JP2011210941A - 太陽電池 - Google Patents
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Abstract
Description
発電性能を向上させるために、これまでは、光の入射によって電位差を生じる光電変換層の材質や構成についての検討が主になされてきている。これは、光電変換層における光電変換効率を直接向上させる試みである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、入射光の利用効率が高い太陽電池を提供することを課題とする。
本発明は、基材、銀電極層、光電変換層及び透明電極層がこの順に積層されてなる太陽電池であって、前記銀電極層が、下記式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(ただし、アセト酢酸銀を除く)を含有する金属銀の形成材料が加熱されて形成された金属銀を含むことを特徴とする太陽電池を提供する。
本発明の太陽電池においては、前記形成材料が、β−ケトカルボン酸銀を媒質に分散または溶解した分散液または溶液であることが好ましい。
本発明の太陽電池においては、前記形成材料が、還元剤非共存下で加熱されたことが好ましい。
本発明の太陽電池においては、前記形成材料の加熱温度が、60〜210℃であることが好ましい。
本発明の太陽電池においては、前記金属銀の抵抗率が1×10−5〜7.8×10−3Ωcmであることが好ましい。
ここに示す太陽電池1は、基材5、銀電極層4、光電変換層3及び透明電極層2がこの順に積層されてなる。
基材5は、絶縁性の樹脂からなる。
光電変換層3は、太陽電池の発電形式にあわせて公知の構成とすれば良い。例えば、シリコン薄膜太陽電池の場合には、光電変換層3として、p型シリコン膜とn型シリコン膜との間にi型シリコン膜が挟まれてなるpin接合構造を有するシリコン膜が例示でき、前記シリコン膜はアモルファス型、マイクロクリスタル型等、いずれでも良い。
透明電極層2は、例えば、TCO、ITO等の光透過性の金属酸化物で形成されたものである。
透明電極層2上には、さらに、太陽光の透過性に優れ、耐久性を有するガラス、透明樹脂等の絶縁材料からなる基板(図示略)が積層されていることが好ましい。
一方、前記β−ケトカルボン酸銀は、従来のベヘン酸銀やステアリン酸銀等とは異なり、還元剤を使用しなくても単独で容易に熱分解して金属銀を形成する。これは、これらカルボン酸銀等とは異なる機構で熱分解するからである。また、同じケトカルボン酸銀であるα−ケトカルボン酸銀よりも容易に熱分解して金属銀を形成する。α−ケトカルボン酸銀は、銀原子と塩を形成しているカルボキシ基(−C(=O)−O−)を構成する炭素原子と、カルボニル基(−C(=O)−)を構成する炭素原子とが、直接結合した構造を有するのに対し、β−ケトカルボン酸銀は、銀原子と塩を形成しているカルボキシ基(−C(=O)−O−)を構成する炭素原子と、カルボニル基(−C(=O)−)を構成する炭素原子とが、一つの炭素原子(−C−)を介して結合した構造を有する。すなわち、これらカルボン酸銀は、カルボキシ基とカルボニル基との間の炭素原子の有無の点で相違しており、化合物の特徴を決定付ける主要な骨格が相違するので、化合物としての化学的性質が異なる。しかも、カルボキシ基とカルボニル基は、いずれも電子吸引性基であり、これら電子吸引性基が直接結合している場合と、炭素原子を介して間接的に結合している場合とで、化合物としての化学的性質は全く異なる。この化合物としての主要な骨格の相違に起因して、α−ケトカルボン酸銀とβ−ケトカルボン酸銀とでは、熱分解により金属銀を形成する機構が相違する。
このように、β−ケトカルボン酸銀は、触媒非存在下で、低温で速やかに且つ十分に分解して、容易に金属銀を形成する。そのため、従来の金属銀形成材料とは異なり、形成された金属銀は、純度が極めて高く、銀原子同士が十分に結合したものとなるため、極めて優れた導電性と光の反射率を示す。
従来の金属銀形成材料を用いて形成させた金属銀は、純度等が不十分で、抵抗率が著しく高くなってしまうため、カルボン酸銀を銀電極層の形成材料として選択することは極めて困難であると考えられていた。ところが、本発明においては、β−ケトカルボン酸銀を含有する金属銀形成材料を用いることで、全く意外にも、純度が極めて高い金属銀を形成でき、導電性と光の反射率に優れる銀電極層を形成できる。
金属銀の形成材料は、前記β−ケトカルボン酸銀を含有する。β−ケトカルボニル基を有することによって、低温での迅速な分解が可能となることから、β−ケトカルボン酸銀は、前記式(1)で表されるものであれば、特に制限されない。
かかる製造方法において、前記形成材料の加熱温度は、特に制限されないが、前述のようなβ−ケトカルボン酸銀を使用することから、例えば、約60〜210℃の範囲に設定できる。この加熱温度は、各β−ケトカルボン酸銀の分解温度に応じて設定でき、例えば、分解温度と同温でもよいし、それ以上であってもよい。例えば、分解温度より+0〜+20℃の範囲が好ましく、より好ましくは分解温度より+0〜+10℃の範囲である。加熱温度をこのような範囲に設定することで、β−ケトカルボン酸銀の分解をより確実に進行させることができる。
ただし、ここに示す温度は一例であり、例えば、温度をこのような範囲よりもさらに高くして加熱時間を短縮するなど、加熱温度は、加熱時間も考慮して適宜調節できる。
[実験例1]
(イソブチリル酢酸銀の合成)
水酸化ナトリウム(0.4g)を水(10ml)に溶解し、これにメチルイソブチリルアセテート(1.44g:フルカ社製)を加え、室温で6時間撹拌した。反応生成物をエーテルで洗浄し、10%希硫酸(4.9g)を加えてエーテルで抽出した。エーテル抽出液に過剰の無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、濾過によって無水硫酸ナトリウムを除去した。そして、ロータリーエバポレータによってエーテルを除去し、イソブチリル酢酸を得た(収量1g)。
IR:1709cm−1、1505cm−1。
1.00ppm 6H d
2.83ppm 1H 5重線
3.30ppm 2H s J=7Hz
元素分析:測定値 C 30.33 H 3.65 N 0.00 Ag 45.42、計算値 C 30.41 H 3.84 Ag 45.51
(プロピオニル酢酸銀の合成)
水酸化ナトリウム(0.4g)を水(10ml)に溶解し、これにメチルプロピオニルアセテート(1.3g:アルドリッチ社製)を加え、室温で3時間撹拌した。反応生成物をエーテルで洗浄し、10%希硫酸(4.9g)を加えてエーテルで抽出した。エーテル抽出液に過剰の無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、濾過によって無水硫酸ナトリウムを除去した。そして、ロータリーエバポレータによってエーテルを除去し、プロピオニル酢酸を得た(収量0.88g)。
IR:1714cm−1、1505cm−1。
0.87ppm 3H t
2.55ppm 2H q
3.25ppm 2H s J=7Hz
(ベンゾイル酢酸銀の合成)
水酸化ナトリウム(0.4g)を水(10ml)に溶解し、これにエチルベンゾイルアセテート(2.14g:純度90%、アルドリッチ社製)を加えて室温で終夜撹拌した。反応生成物をエーテルで洗浄し、10%希硫酸(4.9g)を加え、エーテルで抽出した。エーテル抽出液に過剰の無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、濾過によって無水硫酸ナトリウムを除去した。そして、ロータリーエバポレータによってエーテルを除去し、ベンゾイル酢酸を得た(収量1.05g)。
IR:1687cm−1、1540cm−1。
3.55ppm 2H s
7.45〜8.00ppm 5H m
(α−メチルアセト酢酸銀の合成)
水酸化ナトリウム(1.92g)を水(8ml)に溶解し、これを室温で撹拌しながら、2−メチルアセト酢酸エチル(5.77g:和光純薬社製)を滴下し、さらに30分間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターによってエタノールを除去し、残留した水層をエーテルで洗浄した。これにエーテル(20ml)を添加し、さらに、氷冷下で撹拌しながら、水8mlに濃硫酸2.35gを溶解させたものを滴下した。エーテル層を分取し、水層を塩析した後にエーテルで抽出した。エーテル層を集め、α−メチルアセト酢酸のエーテル溶液を得た。
IR:1692cm−1、1523cm−1。
元素分析:C=26.49%、H=3.11%、Ag=48.91%(理論値:C=26.93%、H=3.16%、Ag=48.36%)
1.25ppm 3H d
2.25ppm 3H s
3.55ppm 1H q J=7Hz
(α−エチルアセト酢酸銀の合成)
水酸化ナトリウム(1.92g)を水(10ml)に溶解し、これを室温で撹拌しながら、2−エチルアセト酢酸エチル(6.32g:和光純薬社製)を滴下し、さらに30分間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターによってエタノールを除去し、残留した水層をエーテルで洗浄した。これにエーテル(20ml)を添加し、さらに、氷冷下で撹拌しながら、水8mlに濃硫酸2.35gを溶解させたものを滴下した。エーテル層を分取し、水層を塩析した後にエーテルで抽出した。エーテル層を集め、α−エチルアセト酢酸のエーテル溶液を得た。
IR:1700cm−1、1547cm−1。
0.83ppm 3H t
1.67ppm 2H 5重線
2.15ppm 3H s
3.25ppm 1H t J=7Hz
(熱質量分析)
実験例1〜5で合成した各β−ケトカルボン酸銀サンプルの熱質量分析(TGA)を、熱分析装置(商品名GTA50:島津製作所社製)を用いて行った。測定条件は、いずれも昇温速度10℃/分、大気雰囲気下とした。サンプル量は、それぞれイソブチリル酢酸銀8.63mg、プロピオニル酢酸銀5.24mg、ベンゾイル酢酸銀5.35mg、α−メチルアセト酢酸銀6.18mg、α−エチルアセト酢酸銀9.05mgとした。実験例1〜5のβ−カルボン酸銀のTGA測定結果をそれぞれ図7〜11のグラフに示す。また、各TGAの結果から求めた加熱処理によるサンプルの質量変化を下記表3に示す。下記表3における、合成したβ−ケトカルボン酸銀の銀含有量(理論値)およびサンプルの熱分解後の残存質量(実験値)は、下記式より算出した。
銀含有量(%) = (銀の原子量/β−ケトカルボン酸銀の分子量) × 100
残存質量(%) = (A/B) × 100
A:熱分解後のサンプルの質量(mg)
B:TGA測定に使用したサンプルの質量(mg)
実験例1〜5で合成した各β−ケトカルボン酸銀を用いて金属銀膜を形成し、その導電性を確認した。
まず、実験例1〜3で合成したβ−ケトカルボン酸銀を以下の表4に示す各媒質に分散させ、β−ケトカルボン酸銀濃度1mol/Lの分散液を調製した。そして、スポイドまたはへらを用いて、塗工面積(長さ20mm×幅3.5mm)、塗工量0.02mlの条件で、スライドグラス上に分散液を塗布した。また、実験例4で合成したα−メチルアセト酢酸銀を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、α−メチルアセト酢酸銀濃度1.5mol/Lの溶液を調製した。そして、スポイドを用いて、塗工面積(長さ50mm×幅3.5mm)、塗工量0.04mlの条件で、スライドグラス上に溶液を塗布した。実験例5で合成したα−エチルアセト酢酸銀をDMSOに溶解させ、α−エチルアセト酢酸銀濃度1.5mol/Lの溶液を調製した。そして、スポイドを用いて、塗工面積(長さ50mm×幅3.5mm)、塗工量0.04mlの条件で、スライドグラス上に溶液を塗布した。
[実施例1]
実験例4で得たα−メチルアセト酢酸銀を、15質量%の濃度で含有するコーティング液を作製し、インクジェット方式で基材上に塗布して、これを150℃で5分間加熱することで、基材上に銀電極層を形成させた。銀電極層の光沢度を光沢度計で測定した結果、129.5であった。
さらに、光電変換層及びITOからなる透明電極層を形成させて、太陽電池を作製した。
α−メチルアセト酢酸銀の濃度が15質量%ではなく、25質量%であるコーティング液を用いたこと以外は、実施例1と同様に太陽電池を作製した。銀電極層の光沢度は143.4であった。
α−メチルアセト酢酸銀を含有するコーティング液に代えて、シルバーインキ(東洋インキ製造社製、シルバーキングレオ)を使用したこと以外は、実施例1と同様に太陽電池を作製した。銀電極層の光沢度は66.8であった。
Claims (6)
- 前記β−ケトカルボン酸銀が、イソブチリル酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、α−メチルアセト酢酸銀およびα−エチルアセト酢酸銀からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
- 前記形成材料が、β−ケトカルボン酸銀を媒質に分散または溶解した分散液または溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池。
- 前記形成材料が、還元剤非共存下で加熱されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池。
- 前記形成材料の加熱温度が、60〜210℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池。
- 前記金属銀の抵抗率が1×10−5〜7.8×10−3Ωcmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池。
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