JP2011190429A - ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色剤 - Google Patents

ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色剤 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット記録に適する高い鮮明性をもつ色相を有し、且つ記録物の各種堅牢性が高く、又インク組成物を調製した時のインク組成物の保存安定性に優れた水溶性のシアン色素、及びこれを含有するインク組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるポルフィラジン色素又はその塩、及びこれを含有するインク組成物。
Figure 2011190429

[式中、環A乃至Dは、それぞれ独立にベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表す。]。
【選択図】なし

Description

本発明はポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物、このインク組成物等を用いたインクジェット記録方法及び着色体に関する。
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流である。具体的には、インクジェット方式、電子写真方式等の方式に用いる記録材料;感熱転写型画像記録材料;転写式ハロゲン化銀感光材料;印刷インク;記録ペン;等が盛んに利用されている。また、ディスプレイではLCD(液晶ディスプレイ)やPDP(プラズマディスプレイパネル)において、また撮影機器ではCCD(撮動素子)等の電子部品において、カラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる光波長の吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐え得る色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、及びカラー記録が容易であること等から急速に普及し、さらに発展しつつある。インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有る。また、その吐出方式としては、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式;熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式;超音波を用いた方式;あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式;等が挙げられる。このようなインクジェット記録に適したインクの例としては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インク等が挙げられる。
インクジェット記録用のインクに使用される色素に対して要求される性能としては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと;高濃度記録が可能であること;色相が良好であること;光、熱、及び環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他、SOx等)等に対して強い耐性を有すること;水や薬品に対する耐久性に優れていること;被記録材に対して定着性が良く、滲みにくいこと;該色素を含有するインクの保存(安定)性に優れていること;毒性がないこと;さらには、安価に入手できること;等が挙げられる。特に、シアン色素としては、良好なシアンの色相、及び高い印字濃度を有し、ブロンズ現象を生じないことや、例えば耐光性(光に対する耐久性)、耐オゾン性(オゾンガスに対する耐久性)、耐水性(水に対する耐久性)及び耐湿性(高湿度下における耐久性、同時に高温下である耐湿熱性も含む)等の各種の耐性に優れることが強く望まれている。
ブロンズ現象とは、色素の会合やインクの吸収不良等を原因とし、被記録材の表面上で色素が金属片状になり、ぎらつく現象のことを言う。この現象が起こると光沢性、印字品位、印字濃度の全ての点で劣るものとなる。特に色素として金属フタロシアニン系色素を使用した場合、高濃度で印字を行った部分に「赤浮き現象」として現れることが多く、画像全体としての色バランスが不均一となり、その品質を低下させる。また、近年では写真調に近い風合いを持つ記録媒体として光沢紙が多く使用されているが、ブロンズ現象が発生すると記録物表面での光沢感にバラツキが生じ、画像の風合いを著しく損ねてしまう。このような観点から、ブロンズ現象を生じない色素が強く望まれている。
インクジェット記録用のシアンインクに用いられる水溶性シアン色素としては、フタロシアニン系やトリフェニルメタン系が代表的である。このうち、代表的なフタロシアニン系色素としては、以下のA〜Hで分類されるフタロシアニン誘導体が知られている。
A:Direct Blue 86、Direct Blue 87、Direct Blue 199、Acid Blue 249又はReactive Blue 71等のC.I.(カラーインデックス)番号を有する公知のフタロシアニン系色素。
B:特許文献1〜3等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3Na)m(SO2NH2)n ; m+n=1〜4の混合物]。
C:特許文献4等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(CO2H)m(CONR12)n ; m+n=0〜4の数]。
D:特許文献5等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3H)m(SO2NR12)n ; m+n=0〜4の数、且つ、m≠0]
E:特許文献6等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3H)l(SO2NH2)m(SO2NR12)n ; l+m+n=0〜4の数]。
F:特許文献7等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO2NR12)n ; n=1〜5の数]。
G:特許文献8、9、及び12等に記載のフタロシアニン系色素、
[置換基の置換位置を制御したフタロシアニン化合物、β−位に置換基が導入されたフタロシアニン系色素]。
H:特許文献10、13、14〜16等に記載のピリジン環とベンゼン環を有するベンゾピリドポルフィラジン系色素。
現在、インクジェット記録用として広く用いられているC.I.Direct Blue 86又はC.I.Direct Blue 199に代表されるフタロシアニン系色素は、一般的にマゼンタ色素やイエロー色素に比べて耐光性に優れるという特徴がある。しかし、フタロシアニン系色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクとしては余り好ましい色相ではない。そのためこれらの色素をシアンインクに用いる場合には、中性からアルカリ性の条件下で使用するのが好ましい。しかしながら、インクが中性からアルカリ性であっても、例えば被記録材が酸性紙である場合、記録物の色相が大きく変化してしまう可能性がある。
また、フタロシアニン系色素をシアンインクに用いた場合、昨今環境問題として取り挙げられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによっても、記録物の色相がグリーン味に変色すると共に、消色又は褪色等も起こるため、記録物の印字濃度が低下するという現象が生じる。
一方、トリフェニルメタン系色素については、色相は良好であることが知られているが、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性においてフタロシアニン系色素より非常に劣る。
今後、インクジェット記録の使用分野が拡大して、広告等の展示物にも広く使用されるようになると、そこに使用される色素及びインクは光や環境中の酸化性ガスに曝される機会も多くなる。このため、インクジェット記録用のシアン色素としては、良好な色相を有し、安価であることと共に、前記のような各種の耐性に優れることがますます強く望まれている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素及びシアンインクを開発することは難しいとされている。これまでにも、耐オゾン性を付与したフタロシアニン系色素は、特許文献3、8〜12、14〜18等に開示されているが、色相、印字濃度、耐光性、耐オゾン性、耐湿性及びブロンズ現象を起こさない等すべての品質を満足させ、さらには安価に製造可能なシアン色素はいまだ得られていない。よってまだ市場の要求を充分に満足させるには至っていない。
特開昭62−190273号公報 特開平7−138511号公報 特開2002−105349号公報 特開平5−171085号公報 特開平10−140063号公報 特表平11−515048号公報 特開昭59−22967号公報 特開2000−303009号公報 特開2002−249677号公報 特開2003−34758号公報 特開2002−80762号公報 国際公開第2004/087815号パンフレット 国際公開第2002/034844号パンフレット 特開2004−75986号公報 国際公開第2007/091631号パンフレット 国際公開第2007/116933号パンフレット 国際公開第2008/111635号パンフレット 国際公開第2008/084195号パンフレット 国際公開第2010/001559号パンフレット
本発明は、水に対する溶解性が高く、耐オゾン性に優れるインクジェット記録に適したポルフィラジン色素、及びこれを含有するインク組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、良好な色相を有し、高い耐オゾン性を有する色素を詳細に検討したところ、下記式(1)で表される特定のポルフィラジン色素が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
1)
下記式(1)で表されるポルフィラジン色素又はその塩、
Figure 2011190429
[式(1)中、
破線で表される環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0より大きく3.0以下であり、残りはベンゼン環であり、
Eはアルキレンを表し、
Xは、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
1は、水素原子;又は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C6アルキル基;を表し、
基Yは、置換基として、スルホ基及びカルボキシル基よりなる群から選択される基を有してもよいフェニル基;ピリジル基;チエニル基;又はフリル基;を表し、
aは1〜6の整数であり、
bは平均値で0.0以上3.9未満であり、
cは平均値で0.1以上4.0未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.0以上4.0未満である。
但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基若しくはピリジル基である組み合わせを除く。]、
2)
環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である前記1)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
3)
下記式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、下記式(3)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させて得られる前記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
Figure 2011190429
[式(2)中、環A乃至Dは前記1)に記載のものと同じ意味を表し、nは平均値で1.0以上4.0未満である。]、
Figure 2011190429
[式(3)中、E、X、R1、基Y、及びaは前記1)に記載のものと同じ意味を表す。]、
4)
Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、及びアルキルスルホニル基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜4つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
1は、水素原子;又は、置換基として、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C6アルキル基;であり、
基Yが、スルホ基及びカルボキシ基から選択される基で置換されてもよいフェニル基;又はフリル基;であり、
aが1又は2の整数である、前記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く、
5)
Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、
1が、水素原子;又は、カルボキシ基及びヒドロキシ基から選択される1又は2種類の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C4アルキル基;であり、
基Yが、フェニル基又はフリル基である、
前記4)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く、
6)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環、又は2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xが、置換基として、スルホ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基である、
前記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
7)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xが、1〜3つのスルホ基を有するアニリノ基である、前記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
8)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xが、1〜3つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
aが1又は2の整数であり、
bが平均値で0.0以上3.9未満であり、
cが平均値で0.1以上4.0未満であり、
且つb及びcの和が、平均値で1.0以上4.0未満である、前記1)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く、
9)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレンであり、
Xが、1〜3つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、
1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
aが1の整数であり、
bが平均値で0.0以上3.9未満であり、
cが平均値で0.1以上4.0未満であり、
且つb及びcの和が、平均値で1.0以上4.0未満である、前記1)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く、
10)
前記1)乃至9)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩を、色素として含有することを特徴とするインク組成物、
11)
さらに有機溶剤を含有する前記10)に記載のインク組成物、
12)
インクジェット記録に用いる前記10)又は11)に記載のインク組成物、
13)
前記10)乃至12)のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させ、記録を行うインクジェット記録方法、
14)
被記録材が情報伝達用シートである前記13)に記載のインクジェット記録方法、
15)
情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、該シートが支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである前記14)に記載のインクジェット記録方法、
16)
前記10)乃至12)のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器、
17)
前記16)に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ、
18)
i)前記1)乃至9)のいずれか一項に記載の色素またはその塩、
ii)前記10)乃至12)のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、
iii)前記13)に記載のインクジェット記録方法、
の前記i)乃至iii)のいずれかにより着色された着色体、
に関する。
本発明により、水に対する溶解性が高く、耐オゾン性に優れるインクジェット記録に適したポルフィラジン色素、及びこれを含有するインク組成物が提供できた。
本発明を詳細に説明する。前記式(1)で表される本発明の色素は、水溶性の色素、すなわち染料である。
本明細書においては煩雑さを避けるため、便宜上、以下「本発明の(ポルフィラジン)色素又はその塩」の両者を含めて、「本発明の(ポルフィラジン)色素」と簡略して記載する。
前記式(1)中、破線で表される環A乃至D(環A、B、C及びDの4つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子を1又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環が好ましい。ポルフィラジン環とピリジン環との縮環位置は特に制限されないが、ピリジン環の窒素原子の位置を1位として、2位及び3位、又は3位及び4位で縮環するのが好ましい。これらの色素が有する色相の特徴として、前者の位置で縮環したものは赤味のシアン色、後者の位置で縮環したものは緑味のシアン色となる傾向にあり、また耐オゾン性は後者の方が優れる傾向にある。このため、ポルフィラジン環とピリジン環との縮環位置については、その目的や色相の要望等に応じて適宜選択することができる。
含窒素複素芳香環の個数が増えるにしたがって、耐オゾン性は向上するが、ブロンズ現象は生じやすくなる傾向にあり、含窒素複素芳香環の個数は耐オゾン性とブロンズ現象を考慮しながら適宜調節し、バランスの良い比率を選択すればよい。
含窒素複素芳香環の個数は複素環の種類にもよるので一概には言えないが、通常平均値で、0.0より大きく3.0以下、好ましくは0.3以上2.0以下、より好ましくは0.5以上1.5以下の範囲である。残りの環A乃至Dはベンゼン環であり、環A乃至Dにおけるベンゼン環は、同様に、通常平均値で、1.0以上4.0未満、好ましくは2.0以上3.7以下、より好ましくは2.5以上3.5以下である。なお、本発明のポルフィラジン色素は、環A乃至Dの含窒素複素環の個数を平均値で表していることから明らかなように、複数の色素からなる色素混合物である。
また、本明細書においては特に断りの無い限り、該含窒素複素芳香環の個数は、小数点以下2桁目を四捨五入して1桁目までを記載する。但し、例えば含窒素複素芳香環の個数が1.35、ベンゼン環の個数が2.65のとき、両者を四捨五入すると前者が1.4、後者が2.7となり、両者の合計が環A乃至Dの合計の4.0を超えてしまう。このような場合には、便宜上、含窒素複素芳香環側の小数点以下2桁目は切り捨て、ベンゼン環側のみ四捨五入することにより、前者を1.3、後者を2.7として記載する。また、式(1)におけるb及びcについても、後述する通り、原則として小数点以下2桁目を四捨五入して1桁目までを記載するが、同様の場合においては、b側の小数点以下2桁目を切り捨て、c側のみ四捨五入して記載する。
前記式(1)中、Eにおけるアルキレンとしては、直鎖、分岐鎖又は環状アルキレンが挙げられ、直鎖又は環状が好ましく、直鎖がより好ましい。炭素数の範囲はC2−C6、好ましくはC2−C4、より好ましくはC2−C3が挙げられる。
具体例としてはエチレン、プロピレン、ブチレン等の直鎖のもの;2−メチルエチレン等の分岐鎖のもの;シクロプロピレンジイル、シクロブチレンジイル、シクロペンチレンジイル、シクロヘキシレンジイル等の環状のもの;等が挙げられる。好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレンであり、より好ましくはエチレン、プロピレンであり、特に好ましくはエチレンである。
前記式(1)中、Xは、置換基として、前記の群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基である。換言すると、Xは、少なくとも1つのスルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、さらに前記の群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい。
なおリン酸基とは、「−P(O)(OH)2」基を意味する。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基の数としては、通常1〜4つ、好ましくは1〜3つ、より好ましくは2つである。なお、これらの数はいずれも、Xが少なくとも1つ置換基として有するスルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基を含む数である。
該置換基の種類としては通常1又は2種類以上、好ましくは1〜3種類、より好ましくは1又は2種類である。さらに好ましくは1種類、すなわち、スルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基のいずれか1種類である。中でもスルホ基が特に好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。
炭素数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3のものが挙げられる。
具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシロキシといった直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、イソペンチロキシ、イソヘキシロキシ等の分岐鎖のもの;シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロヘキシロキシ等の環状のもの;等が挙げられる。このうちではメトキシ又はエトキシが好ましく、メトキシが特に好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるモノアルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、その炭素数の範囲は通常C1−C4、好ましくはC1−C3である。具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノといった直鎖のもの;イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、t−ブチルアミノといった分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルアミノが好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるジC1−C4アルキルアミノ基としては、前記モノアルキルアミノ基で挙げたアルキル部分を、独立に2つ有するジアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。これらの中ではジメチルアミノが好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるモノアリールアミノ基としては、モノC6−C10芳香族アミノ基、好ましくはフェニルアミノ基又はナフチルアミノ基、より好ましくはフェニルアミノ基が挙げられる。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるジアリールアミノ基としては、前記モノアリールアミノ基で挙げたアリールを、独立に2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。好ましくは同一のアリール、より好ましくはフェニルを2つ有するものが挙げられ、具体例としてはジフェニルアミノが挙げられる。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルキルカルボニルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。アルキル部分の炭素数の範囲としてはC1−C3が好ましい。具体例としては、メチルカルボニルアミノ(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノといった直鎖のもの;イソプロピルカルボニルアミノといった分岐鎖のもの;が挙げられる。これらの中ではアセチルアミノが好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。炭素数の範囲としては、通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3が挙げられる。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルが好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。アルキル部分の炭素数の範囲としては、通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3が挙げられる。具体例としては、メタンスルホニル(メチルスルホニル)、エタンスルホニル(エチルスルホニル)、n−プロパンスルホニル(n−プロピルスルホニル)、n−ブチルスルホニル、n−ペンチルスルホニル、n−ヘキシルスルホニル等の直鎖のもの;イソプロピルスルホニル、イソブチルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルスルホニルが好ましい。
Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるC1−C6アルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。アルキル部分の炭素数の範囲としては、通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3が挙げられる。具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、n−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ等の直鎖のもの;イソプロピルチオ、イソブチルチオ、t−ブチルチオ、イソペンチルチオ、イソヘキシルチオ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルチオが好ましい。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であるとき、その好ましい具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ、2,4−ジスルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ等の、スルホ基を1つ又は2つ置換基として有するアニリノ基が挙げられる。これらの中では4−スルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノがより好ましく、後者が特に好ましい。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、さらに前記の群から選択される1又は2種類以上の基を有するとき、その具体例としては、2−カルボキシ−4−スルホアニリノ、2−カルボキシ−5−スルホアニリノ等の、さらに1つのカルボキシ基を有するもの;4−メトキシ−2−スルホアニリノ、4−エトキシ−2−スルホアニリノ、4−エトキシ−6−スルホアニリノ等の、さらに1つのC1−C6アルコキシ基を有するもの;3−アミノ−4−スルホアニリノ等の、さらに1つのアミノ基を有するもの;4−メチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、さらに1つのモノC1−C4アルキルアミノ基を有するもの;4−ジメチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、さらに1つのジC1−C4アルキルアミノ基を有するもの;2−メチル−5−スルホアニリノ、3−メチル−6−スルホアニリノ等の、さらに1つのC1−C6アルキル基を有するもの;4−アニリノ−3−スルホアニリノ等の、さらに1つのアリールアミノ基を有するもの;4−アセチルアミノ−2−スルホアニリノ等の、さらに1つのC1−C3アルキルカルボニルアミノ基を有するもの;2−クロロ−5−スルホアニリノ、3,5−ジクロロ−4−スルホアニリノ等の、さらに1つ又は2つのハロゲン原子を有するもの;4−メチルスルホニル−2−スルホアニリノ、4−メチルスルホニル−5−スルホアニリノ、4−ヘキシルスルホニル−2−スルホアニリノ等の、さらに1つのC1−C6アルキルスルホニル基を有するもの;4−メチルチオ−2−スルホアニリノ、4−ヘキシルチオ−2−スルホアニリノ等の、さらに1つのC1−C6アルキルチオ基を有するもの;3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−3−スルホアニリノ、2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホアニリノ、3−メチル−6−メトキシ−4−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−3−アセチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、さらに2種類の基を2つ有するもの;等が挙げられる。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、さらに前記の群から選択される基を有するとき、その置換基の種類としては、カルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、及びアルキルスルホニル基が好ましい。
より好ましくはカルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、及びハロゲン原子であり、さらに好ましくはニトロ基、及びハロゲン原子である。
Xが、少なくとも1つのカルボキシ基を置換基として有するアニリノ基であるとき、その好ましい具体例としては、2−カルボキシアニリノ、3−カルボキシアニリノ、4−カルボキシアニリノ、3,5−ジカルボキシアニリノ等の、カルボキシ基を1つ又は2つ置換基として有するアニリノ基が挙げられる。
Xが、少なくとも1つのカルボキシ基を置換基として有するアニリノ基であり、さらに前記の群から選択される基を有するとき、その具体例としては、前記の2−カルボキシ−4−スルホアニリノ、2−カルボキシ−5−スルホアニリノ等の、さらに1つのスルホ基を有するもの;4−スルファモイル−2−カルボキシアニリノ等の、さらに1つのスルファモイル基を有するもの;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ等の、さらに1つのヒドロキシ基を有するもの;前記の4−ヒドロキシ−3−スルホ−5−カルボキシアニリノ等の、さらに2種類の基を2つ有するもの;等が挙げられる。
Xが、少なくとも1つのカルボキシ基を置換基として有するアニリノ基であり、さらに前記の群から選択される基を有するとき、その置換基の種類としては、スルホ基、スルファモイル基、及びヒドロキシ基が好ましい。
Xが、少なくとも1つのリン酸基を置換基として有するアニリノ基であるとき、その好ましい具体例としては、2−ホスホノアニリノ、3−ホスホノアニリノ、4−ホスホノアニリノ等の、リン酸基を1つ置換基として有するアニリノ基が挙げられる。
なお、Xが、少なくとも1つのリン酸基を置換基として有するアニリノ基であるときは、他の置換基は有しないものが好ましい。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するナフチルアミノ基であるとき、その具体例としては、4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、1,5−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ等の、通常1〜4つ、好ましくは1〜3つ、より好ましくは2つ又は3つのスルホ基を有する1−又は2−ナフチルアミノ基が挙げられる。これらの中では、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノが好ましい。
より好ましくは、4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ;又は、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ;が挙げられる。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を有するナフチルアミノ基であり、さらに前記の群から選択される基を有するとき、その具体例としては、5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジスルホ−8−ヒドロキシ−1−ナフチルアミノ等の、さらに1つのヒドロキシ基を有するもの;6−ニトロ−4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ等の、さらに1つのニトロ基を有するもの;8−クロロ−3,6−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ等の、さらに1つのハロゲン原子を有するもの;等が挙げられる。
Xが、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するナフチルアミノ基であり、さらに前記の群から選択される基を有するとき、その置換基の種類としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、及びハロゲン原子が好ましい。
Xが、少なくとも1つのカルボキシ基を置換基として有するナフチルアミノ基であるとき、その具体例としては、8−カルボキシナフチルアミノ、3−カルボキシ−2−ナフチルアミノ、4,8−ジカルボキシ−2−ナフチルアミノ、1,5−ジカルボキシ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジカルボキシ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジカルボキシ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジカルボキシ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリカルボキシ−1−ナフチルアミノ、3,6,8−トリカルボキシ−2−ナフチルアミノ等の、カルボキシナフチルアミノ基がさらに1又は2つのカルボキシ基を有するもの;5−ヒドロキシ−7−カルボキシ−2−ナフチルアミノ、1,3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−2−ナフチルアミノ、3−カルボキシ−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチルアミノ等の、カルボキシナフチルアミノ基がさらに1又は2つのヒドロキシ基を有するもの等が挙げられる。
なお、Xが、少なくとも1つのカルボキシ基を置換基として有するナフチルアミノ基であるときは、他の置換基は有しないものが好ましい。
Xが、少なくとも1つのリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であるとき、その具体例としては4,8−ジホスホノ−2−ナフチルアミノ、1,5−ジホスホノ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジホスホノ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジホスホノ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジホスホノ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリホスホノ−1−ナフチルアミノ、3,6,8−トリホスホノ−2−ナフチルアミノ等の、ホスホノナフチルアミノ基がさらに1又は2つのリン酸基を有するもの;5−ヒドロキシ−7−ホスホノ−2−ナフチルアミノ、1,3−ホスホノ−4−ヒドロキシ−2−ナフチルアミノ、3−カルボキシ−1,4−ジホスホノ−2−ナフチルアミノ等の、ホスホノナフチルアミノ基がさらに1又は2つのヒドロキシ基を有するもの等が挙げられる。
なお、Xが、少なくとも1つのリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であるときは、他の置換基は有しないものが好ましい。
前記のうち、Xとしては、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、及びアルキルスルホニル基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜4つ有しても良く、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基が好ましい。
より好ましくは、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基である。
さらに好ましくは、置換基として、スルホ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基である。
一方、好ましいXの1つとして、1〜3つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基も挙げられる。
前記のうち、Xとして特に好ましくは、1〜3つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、中でも2つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基が最も好ましい。
前記式(1)中、R1が置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルコキシ基としては、前記「Xが置換基として有する、前記の群から選択される基におけるアルコキシ基」に挙げたものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
1が、置換基として、前記の群から選択される1又は2種類以上の基を有するとき、該置換基の種類は通常1〜3種類、好ましくは1〜2種類、より好ましくは1種類である。また、該置換基の数は、通常1〜3つ、好ましくは1〜2つ、より好ましくは1つである。
前記式(1)中、R1におけるアルキル基としては、特に断りの無い限り、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。炭素数の範囲としては、通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。
これらの中ではメチル、sec−ブチル、t−ブチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
1がスルホ基を有するフェニルメチル基のとき、具体例としては、4−スルホフェニルメチル、3−スルホフェニルメチル、2−スルホフェニルメチルといった、スルホ基を1つ有するものが挙げられる。これらの中では4−スルホフェニルメチルが好ましい。
1がカルボキシ基を有するフェニルメチル基のとき、具体例としては、4−カルボキシフェニルメチル、3−カルボキシフェニルメチル、2−カルボキシフェニルメチルといった、カルボキシ基を1つ有するものが挙げられる。
1がカルバモイル基を有するフェニルメチル基のとき、具体例としては、4−カルバモイルフェニルメチル、3−カルバモイルフェニルメチル、2−カルバモイルフェニルメチルといった、カルバモイル基を1つ有するものが挙げられる。
1がヒドロキシ基を有するフェニルメチル基のとき、具体例としては、4−ヒドロキシフェニルメチル、3−ヒドロキシフェニルメチル、2−ヒドロキシフェニルメチルといった、ヒドロキシ基を1つ有するものが挙げられる。
1がアルコキシ基を有するフェニルメチル基のとき、具体例としては、4−メトキシフェニルメチル、3−メトキシフェニルメチル、2−メトキシフェニルメチルといった、メトキシ基を1つ有するものが挙げられる。
1がスルホ基を有するC1−C6アルキル基のとき、具体例としては、スルホメチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、5−スルホペンチル、6−スルホヘキシル等が挙げられる。
1がカルボキシ基を有するC1−C6アルキル基のとき、具体例としては、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、5−カルボキシペンチル、6−カルボキシヘキシル等が挙げられる。
1がカルバモイル基を有するC1−C6アルキル基のとき、具体例としては、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、3−カルバモイルプロピル、4−カルバモイルブチル、5−カルバモイルペンチル、6−カルバモイルヘキシル等が挙げられる。
1がヒドロキシ基を有するC1−C6アルキル基のとき、具体例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチル、6−ヒドロキシヘキシル等の、ヒドロキシ基を有するものが挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
1がアルコキシ基を有するC1−C6アルキル基のとき、具体例としては、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル等が挙げられる。
前記のうち、R1としては、水素原子;置換基として、カルボキシ基、ヒドロキシ基、又はアルコキシ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C6アルキル基;が好ましい。
より好ましくは、水素原子;又は、カルボキシ基及びヒドロキシ基から選択される1又は2種類の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C4アルキル基;が挙げられる。
さらに好ましくは、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;が挙げられる。
前記式(1)中、基Yにおける、置換基として、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される基を有してもよいフェニル基としては、非置換;又は、スルホ基若しくはカルボキシ基のいずれか一方を有するもの;が好ましい。より好ましくは、非置換;又は、スルホ基を有するもの;が挙げられる。中でも非置換のもの(すなわちフェニル基)が特に好ましい。
具体例としては、フェニル;4−スルホフェニル、3−スルホフェニル、2−スルホフェニルといったスルホ基を有するフェニル基;4−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、2カルボキシフェニルといったカルボキシ基を有するフェニル基;等が挙げられる。
これらの中ではフェニル基、4−スルホフェニル基、4−カルボキシフェニル基が好ましい。より好ましくは、フェニル基、4−スルホフェニル基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
基Yにおけるピリジル基としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルが挙げられる。
基Yにおけるチエニル基としては、2−チエニル、3−チエニルが挙げられる。
基Yにおけるフリル基としては、2−フリル、3−フリルが挙げられる。中でも2−フリルが特に好ましい。
前記のうち、基Yとしては、置換基として、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される基を有してもよいフェニル基;又はフリル基が好ましい。
前記の基YとR1との好ましい組み合わせとして、以下の(a)〜(d)が挙げられる。これらの中でも、(a)及び(c)の組み合わせが特に好ましい。
(a)基Yがフェニル基のとき、R1がフェニルメチル基、メチル、エチル(好ましくはメチル)である組み合わせ。
(b)基Yがピリジル基のとき、R1がフェニルメチル基、メチル、エチル(好ましくはメチル)である組み合わせ。
(c)基Yがフリル基のとき、R1が水素原子、フェニルメチル基、メチル、エチル(好ましくは水素原子)である組み合わせ。
(d)基Yがチオニル基のとき、R1が水素原子、フェニルメチル基、メチル、エチル(好ましくは水素原子)である組み合わせ。
前記式(1)中、aは、「(CH2)」の繰返し数、すなわちアルキレンの長さを表し、通常1〜6の整数、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1の整数である。
前記式(1)におけるb、c及び、b及びcの和は、いずれも平均値である。bは0.0以上3.9未満であり、cは0.1以上4.0未満であり、且つb及びcの和は、平均値で1.0以上4.0未満である。このとき、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環は、平均値で0.0より大きく3.0以下、同様にベンゼン環は1.0以上4.0未満である。
好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.2以上2.0以下、ベンゼン環が2.0以上3.8以下のとき、bが0.0以上3.4以下であり、cが0.4以上2.0以下、且つb及びcの和は、2.0以上3.8以下である。
より好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.5以上1.7以下、ベンゼン環が2.3以上3.5以下のとき、bが0.4以上3.0以下であり、cが0.5以上1.9以下、b及びcの和は、2.3以上3.5以下である。
さらに好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.7以上1.5以下、ベンゼン環が2.5以上3.3以下のとき、bが0.7以上2.8以下であり、cが0.5以上1.8以下、b及びcの和は、2.5以上3.3以下である。
bが大きくなるにつれて、耐オゾン性は向上する傾向にあるが、ブロンズ性は生じやすくなる傾向にあり、耐オゾン性とブロンズ性を考慮しながら、b、cの数を適宜調節し、バランスの良い比率を選択すればよい。
なお、b及びcでそれぞれの置換数を表される非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基はいずれも、環A乃至Dがベンゼン環である場合に、該ベンゼン環上に置換する基であり、環A乃至Dが6員環の含窒素複素芳香環である場合には置換しない。
なお、本明細書においては、b、c及び、b及びcの和は、いずれも小数点以下2桁目を四捨五入して、1桁目までを記載する。
前記式(1)において、環A乃至D、E、X、R1、基Y、a、b及びcにおいて、好ましいもの同士を組み合わせた色素はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせた色素はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものの組合せ等についても同様である。
前記式(1)で表される化合物の特に好ましいものとして、以下(e)及び(f)の2つの組み合わせの化合物が挙げられ、(f)の組み合わせが最も好ましい。
(e)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xが、1〜3つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
aが1又は2の整数であり、
bは平均値で0.0以上3.9未満であり、
cは平均値で0.1以上4.0未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.0以上4.0未満である組み合わせの化合物。
(f)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレンであり、
Xが、1〜3つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、
1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
aが1の整数であり、
bは平均値で0.0以上3.9未満であり、
cは平均値で0.1以上4.0未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.0以上4.0未満である組み合わせの化合物。
なお、前記式(1)で表される化合物は、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基若しくはピリジル基である組み合わせの化合物を除く。すなわち、この構成を有する化合物は、式(1)で表される化合物には含まない。
前記式(1)で表される本発明の色素は、分子内に有するスルホ基、カルボキシ基、及びリン酸基を利用して塩を形成することも可能である。塩を形成するとき、そのカウンターカチオンは、無機金属、アンモニア(NH3)又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1−C3アルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミン類;等が挙げられる。
上記のカウンターカチオンとの塩のうち、好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミンとの塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、塩の種類により溶解性等の物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に堅牢性に関する性能等が変化する場合もある。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
前記式(1)で表される本発明の色素における、環A乃至D、E、X、R1、及び基Yの具体例、a、b及びcの数を下記表1〜表9に示す。
下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、本発明は下記の例に限定されるものではない。
また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環がピリジン環の場合には、例えば特許文献15〜19(より詳しくは、例えば特許文献18の第20頁[0051]〜第23頁[0054])に記載されたとおり、窒素原子の位置異性体等が存在し、色素合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体は単離が困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため通常混合物のまま使用する。本発明の色素は、このような混合物をも含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示する場合は、便宜的に代表的な一つの構造式を記載する。なお、表中のb及びcの数については、煩雑さを避けるため、小数点以下1桁目を四捨五入して記載した。なお、表1中に用いた記号は、以下の意味を有する。
2,3−P:2位及び3位でポルフィラジン環に縮環したピリジン環。
3,4−P:3位及び4位でポルフィラジン環に縮環したピリジン環。
B:ポルフィラジン環に縮環したベンゼン環。
EL:エチレン。
PL:プロピレン。
Ph:フェニル基。
2−Fr:2−フリル基。
S:スルホ基。
K:カルボキシ基。
Me:メチル基。
H:水素原子。
HOET:2−ヒドロキシエチル基。
t−Bu:t−ブチル基。
s−Bu:sec−ブチル基。
PM:フェニルメチル基。
前記の記号の一例を挙げると、「2,5−ジ−S−アニリノ」は「2,5−ジスルホアニリノ」を意味する。また、「2,5−ジ−K−アニリノ」は「2,5−ジカルボキシアニリノ」を、「3,6,8−トリ−S−1−ナフチルアミノ」は「3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ」をそれぞれ意味する。
Figure 2011190429
Figure 2011190429
Figure 2011190429
Figure 2011190429
Figure 2011190429
Figure 2011190429
Figure 2011190429
本発明のポルフィラジン色素は、通常、他の色素を配合することなく用いることができるが、場合により、本発明の効果を阻害しない範囲で公知のシアン色素と配合して使用してもよい。
公知のシアン色素と配合して使用する場合、配合する色素としてはC.I.ナンバーが付与されているトリフェニルメタン系色素やフタロシアニン系色素などを用いることができるが、フタロシアニン系色素が好ましい。
前記式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素の製造方法を説明する。
前記式(1)で表される色素は、前記式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、前記式(3)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させることにより得ることができる。
前記式(2)で表されるポルフィラジン化合物は、いずれも公知の方法又はそれに準じて、下記式(4)で表される化合物を合成した後、これをクロロスルホニル化することにより得ることができる。
即ち、下記式(4)で表される化合物は、例えば、特許文献15〜19に詳細に開示された公知の方法、又はその方法に準じて合成することができる。また、環A乃至Dが、3位と4位でポルフィラジン環に結合する前記式(4)で表される化合物についても、原料としてシンコメロン酸やその誘導体を用いることにより、特許文献15〜19に開示された方法、又はその方法に準じて、当業者であれば容易に合成することができる。なお、得られる式(4)で表される化合物は、前記のとおり、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環中の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、前記特許文献15〜19に記載の通りである。
Figure 2011190429
[式(4)中、環A乃至Dは、前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。]。
式(2)で表されるポルフィラジン化合物は、特許文献15〜19に開示された公知の方法に従って、式(4)で表される化合物をクロロスルホニル化することにより得ることができる。式(2)におけるクロロスルホニル基は、環A乃至Dにおけるベンゼン環上に導入され、環A乃至Dが含窒素複素芳香環基に相当する場合には導入されない。ベンゼン環上には通常1つのクロロスルホニル基が導入されるので、式(2)におけるnの数は、環A乃至Dにおけるベンゼン環の数以内である。従って、式(2)におけるクロロスルホニル基の数「n」は、式(2)で表されるポルフィラジン化合物のベンゼン環の数に応じて1.0以上4.0未満である。
式(2)で表されるポルフィラジン化合物の別合成方法としては、予めスルホ基を有するスルホフタル酸とキノリン酸等の含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とを縮合閉環させることにより、スルホ基を有するポルフィラジン化合物を合成し、その後、該スルホ基を、塩化チオニル等の適当な塩素化剤でクロロスルホニル基へと変換する方法が挙げられる。この場合、合成原料であるスルホフタル酸のスルホ基の置換位置が3位のものと4位のものとを選択することにより、式(2)で表されるポルフィラジン化合物上に導入されるスルホ基の置換位置を制御することができる。即ち、3−スルホフタル酸を用いれば下記式(5)における「α」位に、又、4−スルホフタル酸を用いれば同様に「β」位に、それぞれ選択的にスルホ基を導入することができる。
Figure 2011190429
一方、前記式(3)で表される有機アミンも、公知の方法で製造することができる。
例えば、Xに対応する置換アニリン又は置換ナフチルアミン類0.9〜1.2モルと、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルを、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物により、反応液をおおよそpH1〜5に調整し、0〜40℃、2〜12時間の条件下に反応させて、1次縮合物を得る。次いで、「HR1N−(CH2)a−Y」なるアミン0.9〜1.5モルを加え、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物により、反応液をおおよそpH5〜10に調整し、5〜80℃、0.5〜12時間反応させることにより2次縮合物を得る。得られた2次縮合物1モルと、Eに対応するアルキレンジアミン類(「H2N−E−NH2」なるアミン)1〜50モルとを、おおよそpH9〜12、5〜90℃、0.5〜8時間反応させることにより、前記式(3)で表される有機アミンが得られる。各縮合反応のpH調整には、通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が用いられる。なお、縮合の順序はシアヌルクロライドと縮合する各種化合物の反応性に応じて適宜決めるのが良く、前記の順序に限定されない。
式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、式(3)で表される有機アミンとの反応は、アンモニア存在下に、水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5〜70℃、1〜20時間反応させることにより行われ、目的の式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素が得られる。反応に用いられる「アンモニア」は、通常アンモニア水を意味する。しかし、中和や分解により、アンモニアを発生する化学物質であれば、これを用いることができる。アンモニアを発生する化学物質としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩の様に、中和によりアンモニアを発生するもの;尿素等の、熱分解によりアンモニアを発生するもの;アンモニアガス;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。該「アンモニア」としてはアンモニア水が好ましく、市販品として入手できる濃アンモニア水(通常は、およそ28%のアンモニア水として市販されている)、又はこれを必要に応じて水により希釈して使用すればよい。
式(3)で表される有機アミンの使用量は、通常式(2)で表されるポルフィラジン化合物1モルに対して、理論値[目的とする式(1)で表される色素におけるcの値を得るのに必要な、計算上の式(3)で表される有機アミンのモル数]の1モル以上であるが、用いる有機アミンの反応性、反応条件により異なり、これらに限定されるものではない。
通常は前記理論値の1〜3モル、好ましくは1〜2モル程度である。
また前記式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素は、前記式(2)と、式(3)で表される化合物とから、特に無水条件を必要としない反応条件下(好ましくは水中、場合により水と水溶性有機溶剤との混和溶液中)にて合成される。このため式(2)におけるクロロスルホニル基が一部、反応系内に混在する水により加水分解を受けてスルホン酸へと変換された化合物が副生し、この結果、該副生物が、目的とする式(1)で表される色素に混入することが理論上考えられる。
しかしながら質量分析において無置換スルファモイル基とスルホ基とを識別することは困難であり、本発明においては式(3)で表される有機アミンと反応させたもの以外の式(2)におけるクロロスルホニル基については、全て無置換スルファモイル基へと変換されたものとして記載する。
さらに前記式(1)で表される色素は一部、2価の連結基(L)を介して銅ポルフィラジン環(Pz)が2量体(例えばPz−L−Pz)又は3量体を形成した不純物が副生し、反応生成物中に混入することもある。
前記Lで表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2−NH−SO2−等があり、3量体の場合にはこれら2つのLが組み合わされた副生成物が形成される場合も有る。
上記のようにして得られる本発明のポルフィラジン色素は、その合成反応における最終工程終了後の反応液から、酸析又は塩析等により析出する固体を濾過分離等により、固体として単離することができる。塩析は、例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpH1〜11の範囲で行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱後、塩化ナトリウム等を加えて塩析するのが好ましい。
前記の方法で合成される本発明のポルフィラジン色素は、遊離酸又はその塩として得られる。該色素を遊離酸として単離する方法としては、例えば酸析が挙げられる。また、塩として単離する方法としては、塩析するか、塩析によって所望の塩が得られないときには、例えば得られた塩を遊離酸に変換した後、所望の有機又は無機の塩基を加えて造塩する方法、又は公知の塩交換法等が挙げられる。
本発明のインク組成物について記載する。
本発明のインク組成物は、前記式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素を含有することを特徴とする、実質的に溶液の水系インク組成物である。本発明のポルフィラジン色素は鮮明なシアン色を呈するため、該色素を含有するインク組成物も、シアンインクとして用いることができる。本発明のポルフィラジン色素を含有するインク組成物は、色素濃度が高濃度のシアンインクのみならず、画像の階調部分を滑らかに再現する目的;又は淡色領域の粒状感を軽減する目的;等に用いられる、色素濃度が低濃度のシアンインク(ライトシアンインクやフォトシアンインク等と呼ばれる)として用いてもよい。また、イエロー色素と配合してグリーンインクとして使用してもよいし、マゼンタ色素と配合してバイオレットやブルーインクとして使用してもよい。さらに多色を配合してインクを調製し、ダークイエロー、グレー又はブラックの各インクとして使用することも可能である。
本発明のインク組成物をインクジェット記録用として使用するときは、本発明のポルフィラジン色素中に不純物として含まれるCl-及びSO4 2-等の陰イオンの含有量は少ないものが好ましく、その含有量の目安は該色素の総質量中において、Cl-及びSO4 2-の総含有量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また、インク組成物中においては同様に、インクの総質量に対して1質量%以下である。下限は検出機器の検出限界以下、即ち0%でよい。
Cl-及びSO4 2-の少ない本発明のポルフィラジン色素を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法;又は本発明のポルフィラジン色素の乾燥品あるいはウェットケーキを、含水水溶性有機溶剤、好ましくは含水アルコール中に縣濁して撹拌する等の方法;により脱塩処理すればよい。
前記含水アルコールにおけるアルコールとしては、C1−C4アルコール、好ましくはC1−C3アルコール、さらに好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール又は2−プロパノール(イソプロパノール)が挙げられる。含水アルコールを用いるときは、脱塩したい色素を縣濁させた縣濁液を、その沸点近くまで加熱後、冷却して脱塩する方法を用いてもよい。
含水アルコール中で脱塩処理された本発明のポルフィラジン色素は、濾過分離した後に乾燥することにより、乾燥状態の色素を得ることもできる。
該色素中のCl-及びSO4 2-の含有量は、例えばイオンクロマトグラフィーで測定される。
本発明のインク組成物をインクジェット記録に用いる場合、前記のCl-及びSO4 2-以外として、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等の不純物含有量も少ないことが好ましい。
但し、本発明のポルフィラジン色素は、イオン結合や配位結合等により中心金属を有し、銅錯体を形成しているため、この中心金属は不純物に含めない。
前記の不純物含有量の目安は、該ポルフィラジン色素の乾燥精製品中に、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等について、各々おおよそ500ppm以下程度が好ましく、下限は分析機器の検出限界以下、即ち0ppmでよい。
重金属等のイオン含有量は、イオンクロマトグラフィー、原子吸光法又はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法にて測定することができる。
本発明のインク組成物は、式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素を0.1〜8質量%、好ましくは0.3〜6質量%含有する。
このインク組成物はさらに必要に応じて、水溶性有機溶剤及びインク調製剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有してもよい。水溶性有機溶剤は、染料の溶解や、インク組成物の乾燥の防止(湿潤);粘度調整;浸透促進;表面張力の調整;消泡;等の効果を期待して使用するものであり、本発明のインク組成物中には含有する方が好ましい。
インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等を必要に応じて加えてもよい。
水溶性有機溶剤は0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%を、インク調製剤は0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%を、それぞれインクの総質量に対して用いるのがよい。残部は水である。
前記の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γ−ブチロラクトン;又はジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
前記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン又はブチルカルビトールである。
これらは、単独もしくは混合して用いられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としては、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルRTMGXL(S)やプロクセルRTMXL−2(S)等が挙げられる。
なお、本明細書において、上付きの「RTM」は、登録商標を意味する。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);又は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸;等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又はベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中では尿素が好ましい。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
表面張力調整剤としては、界面活性剤が挙げられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種類がある。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系(例えば、日信化学社製、商品名サーフィノールRTM104、82、465、オルフィンRTMSTG等)等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。なお、本発明のインクの表面張力は通常25〜70mN/m、好ましくは25〜60mN/mである。また本発明のインクの粘度は30mPa・s以下に調整するのが好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
本発明のインク組成物を製造するにあたり、含有する各成分を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水又は蒸留水等の、金属イオン等の不純物が少ない水が好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェット記録用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは、0.8μm〜0.1μmである。
本発明のインク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタインク、イエローインクとの3原色のインクセット、さらにはこれにブラックインクを加えた4色のインクセットとしても使用される。また、より高精細な画像を形成するために、ライトマゼンタインク、ブルーインク、グリーンインク、オレンジインク、ダークイエローインク、グレーインク等と併用したインクセットとしても使用できる。本発明のインク組成物と併用する各色のインクセットに用いる色素としては、各色の公知の色素が挙げられる。
公知のイエロー色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;ベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のメチン系色素;ナフトキノン色素、アントラキノン色素等のキノン系色素;キノフタロン系色素;ニトロ・ニトロソ系色素;アクリジン系色素;アクリジノン系色素;等が挙げられる。
公知のマゼンタ色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等が挙げられる。
公知のブラック色素としては、ジスアゾ、トリスアゾ又はテトラアゾ等のアゾ系色素;硫化染料;カーボンブラックの分散体;等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング等の各種の記録用途に使用できるが、特にインクジェット記録に適する。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクとして使用し、該インクに記録信号に応じてエネルギーを供与し、該インクのインク滴を吐出させて、各種の被記録材、即ち普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、光沢紙、光沢フィルム、電子写真共用紙等の情報伝達用シート;繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等);ガラス;金属;陶磁器;皮革;カラーフィルター用基材;等に付着させて記録を行い、画像を形成する方法である。
インクジェット記録画像を形成する際には、画像に光沢性や耐水性を与える目的;耐候性を改善する目的;等から、ポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を使用してもよい。
ポリマーラテックスを被記録材に付与する時期については、被記録材にインクを付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよい。
換言すると、ポリマーラテックスを含有する被記録材に本発明のインク組成物で記録してもよいし、該インク組成物中にポリマーラテックスを含有してもよい。又は、該インク組成物によって被記録材へ記録を行う前又は後に、ポリマーラテックスを単独の液状物として被記録材に付与してもよい。
本発明の着色体とは、
i)前記式(1)で表される本発明のポルフィラジン色素、
ii)式(1)で表されるポルフィラジン色素、又は該ポルフィラジン色素と水溶性有機溶剤を含有する本発明のインク組成物、
iii)前記の本発明のインクジェット記録方法、のi)乃至iii)のいずれかにより着色された物質を意味する。着色される物質としては特に制限されないが、例えば前記各種の被記録材等が挙げられ、これらの中では情報伝達用シートが好ましい。
情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材に、インク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば前記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の、インク中の色素を吸収し得る無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に前記基材表面に塗工する方法;等により設けられる。
このようなインク受容層を設けた情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。この中でも、オゾンガス等の空気中の酸化作用を持つガスに対して影響を受けやすいとされているのが、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子を基材表面に塗工しているタイプのインクジェット専用紙である。
市販品として入手できる前記専用紙の代表的な例としては、キヤノン(株)製、商品名 写真用紙・光沢プロ「プラチナグレード」、写真用紙・光沢ゴールド;セイコーエプソン(株)製、商品名 写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名 アドバンスフォト用紙(光沢);ブラザー(株)製、商品名 プレミアムプラスグロッシィフォトペーパー;等がある。なお、普通紙も当然利用でき、具体的にはキヤノン(株)製、商品名 PBペーパーGF500;セイコーエプソン(株)製、商品名 両面上質普通紙;PPC(プレインペーパーコピー)用紙;等が挙げられるが、本発明のインク組成物の用途としては、これらに限られるものではない。
本発明のインクジェット記録方法で、前記の被記録材に記録を行うには、例えば前記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置に装填し、前記の記録方法で記録すればよい。
インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタ;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ;等が挙げられるが、本発明のインク組成物はこれらの吐出方式に限定されず、いずれの方式でも使用できる。
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、該インク組成物をインクジェット記録に使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間かつ一定の再循環下での記録;又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な記録;等においても、物理的性質の変化を起こさない。
本発明のポルフィラジン色素を含有するインク組成物は、鮮明なシアン色であり、シアンインクとして良好な色相を有すると共に、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。また、本発明のインク組成物により得られる記録画像はブロンズ現象が極めて生じにくいものであり、また印字濃度が高く、インク中の色素濃度を低減することができるため、コストの減少といった産業上の優位性を有する。さらに、記録画像の耐光性、耐水性、耐オゾン性及び耐湿性等の各種堅牢性、特に耐オゾン性に優れる。さらに、濃淡それぞれのシアンインクを使用し、これに加えてイエロー、マゼンタ、その他必要に応じてグリーン、レッド、オレンジ、ブルー等のインクと併用することにより、広い可視領域の色調を表現することもできる。
従って、本発明のポルフィラジン色素及びこれを含有するインク組成物は、インクジェット記録用のシアン色素及びシアンインクとして極めて有用である。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、反応、晶析等の各操作は、特に断りの無い限り、いずれも攪拌下に行った。また、合成反応に使用した、「レオコールRTMTD−50」及び「レオコールRTMTD−90」は商品名であり、いずれもライオン株式会社製の界面活性剤である。
なお実施例にて合成した前記式(1)で表される本発明の色素は、全て前記のように異性体等を含む混合物であり、収量についても該異性体等を含む。また、特に断りの無い限り、本発明の色素における非置換及び置換スルファモイル基の置換位置は、いずれもポルフィラジン環のα位及びβ位に置換したものの混合物である。
また、実施例で得た本発明及び比較用の色素について最大吸収波長(λmax)を測定したものは、いずれもpH7〜9の水溶液中での測定値を記載した。この際のpHの調整は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
[実施例1]
(工程1)
下記式(4)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環で表される化合物の合成。
Figure 2011190429
スルホラン375部に、無水フタル酸29.16部、キノリン酸17.23部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及びモリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間反応させた。反応終了後65℃まで冷却し、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ75.1部を得た。得られたウェットケーキをDMF450部に加え、110℃に昇温し、同温度で一時間反応させた。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間攪拌し、析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ78.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的化合物23.1部を青色固体として得た。
(工程2)
下記式(2)で表され、nが2.6であるポルフィラジン化合物の合成。
Figure 2011190429
室温下、クロロスルホン酸46.2部中に、60℃を超えないように実施例1(工程1)で得た式(4)の化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応させた。得られた反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間で滴下し、70℃でさらに3時間反応させた。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的化合物のウェットケーキ43.7部を得た。
(工程3)
下記式(6)で表される有機アミン[前記式(3)におけるEがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がメチルである有機アミン]の合成。
Figure 2011190429
氷水200部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−50(0.1部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン(純度95.2%の市販品を使用)29.5部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.8〜3.0としながら0〜10℃で2時間、pH2.8〜3.0としながら、25〜30℃で1時間反応を行った。この反応液にN−メチルベンジルアミン12.1部を加え、12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5〜6.0としながら25〜30℃で2時間反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた液に、上記のようにして得た2次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。得られた液に氷150部、濃塩酸210部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は950部であった。この液に塩化ナトリウム190部を加え、一晩撹拌して固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ200.9部を得た。得られたウェットケーキを水400部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は750部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム150部を加え、一晩撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ99.7部を得た。得られたウェットケーキをメタノール800部、水200部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ85.6部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(6)で表される有機アミン45.6部の白色粉末(HPLC純度96.6%)を得た。
(工程4)
下記式(7)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がメチルである色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水120部中に、実施例1(工程2)で得た式(2)のウェットケーキ43.7部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例1(工程3)で得られた式(6)で表される有機アミン7.9部を28%アンモニア水1部及び水60部の混合液中に溶解した溶液を、10℃以下を保持しながらこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の反応液の液量は250部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム25部を加えて10分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH6.0に調整し、析出した固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄することによりウェットケーキ44.0部を得た。得られたウェットケーキを水180部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整し、溶液とした。このときの液量は225部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム33.8部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH8.0に調整し、析出した固体を濾過分離し、15%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ42.5部を得た。得られたウェットケーキを2−プロパノール493部及び水87部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ50.7部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、式(7)で表される本発明の色素の遊離酸10.95部を青色粉末として得た。
λmax:606nm。
[実施例2]
(工程1)
下記式(8)で表される有機アミン[前記式(3)におけるEがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がフェニルメチルである有機アミン]の合成。
Figure 2011190429
氷水100部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−50(0.1部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン29.5部を加え12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜2.5としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にジベンジルアミン19.7部を加え、12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら35〜40℃で一晩反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た二次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸210部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は830部であった。この反応液に塩化ナトリウム165部を加え、一晩撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ162部を得た。得られたウェットケーキを水350部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は520部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム80部を加え、一晩撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ128部を得た。得られたウェットケーキをメタノール1024部、水256部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ60.8部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(8)で表される有機アミン41.2部(HPLC純度98.0%)の白色粉末を得た。
(工程2)
下記式(9)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がフェニルメチルである色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水200部中に実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして得たウェットケーキ45.1部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例2(工程1)で得た式(8)の有機アミン6.0部を28%アンモニア水1部及び水30部の混合液に溶解した溶液をこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の液量は290部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム27.5部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH8.0に調整し、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ71.2部を得た。得られたウェットケーキを水330部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH10.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は440部であった。この溶液を60℃に昇温し、塩化ナトリウム66部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH9.6に調整し、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ62.8部を得た。得られたウェットケーキを2−プロパノール504部及び水126部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ35.6部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、前記式(9)で表される色素の遊離酸9.6部を青色粉末として得た。
λmax:597nm。
[実施例3]
(工程1)
下記式(10)で表される有機アミン[前記式(3)におけるEがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がt−ブチルである有機アミン]の合成。
Figure 2011190429
氷水100部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−50(0.1部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン29.5部を加え12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜2.5としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にN−t−ブチルベンジルアミン16.3部を加え、12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら55〜60℃で一晩反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た二次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸210部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は850部であった。この反応液に塩化ナトリウム170部を加えた後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ101部を得た。得られたウェットケーキを水300部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は500部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム100部を加え、20分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ27.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール208部、水52部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ18.1部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(10)で表される有機アミン3.6部(HPLC純度98.2%)の白色粉末を得た。
(工程2)
下記式(11)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がt−ブチルである色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水200部中に実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして得たウェットケーキ43.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例3(工程1)で得た式(10)の有機アミン2.8部(HPLC純度98.2%)を28%アンモニア水1部及び水40部の混合液に溶解した溶液をこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の液量は290部であった。反応液を60℃に昇温し、塩化ナトリウム50部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ116.5部を得た。得られたウェットケーキを水130部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH10.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は250部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム45部を加え30分撹拌した後、濃塩酸にてpH2.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ72部を得た。得られたウェットケーキを2−プロパノール544部、水136部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ28.7部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、前記式(11)で表される色素の遊離酸8.1部を青色粉末として得た。
λmax:594nm。
[実施例4]
(工程1)
下記式(12)で表される有機アミン[前記式(3)におけるEがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がヒドロキシエチルである有機アミン]の合成。
Figure 2011190429
氷水100部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−50(0.1部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン29.5部を加え12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜2.5としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にN−ベンジルアミノエタノール15.1部を加え、12.5%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5〜6.0としながら25〜30℃で一晩反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た二次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸210部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は850部であった。この反応液に塩化ナトリウム170部を加えた後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ116.5部を得た。得られたウェットケーキを水300部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は500部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム100部を加え、20分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ91.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール728部、水182部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ46.1部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(12)で表される有機アミン42.1部(HPLC純度95.6%)の白色粉末を得た。
(工程2)
下記式(11)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yがフェニル、R1がヒドロキシエチルである色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水200部中に実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして得たウェットケーキ43.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例4(工程1)で得た式(12)の有機アミン5.6部を28%アンモニア水1部及び水40部の混合液に溶解した溶液をこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の液量は290部であった。反応液を60℃に昇温し、塩化ナトリウム25部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ111.8部を得た。得られたウェットケーキを水180部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH10.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は300部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム22.5部を加え30分撹拌した後、濃塩酸にてpH8.8に調整し、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ54部を得た。得られたウェットケーキを2−プロパノール432部、水108部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ32.8部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、前記式(13)で表される色素の遊離酸9.1部を青色粉末として得た。
λmax:602nm。
[実施例5]
(工程1)
下記式(14)で表される有機アミン[前記式(3)におけるEがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yが2−フリル、R1が水素原子である有機アミン]の合成。
Figure 2011190429
氷水100部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−50(0.1部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン29.5部を加え25%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜2.5としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にフルフリルアミン10.2部を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5〜7.0としながら25〜30℃で一晩反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た二次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸210部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は850部であった。この反応液に塩化ナトリウム170部を加えた後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ152.1部を得た。得られたウェットケーキを水350部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は500部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム100部を加え、50分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ168.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール400部、水100部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ103.6部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(14)で表される有機アミン34.6部(HPLC純度94.4%)の白色粉末を得た。
(工程2)
下記式(15)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yが2−フリル、R1が水素原子である色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水200部中に実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして得たウェットケーキ41.9部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例5(工程1)で得た式(14)の有機アミン7.7部を28%アンモニア水1部及び水40部の混合液に溶解した溶液をこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の液量は300部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム50部を加え10分撹拌した後、濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ61.2部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は275部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム55部を加え30分撹拌した後、濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ51.2部を得た。得られたウェットケーキを2−プロパノール320部、水80部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ31.9部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、前記式(15)で表される色素の遊離酸10.6部を青色粉末として得た。
λmax:607nm。
[実施例6]
(工程1)
下記式(16)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環、Qが3.0であり、置換位置の特定されていないスルホ基がβ位に置換した化合物の合成。
四つ口フラスコに、スルホラン250部、4−スルホフタル酸73.86部(50%水溶液として得られる市販品を使用)、28%アンモニア水11.0部を加え、200℃に昇温し、同温度で2時間反応した。その後65℃まで冷却し、シンコメロン酸8.35部、尿素72部、酢酸銅(II)9.1部、モリブデン酸アンモニウム1部を加え、再度200℃へ昇温し、同温度で5時間反応した。反応終了後65℃まで冷却し、メタノール50部を加え、析出固体を濾過分離し、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ106.1部を得た。得られたウェットケーキ全量を水343部、塩酸57部、塩化ナトリウム100部に加え、60℃に昇温し、同温度で一時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキをメタノール400部、25%水酸化ナトリウム水溶液100部の混合溶媒中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ76.5部を得た。得られたウェットケーキをメタノール540部、水60部の混合溶媒中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ72.0部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物31.2部を青色固体として得た。
λmax=623nm。
Figure 2011190429
前記式(16)中、環A乃至Dは前記式(1)に記載のものと同じ意味を表し、Qは1.0以上4.0未満である。
(工程2)
前記式(2)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環、nが3.0であり、置換位置の特定されていないクロロスルホニル基がβ位に置換した化合物の合成。
クロロスルホン酸70.8部中に、60℃を超えないように実施例6(工程1)で得た化合物8.85部を徐々に加え、120℃へ昇温し、4時間反応を行った。反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、80℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水1200部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水150部で洗浄することにより、目的とする化合物のウェットケーキ48.0部を得た。
(工程3)
下記式(17)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yが2−フリル、R1が水素原子である色素]の合成。
Figure 2011190429
氷水50部中に、実施例6(工程2)で得たウェットケーキ48.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例5(工程1)に準じて得た式(14)で表される有機アミン2.6部を28%アンモニア水1部及び水60部の混合液中に溶解した溶液をこの縣濁液に加え、10%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度でさらに8時間反応した。この時の反応液の液量は225部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム45部を加えて30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出した固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄することによりウェットケーキ35.8部を得た。得られたウェットケーキを水170部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整し、溶液とした。このときの液量は225部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム11.3部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出した固体を濾過分離し、5%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ60.5部を得た。得られたウェットケーキをメタノール360部及び水40部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ41.0部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、式(17)で表される色素の遊離酸9.6部を青色粉末として得た。
λmax:610nm。
[(A)インクの調製]
下記表6に記載の各成分を混合溶解し、0.45μmのメンブランフィルター(アドバンテック社製)で濾過する事により評価試験用のインクを調製した。インクの調製における「水」は、イオン交換水を使用した。又、インクのpHが8〜10となるように水酸化ナトリウムで調整し、総量が100部になるように水を加えた。実施例1で得た色素を用いたインクの調製を実施例7、同様に、実施例5及び6で得た色素を用いたインクの調製を、それぞれ実施例8及び9とする。また、下記の合成例1に記載の方法で、特許文献17の実施例3に記載の色素と同じ構造式であり、且つ、本発明の各実施例で得た色素と環A乃至Dにおけるピリジン環の数を同じに調整した下記式(19)で表される比較用色素1を得た。実施例で得た各色素の代わりに、式(19)の比較用色素1を用いる以外は実施例7乃至9と同様にして、比較用のインクを得た。この比較用インクの調製を比較例1とする。
なお、下記表6中、「界面活性剤」は、日信化学(株)社製、商品名サーフィノールRTM104PG50を使用した。
Figure 2011190429
[比較用色素の合成]
以下に比較用の色素の合成方法を記載する。
[合成例1]
(工程1)
下記式(18)で表される比較用有機アミンの合成。
Figure 2011190429
氷水330部中にシアヌルクロライド18.4部、レオコールRTMTD−90(0.2部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。この液に、4−スルホアニリン(純度99.3%の市販品)17.4部を加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.6〜3.0としながら0〜5℃で1時間、pH3.0〜3.5としながら0〜5℃で1時間、さらに同pHを保持しながら25〜30℃で1時間反応を行った。得られた反応液に2−スルホエチルアミン12.6部加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら25℃で2時間反応を行った。この反応液に氷250部を加え、0℃まで冷却し、さらにエチレンジアミン60部を5℃以下で滴下し、室温で一晩反応した後、濃塩酸を用いてpH1.0に調整した。濃塩酸によるpH調整の間は、反応液に氷を加えて発熱を抑え、10〜15℃を保持した。このとき液量は980部であった。この液に塩化ナトリウム190部を加えて30分撹拌し、析出固体を濾過分離しウェットケーキ70.6部を得た。得られたウェットケーキを水280部に加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶液とした。このとき液量は400部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム80部を加えて30分撹拌し、析出固体を濾過分離してウェットケーキ110.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール260部及び水26部の混合液中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ89.1部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする比較用有機アミン35.4部の白色粉末を得た(HPLC純度87.0%)。
(工程2)
下記式(19)で表される比較用色素[式(19)における環A乃至Dのうち1.4が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.6がベンゼン環である色素。]の合成。
Figure 2011190429
氷水100部中に、実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして得たウェットケーキ31.5部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、この液に、式(18)で表される比較用有機アミン7.5部を28%アンモニア水2部及び水50部中に溶解した溶液を加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度で8時間さらに反応した。この時の液量は225部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム33.7部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH2.0に調整し、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ46.1部を得た。得られたウェットケーキを水150部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整し溶液とした。このときの液量は225部であった。得られた溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム22.5部を加えて30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ44.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ25.2部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、目的とする式(19)で表される比較用色素の遊離酸9.8部を青色粉末として得た。
λmax:604nm。
[(B)インクジェット記録]
各実施例、及び比較例で調製したインクをインクジェットプリンタ(キヤノン社製、商品名:PIXUSRTM ip4500)を用いて、下記5種類の光沢紙にインクジェット記録を行なった。
光沢紙A:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]。
光沢紙B:富士フィルム株式会社製、商品名:画彩写真仕上げPro。
光沢紙C:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)。
光沢紙D:ブラザー工業株式会社製、商品名:写真光沢紙BP71G。
光沢紙E:日本ヒューレット・パッカード社製、商品名:アドバンスフォト用紙(光沢)。
インクジェット記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得て、これを試験片とした。
耐オゾン性試験の際には、試験前の記録物の印字濃度(Dc)を測定し、55%の階調部での色素残存率を求めた。
また、印字濃度は測色システム(SpectroEye、X−rite社製)を用いて測色した。測色は、濃度基準にANSIA、視野角2°、光源D65の条件で行なった。
記録画像の各種試験方法及び試験結果を以下に記載する。
[(C)記録画像の評価]
1.耐オゾン性試験
各試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度40ppm、槽内温度23℃、湿度50%RHで16時間放置した。試験後に前記測色システムを用いて、試験前後での印字濃度(Dc)を測色し色素残存率を求めた。色素残存率は、より大きい数値のものが、より優れる。結果を下記表7に示す。色素残存率は以下の式により算出した。
色素残存率=(試験後印字濃度/試験前印字濃度)×100(%)
Figure 2011190429
表7の結果から明らかなように、全ての光沢紙において、各実施例は比較例より色素残存率に優れていることがわかった。実施例7及び8は環A乃至Dが2位及び3位でポルフィラジン環に縮環した構造を有する本発明の色素であり、光沢紙A及び光沢紙Cにおいて、比較例よりおよそ10%増し以上の色素残存率と優れる。また、実施例9は環A乃至Dが3位及び4位でポルフィラジン環に縮環した構造を有する本発明の色素であり、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の比率が実施例7及び8よりも低いものであるが、耐オゾン性は各実施例の中でも最も高く、含窒素複素芳香環の縮環位置によっても耐オゾン性に違いを生じることが確認された。
これにより、本発明の色素及びこれを含有するインク組成物により記録された画像は、耐オゾン性において極めて優れることが明らかとなった。
[実施例10]
(工程1)
前記式(4)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環で表される化合物の合成。
スルホラン400部に、無水フタル酸44.4部、シンコメロン酸16.7部、尿素144部、塩化銅(II)13.4部、及びモリブデン酸アンモニウム2.0部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間反応した。反応終了後65℃まで冷却し、DMF80部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF220部で洗浄し、ウェットケーキ112.1部を得た。得られたウェットケーキをDMF340部に加え、110℃に昇温し、同温度で一時間攪拌した後、固体を濾過分離し、水300部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%塩酸300部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した後、固体を濾過分離し、水300部で洗浄してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%アンモニア水300部中に加え、60℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離し、水300部で洗浄し、ウェットケーキ138.2部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的化合物46.3部を青色固体として得た。
(工程2)
前記式(2)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環であり、nが3.0である化合物の合成。
室温下、クロロスルホン酸46.2部中に、60℃を超えないように実施例10(工程1)で得た式(4)の化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応した。得られた反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間で滴下し、70℃でさらに3時間反応した。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的化合物のウェットケーキ33.0部を得た。
(工程3)
前記式(15)で表される本発明のポルフィラジン色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.0が3位及び4位で縮環したピリジン環、残り3.0がベンゼン環、Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、aが1の整数、基Yが2−フリル、R1が水素原子である色素]の合成。
氷水120部中に、実施例10(工程2)で得たウェットケーキ33.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、実施例5(工程1)と同様にして得た式(14)で表される有機アミン2.6部を28%アンモニア水1部及び水40部の混合液中に溶解した溶液を、この縣濁液に加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度でさらに8時間反応した。この時の反応液の液量は230部であった。この反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム46部を加えて30分撹拌した後、濃塩酸にてpH3.5に20分で調整し、析出した固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液200部で洗浄することによりウェットケーキ41.0部を得た。得られたウェットケーキを水170部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整し、溶液とした。このときの液量は225部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム11.3部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出した固体を濾過分離し、5%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ59.8部を得た。得られたウェットケーキをエタノール240部及び水60部の混合液に加えて懸濁液とし、この液を50℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離し、ウェットケーキ26.8部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、目的とする色素の遊離酸9.8部を青色粉末として得た。
λmax:607nm。
[実施例11]
実施例10で得られた色素を用い、前記「(A)インクの調製」における実施例7乃至9と同様にして、評価試験用のインクを調製した。このインクの調製を実施例11とする。
実施例11のインクを用い、実施例7乃至9と同様にして、前記[(B)インクジェット記録]で試験片を得た後、[(C)記録画像の評価]における耐オゾン性試験を行ったところ、その試験結果は実施例7乃至9と同等の極めて優れた結果を示した。
本発明のポルフィラジン色素及びこれを含有するインク組成物により得られた記録画像は、耐オゾン性に優れるため、各種記録用のインク、特にインクジェット記録に用いるインクとして極めて有用である。

Claims (18)

  1. 下記式(1)で表されるポルフィラジン色素又はその塩、
    Figure 2011190429
    [式(1)中、
    破線で表される環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0より大きく3.0以下であり、残りはベンゼン環であり、
    Eはアルキレンを表し、
    Xは、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基か、カルボキシ基か、又はリン酸基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
    1は、水素原子;又は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C6アルキル基;を表し、
    基Yは、置換基として、スルホ基及びカルボキシル基よりなる群から選択される基を有してもよいフェニル基;ピリジル基;チエニル基;又はフリル基;を表し、
    aは1〜6の整数であり、
    bは平均値で0.0以上3.9未満であり、
    cは平均値で0.1以上4.0未満であり、
    且つb及びcの和は、平均値で1.0以上4.0未満である。
    但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基若しくはピリジル基である組み合わせを除く。]。
  2. 環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である請求項1に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
  3. 下記式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、下記式(3)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させて得られる請求項1又は2に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
    Figure 2011190429
    [式(2)中、環A乃至Dは請求項1に記載のものと同じ意味を表し、nは平均値で1.0以上4.0未満である。]、
    Figure 2011190429
    [式(3)中、E、X、R1、基Y、及びaは請求項1に記載のものと同じ意味を表す。]。
  4. Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
    Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、及びアルキルスルホニル基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜4つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
    1は、水素原子;又は、置換基として、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C6アルキル基;であり、
    基Yが、スルホ基及びカルボキシ基から選択される基で置換されてもよいフェニル基;又はフリル基;であり、
    aが1又は2の整数である、請求項1又は2に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
    但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く。
  5. Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
    Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、
    1が、水素原子;又は、カルボキシ基及びヒドロキシ基から選択される1又は2種類の基を有してもよい、フェニルメチル基若しくはC1−C4アルキル基;であり、
    基Yが、フェニル基又はフリル基である、
    請求項4に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
    但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く。
  6. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環、又は2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
    Eがエチレン又はプロピレンであり、
    Xが、置換基として、スルホ基、ニトロ基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される1又は2種類以上の基を1〜3つ有してもよく、且つ、前記の群から選択される基のうち、少なくとも1つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基である、
    請求項1又は2に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
  7. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
    Eがエチレン又はプロピレンであり、
    Xが、1〜3つのスルホ基を有するアニリノ基である、請求項1又は2に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
  8. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
    Eがエチレン又はプロピレンであり、
    Xが、1〜3つのスルホ基又はカルボキシ基を置換基として有する、アニリノ基若しくはナフチルアミノ基であり、
    1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
    基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
    aが1又は2の整数であり、
    bが平均値で0.0以上3.9未満であり、
    cが平均値で0.1以上4.0未満であり、
    且つb及びcの和が、平均値で1.0以上4.0未満である、請求項1に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
    但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く。
  9. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
    Eがエチレンであり、
    Xが、1〜3つのスルホ基を置換基として有するアニリノ基であり、
    1が、水素原子;フェニルメチル基;又は、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキル基;であり、
    基Yが、フェニル基又はフリル基であり、
    aが1の整数であり、
    bが平均値で0.0以上3.9未満であり、
    cが平均値で0.1以上4.0未満であり、
    且つb及びcの和が、平均値で1.0以上4.0未満である、請求項1に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
    但し、R1が水素原子であり、且つ、基Yがフェニル基である組み合わせを除く。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩を、色素として含有することを特徴とするインク組成物。
  11. さらに有機溶剤を含有する請求項10に記載のインク組成物。
  12. インクジェット記録に用いる請求項10又は11に記載のインク組成物。
  13. 請求項10乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させ、記録を行うインクジェット記録方法。
  14. 被記録材が情報伝達用シートである請求項13に記載のインクジェット記録方法。
  15. 情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、該シートが支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである請求項14に記載のインクジェット記録方法。
  16. 請求項10乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器。
  17. 請求項16に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ。
  18. i)請求項1乃至9のいずれか一項に記載の色素またはその塩、
    ii)請求項10乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、
    iii)請求項13に記載のインクジェット記録方法、
    の前記i)乃至iii)のいずれかにより着色された着色体。
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