JP2011200586A - 外科用処置具 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイポーラ電気メスとして機能する外科用処置具であって、把持対象となる生体組織の形状や大きさに適切に対応することが可能な外科用処置具を提供する。
【解決手段】外科用処置具のグリッパ19を構成する一方のグリッパ部材19aは、アーム部77と、アーム部77に対して揺動自在に設けられた第1電極部80aとを有し、他方のグリッパ部材19bは、第1電極部80aに対向する第2電極部80bとして構成され、グリッパ19の先端部で生体組織を把持した際に第1電極部80aの基端部側の部位と第2電極部80bとを絶縁する絶縁部82が、第1電極部80aと第2電極部80bの少なくとも一方に設けられる。
【選択図】図3

Description

本発明は、生体組織に電流を流して外科的処置を施す外科用処置具に関する。
内視鏡下外科手術(または腹腔鏡下手術とも呼ばれる。)においては、患者の腹部等に複数の孔を開け、これらの孔にトラカール(筒状の器具)を挿入した後、各トラカールを通して、腹腔鏡(カメラ)と複数の鉗子を体腔内に挿入する。鉗子の先端部には、エンドエフェクタとして、生体組織等を把持するためのグリッパや、鋏、電気メスのブレード等が取り付けられている。腹腔鏡と鉗子を体腔内に挿入したら、腹腔鏡に接続されたモニタに映る腹腔内の様子を見ながら鉗子を操作して手術を行う。このような手術方法は、開腹を必要としないため、患者への負担が少なく、術後の回復や退院までの日数が大幅に低減される。このため、このような手術方法は、適用分野の拡大が期待されている。内視鏡下外科手術用の鉗子の従来技術を示す文献としては、例えば下記特許文献1がある。
このような内視鏡下外科手術用の鉗子のうち、先端部に一対の電極を設けたものはバイポーラ電気メスと呼ばれる。バイポーラ電気メスは、先端部に設けた一対の電極部材により生体組織を把持し、その生体組織に高周波電流を通電して切開作用または凝固作用を生じさせるものである(例えば、下記特許文献2を参照)。
特開2009−11698号公報 特開2008−246222号公報
ところで、バイポーラ電気メスでは、生体組織に対して適切に通電を行うために、グリッパにより生体組織をしっかりと把持できることが望ましい。しかしながら、把持対象となる生体組織の形状や大きさは様々であり、従来のバイポーラ電気メスのグリッパでは、そのような生体組織の形状や大きさの違いに十分に対応できているとは言いがたい。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、バイポーラ電気メスとして機能する外科用処置具であって、把持対象となる生体組織の形状や大きさに適切に対応することが可能な外科用処置具を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、把持した生体組織に電流を流して外科的処置を施す外科用処置具であって、少なくとも一方が可動部として構成された一対のグリッパ部材からなり、生体組織を把持するように開閉可能なグリッパを備え、前記一対のグリッパ部材の一方は、アーム部と、前記アーム部に対して揺動自在に設けられた第1電極部とを有し、前記一対のグリッパ部材の他方は、前記第1電極部に対向する第2電極部として構成され、前記グリッパの先端部で前記生体組織を把持した際に前記第1電極部の基端部側の部位と前記第2電極部とを絶縁する絶縁部が、前記第1電極部と前記第2電極部の少なくとも一方に設けられる、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、一対のグリッパ部材(第1電極部及び第2電極部)により生体組織を把持した際に、揺動自在に設けられた第1電極部が、把持する生体組織の形状または大きさに応じて姿勢を変化させる。すなわち、把持する生体組織の形状等になじむように第1電極部の姿勢が変化する。これにより、生体組織をしっかりと把持した状態で生体組織に通電することができることから、安定した焼灼作用(切開作用または凝固作用)を生じさせることができる。また、グリッパの先端部で生体組織を把持した場合でも、絶縁部により第1電極部と第2電極部が直接接触することによる短絡が阻止されるため、生体組織への通電を適切に行うことが可能となる。
前記絶縁部は、前記第1電極部の把持面の一部を構成するとよい。
上記の構成によれば、第2電極部に対して揺動する第1電極部の把持面に絶縁部が設けられるので、グリッパの全体で生体組織を把持する場合には、絶縁部も把持面の一部として機能する。すなわち、グリッパの先端部で生体組織を把持した際には、絶縁部は第1電極部と第2電極部が直接接触するのを阻止する一方、グリッパの全体で生体組織を把持した際には、絶縁部は把持面の一部として生体組織に接触する。このようにグリッパは、絶縁機能と把持機能とを兼ね備えたものであるため、グリッパをコンパクトに構成することが可能となる。
本発明に係る外科用処置具によれば、把持対象となる生体組織の形状や大きさに適切に対応することが可能であり、これにより、生体組織をしっかりと把持した状態で生体組織に通電することができることから、安定した焼灼作用(切開作用または凝固作用)を生じさせることができる等の効果が得られる。
本発明の第1実施形態に係る外科用処置具である医療用マニピュレータの斜視図である。 操作部と作業部とが分離した状態の医療用マニピュレータを示す一部省略側面図である。 一構成例に係るグリッパ及びその周辺部の斜視図である。 一構成例に係るグリッパの一部断面側面図である。 図5Aは、比較的薄い生体組織を把持した状態の一構成例に係るグリッパの側面図であり、図5Bは、比較的厚い生体組織を把持した状態の一構成例に係るグリッパの側面図である。 先端部で生体組織を把持した状態の一構成例に係るグリッパの側面図である。 第1変形例に係るグリッパ及びその周辺部の斜視図である。 図8Aは、閉じた状態の第1変形例に係るグリッパの側面図であり、図8Bは、開いた状態の第1変形例に係るグリッパの側面図である。 第2変形例に係るグリッパ及びその周辺部の側面図である。 図10Aは、開いた状態の第3変形例に係るグリッパ及びその周辺部の側面図であり、図10Bは、先端部で生体組織を把持した状態の第3変形例に係るグリッパ及びその周辺部の側面図である。 本発明の第2実施形態に係る外科用処置具である手動式のバイポーラ電気メスの側面図である。
以下、本発明に係る外科用処置具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る外科用処置具の斜視図である。本実施の形態において、外科用処置具は、使用者(医師等の医療従事者)が把持して操作することで先端に設けられたエンドエフェクタを動作させる医療用マニピュレータ10(以下、マニピュレータという)として構成されている。
マニピュレータ10は、先端に設けられた先端動作部12で生体の一部を把持し又は生体に触れて、所定の処置を行うための医療用の器具であり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。マニピュレータ10は、医療用器具を構成するマニピュレータ本体11と、マニピュレータ本体11にケーブル28を介して接続されたコントローラ29とを備える。マニピュレータ本体11は、ボディ21と、ボディ21から延出するシャフト18と、シャフト18の先端に設けられ、グリッパ19を含む先端動作部12とを有する。
以下の説明では、シャフト18の延在方向をZ方向と規定し、さらに、シャフト18の前方(先端側)をZ1方向、後方(根元側)をZ2方向と規定する。また、Z方向に直角な方向であって、マニピュレータ本体11を図1の姿勢にしたときのマニピュレータ本体11を基準とした左右方向をX方向とし、特に、マニピュレータ本体11の左側方向をX1方向、右側方向をX2方向と規定する。また、Z方向に直角な方向であって、マニピュレータ本体11を図1の姿勢にしたときのマニピュレータ本体11の上下方向をY方向とし、特に、上方向をY1方向、下方向をY2方向と規定する。
なお、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ本体11が基準姿勢(中立姿勢)である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ本体11は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることは勿論である。
マニピュレータ本体11は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有する。操作部14は、上述したボディ21の一部を構成し、筐体を構成しZ1方向及びY2方向に略L字状に延在する左右一対の上部カバー25a、25bと、上部カバー25a、25b内に収容された駆動部30と、人手によって操作される複合入力部24とを有する。
駆動部30は、先端動作部12の姿勢を変更させるための駆動源50として2つのモータ50a、50bを有し、駆動源50の駆動力がシャフト18の先端に設けられた先端動作部12に機械的に伝達されることで、グリッパ19の姿勢を変更できるように構成されている。
操作部14の基端側でY2方向に延びた部分は、人手によって把持されるグリップハンドル26として構成されている。複合入力部24は、グリップハンドル26の上部の傾斜面に設けられており、回転操作部90に対する左右方向への回動操作及び傾動操作部92に対する傾動操作を単独又は複合的に行うことで、その操作に応じた信号がコントローラ29に送信され、コントローラ29が駆動部30の駆動を制御することにより、先端動作部12の姿勢変更が行われる。
作業部16は、Z方向で略対称に分割された一対の下部カバー37a、37bを筐体としており、上記の先端動作部12と、この先端動作部12を先端に設けた長尺且つ中空のシャフト18と、このシャフト18の基端側が固定され、下部カバー37a、37b内に収容されたプーリボックス32と、プーリボックス32の後方に設けられ、トリガ軸39を支点としてX方向の軸心を中心に回動可能に軸支されたトリガレバー36とを有する。下部カバー37a、37b、プーリボックス32及びトリガレバー36は、上述したボディ21の一部を構成する。
図2は、操作部14と作業部16とが分離した状態のマニピュレータ本体11を示す一部省略側面図である。図2に示すように、駆動部30は、上述したモータ50a、50bと、モータ50a、50bの各出力軸56a、56bに対して固定された駆動傘歯車58a、58bと、駆動傘歯車58a、58bと噛み合う2つの従動傘歯車62a、62bと、従動傘歯車62a、62bが固定された駆動軸60a、60bとを有する。駆動軸60a、60bの下端部には、例えば断面波形状の係合凸部64a、64bが設けられている。この構成により、モータ50a(50b)の回転駆動力が、駆動傘歯車58a(58b)、従動傘歯車62a(62b)、駆動軸60a(60b)及び係合凸部64a(64b)へと伝達される。
プーリボックス32には、プーリ70a、70bが設けられている。このプーリ70a、70bは、作業部16が操作部14に装着された状態で、駆動軸60a、60bに対して同軸である。プーリ70a、70bの上端には、プーリボックス32の上面から露出した、例えば断面波形状の係合凹部74a、74bが設けられている。従って、操作部14と作業部16との装着時、係合凸部64a、64bと係合凹部74a、74bとが係合し、これにより、駆動軸60a、60bからの回転駆動力をプーリ70a、70bへと伝達することができる。なお、係合凸部64aや係合凹部74aの係合構造は他の構造であってもよい。
プーリ70a、70bには、それぞれ、動力伝達部材として、図示しないワイヤが巻き掛けられている。これらのワイヤは、シャフト18内に挿通されており、先端動作部12(図1参照)に設けられた姿勢変更機構13に駆動力を伝達する。これにより、駆動軸60a、60bからの回転駆動力が、プーリ70a、70b、前記ワイヤを介して姿勢変更機構13に伝達され、グリッパ19の姿勢変更が行われる。
なお、トリガレバー36の操作をグリッパ19の開閉動作に変換する機構、及び、駆動源50の駆動をグリッパ19の姿勢変更の動作に変換する機構としては、例えば、特開2008−104855号公報や特開2009−106606号公報に記載された構成と同様の構成を採用してよい。
図1に示すように、作業部16は、操作部14に設けられた左右一対の着脱レバー40、40によって当該操作部14と連結・固定されると共に、着脱レバー40の開放操作によって操作部14から分離可能であり、特別な器具を用いることなく、手術現場で容易に交換作業等を行うことができる。
先端動作部12は、トリガレバー36の操作に基づいて開閉動作するグリッパ19と、複合入力部24の操作に基づいてグリッパ19の姿勢を変化させる姿勢変更機構13とを有する。図示したグリッパ19は、所定の開閉動作軸を基準に開閉動作可能であり、生体組織を把持するグリッパ19として構成されている。グリッパ19は、一対のグリッパ部材19a、19bを有する。
マニピュレータ本体11には、シャフト18に沿って、一方のグリッパ部材19aに電気的に接続された第1通電経路E1と、他方のグリッパ部材19bに電気的に接続された第2通電経路E2とが配設されている。マニピュレータ本体11は、ケーブルC1、C2を介して高周波電源23に電気的に接続されている。図示例では、第1通電経路E1は、シャフト18の基端部近傍でケーブルC1と接続可能であり、第2通電経路E2は、ボディ21に設けられた電極プラグ71を介してケーブルC2と電気的に接続可能である。
ケーブルC1と第1通電経路E1を電気的に接続し、ケーブルC2と第2通電経路E2を電気的に接続し、高周波電源23により高周波電流を発生させると、第1通電経路E1及び第2通電経路E2を介してグリッパ19に通電することができ、これにより、グリッパ19で把持した生体組織を焼灼して切開または凝固することができる。すなわち、マニピュレータ10は、生体組織に通電可能なグリッパ19を備えた作業部16を操作部14に装着しているため、バイポーラ電気メスとして機能する。
先端動作部12及びシャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に装着された円筒形状のトラカール20を通して体腔22内に挿入可能であり、複合入力部24及びトリガレバー36の操作によって体腔22内で針を把持し、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。なお、エンドエフェクタとして鋏あるいは患部把持用のグリッパを備えた作業部16を操作部14に装着した場合には、マニピュレータ10は、患部切除、把持等の作業を行う鋏や把持鉗子等として機能する。
トリガレバー36は、下部カバー37a、37b内のZ2方向側の端部に設けられたトリガ軸39に軸支されたアーム部36aと、このアーム部36aのY2側に設けられたトリガ操作子36bとを有する。トリガ軸39は、プーリボックス32のZ2側に設けられた支持プレート45(図2参照)に固定されている。トリガ操作子36bは、指輪部36cと、この指輪部36cのY2側に設けられた略円弧状の指掛け突起36dとを有する。
グリッパ19の開閉動作は、人手によるトリガレバー36の操作(押し引き操作)に基づく力が機械的に伝達されることで行われる。具体的には、作業部16の内部には、ロッド、ワイヤ(動力伝達部材)、プーリ等から構成される伝達機構が設けられており、トリガレバー36の押し引き操作が、伝達機構によりグリッパ19の開閉動作に変換されるようになっている。
姿勢変更機構13は、先端を指向するロール軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール動作と、Y方向のヨー軸を基準に傾動するヨー動作(傾動動作)とが可能であり、ロール動作と傾動動作とを選択的にまたは複合的に行うことが可能である。従って、先端動作部12は、グリッパ19の開閉動作、ロール動作及びヨー動作からなる3軸の動作が可能である。本実施形態の場合、グリッパ19の姿勢変更の動作(ロール動作及びヨー動作)は、回転操作部90及び傾動操作部92を有する複合入力部24の操作に基づいて駆動源50が駆動し、この駆動源50の駆動力が先端動作部12に機械的に伝達されることで行われる。図示例のマニピュレータ本体11では、回転操作部90に対して左右方向の回転操作を行うことで、先端動作部12のロール動作が行われ、傾動操作部92に対して傾動操作を行うことで、先端動作部12のヨー動作が行われる。
コントローラ29は、マニピュレータ本体11を総合的に制御する制御部であって、グリップハンドル26の下端部から延在するケーブル28と接続される。コントローラ29の機能の一部又は全部は、例えば操作部14に一体的に搭載することもできる。
図3は、一構成例に係るグリッパ19及びその周辺部の斜視図である。図3に示すように、グリッパ19は、絶縁材料で構成されたグリッパ支持部76により支持されている。グリッパ19を構成する一対のグリッパ部材19a、19bのうち、一方のグリッパ部材19aは、グリッパ軸46を中心として回動可能な可動部として構成されており、他方のグリッパ部材19bは、グリッパ支持部76に対して動作しない固定部として構成されている。グリッパ部材19aがグリッパ軸46を中心として所定角度範囲で回動することで、グリッパ19が開閉動作するようになっている。
なお、グリッパ部材19bも可動部として構成し、両方のグリッパ部材19a、19bが回動することでグリッパ19が開閉動作するように構成してもよい。また、固定部として構成したグリッパ部材19bと平行を保持したままグリッパ部材19bに近接離間するような可動部としてグリッパ部材19aを構成してもよい。あるいは、両方のグリッパ部材19a、19bを、互いに平行を保持したまま近接離間するような可動部として構成してもよい。
一対のグリッパ部材19a、19bには、互いに対向し、生体組織を把持する把持面47が設けられている。各把持面47には、滑り止め加工として、ローレット加工が施されている。なお、ローレット加工の他にも、放電加工等により多数の滑り止め用の凹凸形状を把持面47に形成してもよい。
可動部として構成されたグリッパ部材19aは、グリッパ支持部76に固定されたグリッパ軸46(軸心Og)を中心として回動可能なアーム部77と、アーム部77に対して揺動(傾動)自在に設けられた第1電極部80aを有する。アーム部77は、第1電極部80aの両側に位置する側壁部78と、両側壁部78を連結する連結部79とから構成された断面が略U字状の部材であり、側壁部78の先端部間にピン84が架設して固定されている。第1電極部80aは、導電性材料からなり、アーム部77に固定されたピン84により、軸心Ogと平行な軸心a1を中心として揺動自在となっている。
各側壁部78のグリッパ部材19b側には、側面視で第1電極部80aの把持面47の基端側部位が露出するように凹部78aが設けられている。すなわち、第1電極部の把持面47の基端側部位は、側壁部78の凹部78aよりもグリッパ部材19b側に位置している。なお、側壁部78を屈曲または湾曲させることにより、第1電極部80aの把持面47の基端側部分が露出するように構成してもよい。
図4は、グリッパ19の一部断面側面図である。アーム部77は、第1電極部80aを覆うように設けられているので、第1電極部80aが図4で時計回りにある程度まで回転すると、第1電極部80aのピン84よりも先端側の部位が連結部79の内面に当接することで、それ以上の回転が阻止され、第1電極部80aが図4で反時計回りにある程度まで回転すると、第1電極部80aのピン84よりも基端側の部位が連結部79の内面に当接することで、それ以上の回転が阻止される。このように、第1電極部80aの可動範囲は、所定角度範囲に規制されているため、生体組織を把持する際に第1電極部80aを把持に適した姿勢に維持できる。また、生体組織を上下方向から平行に把持できるため、生体組織を把持・剥離する際に損傷を与える可能性を極力小さくすることができる。
一方の把持面47は第1電極部80aに設けられている。第1電極部80aの把持面47の基端部(グリッパ軸46側の端部)には、絶縁部82が設けられている。この絶縁部82は、例えば、樹脂やセラミックスなどの絶縁材料で構成することができる。絶縁部82の構成としては、把持面47の基端部の表面に絶縁材料からなるカバーを被覆する構成や、把持面47の基端部自体を絶縁材料からなる部材とした構成を採用し得る。
図3に示すように、アーム部77を軸支するグリッパ軸46は、上述した第1通電経路E1に接続され、また、グリッパ軸46、アーム部77、ピン84及び第1電極部80aは、すべて導電性材料で構成されている。固定部として構成されたグリッパ部材19bは、導電性材料からなる第2電極部80bとして構成された部品であり、グリッパ支持部76に支持及び固定されている。以下、グリッパ部材19bを第2電極部80bともいう。第2電極部80bの根元部83はグリッパ支持部76に嵌合し、この根元部83が上述した第2通電経路E2に接続されている。従って、上述した高周波電源23(図1参照)から第1通電経路E1及び第2通電経路E2を介して第1電極部80a及び第2電極部80bまで高周波電流を導き、第1電極部80aと第2電極部80bの間に把持した生体組織に高周波電流を通電することで、生体組織を焼灼することができる。
第1実施形態に係る外科用処置具であるマニピュレータ10は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用及び効果について説明する。
上記のように構成されたグリッパ19を備えたマニピュレータ10により、生体組織85を焼灼するには、まず、図5A及び図5Bに示すように、第1電極部80aと第2電極部80bの間に生体組織85を把持する。ここで、図5Aは、比較的薄い生体組織85Aをグリッパ19により把持した場合を示しており、図5Bは、比較的厚い生体組織85Bをグリッパ19により把持した場合を示している。
このように、グリッパ19により生体組織85を把持する際、揺動自在に設けられた第1電極部80aは、把持する生体組織85の形状及び大きさに応じて姿勢を変化させる。すなわち、把持する生体組織85の形状等になじむように第1電極部80aの姿勢が変化する。これにより、生体組織85をしっかりと把持することができる。なお、アーム部77の側壁部78には、凹部78aが設けられているので、比較的厚い生体組織85Bを把持する場合でも、アーム部77が生体組織85Bに接触することがない。
生体組織85を把持したら、第1電極部80aと第2電極部80bにより生体組織85に高周波電流を通電する。すると、第1電極部80aと第2電極部80bに把持された生体組織85はジュール熱を発生させ、これにより生体組織85が焼灼される。このとき、生体組織85をしっかりと把持した状態で生体組織85に通電することができることから、安定的に焼灼することができる。
図6は、グリッパ19の先端部(ピン84よりも先端側の部位)で生体組織85を把持した場合を示している。第1電極部80aはアーム部77に対して揺動自在であるため、図6に示すように、グリッパ19の先端部で生体組織85を把持した場合、第1電極部80aの把持面47の基端部は、第2電極部80bに接触する。ここで、仮に、第1電極部80aの把持面47の基端部に絶縁部82が設けられていない場合には、第1電極部80aと第2電極部80bとが接触することで短絡が生じる。これに対し、第1電極部80aの把持面47の基端部に絶縁部82を設けたグリッパ19によれば、先端部で生体組織85を把持した場合でも、絶縁部82により第1電極部80aと第2電極部80bが直接接触することによる短絡が阻止されるため、生体組織85への通電を適切に行うことが可能となる。
またグリッパ19では、図5Aに示すように、グリッパ19の全体で生体組織85を把持する場合には、絶縁部82も把持面47の一部として機能する。すなわち、グリッパの先端部で生体組織85を把持した際には、絶縁部82は第1電極部80aと第2電極部80bが直接接触するのを阻止する一方、グリッパ19の全体で生体組織85を把持した際には、絶縁部82は把持面47の一部として生体組織85に接触する。このようにグリッパ19は、絶縁機能と把持機能とを兼ね備えたものであるため、グリッパ19をコンパクトに構成することが可能となる。
外科用処置具の一実施形態であるマニピュレータ10において、上記のグリッパ19に代えて、図7に示す第1変形例に係るグリッパ100を採用してもよい。第1変形例に係るグリッパ100は、上述した基本形に係るグリッパ19におけるアーム部77を、これとは別構成のアーム部102に置き換えるとともに、係留部材104を追加したものであり、その他の部分はグリッパ19と同様に構成されている。図7に示す構成例において、係留部材104はグリッパ19の両側に1つずつ設けられているが、グリッパ19の片側のみに1つだけ設けられてもよい。
アーム部102は、第1電極部80aの両側に位置する一対の側壁板106を有するが、アーム部77の連結部79に相当する要素は設けられていない。すなわち、アーム部102は、アーム部77において連結部79を省略した形態に相当する。係留部材104は、可撓性を有する索状体であり、例えば、ワイヤである。係留部材104は、一端が第1電極部80aの基端部に連結され、他端が第2電極部80bの基端部に連結されている。これにより、係留部材104は、第1電極部80aの揺動範囲を規制している。
図8Aに示すように、グリッパ100が閉じた状態あるいはグリッパ100の開度が小さいときは、係留部材104は緩む(撓む)ため、第1電極部80aの位置や姿勢が係留部材104により規制されることはない。一方、グリッパ100の開度を所定以上にして係留部材104が緊張した状態になると、第1電極部80aの基端部の位置は係留部材104により固定されるため、第1電極部80aの先端部が第2電極部80b側に近づく方向への第1電極部80aの回転が阻止される。これにより、図8Bに示すように、グリッパ100を生体組織85の穴部85aに挿入してグリッパ100を開くことで、穴部85aを容易に拡げることが可能である。
外科用処置具の一実施形態であるマニピュレータ10において、上記の基本形に係るグリッパ19に代えて、図9に示す第2変形例に係るグリッパ110を採用してもよい。第2変形例に係るグリッパ110は、基本形に係るグリッパ19に対して、第1電極部80aの姿勢を安定化させる弾性部材112を追加したものであり、その他の部分はグリッパ19と同様に構成されている。
弾性部材112は、第1電極部80aがアーム部77に対して基本姿勢を保持するように第1電極部80aを弾性的に付勢するものであり、図示例では、板バネとして構成されている。弾性部材112は、一端部が第1電極部80aのピン84よりも先端部側を押圧し、他端部が第1電極部80aのピン84よりも基端部側を押圧するように、アーム部77(具体的には、連結部79)と第1電極部80aとの間に配設されている。
このように、第1電極部80aの姿勢を安定化させる弾性部材112を設けることにより、生体組織85を把持しない状態でアーム部77に対して第1電極の姿勢が大きく傾くことがない。このため、グリッパ110により生体組織85を把持しやすい。
外科用処置具の一実施形態であるマニピュレータ10において、上記の基本形に係るグリッパ19に代えて、図10A及び図10Bに示す第3変形例に係るグリッパ114を採用してもよい。第3変形例に係るグリッパ114は、基本形に係るグリッパ19に対して、弾性部材116を追加したものであり、その他の部分はグリッパ19と同様に構成されている。
図10Aに示すように、弾性部材116は、アーム部77が開いた状態で、第2電極部80bの延在方向と第1電極部80aの延在方向とのなす角度が、第2電極部80bの延在方向とアーム部77の延在方向とのなす角度よりも大きくなるように、第1電極部80aを弾性的に支持するものであり、図示例では、コイルバネとして構成されている。弾性部材116は、一端が第1電極部80aのピン84よりも基端部側の部位に固定され、他端部がアーム部77に固定されている。
このように弾性部材116を配置しておくことにより、図10Aに示すように、グリッパ軸46を中心にアーム部77を開いた状態で、第1電極部80aの先端が第2電極部80bに対して安定して開いた状態を実現できる。これにより、図10Bに示すように、把持対象である生体組織85へのアプローチがしやすくなる。ただし、あまりに第1電極部80aを開きすぎて絶縁部82が第2電極部80bに早い段階で接触してしまわないことが重要である。従って、第1電極部80aの先端が開く角度に限界を持たせておくことが好ましい。
上述したグリッパ19、100、110、114において、絶縁部82は、第1電極部80a側に設けたが、絶縁部82を第1電極部80aに設ける代わりに第2電極部側に設けることで、グリッパ19、100、110、114の先端部で生体組織85を把持する際の、第1電極部80aと第2電極部80bの短絡を防止するようにしてもよい。あるいは、第1電極部80aと第2電極部80bの両方に、絶縁部82を設けてもよい。
上述した第1実施形態では、駆動源50を備えたマニピュレータ10(図1参照)に本発明を適用した構成例について説明したが、本発明は、手動式のバイポーラ電気メスにも適用可能である。図11は、本発明の第2実施形態に係る外科用処置具である手動式のバイポーラ電気メス120の側面図である。上述したマニピュレータ10は、動作の一部がモータ50a、50bの駆動力によって行われるものであったが、このバイポーラ電気メス120は、モータを搭載しておらず、人手による操作のみで動作するものである。バイポーラ電気メス120は、中空のシャフト122と、シャフト122の基端部に設けられた操作部124と、シャフト122の先端部に設けられた開閉動作可能なグリッパ19とを有する。
操作部124には、シャフト122の延在方向であるZ方向に移動可能なトリガレバー126と、指掛け部128、130とが設けられており、トリガレバー126の移動に応じてシャフト122内に挿通された図示しないワイヤがZ方向に移動することで、グリッパ19が開閉動作するようになっている。図示例のバイポーラ電気メス120において、シャフト122の基端側へ向かう方向であるZ2方向にトリガレバー126を手指により引き込む操作を行うと、グリッパ19が閉じ、手指をトリガレバー126から離すと、図示しないバネの弾性力によりトリガレバー126がZ1方向に前進するとともにグリッパ19が開くようになっている。グリッパ19は、図3に示した基本形に係るグリッパ19と同一構成である。
なお、グリッパ19の開閉動作の構成は、上記の構成に限られず、指掛け部128、130を把持し、鋏のような操作をすることで先端のグリッパ19が開閉動作するような構成でもよい。この場合、トリガレバー126を手指により引き込む操作により通電が行われる構成にすることによって、選択的に生体組織を焼灼することができる。
バイポーラ電気メス120において、グリッパ19に代えて、第1変形例に係るグリッパ100(図7参照)、第2変形例に係るグリッパ110(図9参照)または第3変形例に係るグリッパ114(図10A及び図10B参照)を採用してもよい。また、図示例のバイポーラ電気メス120では、グリッパ19のロール動作やヨー動作などの姿勢変更動作が可能なように構成されていないが、手指による操作により機械的にグリッパの姿勢変更動作を行う機構を備えてもよい。
上述した第2実施形態に係る外科用処置具であるバイポーラ電気メス120によっても、第1実施形態に係る外科用処置具であるマニピュレータ10と同様に、把持する生体組織の形状等になじむように第1電極部80aの姿勢が変化し、これにより、生体組織をしっかりと把持することができる。また、先端部で生体組織を把持した場合でも、絶縁部82(図3参照)により第1電極部80aと第2電極部80bが直接接触することによる短絡が阻止されるため、生体組織への通電を適切に行うことが可能となる等の効果が得られる。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する各構成部分については、第1の実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
上述した実施形態では、グリッパ部材19aのみが可動部として構成されているが、これに限られず、グリッパ部材19aとグリッパ部材19bの両方を可動部として構成してもよい。この場合、生体組織の形状等になじむ効果が顕著に発揮され、生体組織への損傷リスクを軽減することができる。
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
10…医療用マニピュレータ 18、122…シャフト
14、124…操作部 19、100、110、114…グリッパ
19a、19b…グリッパ部材 77…アーム部
80a…第1電極部 80b…第2電極部
82…絶縁部 120…バイポーラ電気メス

Claims (2)

  1. 把持した生体組織に電流を流して外科的処置を施す外科用処置具であって、
    少なくとも一方が可動部として構成された一対のグリッパ部材からなり、生体組織を把持するように開閉可能なグリッパを備え、
    前記一対のグリッパ部材の一方は、アーム部と、前記アーム部に対して揺動自在に設けられた第1電極部とを有し、
    前記一対のグリッパ部材の他方は、前記第1電極部に対向する第2電極部として構成され、
    前記グリッパの先端部で前記生体組織を把持した際に前記第1電極部の基端部側の部位と前記第2電極部とを絶縁する絶縁部が、前記第1電極部と前記第2電極部の少なくとも一方に設けられる、
    ことを特徴とする外科用処置具。
  2. 請求項1記載の外科用処置具において、
    前記絶縁部は、前記第1電極部の把持面の一部を構成する、
    ことを特徴とする外科用処置具。
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