JP2011202202A - 金属焼結体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】給電ロールを用いて、効率良く金属焼結体を製造することが可能である金属焼結体の製造方法に適した製造装置を提供する。
【解決手段】シート状成形体Fを走行させるとともに、その走行方向に間隔をおいて配置された少なくとも一対の給電ロール3a,3bと、この一対の給電ロール3a,3bを介してシート状成形体Fに電流を供給する給電機構5と、一対の給電ロール3a,3bに対向して配置されシート状成形体Fを給電ロール3a,3bとの間に挟持する一対の押さえロール4a,4bと、一対の給電ロール3a,3b又は一対の押さえロール4a,4bの間にシート状成形体Fの面に対向して配置される反射板6a,6bと、反射板6bの幅方向中央部を冷却する冷却手段である冷却ノズル7とを備える。
【選択図】 図1

Description

この発明は、チタン、ステンレス鋼、Ni基合金等からなる金属焼結体の製造方法に適した製造装置に関するものである。
金属焼結体を製造する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、金属粉末に有機バインダー、可塑剤、水及び界面活性剤等を混合してスラリーとし、このスラリーを成形した成形体を加熱焼結するものが提案されている。このようなスラリーからなる成形体を焼結する場合は、成形体を焼結炉内に装入し、焼結炉内においてヒータ加熱又はバーナ加熱して焼結炉の雰囲気温度を上昇させ、成形体を加熱焼結する。そのため、成形体自体を所定の温度まで加熱するためには、焼結炉の内部雰囲気全体を比較的長時間にわたって高温に保持する必要があり、熱効率が悪いという問題があった。
また、焼結を効率的に行うために、特許文献2においては、一対の圧延ロールで板状に成形した成形体を、二対以上の給電ロールと押さえロールとの間に通過させて、通電加熱し焼結する方法が提案されている。この特許文献2においては、成形体自体を通電によって加熱して焼結するので、短時間で加熱することが可能となっており熱効率が良い。また、成形体を搬送しながら焼結可能であるので、連続的に成形体を加熱焼結することができ、効率的である。
しかしながら、このような成形体は、焼結が進行するにつれて幅方向、走行方向、厚さ方向に収縮する。また、成形体の幅方向端部は、熱が拡散され易いため、幅方向中央部と比較して温度が低くなる傾向にある。このため、幅方向端部の収縮率が小さく、かつ、幅方向中央部の収縮率が大きくなり、成形体の幅方向端部が波打つように変形してしまうことや、成形体が蛇行して走行してしまうことがある。このような変形や蛇行が発生した場合には、製造される金属焼結体に亀裂が生じて切れたり、給電ロールが破損したりするおそれがある。そして、変形によって給電ロールと成形体との通電が均一に行われないと、局部的に大電流が通過することによってスパークが発生しやすくなる。そして、スパークにより給電ロールの表面が溶けることや、表面に傷がついて凹凸が生じることがあり、この凹凸によって均一な通電が阻害され、さらなるスパークを誘発するおそれがあった。
特開2007−046089号公報 特許第3068003号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、給電ロールを用いて、効率良く金属焼結体を製造することが可能である金属焼結体の製造方法に適した製造装置を提供する。
本発明の金属焼結体の製造装置は、金属粉末からなるシート状成形体に対して通電して自己発熱によって焼結させる金属焼結体の製造装置であって、前記シート状成形体を走行させるとともに前記シート状成形体の走行方向に間隔をおいて配置された少なくとも一対の給電ロールと、この一対の給電ロールを介して前記シート状成形体に電流を供給する給電機構と、前記一対の給電ロールに対向して配置され前記シート状成形体を前記給電ロールとの間に挟持する一対の押さえロールと、前記一対の給電ロール又は前記一対の押さえロールの間に前記シート状成形体の面に対向して配置される反射板と、前記反射板の幅方向中央部を冷却する冷却手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の金属焼結体の製造装置において、前記冷却手段は、前記反射板の幅方向中央部の背面に向けて冷媒を噴射する冷却ノズルを有していることを特徴とする。
また、本発明の金属焼結体の製造装置において、前記冷却ノズルの噴射口外縁に、前記反射板の背面に対向して配置される誘導板が設けられているとよい。
この製造装置においては、一対の給電ロールを介して加熱対象であるシート状成形体に電流を供給することによりシート状成形体を自己発熱させる構成としているので、シート状成形体を短時間で加熱して焼結することができる。また、シート状成形体と対向する反射板を設けたことにより、シート状成形体の放熱が抑制され、さらに、その場合に、反射板の幅方向の中央部については冷却手段により積極的に冷却しているので、シート状成形体の幅方向端部と比較して高温となる中央部を有効に冷却することができる。これにより、中央部と端部との温度差を小さくすることができ、温度差によって生じるシート状成形体の変形を抑制することができる。
また、冷却ノズルの噴射口外縁に誘導板を設けた場合、反射板と誘導板とで形成される流路に沿って反射板の幅方向中央部から端部まで冷媒を確実に流すことができるので、シート状成形体を効率的に冷却することができる。
また、シート状成形体を直接冷却せずに反射板を介して冷却するので、シート状成形体の急冷によって生じる金属焼結体の亀裂等の発生を抑制することができる。したがって、シート状成形体に安定した電流を流すことができ、均一な金属焼結体を得ることができる。
また、本発明の金属焼結体の製造装置において、前記反射板は、前記シート状成形体の両面に対向するように、一対設けられているとよい。
また、本発明の金属焼結体の製造装置において、両反射板の幅方向端部間が連結されているとよい。
シート状成形体の幅方向端部は、熱が拡散され易いため、幅方向中央部と比較して温度が低くなる傾向にある。シート状成形体を反射板で囲み、その幅方向端部を反射板で覆う状態とすることにより端部からの放熱を抑制することができる。これにより、シート状成形体の中央部と端部との温度差が生じるのを抑制し、シート状成形体の変形を防止することができる。
また、本発明の金属焼結体の製造装置において、前記一対の給電ロールの周速度を、それぞれ独立して制御する制御機構を備えているとよい。
この場合、シート状成形体の焼結に伴う走行方向の収縮に応じて、搬出側に配置された給電ロールと、搬入側に配置された給電ロールとの周速度を調整することが可能となり、シート状成形体に引張応力を作用させた状態で、一対の給電ロールを介してシート状成形体に通電して焼結することができる。よって、焼結の進行に伴うシート状成形体の変形を抑制することができ、金属焼結体を効率良く製造することができる。
また、前記給電ロールおよび前記押さえロールの内部に冷却管が形成され、前記冷却管の冷媒を流通させて冷却する冷却機構が設けられているとよい。
シート状成形体が自己発熱することにより、このシート状成形体に接触している給電ロールおよび押さえロールも高温となる。そこで、冷却機構を設けることによって、給電ロールおよび押さえロールの劣化を防止することができる。
また、本発明の金属焼結体の製造方法は、上述の金属焼結体の製造装置を用いてシート状成形体を焼結させることを特徴とする。
また、本発明の金属焼結体の製造方法は、金属粉末からなるシート状成形体を走行させながら通電して自己発熱によって焼結させる金属焼結体の製造方法であって、通電による前記シート状成形体の発熱部の面に対向する反射板を、前記シート状成形体の走行方向に沿って設けておき、前記反射板の幅方向中央部を冷却することを特徴とする。
本発明によれば、給電ロールを用いて、効率良く金属焼結体を製造することが可能である金属焼結体の製造方法に適した金属焼結体の製造装置を提供することができる。
本発明により製造される金属焼結体の製造方法を示すフローチャートである。 図1に示す金属焼結体の製造方法において、シート状成形体を成形するシート成形機の概略説明図である。 本発明の第1実施形態の金属焼結体の製造装置を示す概略説明図である。 図3に示す製造装置のシート状成形体の走行方向に直交する方向から見た説明図である。 図3に示す製造装置のシート状成形体の走行方向に直交する方向から見た反射板の作用を説明する図である。 第2実施形態の金属焼結体の製造装置の概略を示し、(a)がシート状成形体の走行方向から見た図、(b)が走行方向に直交する方向から見た図である。 本発明の他の実施形態である金属焼結体の製造装置を示す概略説明図である。
以下、本発明の金属焼結体の製造装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
この実施形態の金属焼結体の製造装置は、例えば、フィルター等として用いられる多孔質チタンの焼結体を製造するものである。
まず、本実施形態である金属焼結体(多孔質チタン焼結体)の製造方法について図1に示すフローチャートを参照して工程毎に説明する。
(スラリー作製工程S1)
スラリー作製工程S1では、チタン粉末、水素化チタン粉末、またはこれらの混合粉末に、有機バインダー、発泡剤、可塑剤、水及び必要に応じて界面活性剤を混合して発泡性のスラリーを作製する。
本実施形態では、原料粉末として、平均粒径5〜30μmの水素化チタン粉末と、水素化チタン粉末を脱水素処理することにより得られた平均粒径10〜30μmの純チタン粉末の混合粉末を用いた。
上記の混合粉末を結合させる有機バインダーとしては、水溶性のメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを用いた。発泡剤として、ネオペンタン、ヘキサンおよびペプタンを用いた。そして、可塑剤として、グリセリンを用い、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩を用いた。
これらの原料を、混合粉末:5〜80質量%、有機バインダー:0.05〜10質量%、発泡剤:0.05〜10質量%。可塑剤:0.1〜15質量%、界面活性剤:0.05〜5質量%、水:残部の比率で混合して、スラリーを作製した。
次に、このスラリーから発泡性のシート状成形体Fを成形する。ここで成形工程S2、発泡工程S3は、図2に示すシート成形機90を用いて実施される。このシート成形機90は、搬送ローラ91によって駆動されるキャリアシート92と、スラリーSが貯留されるスラリー貯留部93と、キャリアシート92上に配置されたドクターブレード94と、発泡槽95と、乾燥室96とを備えている。
(成形工程S2)
成形工程S2では、図2に示すシート成形機90を用いて、スラリー貯留部93からキャリアシート92上にスラリーSが供給され、ドクターブレード94によってキャリアシート92上のスラリーSの厚さを所定値に調整して、幅110mm、長さ200mm、厚さ1.5mmのシート状スラリーを製造する。
(発泡工程S3)
発泡工程S3では、シート状スラリーをキャリアシート92ごと発泡槽95内に挿入し、温度70℃、湿度90℃で1時間保持し、乾燥室96内で80℃の温風を1時間送風して温風乾燥させる。この発泡工程S3によって、シート状スラリー中の発泡剤が発泡して、三次元網目構造を有するとともに、この網目構造の骨格部分にチタン粉末が位置した発泡成形体が作製される。
(脱脂工程S4)
前述の発泡成形体は、キャリアシート92から分離されるとともにジルコニア製の支持プレートの上に載置され、脱脂炉内に装入されて、5×10−2Paの真空雰囲気中に550℃で5時間保持される。これにより、発泡成形体に含まれる脂分(有機バインダー等)が揮発除去される。この状態の発泡成形体においては、チタン粉末同士は結合しておらず、導電性を有していない。なお、ジルコニア製の支持プレートを使用することによって発泡成形体中のチタンと支持プレートとの反応を防止している。
(プレ焼結工程S5)
脱脂された発泡成形体は、支持プレートとともにプレ焼結炉内に装入される。プレ焼結炉においては、脱脂された発泡成形体を、5×10−3Paの真空雰囲気中で800〜1000℃で1〜30分保持する。これにより、三次元網目構造の骨格部分に位置するチタン粉末同士が結合することによって、導電性を有するシート状成形体Fが作製される。ここで、シート状成形体Fの電気抵抗値Pは、20×10−6Ω・m≦P≦1500×10−6Ω・mの範囲内に調整され、本実施形態では、P=100×10−6Ω・mに設定されている。
(切断工程S6)
切断工程S6においては、プレ焼結炉で加熱焼結されて作製したシート状成形体Fの幅端部を長手方向に沿って切断し、その幅を所定長さ(本実施形態では100mm)に調整する。ここで、導電性を有する程度まで焼結されたシート状成形体Fにおいては、チタン粉末同士が一定の強度で結合しているので、支持プレートから分離しても崩壊することがなく、容易に取り扱うことが可能となる。
(通電焼結工程S7)
支持プレートから分離されたシート状成形体Fは、図3及び図4に示す金属焼結体の製造装置1を用いて通電焼結される。具体的には、シート状成形体Fに電流が供給され、ジュール熱によってシート状成形体Fを自己発熱させ、Arガス雰囲気中で1300℃、1〜5分保持する。
この、通電焼結工程S7にて使用される金属焼結体の製造装置1について図3から図5を参照しながら説明する。
この金属焼結体の製造装置1は、図3に示すように、搬入口2a及び搬出口2bを備えた焼結室2と、この焼結室2内において搬入口2a側に配置された第1給電ロール3aと、この第1給電ロール3aの上部に対向配置される第1押さえロール4aと、焼結室2内において搬出口2b側に配置された第2給電ロール3bと、この第2給電ロール3bの上部に対向配置される第2押さえロール4bと、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bを介してシート状成形体Fに電流を供給する給電機構5と、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3b、第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bの間に設けられる一対の反射板6a,6bとを備えている。また、冷却手段として、反射板6bに冷媒ガスを噴射する冷却ノズル7を備える。
第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bは、図4に示すように、シート状成形体Fの走行方向(図3の矢印Aで示す方向)に対して直交する水平方向に延在させられており、その一方側(図4において左側)端部が絶縁板31を介して焼結室2の内壁部に軸支されるとともに、他方側(図4において右側)部分が焼結室2の外部に突出させられている。
第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bのうち焼結室2から突出された部分には、給電機構5から電流を供給する給電コネクタ32と、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの内部に設けられた水冷配管33に冷却水を供給する冷却水供給部34と、この第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bを回転駆動する駆動モータ35と、この駆動モータ35と給電コネクタ32との間の通電を防止するための絶縁部材36とが設けられている。
第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bは、図4に示すように、内部に水冷配管33が設けられた二重管構造とされている。冷却水供給部34には、供給管34aと排出管34bとが設けられており、供給管34aから水冷配管33に対して冷却水が供給される。水冷配管33を通じて第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの一方側(図4において左側)に向けて供給された冷却水は、水冷配管33の外側の環状空間を通じて第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの他方側(図4において右側)に向けて流通され、排出管34bを介して外部へと排出される。
給電コネクタ32は、回転する第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの外周面に設けられた円筒状の部材(スリップリング)であり、この給電コネクタ32に、カーボンブラシ等の電極51を介して給電機構5から電流が供給される構成とされている。本実施形態においては、給電機構5は直流電源とする。
絶縁部材36は、例えば、絶縁樹脂製のカップリングが用いられる。
第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bの両端部は、図4に示すように、焼結室2の天井部を貫通するように設けられた一対の支持アーム40によって軸支される構成とされている。なお、この支持アーム40には、その途中位置を分断するように絶縁碍子41が設けられている。
支持アーム40は、それぞれが焼結室2の天井部上部に設置された圧力調整機構8に支持されており、第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bの上下方向位置を調整可能な構成とされている。つまり、この圧力調整機構8によって、第1給電ロール3aと第1押さえロール4aとの挟持圧力及び第2給電ロール3bと第2押さえロール4bとの挟持圧力が調整される構成とされている。また、支持アーム40には、挟持圧力を検知するためにロードセル42が取りつけられている。
また、この第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bは、前述の第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bと同様に、内部に水冷配管43が設けられた二重管構造とされており、冷却水供給手段44によって冷却水を流通させることで冷却される構成とされている。
第1押さえロール4aと第2押さえロール4bとの設置間隔、第1給電ロール3aと第2給電ロール3bとの設置間隔は、例えば、100mmとされている。なお、ロール間隔は、製品に必要な加熱時間(材質及び用途により異なる)と生産速度を考慮して決定される。
さらに、これら第1給電ロール3a及び第2給電ロール3b、第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bは、例えば、タングステン合金等の熱膨張係数の小さな材料で構成されている。
そして、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bは、それぞれの周速度を独立して制御する制御部37a,37bを備えている。第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bは、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bに追従する従動ロールである。
反射板6a,6bは、図3に示すように、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3b、第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bの間に、シート状成形体Fの両面に若干の間隔をあけて対向するように一対設けられる。これら一対の反射板6a,6bには、例えば、ステンレス及びNi,Cr合金等の熱反射効率の高い材料の板材が用いられ、シート状成形体Fとの対向面に、反射効率を高めるために金やCr等の金属をメッキすることが好ましい。
また、反射板6a,6bの幅方向の寸法はシート状成形体Fの幅寸法以上の大きさに設けられており、長手方向は第1給電ロール3a及び第2給電ロール3b、第1押さえロール4a及び第2押さえロール4bに接触しない範囲で可能な限り延在して設けられる。
そして、上側の反射板6bの上方位置には、幅方向中央部に沿って複数の冷却ノズル7が設けられる。これら冷却ノズル7から反射板6bの背面に対してArまたは窒素等の冷媒ガス(焼結室2の雰囲気ガスと同じものを用いる)を噴射することにより、図5に示すように、反射板6b背面の幅方向中央部から端部に向かって冷媒ガスが流れるようになっており、反射板6bを介してシート状成形体Fの幅方向中央部については積極的に冷却する構成とされている。
また、下側の反射板6aの中央部には、幅方向に沿う長穴61aが設けられており、この長穴61aと対向する焼結室2の底面部中央位置には覗窓21が設けられている。この覗窓21の外側に放射温度計22がシート状成形体Fの幅方向に沿って移動可能に支持されており、焼結室2の外部からシート状成形体Fの温度分布を測定することができる。
また、焼結室2内には、図5に示すように、シート状成形体Fの端部の撓みを計測するカメラ23が設けられており、その撓み量に応じて冷却ノズル7の冷媒ガスの流量を調整する構成とされている。
次に、このように構成した金属焼結体の製造装置1によってシート状成形体Fを通電焼結する方法について説明する。
まず、シート状成形体Fを、第1給電ロール3aと第1押さえロール4aとで挟持するとともに、第2給電ロール3bと第2押さえロール4bとで挟持する。そして、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bを駆動させて、シート状成形体Fを搬送する。このとき、給電機構5から第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bを介してシート状成形体Fに通電する。これによりシート状成形体Fがジュール熱によって自己発熱し、1300℃程度まで昇温されて焼結が進行する。
この際、制御部37a,37bによって、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの周速度を調整し、シート状成形体Fに引張応力を作用させた状態で通電し、焼結を進行させていく。例えば、第1給電ロール3aの周速度をV1とし、第2給電ロール3bの周速度をV2とし、シート状成形体Fを焼結した際の幅方向の収縮率をX%とした場合に、V1×(100−X)/100<V2<V1×1.1の関係を有するように、第1給電ロール3aの周速度V1及び第2給電ロール3bの周速度V2を調整する。本実施形態では、シート状成形体Fの幅方向の収縮率が6%とされているので、第1給電ロール3aの周速度V1を100mm/min、第2給電ロール3bの周速度V2を95mm/minに設定している。また、第1給電ロール3aと第2給電ロール3bとの間の電圧を12V、電流を300Aに設定している。
また、この場合、シート状成形体Fの幅方向端部は熱が拡散され易いため、幅方向中央部と比較して温度が低くなる傾向にあるが、シート状成形体Fの端部よりも反射板6a,6bの端部を突出させて設けることで端部からの放熱を抑えている。
シート状成形体Fの幅方向中央部に設けられた冷却ノズル7から噴射された冷媒ガスは、シート状成形の端部と比較して高温である中央部を冷却した後で、反射板6bの背面に沿って拡散させられながら端部まで流れて冷却する。端部では冷媒ガスが中央部付近で温められて流れてくることから、冷媒ガスの冷却効率が下がっており、端部での冷却は中央部に比べて抑えられる。したがって、シート状成形体Fの幅方向の中央部と端部との温度差を小さくすることができ、温度差によって生じるシート状成形体Fの変形を抑制することができる。
また、シート状成形体Fを直接冷却せずに反射板6bを介して冷却するので、シート状成形体Fが急冷されることによって生じる金属焼結体の亀裂等の発生を抑制することができる。
また、製造装置1は、カメラ23によりシート状成形体Fの端部の撓み量を計測しており、この撓み量に応じて冷媒ガスの流量を制御して、シート状成形体Fに変形が生じるのを防止している。
このように、シート状成形体Fに通電焼結を行うことによって、三次元網目構造の骨格部分に位置するチタン粉末同士が強固に結合し、多孔質チタン焼結体が製造される。なお、得られた多孔質チタン発泡体の厚さは1mmとされている。
以上説明したように、本発明の金属焼結体の製造装置1によれば、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bを介してシート状成形体Fに電気が供給され、シート状成形体F自体が自己発熱することによって焼結される構成とされているので、シート状成形体Fを短時間で高温にまで加熱することができる。また、短時間で高温に加熱されることから、高温状態に保持する時間を短くすることができ、チタンのように活性な金属からなるシート状成形体Fであっても、雰囲気ガス等と反応することを抑制することができる。
さらに、シート状成形体Fの収縮率に応じて第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bとの周速度を調整し、シート状成形体Fに引張応力を作用させた状態で焼結を進行させることができ、焼結に伴うシート状成形体Fの変形を矯正して、この変形に起因するトラブルの発生を未然に防止することができる。また、シート状成形体Fに必要以上の引張応力が作用することがなく、シート状成形体Fの破断等の発生を防止することができる。
また、シート状成形体Fは反射板6bを介して冷却することにより、シート状成形体Fの中央部と端部との温度差が生じるのを抑制して、シート状成形体Fに変形が生じることを防止することができる。したがって、シート状成形体Fに安定した電流を流すことができ、均一な金属焼結体を得ることができる。
また、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bの内部に水冷配管33を設けているので、第1給電ロール3a及び第2給電ロール3bが高温状態に維持されることを防止でき、これら給電ロールの劣化を防止することができる。
さらに、第1給電ロール3a、第2給電ロール3b、第1押さえロール4a、第2押さえロール4bは、タングステン合金等の熱膨張率の小さな材質で構成されているので、熱による変形を抑制することができ、焼結を良好に行うことができる。そして、これら第1給電ロール3a、第2給電ロール3b、第1押さえロール4a、第2押さえロール4bは、耐熱性を高めることにより、冷却配管等の冷却機構を省略することが可能である。
図6は本発明の第2実施形態を示している。第1実施形態は、2つの給電ロール(第1給電ロール及び第2給電ロール)を備えた金属焼結体の製造装置で構成されていたが、第2実施形態は、3つの給電ロール(第1給電ロール103a、第2給電ロール103b及び第3給電ロール103c)を備えた金属焼結体の製造装置10で構成されている。
また、上述の第1実施形態においては、反射板6a,6bをシート状成形体Fの両側に一対設ける構成としたが、第2実施形態の反射板62は、各ロール間に設けられた一対の反射板の幅方向端部間を連結する構成としている。
シート状成形体Fの幅方向端部は、熱が拡散され易いため、幅方向中央部と比較して温度が低くなる傾向にあるから、このようにシート状成形体Fを反射板62で囲み、その幅方向端部を覆う状態とすることにより、端部からの放熱を抑制することができる。これにより、シート状成形体Fの中央部と端部との温度差が生じるのを抑制し、シート状成形体Fの変形を防止することができる。
また、第1給電ロール103aの周速度V1、第2給電ロール103bの周速度V2、第3給電ロール103cの周速度V3、シート状成形体Fの幅方向の収縮率Xとした場合に、V1×(100−X)/100<V2<V1×1.1及びV2×(100−X)/100<V3<V2×1.1の関係を有するように、制御部137a,137b,137cによって、各給電ロール103a,103b,103cの周速度V1,V2,V3を設定することができる。
その他の構成は、第1実施形態のものと同じであり、共通部分に同一符号を付して説明を省略する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態においてスラリーを作製するものとして説明したが、このスラリーの配合、粉末の粒径等は、本実施形態に限定されることはなく、他の配合、粒径の原料を用いてスラリーを作製してもよい。
また、製造される金属焼結体の厚さ及び幅は、本実施形態に限定されることはなく、他のサイズの金属焼結体を製造するものであってもよい。
さらに、チタンからなる金属焼結体を対象としたもので説明したが、これに限定されることはなく、ステンレス鋼やNi基合金等の他の金属焼結体を対象としてもよい。
また、給電機構を直流電源として説明したが、これに限定されることはなく、交流電源やパルス電源であってもよい。
また、給電ロール及び押さえロールを、タングステン合金等の熱膨張率の小さい材料で構成したものとして説明したが、他の材質であってもよい。例えば、第1給電ロール及び第2給電ロールを銅等の導電率に優れた材質で構成することで、給電を効率良く行うことができる。なお、銅の場合には、熱膨張係数が比較的大きいことから、熱変形を抑制するために十分に冷却する必要がある。また、押さえロールは、セラミックスロールであってもよい。
また、第1押さえロール及び第2押さえロールは、従動ロールとして説明したが、これに限定されることはなく、これらの押さえロールの周速度を各給電ロールと同期して独立に制御する制御部を備えたものとしてもよい。
さらに、給電ロールを下側に配置し、押さえロールを上側に配置した構成で説明したが、これに限定されることはなく、給電ロールを上側に配置し、押さえロールを下側に配置してもよい。また、第1給電ロール及び第2給電ロールのうちの一方を上側に配置し、他方を下側に配置してもよい。
また、上述の実施形態においては、冷却手段を反射板と冷却ノズルとにより構成したが、反射板の幅方向中央部に沿って冷却配管を設け、この冷却配管内に冷却液を流通させて冷却する構成としてもよい。また、図7に示すように、冷却ノズル70の噴射口70a外縁に反射板6bの背面に対向して平行に誘導板71を設ける構成としてもよい。この場合、反射板6bと誘導板71とで形成される流路に沿って反射板6bの幅方向中央部から端部まで冷媒を確実に流すことができるので、シート状成形体Fを効率的に冷却することができる。
また、第1実施形態においては、反射板6a,6bをシート状成形体Fの両側に一対で設ける構成としたが、一方側だけに反射板を設ける構成としてもよい。また、冷却ノズル7をシート状成形体Fの一方側だけに設ける構成としたが、両側に設ける構成としてもよい。
1,10 金属焼結体の製造装置
2 焼結室
2a 搬入口
2b 搬出口
3a,103a 第1給電ロール
3b,103b 第2給電ロール
4a 第1押さえロール
4b 第2押さえロール
5 給電機構
6a,6b,62 反射板
7,70 冷却ノズル
8 圧力調整機構
21 覗窓
22 放射温度計
23 カメラ
31 絶縁板
32 給電コネクタ
33,43 水冷配管
34,44 冷却水供給部
34a 供給管
34b 排出管
35 駆動モータ
36 絶縁部材
37a,37b,137a,137b,137c 制御部
40 支持アーム
41 絶縁碍子
42 ロードセル
51 電極
60a 長穴
70a 噴射口
71 誘導板
90 シート成形機
91 搬送ローラ
92 キャリアシート
93 スラリー貯留部
94 ドクターブレード
95 発泡槽
96 乾燥室
103c 第3給電ロール

Claims (9)

  1. 金属粉末からなるシート状成形体に対して通電して自己発熱によって焼結させる金属焼結体の製造装置であって、前記シート状成形体を走行させるとともに前記シート状成形体の走行方向に間隔をおいて配置された少なくとも一対の給電ロールと、この一対の給電ロールを介して前記シート状成形体に電流を供給する給電機構と、前記一対の給電ロールに対向して配置され前記シート状成形体を前記給電ロールとの間に挟持する一対の押さえロールと、前記一対の給電ロール又は前記一対の押さえロールの間に前記シート状成形体の面に対向して配置される反射板と、前記反射板の幅方向中央部を冷却する冷却手段とを備えることを特徴とする金属焼結体の製造装置。
  2. 前記冷却手段は、前記反射板の幅方向中央部の背面に向けて冷媒を噴射する冷却ノズルを有することを特徴とする請求項1記載の金属焼結体の製造装置。
  3. 前記冷却ノズルの噴射口外縁に、前記反射板の背面に対向して配置される誘導板が設けられていることを特徴とする請求項2記載の金属焼結体の製造装置。
  4. 前記反射板は、前記シート状成形体の両面に対向するように、一対設けられることを特徴とする請求1から3のいずれか一項に記載の金属焼結体の製造装置。
  5. 両前記反射板の幅方向端部間が連結されていることを特徴とする請求項4記載の金属焼結体の製造装置。
  6. 前記一対の給電ロールの周速度を、それぞれ独立して制御する制御機構を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の金属焼結体の製造装置。
  7. 前記給電ロールおよび前記押さえロールの内部に冷却管が形成され、前記冷却管内に冷媒を流通させて冷却する冷却機構が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の金属焼結体の製造装置。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の金属焼結体の製造装置を用いてシート状成形体を焼結させる金属焼結体の製造方法。
  9. 金属粉末からなるシート状成形体を走行させながら通電して自己発熱によって焼結させる金属焼結体の製造方法であって、通電による前記シート状成形体の発熱部の面に対向する反射板を、前記シート状成形体の走行方向に沿って設けておき、前記反射板の幅方向中央部を冷却する金属焼結体の製造方法。
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