ10を約10時間放置した後に、接触角を再度測定した。
すると、表1の(c)に示すように接触角が小さくなり、すなわち、疎水性が低下して表面改質処理を行う前の状態に近づいていくことがわかった。これにより、シリコンウェハ10を放置した場合、シリコンウェハ10の表面に形成された酸化膜11上に有機汚染層12が成長し、この有機汚染層12の有無によってシリコンウェハ10表面の疎水性が変化することが実証された。
次に、シリコンウェハ10表面におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの極性、すなわち、β−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性について説明する。
上記同様に、図1に示したシリコンウェハ10について、上述した表面改質処理を行う前と行った後において、約5μリットルのβ−ケトカルボン酸銀を含むインクを垂らしてその接触角を調べたところ、下記表2に示すような結果が得られた。
Figure 2011216827
図1に示したシリコンウェハ10に対して約5μリットルのインク滴を垂らした場合、表2(a)に示す表面改質処理を行う前の状態に対して、表2(b)に示す表面改質処理を行った後の状態の方が、接触角が小さくなり、濡れ性が向上していることがわかった。
これは、上述したように、シリコンウェハ10の表面改質処理を行う前においては、シリコンウェハ10の表面に形成された酸化膜11上に有機汚染層12が存在しており、表面改質処理を行った後においては、その有機汚染層12が除去されていることによるものであり、それにより、有機汚染層12上での濡れ性が悪いβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの、シリコンウェハ10の表面における濡れ性が向上することになる。その際、シリコンウェハ10の表面における水の濡れ性は、表1(b)に示したようにその接触角が50〜60度程度となっており、この状態が、β−ケトカルボン酸銀を含むインクにとってその濡れ性が優れたものとなる。
なお、上述した実施の形態においては、酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10の全面をIPAで拭くことによって、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去してシリコンウェハ10の表面全体におけるβ−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させているが、シリコンウェハ10の表面のうち配線20が形成される領域のみをIPAで拭くことによって、その部分のみ酸化膜11上から有機汚染層12を除去して表面改質処理を行うことも考えられる。その場合、配線20が形成される領域のみにおいて、β−ケトカルボン酸銀を含むインクの定着性が向上し、それにより、配線20を形成しない領域にインクを付着しにくくすることができる。
また、上述した例においては、酸化膜11が形成されたシリコンウェハ10の表面をIPAで拭くことによって、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去してシリコンウェハ10表面の表面改質処理を行っているが、IPAではなく、水、アセトン、トルエン、ヘキサン、2−エチルヘキサノールでシリコンウェハ10の表面を拭くことによって、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去してもよい。また、表面改質処理としてこのような溶剤を用いることなく、シリコンウェハ10の表面を拭くことによっても、酸化膜11上に成長した有機汚染層12を除去することができる。ただし、溶剤を用いずに表面改質処理を行う場合は、酸化膜11に付着した溶剤を除去するためにシリコンウェハ10を加熱する処理が不要となる。また、溶剤を用いて表面改質処理を行う場合においても、シリコンウェハ10の表面を溶剤を用いて拭いた後、溶剤が揮発するための十分な時間シリコンウェハを10を放置し、その後に配線20を形成するのであれば、シリコンウェハ10を加熱する必要はない。ただし、シリコンウェハ10を放置しすぎると、酸化膜11上に有機汚染層12が成長されてしまうので、その放置時間は、酸化膜11上に有機汚染層12が成長しない程度のものとする必要がある。
1 配線基板
10 シリコンウェハ
11 酸化膜
12 有機汚染層
20 配線
22 インク

Claims (2)

  1. 表面に酸化膜が形成されたシリコンウェハ上に、β−ケトカルボン酸銀を含むインクを用いた印刷によって配線を形成する配線形成方法であって、
    前記酸化膜上に成長した有機汚染層を除去することにより、前記シリコンウェハ表面における前記β−ケトカルボン酸銀を含むインクの濡れ性を向上させる表面改質処理と、
    前記有機汚染層が除去された前記酸化膜上に、前記β−ケトカルボン酸銀を含むインクによって前記配線を印刷する配線印刷処理と、
    前記配線が印刷された前記シリコンウェハを加熱する加熱処理とを有する配線形成方法。
  2. 請求項1に記載の配線形成方法において、
    前記配線が形成される領域のみに前記表面改質処理を行う配線形成方法。
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