JP2011179087A - 方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Alを含有する窒化型の方向性電磁鋼板の生産において二次再結晶性を確保し、窒化装置の設備投資低減およびメンテマンスを容易にすべくアンモニア導入方法を規定する。
【解決手段】窒化処理における鋼板の一方の面及び他方の面における表面から20%厚み部分の窒素含有量(質量%)をそれぞれσN1、σN2としたとき、σN1及びσN2を下記の式(1)を満たす範囲内とする。
D=|σN1−σN2|/tN ≦ 0.40 ・・・式(1)
ここで、tN:窒化後全板厚窒素含有量(質量%)である。
【選択図】図5

Description

本発明は、主にトランス等の鉄芯材として使用される方向性電磁鋼板を製造する方法に関するものであり、特に、後工程で窒化を施す窒化型の方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
窒化型の方向性電磁鋼板の製造方法は、例えば特許文献1に示されているように、Alを含有するスラブを用い、熱間圧延でのスラブ再加熱を比較的低温で行い、スラブ内の析出物を充分に析出させて形態を均一化して、スキッドマーク(二次再結晶挙動のコイル内変動の典型的例)の形成を回避し(非特許文献1参照)、二次インヒビターの確保のために後工程での窒化を施す製造方法である。
窒化型の方向性電磁鋼板の製造方法では、スラブ加熱温度が比較的低いため、溶製段階から含有されているインヒビター元素は、熱間圧延後にはその多くが析出してしまい、その粒成長抑制力は減じる結果、一次再結晶粒径が大きくなる。このため、二次再結晶焼鈍においては粒界移動の駆動力が小さくなり、二次再結晶開始温度が1000℃を越えて高くなる。
一方、後工程の窒化の際、表面から窒化されるので、窒化直後では、窒素は鋼板表面近傍に濃化しており、板厚方向に均一ではない。しかし、二次再結晶開始温度が1000℃を越えて高くなっているので、鋼板の表面に濃縮した窒化窒素は、二次再結晶開始までに鋼板厚み全体に拡散して均一になり、二次再結晶のインヒビターとして機能すると考えられていた。このため、板厚方向の不均一に加え、さらに鋼板表裏で窒化窒素の量が異なる場合(両面不均等窒化)でも二次再結晶不良の要因にはならないといわれており、昨今の設備投資の削減及び焼鈍装置のメンテナンス性の確保などの要請を考慮すると、窒化のためのアンモニア導入装置(窒化装置)は、鋼板片側面のみの配置または、鋼板側部への配置とならざるを得ない状況にある。
しかし、昨今は、生産性向上のため、二次再結晶焼鈍(箱型焼鈍)の加熱速度の高速化もつとに求められており、高速化した場合には二次再結晶の不良が発生することが認められるに到っている。
特願平05−112827号公報 特公平06−051887号公報
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 304 (2006) e602 - e607.
そこで、本発明は、AlNを二次再結晶の主なインヒビターとし、二次再結晶前に窒化を施す窒化型の方向性電磁鋼板の製造方法において、良好なGoss二次再結晶粒を確保して良好な磁気特性を安定的得るための窒化条件を明らかにするとともに、その窒化条件を達成するための窒化装置に対する設備投資の低減を可能とし、かつ窒化装置のメンテナンスを容易にできるアンモニアの導入方法を提供することを課題とするものである。
発明者らは鋭意検討の結果、良好なGoss方位二次再結晶集合組織の発現が、鋼帯の一方の面と他方の面(これらをまとめて表裏面という場合もある。)の表層部における窒化量の差異と関連があることを見出した。そして、鋼帯表裏面における各面側の窒化量に差があっても、二次再結晶焼鈍中に拡散して厚み方向の窒素分布が均一になるための条件について検討した結果、鋼帯表裏における窒化量の差に関する比率が一定値以下であればよいことを見出した。更に、その比率を満たすことを実現できるアンモニア導入装置の配置について検討して、鋼板片側面のみの配置または、鋼板側部への配置についてそれぞれの配置条件を見出した。
そのような本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.045〜0.080%、Si:2.8〜4.0%、酸可溶性Al:0.024〜0.035%、N:0.0060〜0.0095%、SとSe:S当量Seq=S+0.405Seとして0.005〜0.010%、Mn:0.06〜0.15%、Ti≦0.005%、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1200℃以下の温度で加熱し、熱間圧延を施して熱間圧延鋼帯とし、この熱延鋼帯を焼鈍し、最終冷間圧延の圧延率を85%〜93%とし、一次再結晶・脱炭焼鈍温度を810℃〜880℃の湿水素雰囲気中で行い、その後、鋼板走行状態の下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中の窒化処理で全窒素含有量を0.015〜0.027質量%として、その後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造において、
前記窒化処理における鋼板の一方の面及び他方の面における表面から20%厚み部分の窒素含有量(質量%)をそれぞれσN1、σN2としたとき、σN1及びσN2を下記の式(1)を満たす範囲内とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
D=|σN1−σN2|/tN ≦ 0.40 ・・・式(1)
ここで、tN:窒化後全板厚窒素含有量(質量%)である。
(2)前記窒化処理を、アンモニア導入管を走行する鋼板の片側面上に鋼板面に平行に配置した処理炉で行う際、アンモニア導入管と鋼板と炉壁のそれぞれの配置関係を、次の条件2の関係を満たすようにすることを特徴とする上記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
条件2:
t1≧50mm
l ≦t1
t2≧2×t1
t3≧2.5×t1
L ≧1.2×W
ここで、t1:走行する鋼板とアンモニア導入管の距離
t2:走行する鋼板と炉天井との距離
t3:走行する鋼板の端部と炉壁との距離
l:アンモニア導入管のアンモニア噴出ノズルの間隔
W:走行する鋼板の幅
L:ノズル配置の最大幅
(3)鋼板中央部をカバーするアンモニア導入管と鋼板端部側をカバーする2本のアンモニア導入管の3本一組で鋼板幅全体をカバーするようにし、これら導入管の鋼板走行方向の間隔(L0)を550mm以下とすることを特徴とする上記(2)記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
(4)前記窒化処理を、アンモニア導入口を走行する鋼板の端部延長部の炉の側壁に配置した処理炉で行う際、アンモニア導入口と鋼板と炉壁のそれぞれの配置関係を、次の条件3の関係を満たすようにすることを特徴とする上記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
条件3:
t1≧100mm
t3≧W/4
H≦W/3
ここで、t1:走行する鋼板と炉天井または床との距離
W:走行する鋼板の幅
t3:走行する鋼板の端部とアンモニア導入口(炉側壁)との距離
H:鋼板パスラインからアンモニア導入口中心の垂直距離
(5)前記アンモニア導入管またはアンモニア導入口を、鋼板走行方向に沿って処理炉の複数箇所に配置したことを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
本発明の窒化方法によれば、窒化型の方向性電磁鋼板の製造に際し、良好な磁気特性を有する方向性電磁鋼板を得るための窒化状態とすることができ、かつ、そのような窒化状態を、メンテナンスが容易となる、窒化装置の鋼板片側面のみの配置または鋼板側部への配置で得ることができる。
アンモニア導入管を走行する鋼板の鋼板面片側に配置する場合の模式図である。 アンモニア導入管のアンモニア噴出ノズルの配置の一例を示す模式図である。 三本のアンモニア導入管の配置の一例を示す模式図である。 処理炉の側壁からアンモニアを導入する場合のアンモニア導入口の配置の一例を示す模式図である。 表裏窒素の偏差と磁性(磁束密度)との関係を示す図である。
窒化型の方向性電磁鋼板の製造では、所定の成分の珪素鋼よりなるスラブを、比較的低い温度で加熱し、熱間圧延を施して熱間圧延鋼帯とし、この熱延鋼帯を焼鈍し、冷間圧延し、一次再結晶・脱炭焼鈍温度を湿水素雰囲気中で行い、その後、鋼板走行状態の下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中の窒化処理で全窒素含有量を所定の値まで増加させ、その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上げ焼鈍されて製造されるが、まず、本発明の特徴である窒化処理について述べる。
昨今の窒化装置に対する設備投資額の低減及び炉メンテナンス用スペース確保のための処理炉の各種ガス管・制御系装置配線等の配置の制約等により、必ずしも鋼帯表裏(鋼板両面)で均等な窒化が設備的に保障・実現されているわけではない。即ち、走行する鋼板の片側面のみにアンモニア導入管等を配置することがある。
発明者らは鋭意検討の結果、良好なGoss方位二次再結晶集合組織発現が鋼帯表裏(両面)の窒化量の差異と関連があることを見出した。
即ち、窒化装置が、例えば鋼板の片側面のみの配置でも、鋼帯表裏の窒化量の比率に関する値が、式(1)で規定する下記の条件1を満たすと良好なGoss二次再結晶が生成することを見出した。式(1)が満たされる場合は、鋼帯表裏の窒化量に差があっても、窒素が二次再結晶焼鈍中に拡散して厚み方向の窒素分布が均一になり、良好なGoss二次再結晶が生成するが、その限界が式(1)である。
式(1)の左辺で表される鋼板表裏の窒素偏差Dの値が0.40を超えると、二次再結晶不良が生じることがある。Dの値の望ましい範囲は0.02以下である。
(条件1)
窒化処理における鋼板の一方の面及び他方の面における表面から20%厚み部分の窒素含有量(質量%)をそれぞれσN1、σN2としたとき、σN1及びσN2を下記の式(1)を満たす範囲内とする。
D=|σN1−σN2|/tN ≦ 0.40 ・・・式(1)
tN:窒化後全板厚窒素含有量(質量%)
この条件は、鋼板面の両側にアンモニア導入装置を配置して、鋼板両面で同等のアンモニアガスの状態を確保すれば、容易に実現できる。しかし、昨今の設備投資の削減及び焼鈍装置のメンテナンス性の確保などの要請を考慮すると、鋼板面の両側にアンモニア導入装置を配置することは望ましくない。
そこで、更に、アンモニア導入管を鋼板片側面のみの配置とする場合、及び、鋼板側部の炉壁にアンモニア導入口を配置した場合についてこれを実現するための条件について検討した結果、下記の条件2又は条件3を満たせば式(1)は満足できることを見出した。
(a)窒化処理を、アンモニア導入管を走行する鋼板の片側面上に鋼板面に平行に配置した処理炉で行う場合
この場合は、処理炉内でのアンモニア導入管と鋼板と炉壁のそれぞれの配置関係を、次の条件2の関係を満たすようにする。すなわち、図1の処理炉1に示すように、t1:走行する鋼板2とアンモニア導入管3の距離、t2:走行する鋼板2と炉天井4との距離、t3:走行する鋼板2の端部と炉側壁5との距離、W:走行する鋼板2の幅、L:アンモニア導入管3に配置されているノズル配置の最大幅(炉側壁に最も近いノズル間の距離)とし、図2に示すように、l:アンモニア導入管のアンモニア噴出ノズル6の間隔とすると、これらの関係が下記の条件2を満たすようにする。
なお、図1において、鋼板を縦にして走行させても、また、アンモニア導入管を鋼板の上に配置しても同様である。
(条件2)
t1≧50mm
l≦t1
t2≧2×t1
t3≧2.5×t1
L≧1.2×W
アンモニア導入管を鋼板面に平行配置する場合は、勿論アンモニア導入口を1本や2本で実施することも可能であるが、3本の導入管で実施するのが好ましい。1本の場合は、どちらかの端部からガスを導入するか、または、両方から導入するかによりアンモニアの圧力が変わりその制御が難しい。また、2本の場合は、鋼板の幅方向で考えた場合、ノズルの位置が重なるか、または、間に空隙があることがあり、幅方向の均一性の確保が困難となる。
これに対し、図3に示すように、3本の導入管で導入すれば、鋼板幅方向の均一性を充分に保つことができる。その場合、3本の導入管の位置関係は、一本のノズルが連続して存在すると仮定した配置とする。導入管の鋼板走行方向の距離L0は、550mm以下であることが必要である。
(b)窒化処理を、走行する鋼板の端部延長部の炉の両側の側壁に、アンモニア導入口を配置した処理炉で行う場合
この場合は、鋼板幅と、炉側壁に設けたアンモニア導入口の位置と、鋼板の上下左右の空間との関係が重要であり、それらの関係を次の条件3を満たすようにする。すなわち、図4に示すように、t1:走行する鋼板2と炉天井4または床7との距離、W:走行する鋼板2の幅、t3:走行する鋼板の端部と炉側壁5に配置したアンモニア導入口8との距離、H:鋼板パスラインからアンモニア導入口中心までの距離とすると、これらの関係が下記の条件3を満たすようにする。
(条件3)
t1≧100mm
t3≧W/4
H≦W/3
アンモニア導入口を鋼板の端部延長部の炉側壁に配置する場合は、片側のみの配置では炉殻を大きくする必要があり、窒化が安定しないので、両側配置とする。両方の導入口の鋼板直角方向に対する位置は、鋼板ストリップの走行位置(パスライン)と同じ所が望ましいが、パスラインからの距離が鋼板幅の3分の一以下である必要がある。
窒化処理を行う場合、鋼板の走行方向は処理炉の周囲の空間関係で決定でき、水平または垂直のいずれでも構わない。即ち、処理炉としては縦型炉、横型炉のどちらでも構わない。上記のように、走行する鋼板とアンモニア導入管やアンモニア導入口との空間的配置が重要である。
更に窒化処理は、脱炭・一次再結晶焼鈍後と焼鈍分離剤塗布の間に行われるので、昨今その生産性向上のために鋼板処理速度が非常に速くなっている。このため、アンモニア導入配管または導入口の一組のみでなく、鋼板走行方向に沿って複数配置するとよい。そして、最終にはその窒素増量を式(1)を満たすべく、ガス流量(アンモニア導入量)の調整を行う。
次に、本発明のその他の製造条件について述べる。
先ず本発明におけるスラブの好ましい成分範囲について述べる。元素の含有量の%は、質量%を意味する。
Cは、0.045%より少ないと一次再結晶集合組織が適切でなくなり、0.080%を超えると脱炭が困難になり工業生産に適していない。
Siは、2.5%より少ないと良好な鉄損が得られず、4.0%を超えると冷延が極めて困難となり工業生産に適していない。
Mnは、0.06%より少ないと二次再結晶が安定しない。一方、0.15%を超えると脱炭焼鈍時の酸化が過多となり、その結果グラス被膜が厚くなり磁気特性が劣る。
SおよびSeは、Mn、Cuと結合して析出し先天的インヒビターを形成し、AlNの析出核としても有用である。S当量Seq(=S+0.405Se)が0.005%より少ないと、先天的インヒビターの絶対量が不足して二次再結晶が不安定なる。また0.010%を超えると固溶・析出の程度が場所により不均一となり充分析出型では安定工業生産に問題が生じる。
酸可溶性AlはNと結合してAlNを形成し、主に一次・二次インヒビターとして機能する。このAlNは、窒化前に形成されるものと窒化後高温焼鈍時に形成されるものがあり、この両方のAlNの量確保のために0.024〜0.035%必要である。この上限を外れると二次再結晶不良が生じる。また、下限を外れるとGoss方位集積度が著しく劣化する。
上述の如く本発明では析出した硫化物、セレン化物が一次・二次インヒビターの役割を果たすが、スラブに含まれるAlNも同様に一次再結晶粒を制御するために非常に重要なものであり、Nが0.0060%未満では一次インヒビターの絶対量が不足し二次再結晶不良が生じる。0.095%を超えた場合は、ブリスターと言う膨れが生じて表面欠陥となる。
Tiについて、0.005%を超えて含有すると、NはTiNとなって実質低N含有鋼となり、インヒビター強度が確保されず二次再結晶不良が生じることがあるので、極力少ないほうが望まれる。
また、Sn、Sb、Pは一次再結晶集合組織の改善と良好なグラス被膜形成に有効である。これらの元素の含有量が0.02%より少ないと改善効果が少なく、また、0.30%を超えると安定したフォルステライト皮膜(一次皮膜、グラス皮膜)形成がそもそも困難となる。さらに、Sn,Sb、Pは粒界偏析元素であり窒素の挙動を制御でき二次再結晶を安定化ならしめる効果があることは周知である。
Cuは、SやSeとともに熱間圧延条件に拘わらず最終冷間圧延前の焼鈍により微細な析出物を形成し、一次・二次インヒビター効果を発揮する。また、この析出物はAlNの分散をより均一にする析出核ともなり二次インヒビターの役割も演じ、この効果が二次再結晶を良好ならしめる。Cu含有量が0.02%より少ないと上記効果が減じ工業生産の安定性が劣ることがあり、0.30%を超えると上記効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
Crはフォルステライト皮膜(一次皮膜、グラス皮膜)形成に有効であるので0.02〜0.30%含むことを妨げない。0.03%未満では酸素が確保されにくく、0.30%を超えると皮膜が形成されない。
その他、Ni、Mo,Cdについては、添加することを妨げない。また、これらの元素は、電気炉溶製の場合に必然的に混入するものでもある。
Niは一次、二次インヒビターとしての析出物の均一分散に著しい効果があるので、Niを添加すると磁気特性は更に良好且つ安定する。0.02%より少ないと効果が少なく、0.3%を超えると、脱炭焼鈍後の酸素の富化し難くくになりフォルステライト皮膜形成が困難になる。Mo、Cdは硫化物もしくはセレン化物を形成しインヒビターの強化に資する。0.008%未満では効果が少なく、0.3%を超えると析出物が粗大化してインヒビターの機能を得られず、磁気特性が安定しない。
最後に、本発明におけるその他の製造条件を述べる。
上記成分を満たすスラブを得るための鋳造は、公知の連続鋳造法とする。初期の厚みが150mmから300mmの範囲、好ましくは200mmから250mmの範囲のスラブを製造する。
また、連続鋳造の代わりに、近年、通常の連続熱間圧延を補完するものとして、厚み30mm〜100mmの薄スラブ鋳造、または直接鋼帯を得る鋼帯鋳造(ストリップキャスター)が実用化されているが、本発明に関して、スラブ内の析出物を充分析出させることが前提なので適用できない。
熱間圧延のためのスラブ加熱温度は、最高1200℃とする。この温度を超えると、一部インヒビター物質の再固溶が局所的に生じ、更に熱間圧延でも不均一性を引きずり、引き続く熱延鋼帯焼鈍でもこの履歴は消滅できず、磁気特性の不均一である所謂“(逆)スキッドマーク”を生じるためである。
窒化型の製造方法におけるスラブ加熱温度の条件は、1280℃以下とすることが多いが、析出物の固溶を考慮すると再加熱時の最高温度を1200℃以下とすべきである。低ければ低いほど磁気特性は良好になるのであるが、実際問題として熱間圧延出来ないので1100℃〜1150℃が望ましい。1080℃未満では、熱間圧延性が充分に保たれない。
工業生産上で熱延の加熱方法においては、通常のガス加熱方法に加え、誘導加熱、直接通電加熱を用いてもよい。
安定的に良好な二次再結晶集合組織Goss方位を得るためには、最終冷間圧延前の焼鈍は、主に熱間圧延時に生じた鋼帯内の組織の均一化及びインヒビターの析出調整のために行われ、工業生産では必須である。これは、熱延鋼帯でも良いし一度冷間圧延した後の最終冷間圧延前の鋼帯でも良い。すなわち、最終冷間圧延前に熱間圧延での金属組織とインヒビターの均一化・適正化を行うために1回以上の連続焼鈍を行うことが必須である。
冷間圧延における最終冷延率は85%未満であると{110}<001>集合組織がブロードになり高磁束密度が得られず、93%を超えると{110}<001>集合組織が極端に少なくなり二次再結晶が不安定になる。
最終冷間圧延は常温で実施してもよいが、少なくとも1パスを100〜300℃の温度範囲に1分以上保つと一次再結晶集合組織が改善され磁気特性が極めて良好になる。これは、公知である。保定時間は1分以上であれば良いが、実際の冷間圧延は、リバースミルで行われるので、ある温度の保定時間は、一般的には10分以上となる。長くなることは本発明では妨げないし、むしろ良好な磁気特性を得る方策でもある。
脱炭焼鈍では、一次再結晶、脱炭及びフォルステライト被膜のための酸化層形成を同時に行せしめる。この3つの現象を効率的に行せしめるには、810〜880℃の温度範囲で湿水素雰囲気が求められる。
即ち、一次再結晶のためには、未満では、再結晶が不十分であり、これを超えると異常粒成長が部分的に起こり、共に二次再結晶が不完全で磁気特性が劣る。
脱炭のためには、この温度範囲外ではその進行が遅く、時間を要し生産性が劣る。更に湿水素雰囲気でないと効率的に脱炭は起こらない。
酸化層形成のためには、この温度以下では、酸化層の質がシリカリッチとなり、以上では、酸化鉄リッチとなりグラス被膜形成が劣る。
脱炭燒鈍における室温から650〜850℃までの加熱速度を100℃/sec以上とすると、一次再結晶集合組織が改善され磁気特性が良好になるので適用を妨げない。
加熱速度を確保するためには種々な方法が考えられる。即ち、抵抗加熱、誘導加熱、直接エネルギー付与加熱等がある。加熱速度を早くすると一次再結晶集合組織においてGoss方位が多くなり二次再結晶粒径が小さくなることは特許文献2等で公知である。特許文献2では、加熱速度を140℃/sec以上としているが、前記加熱速度が100℃/secでも効果があり、望ましくは150℃/sec以上である。
脱炭焼鈍完了後の一次再結晶粒の平均粒径は、20〜27μmが望ましい。この平均粒径は、一次再結晶・脱炭焼鈍の温度で制御でき、この温度の高低により一次再結晶粒径は20μm以下、27μm超えることは可能であるが、小さいとGoss方位が劣り磁気特性が劣り、27μmを超えると二次再結晶温度が高くなり二次再結晶が不良となる。
本発明は、前述のように窒化型の製造方法を前提とするものであり、脱炭焼鈍後二次再結晶開始前に鋼板に窒化処理を施すことは本発明では必須である。窒化の方法には、高温焼鈍時の焼鈍分離剤に窒化物(CrN,MnN等)を混合させる方法と、一次再結晶・脱炭焼鈍後に鋼板を走行させた状態下でアンモニアを含んだ雰囲気で窒化させる方法があるが、本発明は、後者の安定的なアンモニアによる窒化の具体的方法を規定しているものであり、前述の条件を満たすように窒化を行う。
総窒化量は、多いと地鉄が露出した一次皮膜(グラス皮膜)欠陥が多発し、Goss方位集積度が極めて劣化する。本発明により、高磁束密度を得るためには、窒化後の総窒素含有量は0.015%〜0.027%が望まれる。0.015%未満であると二次再結晶不良が生じることがあり、0.027%を超えると磁気特性が劣り、またグラス被膜形成が不良となる。
窒化処理の後は、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、二次再結晶焼鈍を施す。この二次再結晶焼鈍は、(a)フォルステライトを主成分とするグラス被膜形成、(b)Goss方位二次再結晶組織形成、(c)純化の3つの機能を持つ。好ましい条件は、水素と窒素の混合ガス雰囲気で1200℃近傍まで10℃/時間〜25℃/時間で昇温し、その後、雰囲気ガスを1200℃近傍で水素100%に置換して純化せしめ、冷却する。これは、通常の方向性電磁鋼板の二次再結晶焼鈍である。
その後、通常用いられる絶縁張力コーティングの塗布と平坦化処理を行い、方向性電磁鋼板の製品板を得る。
本発明は、以上述べたような条件を適用して方向性電磁鋼板を製造することにより、アンモニア導入管の鋼板片側面配置や導入口の側部炉壁配置の窒化条件でも、二次再結晶不良の発生を抑制して工業的に安定的して磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
以下、実施例を用いて、本発明の実施可能性及び効果についてさらに説明する。
各成分の含有量が、質量%で、C=0.060%、Si=3.37%、Mn=0.099%、S=0.0067%、酸可溶性Al=0.0284%、N=0.0081%、Ti=0.0017%である溶鋼を通常の方法で溶製し、それを連続鋳造して得た250mm厚のスラブを、98℃〜625℃で加熱炉に装入し、夫々にスラブ加熱温度1120℃〜1160℃で再加熱を行い、890℃狙いで熱間圧延を開始し、2.8mmの熱間圧延鋼帯として、560℃狙いで巻き取った。その後、この熱延鋼帯を1130℃で30秒焼鈍し、900℃の雰囲気に3分間保定し、25℃/秒で室温まで冷却し酸洗した。その後、235℃で3回の時効処理を含んでリバース冷間圧延で0.285mmとした。その後、850℃で150秒の湿水素雰囲気で脱炭・一次再結晶焼鈍を行った。
得られた鋼帯を窒化後総窒素含有量が約0.021質量%Nとなるように、走行状態においてアンモニア雰囲気で窒化したが、その際、アンモニア導入管の配置を変更して鋼板の表裏における鋼板表面から板厚方向20%での窒化後窒素含有量が異なる鋼板を準備した。窒化後の鋼板の(1)式の左辺で示される鋼板表裏の窒素偏差Dの範囲は8%〜65%であった。
その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を表面に塗布し二次再結晶焼鈍を施した。その条件は、N2 =25%、H2 =75%の雰囲気として15〜30℃/時間で1200℃まで昇温した。その後、1200℃の温度で20時間以上、H2 =100%で純化処理を行った。その後、通常用いられる絶縁張力コーティングの塗布と平坦化処理を行った。
得られた結果を、D値と磁束密度の関係で図5に示した。図より、D=40%を超えると二次再結晶不良が生じることがあることがわかる。尚、一次再結晶粒の円相当の平均粒径は20〜25μmの範囲であった。
1 窒化処理炉
2 鋼板
3 アンモニア導入管
4 炉天井
5 炉側壁
6 ノズル
7 炉の床
8 炉側壁に配置したアンモニア導入口
t1 走行する鋼板とアンモニア導入管の距離
t2 走行する鋼板と炉天井または床との距離
t3 走行する鋼板の端部と炉側壁またはアンモニア導入口との距離
W 走行する鋼板の幅
L アンモニア導入管に配置されているノズル配置の最大幅
H 鋼板パスラインからアンモニア導入口中心までの距離

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.045〜0.080%、Si:2.8〜4.0%、酸可溶性Al:0.024〜0.035%、N:0.0060〜0.0095%、SとSe:S当量Seq=S+0.405Seとして0.005〜0.010%、Mn:0.06〜0.15%、Ti≦0.005%、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1200℃以下の温度で加熱し、熱間圧延を施して熱間圧延鋼帯とし、この熱延鋼帯を焼鈍し、最終冷間圧延の圧延率を85%〜93%とし、一次再結晶・脱炭焼鈍温度を810℃〜880℃の湿水素雰囲気中で行い、その後、鋼板走行状態の下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中の窒化処理で全窒素含有量を0.015〜0.027質量%として、その後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造において、
    前記窒化処理における鋼板の一方の面及び他方の面における表面から20%厚み部分の窒素含有量(質量%)をそれぞれσN1、σN2としたとき、σN1及びσN2を下記の式(1)を満たす範囲内とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
    D=|σN1−σN2|/tN ≦ 0.40 ・・・式(1)
    ここで、tN:窒化後全板厚窒素含有量(質量%)である。
  2. 前記窒化処理を、アンモニア導入管を走行する鋼板の片側面上に鋼板面に平行に配置した処理炉で行う際、アンモニア導入管と鋼板と炉壁のそれぞれの配置関係を、次の条件2の関係を満たすようにすることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
    条件2:
    t1≧50mm
    l≦t1
    t2≧2×t1
    t3≧2.5×t1
    L≧1.2×W
    ここで、t1:走行する鋼板とアンモニア導入管の距離
    t2:走行する鋼板と炉天井との距離
    t3:走行する鋼板の端部と炉壁との距離
    l:アンモニア導入管のアンモニア噴出ノズルの間隔
    W:走行する鋼板の幅
    L:ノズル配置の最大幅
  3. 鋼板中央部をカバーするアンモニア導入管と鋼板端部側をカバーする2本のアンモニア導入管の3本一組で鋼板幅全体をカバーするようにし、これら導入管の鋼板走行方向の間隔(L0)を550mm以下とすることを特徴とする請求項2記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
  4. 前記窒化処理を、アンモニア導入口を走行する鋼板の端部延長部の炉の側壁に配置した処理炉で行う際、アンモニア導入口と鋼板と炉壁のそれぞれの配置関係を、次の条件3の関係を満たすようにすることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
    条件3:
    t1≧100mm
    t3≧W/4
    H≦W/3
    ここで、t1:走行する鋼板と炉天井または床との距離
    W:走行する鋼板の幅
    t3:走行する鋼板の端部とアンモニア導入口との距離
    H:鋼板パスラインから導入口中心までの距離
  5. 前記アンモニア導入管またはアンモニア導入口を、鋼板走行方向に沿って処理炉の複数箇所に配置したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造における鋼板の窒化方法。
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