JP2011213540A - シリコン含浸炭化ケイ素セラミックス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量かつ高剛性であり、しかも、低コストで得られ、厚物や大型品にも適したシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粉末及び硬化剤を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを型に鋳込み、硬化体を作製する工程と、前記硬化体を乾燥後、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得る工程と、前記炭化ケイ素多孔体にシリコンを含浸させる工程とを経て、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなり、ヤング率が300GPa以下であるシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製する。
【選択図】図2
【解決手段】粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粉末及び硬化剤を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを型に鋳込み、硬化体を作製する工程と、前記硬化体を乾燥後、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得る工程と、前記炭化ケイ素多孔体にシリコンを含浸させる工程とを経て、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなり、ヤング率が300GPa以下であるシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製する。
【選択図】図2
Description
本発明は、駆動体ステージや定盤等の軽量・高剛性の構造体に用いられ、次世代フラットパネルディスプレイ(FPD)用ステージ部材にも好適に用いることができるシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス及びその製造方法に関する。
金属基セラミックス複合材(MMC:Metal Matrix Composite)は、軽量かつ高剛性であるという特性を有することから、駆動体ステージや定盤等の精密性を要求される構造体に用いられている。これらの複合材の中でも、FPD用ステージ部材としては、アルミニウム含浸炭化ケイ素材料が、主に使用されている。
しかしながら、アルミニウム含浸炭化ケイ素材料は、コストが高く、内部に未含浸部分が生じやすく、均質性に劣るという課題を有していた。
また、次世代FPD用ステージ部材においては、FPDのガラスパネルの大型化が進んでおり、精密性、すなわち、剛性を維持しつつ、さらなる軽量化が求められ、かつ、露光装置の大型化にも対応する必要がある。
また、次世代FPD用ステージ部材においては、FPDのガラスパネルの大型化が進んでおり、精密性、すなわち、剛性を維持しつつ、さらなる軽量化が求められ、かつ、露光装置の大型化にも対応する必要がある。
これに対して、本発明者らは、半導体製造等における各種部材において、耐熱性、耐食性、強度等の特性に優れた複合材料として多用されているシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを、次世代FPD用ステージ部材に適用すべく、開発を進めてきた。
従来、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの製造方法としては、反応焼結により得られた炭化ケイ素多孔体に、シリコンを含浸させる方法が一般的である(特許文献1〜3参照)。この反応焼結の際、炭化ケイ素原料粉末表面の二酸化ケイ素を除去し、炭化ケイ素多孔体の強度の向上を図るため、また、含浸するシリコンと反応して炭化させて炭化ケイ素を生成させる等の目的でカーボン粉が添加される。
上記製造方法によれば、カーボン粉の作用により、反応焼結によって得られる炭化ケイ素多孔体の強度は確保されるものの、炭化ケイ素粒子の周囲のカーボンが体積膨張し、炭化ケイ素の焼結時のネック成長に影響するため、厚物や大型品を製造する場合には、内部応力が蓄積され、変形やクラックを生じるという課題を有していた。
したがって、カーボン粉を添加することなく、強度を維持しつつ、軽量かつ高剛性のシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを得ることが望まれる。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、軽量かつ高剛性であり、しかも、低コストで得られ、厚物や大型品にも適したシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなり、ヤング率が300GPa以下であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、厚物や大型品であっても、変形やクラックが生じず、高強度で、軽量かつ高剛性であるシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスが得られる。
このような構成とすることにより、厚物や大型品であっても、変形やクラックが生じず、高強度で、軽量かつ高剛性であるシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスが得られる。
前記シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、シリコン含有率が30vol%以上90vol%以下であることが好ましい。
シリコン含有率を上記範囲内とすることにより、炭化ケイ素の強度特性を十分に発揮し、かつ、軽量化を図ることができる。
シリコン含有率を上記範囲内とすることにより、炭化ケイ素の強度特性を十分に発揮し、かつ、軽量化を図ることができる。
また、前記炭化ケイ素多孔体は、気孔分布が均一であり、連通孔を有していることが好ましい。
このような気孔構造を有していることにより、炭化ケイ素多孔体の内部にまで、均一に満遍なく、シリコンが含浸され、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスのシリコン含有率及び均質性を高めることができる。
このような気孔構造を有していることにより、炭化ケイ素多孔体の内部にまで、均一に満遍なく、シリコンが含浸され、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスのシリコン含有率及び均質性を高めることができる。
また、本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの製造方法は、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粉末及び硬化剤を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを型に鋳込み、硬化体を作製する工程と、前記硬化体を乾燥後、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得る工程と、前記炭化ケイ素多孔体にシリコンを含浸させる工程とを備えていることを特徴とする。
このような条件下で焼結させることにより、カーボン粉を添加することなく、炭化ケイ素多孔体の強度を維持することが可能となり、上記の本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを好適に得ることができる。
このような条件下で焼結させることにより、カーボン粉を添加することなく、炭化ケイ素多孔体の強度を維持することが可能となり、上記の本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを好適に得ることができる。
上記製造方法では、前記スラリー調製工程において、起泡剤を添加し、発泡スラリーを調製することが好ましい。
このような撹拌起泡法を用いることにより、炭化ケイ素多孔体の骨格自体が多孔質となるため、シリコンの含有率が高まり、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの強度特性を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
このような撹拌起泡法を用いることにより、炭化ケイ素多孔体の骨格自体が多孔質となるため、シリコンの含有率が高まり、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの強度特性を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
本発明によれば、高強度で、軽量かつ高剛性のシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスが得られ、しかも、厚物や大型品であっても、低コストでの製造が可能である。
したがって、本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、駆動体ステージや定盤等の軽量・高剛性であることが求められる構造体に好適であり、さらに、大型化が進んでいる次世代フラットパネルディスプレイ(FPD)用ステージ部材にも好適に用いることができる。
したがって、本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、駆動体ステージや定盤等の軽量・高剛性であることが求められる構造体に好適であり、さらに、大型化が進んでいる次世代フラットパネルディスプレイ(FPD)用ステージ部材にも好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなるものである。そして、このシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、ヤング率が300GPa以下であることを特徴としている。
このように構成されたシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、厚物や大型品であっても、変形やクラックが生じず、高強度で、軽量かつ高剛性であるという特長を有している。
本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなるものである。そして、このシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、ヤング率が300GPa以下であることを特徴としている。
このように構成されたシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、厚物や大型品であっても、変形やクラックが生じず、高強度で、軽量かつ高剛性であるという特長を有している。
前記シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスにおいて、シリコンを含浸させる炭化ケイ素多孔体は、α−SiC粒子のみからなるものである。
炭化ケイ素の結晶構造は、高温相のα型と低温相のβ型とがあるが、前記炭化ケイ素多孔体は、実質的にβ−SiCを含まないものである。α−SiCの方が高温で安定であり、α−SiC粒子のみで構成されることにより、均質な炭化ケイ素多孔体が得られ、また、β−SiCよりも原料コストが低いことから好ましい。
炭化ケイ素の結晶構造は、高温相のα型と低温相のβ型とがあるが、前記炭化ケイ素多孔体は、実質的にβ−SiCを含まないものである。α−SiCの方が高温で安定であり、α−SiC粒子のみで構成されることにより、均質な炭化ケイ素多孔体が得られ、また、β−SiCよりも原料コストが低いことから好ましい。
前記シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを構成する炭化ケイ素多孔体部分のα−SiC粒子のサイズは、粒径2μm以上20μm以下、平均粒径5μm以上10μm以下であることが好ましい。さらに、(最大粒径−最小粒径)÷平均粒径≦3の関係を満たすα−SiC粒子であることが好ましい。
α−SiC粒子が上記のような粒度分布を有していれば、前記炭化ケイ素多孔体部分の気孔分布を均一、すなわち、前記炭化ケイ素多孔体の任意の断面における近接するSiC粒子同士の最短の距離が、ほぼSiC粒子の平均粒径と等しい気孔分布となり、気孔内部にシリコンを含浸することができ、かつ、ハンドリングに十分な強度で得ることができる。
α−SiC粒子が上記のような粒度分布を有していれば、前記炭化ケイ素多孔体部分の気孔分布を均一、すなわち、前記炭化ケイ素多孔体の任意の断面における近接するSiC粒子同士の最短の距離が、ほぼSiC粒子の平均粒径と等しい気孔分布となり、気孔内部にシリコンを含浸することができ、かつ、ハンドリングに十分な強度で得ることができる。
前記ヤング率は、引張り又は圧縮応力と歪みの関係から求められ、弾性を示す係数であり、値が大きいほど剛性が高くなるが、300GPaを超えると、シリコン含有率が低すぎて、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの十分な軽量化が図れない。
前記シリコン含浸炭化ケイ素セラミックス中のシリコン含有率は、30vol%以上90vol%以下であることが好ましい。
前記シリコン含有率が30vol%未満の場合は、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの十分な軽量化が図れない。一方、前記シリコン含有率が90vol%以上の場合は、炭化ケイ素の特性が十分に発揮されず、十分な剛性及び強度が得られない。
前記シリコン含有率が30vol%未満の場合は、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの十分な軽量化が図れない。一方、前記シリコン含有率が90vol%以上の場合は、炭化ケイ素の特性が十分に発揮されず、十分な剛性及び強度が得られない。
上記のような本発明に係るシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスは、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粉末及び硬化剤を含むスラリーを調製する工程と、前記スラリーを型に鋳込み、硬化体を作製する工程と、前記硬化体を乾燥後、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得る工程と、前記炭化ケイ素多孔体にシリコンを含浸させる工程とを備えた本発明に係る製造方法により得ることができる。
上記製造方法において、炭化ケイ素多孔体は、いわゆるゲルキャスト法により製造される。上述したように、従来、ゲルキャスト法においては、多孔体である炭化ケイ素の成形体の強度を向上させるために、原料としてカーボン粉が添加されていたが、本発明においては、所定の条件下で焼結させることにより、カーボン粉を添加することなく、炭化ケイ素多孔体の強度を維持することを可能にした。
したがって、上記製造方法においては、原料としては、炭化ケイ素粉のみを用いる。
したがって、上記製造方法においては、原料としては、炭化ケイ素粉のみを用いる。
また、本発明においては、炭化ケイ素粉としては、α−SiC粉末を使用する。
上述したように、α−SiCは、高温で安定であり、均質な炭化ケイ素多孔体が得られ、また、β−SiCよりも原料コストが低いことから好ましい。
上述したように、α−SiCは、高温で安定であり、均質な炭化ケイ素多孔体が得られ、また、β−SiCよりも原料コストが低いことから好ましい。
前記α−SiC粉末は、粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のサイズのものを用いる。
最小粒径が1μm未満、また、平均粒径が2μm未満の場合、粒子同士が凝集しやすく、均質な焼結体(炭化ケイ素多孔体)が得られにくい。
一方、最大粒径が150μmを超える場合、また、平均粒径が100μmを超える場合、十分な強度が得られず、炭化ケイ素多孔体にクラックが生じやすくなる。
最小粒径が1μm未満、また、平均粒径が2μm未満の場合、粒子同士が凝集しやすく、均質な焼結体(炭化ケイ素多孔体)が得られにくい。
一方、最大粒径が150μmを超える場合、また、平均粒径が100μmを超える場合、十分な強度が得られず、炭化ケイ素多孔体にクラックが生じやすくなる。
前記スラリー調製工程においては、α−SiC粉末を分散媒に加えて、撹拌混合する。
分散媒としては、揮発性を有する液体を用い、通常、水であるが、その他、エタノールやその混合水溶液等を用いることもできる。
撹拌混合方法は、特に限定されるものではないが、通常、ボールミルを用いて、均質なスラリーが得られるまで混合する。
分散媒としては、揮発性を有する液体を用い、通常、水であるが、その他、エタノールやその混合水溶液等を用いることもできる。
撹拌混合方法は、特に限定されるものではないが、通常、ボールミルを用いて、均質なスラリーが得られるまで混合する。
また、前記スラリー調製工程においては、後でスラリーを硬化させて硬化体を得るために、硬化剤を添加する。この硬化剤としては、スラリーを鋳込む際の操作性、硬化体の形状保持及び加工性等の観点から、ゲル化剤を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンイミン等のイミン系樹脂とその架橋剤である水溶性エポキシ樹脂等の架橋重合性樹脂等の組み合わせや、デンプン、寒天、ゼラチン等の天然物のゲル化剤等を用いることができる。安定的に硬化させるためには、前者のような合成樹脂系のゲル化剤を用いることが好ましい。また、イミン系樹脂は、α−SiC粉末の分散剤としても機能し、かつ、スラリーの流動性を高めることができる点から好ましい。
前記硬化剤の添加量は、その種類に応じて、硬化体の形状保持及び加工容易性等を考慮して、適宜決定される。
前記硬化剤の添加量は、その種類に応じて、硬化体の形状保持及び加工容易性等を考慮して、適宜決定される。
また、前記スラリー中には、起泡剤を添加し、撹拌混合することにより、発泡スラリーとすることが好ましい。
このような発泡スラリーを硬化させる、いわゆる撹拌起泡法を用いることにより、気孔分布が均一であり、連通孔を有している炭化ケイ素多孔体を得ることができる。これにより、後の工程において、該炭化ケイ素多孔体の内部にまで、均一に満遍なく、シリコンを含浸させることができる。
また、前記炭化ケイ素多孔体の気孔を取り囲む骨格自体も多孔質となるため、シリコン含浸率を高めることができる。
このような発泡スラリーを硬化させる、いわゆる撹拌起泡法を用いることにより、気孔分布が均一であり、連通孔を有している炭化ケイ素多孔体を得ることができる。これにより、後の工程において、該炭化ケイ素多孔体の内部にまで、均一に満遍なく、シリコンを含浸させることができる。
また、前記炭化ケイ素多孔体の気孔を取り囲む骨格自体も多孔質となるため、シリコン含浸率を高めることができる。
さらに、前記スラリー中には、必要に応じて、分散剤、バインダ等の添加剤を添加してもよい。
なお、前記硬化剤及び起泡剤を含むこれらの添加剤は、後の炭化ケイ素多孔体を得る焼結工程において、焼失するものを用いる。
なお、前記硬化剤及び起泡剤を含むこれらの添加剤は、後の炭化ケイ素多孔体を得る焼結工程において、焼失するものを用いる。
上記において得られたスラリーを所定の型に鋳込み、静置して硬化体を作製した後、乾燥させる。
この乾燥は、室温での静置や一般的な温風乾燥機を用いて行うことができるが、特に、厚物や大型品の場合は、硬化体にクラックや反り等の変形が生じることを防止する観点から、30〜100℃の低温で加湿乾燥することが好ましい。
この乾燥は、室温での静置や一般的な温風乾燥機を用いて行うことができるが、特に、厚物や大型品の場合は、硬化体にクラックや反り等の変形が生じることを防止する観点から、30〜100℃の低温で加湿乾燥することが好ましい。
上記において乾燥させた硬化体を、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させることにより、炭化ケイ素多孔体が得られる。
焼結の際は、硬化体表面で酸化反応等が生じることを防止するために、不活性ガス雰囲気下で行うが、焼結のための加熱により、原料であるα−SiC粉末の酸化やスラリー調製時に添加した各種添加剤に起因して、酸素やシリコン等の反応性のガスが発生する。本発明においては、このような焼結時の雰囲気中に含まれる酸素を、上記のように厳密に制御する。
このように、雰囲気中の酸素分圧を抑制することにより、原料としてカーボン粉を用いなくても、炭化ケイ素多孔体の十分な強度を維持することができる。
焼結の際は、硬化体表面で酸化反応等が生じることを防止するために、不活性ガス雰囲気下で行うが、焼結のための加熱により、原料であるα−SiC粉末の酸化やスラリー調製時に添加した各種添加剤に起因して、酸素やシリコン等の反応性のガスが発生する。本発明においては、このような焼結時の雰囲気中に含まれる酸素を、上記のように厳密に制御する。
このように、雰囲気中の酸素分圧を抑制することにより、原料としてカーボン粉を用いなくても、炭化ケイ素多孔体の十分な強度を維持することができる。
前記酸素分圧は、超高純度(6N以上)の不活性ガスあるいはまた酸素ポンプにより酸素を除去した不活性ガスを用いて、配管途中に設けた酸素濃度検出器により検出測定し、連続的に不活性ガスを供給しながら、排気を行うことにより、制御する。
前記焼結時の酸素分圧が10−1Paを超える場合、α−SiC粉末表面の酸化膜が除去されず、焼結が阻害され、多孔体強度が著しく低下し、ハンドリングが困難となる。
前記焼結時の酸素分圧が10−1Paを超える場合、α−SiC粉末表面の酸化膜が除去されず、焼結が阻害され、多孔体強度が著しく低下し、ハンドリングが困難となる。
なお、原料であるα−SiC粉末の表面に生成した自然酸化膜を、スラリー調製時に予め除去しておくことにより、焼結時における前記酸素分圧を上記範囲内に抑制することも可能である。
具体的には、フッ酸、又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリで、α−SiC粉末を十分に洗浄し、不活性ガス雰囲気で乾燥、保持することにより、該α−SiC粉末に含まれる二酸化ケイ素を0.2重量%以下にすることができ、焼結時における酸素分圧を10−1Pa以下にすることができる。
具体的には、フッ酸、又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリで、α−SiC粉末を十分に洗浄し、不活性ガス雰囲気で乾燥、保持することにより、該α−SiC粉末に含まれる二酸化ケイ素を0.2重量%以下にすることができ、焼結時における酸素分圧を10−1Pa以下にすることができる。
また、炭化ケイ素多孔体を得るための焼結温度は、2000℃以上2400℃以下とし、好ましくは、2150℃以上2250℃以下とする。
前記焼結温度が2000℃未満では、焼結が十分に進行せず、炭化ケイ素多孔体の十分な強度が得られない。
一方、前記焼結温度が2400℃を超える場合は、α−SiCの分解速度が大きくなりすぎ、焼結が進行しにくくなるとともに、炭化ケイ素多孔体にクラックや変形が生じる。
なお、焼結前に、スラリー調製時に添加した各種添加剤や分散媒の成分を除去するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、焼結温度よりも低温の400〜1000℃で脱脂することが好ましい。
前記焼結温度が2000℃未満では、焼結が十分に進行せず、炭化ケイ素多孔体の十分な強度が得られない。
一方、前記焼結温度が2400℃を超える場合は、α−SiCの分解速度が大きくなりすぎ、焼結が進行しにくくなるとともに、炭化ケイ素多孔体にクラックや変形が生じる。
なお、焼結前に、スラリー調製時に添加した各種添加剤や分散媒の成分を除去するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、焼結温度よりも低温の400〜1000℃で脱脂することが好ましい。
上記のようにして得られた炭化ケイ素多孔体に、シリコンを含浸させることにより、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスが得られる。
シリコン含浸工程は、公知の方法により行うことができ、具体的には、不活性ガス雰囲気下又は0.01〜20Torrの減圧下等の非酸化性雰囲気下で、1450〜1700℃で、前記炭化ケイ素多孔体に溶融シリコンを含浸させる。
シリコン含浸工程は、公知の方法により行うことができ、具体的には、不活性ガス雰囲気下又は0.01〜20Torrの減圧下等の非酸化性雰囲気下で、1450〜1700℃で、前記炭化ケイ素多孔体に溶融シリコンを含浸させる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
粒径2μm以上12μm以下、平均粒径5μmのα−SiC粉末500重量部、ポリエチルイミン樹脂(バインダ)30重量部、純水200重量部をポリポットに入れ、ボールミルで一晩撹拌混合した後、水性エポキシ樹脂(ソルビトールグリシジルエーテル)10重量部を添加して撹拌混合して、スラリーを調製した。
このスラリーを100mm×50mm×厚さ20mmの型に鋳込み、約3時間静置して、硬化体を作製した。
この硬化体を、35℃、湿度99〜92%で72時間加湿乾燥した後、40℃で48時間温風乾燥した。さらに、アルゴン雰囲気下、6時間かけて600℃まで昇温して2時間保持して、脱脂処理した。そして、アルゴン雰囲気中、酸素分圧を10−3Pa以下として、2200℃で2時間保持して、焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得た。
この炭化ケイ素多孔体に、減圧下(4Torr)、1470℃で2時間かけて、シリコンを含浸させて、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを得た。
[実施例1]
粒径2μm以上12μm以下、平均粒径5μmのα−SiC粉末500重量部、ポリエチルイミン樹脂(バインダ)30重量部、純水200重量部をポリポットに入れ、ボールミルで一晩撹拌混合した後、水性エポキシ樹脂(ソルビトールグリシジルエーテル)10重量部を添加して撹拌混合して、スラリーを調製した。
このスラリーを100mm×50mm×厚さ20mmの型に鋳込み、約3時間静置して、硬化体を作製した。
この硬化体を、35℃、湿度99〜92%で72時間加湿乾燥した後、40℃で48時間温風乾燥した。さらに、アルゴン雰囲気下、6時間かけて600℃まで昇温して2時間保持して、脱脂処理した。そして、アルゴン雰囲気中、酸素分圧を10−3Pa以下として、2200℃で2時間保持して、焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得た。
この炭化ケイ素多孔体に、減圧下(4Torr)、1470℃で2時間かけて、シリコンを含浸させて、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを得た。
[実施例2]
実施例1のスラリー調製工程において、水性エポキシ樹脂の添加前に、起泡剤(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)6重量部を添加して撹拌起泡し、発泡スラリーとした。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
実施例1のスラリー調製工程において、水性エポキシ樹脂の添加前に、起泡剤(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)6重量部を添加して撹拌起泡し、発泡スラリーとした。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
[比較例1]
実施例1のスラリー調製工程において、原料粉末として、α−SiC粉末500重量部に代えて、α−SiC粉末495重量部及び平均粒径0.02μmのカーボンブラック5重量部を用いた。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
実施例1のスラリー調製工程において、原料粉末として、α−SiC粉末500重量部に代えて、α−SiC粉末495重量部及び平均粒径0.02μmのカーボンブラック5重量部を用いた。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
[比較例2]
実施例2のスラリー調製工程において、原料粉末として、α−SiC粉末500重量部に代えて、α−SiC粉末495重量部及び平均粒径0.02μmのカーボンブラック5重量部を用いた。それ以外については、実施例2と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
実施例2のスラリー調製工程において、原料粉末として、α−SiC粉末500重量部に代えて、α−SiC粉末495重量部及び平均粒径0.02μmのカーボンブラック5重量部を用いた。それ以外については、実施例2と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
[実施例3、比較例3〜5]
実施例1の炭化ケイ素多孔体の作製工程において、表1に示すような焼結条件にて焼結を行った。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
実施例1の炭化ケイ素多孔体の作製工程において、表1に示すような焼結条件にて焼結を行った。それ以外については、実施例1と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
[実施例4]
実施例3のスラリー調製工程において、水性エポキシ樹脂の添加前に、起泡剤(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)6重量部を添加して撹拌起泡し、発泡スラリーとした。それ以外については、実施例3と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
実施例3のスラリー調製工程において、水性エポキシ樹脂の添加前に、起泡剤(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)6重量部を添加して撹拌起泡し、発泡スラリーとした。それ以外については、実施例3と同様にして、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを作製した。
上記各実施例及び比較例において作製した炭化ケイ素多孔体について、アルキメデス法により開気孔率を測定し、また、電子顕微鏡観察により炭化ケイ素粒子の粒径を測定した。また、炭化ケイ素多孔体及びシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスを構成するSiC粒子がα型であることをX線回折により確認した。
X線回折の測定条件は、電流150mA、電圧40kV、室温、CuKα線とし、測定試料は、炭化ケイ素多孔体又はシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの任意の10ヶ所の断面における任意の10点のSiC結晶とした。
X線回折の測定条件は、電流150mA、電圧40kV、室温、CuKα線とし、測定試料は、炭化ケイ素多孔体又はシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの任意の10ヶ所の断面における任意の10点のSiC結晶とした。
また、得られたシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスについて、光学顕微鏡により表面観察を行った。さらに、3点曲げ強さ及びヤング率の測定を行った。
3点曲げ強さの測定においては、3mm×4mm×40mmの試料片を用い、測定条件は、クロスヘッドスピード0.5mm/s、支点間距離30mmとした。
ヤング率の測定においては、2mm×15mm×66mmの試料片を用い、測定条件は、クロスヘッドスピード0.5mm/s、支点間距離60mmとした。
これらの測定結果を表1にまとめて示す。
3点曲げ強さの測定においては、3mm×4mm×40mmの試料片を用い、測定条件は、クロスヘッドスピード0.5mm/s、支点間距離30mmとした。
ヤング率の測定においては、2mm×15mm×66mmの試料片を用い、測定条件は、クロスヘッドスピード0.5mm/s、支点間距離60mmとした。
これらの測定結果を表1にまとめて示す。
図1に、代表として、実施例1において作製した炭化ケイ素多孔体断面の電子顕微鏡写真(300倍)、図2に、シリコン含浸炭化ケイ素セラミックス断面の光学顕微鏡写真(50倍)を示す。また、図3に、実施例2において作製したシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス断面の光学顕微鏡写真(50倍)を示す。
実施例の炭化ケイ素多孔体は、いずれも、α−SiC粒子のみからなり、また、クラックの発生がないことが確認された。
また、撹拌起泡により炭化ケイ素多孔体を作製した場合(実施例2)、図2の電子顕微鏡写真から分かるように、炭化ケイ素多孔体の気孔を取り囲む骨格自体も多孔質となっていることが確認された。なお、図2,3の光学顕微鏡写真においては、黒色の部分が炭化ケイ素部分であり、その周囲の白い部分がシリコンである。
また、実施例のシリコン含浸炭化ケイ素は、軽量かつ高剛性であることが認められた。
また、撹拌起泡により炭化ケイ素多孔体を作製した場合(実施例2)、図2の電子顕微鏡写真から分かるように、炭化ケイ素多孔体の気孔を取り囲む骨格自体も多孔質となっていることが確認された。なお、図2,3の光学顕微鏡写真においては、黒色の部分が炭化ケイ素部分であり、その周囲の白い部分がシリコンである。
また、実施例のシリコン含浸炭化ケイ素は、軽量かつ高剛性であることが認められた。
Claims (5)
- 粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粒子のみからなる炭化ケイ素多孔体にシリコンが含浸されてなり、ヤング率が300GPa以下であることを特徴とするシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス。
- シリコン含有率が50vol%以上90vol%以下であることを特徴とする請求項1記載のシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス。
- 前記炭化ケイ素多孔体は、気孔分布が均一であり、連通孔を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のシリコン含浸炭化ケイ素セラミックス。
- 粒径1μm以上150μm以下、平均粒径2μm以上100μm以下のα−SiC粉末及び硬化剤を含むスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを型に鋳込み、硬化体を作製する工程と、
前記硬化体を乾燥後、不活性ガス雰囲気下、焼結時の酸素分圧を10−1Pa以下として、2000℃以上2400℃以下で焼結させ、炭化ケイ素多孔体を得る工程と、
前記炭化ケイ素多孔体にシリコンを含浸させる工程と
を備えていることを特徴とするシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの製造方法。 - 前記スラリー調製工程において、起泡剤を添加し、発泡スラリーを調製することを特徴とする請求項4記載のシリコン含浸炭化ケイ素セラミックスの製造方法。
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JP2021176975A (ja) * | 2017-10-18 | 2021-11-11 | ダイキン工業株式会社 | 架橋性エラストマー組成物及びフッ素ゴム成形品 |
-
2010
- 2010-03-31 JP JP2010083121A patent/JP2011213540A/ja active Pending
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US11753523B2 (en) | 2017-10-18 | 2023-09-12 | Daikin Industries, Ltd. | Crosslinkable elastomer composition and fluororubber molded article |
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