JP2011216360A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 非水電解液二次電池の正極芯体露出部における電解液成分の分解を抑制すあることにより、電池サイクル特性の向上と電池安全性の向上を図る。
【解決手段】 リチウムイオンを吸蔵放出する活物質を備えた正負電極板が、セパレータを介して巻回された渦巻電極体と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池において、正極活物質が塗着されていない正極芯体露出部10・12と、負極板との対向面に位置するセパレータの特定区画30・32のガーレ式透気度が、正極活物質層11と負極活物質層21とが対向する領域に位置するセパレータ一般区画31におけるガーレ式透気度の1.2倍以上に規制され、更に上記非水電解液に過充電防止剤が添加されている。
【選択図】図2
【解決手段】 リチウムイオンを吸蔵放出する活物質を備えた正負電極板が、セパレータを介して巻回された渦巻電極体と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池において、正極活物質が塗着されていない正極芯体露出部10・12と、負極板との対向面に位置するセパレータの特定区画30・32のガーレ式透気度が、正極活物質層11と負極活物質層21とが対向する領域に位置するセパレータ一般区画31におけるガーレ式透気度の1.2倍以上に規制され、更に上記非水電解液に過充電防止剤が添加されている。
【選択図】図2
Description
本発明はリチウムイオンを吸蔵放出する活物質を有する正負電極板がセパレータを介して積層巻回されてなる非水電解液二次電池に関する。
正極活物質としてリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、リチウム含有マンガン酸化物(LiMn2O4)、リチウム含有ニッケル酸化物などのリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出する黒鉛を用いてなる非水電解液二次電池は、高容量、高電圧、高出力な二次電池として、近年、その用途が広がりつつあり、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル型電子機器の分野のみならず、電動工具や電気自動車などの分野においても利用されつつある。
非水電解液二次電池には、非水溶媒を含む非水電解液が用いられており、非水溶媒は、一般に熱分解され易い。よって、十分な安全性対策が必要である。例えば、充電状態にある電池が外部から圧力を受けて押し潰された場合や、電池に釘等の導電体が刺さった場合には、電池に蓄えられたエネルギーが一挙に放出される。高容量、高出力な非水電解液二次電池では、エネルギー蓄積量が大きいので特に十分な安全対策が必要となる。
このため、従来より、正負極が短絡した場合などの異常事態に備えた安全機構が、種々提案されている。特開平8−153542号公報(特許文献1)では、正極活物質層の形成されていない金属芯体露出部と負極活物質層が形成されていない金属芯体露出部とを、セパレータを介して一定の長さに渡って対向させる技術が提案されている。
この技術によると、電池が外部からの圧力で押し潰された場合や、電池に釘などが刺さった場合に、抵抗の小さい正負極の金属芯体同士が先に短絡して、電気エネルギーを速やかに放電するので、短絡による急激な電池温度の上昇を抑制することができ、安全性が高まる。
このような目的以外にも、正負電極板には集電タブを取り付ける必要上から、正負活物質層を形成しない金属芯体露出部が設けられている。
上記した特許文献1に記載の技術は、万が一の非常時に電池の安全性を確保する技術として有用である。本発明者はこの技術について鋭意検討した。その結果、金属芯体を露出させるこの技術には次のような問題点があることを知った。
正極板の金属芯体(以下正極芯体という)には金属製集電タブが接合され、この集電タブが正極外部端子に接合されている。充電時には、外部端子及び集電タブを介して電圧が印加され、正極芯体は正極外部端子とほぼ同じ電位になる。他方、正極活物質層が形成された正極板部分は、正極活物質層の電気抵抗が大きいため、正極芯体露出部よりも電位が低くなる。言い換えると、正極芯体露出部は正極活物質層が形成された部分よりも高電位になるので、正極活物質層が適正に充電されているときには、正極芯体露出部はいわば過充電状態になっている。
このため、通常の充電においても高電位になる正極芯体露出部において、高電位に弱い電解液成分が酸化分解等される。よって、充放電サイクルの進行に伴って電解液の特定成分のみが消費され、電解液組成が当初の好適な組成比と異なった組成比になる。この結果、電解液の電気化学的機能が低下し、電池の放電容量が顕著に低下する。
また、従来より、電解液に過充電防止効果のある添加剤(過充電防止剤)を加える技術が知られている。この技術では、通常よりも高い電位で充電されたときに作用を発現する化合物が選択されるが、上述のように、正極芯体露出部は、活物質層を有する正極部分よりも電位が高くなる。このため、正極芯体露出部においては、通常の充放電サイクルにおいても過充電防止剤が作用することになる。つまり、通常の充放電サイクル中に、過充電防止剤が作用し消費される。よって、過充電防止剤が作用すべき本来的な過充電時に量不足になり十分に作用し得ないという問題が発生する。
また、通常の充放電サイクル中に正極芯体露出部において過充電防止剤が作用し、過充電防止剤の反応物が正極芯体露出部と負極との間に存在するセパレータ内に蓄積される結果、次第に電池電圧が低下する。
本発明は、これらの知見に基づいて完成された。本発明の目的は、正極芯体露出部における電解液成分の分解を抑制することにより、電池サイクル特性を向上させると共に、電池の安全性をも高めることを目的とする。
上記問題を解決する第1の発明は、リチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質が正極芯体に塗着されてなる正極活物質層を有する正極板と、リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質が負極芯体に塗着されてなる負極活物質層を有する負極板とが、セパレータを介して巻回された渦巻電極体と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池において、前記正極板が正極活物質が塗着されていない正極芯体露出部を有し、前記正極芯体露出部と前記負極板との対向面に位置するセパレータの特定区画のガーレ式透気度が、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが対向する領域に位置するセパレータ一般区画におけるガーレ式透気度の1.2倍以上であることを特徴とする。
従来の非水電解液二次電池においては、通常の充電条件においても正極芯体露出部と負極板とが対向する部分において局所的な過充電状態が生まれ、この部分で電解液成分の一部成分が酸化変性されるため、充放電サイクルの進行とともに電池性能が低下する。然るに、上記構成では、正極芯体露出部と負極板とが対向する部分に位置するセパレータ部分であるセパレータ特定区画のガーレ式透気度が、セパレータ一般区画におけるガーレ式透気度の1.2倍以上と大きくしてあるので、このような現象が抑制される。
ガーレ式透気度が大きいということは、当該部分におけるセパレータ細孔体積が小さいことを意味し、これは当該部分における電解液保持量や電解液透過量が少なくなることを意味する。つまり、当該部分で変性を受ける電解液の絶対量が小さくなる。その結果として電池のサイクル特性が向上するという効果が得られる。
ここで、上記「前記正極芯体露出部と前記負極板との対向面」における負極板部分は、負極活物質層を有する部分と負極活物質層を有しない負極芯体が露出した部分の何れであってもよい。また、上記ガーレ式透気度は、JIS P8117に従ってガーレ式透気度計で測定した場合における透気度値(sec/dL)を意味する。
第2の発明は、上記第1の発明にかかる非水電解液二次電池において、前記セパレータの特定区画が、セパレータの特定箇所をプレスすることによりガーレ式透気度を高めてなる区画であることを特徴とする。
セパレータの特定箇所をプレスすることにより、当該部分のみの細孔を押し潰すことができ、これにより簡単にセパレータ特定区画の透気度を一般区画の1.2倍以上とすることができる。
第3の発明は、上記第1または第2の発明にかかる非水電解液二次電池において、前記非水電解液が、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、水素化ターフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジベンゾフラン、ナフタレン、芳香族化合物の部分的フッ素化物、またはフッ素含有アニソール化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことを特徴とする。
上記各化合物は、過充電を抑制するために添加されるものである。本明細書では、これらの化合物を過充電防止剤と称している。上記芳香族化合物の部分的フッ素化物は、2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、及び、p−シクロヘキシルフルオロベンゼンなどのフッ素を有する芳香族化合物を意味する。また、フッ素含有アニソール化合物は、2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、及び、2,6−ジフルオロアニソールなどのフッ素を有するアニソール化合物を意味する。
上記化合物が過充電を抑制する機構は、次のように考えられている。電池が過充電されると、電解液中に含まれている上記化合物が化学反応してセパレータの細孔内に導電パスが形成され、この導電パスが充電電流を消費させる。これにより更なる過充電が抑制される。既に説明したように、従来の非水電解液二次電池においては、通常の充電条件においても正極芯体露出部と負極板とが対向する部分において局所的な過充電状態が生まれる。このため当該部分において、過充電防止剤が作用する。よって、通常の充電条件においても徐々に過充電防止剤が消費される。
これに対し、本発明においては、正極芯体露出部と負極活物質層とが対向する部分に位置するセパレータのガーレ式透気度を大きくして、当該部分に存在する電解液量が少なくなるようにしてある。よって、局所的過充電に起因する過充電防止剤の消費量が小さくなり、その結果として過充電防止剤が作用すべき真の過充電時に十分に機能し得る。それゆえ、上記構成によると、過充電に対する安全性が一段と向上する。
本発明は、正極芯体露出部とこれに対向する負極板との間に位置するセパレータ特定区画の透気度を、正極活物質層と負極活物質層とが対向するセパレータ一般区画における透気度の1.2倍以上と大きくした構成を採用するが、これにより、正極芯体露出部近傍に供給され保持される電解液量が少なくなる結果、部分的に過充電状態となる正極芯体露出部における電解液成分の分解量が減少する。また、電解液に添加した過充電防止剤の無用な消費が抑制され、その量が長期にわたって適正に維持される。それゆえ、本発明によると、非水電解液二次電池のサイクル特性と共に、過充電に対する安全性が大幅に向上するという顕著な効果が得られる。
実施例および比較例に基づいて本発明を実施するための形態を明らかにする。なお、本発明はセパレータ構造に特徴を有するものであり、セパレータ以外については特段の制限はないので、セパレータ以外の構成部材については、下記の記載に限定されない。セパレータ以外の部材については、公知の他の部材を用いることができ、また他の製法を用いることもできる。
(実施例1)
実施例1電池の断面分解斜視図である図1を参照しつつ、実施例1にかかる非水電解液二次電池の構造概要を説明する。図1に示すように、実施例1の非水電解液二次電池は、正極板6と負極板7と正負電極板6・7を離間させるセパレータ8とを重ね合わせ渦巻状に巻回した渦巻電極体が有底円筒状の電池缶1内に収納され、電池缶1内には非水電解液が注入されている。
実施例1電池の断面分解斜視図である図1を参照しつつ、実施例1にかかる非水電解液二次電池の構造概要を説明する。図1に示すように、実施例1の非水電解液二次電池は、正極板6と負極板7と正負電極板6・7を離間させるセパレータ8とを重ね合わせ渦巻状に巻回した渦巻電極体が有底円筒状の電池缶1内に収納され、電池缶1内には非水電解液が注入されている。
電池缶1の開口部は、封口体2がかしめ固定されて電池缶が密閉されている。また、封口体2と上記渦巻電極体との間には、電池内における短絡を防止するために、上部絶縁板3が配置され、同様な理由により上記渦巻電極体と電池缶1の缶底との間に、下部絶縁板4が配置されている。
更に、正極板6に取り付けられた正極集電タブ5が、上部絶縁板3の中央部分から上方に導出され上記外部出力端子に接続されている。他方、負極板7に取り付けられた負極集電タブ(不図示)は、電池缶1の缶底に接続されている。これにより、封口体2が正極外部端子として機能し、電池缶1が負極外部端子として機能することになる。
なお、説明を省略するが、電池缶1と封口体2には、密閉性を高めるためのガスケットが組み込まれている。また、この電池には、電池内圧の上昇に対する安全性を高めるため、防爆弁などの安全機構を組み込むことができる。
次に実施例1にかかる非水電解液二次電池の製造方法を説明する。
[正極板の作製]
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)85質量部と、導電剤としての黒鉛粉末5質量部とカーボンブラック5質量部とを混合して正極合剤となした。フッ化ビニリデン系重合体(結着剤)を溶解したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を用意し、フッ化ビニリデン系重合体の配合量が5質量部となるように、この溶液を上記正極合剤に加え、全成分を混合して正極合剤スラリーとなした。
[正極板の作製]
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)85質量部と、導電剤としての黒鉛粉末5質量部とカーボンブラック5質量部とを混合して正極合剤となした。フッ化ビニリデン系重合体(結着剤)を溶解したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を用意し、フッ化ビニリデン系重合体の配合量が5質量部となるように、この溶液を上記正極合剤に加え、全成分を混合して正極合剤スラリーとなした。
上記正極合剤スラリーを、アルミニウム箔からなる厚み15μmの正極芯体の両面にドクターブレード法で塗布した。この塗布に際しては、正極板の巻き終わり終端とする側の60mmの長さだけ、両面とも正極合剤を塗布しなかった。上記正極合剤の塗布層を乾燥させた後、所定の厚みになるまでローラープレス機により圧延して正極活物質層を形成した。この後、正極活物質層が形成された正極芯体を長さ700mm、幅55mmの短冊状に切断し正極板6となした。
ここで、上記正極板6の作製に際しては、正極芯体の両面の巻き始め側に、集電タブを取り付けるための正極合剤スラリー未塗布部10(長さ20〜30mm)を設け、巻き終わり側(巻回終端側)には、巻回最外周に位置させる芯体露出面として、長さ60mmの正極合剤スラリー未塗布部12を設けるようにした。そして活物質層11の形成作業後に、上記巻き始め側の正極合剤スラリー未塗布部10に正極集電タブとして、幅3mm、厚み100μmのアルミニウム箔からなる正極集電タブ5を取り付けた(後記図2(a)参照)。なお、上記正極合剤スラリー未塗布10・12が、芯体露出部となる。
[負極板の作製]
天然黒鉛(Lc値が150Å以上で、d値が3.38Å以下のもの)粉末95質量部に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶かした結着剤としてのフッ化ビニリデン系重合体を固形分として5質量部となるように混合して、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚みが10μmの負極芯体(銅箔)の両面にドクターブレード法により塗布して、負極集電体の両面に負極合剤層21を形成した。
天然黒鉛(Lc値が150Å以上で、d値が3.38Å以下のもの)粉末95質量部に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶かした結着剤としてのフッ化ビニリデン系重合体を固形分として5質量部となるように混合して、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚みが10μmの負極芯体(銅箔)の両面にドクターブレード法により塗布して、負極集電体の両面に負極合剤層21を形成した。
負極合剤層21を乾燥した後、所定の厚みになるまでローラープレス機により圧延して負極活物質層を形成し、しかる後、長さ660mm、幅57mmの短冊状に切断した。この後、巻回終端側に負極集電タブ(銅箔)を溶接し負極板7を作製した(図2(c)参照)。なお、この負極板7については、巻回始端側及び巻回終端側の負極集電タブ取り付け予定位置には、負極合剤スラリーが塗布されておらず、当該部分が負極芯体露出部となる。
なお、上記した正負電極板の長さ、幅、厚みは一例示であり、このような大小関係に規制されるものではない。
[セパレータの作製]
幅59mm、長さ800mm、厚さ25μmのポリエチレン製微多孔膜を用意し、このポリエチレン製微多孔膜の特定箇所をプレス加工してガーレ式透気度を変化させることにより、実施例1用のセパレータ7を作製した。図2を参照しつつ、セパレータの調製方法を説明する。
幅59mm、長さ800mm、厚さ25μmのポリエチレン製微多孔膜を用意し、このポリエチレン製微多孔膜の特定箇所をプレス加工してガーレ式透気度を変化させることにより、実施例1用のセパレータ7を作製した。図2を参照しつつ、セパレータの調製方法を説明する。
図2において、(a)は正極板6、(b)はセパレータ8、(c)は負極板7を示す。正極板6は、巻回始端側と巻回終端側に芯体露出部10・12が設けられ、中央部に正極活物質層11が形成されており、巻回始端側の正極芯体露出部10に正極集電タブ5が取り付けられた構造である。この正極板6に対応する負極板7は、巻回始端側と巻回終端側に負極芯体露出部20・22が設けられ、中央部に負極活物質層21が形成され、巻回終端側の負極芯体露出部22に負極集電タブ9が取り付けられた構造である。このような構造の正負電極板6・7が、セパレータ8を介して、図2(a)〜(c)に示す対応関係で対向され積層巻回されることになる。
次に、正負電極板6・7の間に介在させられるセパレータ8の構造について説明する。セパレータ8は、正負電極板6・7の何れよりも長さ及び幅が大きいものが用いられる。セパレータの両端が正負電極板6・7の両端よりもはみ出る状態に配置されたとき、正極活物質層部11に対応するセパレータ区画(これをセパレータ一般区画と称する)と、正極芯体露出部10及び12に対応するセパレータ区画(これをセパレータ特定区画と称する)のガーレ式透気度比B/Aが、1.2以上になるように構成されている。
セパレータの透気度値の調製は次のようにして行った。すなわち、セパレータ中に特定区画に対応する部分を定め、当該部分のみをローラープレス機で加圧した。ローラープレス機の加圧力は試行錯誤的に調整した。このようにして部分的に透気度を変えた実施例1のセパレータについて、ガーレ式透気度計を用いJIS P8117に従ってガーレ式透気度を測定したところ、上記セパレータ一般区画の透気度(A)が155sec/dLであり、セパレータ特定区画(B)の透気度値が190sec/dLであった。この場合におけるガーレ式透気度比B/Aは1.23である。
なお、ローラープレス機に代えて、平板プレス機を用いることもできる。また、60〜80℃の温度で部分的に加熱する方法によってもよいし、加熱とプレスを組み合わせた方法でもよい。更に、ポリエチレン製微多孔膜を作製する段階で、セパレータ特定区画の予定部分における細孔体積を小さくし、または全く細孔を設けないようにしてもよい。
[非水電解液の作製]
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比3:7で混合した非水溶媒溶液に、1mol/LのLiPF6を溶解し、この溶液を実施例1用の非水電解液とした。実施例1用のこの非水電解液は、過充電防止剤を含有していない。
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比3:7で混合した非水溶媒溶液に、1mol/LのLiPF6を溶解し、この溶液を実施例1用の非水電解液とした。実施例1用のこの非水電解液は、過充電防止剤を含有していない。
以上で説明した正極板6とセパレータ8と負極板7とを、図2に示す位置関係で重ね合わせ、図2左側を巻回始端として巻回して実施例1にかかる渦巻電極体となした。そして、この渦巻電極体と上記非水電解液5.5gとを、直径18mm、高さ65mmの電池缶1に収容して実施例1にかかる非水電解液二次電池とした。なお、渦巻電極体の最外周端は、ポリプロピレン製テープを貼り付けて巻回がほどけぬようにした。
(実施例2)
実施例2では、セパレータ一般区画の透気度Aとセパレータ特定区画の透気度B、及び透気度比B/Aとが、上記実施例1と異なるようにした。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例2にかかる非水電解液二次電池を作製した。
実施例2では、セパレータ一般区画の透気度Aとセパレータ特定区画の透気度B、及び透気度比B/Aとが、上記実施例1と異なるようにした。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例2にかかる非水電解液二次電池を作製した。
すなわち、実施例2においては、ガーレ式透気度値が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、実施例1におけるよりもローラープレス機の加圧力を強くしてセパレータ特定区画の透気度値を240sec/dLに調製した。このセパレータの透気度比B/Aは1.54である。なお、一般区画に対応するセパレータ部分がローラープレスされていないので、ローラープレスする前のポリエチレン製微多孔膜のガーレ式透気度値がセパレータ一般区画の透気度値となる。
(実施例3)
実施例3では、ガーレ式透気度値が159sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、実施例1及び2におけるよりもローラープレス機の加圧力を強くして、セパレータ特定区画の透気度値を320sec/dLに調製した。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例3にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例3にかかるセパレータの透気度比B/Aは2.01である。
実施例3では、ガーレ式透気度値が159sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、実施例1及び2におけるよりもローラープレス機の加圧力を強くして、セパレータ特定区画の透気度値を320sec/dLに調製した。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例3にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例3にかかるセパレータの透気度比B/Aは2.01である。
(実施例4)
実施例4では、ガーレ式透気度値が158sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、実施例2〜3におけるよりもローラープレス機の加圧力を強くして、セパレータ特定区画の透気度値が485sec/dLに調製した。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例4にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例4にかかるセパレータの透気度比B/Aは3.07である。
実施例4では、ガーレ式透気度値が158sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、実施例2〜3におけるよりもローラープレス機の加圧力を強くして、セパレータ特定区画の透気度値が485sec/dLに調製した。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例4にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例4にかかるセパレータの透気度比B/Aは3.07である。
(実施例5)
実施例5では、セパレータの透気度特性を概ね実施例1と同様としたが、非水電解液に過充電防止剤としてシクロヘキシルベンゼンを5質量%加えた。
実施例5では、セパレータの透気度特性を概ね実施例1と同様としたが、非水電解液に過充電防止剤としてシクロヘキシルベンゼンを5質量%加えた。
すなわち、実施例5では、ガーレ式透気度が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を191sec/dLに調製した。また、実施例1で使用した非水電解液95質量部に、シクロヘキシルベンゼン5質量部を混合し、シクロヘキシルベンゼン含有非水電解液を調製した。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例5にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例5のセパレータの透気度比B/Aは1.22である。
(実施例6)
実施例6では、ガーレ式透気度が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を205sec/dLに調製したセパレータを用いた。
実施例6では、ガーレ式透気度が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を205sec/dLに調製したセパレータを用いた。
また、実施例1で使用した非水電解液95質量部に、t−アミルベンゼン5質量部を混合したt−アミルベンゼン含有非水電解液を用いた。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例6にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例6のセパレータの透気度比B/Aは1.31であり、過充電防止剤として、t−アミルベンゼンが用いられている。
(実施例7)
実施例7では、ガーレ式透気度が153sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を199sec/dLに調製したセパレータを用いた。
実施例7では、ガーレ式透気度が153sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を199sec/dLに調製したセパレータを用いた。
また、実施例1で使用した非水電解液95質量部に、ターフェニル5質量部を混合したターフェニル含有非水電解液を用いた。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例7にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例7のセパレータの透気度比B/Aは1.30であり、過充電防止剤として、ターフェニルが用いられている。
(実施例8)
実施例8では、ガーレ式透気度が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を206sec/dLに調製したセパレータを用いた。
実施例8では、ガーレ式透気度が156sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を206sec/dLに調製したセパレータを用いた。
また、実施例1で使用した非水電解液質95質量部に、2−フルオロビフェニル5質量部を混合した2−フルオロビフェニル含有非水電解液を用いた。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例8にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例8のセパレータの透気度比B/Aは1.32であり、過充電防止剤として、2−フルオロビフェニルが用いられている。
(実施例9)
実施例9では、ガーレ式透気度が159sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を201sec/dLに調製したセパレータを用いた。
実施例9では、ガーレ式透気度が159sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、ローラープレス機の加圧力を概ね実施例1の場合と同様にして、セパレータ特定区画の透気度値を201sec/dLに調製したセパレータを用いた。
また、実施例1で使用した非水電解液95質量部に、2,4−ジフルオロアニソール5質量部を混合した2,4−ジフルオロアニソール含有非水電解液を用いた。これ以外の事項については上記実施例1と同様にして、実施例9にかかる非水電解液二次電池を作製した。実施例6のセパレータの透気度比B/Aは1.26であり、過充電防止剤として、2,4−ジフルオロアニソールが用いられている。
(比較例1)
比較例1は、その全面にわたって透気度が同一であるセパレータを用いた。その他の事項については実施例1の場合と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。すなわち、比較例1では、ガーレ式透気度が154sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、特定区画(B)に対応する部分についても、ローラープレスすることのないセパレータを用いており、比較例1のセパレータの透気度比B/Aは1.00である。また比較例1では、過充電防止剤の含有されていない非水電解液が用いられている。
比較例1は、その全面にわたって透気度が同一であるセパレータを用いた。その他の事項については実施例1の場合と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。すなわち、比較例1では、ガーレ式透気度が154sec/dLのポリエチレン製微多孔膜を用い、特定区画(B)に対応する部分についても、ローラープレスすることのないセパレータを用いており、比較例1のセパレータの透気度比B/Aは1.00である。また比較例1では、過充電防止剤の含有されていない非水電解液が用いられている。
(比較例2)
比較例2では、ローラープレス機の圧力を調節して、実施例1におけるよりもセパレータ透気度比B/Aが小さいセパレータを作製し、これ以外の事項については実施例1の場合と同様にして比各例2の非水電解液二次電池を作製した。比較例2では、ガーレ式透気度が157sec/dLのポリエチレン製微多孔膜が用いられ、ローラープレスにより特定区画(B)のガーレ式透気度が183sec/dLに調整されている。また、過充電防止剤の含有されていない非水電解液が用いられている。比較例2のセパレータの透気度比B/Aは、1.17(1.2未満)である。
比較例2では、ローラープレス機の圧力を調節して、実施例1におけるよりもセパレータ透気度比B/Aが小さいセパレータを作製し、これ以外の事項については実施例1の場合と同様にして比各例2の非水電解液二次電池を作製した。比較例2では、ガーレ式透気度が157sec/dLのポリエチレン製微多孔膜が用いられ、ローラープレスにより特定区画(B)のガーレ式透気度が183sec/dLに調整されている。また、過充電防止剤の含有されていない非水電解液が用いられている。比較例2のセパレータの透気度比B/Aは、1.17(1.2未満)である。
下記する比較例3〜7では、セパレータの透気度比B/Aが概ね1.00である場合における過充電防止剤の効果を調べるために、セパレータの特定区画に対応する部分に対するプレス処理を行わないセパレータを用いた。なお、表2において、セパレータ一般区画及び特定区画の透気度値に若干の変動があるが、これはセパレータ自体の細孔部分布のバラツキや透気度測定誤差に起因すると考えられる。
(比較例3)
比較例3は、過充電防止剤として、シクロヘキシルベンゼンを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例2のセパレータの透気度比B/Aは、0.99である。
比較例3は、過充電防止剤として、シクロヘキシルベンゼンを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例2のセパレータの透気度比B/Aは、0.99である。
(比較例4)
比較例4では、過充電防止剤として、t−アミルベンゼンを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例4のセパレータの透気度比B/Aは、1.02である。
比較例4では、過充電防止剤として、t−アミルベンゼンを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例4のセパレータの透気度比B/Aは、1.02である。
(比較例5)
比較例5では、過充電防止剤として、ターフェニルを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例5のセパレータの透気度比B/Aは、1.00である。
比較例5では、過充電防止剤として、ターフェニルを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例5のセパレータの透気度比B/Aは、1.00である。
(比較例6)
比較例6では、過充電防止剤として、2−フルオロビフェニルを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例6のセパレータの透気度比B/Aは、1.01である。
比較例6では、過充電防止剤として、2−フルオロビフェニルを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例6のセパレータの透気度比B/Aは、1.01である。
(比較例7)
比較例7では、過充電防止剤として、2,4−ジフルオロアニソールを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例6のセパレータの透気度比B/Aは、0.99である。
比較例7では、過充電防止剤として、2,4−ジフルオロアニソールを5質量%添加した非水電解液を用いた場合である。その他の事項については実施例1と同様である。比較例6のセパレータの透気度比B/Aは、0.99である。
表1及び表2に、実施例1〜9及び比較例1〜7で使用したセパレータの透気度特性、及び非水電解液に添加した過充電防止剤の種類を一覧表示した。
(電池性能試験)
上記で作製した電池について、下記条件にて充放電サイクル試験を実施し、サイクル放電容量を調べた。
上記で作製した電池について、下記条件にて充放電サイクル試験を実施し、サイクル放電容量を調べた。
[充放電サイクル試験条件]
充電:充電電流2000mAで電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後は4.2V一定で、充電電流が60mAになるまで充電した。
休止:電池を10min室温で放置した。
放電:放電電流2000mAで電池電圧が3.0Vになるまで放電した。
休止:電池を10min室温で放置した後、次の充電を開始した。
充電:充電電流2000mAで電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後は4.2V一定で、充電電流が60mAになるまで充電した。
休止:電池を10min室温で放置した。
放電:放電電流2000mAで電池電圧が3.0Vになるまで放電した。
休止:電池を10min室温で放置した後、次の充電を開始した。
過充電添加剤を添加した電池については、1000サイクルのサイクル試験後の電池を用い、下記条件で過充電してその時の電池状態を調べた。
[過充電試験条件]
2000mA(電圧カットなし)で5時間充電した。
2000mA(電圧カットなし)で5時間充電した。
表3の結果から次のことが明らかになった。以下、表1〜2を参照しつつ表3の結果について説明する。
[透気度比B/Aとサイクル特性]
セパレータ透気度比B/Aは、比較例1、2、実施例1、2、3、4の順に大きくなっているが、この順に従ってサイクル特性が向上する傾向が認められた。
セパレータ透気度比B/Aは、比較例1、2、実施例1、2、3、4の順に大きくなっているが、この順に従ってサイクル特性が向上する傾向が認められた。
また、比較例1〜2は、セパレータ透気度比B/Aが1.2未満に設定された電池群であるが、これらの電池群では、700サイクル目以降における放電容量(mAh)が顕著に低下した。これに対し、セパレータ透気度比B/Aが1.2以上に設定された実施例1〜4では、1000サイクル目でも比較例1〜2の700サイクル目におけるよりも高い放電容量が維持されていた。
この結果から、セパレータ透気度比B/A(特定区画の透気度/一般区画の透気度)が1.2倍以上のセパレータを用いることにより、非水電解液二次電池のサイクル特性が顕著に高まることが確認された。また上記した傾向からして、セパレータ透気度比B/Aは好ましくは2倍以上とし、更に好ましくは3倍以上とするのがよいことが判った。
ここで、セパレータ透気度比B/Aを高めると、サイクル特性が高まる理由は、次のように考えられる。正極芯体露出部は、正極活物質層が形成されている部分よりも充電時における電位が高くなる。このため、当該部分に存在する電解液の一部成分が高電位の作用により酸化変性され、サイクルの進行とともに電解液の電気化学的能力が低下する。この結果、サイクル放電容量が顕著に低下する。これに対し、正極芯体露出部と負極板との間に存在するセパレータ特定区画の透気度を高めると、セパレータ特定区画の電解液流通量が減少すると共に、電解液の保持可能量が縮小するので、正極芯体露出部近傍に電解液が存在し難くなる。正極芯体露出部近傍に存在する電解液量が減少すると、正極芯体露出部の高電位によって酸化される電解液量が減少するため、電解液全体としての電気化学的能力の低下が小さくなる。この結果としてサイクル特性の低下が抑制される。
[過充電防止剤の影響]
実質的にセパレータ透気度比B/Aが同じである比較例1(過充電防止剤が未添加)と比較例3〜7(過充電防止剤添加)との比較から、過充電防止剤を添加するとサイクル特性が更に悪くなることが認められた。なお、過充電防止剤としてターフェニルが添加された比較例5は、1000サイクル目では比較例1の放電容量と同等であるが、700サイクル目における放電容量が大幅に低下していた。
実質的にセパレータ透気度比B/Aが同じである比較例1(過充電防止剤が未添加)と比較例3〜7(過充電防止剤添加)との比較から、過充電防止剤を添加するとサイクル特性が更に悪くなることが認められた。なお、過充電防止剤としてターフェニルが添加された比較例5は、1000サイクル目では比較例1の放電容量と同等であるが、700サイクル目における放電容量が大幅に低下していた。
他方、実施例1(過充電防止剤添加せず)、と実施例5〜9(過充電防止剤添加)との比較から、セパレータ透気度比B/Aを1.2以上とした実施例1、5〜9においては
過充電防止剤を添加したことによるサイクル特性の低下が顕著に小さくなることが確認された。
過充電防止剤を添加したことによるサイクル特性の低下が顕著に小さくなることが確認された。
[過充電防止剤の発火防止効果]
表3に示されるように、セパレータの透気度を制御していない比較例3〜7の電池では、過充電試験においてすべて発煙または発火が認められた。これに対し、セパレータの透気度比B/Aを1.22〜1.32に制御した実施例5〜9の電池では、発煙または発火が認められなかった。
表3に示されるように、セパレータの透気度を制御していない比較例3〜7の電池では、過充電試験においてすべて発煙または発火が認められた。これに対し、セパレータの透気度比B/Aを1.22〜1.32に制御した実施例5〜9の電池では、発煙または発火が認められなかった。
これらの結果から、セパレータの透気度比B/Aを1.2以上に制御することにより、非水電解液二次電池のサイクル特性を大幅に向上させることができること、及び過充電防止剤が持つサイクル特性を低下させるというマイナスの作用効果を抑制できることが確認できた。
セパレータの透気度比B/Aを1.2以上に制御することによりこのような効果が得られるのは次の理由によると考えられる。セパレータの透気度を制御していない比較例電池では、1000サイクルの充放電により、過充電防止剤が消費されてしまうため、過充電試験に際して、もはやその作用を発揮できない。これに対して実施例電池ではセパレータ透気度比B/Aが1.2以上に制御されており、正極芯体露出部近傍に電解液が供給されない構造になっている。このため、高電位となる正極芯体露出部における電解液成分の分解変性が少なく、また過充電防止剤の消費が少ないため、1000サイクル後でも電解液が十分にその電気化学的役割を果たし、かつ1000サイクル後の電解液中にも十分な量の過充電防止剤が残っているので、過充電に対しその効果を発揮し得たものと考えられる。
なお、過充電防止剤は、その種類によって反応を開始する電圧が異なるが、ある一定の電圧を超えたときに反応してセパレータ中に導電パスを形成して電流を消費させ、これによって過充電の際の急激な発熱を抑制させるものである。よって、電圧の変化に対して敏感に反応する物質でなければならないが、それゆえにこそ、正極芯体露出部の部分的高電位に対処する必要がある。
そして本発明でいう「セパレータ特定区画」は、正極芯体露出部と負極活物質層がセパレータを介して直接対向している部分におけるセパレータ区画を意味しているが、巻回形の発電体を用いる非水電解液二次電池においては、正極芯体露出部は不可避的に存在する部分である。よって、本発明が顕著な有用性を発揮する。
ここで上記実施例では、巻回始端側に正極集電タブを設けた正極板を使用した渦巻電極体の例(図2)を示したが、正極芯体露出部とセパレータとの位置関係はこれに限られない。例えば、図3に示すように、正極集電タブが端部ではなく正極板の中央に設けられている場合には、当該部分(図3符合10)に位置するセパレータ区画(図3符合30)も「セパレータ特定区画」に該当する。
他方、図4に示すように、正極集電タブが取り付けられた正極芯体露出部が絶縁性粘着テープ40で覆われているような場合には、正極芯体露出部と負極活物質層とは実質的に対向していない(電気化学的反応が起きうる状態で対向していない)ので、この場合は正極芯体が露出していないとする。すなわち、当該部分に位置するセパレータ区画は「セパレータ特定区画」に該当しない。なお、当該区画の透気度を高めても本発明所定の作用効果は生まれないが、当該区画の透気度を高めてもよい。
また、本発明においては、相対的に面積の大きい「セパレータ特定区画」が透気度比B/Aが1.2以上となっていればよく、必ずしも「セパレータ特定区画」のすべてについて、透気度比B/Aが1.2以上となっている必要はない。例えば極めて面積の小さい正極芯体露出部における「セパレータ特定区画」の透気度比B/Aが1.2以上でなくともよい。相対的に大きい面積の「セパレータ特定区画」が1.2以上となっていれば、それなりの作用効果が得られるからである。
〔その他の事項〕
本発明にかかるセパレータは、それ自体に電子伝導性がなく、有機溶媒に対する耐性が高い材質であればよい。例えばポリエチレンやポリプロピレン、その他の高分子材料からなる微多孔膜が好適に使用できる。また、合成繊維、ガラス繊維などからなる不織布、織布などが使用できる。
本発明にかかるセパレータは、それ自体に電子伝導性がなく、有機溶媒に対する耐性が高い材質であればよい。例えばポリエチレンやポリプロピレン、その他の高分子材料からなる微多孔膜が好適に使用できる。また、合成繊維、ガラス繊維などからなる不織布、織布などが使用できる。
本発明で使用する非水電解液ついても特段の限定はない。非水電解液の溶媒としては、従来より使用されている各種の非プロトン性溶媒、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等から選択される1種または2種以上を用いることができる。また電解質塩としては、LiBF4、LiClO4、イミド塩などから選択される1種または2種以上を用いることができる。
また、上記実施例では、過充電防止剤を5質量%添加したが、過充電防止剤の添加量は、各々の化合物ごとに適当な量を定め添加すればよい。通常は、過充電防止剤を含む全質量に対し1〜5質量%添加する。
また、正極活物質についても特段の制約はないので、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な各種の化合物を使用することができる。例えばリチウムとコバルト、ニッケル、マンガン、鉄などの遷移金属との複合酸化物や、これらの複合酸化物を任意の割合で混合した混合物などを用いることができる。
負極活物質についても、特段の制約はなく、正極活物質よりも低い電位でリチウムの吸蔵放出が可能な公知の種々の物質を用いることができる。例えば天然黒鉛や人造黒鉛、コークス、非晶質カーボンや、シリコン、チタン酸リチウム等の材料やこれらを任意の割合で混合した混合物を用いることができる
また、上記実施例では、円筒形電池としたが、渦巻電極体を加圧等して扁平な形状することで角形形状の電池としてもよい。また、電池缶に代えて、ラミネートフィルムからなる外装体を用いることもできる。
本発明は、正極芯体露出部との位置関係で規定されたセパレータの特定区画の透気度を一般区画の1.2倍以上に規制する。このような本発明によると、簡単な手段でもってサイクル特性に優れ、且つ過充電に対する安全性にも優れた非水電解液二次電池を提供することができる。よってその産業上の利用可能性は大きい。
1 電池缶
2 封口体
3 上部絶縁板
4 下部絶縁板
5 正極集電タブ
6 正極板
7 負極板
8 セパレータ
9 負極集電タブ
10・12 正極芯体露出部(正極合剤未塗布部)
11・11’ 正極活物質層(正極合剤塗布部)
20・22 負極芯体露出部(負極合剤未塗布部)
21 負極活物質層(負極合剤塗布部)
30・32 セパレータ特定区画
31 セパレータ一般区画
33・34 その他のセパレータ区画
40 絶縁性粘着テープ
2 封口体
3 上部絶縁板
4 下部絶縁板
5 正極集電タブ
6 正極板
7 負極板
8 セパレータ
9 負極集電タブ
10・12 正極芯体露出部(正極合剤未塗布部)
11・11’ 正極活物質層(正極合剤塗布部)
20・22 負極芯体露出部(負極合剤未塗布部)
21 負極活物質層(負極合剤塗布部)
30・32 セパレータ特定区画
31 セパレータ一般区画
33・34 その他のセパレータ区画
40 絶縁性粘着テープ
Claims (3)
- リチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質が正極芯体に塗着されてなる正極活物質層を有する正極板と、リチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質が負極芯体に塗着されてなる負極活物質層を有する負極板とが、セパレータを介して巻回された渦巻電極体と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池において、
前記正極板は、正極活物質が塗着されていない正極芯体露出部を有し、
前記正極芯体露出部と前記負極板との対向面に位置するセパレータの特定区画のガーレ式透気度が、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが対向する領域に位置するセパレータの一般区画におけるガーレ式透気度の1.2倍以上である、
ことを特徴とする非水電解液二次電池。 - 請求項1に記載の非水電解液二次電池において、
前記セパレータの特定区画は、セパレータの特定箇所をプレスすることによりガーレ式透気度を高めた区画である、
ことを特徴とする非水電解液二次電池。 - 請求項1または2に記載の非水電解液二次電池において、
前記非水電解液は、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、水素化ターフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジベンゾフラン、ナフタレン、芳香族化合物の部分的フッ素化物、またはフッ素含有アニソール化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、
ことを特徴とする非水電解液二次電池。
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-
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- 2010-03-31 JP JP2010084066A patent/JP2011216360A/ja active Pending
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