JP2011209224A - 抗原検索法及び抗体検出法 - Google Patents

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Yasuyoshi Mizutani
泰嘉 水谷
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弥重太 遠藤
Tatsuya Sawazaki
達也 澤崎
Kazuhiro Matsuoka
和弘 松岡
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Abstract

【課題】病変局所で産生される抗体の標的抗原を効率的に検索・同定する手段を提供することを課題とする。また、疾患特異的な抗体の関与が示唆される疾患について新たな視点で観察・評価を可能にする手法を提供することを課題とする。
【解決手段】以下のステップ、(1)特定の疾患に罹患した個体において形質細胞が浸潤する組織の抽出物とタンパク質ライブラリーとを接触させるステップ、及び(2)タンパク質ライブラリーの中から、抽出物中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップを行い、疾患関連抗体の標的抗原をスクリーニングする。
【選択図】なし

Description

本発明は病変局所で産生される抗体の標的抗原を検索・同定する方法に関する。また、病変局所で産生される抗体の標的抗原をプローブとして用い、疾患特異的抗体を検出する方法に関する。
最近、抗CCP(cyclic citrullinated peptide)抗体の病態への関与が示唆されているものの、関節リウマチの真の原因は不明であり、治療には非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬、免疫抑制剤ないしTNF-αに対するヒト化モノクローナル抗体による対症療法が行われている。重度の関節障害のために手術を要する場合があり、患者のQOLを大きく低下させることから、原因解明と根治療法の確立が望まれる。関節リウマチに加えて血管炎などの関節外症状を認める難治性の病態は悪性関節リウマチといわれ、特定疾患に指定されている。
関節リウマチの病態の特徴として、その滑膜病変の局所にはリンパ濾胞の形成とともに多数の形質細胞が浸潤している。しかし、これらの形質細胞から産生される抗体の標的抗原はわかっていない。病変局所に浸潤することから、病態形成に関連した抗体を産生している可能性が高い。そのため、これらの抗体の標的抗原を明らかにすれば、関節炎の成因となる自己抗原の同定など、疾患の病態解明に寄与できる可能性がある。
本発明者らの研究グループでは、酵素抗原法の技術開発を行ってきた。「酵素抗原法」は、酵素やビオチンなどで抗原を標識して組織切片と反応させることによって、組織切片上の特異抗体産生細胞を可視化する組織化学的手法である(非特許文献1、2)。標識抗体を用いる免疫染色(酵素抗体法)の裏返しの方法といえる。本技法は従来、免疫学的な基礎研究に用いられた実績があるにすぎず、臨床病態解析に応用されたことはない。本発明者らの研究グループは、西洋わさびペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、オボアルブミン(ovalbumin)、KLH(keyholelimpet hemocyanin)を免疫したラットのリンパ節を対象として、酵素抗原法の再現を行い、抗原特異的抗体産生細胞の可視化に成功した(非特許文献3)。抗原投与部位に近い所属リンパ節では、全体の40%に及ぶ形質細胞に各抗原に対する抗体産生所見が得られた。
Leduc EH, Avrameas S, Bouteille M (1968) Ultrastructural localization of antibody in differentiating plasma cells. J Exp Med 127:109-118. Straus W (1968) Cytochemical detection of sites of antibody to horseradish peroxidase in spleen and lymph nodes. J Histochem Cytochem 16:237-248. Mizutani Y et al(2009)Enzyme-labeled Antigen Method: Histochemical Detection of Antigen-specific Antibody-producing Cells in Tissue Sections of Rats Immunized With Horseradish Peroxidase, Ovalbumin, or Keyhole Limpet Hemocyanin. J Histochem Cytochem, 57:101-111.
関節リウマチ等、疾患特異的な抗体の関与が示唆される疾患に関し、病変に浸潤する形質細胞から産生される抗体の標的抗原を明らかにできれば、当該疾患の病態解析・診断および治療に有用な抗体や抗原の同定・創出が可能となる。そこで本発明の第1の課題は、病変局所で産生される抗体の標的抗原を効率的に検索・同定する手段を提供することである。一方、本発明の第2の課題は、疾患特異的な抗体の関与が示唆される疾患(例えば関節リウマチ)について新たな視点で観察・評価を可能にする手法を提供することである。
本発明者らは、病変組織の抽出物を利用して抗原解析を行えば病変部特異的に抗原として感作している分子を同定できる可能性が高く、しかもこのようにして同定された抗原は当該疾患の病態形成に深く関与している可能性が高いと考えた。病変組織に注目した当該アプローチは病変局所で産生される抗体の標的抗原を直接的に検索する点に特徴があり、過去の試みと一線を画する。関節リウマチの患者等を対象とし、血清特異的な抗体を検索するアプローチは広く行われているが、病変局所の抗体が反応する抗原を検索するアプローチは行われていない。解析の焦点を病変局所に絞ることで、病因に直結する抗体を効率的に同定できる可能性がある。
上記アプローチの有効性を検証するため、関節リウマチを対象疾患とした実験を施行した。その際、効率性を重視し、無細胞タンパク質合成系で合成したタンパク質ライブラリーを利用することにした。検討の結果、関節リウマチ患者の病変組織抽出物と特異的に反応する抗原タンパク質を当該ライブラリーの中から特定することに成功した。即ち、上記アプローチによって病変局所で産生される抗体に対する抗原を効率的に検索・同定できることが示された。さらに検討を進め、同定された抗原タンパク質について酵素抗原法のプローブとしての利用可能性を検証した。結果、関節リウマチ患者の病変滑膜切片の染色像において抗原タンパク質のシグナルを認め、同定された抗原タンパク質が酵素抗原法のプローブとして有効に機能することが裏付けられた。この結果は、病変組織抽出物を利用したスクリーニング法によって同定された抗原タンパク質をプローブとして用いた酵素抗原法が関節リウマチ等の病理診断に有用であることを示す一方で、上記アプローチ、即ち病変組織に注目して抗原タンパク質を検索・同定するという方法論の有効性を示すものである。
以下に示す本発明は、主として上記の成果に基づく。
[1]以下のステップ(1)及び(2)を含む、疾患関連抗体の標的抗原をスクリーニングする方法:
(1)特定の疾患に罹患した個体において形質細胞が浸潤する組織の抽出物とタンパク質ライブラリーとを接触させるステップ;
(2)前記タンパク質ライブラリーの中から、前記抽出物中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ。
[2]前記組織が病変組織である、[1]に記載のスクリーニング法。
[3]前記疾患が自己免疫疾患である、[1]又は[2]に記載のスクリーニング法。
[4]前記自己免疫疾患が関節リウマチである、[3]に記載のスクリーニング法。
[5]前記タンパク質ライブラリーが無細胞タンパク質合成系で調製したタンパク質ライブラリーである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
[6]前記無細胞タンパク質合成系がコムギ胚芽由来無細胞タンパク質合成系である、[5]に記載のスクリーニング法。
[7]ステップ(2)における特定に、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイを用いる、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
[8]前記タンパク質ライブラリーを構成する各タンパク質が標識化されている、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
[9]前記標識化がビオチン化である、[8]に記載のスクリーニング法。
[10]以下のステップ(3)及び(4)を更に含む、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のスクリーニング法:
(3)ステップ(1)及びステップ(2)と同様の手順で、ステップ(1)における個体と同一の個体に由来する血清中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ;
(4)以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質を特定するステップ、
(a)ステップ(2)で特定したタンパク質であるがステップ(3)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
(b)ステップ(3)で特定したタンパク質であるがステップ(2)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
(c)ステップ(2)で特定したタンパク質であり且つステップ(3)で特定したタンパク質。
[11]以下のステップ(i)及び(ii)を含む、抗体検出法:
(i)請求項1〜10のいずれか一項に記載のスクリーニング法で選抜された抗原タンパク質をプローブとして用い、該プローブと生体試料とを接触させるステップ;
(ii)ステップ(i)によって標的抗体に結合したプローブを検出するステップ。
[12]前記プローブが、請求項8又は9に記載のスクリーニング法で選抜されたタンパク質であり、以下のステップ(I)〜(IV)を更に含む、[11]に記載の抗体検出法:
(I)前記標識化に用いた標識物質に対して特異的に結合する酵素標識試薬を接触させるステップ;
(II)非特異的結合成分を洗浄・除去するステップ;
(III)酵素標識に対する発色基質を添加し、発色させるステップ;
(IV)発色を検出するステップ。
[13]前記酵素標識試薬がストレプトアビジン又はアビジンと標識用酵素との複合体である、[12]に記載の抗体検出法。
酵素抗体法と酵素抗原法の対比。酵素抗原法の原理(右)を酵素抗体法の原理(左)と比較して示した。酵素抗原法によれば特異抗体の局在を検出できる。 酵素抗原法による検出原理を模式的に示した図。 無細胞タンパク質合成系により作製した抗原タンパク質ライブラリーを対象とした、組織抽出物と血清を用いたAlphaScreenTM法による抗原検索の結果。組織抽出物と血清が反応する複数のタンパク質が認められる。組織抽出物と血清が類似したパターンを示すタンパク質が多い。組織抽出物と特に強く反応するタンパク質が患者Aと患者Cで認められる。尚、オリジナルの図では血清の結果は赤で、組織抽出物の結果は黒でそれぞれ表示される。 各患者においてAlpahScreenTM法で組織ホモジネート上清が最も強く反応する抗原タンパク質をプローブとした酵素抗原法の結果。図中の記載は患者番号と抗原の組み合わせを示す。矢印は陽性と思われる形質細胞。患者Aおよび患者Cでは一部の形質細胞に特異的な陽性像が認められる。患者Bでは陽性細胞は認められない。患者Dおよび患者Eでは、視野内のほぼすべての形質細胞に陽性像が認められるため、特異性が疑わしい。 各リウマチ患者の組織抽出物と血清におけるAlpahScreenTM解析シグナルと酵素抗原法の染色結果をまとめた表。AlphaScreenTM解析において、組織抽出物のシグナルが強い上位5種の抗原タンパクについて、患者毎にそのシグナル(S/N比)と酵素抗原法の結果を示した(酵素抗原法 +:陽性、±:判定不能(擬陽性)、−:陰性)。患者Aと抗原16および患者Cと抗原9の組み合わせでは、他の抗原タンパク質よりも、明らかにAlphaScreenTM解析でのシグナルが高く、酵素抗原法も陽性であった。
本発明の第1の局面は疾患関連抗体の標的抗原をスクリーニングする方法に関する。本発明のスクリーニング法は、病変局所で産生される抗体の標的抗原を見出すための手段として有用であり、特に、形質細胞の浸潤が顕著な疾患の病態解明に貢献し得る。本発明において「疾患関連抗体」とは、特定の疾患の発症、進展又は病態の形成などに関与する抗体をいう。ここでの「特定の疾患」は特に限定されない。好ましい「特定の疾患」として関節リウマチ、橋本病、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病、高安病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患、感染症(たとえばH. pylori感染胃粘膜)を例示できる。尚、本明細書において用語「疾患関連抗体」は用語「疾患特異的抗体」と交換可能に用いられる。
本発明において「標的抗原」とは疾患関連抗体の標的となる抗原である。通常、標的抗原と疾患関連抗体との反応が一因となって、当該疾患に特徴的な病態が形成される。
本発明のスクリーニング法では以下のステップ(1)及び(2)を実施する。
(1)特定の疾患に罹患した個体において形質細胞が浸潤する組織の抽出物とタンパク質ライブラリーとを接触させるステップ。
(2)前記タンパク質ライブラリーの中から、前記抽出物中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ。
ステップ(1)では組織抽出物とタンパク質ライブラリーを用意し、両者を接触させる。両者の接触は、例えば多数のウェルを有するプレート(例えば384ウェルプレートや96ウェルプレート)内で行われる。本発明では、特定の疾患に罹患した個体において形質細胞が浸潤する組織の抽出物が用いられる。ここでの「特定の疾患」は、好ましくは、関節リウマチ、橋本病、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病、高安病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患である。「個体」は典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)であってもよい。「形質細胞が浸潤する組織」とは、形質細胞即ち抗体産生細胞の浸潤を認める組織であり、典型的には自己免疫疾患における病変組織である。例えば関節リウマチでは滑膜病変の局所においてリンパ濾胞の形成とともに多数の形質細胞が浸潤しており、当該局所(滑膜組織)が病変組織に該当する。
本発明では、本発明者らの検討の結果として得られた知見(後述の実施例を参照)、即ち、(1)組織抽出物を用いることによって、病変局所で特異的に産生される抗体の標的抗原の網羅的な探索が可能であること、及び(2)組織抽出物を用いた方が、血清を用いるよりも、より多種類の抗原タンパク質を検出できる可能性が高いこと、に基づき、組織抽出物を用いる。組織抽出物として、典型的には組織ホモジネートの上清が用いられる。例えば常法に従いホモジナイザーなどを利用して組織をホモジナイズ処理した後、遠心分離(例えば20000×g、5分)し、上清を回収する。抗体以外の成分(夾雑物)が除去されるように上清を精製したものを組織抽出物として用いることにしてもよい。精製手段としては各種クロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)を提示できる。組織抽出物中の抗体は、タンパク質ライブラリーとの接触に先立って、ステップ(2)の分析に利用する検出法に応じて、適宜、修飾ないし標識化される。標識化には、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、Texas Red(登録商標)、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC、APC-CyTM7、オレゴングリーン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドット等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、 125I等の放射性同位体、ビオチン等を用いることができる。
「タンパク質ライブラリー」とは多種類のタンパク質の集合体である。タンパク質ライブラリーのメンバー数は特に限定されないが、一般に、メンバー数が多い程、より網羅的なスクリーニングが可能となり好ましいといえる。あくまでも目安であるが、例えば、メンバー数が100〜10000のタンパク質ライブラリーを採用することができる。タンパク質ライブリラリーの各メンバーは、ステップ(2)の分析に利用する検出法に応じ、適宜、修飾ないし標識化されている(詳細は後述する)。
好ましくは無細胞合成系によって調製したタンパク質ライブラリーが用いられる。本発明において無細胞合成系(無細胞転写系、無細胞転写/翻訳系)とは、生細胞を用いるのではく、生細胞由来の(或いは遺伝子工学的手法で得られた)リボソームや転写・翻訳因子などを用いて、鋳型である核酸(DNAやmRNA)からそれがコードするmRNAや蛋白質をin vitroで合成することをいう。無細胞合成系では一般に、細胞破砕液を必要に応じて精製して得られる細胞抽出液が使用される。細胞抽出液には一般に、蛋白質合成に必要なリボソーム、開始因子などの各種因子、tRNAなどの各種酵素が含まれる。蛋白質の合成を行う際には、この細胞抽出液に各種アミノ酸、ATP、GTPなどのエネルギー源、クレアチンリン酸など、蛋白質の合成に必要なその他の物質を添加する。勿論、蛋白質合成の際に、別途用意したリボソームや各種因子、及び/又は各種酵素などを必要に応じて補充してもよい。
蛋白質合成に必要な各分子(因子)を再構成した転写/翻訳系の開発も報告されている(Shimizu, Y. et al.: Nature Biotech., 19, 751-755, 2001)。この合成系では、バクテリアの蛋白質合成系を構成する3種類の開始因子、3種類の伸長因子、終結に関与する4種類の因子、各アミノ酸をtRNAに結合させる20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、及びメチオニルtRNAホルミル転移酵素からなる31種類の因子の遺伝子を大腸菌ゲノムから増幅し、これらを用いて蛋白質合成系をin vitroで再構成している。本発明ではこのような再構成した合成系を利用してもよい。
用語「無細胞蛋白質合成系」は、無細胞転写/翻訳系、in vitro翻訳系又はin vitro転写/翻訳系と交換可能に使用される。in vitro翻訳系ではRNAが鋳型として用いられて蛋白質が合成される。鋳型RNAとしては全RNA、mRNA、in vitro転写産物などが使用される。他方のin vitro転写/翻訳系ではDNAが鋳型として用いられる。鋳型DNAはリボソーム結合領域を含むべきであって、また適切なターミネータ配列を含むことが好ましい。尚、in vitro転写/翻訳系では、転写反応及び翻訳反応が連続して進行するように各反応に必要な因子が添加された条件が設定される。
無細胞蛋白質合成系には以下の利点がある。まず第1に、生細胞を維持する必要がないため操作性が良好で系の自由度も高い。したがって、目的の蛋白質の性質に応じて様々な修正や修飾を施した合成系を設計することが可能となる。次に、細胞系の合成では使用する細胞に毒性のある蛋白質の合成は基本的にできないが、無細胞系ではそのような毒性の蛋白質であっても生産することができる。さらに、多種類の蛋白質を同時にかつ迅速に合成できることからハイスループット化が容易である。生産される蛋白質の分離・精製が容易であるという利点も備え、これはハイスループット化に有利に働く。加えて、非天然型のアミノ酸を取り込ませるなどして非天然型蛋白質を合成することも可能であるという利点も併せ持つ。
現在広く利用されている無細胞蛋白質合成系には以下のものがある。即ち、大腸菌S30抽出液の系(原核細胞の系)、コムギ胚芽抽出液の系(真核細胞の系)、及びウサギ網状赤血球可溶化物の系(真核細胞の系)である。これらの系はキットとしても市販されており、容易に利用することが可能である。
歴史的には大腸菌S30抽出液の系の開発が最も古く、この系を利用して様々な蛋白質の合成が試みられてきた。大腸菌30S画分は、大腸菌の集菌、菌体破砕、精製の工程を経て調製される。大腸菌30S画分の調製及び、無細胞転写・翻訳共役反応はPrattらの方法(Pratt, J. M.: Chapter 7, in ”Transcription and Translation: A practical approach”, ed. by B. D. Hames & S. J. Higgins, pp. 179-209, IRL Press, New York (1984))やEllmanらの方法(Ellman, J. et al.: Methods Enzymol., 202, 301-336(1991))を参考にして行うことができる。
コムギ胚芽抽出液の系は、高品質の真核生物蛋白質を効率的に合成できるという利点を有し、大腸菌S30抽出液の系では合成が困難な真核生物の蛋白質を合成する際によく利用される。最近になって、種子胚乳成分を洗浄除去した胚芽から抽出液を調製することによって高効率かつ安定な合成系が構築されることが報告され注目を集めている(Madin, K. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97: 559-564, 2000)。その後、高翻訳促進能を有するmRNA非翻訳配列、PCRを利用した多品目機能解析用の蛋白質合成法、専用高発現ベクターの構築などの技術開発が行われ(Sawasaki, T. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 14652-14657, 2002)、様々な分野への応用が期待されている。
コムギ胚芽抽出液は、コムギ胚芽をすり潰して遠心分離した後、上澄み液をゲルろ過で分離することによって得ることができる。翻訳反応については、Andersonらの方法(Anderson, C. W. et al.: Methods Enzymol., 101, 638-644(1983))を参考にできる。改良法についても報告されており、例えば河原崎らの方法(Kawarasaki, Y. et al.: Biotechnol. Prog., 16, 517-521(2000))やMadinらの方法(Madin, K. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97: 559-564, 2000)等を参考にできる。その他、コムギ胚芽抽出液の系についてはWO 00/68412 A1、WO 01/27260 A1、WO 2002/024939 A1、WO 2005/063979 A1、特開平6-7134号公報、特開2002-529531号公報、特開2005-355513号公報、特開2006-042601号公報、特開2007-097438号公報、特開2008-029203号公報等が参考になる。
ウサギ網状赤血球可溶化物の系はグロブリン生産に適する。ウサギ網状赤血球可溶化物は、ウサギにフェニルヒドラジンを数日間静脈注射して貧血状態とし、所定期間後(例えば第8日目)に採血し、その後溶血させた液から超遠心分離処理などを経て得られる。ウサギ網状赤血球可溶化物の調製法は、JacksonとHuntの方法(Jackson, R. J. and Hunt, T.: Methods Enzymol., 96, 50-74(1983))を参考にして行うことができる。
尚、本発明の実施に際して利用できる無細胞合成系は上記のものに限られるものではなく、例えば大腸菌以外のバクテリアやコムギ以外の植物の抽出液、昆虫由来の抽出液、動物細胞由来の抽出液、又はゲノム情報を基に構築した系などを利用してもよい。
通常は、ステップ(1)の後、非特異的結合成分を洗浄・除去した後、ステップ(2)へと進む。ステップ(1)に続くステップ(2)では、タンパク質ライブラリーの中から、ステップ(1)に供した抗体が特異的に結合したタンパク質(メンバー)を特定する。この特定には様々な検出法が利用可能である。例えば、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(ALPHA)や表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance: SPR)等の蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence resonance energy transfer: FRET)を利用した検出法、酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)に代表される酵素免疫測定法(Enzyme immunoassay: EIA)、蛍光相関分析法(FCS:Fluorescence Correlation Spectroscopy)、蛍光強度分析解析法(Fluorescence intensity distribution analysis: FIDA)、蛍光偏光法(Fluorescence polarization: FP)、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(dissociation enhanced lanthanide fluoro immuno assay: DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation proximity assay: SPA)、酵素断片コンプリメンテーション(Enzyme fragment complementation: EFC)アッセイ、生物発光共鳴エネルギー転移(Bioluminescent resonance energy transfer: BRET)を利用した検出法を用いることができる。以下、各検出法について説明する。尚、放射免疫測定法(RIA法)、ウエスタンブロット法、イムノブロッティング、免疫沈降法等を利用することも可能である。
(a) FRET
FRETは、ドナーおよびアクセプターと称される2種類の蛍光物質間のエネルギー転移を利用した手法である。代表的な例は、以下に示すALPHA等である。
(b) ALPHA
ALPHAは、PerkinElmer社のAlphaScreenTMが代表的なアッセイ法である。その方法は、近接させられたドナービーズとアクセプタービーズとの間に一重項酸素の移動に基づく分析方法である。これは、680nmでの励起において、ドナービーズ中の光増感剤は、周囲の酸素を一重項状態の酸素に変換し、その酸素が200nmの距離まで拡散する。アクセプタービーズ中の化学発光基は、エネルギーをビーズ内の蛍光アクセプターに移動させ、続いて約600nmで光りを放出する。すなわち、2つのビーズが近接した時に、化学反応のカスケードが始まり、大きく増幅されたシグナルが発生する。このような原理による、生体分子相互作用検出方法の代表がALPHAである。アクセプタービーズとはガラス、シリカゲル、樹脂のような不活性担体であって、上記生体分子を固定化しておくための担体である。他方ドナービーズとはガラス、シリカゲル、樹脂のような不活性担体であって、ストレプトアビジンを固定化しておくための担体である。AlphaScreenTMによれば高感度かつ低バックグラウンドで抗原抗体反応を検出可能である。また、液相中で反応させるため、ELISA等と異なり、タンパク質の固相化が不要である。したがって、タンパク質の立体構造変化による抗原性の喪失がない。このようにAlphaScreenTMは、抗原抗体反応を検出するのに理想的なアッセイ系である。また、384ウェルプレートなどを利用して同時に多数の検体を処理することが可能であり、ハイスループットに標的抗原を検索することができる。
(c) SPR
SPRでは、タンパク質ライブラリーのメンバータンパク質が金属膜に固定される。次に、サンプル(組織抽出液)をSPRに投入し、金属膜に固定化されたメンバータンパク質と組織抽出液中の抗体の光の屈折率の変化をマーカーにして、メンバータンパク質と相互作用する抗体を検出する。
(d) ELISA
ELISAでは、タンパク質ライブラリーのメンバータンパク質を固相担体(96ウェルプレートなど)に固定する。次に、組織抽出物、続いて組織抽出液物の抗体を特異的に認識する標識抗体をプレートに添加する。メンバータンパク質が標的抗原に該当すれば、組織抽出液中の抗体を介して標識抗体がメンバータンパク質に結合する。従って、標識抗体の標識をマーカーにして標的抗原であるか否かを検出することができる。
(e) FCS
タンパク質ライブラリーのメンバータンパク質を含む溶液を適当な希釈液で希釈し、組織抽出液と接触させた後、測定装置で検出する。レーザー光を照射し、液中の蛍光分子(標識物質)の揺らぎを測定するため、pHや測定時間の条件は任意に設定できる。また、室温での測定が可能である。FCS測定では、微小領域内の蛍光分子の揺らぎを測定し、得られた情報に基づいて並進拡散時間を算出する。この並進拡散時間をマーカーにしてメンバータンパク質と組織抽出物中の抗体との相互作用を検出する。尚、FSCの改良方法であるFCCS(蛍光相互作用相関分析法)を用いることもできる。
(f) FIDA
タンパク質ライブラリーのメンバータンパク質を含む溶液を適当な希釈液で希釈し、各生体分子と接触させた後、測定装置で検出する。レーザー光を照射し、液中の蛍光分子(標識物質)の揺らぎを測定するため、pHや測定時間の条件は任意に設定できる。また、室温での測定が可能である。また、FIDA測定では、微小領域内の蛍光を発している分子の蛍光強度と数を測定する。測定した蛍光強度と数をマーカーにしてメンバータンパク質と組織抽出物中の抗体との相互作用を検出する。
(g) FP
タンパク質ライブラリーのメンバータンパク質を含む溶液を適当な希釈液で希釈し、各生体分子と接触させた後、測定装置で検出する。蛍光偏光法は、偏光励起光を蛍光物質に照射することにより、蛍光物質から発せられる蛍光が分子量に応じて異なった偏光を示すという特性に基づいた測定方法である。蛍光標識物質が抗体、受容体等の高分子のものと結合すると、見かけ上の分子量が大きくなるため、分子運動が小さくなり、結果としてその偏光を維持した蛍光(偏光度が高い)を放出する。該偏光を維持した蛍光をマーカーにしてメンバータンパク質と組織抽出物中の抗体との相互作用を検出する。
(h) DELFIA
DELFIAは、固相分析に利用され、その抗体は、通常、ユーロピウムまたはその他のランタニドで標識され、未結合のユーロピウム標識抗体を洗浄除去した後にユーロピウム蛍光が検出される。この蛍光マーカーにしてメンバータンパク質と組織抽出物中の抗体との相互作用を検出する。
(i) SPA
SPAは、通常、放射標識された基質を捕獲するためにビオチン/アビジン相互作用を利用する。タンパク質ライブラリーをビオチン化タンパク質で構成した場合、メンバータンパク質はストレプトアビジンに捕獲される。SPA検出において、シンチラントを含むビーズ上にストレプトアビジンは結合する。それに対して、フラッシュプレート検出においては、シンチラントを含むマイクロプレートのウェル内部にストレプトアビジンが結合する。固定されると、放射標識された基質は、光の放出を刺激するのに十分な程度にシンチラントに近接する。この近接による光の変化をマーカーにしてメンバータンパク質と組織抽出物中の抗体との相互作用を検出する。
(j) EFCアッセイ
EFCアッセイは、2つのフラグメント、すなわち酵素アクセプター(EA)および酵素ドナー(ED)からなる加工されたβ−ガラクトシダーゼ酵素に基づく。フラグメントが分離するとβ−ガラクトシダーゼ活性が失われるが、フラグメントが合わさるとそれらは連携して(補い合って)活性酵素を形成する。EFC分析は、ED-分析物結合体を利用し、この場合、分析物は、抗体または受容体のような特異的結合タンパク質によって認識が可能である。特異的結合タンパク質の非存在下では、ED-分析物結合体は、EAを補い、活性β−ガラクトシダーゼを形成することが可能であり、正の発光シグナルを生産する。ED-分析物結合体と特異的結合タンパク質とが結合する場合、EAとの補完が阻害され、シグナルは生じない。遊離の分析物が(サンプル中に)提供される場合、その分析物は、特異的結合タンパク質に対する結合に関してED-分析物結合体と競合する。遊離の分析物は、EAとの補完のためにED-分析物結合体を解放し、サンプル中に存在する遊離の分析物の量に応じてシグナルを生産する。
(k) BRET
エネルギーがルシフェラーゼの生物発光発生反応から蛍光タンパク質に移行される生物発光共鳴エネルギー移行を利用したアッセイである。
前述の通り、タンパク質ライブリラリーの各メンバーは検出法に応じ、適宜、修飾ないし標識化されている。ここでの修飾ないし標識化の一例はビオチン化である。この例の場合、ビオチン化タンパク質の集合から構成されるタンパク質ライブラリーが用いられることになる。このようなタンパク質ライブラリーは例えば、特開2007-199047に記載された方法、即ちコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系でN末端がビオチン化されたタンパク質を調製する方法に従って調製することができる。
後述の実施例に示す通り、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で作製したビオチン化タンパク質が、未精製の状態で、酵素抗原法のプローブとして利用できることが明らかとなった。この知見に従えば、酵素抗原法のプローブを見出す目的で本発明のスクリーニングを実施する場合には、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で作製したビオチン化タンパク質からなるタンパク質ライブラリーを採用することが特に有効であるといえる。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系に用いるコムギ胚芽由来抽出液についてはWO 2005/063979 A1を参照することができる。
以下、本発明の好ましい一態様として、ビオチン化タンパク質ライブラリーを用い、ALPHAを利用したスクリーニング法について説明する。まず、ストレプトアビジンが結合したドナービーズと、抗体に対して特異的結合性を有する物質(例えばプロテインG又はプロテインA)が結合したアクセプタービーズを用意しておく。ビオチン化タンパク質ライブラリーを384ウェルプレートなどに展開した後(原則、各ウェルに1種類のメンバータンパク質が含まれるようにする)、各ウェルにサンプル(即ち組織抽出物)を添加する。その後、各ウェルにドナービーズ及びアクセプタービーズを添加し反応させる。そして励起光を照射し、各ウェルの蛍光を検出する。組織抽出物中の抗体に対する標識抗原が存在するウェルでは、抗原抗体反応が生ずる結果、励起光の照射によってドナービーズから発生した一重項酸素が、抗体に結合したアクセプタービーズに作用し蛍光を発生させる。従って、蛍光強度を測定することにより、抗原抗体反応を検出することができる。
本発明の一態様では、ステップ(1)及び(2)に加えて次のステップ(3)及び(4)を実施する。
(3)ステップ(1)及びステップ(2)と同様の手順で、ステップ(1)における個体と同一の個体に由来する血清中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ。
(4)以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質を特定するステップ:
(a)ステップ(2)で特定したタンパク質であるがステップ(3)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
(b)ステップ(3)で特定したタンパク質であるがステップ(2)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
(c)ステップ(2)で特定したタンパク質であり且つステップ(3)で特定したタンパク質。
この態様のスクリーニング法によれば、血清とタンパク質ライブラリーとの反応性を調べ、その結果を利用することによって、形質細胞が浸潤する組織特異的な抗体の標的抗原(a)、血清特異的な抗体の標的抗原(b)、又は形質細胞が浸潤する組織及び血清の両者に存在する抗体の標的抗原(c)を特定することができる。(a)の標的抗原は組織特異的なものであり、病態形成に関与する抗原を解析できる可能性があるという点において利用価値が高い。一方、(b)の標的抗原は血清特異的なものであり、血清診断に応用できる可能性があるという点において利用価値が高い。また、(c)の標的抗原は上記の2点の可能性を併せ持つという点において利用価値が高い。(a)の標的抗原及び(c)の標的抗原は例えば病変組織の染色、各種アッセイ用抗体作製のための抗原等に利用できるものであり、特定の疾患の病態解析(病理診断など)や発症機構の解明のためのツールとして有用である。(b)の標的抗原については、病態と血清抗体価の関連性を明らかにすれば、予後予測や治療効果の評価等に利用できるものであり、血清診断用の標的抗原として有用である。
本発明のスクリーニング法によれば、病変局所で産生される抗体の標的抗原を見出すことができる。換言すれば、本発明のスクリーニング法によって選抜・同定されたタンパク質は、特定の疾患の病変に関与する抗体の標的抗原である。そこで本発明の第2の局面は、上記本発明のスクリーニング法で選抜されたタンパク質をプローブとして利用した抗体検出法を提供する。本発明の抗体検出法によれば病変局所で産生される抗体を特異的に検出することが可能であり、例えば、精密な病理診断のための有益な情報を与える。本発明の抗体検出法は、形質細胞の浸潤が顕著な疾患の検査や病態解明のための手段として特に有用である。
本発明の抗体検出法では以下のステップ(i)及び(ii)が実施される。
(i)本発明のスクリーニング法で選抜された抗原タンパク質をプローブとして用い、該プローブと生体試料とを接触させるステップ。
(ii)ステップ(i)によって、標的抗体に結合したプローブを検出するステップ。
ステップ(i)では、プローブ(本発明のスクリーニング法で選抜された抗原タンパク質)と生体試料とを接触させる。両者の接触は、例えば多数のウェルを有するプレート(例えば384ウェルプレートや96ウェルプレート)内やスライドガラス上で行われる。生体試料の例は組織抽出液、組織切片、血液、血清、リンパ液、脊髄液、骨髄液等であるが、これらに限定されるものではない。通常、使用する抗原タンパク質に応じて適当な生体試料を選択する。例えば、特定の組織に存在し得る抗体の標的抗原をプローブとした場合には、当該組織の抽出物や切片を生体試料として選択するとよい。別の例として、血清中に存在し得る抗体の標的抗原をプローブとした場合においては血清を生体試料として選択するとよい。尚、生体試料は常法で調製すればよい。
本発明の抗体検出法は、形質細胞の浸潤が顕著な疾患の検査法として適用可能である。このような適用を意図した場合、検査対象の疾患において形質細胞の浸潤が生じ得る組織の抽出液や切片を好ましい生体試料として採用できる。例えば関節リウマチを検査対象とした場合には滑膜抽出液又は切片を生体試料として用いることができる。
通常は、ステップ(i)に続いて、非特異的結合成分を洗浄・除去した後、ステップ(ii)へと進む。ステップ(ii)では、ステップ(i)によって標的抗体に結合したプローブを検出する。「標的抗体」とは、プローブである抗原タンパク質を特異的に認識し結合する抗体である。対応する抗体が生体試料中に存在するとき、抗原抗体反応によってプローブが標的抗体に結合する。ステップ(ii)では、このようにして標的抗体に結合したプローブを検出する。プローブは、採用する検出法に応じて適宜、修飾ないし標識化されている。標識化には、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、Texas Red(登録商標)、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC、APC-CyTM7、オレゴングリーン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドット等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、 125I等の放射性同位体、ビオチン等を用いることができる。
検出法は特に限定されないが、好ましくは酵素抗原法を採用する。酵素抗原法とは、酵素標識した抗原をプローブとして用い、酵素反応を指標として標的抗体を検出する方法である(図1の模式図を参照)。酵素抗原は酵素抗体法の裏返しということができる。酵素抗原法を採用する場合には、標的抗体にプローブが結合したことを、酵素反応を指標として検出できるようにプローブを標識しておく。例えば、標識酵素を予めプローブに結合させておくか、或いは、標識酵素を結合させることが可能なようにプローブを設計しておけばよい。後者のプローブの形態の一例として、ビオチン化タンパク質(即ち、ビオチンで標識したタンパク質からなるプローブ)を挙げることができる。ビオチン化タンパク質をプローブとした場合には、ステップ(i)後の試料に対して、ストレプトアビジンなど、ビオチンに対して特異的結合性を示す物質と酵素(上掲のホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等)との複合体(酵素標識試薬)を接触させる。当該操作の結果、試料中に標的抗体が存在しておれば標的抗体に結合したプローブに対して酵素標識試薬が結合し、標的抗体−プローブ(抗原タンパク質)−酵素標識試薬からなる複合体が形成される(図2の模式図を参照)。即ち、試料中の標的抗体がプローブを介して酵素標識される。従って、発色基質を加えて発色の有無ないし程度を調べること等によって酵素反応を検出すれば試料中の標的抗体を検出できる。尚、この態様の検出法ではステップ(ii)として典型的には以下のステップ(I)〜(IV)がこの順で行われることになる。
(I)プローブの標識化に用いた標識物質に対して特異的に結合する酵素標識試薬を接触させるステップ;
(II)非特異的結合成分を洗浄・除去するステップ;
(III)酵素標識に対する発色基質を添加し、発色させるステップ;
(IV)発色を検出するステップ。
一態様では、本発明の抗体検出法は免疫組織学的染色に用いられる。免疫組織化学的染色によれば、迅速に且つ感度よく標的抗体を検出できる。また、操作も簡便である。以下、ビオチン化抗原タンパク質をプローブとした場合を例として、免疫組織学的染色の一般的な操作を示す((1)〜(9))。尚、酵素抗原法を利用した免疫組織化学染色法の各操作については文献Mizutani, Y. et al.: J. Histochem. Cytochem., 57: 101-111, 2009.等を参考にして行うことができる。また、酵素抗原法は酵素抗体法の裏返しともいえる方法であり、酵素抗体法に基づく免疫組織化学的染色法についての文献や成書(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画)も参考になる。
(1)固定・パラフィン包埋
外科的に生体より採取した組織をホルマリンやパラホルムアルデヒド、無水エチルアルコール等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコールで脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィンで包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3〜5μm厚)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えてアルコール固定標本、乾燥封入した標本、凍結標本などを用いる場合もある。ホルマリン固定パラフィン包埋切片において、一部の標識抗原をプローブとして酵素抗原法が可能であることが判明しているが、パラホルムアルデヒド固定後凍結切片の方が、高感度に陽性細胞を検出できる。凍結切片を作製する場合は、固定液で固定後、組織を凍結包埋剤に浸漬してドライアイスアセトンで凍結したのち薄切する。
(2)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する(凍結切片では流水水洗により包埋剤を除去する)。
(3)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼ(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)を使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(4)前処理(賦活化)
必要に応じて組織切片に酵素処理、加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。
(5)非特異的反応阻害
切片をウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)等で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミン等を含有させたプローブ溶液を使用して次の抗原抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(5)抗原抗体反応
適当な濃度に希釈したプローブをスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(6)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼ(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)が頻用される。ビオチン化タンパク質であるプローブに対して特異的に結合するように、ビオチンに対して特異的結合性を有する物質(例えばストレプトアビジン)と標識物質との複合体を標識試薬とする。標識試薬をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(7)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(8)核染色
必要に応じて核染色を行う。例えば、マイヤーのヘマトキシリンを数秒〜数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(9)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂やグリセリン、ゴムシロップなどで封入する。
ビオチン化タンパク質ではなく、酵素標識したタンパク質をプローブとした場合には(5)の抗原抗体反応の後、(6)の操作を行うことなく、(7)の発色反応に進めばよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。尚、特に記載のない限り、本明細書における遺伝子工学的操作は例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)或いはCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参考にして行うことができる。
<疾患特異的抗原タンパク質の網羅的な探索>
病変局所に浸潤する形質細胞が、疾患に関連性の強い抗体を産生している可能性があるという予測から、関節リウマチ患者の病変滑膜ホモジナイズ上清と血清を用いて、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で作製したN末ビオチン化タンパク質ライブラリー(2243種の抗原タンパク質)を対象に、それらに含まれる抗体が反応する抗原タンパク質を探索した。
1.研究材料の採取
関節リウマチと診断された患者において、滑膜切除外科手術が施行された際に切除された病理組織標本から、研究用に一部を採取した。同時に採血を行い、3000rpmで遠心分離して血清を採取した。臨床材料の研究使用については、口頭および書面による説明を行い、患者から書面による同意を得た。この研究は、藤田保健衛生大学疫学・臨床研究倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
2.病理組織標本の作製
研究用に採取した滑膜を5 mm×10 mm(厚さは症例により異なるが3〜5mm程度)の小片に分割して、一部を4%パラホルムアルデヒド含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)へ浸漬し、4℃で4時間固定した。固定後、10%スクロース含有0.01Mリン酸緩衝食塩水(pH7.2、phosphate buffered saline、PBS)へ浸漬して4℃で一晩洗浄後、15%および20%スクロース含有0.01M PBSで、それぞれ4℃で4時間ずつ浸漬して洗浄した。洗浄後、組織片を凍結包埋剤Tissue Mount(Chiba Medical, Japan)へ浸漬して、ドライアイスアセトンで凍結した。凍結した組織片を、クリオスタット(Leica Microsystems, Germany)により薄切して、厚さ3μmの凍結組織切片を作製し、3-aminopropyl-triethoxysilaneコートスライドガラス(Muto Pure Chemicals, Japan)へ貼り付けた。凍結切片は30分間風乾した後、染色に用いるまで-20℃で保存した。
3.抗原検索用組織抽出物の調製
研究用に採取した滑膜において、病理組織標本を作製した小片に隣接する組織片を、解析用サンプルとして調製するまで-80℃で保存した。保存した組織片(300〜500mg)は、組織100mgあたり300μlの0.01M PBS中で、ポリトロンホモジナイザーにより破砕した。破砕液は15000rpmで5分間遠心分離して上清を回収し、再度15000rpmで遠心分離して浮遊物を沈殿させて、滑膜ホモジナイズ上清として回収した。滑膜ホモジナイズ上清は、0.1%のアジ化ナトリウムを添加して防腐処理を行い、解析に用いるまで-80℃で保存した。このサンプルを組織抽出物として、AlphaScreenTM解析に用いた。
4.無細胞タンパク合成系によるN末ビオチン化タンパクライブラリの作製
ヒトcDNAライブラリーMammalian gene collection(MGC clone、DANAFORM, Japan)からGene Ontologyデータデースを基盤に膜タンパクを中心とする遺伝子と、自己免疫疾との関連性が示唆されている自己免疫疾患感受性遺伝子座上にコードする遺伝子の合計2243種類を選抜した。そして、選抜したcDNAが組込まれたプラスミドを鋳型に、”split-primer” PCR法を用いてSP6 RNAポリメラーゼプロモータ配列・翻訳促進配列、6×His-tag配列、およびビオチンリガーゼ認識配列を付加し、転写鋳型を構築した。その後、SP6 RNA ポリメラーゼによるIn vitro 転写によってmRNAを合成し、エタノール沈殿を行った後に、ビオチンリガーゼ存在下でコムギ胚芽無細胞タンパク合成系を用いてN末ビオチン化タンパク質ライブラリーを構築した。
5.滑膜ホモジナイズ上清よび血清を用いた自己抗原タンパク質の網羅的な探索
AlphaScreenTM法は、メーカーの説明書に従って実行した(PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Boston, MA)。また、すべての反応は、384ウェルのマイクロプレート上で最終濃度100 mM Tris-HCl (pH 8.0)、0.01% (v/v) Tween-20、0.1% (w/v) ウシ血清アルブミンの溶液存在下で反応を実行した。まず、抗原抗体反応のために、ビオチン化タンパク質を含む翻訳反応液1μlを、最終希釈倍率500倍の滑膜ホモジナイズ上清、または最終希釈倍率1000倍の血清と全15μlの反応溶液中で混合し、26℃で30分反応させた。その後、各最終濃度12μg/ml のストレプトアビジン結合ドナービーズ(Streptavidin-coated donor beads)およびプロテインG結合アクセプタービーズ(Protein G coated-acceptor beads)(Perkin Elmer)を各ウェルに10μl分注し、マイクロプレートを遮光状態で26℃、1時間反応させた。反応終了後に、2104EnVisionマルチラベルカウンター(PerkinElmer)用いて、各ウェルに680nmの励起光を照射し、520〜620nmの蛍光強度を測定した。ネガティブコントロールとして、コムギ胚芽無細胞タンパク合成系で、mRNA非存在下で反応を行った翻訳反応液を用いた。各プレートのネガティブコントロールの検出値の平均値をノイズとして、各ビオチン化タンパク質の測定値をシグナルとして、シグナル/ノイズ(S/N)比を算出した。この値を抗原抗体反応強度の指標とした。
測定結果を図3に示す。複数のタンパク質において、シグナルが高値を示した。また、滑膜ホモジナイズ上清と血清における同一抗原に対する抗原抗体反応シグナルについて、一部の抗原で異なるパターンが認められたものの、組織抽出物でシグナルの高い抗原タンパク質は、血清でもシグナルが高い傾向が認められ、多くのタンパク質において、組織抽出物と血清が類似した反応パターンを示した。
<病変組織破砕上清中の抗体が反応する抗原による酵素抗原法>
AlphaScreenTM法による抗原タンパク質の探索の結果、滑膜ホモジナイズ上清で特にS/N比が高かった上位5種の抗原タンパク質を患者ごとに選抜して(重複を除いた合計18種類のビオチン化タンパク質をプローブとした)、対応する患者のパラホルムアルデヒド固定後凍結切片を対象として、酵素抗原法を行った。具体的には、凍結切片を5分間流水水先した後、0.3%過酸化水素加メタノールへ室温で30分間浸漬して、内因性ペルオキシダーゼを不活化した。5分間の流水水先後、4μg/mlプロテイナーゼK含有0.05 Mトリス塩酸緩衝液(pH 7.6)を用いて、室温で15分間切片を処理した。PBSで切片を洗浄した後、コムギ胚芽無細胞タンパク合成系で調製したビオチン化タンパク質溶液を室温で1時間、切片上で反応させた。切片をPBSで3回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Nichirei, Japan)を室温で1時間、切片上で反応させた。切片をPBSで3回洗浄した後、0.02%ジアミノベンジジン(Sigma, USA)、0.006%過酸化水素含有トリス塩酸緩衝液へ浸漬して、室温で5分間、発色反応を行った。発色後、切片をヘマトキシリンで対比染色し、エタノール系列により脱水して、キシレンで透徹後、非水溶性封入剤Entellan New(Merck, Germany)で封入した。
染色結果を図4に示す。2種の抗原において、滑膜組織上の一部の形質細胞に特異的な陽性像が認められた。これらうちのひとつは、F box protein 2であり、もうひとつはtripartite motif-containing 21であった。これらの抗原タンパク質では、AlphaScreenTM法における滑膜ホモジナイズ上清を用いたS/N比は、96.4および77.6であった。他の抗原タンパク質と滑膜ホモジナイズ上清とのS/N比は、最大でも17であり、これら2種の抗原タンパク質の反応シグナルは、明らかに高値であった。一方、他の抗原タンパク質では、ほぼすべての形質細胞が陽性であったり、形質細胞以外の細胞にも非特異的陽性像が認められたり、あるいは組織全体において陰性であり、特異的な陽性染色像は検出できなかった。AlpahScreenTM解析において、組織抽出物が最も強く反応する抗原タンパクをプローブに用いて、各患者の病理組織切片を対象として酵素抗原法を行った染色像を図4に示した。
各患者における反応性が上位5種の抗原タンパクに関して、AlphaScreenTM解析の結果と酵素抗原法染色の対応を図5に示した。
<考察・まとめ>
大腸菌や培養細胞など、従来のタンパク質発現系を用いて作製したタンパク質を使用して抗原を探索する場合、遺伝子を発現用ベクターに組込む必要があることや、宿主由来の侠雑物を取り除くための精製操作が必要となるため、網羅的に抗原タンパク質を探索することは非常に難しい。一方、コムギ胚芽無細胞合成系を基盤とした本アッセイシステムは、PCR法によって得られた転写鋳型を用いることによって、ベクター構築することなくin vitro 転写・翻訳が可能である。また、タンパク質のN末にビオチンリガーゼ認識配列を付加しており、ビオチンリガーゼによりその配列が特異的にビオチン化されるため、合成したタンパク質のみを容易にビオチンラベルすることができ、未精製のタンパク質を用いて抗原タンパク質の網羅的な探索が可能である。
さらに近年、タンパク質の立体構造を認識する抗体に関する論文が報告されてきており、アッセイ系における抗原の立体構造の維持は重要である。本アッセイシステムは、1)真核型翻訳システムであるコムギ胚芽無細胞系は、真核生物で良く見られるマルチドメインのタンパク質にも非常に有効な手段である、2)全てのステップにおいて溶液中で行っているため、タンパク質の立体構造を認識する抗体を検出することが可能である。従って、コムギ胚芽無細胞合成系を基盤として作製したN末ビオチン化タンパク質ライブラリーを基盤とした本アッセイシステムを用いる点が、本方法論では非常に重要なポイントの一つである。
AlphaScreenTM法を用いた抗原タンパク質の探索の結果、複数の抗原タンパク質に陽性シグナルが認められた。抗原抗体反応シグナルのパターンは、基本的に滑膜ホモジナイズ上清と血清の間で同様のパターンを示した。しかし一部の抗原では、血清で特に強く反応する場合と、滑膜ホモジナイズ上清で特に強く反応する場合があり、その反応性は抗原の種類により様々であった。この結果は、組織抽出物と血清に含まれる抗体が異なる、すなわち、血中では検出されない程度に、病変組織において特異的に産生される抗体が存在することを示唆している。
血清中の抗体は、主として局所に浸潤する形質細胞により産生された抗体が、血中に分泌されたものであると考えられる。今回の解析で、滑膜ホモジナイズ上清と血清がともに反応する抗原タンパク質が認められた。血中の抗体が組織で産生された抗体に由来するのであれば、血清で認められた反応は、病変組織内で産生された抗体が血中へ分泌され、その抗体が反応したためと考えられる。
組織抽出物で陽性反応が認められた可能性として、別組織で産生された抗体が血中に含まれており、それが反応した結果である可能性も考えられる。しかし、今回の解析に用いた検体のIgG濃度をELISA法で確認したところ、滑膜ホモジナイズ上清と比較して、血清の方が高濃度であった(患者5名の平均IgG濃度は、血清:11.7mg、滑膜ホモジナイズ上清:0.83mg)。組織内の抗体すべてが血液に由来する抗体であると仮定した場合、滑膜ホモジナイズ中の血清IgG濃度は、平均して血清のおよそ1/14である。それにもかかわらず、AlphaScreenTM解析では、組織抽出物と血清との反応性の差がほとんど認められない、あるいは滑膜ホモジナイズ上清の方が反応シグナルの高い抗原が認められた。これらの結果から、滑膜ホモジナイズ上清では、組織内で産生された抗体が血清よりも濃縮されて存在していると想定され、滑膜ホモジナイズ上清の反応シグナルは、病変局所で産生された抗体による反応を示していると考えられる。
以上のことから、滑膜ホモジナイズ上清など組織抽出物を用いることによって、病変局所で特異的に産生される抗体の標的抗原タンパク質の網羅的な探索が可能であることが明らかである。さらに、滑膜ホモジナイズ上清に対して強い反応性を示す抗原タンパク質について、各患者で上位5種ずつ選抜した。これらの抗原タンパク質をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で合成して、対応する患者組織切片を対象に、未精製のまま酵素抗原法のプローブとして使用可能かについて検証を行った。その結果、2種類の抗原タンパク質について、形質細胞特異的に陽性像が認められた。これら結果から、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で作製したビオチン化抗原タンパク質は、未精製の状態で、酵素抗原法のプローブとして利用できることが明らかとなった。明らかな陽性像の認められた2種の抗原タンパク質うち、1種は滑膜ホモジナイズ上清、血清ともにAlphaScreenTM法で明らかな高値を示した。もう1種は、滑膜ホモジナイズ上清のみで高値を示した。以上のことから、組織抽出物を用いた方が、血清を用いるよりも、より多種類の抗原タンパク質を検出できる可能性が高いと考えられる。また、血清を用いて抗原タンパク質ライブラリーを探索することでも、病変で特異的に産生される抗体の標的抗原および酵素抗原法のプローブを検出できることが明らかとなった。血清による抗原タンパク質のスクリーニングは、動物実験などで組織が微小なため組織抽出物が得られにくい場合に適用すべき方法として、重要である。
酵素抗原法で陽性反応を示した2種の抗原のうち、ひとつはF box protein 2(FBXO2)であり、もうひとつはtripartite motif-containing 21(TRIM21)であった。FBXO2と関節リウマチとの直接的な関連については、現在のところ報告されていない。しかし、F-box protein familyであるF-box protein 3の発現が、リウマチ患者の滑膜組織において上昇するとの報告がある(Masuda K et al. Arthritis Res, 4:R8, 2002.)。FBXO2とFBXO3のアミノ酸配列は部分的に類似しており、本アッセイにおいてFBXO2とFBXO3のアミノ酸の相同性が非常に高い部分による交差反応を検出された可能性もあると思われることから、今後エピトープマッピングを含めた詳細な解析を行う必要がある。今回の解析では、FBXO3は抗原タンパク質ライブラリーには含まれていなかった。TRIM21については、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群における主要な自己抗原として報告されている。(Ben-Chetrit E et al. Arthritis Rheum, 33:349-355, 1990.)。
一方、陽性像を示した2種以外の抗原タンパク質では、明らかな陽性像を認めることはできなかった。これらの抗原タンパク質のAlphaScreen解析における組織ホモジナイズ上清のシグナルは、陽性像を示した2種と比較して、明らかに低値であった。この原因として、抗体の結合活性が低い可能性や、これら抗体を産生する形質細胞が病変局所組織において非常に少ないために、滑膜ホモジナイズ上清中の抗体の存在量が少なかった可能性が考えられる。今回用いた未精製抗原タンパク質は、タンパク1分子あたりビオチン1分子が結合しており、未精製のためタンパク質濃度も比較的希薄と思われる。そのため、酵素抗原法陰性であった抗原タンパク質については、抗原タンパク質のビオチン結合数を増やす工夫や、より高濃度の抗原タンパク質溶液を用いるなどの増感法を適用することにより、染色性が改善される可能性が十分にある。
非特異的反応のために、組織全体が染色されてしまい、偽陽性の疑いのある抗原タンパク質も認められた。このような抗原タンパク質の場合には、抗原の調製において、抗原抗体反応の特異性向上を特徴とする市販の抗体希釈液を利用する、あるいは抗体の洗浄操作において、1M NaCl含有PBSなどを用いることで、染色特異性の向上が期待される。
これまで、病変組織で産生される抗体の標的抗原の解明は行われてこなかった。今回の検討により、自己抗原タンパク質ライブラリーを対象として、関節リウマチ患者の病変滑膜ホモジナイズ上清または血清を用いることで、その標的抗原を探索することが可能であり、その抗原で酵素抗原法を行うことで、抗原特異的な抗体を産生する形質細胞の病変局所における存在を証明できることが明らかとなった。
本研究において、2243種類のタンパク質を対象として抗原タンパク質の探索を行った。今後、マイクロアレイや疾患プロテオミクスの結果を利用して、滑膜細胞など病変組織で発現が確認されているタンパク質を対象に、関節リウマチに関連するN末ビオチン化タンパク質ライブラリーを作製し、抗原タンパク質の網羅的な探索も行うことも可能である。
診断上は同じ関節リウマチでも、予後が異なる場合や、治療薬の効果に差があるなど、詳細な症状などは患者間で異なる場合が多く報告されている。したがって、それらパラメータと抗原タンパク質の反応パターンの関係が明らかとなれば、予後予測や治療方針の決定など、近年注目されているオーダーメイド医療における非常に有効な指標になり得る。
本方法論は、抗原ライブラリーと疾患の組み合わせを変えれば、あらゆる疾患に応用可能である。感染症(たとえばH. pylori感染胃粘膜)など、炎症を引き起こしている原因が明らかな疾患に対しては、疾患に共通して反応する抗原タンパク質を効率的に同定できる可能性が高い。各患者で共通して反応する抗原を解析することで、感染症を起こした組織における免疫反応を、感染局所における抗病原菌抗体産生細胞の局在観察という新たな側面から解析できる。
慢性炎症性疾患では形質細胞の浸潤が顕著であるが、あらゆる疾患において、それらの形質細胞が産生する抗体の標的抗原は、明らかにされていない。これらの抗体を解析することで、疾患の原因の解明をはじめ、診断法、治療法につながる情報を得られる可能性がある。これまで明らかにされてこなかった免疫生理学的な一面を見出すことができる可能性もある。
このように、病変局所で産生される抗体の標的抗原解析は、未解明の領域であり、解明する価値も十分にあると思われる。「組織抽出物を用いた抗原検索(特に無細胞タンパク質合成系で作製した抗原タンパク質ライブラリーと組織抽出物及び血清の反応性を利用した抗原検索)」と「酵素抗原法」という方法論は、そのツールとして有用である。
本発明の検索・同定法は、疾患特異的抗原を効率的にスクリーニングすることを可能とする。同定された抗原はプローブとして組織染色などに利用可能である。特に当該プローブは、病変組織内における疾患特異的抗体産生細胞を可視化する手段として有用であり、精密な病理診断への利用が期待される。本発明を適用可能な疾患として各種自己免疫疾患(関節リウマチ、橋本病、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病、高安病、潰瘍性大腸炎など)及び感染症が挙げられる。同定された抗原は、疾患特異的な抗体を検出するプローブとして、オーダーメイド医療のための検査に利用されることも期待される。特に、複数の抗原プローブを併用してプロファイル解析を行った結果は、詳細な病態の把握や分類に有用であり、より適切な治療法の選択を可能にする。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (13)

  1. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、疾患関連抗体の標的抗原をスクリーニングする方法:
    (1)特定の疾患に罹患した個体において形質細胞が浸潤する組織の抽出物とタンパク質ライブラリーとを接触させるステップ;
    (2)前記タンパク質ライブラリーの中から、前記抽出物中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ。
  2. 前記組織が病変組織である、請求項1に記載のスクリーニング法。
  3. 前記疾患が自己免疫疾患である、請求項1又は2に記載のスクリーニング法。
  4. 前記自己免疫疾患が関節リウマチである、請求項3に記載のスクリーニング法。
  5. 前記タンパク質ライブラリーが無細胞タンパク質合成系で調製したタンパク質ライブラリーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
  6. 前記無細胞タンパク質合成系がコムギ胚芽由来無細胞タンパク質合成系である、請求項5に記載のスクリーニング法。
  7. ステップ(2)における特定に、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイを用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
  8. 前記タンパク質ライブラリーを構成する各タンパク質が標識化されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
  9. 前記標識化がビオチン化である、請求項8に記載のスクリーニング法。
  10. 以下のステップ(3)及び(4)を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のスクリーニング法:
    (3)ステップ(1)及びステップ(2)と同様の手順で、ステップ(1)における個体と同一の個体に由来する血清中の抗体が特異的に結合したタンパク質を特定するステップ;
    (4)以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質を特定するステップ、
    (a)ステップ(2)で特定したタンパク質であるがステップ(3)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
    (b)ステップ(3)で特定したタンパク質であるがステップ(2)で特定したタンパク質ではないタンパク質、
    (c)ステップ(2)で特定したタンパク質であり且つステップ(3)で特定したタンパク質。
  11. 以下のステップ(i)及び(ii)を含む、抗体検出法:
    (i)請求項1〜10のいずれか一項に記載のスクリーニング法で選抜された抗原タンパク質をプローブとして用い、該プローブと生体試料とを接触させるステップ;
    (ii)ステップ(i)によって標的抗体に結合したプローブを検出するステップ。
  12. 前記プローブが、請求項8又は9に記載のスクリーニング法で選抜されたタンパク質であり、以下のステップ(I)〜(IV)を更に含む、請求項11に記載の抗体検出法:
    (I)前記標識化に用いた標識物質に対して特異的に結合する酵素標識試薬を接触させるステップ;
    (II)非特異的結合成分を洗浄・除去するステップ;
    (III)酵素標識に対する発色基質を添加し、発色させるステップ;
    (IV)発色を検出するステップ。
  13. 前記酵素標識試薬がストレプトアビジン又はアビジンと標識用酵素との複合体である、請求項12に記載の抗体検出法。
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