JP2011184034A - スポーク車輪及びそれに用いられるスポーク - Google Patents

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Abstract

【課題】レース用オフロードバイク等にあっては、繰返されるジャンプによりスポーク車輪に大きな衝撃が作用すると共に、スポークのニップルによる締付けが弛みやすい。
【解決手段】変形部21を有する変形スポーク17を用いて、ハブ3とリム6とを連結する。変形スポーク17は、ニップル9により変形部21が伸びるように弾性変形して締付けられる。変形スポーク17は、ストレートスポークに比して、縦弾性係数が低く、かつ同径のスポークと略々同じ剛性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、リムとハブとを多数のスポークで連結したスポーク車輪に係り、特に、オートバイ、自転車等の2輪車に用いて好適であり、詳しくはスポークに特徴のあるスポーク車輪及びそのスポークに関する。
一般に、2輪車用車輪は、車軸に装着されるハブと、タイヤを装着するリムと、これらハブとリムとを連結するスポークとからなり、リム、スポーク及びハブが鋳造により一体に成形されたキャストホイール、リムとハブとを多数のワイヤー状のスポークで連結したスポーク車輪(正確にはワイヤスポーク車輪)とがあるが、本発明はスポーク車輪に関する。スポーク車輪は、リム及びスポークが変形することにより車輪に作用する衝撃を吸収することができ、オフロードバイクでは専らスポーク車輪が採用されている。
スポーク車輪1は、図8及び図9に示すように、軸方向に所定間隔隔てて配置された2個のフランジ2,2を有するハブ3と、多数のスポーク取付け用凹孔部5を有するリム6と、一端に抜止め部8を有すると共に他端に雄ネジ部を有する直線(ストレート)状のワイヤスポーク7と、からなる。スポーク7は、ハブ3のフランジ2の孔2aに貫通してその抜止め部8を係止し、先端の雄ネジ部をリム6の凹孔部5に保持されたニップル9により締付けることにより、ハブ3とリム6との間に張設される。スポーク7は、ハブの両フランジ2,2にそれぞれ外側及び内側から貫通する合計4本が互いに交差するように、かつ図9に示す立面角αを有するように、リム全周に亘って等間隔に張設され、リム2が同一平面で円形を保つように調整されている。
図8及び図9は、タイヤを装着していない状態を示しているが、タイヤをリム6に装着した状態でスポーク車輪1は、オートバイ、特にモトクロス、エンデューロ等の競技用のオフロードバイクに取付けられる。スポーク車輪1は、接地部Sに車体からの荷重が集中して作用するが、特に競技用オートバイにあっては、ジャンプして着地する際に、上記接地部Sに大きな衝撃荷重Fが作用する。該衝撃荷重は、タイヤを介してリム6を偏平状に変形するように作用し、その結果接地部S近傍のスポーク組G1には圧縮力が作用すると共に、該スポーク組G1に隣接するスポーク組G2,G3には引張り力が作用する。
スポーク車輪1は、上記リム6及びスポーク7の弾性変形により、上記衝撃を吸収する点で優れており、前記スポーク7を細径とすると、スポーク車輪の剛性が低下して、上記衝撃吸収性は向上するが、スポーク7の引張り強度が低下してスポークが破断しやすくなる。また、上記スポーク車輪の剛性は、上述した、F(縦)方向の荷重に対する縦剛性の外、コーナー時に作用する横方向荷重に対する横剛性もあり、横剛性が不足する場合、コーナーで車輌がふらつく問題点がある。
また、スポーク7は、ニップル9により所定張力が付与されて組付けられており、該張力が作用している範囲内ではニップル9との螺合が維持されて弛むことがないが、上記スポーク組G1部分に作用する圧縮力がスポークに付与される張力を越えると、弛みやすくなり、適正なスポーク車輪1の形状を保てなくなる。
一方、スポークを弾性変形しやすい形状として、該スポークの弾性変形により衝撃を吸収する車輪も提案されている(特許文献1又は2参照)。
特願2007−118936号公報 実願平2−80477号(実開平4−37001号)のマイクロフィルム
前記直線状のワイヤスポーク7からなるスポーク車輪7は、特に競技用オフロードバイクに取付けられる場合、スポーク7が直線(ストレート)形状からなるため、縦弾性係数(ヤング率)は比較的大きく、大きな衝撃荷重が繰返し作用すると弛みやすく、調整が面倒である。また、スポーク径を細くして衝撃吸収性を高めようとすると、スポークが破断しやすくなる。
また、特許文献1に示される車輪は、自転車用車輪であって、スポークは、例えばS字形等の可撓部を備えており、該可撓部による大きな弾性変形により、車体から体重等が作用するハブの中心がリムの中心に対して下方にずれた位置となり、車輪の回転により圧縮と引っ張りとが交互に繰返し作用し、振動のエネルギを吸収するものであって、とてもオートバイ等に適用し得るものではない。
特許文献2に示される車輪は、ハブ(取付部)、リブ及びスポークが合成樹脂により一体に成形された自転車用車輪であって、スポークに楕円状等の環状枠からなる衝撃吸収部を形成して、合成樹脂の一体成形からなることに起因する緩衝作用がないことを緩和するものであって、ワイヤスポークからなるスポーク車輪ではない。
本発明は、通常用いられるストレート状のスポークを非直線状に変形し、該変形スポークを通常のスポーク車輪と同様にハブ及びリムに組付けることにより、上述した課題を解決したスポーク車輪及びそのスポークを提供することを目的とするものである。
本発明は、ハブ(3)と、リム(6)と、一端に抜止め部(18)(8)及び他端に雄ネジ部(19)を有する多数のスポーク(17)(7)と、を備え、前記スポーク(17)(7)が、前記抜止め部(18)(8)を前記ハブ(3)及び前記リム(6)の一方に抜止め係止すると共に、前記雄ネジ部(19)を前記ハブ(3)及び前記リム(6)の他方に係止されるニップル(9)に螺合して、前記ハブ(3)と前記リム(6)との間に張設されてなるスポーク車輪(11)(111)において、
前記スポークの少なくとも一部は、前記抜止め部(18)と前記雄ネジ部(19)との間で所定オフセット量(e)で変形している変形部(21)を有する変形スポーク(17)であり、
該変形スポーク(17)を、前記所定オフセット量(e)が小さくなる方向に前記変形部(21)を弾性変形するように前記ニップル(9)により締付けてなる、
ことを特徴とするスポーク車輪にある。
例えば図1を参照して、前記ハブ(3)と前記リム(6)との間に張設されるすべてのスポークが、前記変形スポーク(17)である。
前記ハブ(3)と前記リム(6)との間に張設されるスポークは、前記変形スポーク(17)と、直線状のストレートスポーク(7)とが混合されてなる。
例えば図6を参照して、前記ハブ(3)は、所定間隔隔てて配置された2個の環状のフランジ(2,2)を有し、
前記同じフランジ(2)から延びかつ互いに交差(X)する1対のスポークの一方を前記変形スポーク(17)とし、他方を前記ストレートスポーク(7)としてなる。
前記変形スポーク(17)は、該変形スポークが前記変形部を有さないストレートスポーク(7)に対して、縦弾性係数が0.3〜0.8倍の範囲である。
好ましくは、例えば図2、図3を参照して、前記変形スポーク(17)は、前記変形部(21)の前記抜止め部(18)側及び前記雄ネジ部(19)側にそれぞれ同一軸線上のストレート部(22a)(22b)を有し、
前記変形部(21)は、前記抜止め部側及び前記雄ネジ部側のストレート部(22a)(22b)に対してそれぞれ所定角度(c)で屈曲する屈曲部(a)と、これら屈曲部の先端同士を連結する連結部(b)と、を有し、
前記所定オフセット量(e)は、前記ストレート部(22a)(22b)の軸線と前記連結部との距離である。
また、本発明は、前記スポーク車輪(11)に用いられる前記変形スポーク(17)からなるスポークにある。
具体的には、前記変形スポーク(17)は、前記変形部(21)の前記抜止め部(18)側及び前記雄ネジ部(19)側にそれぞれ同一軸線上のストレート部(22a)(22b)を有し、
前記変形部(21)の前記所定オフセット量(e)は、前記ストレート部(22a)(22b)の軸線に対して、自然状態で線径をφとすると1.1φ〜6.2φの範囲である。
また、前記変形スポーク(17)は、前記変形部(21)の前記抜止め部(18)側及び前記雄ネジ部(19)側にそれぞれ同一軸線上のストレート部(22a)(22b)を有し、
前記変形部(21)は、前記抜止め部側及び前記雄ネジ部側のストレート部(22a)(22b)に対してそれぞれ所定角度(c)で屈曲する屈曲部を有し、これら屈曲部の先端同士を連結してなり、
前記所定角度(c)が、自然状態で150〜170度の範囲であり、かつ前記屈曲部(a)の長さが、線径をφとすると3.1φ〜12.5φの範囲である。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、従来のハブ及びリムを用い、かつスポークは、従来のスポークを変形する等により形成した変形スポークを少なくともその一部に用い、該変形スポークをニップルで締付けることによりスポーク車輪を構成するので、従前のスポーク車輪の製造装置を用いてコストアップを伴うことなく製造することができるものでありながら、変形スポークは、ストレートスポークより低い縦弾性係数を備え、柔軟な衝撃吸収性能を備えると共に、衝撃荷重が繰返し作用しても、スポークに張力を維持してニップルの弛みを防止したスポーク車輪を提供することができる。
請求項2に係る本発明によると、すべてのスポークを変形スポークとしたので、高い柔軟性による十分な衝撃吸収性能を有するスポーク車輪を得ることができる。
請求項3に係る本発明によると、変形スポークとストレートスポークを混在したので、ライダーの好みに合せて、またモトクロス、エンデューロ等の競技のカテゴリーに合せて、適当な柔軟性と剛性を兼ね備えたスポーク車輪を得ることができる。例えば、全部を変形スポークとした場合、ライダー(の乗り方)によって、横剛性が足りないため、コーナーで車輌がふらつくとの指摘があるが、適当な割合(例えば50%)でストレートスポークを混在することにより、縦剛性を所定割合で残して、上記コーナーでの車輌ふらつきを抑えることができる。
請求項4に係る本発明によると、同じハブフランジから延びて互いに交差する1対のスポークの一方(例えば内側)を変形スポークとし、他方を(例えば外側)をストレートスポークとすることにより、コーナー時等に柔軟性の高い変形スポークが横荷重を受けて変形することを、それに接する剛性の高いストレートスポークが抑えて、横剛性の低下を抑えて、コーナー時等の車輌のふらつきを減少することができる。
請求項5に係る本発明によると、変形スポークは、変形部を有さない同等のストレートスポークに対して、縦弾性係数が0.8倍以上あるので、ストレートスポークに比して峻別し得る優れた衝撃吸収性能を有すると共に、縦弾性係数が0.3倍以下であるので、柔か過ぎることにより運転者に違和感を与えることを減少できる。
請求項6に係る本発明によると、変形スポークは、抜止め部側及び雄ネジ部側のストレート部の外に、屈曲部及び連結部からなる簡単な構成による変形部を有するので、製造が容易でシンプルな形状のスポーク車輪を提供することができる。
請求項7に係る本発明によると、従来と同様なスポークを用いて、変形部を形成する曲げ加工により容易に変形スポークを製造して、上記スポーク車輪に供することができる。
本発明による変形スポークを用いたスポーク車輪を示す正面図。 自然状態における変形スポークを示す正面図。 (a)は変形スポークの正面図、(b)は従来の直線状のストレートスポークを示す正面図。 (a)は変形スポークとストレートスポークの引張り試験の結果を示す図、(b)はその引張り試験機の概略を示す図。 (a),(b),(c),(d)はスポークの各寸法をそれぞれ変化した状態での引張り試験の結果を示す図。 変形スポークとストレートスポークを混在したスポーク車輪を示す側面断面図。 スポーク車輪の強度指数(縦剛性及び横剛性)を示す図。 従来のストレートスポークからなるスポーク車輪を示す正面図。 そのスポーク車輪の側面断面図。
本発明に係るスポーク車輪11は、図1に示すように、ハブ3、リム6及びスポーク17からなる。本スポーク車輪11は、図8及び図9で示す従来のスポーク車輪1とハブ3及びリム6は同じものが用いられ、スポークのみが、その全部を、従来の直線状のストレートスポーク7から変形スポーク17に変更されたものである。従って、図8に示すように、ハブ3は、軸方向に所定間隔隔てて配置された2個のフランジ2,2を有しており、リム6は、多数の凹孔部5を有しており、該凹孔部5に従来と同じニップル9が受入れられて変形スポーク17が締付けられる。
本発明に係る変形スポーク17は、図2に示すように、一端に抜止め部(頭部)18を有し、他端にニップル9と螺合する雄ネジ部19を有し、それらの間にあって、抜止め部18の近傍がフランジハブ2の孔2aに貫通するための屈曲部20が形成され、雄ネジ部19側に所定の変形部21が形成され、該変形部21の両側が直線状のストレート部22a,22bとなっている。そして、変形スポーク17は、ハブフランジ2の孔2aに雄ネジ部19から貫通されて、抜止め部18にて抜止めされ、雄ネジ部19に、リム6の凹孔部5に外径(ドロップ)側から嵌合されたニップル9が螺合されて、ハブ3とリム6とを上記スポーク17で連結してスポーク車輪11が組立てられる。この際、各変形スポーク17は、従来のスポーク7と同様に、4本が1組となって2個のハブフランジ2,2の内外両側から差込まれ、かつ所定立面角αを形成して、ハブ3とリム6とが同一軸心Oとなるように、かつリム6が同一平面において正確な円環状となるように、ニップル9により所定張力が付与されるように締付け調整される。
ついで、本発明に係る変形スポーク17と直線状のストレートスポーク7との性能の比較を、図3ないし図5に沿って説明する。変形スポーク17とストレートスポーク7とは、図3(a),(b)に示すように、同じ材質、長さ、線形からなる。例えば、材質はSWB(硬線鋼;JISG3521)、車輪とし組付けていない自然状態の長さLが240[mm]、線径φ3.2[mm]からなる。なお、線径は、屈曲部22b及び雄ネジ部19を有する両端部分(E,H点から外側部分)は弱干太くなってφ3.5[mm]からなる。変形スポーク17の変形部21は、基端側ストレート部22aと先端側ストレート部22bと所定角度(屈曲角)cで屈曲する屈曲部a,aと、これら屈曲部と上記所定角度(屈曲角)cで屈曲する平行部bと、を有し、これにより上記平行部bがストレート部22a,22bに対して所定オフセット量eで変形される。上記平行部bは、長さが0でもよく、即ち屈曲部a,aの先端同士を直接連結しても、また湾曲状に連結してもよく、上記bは連結部を構成する。なお、fは変形部21の自然状態での長さ、gは先端から変形部21までの長さである。図3(b)は、従来のストレートスポーク7を示し、変形部21が存在しない点で相違するだけで、抜止め部8、屈曲部20及び雄ネジ部19は同じである。
本実施例にあっては、所定角度(屈曲角)c=160°、屈曲部a=20[mm]、平行部b=20[mm]、変形部までの長さg=50[mm]に設定している。図4(a)は、上記実施例による変形スポーク17と、上記同じ材質、線径、長さのストレートスポーク7とを引張り試験した結果を示し、図4(b)に示すように、スポーク7、17の抜止め部8,18を試験機の固定部20に固定し、雄ネジ部を試験機の可動部21にニップル9により仮止めした。該引張り試験機にあっては、ニップル9による締付け力Nを付与していないが、図1及び図8に示すスポーク車輪1,11にあっては、4[KN]の締付け力Nにより変形スポーク17及びストレートスポーク7に同じ張力4[KN]が作用する。なお、変形スポーク17は、後述するように、ストレートスポーク7に比して縦弾性係数が低いので、ニップル9によるスポークの締付けに際して、より多く回転して締付けるようになり、締付け力の調整が比較的容易となる。
図4(a)に示すように、変形スポーク17は、ストレートスポーク7に比して約1/3である緩やかな縦弾性係数(ヤング率)で伸びており、略々同じ荷重(約12KN)で破断した。これは、変形スポーク17は、図3(a)に示す変形部21の屈曲点A,B,C,Dにおいて屈曲角cが拡がる方向に弾性変形することにより、柔かい衝撃吸収性能を有することであり、かつ線径φに対してストレートスポークと略々同等な引張り強度を有することになる。なお、上記変形スポーク17の弾性変形は、屈曲角cが開拡してオフセット量eが小さくなると共に変形部長さfが伸びることにより弾性変形する。また、上記引張り試験において、ストレートスポーク7は、変形部分(上記E,H部分)で破断し易いが、変形スポーク17にあっては、変形部21がストレート状に伸びた後、該変形部分で破断することが多い。
更に、リム6に作用する衝撃荷重により、接地部分Sのスポーク組G1に圧縮力Fが作用して1[mm]変形すると、ストレートスポーク7にあっては、ニップル9により付与されている張力が0となって、スポークに弛みを発生するが、変形スポーク17にあっては、例え1[mm]圧縮方向に変形しても、スポークには2[KN]の引張り力がまだ作用しており、スポークに弛みが発生することはない。
従って、本変形スポーク17を用いて組付けたスポーク車輪11(図1参照)は、オフロードバイク、特にモトクロス、エンデューロ等のレース用バイクにあって、ジャンプが繰返されて車輪に大きな衝撃荷重が作用しても、変形スポーク17に起因する低い縦弾性係数により柔かく上記衝撃荷重を吸収し、競技者の疲労を軽減すると共に集中力を維持し、かつニップルの盲動によるスポークの弛みを防止してホイール性能を維持し、良好な結果を期待することができる。
図5は、変形スポーク17において各部分a,b,cを変えて引張り試験を行った結果を示す。図5(a)は、オフセット量eを一定にして、屈曲角c及び屈曲部aの長さを変更した場合を示す。オフセット量eを一定にする場合、屈曲角cの影響が大きいことが解る。図5(b)は、屈曲部a及び平行部bの長さを一定にして、屈曲角cを変化してオフセット量eを変更する場合を示す。この場合、屈曲角cが小さくなると、伸びやすくなることが解る。図5(c)は、屈曲角cを一定にして屈曲部aの長さを変化してオフセット量eを変更する場合である。この場合から、屈曲部aの長さが大きくなる程、伸びやすくなることが解る。図5(d)は、平行部bの長さを変更した場合を示す。平行部bの長さを変更しても伸びに対する影響はないことが解る。
以上の結果、屈曲部aの長さが大きい程、並びに屈曲角cが小さい程、伸びやすくなり、従ってオフセット量eが大きい程、スポーク17は伸びやすい。縦弾性係数は、ストレートスポーク7に対して、0.3倍以下では本変形スポークの柔軟特性が十分に発揮することができず、0.8倍以上では柔か過ぎてライダーに違和感を与えるため、0.3〜0.8倍の範囲が好ましい。上記オフセット量eも同じ理由で、自然状態(ニップルで締付けていない状態)でe=3.5[mm]より小さいと、本変形スポークの柔軟特性が充分でなく、e=19.8[mm]を越えると、柔か過ぎるため、オフセット量eは3.5〜19.8[mm]の範囲、即ち線径をφ(3.2[mm])とすると、1.1φ〜6.2φの範囲が好ましい。上記所定屈曲角度cも、自然状態で、150°〜170°の範囲にあって、かつ屈曲部aの長さが10〜40[mm]の範囲、即ち線径をφ(3.2[mm])とすると3.1φ〜12.5φの範囲が好ましい。
なお、変形部21の平行部bの長さは伸びに関係しないので、該平行部bが存在しなくても、またスポーク全長近くに亘るように長くてもよい。例えば、両屈曲部a,aの先端が屈曲角[2(c−90°)]で直接連結しても、変形部21全体が円弧等の湾曲形状からなるものでもよく、また屈曲部a,aが抜止め部18側の屈曲部20の近傍及び雄ネジ部19の近傍に位置していても、また全体に小さな曲率で湾曲しているものでもよい。また、屈曲部aの長さ及び屈曲角cが抜止め部18側と雄ネジ部19側とで異なってもよい。
操安テストにおいて、上述したようにスポーク車輪の全部を変形スポークとした場合、ライダーの好み(乗り方)、及びモトクロス、エンデューロ等の競技のカテゴリーによっては、スポーク車輪の横剛性が足りないため、コーナー時に車輌のふらつきを感じるとの指摘があった。そこで、図6に示すように、変形スポーク17とストレートスポーク7とを所定割合で混合したスポーク車輪111を作製した。ハブ3は、軸方向に所定間隔隔てて配置された2個の環状のフランジ2,2を有しており、1個のフランジ2又は2の表裏から交互に逆方向の略々接線方向にスポーク7又は17が延びている。従って、図8を参照して示すと、同じフランジ2から延びているスポーク3は、[2個(3,3)間をおいて]3個目のスポーク3と交差する(図8,図6のX参照)。なお、隣接するスポークも(例えば3と3)正面視においてフランジ近傍で交差するようにみえるが、これはフランジの厚みがあるため、交差とは言わない。
図6に示すように、同じフランジ2又は2から延びているスポークにおいて、フランジの表側Iから延びるスポークにストレートスポーク7を用い、裏側Rから延びるスポークに変形スポーク17を用いる。これにより、1個のスポーク車輪111において、ストレートスポーク7と変形スポーク17との割合は、50%ずつとなり、かつ交差部分Xにおいて、変形スポーク17が内(IN)側となり、ストレートスポークが外(OUT)側となって互いに接触している。
これにより、オートバイのコーナー走行時において、リム6に横荷重はJ又はJが作用する場合、変形スポーク17は、該横荷重に対しても柔軟に支持するが、該変形スポーク17の横変形は、上記交差部分Xにおいてそれに接触する剛性の高いストレートスポーク7により受けられ、上記横変形を抑えることができる。従って、本スポーク車輪111は、縦剛性、従ってジャンプ等による荷重Fに対しての柔軟支持を比較的保持しつつ、横剛性J,Jに対しては柔軟支持を比較的抑えて、コーナー時のオートバイのふらつきをある程度抑えることができる。
図7は、各スポーク車輪の強度指数を示す。強度指数は、すべてのスポークがストレートスポークからなる従来のスポーク車輪1(図8参照)の縦剛性及び横剛性を100としたものであり、すべてのスポークを変形スポークとしたスポーク車輪11(図1参照)は、縦剛性が70、横剛性が80程度となる。ストレートスポークと変形スポークを半数ずつとしたスポーク車輪111(図6参照)は、上記ストレートスポークのみからなるスポーク車輪1と変形スポークのみからなるスポーク車輪11との中間の特性を有し、縦剛性が85、横剛性95程度となり、ジャンプ等に対するクッション性を比較的保持しつつ、コーナー時のふらつきを比較的抑えることができる。
なお、上述実施の形態は、交差部分Xにおいて、変形スポーク17を内側に、ストレートスポーク7を外側に設定したが、これを逆にして、変形スポークを外側に、ストレートスポーク7を内側に設定してもよい。また、変形スポーク17とストレートスポーク7の割合は、50対50に限らず、70対30、30対70等の他の割合でもよい。
また、上記実施の形態は、スポークの抜止め部をハブのフランジに抜止め係止し、雄ネジ部をリムにニップルを介して締付けたスポーク車輪に適用したが、スポークの抜止め部をリムに係止し、雄ネジ部をハブ側でニップルにて締付けたスポーク車輪にも同様に適用可能である。本スポーク車輪11,111は、モトクロス、エンデューロ等のオフロード競技用バイクに用いて好適であるが、これに限らず、通常のオフロードバイク、またオンロードバイク、更に自転車用等の他の車輌に適用することが可能である。また、上記実施の形態は、オートバイの前輪に適用しているが、後輪にも同様に適用可能である。
本発明のスポーク車輪及びそれに用いられる変形スポークは、オートバイ、自転車、その他の車輌の車輪に利用される。
2 フランジ
2a 孔
3 ハブ
5 凹孔部
6 リム
7 ストレートスポーク
9 ニップル
11,111 スポーク車輪
17 変形スポーク
8,18 抜止め部
19 雄ネジ部
21 変形部
22a,22b ストレート部
a 屈曲部
b 連結部(平行部)
c 屈曲角
e 所定オフセット量

Claims (7)

  1. ハブと、リムと、一端に抜止め部及び他端に雄ネジ部を有する多数のスポークと、を備え、前記スポークが、前記抜止め部を前記ハブ及び前記リムの一方に抜止め係止すると共に、前記雄ネジ部を前記ハブ及び前記リムの他方に係止されるニップルに螺合して、前記ハブと前記リムとの間に張設されてなるスポーク車輪において、
    前記スポークの少なくとも一部は、前記抜止め部と前記雄ネジ部との間で所定オフセット量で変形している変形部を有する変形スポークであり、
    該変形スポークを、前記所定オフセット量が小さくなる方向に前記変形部を弾性変形するように前記ニップルにより締付けてなる、
    ことを特徴とするスポーク車輪。
  2. 前記ハブと前記リムとの間に張設されるすべてのスポークが、前記変形スポークである、
    請求項1記載のスポーク車輪。
  3. 前記ハブと前記リムとの間に張設されるスポークは、前記変形スポークと、直線状のストレートスポークとが混合されてなる、
    請求項1記載のスポーク車輪。
  4. 前記ハブは、所定間隔隔てて配置された2個の環状のフランジを有し、
    前記同じフランジから延びかつ互いに交差する1対のスポークの一方を前記変形スポークとし、他方を前記ストレートスポークとしてなる、
    請求項3記載のスポーク車輪。
  5. 前記変形スポークは、該変形スポークが前記変形部を有さないストレートスポークに対して、縦弾性係数が0.3〜0.8倍の範囲である、
    請求項1記載のスポーク車輪。
  6. 前記変形スポークは、前記変形部の前記抜止め部側及び前記雄ネジ部側にそれぞれ同一軸線上のストレート部を有し、
    前記変形部は、前記抜止め部側及び前記雄ネジ部側のストレート部に対してそれぞれ所定角度で屈曲する屈曲部と、これら屈曲部の先端同士を連結する連結部と、を有し、
    前記所定オフセット量は、前記ストレート部の軸線と前記連結部との距離である、
    請求項1又は5記載のスポーク車輪。
  7. 請求項1ないし6のいずれか記載のスポーク車輪に用いられる前記変形スポークからなるスポーク。
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