JP2011189876A - ハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】駅からの発車の際に、モータのみで走行することを確保して、騒音や排気ガスの発生を低減することができる低廉なハイブリッド軌道車両の走行制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】停車中の列車21がプラットホーム22から発車する際には、エンジンは停車状態であり、蓄電池に蓄えられたエネルギーを使用して、列車はモータ駆動により速度0から加速される。駅構内に設置されている分岐器23には、分岐器制限速度として例えば45km/hが設定されている。列車が発車後加速し、分岐器23に差し掛かる前に、例えば40km/h程度で主幹制御器がノッチオフとされ、列車は惰行状態となる。列車21の最後部が分岐器23を通過するまでこの状態が維持され、通過後ノッチアップし列車は加速する。完全に列車が分岐器23を通過後に、エンジンが起動し、エンジン駆動により加速する。
【選択図】図2

Description

この発明は、エンジンとバッテリ等の電力供給源からの電力供給で駆動されるモータとを含むハイブリッド駆動システムを備え、エンジン又はモータの少なくとも一方からの動力で軌道車両を推進するハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法に関する。
従来、鉄道の気動車については、駅構内であっても、運転休止以外は、補機の運転などのためにディーゼルエンジンを運転し続ける必要があった。また、気動車の発進時には、加速が必要とされるので、ディーゼルエンジンの出力が大きくなり、それだけエンジンの騒音や排気ガスの放出量も大きくなる。駅構内の環境改善のため、駅構内においてエンジンを運転する場合には、その運転に伴って発生する騒音や排出される排気ガスを軽減することが望ましい。
ハイブリッド軌道車両の場合には、ディーゼルエンジンの他にバッテリ等の電力供給源から供給される電力によってモータを駆動することができるので、駅を出発する場合には、エンジンを停止させておいてモータの出力によって車両を運転し、駅構内を出てからディーゼルエンジンを始動して、運転モードをモータ駆動モードからエンジン運転モードに切り換えることができる。このような運転モードの選択/切換えによって、駅構内での騒音や排気ガスを抑制した運転が可能になる。
ハイブリッド軌道車両の運転方法として、停車駅から車両を発進させてその後ある速度まで加速する場合には、電力供給によってモータで駆動し、この間、エンジンを停止状態またはアイドリング運転とすることでエンジン騒音を抑制する運転方法が採られている。車両の走行速度がある速度を超えると、エンジンが起動、又はアイドリング運転から離脱して、エンジン駆動により車両を加速する。車両が次の停止駅に接近し、ブレーキにより減速する場合には、エンジンを停止またはアイドリング運転とし、駆動用モータを発電動作させることで、車両の慣性エネルギーが蓄電池に回収される。蓄電池に蓄えられたエネルギーは、次駅発車の際の動力として使用される。
ハイブリッド型軌道車両では、ディーゼルエンジンとモータを別々の車軸を駆動するようにして、ディーゼルエンジンにはアイドリング時に蓄電池を充電する発電機を設けることで、蓄電池容量を小さくしつつ車体重量の増加を招かずに、燃料消費量を低減するとともに駅構内や駅前後の市街地での騒音や排気ガスを低減することを図っているものが提案されている(特許文献1参照)。
ハイブリッド車両のモータによる駆動システムは、動力エネルギーを蓄える蓄電池、リアクトル、断流器、インバータ装置、モータ等により構成されている。これらの駆動システムの出力、及び蓄電池容量は、駅から発車するハイブリッド車両がどの程度の速度までモータ駆動により走行し、どの程度の速度でモータ駆動からエンジン駆動に切り換えるかに依存しており、この切換速度が高くなるほどシステムは大型化し、重量も増加するとともにコストも高くなる。
ハイブリッド軌道車両については、モータ駆動モードとエンジン駆動モードとの切換を如何に行うかについて合理的且つ効果的な設計手法がないのが現状である。システムが大型化すると、車両への艤装が困難になったり、重量増加により到達時間の伸長、燃費の悪化等、ハイブリッド軌道車両のメリットが十分に発揮されない場合もある。
特開2000−350308号公報
駅でのディーゼルエンジンの運転に起因する騒音や排気ガスの低減を目的として、ハイブリッド軌道車両を駅構内で走行させることについての最も合理的な方法は、駅ホームを基準とした車両の相対位置に対してエンジンを停止し且つモータ駆動により走行する区間を予め定めておき、この区間情報を地上から車両へ伝送または固定情報として車両の制御装置に記憶しておく方法である。ディーゼルエンジンの運転区間が限定され、利用客が居る駅のホームを運転区間から外すことなどによって、ハイブリッド軌道車両が駅構内において出す騒音や排気ガスが駅利用客へ及ぼす影響の低減を図ることができる。
これらの地点検出システムは、車両に専用の検出装置を持ち、地上に配置された地上子などの設置位置情報をこの検出装置に記憶させ、車両走行時に適宜補正し使用している。車上装置に記憶されている地上子の位置データは、実際に車両を走行線区全線にわたって走行させ、その際に得られたもの使用しているが、地上子について設置位置の変更、増設等のたびにメンテナンスが必要であり、データの取得それ自体とともにデータ取得環境の確保等について多くの労力を要する。一方、検出システムとしては、特別の検出装置が必要であり、地上設備に依存するためある程度のメンテナンスが必要であることから、低廉な方法とは言い難い。即ち、モータ駆動からエンジン駆動(モータ駆動との併用を含む)への切換速度を一律的でなくそのときどきで決定する場合には、車両がホームを確実に通過したか否かを確認する別の仕組みや位置を検出するための地上側設備が必要となる、或いは列車がホーム端を確実に通過するように機器容量に過大な余裕を持たせて設計する、最適な切換速度を決定するために切換速度や機器容量などの様々なパラメータを変化させて複雑なシミュレーションを実施する、といった不確実で且つ煩雑な方法を取ることになる。
そこで、ハイブリッド軌道車両の駅でのエンジン騒音低減、排気ガス低減を、特殊な地点検出システムを用いることなく低廉かつ合理的に実現することについて解決すべき課題がある。また、モータ駆動からエンジン駆動への切換速度の設定は、駆動システム自体のイニシャルコストに大きく影響することから、システムのイニシャルコスト抑制と駅環境の改善を合理的に実現することも課題である。
この発明の目的は、ハイブリッド軌道車両が駅から発車する際に、少なくとも列車が駅のプラットホームに掛かっているような状況では、モータのみで走行することを確保して、エンジンから発生する騒音や排気ガスを低減することができる低廉なハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法を提供することである。
上記の課題を解決し目的を達成するため、この発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法は、バッテリによる電力供給で駆動されるモータとエンジンとを含むハイブリッド駆動システムを備え、前記エンジン及び前記モータの両方からの動力で又はいずれか一方に動力を切り換えて推進されるハイブリッド軌道車両の走行制御方法であって、前記ハイブリッド軌道車両が走行する線区内にある駅構内に配設される分岐器について通過する前記ハイブリッド軌道車両に許容される最大速度として分岐器制限速度が設定されており、前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の走行速度が前記分岐器制限速度に基づいて設定された切換速度に達したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えることを特徴としている。
この発明によれば、分岐器制限速度をもとに切換速度を設定するので、駅構内でモータからの動力のみで発進したハイブリッド軌道車両は、駅構内に配設された分岐器に設定された制限速度に基づいて設定された切換速度を超えるまでは、エンジンが起動しないように容易に設定することができる。
中規模駅以上の駅では、駅構内に分岐器が配設されており、駅構内での列車の行き違いを可能にしている。すべての分岐器には通過時の乗客の乗心地上許容される最大速度である分岐器制限速度が設定されており、列車は、分岐器を通過する際には、先頭車が分岐器を通過し又は最後尾の車両が通過するまでこの制限速度以下で走行する。本発明による走行制御方法では、こうした駅構内に配設されている既存の分岐器を検出することで、当該分岐器の設置位置と制限速度とをハイブリッド軌道車両の駆動システムの制御情報として活用する。ハイブリッド軌道車両は、駅を発車又は駅を通過の後、分岐器を通過するまでのような駅構内走行区間においては、分岐器制限速度を超えないようにモータ駆動によってのみ走行制御され、分岐器を通過後にはエンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えられる。
また、この発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法は、前記条件を満たすことに加えて、前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の最後尾が当該駅のホーム端を通過したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えること、を特徴としている。この走行制御方法によれば、たとえハイブリッド軌道車両の走行速度が先に切換速度に達した(即ち、この場合には、ホームを通過し終わる前に、車両が分岐器を通過して速度が上昇した)としても、ハイブリッド軌道車両の最後尾が駅のホーム端を通過した後でなければ、モータの動力のみでの走行からエンジンの動力のみによる駆動又はモータとエンジンの両方の動力による駆動へと切り換えられることはない。したがって、ホーム上に居る利用客がエンジンの騒音や排気ガス等の影響を受けることを確実になくすことができる。
上記のハイブリッド軌道車両の走行制御方法において、エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動への切り換えは、切換速度の値自体を含めて、線区内のモータ発進をする複数の駅についてすべての駅で同じ切換に設定してもよいが、駅毎に或いは番線毎に個別に設定することができる。また、一つの駅の構内には、たとえ一つの走行線路に沿う場合であっても複数の分岐器があり、それぞれ分岐器制限速度が異なる場合もある。そうした場合には、それら複数の分岐器制限速度の中から、ホーム端に最も近い分岐器についての分岐器制限速度、最も速度の速い分岐器制限速度、平均的な分岐器制限速度、或いは最も頻度が高く現れる分岐器制限速度に基づいて切換速度を設定することができる。最も遅い分岐器制限速度を選択する場合には、バッテリ等の機器容量を小さく設計することができるが、車両がホームにまだ掛かっているときにエンジンに切り換えられる可能性があるのでそのようなことがないように設定する。
更にまた、この発明によるハイブリッド軌道車両は、バッテリによる電力供給で駆動されるモータとエンジンとを含むハイブリッド駆動システムを備え、前記エンジン及び前記モータの両方からの動力で又はいずれか一方に動力を切り換えて推進されるハイブリッド軌道車両であって、前記ハイブリッド軌道車両が走行する線区内にある駅構内に配設される分岐器について通過する前記ハイブリッド軌道車両に許容される最大速度として分岐器制限速度が設定されており、前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の走行速度が前記分岐器制限速度に基づいて設定された切換速度に達したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えることを特徴とする。
この発明によるハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法は、上記のように構成されており、分岐器制限速度をもとに切換速度を設定するので、駅構内に配設された分岐器に設定された制限速度に基づいて設定された切換速度を超えるまでエンジンが起動しないようにする、即ち、端的には分岐器を通過するまではエンジンを起動しないように容易に設定することができる。本発明では上記切換速度を一意に決定するので、バッテリやモータ定格などについて機器の容量をその切換速度に見合ったものにするという決定を比較的に容易に行うことができる。また、既存の分岐器情報が有効活用され、地上側及び車両側のいずれにおいても専用の位置や速度情報を与える機器を設置し且つ維持メンテナンスをする必要もなく、駅構内への到着・通過又は駅構内からの発車の際、少なくとも軌道車両がプラットホームに掛かっている状況ではモータ駆動モードで発車することで、低廉で容易且つ確実に駅騒音、排ガスを低減することができる。そして、モータ駆動からエンジン駆動(モータ駆動との併用を含む)への切換速度を一律的でなくそのときどきで決定するような場合と比べて、煩雑な仕組みや設備を要することがなく、システムを簡素に構成することができる。
また、このハイブリッド軌道車両における走行制御方法において、分岐器制限速度がハイブリッド軌道車両の機器容量等の走行条件から定められる所定速度(切換速度)以上の高い速度である場合や、ハイブリッド軌道車両の最後尾が駅のホーム端を通過する前に切換速度に達する場合には、安価に停車駅及び番線を認識させることができ、加速性能を制限することで目的を達成することができる。ハイブリッド駆動システムのシステム重量、コストは切換速度に強く依存する。駅分岐器の制限速度を基準としたシステムの制御方式により、確実かつ安価に駅構内の環境改善が実現できる。また、ハイブリッド軌道車両のシステム重量やコストは切換速度の高さに強く依存することから、モータ駆動区間を必要十分に設定することで重量、コスト等の最小化が可能となる。駅によって分岐器制限速度が変わる場合や分岐器制限速度が高くシステム容量が高くなる場合にも安価に対応することができる。
本発明によるハイブリッド軌道車両の駆動システムの概要を説明する模式図である。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法の態様を示す模式図である。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法が適用される代表的な駅構内に設置された分岐器の模式図である。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法において、分機器制限速度に応じた、駆動力切換を説明する図である。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れを示すフローチャートである。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの一例を示すフローチャートである。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの別の例を示すフローチャートである。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの更に別の例を示すフローチャートである。 本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法におけるシステム設計を示すフローチャートである。
以下、添付した図面に基づいて、この発明によるハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法の実施例を説明する。図1は、この発明によるハイブリッド軌道車両の駆動システムの概要を説明する模式図である。図1に示すハイブリッド軌道車両1は、例えば、台枠2の台車3、3間の下面に、駆動系統として、エンジン(ディーゼルエンジン)4と、エンジン4の出力が入力されて変速を行うアクティブシフト変速機5と、変速機5の出力によって回転される推進軸6と、推進軸6からの回転軸の入力を受けて輪軸に減速・伝達する減速機7とを備えている。ハイブリッド軌道車両1は、また、バッテリ10とバッテリ10に接続されているコンバータ/インバータ11と、コンバータ/インバータ11に接続されていてアクティブシフト変速機5に連結されたモータ(発電機)12とを備えている。
ハイブリッド軌道車両1には変速機制御装置15が備わっており、変速機制御装置15は車輪からその回転に基づく速度情報の入力を受けるとともに、コンバータ/インバータ11、エンジン4及びアクティブシフト変速機5との間で情報及び制御信号の遣り取りをする。即ち、変速機制御装置15は、インバータ制御装置16、エンジン制御装置17を介して、それぞれコンバータ/インバータ11、エンジン4からの情報を得るとともにコンバータ/インバータ11、エンジン4に制御指令を出力している。変速機制御装置15は、またアクティブシフト変速機5からの情報を得るとともに変速機5に変速制御指令を出力している。なお、ここではアクティブシフト変速機5を備えたハイブリッド軌道車両を例に挙げているが、それによらず、ある輪軸にはエンジンの駆動力が、別の輪軸にはモータの駆動力が伝えられるようなタイプのハイブリッド軌道車両であっても良い。
ハイブリッド軌道車両1がエンジン4で駆動走行するとき、下り勾配の軌道を走行するとき、或いはブレーキをかけたときには、余剰の出力やブレーキ力はモータ12を発電機として駆動して、発生した電力はコンバータ/インバータ11を介してバッテリ10に蓄えることができる。なお、バッテリ10に蓄えられている電力でモータ12を駆動し、アクティブシフト変速機5を介して推進軸6を駆動するときには、ハイブリッド軌道車両1はモータ駆動で駆動されるが、このとき、エンジン4は停止していても良いし、必要に応じてアイドル回転などで静かに回転していてもよい。また、ハイブリッド軌道車両1がエンジン4で駆動走行するときは、モータ12は駆動力を出力していなくても良いし、エンジン出力をアシストするため駆動力を出力(アシスト走行)しても良い。
図2はこの発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法の態様を示す模式図である。図2に示すハイブリッド軌道車両及びその走行制御方法は、ある駅(A駅)構内20のプラットホーム22に停車するハイブリッド軌道車両の編成で成る列車21が発車する際の速度の変化とエンジンの制御状態を示している。停車中の列車21がプラットホーム22から発車する際には、エンジンは停止状態で、バッテリに蓄えられたエネルギーを使用し、モータ駆動により速度0からほぼ直線的に列車速度が上昇する。駅構内20にはいくつかの分岐器が設置されているが、図2では、一つの分岐器23の制限速度が45km/hに設定されている場合を示している。図示の例では、プラットホーム22に停車している列車21の先頭車21aの前端は、ホーム端22aから、9番線の場合には28.2m、10番線の場合には30.2mの位置にある。また、発車してから、加速度α=1.5km/h/sで加速して150m走行したときに速度Vは40.3km/hに達し、このとき、列車21の最後尾車両21bがホーム端22aを通過する。また、分岐器23はそれよりもホーム端22aから遠い側に設置されている。
分岐器23の制限速度が45km/hであるため、列車21が発車後加速し分岐器23に差し掛かる前に、運転士は列車速度が45km/hに達する前(例えば40km/h程度)に主幹制御器をノッチオフし、列車21は惰行状態となる。運転士は列車21の最後尾21bが分岐器23を通過するまでこの走行状態を維持し、分岐器23を通過後に主幹制御器をノッチアップし、列車21は加速する。モータ駆動からエンジン駆動に移行する切換速度を分岐器23の制限速度と同じである45km/hとすると、列車21が完全に分岐器23を通過後にモータ駆動で僅かに加速して走行速度が45km/hに到達した時点でエンジンが起動し、エンジン駆動により加速する。このように切換速度を分岐器制限速度以上の速度(分岐器制限速度自体、又はそれに基づいて設定されたより速い速度)に設定することで駅構内20でエンジンを起動させない制御を実現することができる。
図3は、この発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法が適用される代表的な駅構内に設置された分岐器の模式図である。駅構内において、分岐器は例えば図3(a)のように設置されており、通常は駅プラットホーム端よりも遠方にある。
図4には、図3に対応して、分岐器制限速度と切換速度との設定について幾つかのパターンを示している。図4(a)は分岐器制限速度が45km/hである例を、図4(b)は分岐器制限速度が20km/hである例を、そして、図4(c)は分岐器制限速度が80km/hである例を示している。図中の○で示す地点及び速度でモータ動力による駆動から、エンジンの動力のみによる駆動又はモータとエンジンの両方の動力による駆動へと切り換わることを示している。
図3(a)及び図4(a)に示す列車Aの場合には、分岐器の分岐程度が急であり、分岐器制限速度が比較的低速(例えば、45km/h)である場合を示す。このため、ハイブリッド軌道車両がモータ走行からエンジン走行に切り換る速度、即ち、切換速度を分岐器制限速度以上に設定(例えば分岐器制限速度と等しい速度45km/h)すれば、駅に停車した列車Aがモータで発車し、列車の最後尾が分岐器を通過するまで、列車速度は分岐器制限速度を超過することがない。そのため、列車Aは、エンジンは起動せずにモータのみで走行させることが可能となる。切換速度を分岐器制限速度に対して設定するだけで、列車位置を検出するなどの特別な地点検出装置を使用することなく、ハイブリッド軌道車両の駅構内での騒音、排気ガスを低減することができる。
図3(b)及び図4(b)は、分岐程度が更に急であり、分岐器制限速度が更に低い分岐器(例えば、分岐器制限速度と等しい速度20km/h)を通過して発車する場合を示す図である。上記と同様に、切換速度を分岐器制限速度以上に設定(例えば20km/h)すれば、駅に停車した列車Bがモータで発車し、列車の最後尾が分岐器を通過するまで、列車速度は分岐器制限速度を超過することがない。
図3(b)に示す場合には、分岐器制限速度も切換速度も低く、そのため、少ない蓄電池容量、システム出力で駅騒音、排ガス低減を実現することができる。
図3(c)は非分岐側を通過して発車する場合を示す図である。上記と同様に、切換速度を分岐器制限速度以上に設定(図4(c)に示すように、例えば分岐器制限速度と等しい速度80km/h)すれば、駅に停車した列車Cがモータで発車し、列車の最後尾が分岐器を通過するまで、列車速度は分岐器制限速度を超過することがない。
分岐器の制限速度は駅、番線により異なる場合が通常であるため、発車後通過する分岐器の分岐器制限速度を知るために、列車が備える列車情報等記憶手段から分岐器制限速度を読み出し、それに応じて切換速度を可変させる。つまり、分岐器制限速度が45km/hの場合は切換速度を45km/hに、分岐器制限速度が20km/hの場合は切換速度を20km/hにする。なお、切換速度は分岐器制限速度と全く同じでなくても良く、ある一定の値を加減しても良いし、ある一定の値を乗じても良い。なお、列車は、何らかの通信手段で地上側から分岐器制限速度を直接入手しても良いし、番線に対応した分岐器制限速度のデータベースを持っていて地上側から入手した番線の情報と照合し、分岐器制限速度を特定しても良い。
なお、簡便のため切換速度を可変とせず、例えば45km/hに固定することで、より容易にシステム設計を行うことができるため、コスト削減をしつつ、一定の効果を得ることもできる。なお、切換速度の設定の際には、複数の分岐器制限速度の中から、最も速度の速い分岐器制限速度、平均的な分岐器制限速度、全分岐器制限速度の平均、或いは最も頻度が高く現れる分岐器制限速度に基づいて切換速度を設定することができる。
但し、図3(b)に示すB列車のように、通過する分岐器の速度が低い(例えば20km/h)場合には、分岐器を過ぎても速度が45km/hに達するまでエンジンが起動しないため、列車長やホーム長及び停車位置の情報から列車の最後尾がホーム端を通過するまでの走行距離を算出することで、適切な駆動力切換を行うことができる。
また、図3(c)に示すように、列車Cは分岐器の非分岐側を走行するために、分岐側と比較して制限速度が高い。列車Cは、列車の加速性能が高い場合には列車がプラットホームを離れる前に切換速度に到達しエンジンが起動する可能性がある。列車Cにおいて駅構内でのエンジン起動を回避するためには、車両がどの駅の何番線(または何番ホーム)に停車しているのか、列車が分岐器を通過するまでにどのくらいの距離を走行するのか、を列車側で認識する必要がある。車両が非分岐側を走行していることを認識した場合には、モータの出力を抑制することで分岐器までの列車の速度を低下させ、列車の最後尾がホーム端を離れるまで切換速度に到達しないように制御することが可能となる。また、分岐器制限速度が高い線区を走行する列車、分岐器制限速度の高い停車駅を設定した列車Cの場合には、分岐器制限速度に基づいた切換速度の設定に加えて、列車の最後尾がホーム端を通過したことを判定してエンジン駆動に切り換える制御を行うことで、列車の最後尾がホーム端を離れるまで切換速度に到達しないように制御することが可能である。
停車駅の分岐器制限速度が低いこと、高いこと、及び列車Cのように非分岐側番線を発車することを低コストで認識させるためには、多くの車両が既に保有しているモニタ装置が有するデータを有効活用する方法がある。モニタ装置には、車内の表示器に次の停車駅を表示するための列車情報が組み込まれている。列車情報は、列車番号と停車する駅名、列車の停車番線等の停車駅情報が含まれる。通常は列車毎に停車駅の番線は固定されているため、非分岐側番線に停車することを車両が認識することは可能である。したがって、分岐器制限速度が高い停車駅を識別することが可能である。また、列車ダイヤに乱れが生じ、着発番線が変更となる場合があり、この際にも停車番線の変更に対応した完全な走行制御を行う必要がある場合には、車両にGPSを搭載し、GPSの緯度経度情報と車上に搭載されている各駅番線のマップ情報とを照合することで、非分岐側番線での停車を比較的容易に認識させ且つ比較的安価に実現可能である。
また、一つの駅の構内には、たとえ一つの走行線路に沿う場合であっても複数の分岐器があり、それぞれ分岐器制限速度が異なる場合もある。そうした場合には、それら複数の分岐器制限速度の中から、ホーム端に最も近い分岐器についての分岐器制限速度、最も速度の速い分岐器制限速度、平均的な分岐器制限速度、或いは最も頻度が高く現れる分岐器制限速度に基づいて切換速度を選んで設定することができる。ホーム端に最も近い分岐器についての分岐器制限速度や最も遅い分岐器制限速度を選択する場合には、バッテリ等の機器容量を小さく設計することができるが、車両がホームにまだ掛かっているときに切換速度に到達してエンジンに切り換えられる可能性があるので、切換速度の設定には注意を要する。
図5は、この発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れを示すフローチャートである。車両の走行制御が開始されると、モータ駆動により走行が開始される(ステップ1;「S1]と略す。以下同じ)。列車速度が切換速度よりも大きいか否かが判定される(S2)。S2の判定がNoである場合にはモータ駆動による走行を継続し、S2に戻る。S2の判定がYesである、即ち、列車速度が切り換速度よりも速い速度になっている場合には、エンジン駆動による走行に切り換えられる(S3)。
図6は、本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートによれば、まず、列車情報に基づいて、列車の最後尾車両がホーム端を離れるまでの距離を算出し(S10)、ハイブリッド軌道車両がモータ駆動で走行を開始する(S11)。ハイブリッド軌道車両の走行速度が切換速度を上回っているか否かを判断し(S12)、走行速度が切換速度を上回っている場合には、車両の駆動をエンジンによる駆動とする(S13;それにモータによる駆動を加える場合も含む)。S12の判定で走行速度が切換速度を上回っていない場合には、列車がホーム端を通過したか否かを判断し(S14)、S14において列車がホーム端を通過したと判断した場合には、車両の駆動をエンジンによる駆動とする(S13)。S14において列車がホーム端をまだ通過し切っていないと判断した場合には、S12に戻って走行速度が切換速度を上回るか否かを判断する。この例は、ハイブリッド軌道車両の走行速度をエンジン駆動への切換の主たる条件とするものである。図6に示すフローに代えて、S14の判定をS12の判定結果がYesであるときに行うようにして、S12とS14の両条件をAND条件として満たすときにエンジン駆動への切換を行うようにしてもよい。
図7は、本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの別の例を示すフローチャートである。図7のフローチャートにおいて、S20〜S24は、図6に示すS10〜S14に同じであるので、再度の説明を省略する。なお、S20の次のステップS20aにてシステム設計により最大加速度を設定している。図7に示すフローチャートでは、S24の判断で列車がホーム端をまだ通過し切っていないと判断した場合に、列車の加速度が所定の最大加速度を超えたか否かを判断する(S25)。S25の判断で、列車の加速度が所定の最大加速度を超えていない場合には、S22に戻り、列車の加速度が所定の最大加速度を超えた場合には、加速度を抑制(S26)した上で、S22に戻る。
そうでない場合にはS24については、図6に示す場合と同様、S22の判定結果がYesであるときに行うようにしてもよい(この場合、S24の判定がYesの場合にはS23へ進み、S24の判定がNoの場合にはS25に進む)。
図8は、本発明によるハイブリッド軌道車両の走行制御方法における駆動力切換制御の流れの更に別の例を示すフローチャートである。図8のフローチャートにおいて、S30〜S34は、図7に示すS20〜S24に同じであるので、再度の説明を省略する。図8に示すフローチャートでは、図7に示すフローチャートで行っていた加速度の判断は行わず、バッテリの蓄電量が所定の下限値を下回ったか否かを判断する(S35)。バッテリの蓄電量が所定の下限値を下回る場合には、S33へ移行してエンジン駆動(モータによる駆動を加える場合を含む)を行い、S35の判断でバッテリの蓄電量が所定の下限値を下回ってはいない場合には、S32に戻る。
図9は、ハイブリッド軌道車両の出力制御方法のシステム設計を示すフローチャートである。最初に、モータ駆動モードを行う検討対象駅及び番線の抽出を行う(S40)。次に、モータからの動力のみによる駆動からエンジンの動力のみによる駆動又はモータとエンジンの両方の動力による駆動への切換速度Vm及びVmまでの加速度αvmを仮定して(S41)モータ特性の算出を行う(S42)。この例では、モータ特性は、最高速度Vmまでは一定の加速度αvmであり、それ以上の走行速度については加速度が減衰する特性とする。次に、モータ単独走行の最高速度Vmが分岐器制限速度Vcよりも大きいかどうか判断する(S43)。すなわち、モータ単独走行によって分岐器制限速度に到達するか否かを判断する。
Vm>Vcが成立する場合、即ち切換速度Vmよりも分岐器制限速度Vcが低く、列車最後部が分岐器を通過するまではエンジン起動速度に到達しない場合は、分岐器制限速度Vcまでの消費電力量を算出する(S44)。一方、Vm>Vcが成立しない場合、即ち分岐器制限速度Vcが高く、Vcに達する前に切換速度Vmに達してしまう場合は、Vmまでの加速距離L’を算出し(S45)、L’が停車位置からホーム終端までの距離に編成長を加えた距離Lよりも長いことをチェックする(S46)。
L’>Lが成立する場合は、列車速度が切換速度Vmになり、エンジン起動速度に達する時には、既に列車最後部がホーム終端を通過していることになり、騒音等の問題が発生せず、αvmの設定に問題が無いため、引き続き、Vmまでの消費電力量を算出する(S47)。一方、L’>Lが成立しない場合、すなわち列車の速度がVmに到達し、エンジン起動するときに列車の最後部がホーム終端にかかっている場合は、駅、番線ごとのαvmを低い値に再設定し(S51)、モータ特性を再度算出した後、L’>Lの関係が成立するまで、αvmを低減する(S52)。
S44又はS47においてVcあるいはVmまでの消費電力量の算出を終えたなら、システム重量、体積、価格、艤装、走行性能、メンテナンスなどに問題がないか確認する(S48)。問題が無ければ、駅、番線ごとのαvmを決定し、データベースに記憶する(S49)。一方、問題がある場合は、S41に戻って再度、Vm及びVm時の加速度αvmを仮定し、上記のフローを実行する。
以上のシステム設計フローを全ての検討対象駅、番線に対して行い(S50)、他の検討対象駅、番線があるかチェックをし、なければシステム設計終了となり、Vm及びそれぞれの駅、番線に対するαvmのデータベースが車両の制御装置に構築される。このように、モータ駆動区間を必要十分に設定することで重量、コスト等の最小化が可能となる。駅によって分岐器制限速度が変わる場合や分岐器制限速度が高くシステム容量が高くなる場合にも安価に対応することができる。
次に、車両の制御フローについて説明する。まず、列車が駅に停車したことを検知する。モニタ装置には通常、停車駅情報が記録されており、通常は列車の停車番線は固定されているため、停車駅および番線を識別することが可能である。また、停車番線の変更に対応する必要がある場合には、車両にGPSを搭載し、車上に各駅および番線のマップ情報を搭載し照合することで、停車番線の認識を行う。
次に、システム設計のフローで行った停車駅及び番線毎の加速度パターンを呼び出し車両の制御装置に設定する。列車速度とVmの比較を常に行い、列車速度がVmを超えるまではモータ走行モードによる走行を、列車速度がVmを超えた場合はエンジン走行モードあるいはアシスト走行モードに移行する。走行が終了するまで、駅停車を検知するたびに以上の制御を繰り返し、車両制御を終了する。
なお、駅に進入するときも、エンジンを停止して進入することで、更に駅での騒音や排気ガスの発生を軽減して、駅や駅構内での環境改善を実現することができる。
1,21 列車(軌道車両)
2 台枠 3 台車
4 エンジン(ディーゼルエンジン) 5 アクティブシフト変速機
6 推進軸 7 減速機
10 バッテリ
11 コンバータ/インバータ 12 モータ(発電機)
15 変速機制御装置 16 インバータ制御装置
17 エンジン制御装置
21a 先頭車 21b 最後尾
22 プラットホーム 23 分岐器

Claims (5)

  1. バッテリによる電力供給で駆動されるモータとエンジンとを含むハイブリッド駆動システムを備え、前記エンジン及び前記モータの両方からの動力で又はいずれか一方に動力を切り換えて推進されるハイブリッド軌道車両の走行制御方法において、
    前記ハイブリッド軌道車両が走行する線区内にある駅構内に配設される分岐器について通過する前記ハイブリッド軌道車両に許容される最大速度として分岐器制限速度が設定されており、
    前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の走行速度が前記分岐器制限速度に基づいて設定された切換速度に達したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えることを特徴とするハイブリッド軌道車両の走行制御方法。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド軌道車両の走行制御方法において、
    前記条件を満たすことに加えて、前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の最後尾が当該駅のホーム端を通過したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えること、
    を特徴とするハイブリッド軌道車両の走行制御方法。
  3. 請求項1又は2に記載のハイブリッド軌道車両の走行制御方法であって、
    前記ハイブリッド軌道車両の最後尾が当該駅のホーム端を通過した後の前記バッテリの蓄電量が所定の値となるような最大加速度を算出し、前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両が前記走行距離を走行するまで前記最大加速度以上の加速をしないように前記モータの出力を抑制することを特徴とするハイブリッド軌道車両の走行制御方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のハイブリッド軌道車両の走行制御方法であって、
    前記ハイブリッド軌道車両が前記切換速度に達する前に前記バッテリの蓄電量が所定の下限値を下回ったことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えることを特徴とするハイブリッド軌道車両の走行制御方法。
  5. バッテリによる電力供給で駆動されるモータとエンジンとを含むハイブリッド駆動システムを備え、前記エンジン及び前記モータの両方からの動力で又はいずれか一方に動力を切り換えて推進されるハイブリッド軌道車両において、
    前記ハイブリッド軌道車両が走行する線区内にある駅構内に配設される分岐器について通過する前記ハイブリッド軌道車両に許容される最大速度として分岐器制限速度が設定されており、
    前記駅構内で前記モータからの動力のみで発進した前記ハイブリッド軌道車両の走行速度が前記分岐器制限速度に基づいて設定された切換速度に達したことを条件に、前記エンジンの動力のみによる駆動又は前記モータと前記エンジンの両方の動力による駆動へと切り換えることを特徴とするハイブリッド軌道車両。
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