JP2012072117A - β−ケトカルボン酸銀の製造方法 - Google Patents

β−ケトカルボン酸銀の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な工程で高品質なβ−ケトカルボン酸銀を製造する方法の提供。
【解決手段】下記一般式(II)で表されるβ−ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、生成させた前記β−ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ−ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、を有するβ−ケトカルボン酸銀の製造方法であって、前記β−ケトカルボン酸塩を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、反応液から副生成物を抽出除去する工程を有さないことを特徴とするβ−ケトカルボン酸銀の製造方法。
[化1]
Figure 2012072117

【選択図】なし

Description

本発明は、少ない工程数で簡便に高品質なβ−ケトカルボン酸銀を製造する方法に関する。
金属銀は、記録材料や印刷刷版材料として、また、導電性に優れることから高導電性材料として幅広く使用されている。金属銀の一般的な製造方法としては、例えば、無機物である酸化銀を還元剤の存在下で加熱する方法が挙げられる。具体的には、例えば、粒子状の酸化銀をバインダーに分散させ、これに還元剤を添加してペーストを調製し、このペーストを基材等に塗布して加熱すれば良い。このように、還元剤の存在下で加熱することによって、酸化銀が還元され、還元により生成された金属銀が相互に融着し、金属銀を含む被膜が形成される。
しかし、金属銀の形成材料として酸化銀を使用する場合には、還元剤が必要であり、その加熱温度が約300℃程度と極めて高温であるという問題点がある。さらに、金属銀を導電性材料として使用する場合には、形成される被膜の抵抗を低減するために、より微細な酸化銀粒子を使用する必要がある。
一方、近年では、上記のような無機物にかえて有機酸銀を使用した金属銀の形成方法も報告されている。このような有機酸銀としては、例えば、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、α−ケトカルボン酸銀が報告されている(特許文献1〜3参照)。
しかし、ベヘン酸銀を使用する場合には、金属銀を形成させるために、還元剤存在下での加熱が必要であるという問題点があった。また、ステアリン酸銀やα−ケトカルボン酸銀を使用する場合には、無機物を使用した場合よりは低いものの、速やかに金属銀を形成させるためには、約210℃以上の加熱が必要であるという問題点があった。
近年、これらの問題点を解決する金属銀の製造方法として、下記一般式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀を加熱する方法が開示されている(特許文献4参照)。このβ−ケトカルボン酸銀を使用する方法は、還元剤が不要で、且つ従来よりも低い加熱温度で特性に優れた金属銀を形成できる点で、極めて優れた方法である。
Figure 2012072117
(前記式(1)において、Rは、直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、R−CY−、CY−、R−CHY−、RO−、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基、RN−、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、または、(RO)CY−である。
ただし、Yは、同一であるかまたは異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子または水素原子であり、Rは直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C〜C19脂肪族炭化水素基、または、フェニル基であり、Rは直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基であり、Rは直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C〜C16脂肪族炭化水素基であり、RおよびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C〜C18脂肪族炭化水素基である。
前記式(1)において、Xは、同一であるかまたは異なり、それぞれ水素原子、直鎖、分枝または環状の飽和または不飽和C〜C20脂肪族炭化水素基、RO−、RS−、R−CO−、R−CO−O−、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ベンジル基、フェニル基、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはベンジル基、シアノ基(−C≡N)、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)である。
ただし、Rは直鎖、分枝もしくは環状の飽和もしくは不飽和C〜C10脂肪族炭化水素基、チオフェン基(CS−)、フェニル基、ジフェニル基、または、1個もしくは複数の置換基で置換されたフェニル基もしくはジフェニル基である。)
特許文献4に具体的に記載されている前記β−ケトカルボン酸銀の製造方法のうち、得られたβ−ケトカルボン酸銀が金属銀の形成材料として具体的に有用であることが確認されている製造方法は、以下の通りである。すなわち、前記式(1)で表されるβ−ケトカルボン酸銀のカルボニル基に結合している式「−OAg」で表される基が、アルコキシ基で置換されたβ−ケトカルボン酸エステルを、塩基性条件下で加水分解してβ−ケトカルボン酸を生成させ、次いで、反応液をエーテル抽出で洗浄した後、希硫酸又は濃硫酸を添加してさらに抽出洗浄し、ジエタノールアミンを添加してpH調整と抽出洗浄を行った後、さらに硝酸銀を添加して、前記β−ケトカルボン酸銀を生成させる工程を含む製造方法のみである。
特開2003−191646号公報 特開平10−183207号公報 特開2004−315374号公報 国際公開第2007/004437号パンフレット
しかし、特許文献4に記載の上記製造方法では、従来よりも金属銀の形成材料として有用なβ−ケトカルボン酸銀が得られるものの、製造工程が煩雑であるという問題点あった。また、例えば、ジエタノールアミン添加後の抽出洗浄時に、水層と有機層との分離がきれいに進行せず、各工程に長時間を要するという問題点があった。また、目的物からの不純物の分離が不十分になることがあり、その結果、例えば、β−ケトカルボン酸銀中の不純物含有量が多くなったり、β−ケトカルボン酸銀の乾燥に長時間を要することがあるなどの問題点があった。このように、従来は、簡便な工程で高品質なβ−ケトカルボン酸銀を製造する方法が無いのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便な工程で高品質なβ−ケトカルボン酸銀を製造する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(II)で表されるβ−ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
生成させた前記β−ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ−ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
を有するβ−ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
前記β−ケトカルボン酸塩を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、反応液から副生成物を抽出除去する工程を有さないことを特徴とするβ−ケトカルボン酸銀の製造方法を提供する。
Figure 2012072117
(式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良く;Mはナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである。)
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法においては、前記β−ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ−ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有することが好ましい。
Figure 2012072117
(式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良い。)
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法においては、前記Rが炭素数1〜5の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり、前記Xが水素原子又は炭素数1〜3の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。
本発明によれば、簡便な工程で高品質なβ−ケトカルボン酸銀を製造できる。
実施例9及び比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀のFT−IRスペクトルを示す図である。 実施例9及び比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀のTG/DTAの測定結果を示す図である。 実施例14及び比較例2得られたアセト酢酸銀のFT−IRスペクトルを示す図である。 実施例14及び比較例2で得られたアセト酢酸銀のTG/DTAの測定結果を示す図である。 実施例15で得られたイソブチリル酢酸銀及び実施例16で得られたピバロイル酢酸銀のFT−IRスペクトルを示す図である。
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法は、下記一般式(II)で表されるβ−ケトカルボン酸塩(以下、β−ケトカルボン酸塩(II)と略記する)を生成させる工程と、生成させたβ−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ−ケトカルボン酸銀(以下、β−ケトカルボン酸銀(I)と略記する)を生成させる工程と、を有するβ−ケトカルボン酸銀の製造方法であって、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、反応液から副生成物を抽出除去する工程を有さないことを特徴とする。
Figure 2012072117
(式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良く;Mはナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである。)
[β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させる工程]
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法は、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させる工程(以下、β−ケトカルボン酸塩(II)生成工程と略記する)を有する。
式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
なかでも、Rは、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であることがより好ましい。
式中、Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、前記アルキル基は、Rにおける炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基と同様である。また、二つのXは、互いに同一でも異なっていても良く、異なっている場合の二つのXの組み合わせは、特に限定されない。
なかでも、Xは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。
は、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
式中、Mはナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンであり、ナトリウムイオン又はカリウムイオンであることが好ましい。
β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させる方法は特に限定されず、公知の方法を適用すれば良い。なかでも好ましい方法としては、β−ケトカルボン酸塩(II)のカルボニル基に結合している式「−O」で表される基が、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基で置換されたβ−ケトカルボン酸エステルのエステル結合を、塩基性条件下で加水分解することにより、エステルをカルボン酸塩に変換する工程を含む方法が例示できる。そして、加水分解して得られた水溶液を、そのままβ−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液として次工程に使用することが好ましい。すなわち、β−ケトカルボン酸塩(II)生成工程は、塩基を使用して前記β−ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有することが好ましい。
前記アルコキシ基は、炭素数が1〜5であることが好ましい。また、前記アラルキルオキシ基は、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1−ナフチルメチルオキシ基、2−ナフチルメチルオキシ基、1−ナフチルエチルオキシ基又は2−ナフチルエチルオキシ基であることが好ましい。
前記β−ケトカルボン酸エステルは、下記一般式(III)で表されるもの(以下、β−ケトカルボン酸エステル(III)と略記する)が好ましい。
Figure 2012072117
(式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良い。)
式中、R、Xは、前記一般式(I)及び(II)におけるR、Xと同様である。
式中、Rは炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基(−CH−C)であり、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基が例示できる。なかでも、Rは、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はベンジル基であることがより好ましい。
加水分解に供するβ−ケトカルボン酸エステル(III)は一種でも良いし、二種以上も良いが、工程を簡略化できる点で、通常は一種であることが好ましい。
加水分解で使用する前記塩基は、β−ケトカルボン酸塩(II)が得られるよう、Mに対応する金属原子(金属イオン)を含むものが好ましく、無機塩基がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムであることがより好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることが特に好ましい。
使用する前記塩基は、一種でも良いし、二種以上でも良いが、通常は一種で十分である。
前記塩基の使用量は、加水分解の条件に応じて適宜設定すれば良いが、β−ケトカルボン酸エステル(III)1モルに対して、1〜2.5モルであることが好ましく、1〜2モルであることがより好ましい。
前記塩基は、水溶液として添加することが好ましく、該水溶液の塩基の濃度は5〜15質量%であることが好ましい。
加水分解で使用する溶媒は、水又は水と有機溶媒との混合溶媒であることが好ましく、β−ケトカルボン酸エステル(III)の種類等に応じて、適宜選択すれば良い。前記混合溶媒における有機溶媒は、加水分解反応を妨げないものであれば特に限定されない。
加水分解開始時における反応液中のβ−ケトカルボン酸エステル(III)の濃度は、その他の反応条件に応じて適宜調節すれば良いが、0.5〜5mol/Lであることが好ましい。
加水分解時の温度は、5〜35℃であることが好ましく、15〜25℃であることがより好ましい。
また、加水分解の反応時間は、3〜24時間であることが好ましい。
加水分解後のβ−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液は、通常塩基性であり、その水溶液のpHは、β−ケトカルボン酸塩(II)が安定して存在する限り特に限定されない。
[β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程]
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法は、さらに、生成させたβ−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程(以下、酸性化工程と略記する)を有する。本工程においては、β−ケトカルボン酸塩(II)(R−C(=O)−CX −C(=O)−O)が、β−ケトカルボン酸(R−C(=O)−CX −C(=O)−OH)と平衡関係にあり、β−ケトカルボン酸塩(II)の方がより安定して存在していると考えられる。
本発明においては、上記のように、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させた後、β−ケトカルボン酸塩(II)が水溶液中に含まれた状態とし、この間、β−ケトカルボン酸塩(II)を含む反応液(水溶液)から副生成物を抽出除去することなく、この水溶液と硝酸とを混合して、この水溶液を酸性にする。ここで、「副生成物」としては、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させた時、又はβ−ケトカルボン酸塩(II)が水溶液中に含まれた状態とした時に生じた不純物が例示できる。例えば、β−ケトカルボン酸塩(II)生成工程が、β−ケトカルボン酸エステル(III)を加水分解する工程を有する場合には、β−ケトカルボン酸エステル(III)は「副生成物」には該当しない。
β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液と硝酸とを混合する方法としては、前記水溶液に硝酸を添加する方法と、前記水溶液を硝酸に添加する方法が例示でき、前記水溶液に硝酸を添加する方法が好ましい。
硝酸混合後の酸性水溶液のpHは、変換されたカルボキシル基が安定して存在できる範囲であれば良く、3.5〜6.5であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液は、本発明の効果を妨げない範囲内において、β−ケトカルボン酸塩(II)以外の如何なる成分を含んでいても良い。例えば、β−ケトカルボン酸塩(II)生成工程が、β−ケトカルボン酸エステル(III)を加水分解する工程を有する場合、前記水溶液は、加水分解に使用した塩基を含んでいても良い。
水溶液中に含まれるβ−ケトカルボン酸塩(II)は、一種でも良いし、二種以上でも良い。二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液と混合する硝酸の量は、硝酸混合後の水溶液のpHが所望の値となるように調節すれば良く、特に限定されない。例えば、β−ケトカルボン酸塩(II)が、β−ケトカルボン酸エステル(III)を加水分解する工程を有する方法で得られたものである場合には、硝酸の使用量は、β−ケトカルボン酸エステル(III)1モルに対して、0.03〜2モルであることが好ましく、0.04〜1.2モルであることがより好ましい。
硝酸混合時の反応液の温度は、0〜20℃であることが好ましく、3〜15℃であることがより好ましい。
硝酸は、水溶液として、β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液に滴下することが好ましい。
混合時の硝酸水溶液の濃度は5〜80質量%であることが好ましい。
硝酸混合後の反応時間は、目的物(β−ケトカルボン酸)の生成量が最大となるように調節すれば良く、特に限定されないが、例えば、10〜30分程度の短時間とすることもできる。
[酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、β−ケトカルボン酸銀(I)を生成させる工程]
本発明のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法は、さらに、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、β−ケトカルボン酸銀(I)を生成させる工程(以下、β−ケトカルボン酸銀(I)生成工程と略記する)を有する。本工程においては、β−ケトカルボン酸(R−C(=O)−CX −C(=O)−OH)と平衡関係にあり、より安定して存在しているβ−ケトカルボン酸塩(II)(R−C(=O)−CX −C(=O)−O)が、β−ケトカルボン酸銀(I)(R−C(=O)−CX −C(=O)−OAg)に変換されると考えられる。
本発明においては、上記のように、β−ケトカルボン酸塩(II)を含む水溶液を酸性にした後、この水溶液から副生成物を抽出除去することなく、前記水溶液と硝酸銀とを混合する。ここで、「副生成物」としては、先に例示したもの以外に、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合した時に生じた不純物が例示できる。
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合する方法としては、前記水溶液に硝酸銀を添加する方法と、前記水溶液を硝酸銀に添加する方法が例示でき、硝酸銀は水溶液として使用することが好ましい。
前記酸性水溶液と混合する硝酸銀の量は、β−ケトカルボン酸のカルボキシル基(−C(=O)−OH)中のすべての水素原子を銀原子で置換して、カルボキシル基(−C(=O)−OH)をカルボン酸銀(−C(=O)−OAg)に変換できる量であることが好ましい。すなわち、硝酸銀の使用量は、β−ケトカルボン酸と等モル量以上であることが好ましい。例えば、β−ケトカルボン酸塩(II)が、β−ケトカルボン酸エステル(III)を加水分解する工程を有する方法で得られたものである場合には、β−ケトカルボン酸塩(II)、β−ケトカルボン酸がそれぞれ得られた時の反応率等を考慮して、硝酸銀の使用量を調節することが好ましく、この場合の硝酸銀の使用量は、通常、β−ケトカルボン酸エステル(III)1モルに対して、0.5〜1.2モルであることが好ましい。
硝酸銀混合時の反応液の温度は、0〜20℃であることが好ましく、3〜15℃であることがより好ましい。
硝酸銀を水溶液として使用する場合、混合時の硝酸銀水溶液の濃度は15〜60質量%であることが好ましい。また、硝酸銀を水に溶解させて得られる水溶液はほぼ中性(pH6〜7程度)であり、混合時にはこの水溶液を使用すれば良いが、別途酸を添加して得られた、硝酸銀の酸性水溶液を使用しても良い。この時添加する酸は、硝酸であることが好ましい。また、硝酸銀の酸性水溶液のpHは特に限定されないが、0.5以上であることが好ましい。
硝酸銀混合後の反応時間は、目的物(β−ケトカルボン酸銀(I))の生成量が最大となるように調節すれば良く、特に限定されないが、例えば、10〜60分程度の短時間とすることもできる。
本発明は、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、反応液から副生成物を抽出除去する工程を有さない。ここで、「反応液から副生成物を抽出除去する」とは、例えば、洗浄用の溶媒を別途添加することなく反応液から副生成物を含む液体を除去したり、反応液に洗浄用の溶媒を添加して二層分離させた後、副生成物を含有する層を除去したりすることなど、反応で生じた副生成物を意図的に反応液(水溶液)から溶媒成分と共に除去することを指す。すなわち、本発明においては、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させてから硝酸銀を混合するまでの間に、副生成物の抽出除去による精製操作を一切行わない。なお、β−ケトカルボン酸エステル(III)は、上記のように「副生成物」には該当しないので、β−ケトカルボン酸塩(II)を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、抽出除去しても良いし、しなくても良い。工程を一層簡略化するという観点からは、β−ケトカルボン酸エステル(III)は、抽出除去しないことが好ましい。
本発明においては、「β−ケトカルボン酸塩(II)生成工程」終了後に、必要に応じてβ−ケトカルボン酸塩(II)が水溶液中に含まれた状態とすること以外には、反応液に対して他の操作を行うことなく、引き続き「酸性化工程」を行うことが好ましい。そして、「酸性化工程」終了後に、反応液(水溶液)に対して他の操作を行うことなく、引き続き「β−ケトカルボン酸銀(I)生成工程」を行うことが好ましい。すなわち、これらの工程間では、任意成分である各種溶媒や試薬の添加等を行うことなく、連続的に各工程を行うことが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(I)を生成させた後は、必要に応じて後処理を行い、目的物であるβ−ケトカルボン酸銀(I)を取り出せば良い。ここで、「後処理」とは、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の操作を指し、これら操作のいずれか一つを単独で、又は二つ以上を組み合わせて行えば良い。そして、β−ケトカルボン酸銀(I)の取り出しは、濃縮、結晶化、カラムクロマトグラフィー等の操作で行えば良く、必要に応じて、結晶化、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作を一回以上繰り返して、精製を行っても良い。
本発明は、β−ケトカルボン酸銀(I)として、特にイソブチリル酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、アセト酢酸銀、α−メチルアセト酢酸銀(2−メチルアセト酢酸銀)及びα−エチルアセト酢酸銀(2−エチルアセト酢酸銀)の製造に好適である。また、本発明は、中間体であるβ−ケトカルボン酸が比較的高い親水性を有するもの、例えば、ベンゼン環等の親油性が高い基を有さないものであるβ−ケトカルボン酸銀(I)の製造に好適であり、イソブチリル酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、アセト酢酸銀、α−メチルアセト酢酸銀及びα−エチルアセト酢酸銀の製造に、より好適である。
本発明によれば、上記のように途中の工程で副生成物の抽出除去を行わないので、β−ケトカルボン酸銀(I)を生成させる時には、従来法よりも多量且つ多種類の不純物が反応液中に含まれる。しかし、全く意外にも、β−ケトカルボン酸銀(I)の取り出しを行うまでの間、例えば、プロセスの進行を妨げたり、β−ケトカルボン酸銀(I)の純度を低下させたりするような不具合を生じることが無い。したがって、従来法よりも簡便な工程で、すなわち少ない工程数且つ短時間で、従来品同等以上の高品質なβ−ケトカルボン酸銀(I)が得られる。
特に、本発明の製造方法は従来法とは異なり、途中の工程で副生成物の抽出除去を行わないので、例えば、抽出洗浄時に水層と有機層との分離がきれいに進行しないという問題点を解消でき、製造に要する時間を大幅に短縮できる。さらに、目的物から不純物を十分に分離できるので、β−ケトカルボン酸銀の純度を向上させることができ、さらにβ−ケトカルボン酸銀の乾燥を遅らせる不純物を大幅に低減できるので、乾燥時間を大幅に短縮でき、β−ケトカルボン酸銀の製造時間をさらに短縮できる。
上記利点を有する本発明の製造方法は、大スケールでの製造に特に好適であり、産業化でしばしば問題となるスケールアップに伴う製造適性の低下を抑制できる点で、特に優れている。
本発明の製造方法で得られたβ−ケトカルボン酸銀(I)は、還元剤を使用せずに、例えば、210℃以下という低い温度で分解するので、金属銀の形成材料として有用である。そして、かかる金属銀の用途は特に限定されない。β−ケトカルボン酸銀(I)は、例えば、有機塩基、アルコール及び必要に応じてその他の成分を配合することで、銀インク組成物とし、これを基材に塗布及び加熱することで、容易に金属銀を形成できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<α−メチルアセト酢酸銀の製造>
[実施例1]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(12.2g(305.0mmol))を水(104.8g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、29.3g(203.2mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO)水溶液(12.2g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように5であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(25.4g(149.5mmol))を水(25.4g)に溶解させてpH6.5の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(6.7mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(167mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た(収率49%)。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、約5時間であった。例えば、α−メチルアセト酢酸銀のろ過及び洗浄には約1.5時間を要し、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥には約2時間を要した。
[実施例2〜8]
各原料の使用比率等の反応条件を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にα−メチルアセト酢酸銀を製造した。硝酸添加後の反応液のpHとα−メチルアセト酢酸銀の収率を、あわせて表1に示す。
[実施例9]
反応のスケールを3倍としたこと以外は、実施例1と同様にα−メチルアセト酢酸銀を製造した。
すなわち、水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(36.7g(917.5mmol))を水(314.4g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調整し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、88g(610.3mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO)水溶液(36.7g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように4.6であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(76.2g(448.5mmol))を水(76.2g)に溶解させてpH6.5の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH4.6の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(20mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(500mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た(収率53%)。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、実施例1の場合と同様であった。
[実施例10]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(7.3g(182.5mmol))を水(62.9g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、17.6g(122.1mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに70%硝酸(HNO)水溶液(7.3g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように4.3であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(15.2g(89.5mmol))を水(15.2g)に溶解させてpH6.5の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH4.3の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(4.0mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(100mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、実施例1の場合と同様に、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、実施例1の場合と同様であった。
[実施例11]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(7.3g(182.5mmol))を水(62.9g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、17.6g(122.1mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに70%硝酸(HNO)水溶液(5.6g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように5.8であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(15.2g(89.5mmol))を水(15.2g)に溶解させてpH6.5の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5.8の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(4.0mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(100mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、実施例1の場合と同様に、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、実施例1の場合と同様であった。
[実施例12]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(7.3g(182.5mmol))を水(62.9g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、17.6g(122.1mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに70%硝酸(HNO)水溶液(5.3g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように6.4であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(15.2g(89.5mmol))を水(15.2g)に溶解させてpH6.5の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH6.4の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(4.0mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(100mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、実施例1の場合と同様に、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、実施例1の場合と同様であった。
[実施例13]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(7.3g(182.5mmol))を水(62.9g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃の2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、17.6g(122.1mmol))に30分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールと未反応の原料を除去し、得られた2−メチルアセト酢酸ナトリウムを含む残留物を5〜10℃に冷却しながら、ここに70%硝酸(HNO)水溶液(5.6g)を10分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHは、表1に示すように5.8であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(15.2g(89.5mmol))を水(15.2g)に溶解させ、さらに0.2%硝酸水溶液(10.3g)を加えてpH1の硝酸銀水溶液を調製し、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5.8の反応液を30分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、α−メチルアセト酢酸銀を生成させた。各原料の使用比率等を表1に示す。
次いで、得られた反応液をろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(4.0mL)で二回洗浄した後、適量の2−プロパノールで洗浄した。さらに、得られた結晶を2−プロパノール(100mL)中で攪拌洗浄してからろ別し、適量の2−プロパノールで洗浄した後、乾燥させることにより、実施例1の場合と同様に、目的物であるα−メチルアセト酢酸銀の結晶を得た。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、実施例1の場合と同様であった。
Figure 2012072117
実施例1〜13で得られたα−メチルアセト酢酸銀を、(1)誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)、(2)元素分析、(3)微量全窒素分析、(4)フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供した。それぞれの分析法は、以下の通りである。
(1)ICP−MS
下記分析装置及び分析条件により、常法に従ってNa含有量を求めた。
(分析装置)
分解装置 : CEM,MARS5
分析装置(ICP−MS) : 7500cs(Agilent Technologies社製)
(分析条件)
RF出力 : 1.5kW
ネブライザー : ポリテトラフルオロエチレン製同軸ネブライザー
m/z : 23
リアクションガスモード : ON(H
(2)元素分析
下記CHN元素分析装置を使用して、常法に従って窒素(N)含有量を求めた。
(分析装置)
CHN元素分析装置 : varioELIII(Elementar社製)
(分析条件)
燃焼管温度 : 950℃
還元管温度 : 500℃
キャリアーガス : He 200ml/分
検出器 : TCD
標準試料 : アセトアニリド(元素分析用標準試薬) N:10.36%
定量法 : 標準試料による多点検量線方式
(3)微量全窒素分析
下記微量全窒素分析装置を使用して、常法に従って全窒素量を求めた。
(分析装置)
微量全窒素分析装置 : TN−110(三菱化学社製)
(分析条件)
温度 : 800℃(熱分解炉)、900℃(酸化炉)
キャリアーガス : 酸素(300mL/分)、アルゴン/酸素(400mL/分)
標準試料 : ピリジン/トルエン溶液
検出器 : 減圧化学発光検出器
レンジ : High
(4)FT−IR
下記FT−IR装置を使用して、常法に従ってFT−IRスペクトルを測定した。
(分析装置)
FT−IR装置 : Spectrum One/Auto Image FT−IR Spectrometer(Perkin Elmer社製)
付属装置 : Universal ATR Sampling Accessory
(分析条件)
測定範囲 : 4000〜600cm−1
測定回数 : 4回
温度 : 室温
雰囲気 : 空気
実施例1〜13のいずれにおいても同様の分析結果が得られ、目的物が得られたことを確認できた。実施例9の分析結果を以下に例示する。
(1)Na含有量:16μg/g
(2)元素分析値:C=26.86%、H=3.184%、N=0.00%(理論値:C=26.93%、H=3.16%、N=0.00%)
(3)N含有量:32μg/g
(4)FT−IRスペクトル:図1に示す。
[比較例1]
「特願2007−523425号公報」に記載の方法に従って、従来法によりα−メチルアセト酢酸銀を製造した。
すなわち、水酸化ナトリウム(1.92g)を水(8ml)に溶解させ、これを室温で撹拌しながら、2−メチルアセト酢酸エチル(和光純薬社製、5.77g)を滴下し、さらに30分間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターによる濃縮でエタノールを除去し、残留した水層をエーテルで洗浄した。これにエーテル(20ml)を添加し、さらに、氷冷下で撹拌しながら、水8mlに濃硫酸2.35gを溶解させたものを滴下した。エーテル層を分取し、水層を塩析した後にエーテルで抽出した。エーテル層を集め、α−メチルアセト酢酸のエーテル溶液を得た。
ジエタノールアミン(4.4g)を水(5ml)に溶解させ、この溶液を、氷冷下でα−メチルアセト酢酸のエーテル溶液に添加した。続いて、水(8ml)に硝酸銀(6.8g)を溶解させたものを滴下した。そして、析出した白色沈殿物をろ過し、氷水、続いてイソプロパノールで洗浄し、乾燥させることによって、α−メチルアセト酢酸銀を白色沈殿物として得た(収率53%)。
2−メチルアセト酢酸エチルの加水分解後、すなわち、ロータリーエバポレーターによる濃縮から、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥終了までに要した時間は、約11.5時間であった。特に、α−メチルアセト酢酸銀のろ過及び洗浄が速やかに進行せず、約2時間を要した。また、α−メチルアセト酢酸銀の結晶の乾燥も速やかに進行せず、約6時間を要した。
このように、本比較例では、工程数が多いだけでなく、α−メチルアセト酢酸銀のろ過性及び乾燥性が良くなく、製造時間は実施例1よりも大幅に長かった。
得られたα−メチルアセト酢酸銀を、上記実施例の場合と同様に、(1)誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)、(2)元素分析、(3)微量全窒素分析、(4)フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供した。分析結果は以下の通りである。
(1)Na含有量:4.4μg/g
(2)元素分析値:C=26.74%、H=3.137%、N=0.006%(理論値:C=26.93%、H=3.16%、N=0.00%)
(3)N含有量:910μg/g
(4)FT−IRスペクトル:図1に示す。
実施例1〜13及び比較例1のいずれでも、Na含有量が低く、元素分析値はほぼ理論値通りであり、得られたものがα−メチルアセト酢酸銀であることが確認できたが、N含有量は比較例1で高くなっていた。これは、抽出洗浄時に水層と有機層との分離がきれいに進行しなかった結果、ジエタノールアミンが十分に除去できず、α−メチルアセト酢酸銀のろ過性及び乾燥性が悪化し、α−メチルアセト酢酸銀中にこのジエタノールアミンが残存したことが原因ではないかと推測される。
<金属銀の形成>
2−エチルヘキシルアミン(和光純薬社製)20g、エタノール(和光純薬社製)10g、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(サーフィノール61、日信化成工業社製)0.4gを混合した後、さらに、実施例9又は比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀10gを混合して溶解させ、銀インク組成物を調製した。
次いで、得られた銀インク組成物を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SL−50、帝人デュポン社製)上に(a)30mm×0.5mm、(b)20×0.5mmの面積となるように、それぞれ帯状の図形をインクジェット法で印刷した。そして、これを150℃のオーブンで5分間加熱して金属銀を形成させ、オーブンから
PETフィルムを取り出して、これを室温まで冷却した後、金属銀の抵抗値をテスター(3244 CARD HiTESTER、日置電機社製)で測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2012072117
表2に示すように、実施例9、比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀から、いずれも導電性に優れる金属銀を基材上に形成できた。
<α−メチルアセト酢酸銀の分解温度の測定>
実施例9及び比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀を(5)熱分析−示差熱熱重量同時測定(TG/DTA)に供した。分析法は、以下の通りである。
(5)TG/DTA
下記分析装置及び分析条件により、常法に従ってTG/DTAを測定した。測定に使用したα−メチルアセト酢酸銀の量は、実施例9では9.66mg、比較例1では8.40mgであった。TG/DTAの測定結果を図2に示す。
(分析装置)
分解装置 : EXSTAR TG/DTA6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)
(分析条件)
昇温速度 : 10℃/分
温度範囲 : 室温〜200℃
雰囲気 : 空気
図2から明らかなように、実施例9で得られたα−メチルアセト酢酸銀の分解温度は113.5℃で、比較例1で得られたα−メチルアセト酢酸銀の分解温度は102.7℃であった。これは、実施例9の方がα−メチルアセト酢酸銀の純度が高いことが理由であると考えられ、比較例1のα−メチルアセト酢酸銀のN含有量が高かったことと整合する。
上記と同様の方法で、実施例1〜7のα−メチルアセト酢酸銀の分解温度を測定した。実施例9及び比較例1とともに、測定結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1〜7のα−メチルアセト酢酸銀も純度が高いことを示唆する結果が得られた。
Figure 2012072117
<アセト酢酸銀の製造>
[実施例14]
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(15.8g(395.0mmol))を水(213.8g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これをアセト酢酸エチル(井上香料製造所社製、51.5g(395.7mmol))に、20℃以下を保つように20分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5〜10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO)水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間攪拌した。この時、得られた反応液のpHをpH試験紙で確認したところ、5であった。
次いで、硝酸銀(AgNO)(47.8g(281.3mmol))を水(47.8g)に溶解させ、これを5〜10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を15分間かけて全量滴下して、さらに約10分間攪拌することにより、アセト酢酸銀を生成させた。
次いで、得られた反応液を遠心濾過して結晶をろ別し、この結晶を水(40mL)で一回洗浄した後、適量のエタノールで三回洗浄し、乾燥させることにより、目的物であるアセト酢酸銀の無色(白色)結晶を得た(収量41.2g、収率70%)。
得られたアセト酢酸銀を、実施例1〜13の場合と同様に、元素分析、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供した。元素分析の結果を以下に示す。また、FT−IRのスペクトルを図3に示す。
元素分析値:C=22.9%、H=2.3%、N=検出限界値(0.4)以下(理論値:C=23.0%、H=2.4%、N=0.0%)
[比較例2]
20℃のアセト酢酸エチル(井上香料製造所社製、43.8g)に、10%水酸化ナトリウム水溶液(134.8g)を、20℃以下を保つようにして12分間かけて滴下し、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、得られた加水分解液の半量(89.3g)を、ロータリーエバポレーターにより濃縮し、エタノールを除去した。これを、エーテル(100mL)で二回洗浄し、未反応のアセト酢酸エチルを除去した。さらに、エーテル(100mL)を加え、氷冷撹拌しながら30%硝酸水溶液(36g)を加えて、静置し、水層を除去した後、残ったエーテル層に14.4%ジエタノールアミン水溶液(132.7g)を加え、濁りが無くなるまで強く撹拌し、静置した後、エーテル層を除去した。
次いで、得られた水溶液を5〜10℃に冷却しながら、50%硝酸銀水溶液(45.7g)を5分間かけてここに全量滴下し、さらに約10分間撹拌することで、微量の黄色沈殿物を得た。これを遠心濾過してこの黄色沈殿物をろ別し、水(10mL)で一回洗浄した後、適量のエタノールで三回洗浄した後、乾燥させることにより、アセト酢酸銀の褐色固体を得た(収量52mg、収率0.2%)。
得られたアセト酢酸銀を、実施例1〜13の場合と同様に、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供した。スペクトルを図3に示す。
上記のように、比較例2で得られたアセト酢酸銀は、褐色に着色していて純度が低い上に、収率も著しく低かったのに対し、実施例14で得られたアセト酢酸銀は、無色結晶で高純度であり、収率も良好であった。これらアセト酢酸銀の品質の違いは、図3に示すFT−IRスペクトルの違いに反映されていた。
<金属銀の形成>
2−エチルヘキシルアミン(和光純薬社製)7.5g、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(サーフィノール61、日信化成工業社製)0.1g、及び実施例14で得られたアセト酢酸銀又は上記製造方法で得られたα−メチルアセト酢酸銀2.5gを氷冷下で混合して溶解させ、銀インク組成物を調製した。
次いで、得られた銀インク組成物を、5cm×5cmのPETフィルム(東レ社製、型番S10、厚さ188μm)上に滴下し、スピンコート(1500rpm×10秒、2000rpm×1秒)によって銀インク組成物を塗工して、150℃の熱風オーブンで10分間加熱して乾燥させた。この時の銀インク組成物の塗工量を表4に示す。
その結果、アセト酢酸銀が配合された銀インク組成物、及びα−メチルアセト酢酸銀が配合された銀インク組成物のいずれを使用した場合でも、PET表面に金属銀が形成され、銀鏡となっていた。
2端子テスタを使用して、PETフィルムの四つの角のうち、対角線を形成するような二つの角の近傍において、金属銀間の抵抗値を測定した。抵抗値の測定は、二組の対角線に対応して、二組測定し、それぞれの測定値から平均値を求めた。結果を表4に示す。
Figure 2012072117
表4に示すように、いずれの銀インク組成物を使用した場合でも、金属銀は導電性が良好で、ほぼ同等であった。すなわち、実施例14で得られたアセト酢酸銀は、上記α−メチルアセト酢酸銀と同様に品質が良好であることを確認できた。
<アセト酢酸銀の分解温度の測定>
実施例14及び比較例2で得られたアセト酢酸銀について、実施例9と同様の方法でTG/DTAを測定した。TG/DTAの測定結果を図4に示す。
図4から明らかなように、実施例14で得られたアセト酢酸銀の分解温度は137.4℃で、比較例2で得られたアセト酢酸銀の分解温度は120.7℃であった。これは、実施例14の方がアセト酢酸銀の純度が高いことが理由であると考えられる。
<イソブチリル酢酸銀の製造>
[実施例15]
イソブチリル酢酸メチル(日本精化社製、25.23g(175.0mmol))に、10%水酸化ナトリウム水溶液(70.0g(水酸化ナトリウム175.0mmol))を、20℃以下を保つように5分間かけて滴下し、さらに引き続き20℃で一晩撹拌して、加水分解を行った。
次いで、得られた加水分解反応液を5〜10℃に冷却しながら、ここに5%硝酸(22.0g)滴下し、さらに10分間撹拌した。この時、反応液のpHをpH試験紙で測定したところ、5であった。
次いで、25%硝酸銀水溶液(95.2g)を15℃以下に冷却し、ここに上記のpH5の反応液を10分間かけて全量滴下して、さらに10分間撹拌することにより、イソブチリル酢酸銀を生成させた。
次いで、得られた反応液を遠心ろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(50mL)で1回洗浄した後、適量のエタノールで6回洗浄し、乾燥させることにより、目的物であるイソブチリル酢酸銀の無色(白色)結晶を得た(収量24.0g、収率72%)。
得られたイソブチリル酢酸銀を、実施例1〜13の場合と同様に、元素分析及びフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供し、実施例9の場合と同様にTG/DTAに供した。
元素分析の結果を以下に示す。ここに示すように、分析値は理論値とよく一致していた。
元素分析値:C=30.4%、H=3.7%、N=検出限界値(0.4)以下(理論値:C=30.4%、H=3.8%、N=0.0%)
また、FT−IRのスペクトルを図5に示す。
TG/DTAでは、分解温度が141℃であった。そして、300℃まで昇温させた後、そのまま30分間保持したところ、残渣の量は46.5質量%であり、イソブチリル酢酸銀一分子中に占める銀の理論量(45.5質量%)とほぼ一致していた。
これらの結果から、得られたものが目的物であるイソブチリル酢酸銀であることを確認できた。
<ピバロイル酢酸銀の製造>
[実施例16]
ピバロイル酢酸メチル(日本精化社製、27.69g(175.0mmol))に、10%水酸化ナトリウム水溶液(70.0g(水酸化ナトリウム175.0mmol))を、20℃以下を保つように4分間かけて滴下し、さらに引き続き20℃で一晩撹拌して、加水分解を行った。
次いで、得られた加水分解反応液を5〜10℃に冷却しながら、ここに5%硝酸(22.0g)を滴下し、さらに10分間撹拌した。この時、反応液のpHをpH試験紙で測定したところ、5であった。
次いで、25%硝酸銀水溶液(95.2g)を15℃以下に冷却し、ここに上記のpH5の反応液を10分間かけて全量滴下し、さらに蒸留水200gを滴下して、10分間撹拌することにより、ピバロイル酢酸銀を生成させた。
次いで、得られた反応液を遠心ろ過して結晶をろ別し、この結晶を水(50mL)で1回洗浄した後、適量のエタノールで6回洗浄し、乾燥させることにより、目的物であるピバロイル酢酸銀((CHCC(=O)CHC(=O)OAg)の無色(白色)結晶を得た(収量27.4g、収率78%)。
得られたピバロイル酢酸銀を、実施例1〜13の場合と同様に、元素分析及びフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)に供し、実施例9の場合と同様にTG/DTAに供した。
元素分析の結果を以下に示す。ここに示すように、分析値は理論値とよく一致していた。
元素分析値:C=33.5%、H=4.4%、N=検出限界値(0.4)以下(理論値:C=33.5%、H=4.4%、N=0.0%)
また、FT−IRのスペクトルを図5に示す。
TG/DTAでは、分解温度が152℃であった。そして、300℃まで昇温させた後、そのまま30分間保持したところ、残渣の量は42.9質量%であり、ピバロイル酢酸銀一分子中に占める銀の理論量(43.0質量%)とほぼ一致していた。
これらの結果から、得られたものが目的物であるピバロイル酢酸銀であることを確認できた。
本発明は、記録材料、印刷刷版材料、高導電性材料としての金属銀の製造に利用可能である。

Claims (3)

  1. 下記一般式(II)で表されるβ−ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
    生成させた前記β−ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
    酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ−ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
    を有するβ−ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
    前記β−ケトカルボン酸塩を生成させてから、酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合するまでの間に、反応液から副生成物を抽出除去する工程を有さないことを特徴とするβ−ケトカルボン酸銀の製造方法。
    Figure 2012072117
    (式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良く;Mはナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである。)
  2. 前記β−ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ−ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法。
    Figure 2012072117
    (式中、Rは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基であり;Xは水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのXは互いに同一でも異なっていても良い。)
  3. 前記Rが炭素数1〜5の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり、前記Xが水素原子又は炭素数1〜3の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のβ−ケトカルボン酸銀の製造方法。
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