JP2011214063A - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、C+N:0.05%以下、Si:0.70%以下、Mn:0.50%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:16〜25%、Ni:1.0%以下、Ti:4×(C+N)%未満、V:0.1%以下、Nb:0.1%以下、Al:0.01〜0.05%、およびZr:0.02〜0.40%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼板中の窒化物が実質的にZrNであるフェライト系ステンレス鋼板とする。
【選択図】図1
Description
+Ta/181≧C/12+N/14を満足することを特徴としたフェライト系ステンレス鋼が、さらに、特許文献3では、成分組成として質量%で、Cr:5〜60%、Ti:4×(C+N)〜0.5%、およびNb:0.003〜0.020%を含有し、かつ、Ni、Co、Cu、および Wのうちから選んだいずれか1種または2種以上を式:0.3 ≦Ni+Co+2Cu +W≦6.0を満足するように含有することを特徴としたフェライト系ステンレス鋼が示されている。
こうした問題を解決する手段の一つに、鋼中のC、N、S、P、Oといった不純物を極力低減し、高純度化することで、再結晶を促進させる方法が知られている、しかし、凝固組織中の結晶粒の粗大化の影響が著しく、リジング特性が低下するといった問題が生じる。
そこで、このTiN析出物の生成を抑制するために、種々の金属添加について検討した。その結果、Zrを適量添加し、鋼板中の窒化物をZrNの形態で存在させ、実質的にTiNを鋼板中に存在させないことで、鋼板の熱延板、熱延焼鈍板の靭性が著しく改善されることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
(1)質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、C+N:0.05%以下、Si:0.70%以下、Mn:0.50%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:16〜25%、Ni:1.0%以下、Ti:4×(C+N)%未満、V:0.1%以下、Nb:0.1%以下、Al:0.01〜0.15%、およびZr:0.02〜0.40%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼板中の窒化物が実質的にZrNであることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
さらに、Tiを低減したことで、熱延板の靭性の向上のみならず、冷延焼鈍板の表面品質が向上(改善)するといった効果も生じ、製造可能な熱延焼鈍板の板厚範囲が広がり、また、本発明に従う方法により製造された熱延板を素材とした冷延焼鈍板についても製造可能な板厚範囲が広がるため、各種部材への適用範囲を大幅に増やすことができる。
まず、本発明においてフェライト系ステンレス鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の鋼板中の成分組成の%表示は、特に断らない限り、質量%を表すものとする。
C:0.03%以下、N:0.03%以下、C+N:0.05%以下
CおよびNは、熱延板の靭性を低下させるので少ない方が望ましく、それぞれ0.03%以下、それらの合計量でも0.05%以下に限定した。好ましくは、C:0.015%以下、N:0.015%以下、C+N:0.03%以下である。なお、特に高い耐食性が要求される場合には、C:0.010%以下、N:0.010%以下、C+N:0.015%以下にすることがさらに好ましい。
Siは、脱酸剤として有用な元素である。しかし、多量に添加すると熱延板の靭性を低下させる。よって、Siは0.70%以下とする。好ましくは、0.30%以下である。
Mnは、脱酸作用がある。しかし、鋼中で硫化物を形成すると著しく耐食性が低下するため添加量は低い方が望ましく、製造時の経済性を考慮して、0.50%以下とする。好ましくは、0.30%以下である。
Pは、熱間加工性を低下させるので、少ない方が好ましいが、0.04%までは許容できる。
Sは、熱間加工性を低下させ、上記したMnとの硫化物を形成する問題があるため、少ない方が好ましいが、0.02%までは許容できる。好ましくは0.005%以下である。
Crは、本発明において、十分な耐食性を実現するための最も重要な元素であり、SUS430相当の耐食性を得るためには、16%以上の添加が必要である。一方、25%を超えて添加すると、たとえ、熱延板コイルの水靭を行っても熱延板の靭性を高めることができず、また、熱延板の連続焼鈍が困難となる。よって、Crは16〜25%の範囲に限定する。なお、SUS304あるいはSUS436L相当の耐食性を得るためには、20.5%以上の添加が好ましい、また、特に高い熱延板靭性が必要な場合や、経済的な面を考慮すると、22%以下が好ましい。
Niは、Cu添加による熱間加工性の低下を防ぐ効果がある。また、隙間腐食を低減させる効果を有する。しかし、高価な元素であることに加え、1.0%を超えて添加してもその効果は飽和し、かえって熱間加工性を低下させる。このため、Niは1.0%以下とする。好適には0.1〜0.4%の範囲である。
Tiは、溶接部の加工性や耐食性に有害なCやNをTiCやTiNとして無害化して、耐食性を向上させる効果を有する。また、連続焼鈍による鋭敏化を防止するためにもTiの添加は必要である。しかし、本発明では、冷延焼鈍後の表面欠陥を低減する効果を得るために、Tiは4×(C+N)%未満に限定する。
Vは、熱延板の靭性を低下させるために少ない方が好ましいが、0.1%までは許容できる。好ましくは0.05%以下である。
Nbは、熱延板の結晶粒を微細化させることにより、熱延板の靭性を向上させる効果を持つが、0.1%を超えて添加すると、鋼板の硬化が著しくなるため、添加量は0.1%以下に限定する。また、Nbは、再結晶温度を上昇させるため、過剰に添加すると普通鋼を焼鈍するための高速冷延焼鈍ラインでは焼鈍が十分に行えず、焼鈍後の加工性が低下する。このため、生産性を重視する際には、その上限を0.01%以下とすることが望ましく、より好ましくは0.005%以下である。
Alは、脱酸のために添加するが、その効果を得るには0.01%以上の添加が必要である。一方、過剰に添加すると大型のAl系介在物が生成して表面欠陥の原因となるため、その上限は0.15%とする。
Zrは、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の靭性を改善するための最も重要な元素である。すなわち、ZrNを形成して、熱延板や熱延焼鈍板の靭性を低下させる粗大なTiNの生成を抑える効果を有する。また、Zrは、CやNを無害化して、溶接部で粒界腐食が生じることを防ぐ効果がある。これらの効果を得るためには、0.02%以上の添加が必要である。一方、0.40%を超えて添加すると、熱延板の靭性をかえって低下させるため、製造を困難にする。さらに、C、NまたはOと結合した介在物が多くなり、表面欠陥を増加させる場合がある。よって、Zrは0.02〜0.40%の範囲とする必要がある。
本発明鋼では、Tiを低減しているため、鋼板の溶接部での鋭敏化が懸念されるが、Zr/(C+N)を4以上、好ましくは8以上とすることで、溶接部での鋭敏化を抑えることができる。特に、入熱の大きい溶接を行う場合などは、Zr量を0.2%以上とすることが好ましい。
なお、添加量の下限値は、絶対量で0.05%とすることが、靭性改善効果の点で好適である。
なお、本発明に従う熱延板をフェライト系ステンレス冷延鋼板に仕上げた場合も、上記した靭性値と同じかそれ以上となることが確かめられている。
なお、本発明中で、実質的とは、鋼板の窒化物中のZrNの割合が95質量%以上であることを意味する。また、その他の窒化物としてはTiN、AlN、Cr2N等が考えられるが、これらが合計で5質量%未満であれば問題ない。
Cu:0.3〜0.8%
Cuは、耐食性を向上させるために有用な元素であり、特に隙間腐食を低減させる上で有効な元素である。この効果を得るためには、0.3%以上の添加が必要である。一方、0.8%を超えて添加すると、熱間加工性が低下する。よって、Cuは0.3〜0.8%の範囲に限定する。好ましい範囲は、0.3%以上0.5%以下である。ただし、特に高い耐食性を必要としない場合には、Cuは添加しなくても良い。
Moは、耐食性を向上させる元素であり、高い耐食性を必要とする場合には、添加することが有効である。一方で、高価な元素であることに加えて、過剰に添加すると熱延板の靭性の低下により、製造性が悪くなるおそれがある。さらに、冷延焼鈍板を硬くして加工性を低下させるので、添加する場合は、0.1〜2.5%とするのが望ましい。
Bは、深絞り成形時の耐二次加工脆性を改善するために有効な元素である。その効果は、0.0002%未満では得られない。一方、過剰な添加は、熱間加工性と深絞り性を低下させる。よって、添加量は、0.0002〜0.002%の範囲が好ましい。
以下に本発明に従うフェライト系ステンレス鋼板の製造方法を具体的に説明する。
最初に、転炉または電気炉等で1次精錬することにより、所定の合金成分を添加した溶鋼を作製する。
ついで、真空脱ガス(RH)法、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)法、AOD(Argon Oxygen Decarburization)法等で、2次精錬を施す。本発明においてZrの添加は、上述した製鋼段階すなわち、1次精錬工程および2次精錬工程のいずれでもよいが、Zrの酸化を抑制する観点から、2次精錬時に投入することが最も好ましい。
シグマ脆性は、600〜800℃に加熱された際に、σ相が析出することが原因といわれており、Crの含有率が高いほど起こりやすい。また、475℃脆性は、475℃付近に加熱された際に、低Crフェライト相とCr側固溶体(α´相)の2相に分離することが原因といわれている。
このため、20%を超えるCrを含有させつつ、熱延板の靭性を改善するためには、これらの温度域での保持時間を短くすることが有効であるため、熱延での巻取り温度を450℃以下にするなどの方法が取られている。
また、必要に応じて、光輝焼鈍ラインで光輝焼鈍を行っても良い。さらに、各種研磨等により、所定の表面状態に仕上げることも可能である。
さらに、Zrを添加した本発明鋼は、ZrNの効果により、溶接部近傍での結晶粒粗大化がZrNにより有効に抑えられるため、溶接が必要となる構造材用途に対しても有利に用いることができる。
ついで、スラブの表面を専用のグラインダーを用いて削った後、1200℃の温度に加熱し、ついで、熱間圧延により板厚5.0mmの熱延板コイルとした。熱延後の巻取り温度は、550℃とした。なお、No.4鋼以外については、さらに1000℃、1分の熱延焼鈍を施した。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、C+N:0.05%以下、Si:0.70%以下、Mn:0.50%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:16〜25%、Ni:1.0%以下、Ti:4×(C+N)%未満、V:0.1%以下、Nb:0.1%以下、Al:0.01〜0.15%、およびZr:0.02〜0.40%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼板中の窒化物が実質的にZrNであることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
- 前記フェライト系ステンレス鋼板において、さらに、質量%で、Cu:0.3〜0.8%、Mo:0.1〜2.5%、およびB:0.0002〜0.002%から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- 製鋼後の溶鋼をスラブとし、スラブ加熱後、熱間圧延を施し、あるいはさらに熱延板焼鈍を施して請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、Zr源として、製鋼段階でフェロジルコニウムを添加することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 前記スラブ加熱における加熱温度を1100〜1300℃、前記熱間圧延後の熱延板厚みを4mm以上とすることを特徴とする請求項3に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 前記熱間圧延のまま、または熱延板焼鈍後の0℃でのシャルピー衝撃試験における単位面積あたりの吸収エネルギーの値(vE0)が、50J/cm2以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項3〜5のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法において、前記熱間圧延後または熱延板焼鈍後、脱スケールし、ついで冷間圧延、仕上げ焼鈍および酸洗を施すに際し、冷間圧延後の冷延板の厚みを4mm以下とすることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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