JP2011204736A - 電磁波遮蔽材 - Google Patents

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Abstract

【課題】代表的にはディスプレイ前面用に用いられる電磁波遮蔽材において、電磁波遮蔽性能と光透過性を高度に両立させる為に、導電体パターン層として導電性凸状パターン層と共にその表面に電解めっきで形成する導電性金属層を設けたが故に、導電体パターン層の開口部に電解めっき時に発生する打痕が、ディスプレイ画像の表示品質に影響を与えない様にする。
【解決手段】電磁波遮蔽材10は、透明基材1上に導電体パターン層2として、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層3と、その表面上に電解めっきによる導電性金属層4とが形成され、導電体パターン層2の開口部5に存在する打痕6は直径0.5mm以上のものが0個/cm2であり、且つ直径0.5mm未満の大きさの打痕が15個/cm2以下にしてある。
【選択図】 図1

Description

本発明は各種用途、中でも特に、ディスプレイの前面に配置するディスプレイ用の電磁波遮蔽材として好適な電磁波遮蔽材に関する。特に、導電体パターン層として、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層とその表面上に電解めっきで形成した導電性金属層とを有する、電磁波遮蔽材に関する。
現在、ディスプレイ(画像表示装置とも言う)として、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。これらの中でも、特に、PDPは不要な電磁波放出が強いため、ディスプレイの前面(観察者側面)に電磁波遮蔽材を配置している。
また、ディスプレイ用途の電磁波遮蔽材では、優れた電磁波遮蔽性能と可視光域での優れた光透過性とを両立できる点で、導電体層には導電性に優れた金属層など結果として不透明となる層が好適であり、不透明性な導電体層であっても光透過性を確保する為に、導電体層はメッシュ形状などのパターンで多数の開口部を設けた導電体パターン層として形成している。なお、本明細書にて、遮蔽対象の「電磁波」とは代表的にはkHz〜GHz帯域となる所謂「電波」を意味し、前記「光透過性」の「光」とは可視光線を意味する。
そして、導電体パターン層の形成には、金属箔をフォトエッチング法で形成する方法もあるが、コスト面で有利な印刷法も各種提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
ただ、導電体パターン層として、銀粒子など導電性粒子と樹脂バインダを含む印刷インキを印刷して導電性凸状パターン層を形成する場合、光透過性を良くする為にパターンの線幅を細くする程、表面抵抗率が増加して充分な電磁波遮蔽性能が得られなくなる。そこで、導電性凸状パターン層の表面に電解めっきによって導電性金属層を形成して、導電体パターン層を導電性凸状パターン層と導電性金属層とから構成すれば、導電体パターン層としての表面抵抗率を下げられ、充分な電磁波遮蔽性能と充分な光透過性とを両立できる。
特開平11−174174号公報 特開2001−102792号公報 国際公開第2008/149969号のパンフレット
ところが、図1の断面図で示す様に、導電性金属層4を透明基材1上の導電性凸状パターン層3の表面に電解めっきして、導電性金属層4と導電性凸状パターン層3で導電体パターン層2とした電磁波遮蔽材10は、光透過性を確保する為のパターンの開口部5に発生する打痕6が、ディスプレイ前面用としての光学的品質を低下させることが判明した。なお、同図では、打痕6は導電性金属層4の形成された側の透明基材1の面(表側面とする)の他、更にその反対側の透明基材1の裏側面にも発生し得ることを破線で示してある。
この様な打痕6が生じる原因は、導電性金属層4を電解めっきする際に、連続帯状の透明基材1上に導電性凸状パターン層3を形成したシート材を、その長手方向に搬送して連続的に電解めっきするときの導電性凸状パターン層3への通電に給電ローラを使用しているのが原因であった。
すなわち、図6に示す様に、導電性金属層4の電解めっきは、通常は生産性が良い点で、透明基材1に導電性凸状パターン層3が形成されている連続帯状のシート材Soを、その長手方向に搬送しながら連続的に行える電解めっき装置20で行う。図6は、多槽式の電解めっき装置20を概念的に示し、多数備えた電解めっき槽21の槽中に連続帯状のシート材Soを順次通して、各槽毎に電解めっきを繰り返していく装置であり、カソードとなる給電ローラ22、アノード23、ガイドローラ24など備える。また、この他、給電ローラ22とアノード23に電位を与える電源など、通常の電解めっき装置に必要なその他の構成要素の図示は省略してある。
この様に、電解めっきを連続帯状シートSoで行えば、所謂ロール・ツー・ロール方式でロールから巻き出して電解めっきし、電解めっき後は再度ロールに巻き取る生産方式で実施でき生産性に優れる。しかも、導電性凸状パターン層3を印刷法で形成する場合に、その生産性を損なうことなく、導電体パターン層2も生産性良く形成できることになる。
そして、給電ローラ22とシート材So(の導電性凸状パターン層3)との接触は、押圧ローラ22B(図6では図面左から2番目の給電ローラ22に対応させて破線で表示してある)を設けて、シート材Soを給電ローラ22に押し付けて搬送させたとしても、乾いた状態で接触させると電気的な接触が不安定となってスパークが生じて表面を損傷するなど安定して通電できない為に、常に導電性の液体で濡れた状態で接触させており、その導電性の液体として電解めっき液が使用される。なお、この電解めっき液は、シート材Soが直前に通過した電解めっき槽21中の電解めっき液で濡れたまま給電ローラ22に搬送されることでも供給される。従って、給電ローラ22は電解めっき槽21の液中に存在しなくても、電解めっき液と接触し通電状態である為に、時間が経つにつれ給電ローラ22も電解めっきされ、導電性金属が析出してくる。例えば、電解めっき液が硫酸銅浴であれば、銅が析出してくる。金属が不均一に析出しローラ面に突起を形成すると、その突起が打痕6を発生させてしまう。
その結果、図7の断面図で概念的に示す様に、給電ローラ22のローラ表面に発生した突起8が、シート材Soを押圧した跡として打痕6が発生する。なお、同図では、シート材Soの導電性凸状パターン層3の表面には既に導電性金属層4が形成されているが、最初の電解めっきを行う電解めっき槽21に通す前の段階では該導電性金属層4が形成されていない場合もある。尚、一旦電解めっき槽21を1槽以上通過し電解めっきされた後は、その厚さ(総厚)の一部が形成された導電性金属層4が形成された状態となる。
また、打痕6は給電ローラ22が遠因であるが、給電ローラ22は生産性良く電解めっきする為に被めっき物に連続帯状のシート材Soを用い、このシート材Soに常時通電をさせる為に必須なものであるが故に、給電ローラ22を排除することも出来ない。(枚葉シートをバッチ式めっき装置で該シートの外周で通電すれば給電ローラ不要となるがこれでは生産性が落ちる。)
しかも、この様な打痕6は、導電体パターン層2の導電性が主要な要求性能である様な用途ではさほど問題視されないであろうが、本発明の様に、その導電性能による電磁波遮蔽性能と共に光透過性も要求され、その光透過性が注視して見るディスプレイの前面に配置する用途の電磁波遮蔽材においては、ディスプレイ画像の表示品質に悪影響する光学欠陥になってしまうという問題を生じる。
すなわち、本発明の課題は、ディスプレイ前面用に好適な電磁波遮蔽材において、電磁波遮蔽性能と光透過性を高度に両立させる為に、導電体パターン層として導電性凸状パターン層と共に更にその表面に電解めっきで形成する導電性金属層とを設けたが故に、導電体パターン層の開口部に電解めっき時に発生する打痕が、ディスプレイ画像の表示品質に影響を与えない様にすることである。
そこで、本発明の電磁波遮蔽材は次の構成とした。
(1)透明基材上に導電体パターン層として、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層と、該導電性凸状パターン層の表面上に電解めっきによって形成された導電性金属層とが形成され、前記導電体パターン層の非形成部として多数の開口部が形成された、電磁波遮蔽材において、
該開口部に存在する打痕は、直径0.5mm以上の大きさの打痕が0個/cm2であり、且つ直径0.5mm未満の大きさの打痕が15個/cm2以下である、電磁波遮蔽材。
(2)上記(1)に於いて更に、透明基材上の導電性凸状パターン層が透明プライマ層を介して形成されており、該透明プライマ層は前記導電性凸状パターン層の形成部での厚さが導電性凸状パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電性凸状パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、透明プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である、電磁波遮蔽材、とした。
(1)本発明によれば、電解めっき時に生じた打痕が光透過性確保の為に設けた開口部に存在しても、その大きさと単位面積当たりの個数を所定以下に規定してあるので、ディスプレイ画像の表示品質に悪影響する光学欠陥とならない。したがって、電磁波遮蔽性能と光透過性とを高度に両立させる為に、導電体パターン層として電解めっきによる導電性金属層も形成する為の電解めっき装置が、給電ローラを備え連続帯状のシート材を取り扱える生産性の良い装置であるが故の該給電ローラに起因する打痕発生が光学欠陥となるのを回避することができる。従って、電磁波遮蔽性能と光透過性とを高度に両立できる電磁波遮蔽材を生産性良く製造できる構成のものとすることが出来る。
(2)更に、透明基材と導電性凸状パターン層間に、特定の厚さ変化を有するプライマ層及び凸部内導電性粒子分布を特定した導電性凸状パターン層を設けることで、電磁波遮蔽性能と光透過性とを高度に両立させることが出来る上、同じ導電性粒子使用量でも導電性凸状パターン層全体としての表面抵抗率を電解めっき前で下げておけるので、導電性金属層の電解めっきがより容易となり、電磁波遮蔽性能と光透過性とをより高度に両立できる上、導電性凸状パターン層と透明プライマ層との密着性も強化できる。
本発明による電磁波遮蔽材の一形態を例示する断面図。 本発明による電磁波遮蔽材の別の一形態(導電性凸状パターン層を引抜プライマ方式凹版印刷法で形成した場合)を例示する断面図。 引抜プライマ方式凹版印刷法による導電性凸状パターン層の凸部(形成部)周辺にて、導電性凸状パターン層の非形成部よりも形成部で透明プライマ層が厚く、導電性凸状パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部の頂部近くが密で透明プライマ層近くが疎の形態を、概念的に示す断面図。 打痕が給電ローラの突起研磨時の研磨屑でも発生する状況を概念的に説明する説明面。 本発明による電磁波遮蔽材の別の一形態(透明樹脂層あり)を例示する断面図。 連続処理できる電解めっき装置を概念的に説明する説明面。 打痕が給電ローラにより発生する状況を概念的に説明する説明面。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
〔要旨〕
先ず、本発明の電磁波遮蔽材10は、基本的には、図1で例示する電磁波遮蔽材10の様に、透明基材1上に、導電性凸状パターン層3とその表面に電解めっきで形成された導電性金属層4とから少なくとも構成される導電体パターン層2が形成され、該導電体パターン層2の開口部5に打痕6が存在しても、その打痕6は所定サイズ以上のものが所定以下の個数となっているものである。具体的には、単位面積当たりで、直径0.5mm以上の大きさの打痕6の個数が0個/cm2であり、且つ直径0.5mm未満の大きさの打痕が15個/cm2以下である。
なお、上記導電性凸状パターン層3は、導電性粒子とバインダ樹脂等を含む導電性組成物の固化物として形成された層であり、導電ペースト、導電インキなどの導電性組成物を印刷して形成することができる。また、打痕6は、図1では、透明基材1の導電体パターン層2を形成した側の面(表側面)に存在している。また、同時に、表側面の打痕6に対応する平面視で同じ位置の透明基材の裏側面にも発生した場合の打痕6も破線で図示してある。
また、図2に例示する電磁波遮蔽材10は、図1の構成に対して更に、特定の透明プライマ層7が導電性凸状パターン層3と透明基材1との間に介在する形態である。打痕6の発生の遠因となる電解めっきで形成する導電性金属層4は、導電体パターン層2の導電性を高めて電磁波遮蔽性と光透過性とを高度に両立させる為のものでもあり、また同時にこれら性能を高度に両立させる為には、導電性凸状パターン層3としては前記特許文献3で開示の所謂「引抜プライマ方式凹版印刷法」による導電性凸状パターン層3が好ましい。従って、図2の形態はこの「引抜プライマ方式凹版印刷法」で形成されて成る導電性凸状パターン層3を有する形態例である。(なお、図2の形態では、開口部5の打痕6は図1の様に透明基材1の裏側面までは発生していない場合である。)
〔各層の詳細〕
以下、各層及び打痕などについて、更に詳述する。
[透明基材]
先ず、透明基材1には、公知の透明な材料を使用すれば良く、樹脂フィルムの様な有機系基材、ガラス、セラミックスの様な無機系基材があるが、可視光線領域での透明性、耐熱性、機械的強度、取扱性等を考慮すると、樹脂フィルム(乃至シート)が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材1の厚さは、取扱性、コスト等の点で通常は、12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
また、透明基材1は、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点で、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂フィルムが好ましい。更に、この点では、透明基材1は、ロールに巻き取り可能な程度に長手方向に連続して長い連続帯状の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。
尚、「ロール・ツー・ロール方式」とは、被加工材をロールから巻き出した帯状の形態として供給し、適宜の加工を施した後、ロールに巻き取る加工形態のことを云う。
[導電体パターン層]
導電体パターン層2は、少なくとも導電性凸状パターン層3と導電性金属層4とから構成され、多数の開口部5が形成される様にパターン状に形成されることで、電磁波遮蔽性能と光透過性とを両立させた層である。
導電体パターン層2の平面視形状は、代表的には、例えば、メッシュ形状(単位格子形状が六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。開口部5の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電体パターン層2乃至は導電性凸状パターン層3の形成部3aの線幅は(図3参照)、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電体パターン層2の開口率〔(導電体パターン層2の開口部5の合計面積/導電体パターン層2の開口部5及び導電体パターン層2の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能と光透過性の両立の点から、50〜95%程度である。
(導電性凸状パターン層)
導電性凸状パターン層3は、導電性粒子Cpとバインダ樹脂とを含む層である。導電性凸状パターン層3は、導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させて得られる。導電性凸状パターン層3の厚さは、電磁波遮蔽性能、電解めっき適性等の観点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
上記導電性粒子及び樹脂バインダには公知の物を適宜採用できる。例えば、導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド、或いは、樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属(乃至その合金)で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子、などを用いる。
樹脂バインダは、導電性凸状パターン層3を形成する為の液状の導電性組成物から導電性粒子を除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
また、導電性組成物は、焼成加熱の様な樹脂が劣化する様な高温ではなく低温加熱により導電性を向上できる様な、ナノサイズの導電性粒子、導電性樹脂、導電性化合物、化学反応によって導電性となる導電性化合物などを含む組成物でもよい。また、誘導加熱処理、その他の加熱処理等の物理的処理、酸や水と接触させる薬品処理などの化学処理、電気化学的処理等によって、導電性を向上させてもよい。
((印刷方式))
導電性凸状パターン層3を透明基材1上にパターン状に形成する方法は特に限定はない。公知のパターン形成法を用途、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。形成法の代表的な方法は、導電性組成物を用いた印刷法である。
導電性組成物を用いて導電性凸状パターン層3を印刷形成する場合、その印刷方式としても基本的には特に制限はない。例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインキジェット印刷に代表される無版印刷等である。これらの印刷法の中でも、前記特許文献3で開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる点で好ましい印刷方式の一種であり、しかも、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる。そこで、以下この印刷方式について説明する。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、透明基材1上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する方法であり、しかもその際、版面上に透明基材1が存在している間に、版面と透明基材1間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させて透明プライマ層7として固化させた後に透明基材1を凹版から離版して、透明基材1上に透明プライマ層7を介してパターン状の導電性凸状パターン層3を導電体パターン層2の構成層として印刷形成する方法である。この透明プライマ層7は流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物(透明基材1)に移す作用を有する。
この「引抜プライマ方式凹版印刷法」では、例えば次の様にして印刷する。印刷インキとして導電性ペーストなどの固化前の導電性組成物を、凹版の版面の凹部のみにドクターブレードによって充填すると共に凹部以外の版面凸部上の導電性組成物は掻き取って除去する。凹部に充填された導電性組成物の表面は版面(凸部)と完全な面一にならず僅かに窪んだ凹みが生じる。この凹版に、未だ流動状態のプライマ流動層が塗工された透明基材1を供給してプライマ流動層を版面に圧着すると、プライマ流動層が凹みに流れ込み凹みを充填し、また版面凸部も覆う。この状態でプライマ流動層を紫外線照射による硬化等によって固化して透明プライマ層7とした後、透明基材1を凹版から離版して、透明基材1上に透明プライマ層7と、未硬化の導電性組成物、或いは導電性組成物が固化済みの導電性凸状パターン層3が積層された印刷物を得る。なお、導電性組成物の固化は、未硬化の導電性組成物が溶剤を含むときは離版後に行い、無溶剤の場合は離版後、或いは、離版前のプライマ固化と同時又はプライマ固化後に行う。
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図3の断面図(透明基材1は略して図示)で概念的に示す様に、透明プライマ層7と導電性凸状パターン層3との界面について、透明プライマ層7は、導電性凸状パターン層3の形成部3aでの厚さTaが導電性凸状パターン層3の非形成部3bでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部3bの厚さTbは、形成部3aの厚さTaの影響のない非形成部3bつまり開口部4の中央部での厚さとする。
更に、透明プライマ層7と導電性凸状パターン層3との界面は、次の(A)〜(C)のいずれかの1以上の断面形態を有する(但し、図3では図示は省略)。(A)透明プライマ層7と導電性凸状パターン層3との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(B)透明プライマ層7を構成する成分と導電性凸状パターン層3を構成する成分とが混合している混合層を界面近傍に有する断面形態、(C)導電性凸状パターン層3を構成する導電性組成物中に透明プライマ層7に含まれる成分が存在している断面形態。この様な、界面の断面形態は、透明プライマ層7が透明プライマ層7と導電性凸状パターン層3との離版時の密着性を強化し、凹版からインキ(導電性組成物)の被印刷物(透明基材1)への転移を促進し高精度且つ高品質の凹版印刷を可能にしている理由であると思われる。
また、導電性凸状パターン層3の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、透明プライマ層7の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であることが好ましい。
すなわち、導電性凸状パターン層3の形成部3aである導電性凸状パターン層3の凸部の内部では、図3で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密でそれよりも頂部Pから遠い透明プライマ層7の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、透明プライマ層7近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電性凸状パターン層3中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、導電性と津上パターン層3の表面への導電性金属層の電解めっき適性が向上する。更に、透明プライマ層7との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電性凸状パターン層3と透明プライマ層7との密着性が向上する。
なお、導電性凸状パターン層3中に於ける導電性粒子Cpの分布状態は、パターン状に形成された導電性凸状パターン層3の形成部である凸部が透明基材1上で延びる方向には依存性を持たない。つまり、図3で示す導電性凸状パターン層3の凸部の断面図は、凸部が延びる方向に直交し且つ透明基材1のシート面に垂直な面である主切断面の断面図であり、紙面に垂直な方向が凸部が延びる方向(延在方向)であるが、凸部が延びる延在方向では、主切断面内での位置が同じであれば単位体積中の粒子の数密度は一定である。その為、この様な単位体積中の導電性粒子Cpの数密度は、凸部の主切断面に於ける単位面積中の導電性粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。すなわち、図3の如く、主切断面内に於いて、導電性粒子Cpの面密度が透明プライマ層7近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であれば、導電性粒子Cpの体積密度も透明プライマ層7近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材1を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、透明プライマ層7に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電性凸状パターン層3を固化させると良い。
(導電性金属層)
導電性金属層4は、導電体パターン層2としての表面抵抗率を導電性凸状パターン層3のみによる場合よりも下げるために、導電性凸状パターン層3の表面に電解めっきによって形成される層である。
導電性金属層4の金属としては、導電性が高く容易にめっき可能な金属(乃至その合金)であれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、白金、クロム、ニッケル、錫、などを用いることができる。なかでも、銅は材料費及び導電性に優れているので、好ましい金属の一種である。なお、導電性金属層4の厚さは、用途、要求物性に応じたものとすればよく、例えば、0.1〜10μmである。
また、電解めっき液は、導電性金属層4の金属に応じた公知の浴液を使用すれば良く、例えば、該金属が銅の場合は、硫酸銅浴、ピロ燐酸銅浴、シアン化銅浴などを使用することができる。液組成は、例えば、硫酸銅浴では、硫酸銅、硫酸、塩酸、水、その他添加剤等を含む。
(黒化処理)
なお、導電性金属層4に対して、更にその表面に黒化処理を施しても良い。黒化処理により、導電体パターン層2は黒化処理層を含むものとなる。黒化処理としては、公知の処理、例えば、黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金粒子めっき、或いは粗面化処理等を利用できる。黒化処理により、画像の明室コントラストを向上できる。
[透明プライマ層]
なお、上記した透明プライマ層7は、図3の様に導電性凸状パターン層3の形成部と非形成部での厚さが互いに異なり、引抜プライマ方式凹版印刷法に特有の層であり、透明な樹脂層として形成される。該樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などを使用でき、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用できる。ただ、該樹脂としては、凹版印刷時に、流動状態から固化状態への迅速な変化を制御できる点で、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が使用される。なお、電離放射線硬化性樹脂としては公知のものから適宜選択できる。例えば、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。また、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが使用される。
[打痕]
打痕6が開口部5に存在すると、打痕6の大きさ次第では、光透過性確保の為に設けた開口部5の本来の目的に支障を来たし、光学欠陥となる。打痕6の部分で開口部5の表側面や裏側面の表面の平面性が損なわれており、そこで透過光が屈折や散乱を起こして、透過光の進行方向に乱れが生じるからである。もちろん、小さい打痕6であれば光学欠陥にはならない。許容不可の光学欠陥になる打痕6は、大きさについては、30cm離れた距離から目視観察してその存在自体が肉眼で判別できる大きさであり、その大きさは直径で0.5mm以上である。なお、直径とは最大径のことであり、最大径とは、電磁波遮蔽材10を透過光で見た時の打痕6の平面視形状に於いて該平面視形状を内包できる最小の円の直径である。直径0.5mm以下の打痕は、単体では、メッシュ等のパターン内に散在する状態では目視での認識は不能である。しかし、例え直径0.5mm以下の打痕6であっても、多過ぎると、多数の打痕が複合されて目視で認識される水準に達する為、その存在数(面密度)には上限値を設けて管理する必要がある。直径0.5mm以下の打痕については、その数が15個/cm2以下であれば、光学欠陥にはならずに許容できる。特に、10個/cm2以下であれば、30cm未満の距離に近付いて目視観察した場合に於いて、打痕が目視されたとした場合でも、より打痕が目立ち難くなる為、より好ましい。
また、メッシュ形状の導電体パターン2の開口部5の大きさが、例えば縦横300μmの正方形である場合では、直径0.5mm以上の打痕6は、隣接する開口部5にまたがる大きさとなる。
但し、ここで、打痕6の直径が可視光線帯域の最短波長、即ち0.00038mm(0.38μm)未満に迄小さくなると、そのような打痕は光学的に検知不能である。この為、そのような寸法の打痕については、本発明に於ける個数管理の対象とする直径0.5mm以下の打痕には含めない。正確に言うと、本発明に於いては、直径0.5mm以上の大きさの打痕は0個/cm2、直径が0.00038mm以上0.5mm以下の打痕については、その数が15個/cm2以下、より好ましくは10個/cm2以下とする。
なお、打痕6の大きさは上記直径、つまり平面視での大きさ以外に、透明基材1の基材面に立てた法線方向(垂直方向)での、凹みの場合の深さや、透明基材1の裏側面での膨らみの場合は突出した高さも影響していると考えられる。つまり、同じ平面視の大きさ(直径)であっても、深さや高さが異なれば、光学欠陥としての影響度合いは異なると考えられる。しかし、垂直方向での深さ或いは高さの大きさの把握は技術的には出来ても(サンプリングした試料について、打痕6の一つ一つの断面を試料を垂直に切断し露出させて、光学顕微鏡乃至は電子顕微鏡で観察する等)、平面視での大きさの把握に比べて、製造ラインでの品質管理としては高度の技術と検査時間が要求される。また、平面視での大きさとして、透過光下での目視による視認性の観察篩い分け、或いは透過光下でのイメージセンサでの明暗模様による輪郭形状での篩い分け等の際は、平面視での見え方に垂直方向での大きさの影響も加味されていると考えられる。しかも、ディスプレイ画像の表示品質に悪影響するのは平面視での見え方である。
そこで、本発明では、平面視での見え方として、光学欠陥になる場合の大きさ及びその個数と、光学欠陥にならない場合の大きさ及び個数を、実際に顕微鏡観察で計測される開口部5に存在する打痕6の平面視での大きさ(直径)との関係を導いて、直径0.5mm以上の打痕6は0個/cm2、直径0.5mm以下の打痕については、その数が15個/cm2以下、より好ましくは10個/cm2以下であれば良いことを見出した。
なお、理想的には、打痕6の大きさはより小さく、数はより少ない方が好ましいが、上記許容範囲内に抑えることで光学欠陥を防げるので、無理に理想的なレベルを追求して、製品歩留まりが落ちてコスト高となっても意味がない。
また、前述した様に、打痕6の発生原因は、透明基材1に導電性凸状パターン層3を形成済みのシート材Soに電解めっきする際に、生産性に優れるロール・ツー・ロール方式で処理できる様に、被めっき物であるシート材Soの形状を連続帯状のシートとして用いて、電解めっき装置20に連続的に通しつつ通電する為に必要な給電ローラ22にあった。つまり、給電ローラ22も電解めっきされ、そのローラ面に析出した導電性金属が突起8となって生成する為であった。
そこで、図4の断面図で概念的に示す様に、給電ローラ22のローラ面を研磨機25で電解めっき中に常時研磨すれば、打痕6の原因となる突起8の生成を防ぐのに効果的である。ただ、研磨は運転と休止を交互に繰り返す間欠的な研磨とすると(例えば、電解めっき前或いは後の電解めっきの休止中に研磨して、電解めっき中は突起が目立つまで研磨しない、或いは電解めっき中に運転と停止を繰り返す等)、給電ローラ22のローラ面の均一性が保てず、研磨ムラがシート材Soの導電性凸状パターン層3に転写(賦形)されてしまうという問題も生じる為、研磨は電解めっき中に常時行うのが好ましい。
しかし、電解めっき中に常時研磨すると、今度は、研磨によって発生した、導電性金属の金属粉や砥石粉等の研磨屑26が給電ローラ22とシート材Soとの間に入って、シート材Soを押圧した跡として、やはり打痕6が発生してしまう。(なお、研磨屑26による打痕6は、研磨を停止すれば防げるが、そうすると前記ローラ面の突起8による打痕6が生じる。)
しかも、給電ローラ22とシート材Soとの重力方向に対する位置関係は、給電ローラ22とシート材Soとの導通安定化の為にシート材Soが濡れた状態で接触させるので、シート材Soの面上に電解めっき液などの導電性の液体を蓄えられる様に、給電ローラ22に対してシート材Soを重力方向G(水平面に対して鉛直方向下側)側に配置することなる。
なお、更に図4及び図6の場合では、シート材Soはめっき面を鉛直方向上向き(図面上方)に搬送し、(軸方向を)水平に設置した給電ローラ22部分で、搬送路を水平から少し下向きに曲がる様に給電ローラ22のローラ面に面接触させて給電時の接触抵抗を下げる様にしてあり、また、この下向きの部分に液を蓄え易くなっている。
なお、給電ローラ22のローラ面に発生する突起8による打痕6は、給電ローラ22をシート材Soの鉛直方向下側に配置しても発生する。しかも、この様な配置にすると、給電ローラ22とシート材Soとを濡れた状態で接触させる為に、シート材Soの面上に電解めっき液などの導電性の液体を蓄える様にして、給電ローラ22とシート材Soとの電気的接触を行うことができない。
この様に、打痕6の発生は、給電ローラ22に発生する突起8、更には、該突起8の発生を防ぐ為の、研磨機25による研磨屑26などによるが、これらは給電ローラ22の使用が不可避的な、連続帯状の透明基材1を用いた、ロール・ツー・ロール方式での電解めっき処理、更にはその後の各種光学フイルム等の積層処理を、生産性良く製造しようとするが故の、不可避的な問題であった。
しかし、上記の様に、打痕6を根絶するのではなく、或る程度の打痕8は許容するという考えのもと、打痕6の大きさ及び個数を上記許容範囲内に抑え込めば、光学欠陥になるのを防いで歩留まり良く製造できる製品となることが判明した。
すなわち、本発明では、透明基材1に連続帯状のものを用いて、透明基材1上に導電性凸状パターン層3を形成した、連続帯状のシート材Soに対して、その導電性凸状パターン層2の表面に導電性金属層4を電解めっきで形成して、前記導電性凸状パターン層3と該導電性金属層4とから導電体パターン層2を形成する。このときに、シート材Soをその長手方向に搬送しながら連続的に電解めっきする為に、該シート材Soの導電性凸状パターン層3に連続的に通電を行う為に回転軸を水平に配置した給電ローラ22を回転しながら電気的に接触させることになる。この接触時に、該給電ローラ22を前記シート材Soに対して鉛直方向上側に配置して、給電ローラ22に接触させる部分近傍のシート材Soの面を電解めっき液で濡らしつつ電気的接触を行う。その際に、給電ローラ22のローラ面に電解めっきされて析出する該電解めっき液による導電性金属が突起8となって、該突起8がシート材Soを押圧して発生する打痕6、或いは、該突起8を除去乃至は生成自体を防ぐ為の、給電ローラ22のローラ面を電解めっき中に常時研磨したときに発生する砥石粉や研磨された導電性金属の金属粉等からなる研磨屑26がシート材Soを押圧して発生する打痕6が発生する。この打痕について、導電体パターン層2の開口部5に存在する打痕6の大きさと個数を、直径0.5mm以上の打痕の数を0個/cm2、直径0.5mm以下の打痕については、その数が15個/cm2以下にすることで、打痕6による光学欠陥発生を防止した。
ところで、打痕6の大きさ及び個数を、上記許容範囲内に制御し押さえ込むには、図4で説明すれば、給電ローラ22のローラ面を研磨する研磨機25の、研磨圧力、研磨材の種類、研磨速度、等の研磨条件を変えたり、或いは研磨屑26が給電ローラ22とシート材So間に行く個数をなるべく減らす様に、給電ローラ22のローラ面、給電ローラ22部分でシート材So上に溜まった電解めっき液等の液部分に、研磨屑26を排出する排出液27を吹き付けたりして、シート材Soの幅方向両側端部から研磨屑26を排出させ、またその排出液27の液量を調整する。なお、排出液27は同じ電解めっき液でも良いし、給電ローラ22とシート材Soとの濡れによる導通向上が維持できれば水、或いは電解めっき液中の成分イオンの一部のイオンを含む電解質水溶液でも良い。これらによって、給電ローラ22のローラ面上の突起8や、研磨で生じる研磨屑26を減らして、打痕6を許容範囲内のもとすると良い。
なお、既に述べたが、研磨機25による給電ローラ22のローラ面の研磨は、ローラ幅方向の全域を常時研磨する様にするのが良い。例えば、研磨機25を、給電ローラ22の幅方向(図面では紙面に対して手間乃至は奥方向)に電解めっき中は常時往復移動させつつ研磨する。この様にしないと、導電性凸状パターン層3に研磨ムラが転写(賦形)されてしまう。
[透明樹脂層]
また、ディスプレイ前面用電磁波遮蔽10は、図5の断面図で例示する様に、打痕6を有する開口部5を埋める様に、透明樹脂層9を更に設けても良い。透明樹脂層9は好ましくは打痕6が存在している表面に於ける材料と同じか類似の屈折率の材料で形成することが好ましい。この様な屈折率に留意した材料で透明樹脂層6を形成することで、打痕6を包み込む透明樹脂層4の屈折率と、打痕6の中実の内部の屈折率が同一ならば、打痕6と透明樹脂層9との界面は、もはや光学的に有意な界面ではなくなり、打痕6による表面凹凸で光が進路変更、拡散、乱反射などしないので、打痕6によるディスプレイ画質への悪影響を抑えることができる。
なお、透明樹脂層9の表面の水準(透明基材面或いはプライマ面からの垂直方向距離である標高)は、図5の形態では、導電体パターン層2の頂部の標高よりも大きく(高く)、導電体パターン層2の頂部の上にも存在し、導電体パターン層2を完全に埋める様な水準の例である。しかし、ここでの透明樹脂層9の最低限の目的は、打痕6が光学欠陥となるのを回避することであるので、透明樹脂層9の表面の水準は、打痕6を完全に埋める水準(標高)以上であれば良い。ただ、図5に例示の形態の様に、導電体パターン層2を完全に埋める様な表面の水準にすれば、別の効果として、導電体パターン層2が形成された側の表側面に、更に粘着剤層付き学フィルム等を貼り付けるときに貼り付け面の凹凸に気泡が残留するのを防止できる効果も期待できる。なお、この場合は、透明樹脂層9は、導電体パターン層2による凹凸を平坦化する平坦化樹脂層を兼用した層となる。
ただ、いずれにしろ、打痕6の影響は、打痕6が存在する面(表側面、裏側面、或いはこれら両面)が、大気に露出している最表面である形態が、該面の屈折率差が大気との屈折率差となる関係上、最も大きいので、本発明の効果は、この様な打痕6が最表面に存在する形態が、大気に露出せず打痕6上に層を有する形態に比べてより大きくなる。
なお、透明樹脂層9の樹脂としては、基本的には透明であれば特に限定はないが、より好ましくは、その屈折率を透明樹脂層9を設ける面を構成する材料の屈折率に合わせるのが好ましい。ここで、透明樹脂層9の屈折率をnt、透明樹脂層9を設ける面であり且つ打痕6が存在する面の屈折率をnbとすると、これらの差の絶対値で、屈折率差が、|nt−nb|≦0.15となる様に樹脂を選定すると良い。なお、nbは、透明樹脂層9を設ける面が、透明プライマ層7があるときは該透明プライマ層7の屈折率であり、透明基材1であるときは該透明基材1の屈折率である。
この様な樹脂としては、公知の樹脂でよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などを使用でき、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用できる。例えば、熱可塑性樹脂には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等を使用し、熱硬化性樹脂には、熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性ポリエステル系樹脂、熱硬化性ウレタン系樹脂等を使用し、また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
[その他の層]
なお、本発明による電磁波遮蔽材10は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の層を含んでもよい。例えば、導電性金属層4の表面酸化を防止する防錆層、導電性金属層4表面の外光反射を低減するための黒化層、導電体パターン層2による凹凸を平坦化する平坦化樹脂層、導電体パターン層2が形成された側とは反対側の透明基材1の面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルムなどである。或いは、導電体パターン層2側の面、或いはその反対側の透明基材1の面に対する、各種光学フィルタ、光学フィルタ以外のその他の機能層などである。例えば、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、微小ルーバによる外光反射防止層(特開2007−272161号公報など参照)などであり、光学フィルタ以外の機能層は、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。なお、これらの層には公知のものを適宜使用すれば良い。
〔用途〕
本発明による電磁波遮蔽材10は、特に、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置のディスプレイの前面フィルタ用であり、特にPDP用として好適である。なお、ディスプレイ前面用以外にも、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
更に、本発明を実施例によって説明する。
〔比較例1〜比較例3、及び実施例1〕
図2の様な、透明プライマ層7付きの電磁波遮蔽材10を作製した。すなわち、電磁波遮蔽材10は、透明基材1の片面に、透明プライマ層7を介して、導電体パターン層2として、導電性粒子と樹脂バインダを含む液状の導電性組成物の固化物として導電性凸状パターン層3が印刷形成され、更に該導電性凸状パターン層3の表面に電解めっきによって電解銅めっき層として導電性金属層4が形成され、導電体パターン層2の非形成部として光透過性確保の為の多数の開口部5が形成されている。透明基材1の導電体パターン層2を形成した側の面(表側面)の開口部5に打痕6が存在する。また、透明プライマ層7は「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって導電性凸状パターン層3を印刷形成したことによるものであり、図3の様に、透明プライマ層7の厚さが、導電性凸状パターン層3の形成部3aでの厚さTaが導電性凸状パターン層3の非形成部3bでの厚さTbに比べて厚く(Ta>Tb)、且つ、導電性凸状パターン層3の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、透明プライマ層7の近傍において分布が疎であり、凸部の頂部Pの近傍において分布が密となっている。
なお、透明基材1には、厚み100μmの連続帯状で透明なポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、導電性凸状パターン層3は銀の導電性粒子とポリエステル系樹脂、溶剤等からなる樹脂バインダからなる導電性組成物(インキ)を、「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって印刷形成して、連続帯状のシート材Soを作製した。また、導電体パターン層2の平面視形状は、正方格子状のメッシュ形状であり、その線幅は20μm、線の周期(格子ピッチ)は300μm(開口部5の大きさは280μmの正方形)である。また、透明プライマ層7の厚さは、Taで7μm、Tbで5μmである。また、シート材So上の導電性凸状パターン層3の表面抵抗率は2.5Ω/□であった。
そして、このシート材Soに対して、導電性金属層4として、図3及び図4に示す様な、電解めっき槽21、給電ローラ22及び研磨機25等を備える、多槽(8槽)式の電解めっき装置20によって、ロール・ツー・ロール方式で連続的に、硫酸銅めっき液で厚み2μmの電解銅めっき層を形成して、電磁波遮蔽材10とした。
また、この時の給電ローラ22に対する研磨機25の研磨圧力を各種調整することで、打痕6の発生状況を制御した。比較例1、比較例2、比較例3、実施例1の研磨圧力は、この順に、0.1Mpa、0.2Mpa、0.3Mpa、0.4Mpaに変化させた。なお、この研磨圧力は、給電ローラ22と研磨機の砥石との接触面の単位面積当たりの圧力ではなく、装置が示す値であり、工程管理上の目安値である。
〔比較例4〕
実施例1に於いて、研磨機25の研磨圧力を0.0(ゼロ)にした以外は、同様にして、電磁波遮蔽材10を作製した。なお、研磨圧力が0.0とは、研磨機の砥石をローラ表面に接触させないで研磨しないという意味ではなく、研磨機の砥石は接触させているが特別に圧力を加えていないで(自重は加わる)、給電ローラ22のローラ面を幅方向(ローラ軸方向)の往復移動はそのまま行っているという意味である。
〔性能評価結果〕
そして、以上の電磁波遮蔽材10について、光学顕微鏡によって透過光下で観察して、打痕6の大きさ及びの個数を測定した。打痕6の大きさは、直径(最大径)で0.5mm以上と、0.5mm未満(光学顕微鏡観察の為、可視光線最短波長0.00038mm以上の直径の打痕のみ検出していると考えられる)の2種類に分類し、夫々の単位面積当たりの個数を数えた。結果は表1に示す。
また、電磁波遮蔽材10を透過光下で、30cm離れた距離から肉眼で観察し、全体として打痕6が気になる程度に視認できて光学欠陥を回避できないと判断したものは表中×で表記し、個々の打痕6を目視で注視すれば分かるが全体として打痕6が気になる程度でなく光学欠陥を回避できると判断したものは、表中○で表記した。
Figure 2011204736
開口部5に存在する打痕6の大きさ及び個数は、比較例1〜比較例3、実施例1では、研磨圧力が順に0.1MPa、0.2MPa、0.3MPa、0.4MPaと上がるにつれて、打痕6の個数は増えたが、実施例1の直径0.5mm以上の個数が10個/cm2までは許容でき、光学欠陥を回避できるものであった。なお、打痕6は大きさが直径0.5mm以上であれば1個でも注視すれば視認可能であるが、直径0.5mm未満でしかもその個数が10個未満であれば全体としては目立たず許容できる範囲内であり、光学欠陥を回避できる程度の目視での視認性に収まる。
しかし、比較例4の研磨圧力0.0(ゼロ)MPaでは、直径0.5mm以上も直径0.5mm未満も25個と顕著に増加した結果、光学欠陥を回避できない程度の目視での視認性となった。
1 透明基材
2 導電体パターン層
3 導電性凸状パターン層
3a 導電性凸状パターン層の形成部
3b 導電性凸状パターン層の非形成部
4 導電性金属層
5 開口部
6 打痕
7 透明プライマ層
8 突起
9 透明樹脂層
10 電磁波遮蔽材
20 電解めっき装置
21 電解めっき槽
22 給電ローラ(カソード)
22B 押圧ローラ(バックアップローラ)
23 アノード
24 ガイドローラ
25 研磨機
26 研磨屑
27 排出液
Cp 導電性粒子
G 重力方向
P 頂部
Ta 導電性凸状パターン層の形成部(凸部)の透明プライマ層の厚さ
Tb 導電性凸状パターン層の非形成部の透明プライマ層の厚さ

Claims (2)

  1. 透明基材上に導電体パターン層として、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層と、該導電性凸状パターン層の表面上に電解めっきによって形成された導電性金属層とが形成され、前記導電体パターン層の非形成部として多数の開口部が形成された、電磁波遮蔽材において、
    該開口部に存在する打痕は、直径0.5mm以上の大きさの打痕が0個/cm2であり、且つ直径0.5mm未満の大きさの打痕が15個/cm2以下である、電磁波遮蔽材。
  2. 透明基材上の導電性凸状パターン層が透明プライマ層を介して形成されており、該透明プライマ層は前記導電性凸状パターン層の形成部での厚さが導電性凸状パターン層の非形成部での厚さに比べて厚く、且つ、導電性凸状パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、透明プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である、請求項1記載の電磁波遮蔽材。
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