JP2011169804A - 熱可塑性樹脂成形品の一定歪下でのクリープ破壊寿命の測定方法及び予測方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形品の一定歪下でのクリープ破壊寿命の測定方法及び予測方法 Download PDF

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【課題】精度よく一定歪下でのクリープ破壊寿命を測定する方法、及び、歪量とクリープ破壊寿命との関係のデータを精度よく取得することにより、複雑な計算を行うことなく、容易に、高精度のクリープ破壊に関する寿命曲線を導出して、実測された熱可塑性樹脂成形品の歪量から、熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命を高精度で予測する方法を提供すること。
【解決手段】ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片を用いて一定歪下でのクリープ破壊試験を行い、取得された歪量とクリープ破壊時間のデータから、歪量とクリープ破壊時間の相関に関する寿命曲線を導出し、熱可塑性樹脂成形品の歪量を実測することにより寿命曲線から熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命を予測する。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形品の一定歪下でのクリープ破壊寿命の測定方法及び予測方法に関する。
熱可塑性樹脂は、射出成形等の種々の方法により容易に加工できることや、軽量であること等多くの利点を有することから、金属材料や木材等の古くから使用されている材料に変えて、多くの用途で使用されている。
このように熱可塑性樹脂成形品は多くの用途で使用されており、例えば、インサート成形品、圧入構造を有する成形品、クリップ、バネ等の、一定量の歪が発生している条件で使用される用途でも用いられている。しかし、成形品が一定歪条件で荷重を受け続けて使用される場合には、クリープ破壊と呼ばれる成形品の破壊現象が生じる問題がある。そして、熱可塑性樹脂成形品からなる部品にクリープ破壊が生じた場合には、製品の深刻な故障に結びつくことがあるため、部品の交換時期や耐用期間を定めるために、クリープ破壊寿命の予測が必要となる。
熱可塑性樹脂成形品の一定歪下でのクリープ破壊寿命を予測するためには、試験片に一定歪を与えることができる市販のクリープ試験機により、歪量に応じたクリープ破壊寿命を測定し、得られた歪量とクリープ破壊寿命との関係のデータからクリープ破壊に関する寿命曲線を導出し、実際に使用する熱可塑性樹脂の成形品の歪量を測定して寿命曲線から予測されるクリープ破壊寿命を推定することが考えられる。
しかし、上記の方法では、通常クリープ試験に用いられるダンベル型等の試験片を用いて一定歪下でのクリープ破壊寿命を測定しても、得られる結果にバラつきが大きく、信頼性の高い寿命曲線を導出できないため、クリープ破壊寿命の精度が低いという問題がある。
このように一定歪下での熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命を精度よく予測することは困難であるため、予測精度を向上する方法として、特許文献1に記載されるインサート成形品のクリープ破壊寿命の推定方法が提案されている。特許文献1に記載のインサート成形品のクリープ破壊寿命の推定方法は、クリープ破壊過程の時間を短い時間間隔に分割し、分割された各区間での平均発生応力を見積もり、定荷重下で測定されたクリープ破壊寿命のデータに基づき各区間で成形品が受けるダメージ量を算出し、ダメージの累積量が1を超える時点をクリープ破壊時間として予測するものである。
しかし、特許文献1に記載の発明は、非常に複雑な計算過程が要求されるため、クリープ破壊寿命の予測が容易でなく、その計算過程において多くの仮定を含むため予測の際の誤差が生じ、クリープ破壊寿命の精度について改良の余地のあるものである。
特開2007−078646号公報
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、精度よく一定歪下でのクリープ破壊寿命を測定する方法、及び、歪量とクリープ破壊寿命との関係のデータを精度よく取得することにより、複雑な計算を行うことなく、容易に、高精度のクリープ破壊に関する寿命曲線を導出して、実測された熱可塑性樹脂成形品の歪量から、熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命を高精度で予測する方法を提供することにある。
本発明者らは、ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片を用いて一定歪下でのクリープ破壊試験を行うことにより、歪量とクリープ破壊時間の関係についてバラつきの少ないデータを取得することができることを見出し、取得された歪量とクリープ破壊時間のデータから、歪量とクリープ破壊時間の相関に関する寿命曲線を導出し、熱可塑性樹脂成形品の歪量を実測することにより寿命曲線から熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命を高精度に予測できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
(1) ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片に一定歪を与える、クリープ破壊寿命の測定方法。
(2) 前記熱可塑性樹脂がポリアセタール樹脂である、(1)記載のクリープ破壊寿命の測定方法。
(3) 以下の1)から4)の手順を含む、熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の予測方法。
1)ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片に一定歪を与え、クリープ破壊寿命を予測する温度条件下において、2点以上の歪量についてクリープ破壊寿命を測定する手順、
2)手順1)で得られた歪量とクリープ破壊寿命のデータから、前記熱可塑性樹脂成形品の寿命曲線を導出する手順、
3)前記熱可塑性樹脂成形品の歪量を測定する手順、及び、
4)手順3)で測定された前記熱可塑性樹脂成形品の歪量と、前記寿命曲線とから、前記熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の推定値を読み取る手順。
(4) 前記熱可塑性樹脂成形品がポリアセタール樹脂の成形品である、(3)記載のクリープ破壊寿命の予測方法。
本発明によれば、一定歪下のクリープ破壊について、精度よく測定することが可能となる。また、本発明の方法により得られた歪量とクリープ破壊時間との関係のデータを用いることにより、複雑な計算を要することなく、容易に、クリープ破壊に関する精度の高い寿命曲線を導出することが可能となり、熱可塑性樹脂の成形品の歪量を測定することにより寿命曲線から容易に熱可塑性樹脂の成形品のクリープ破壊寿命を予測できる。
実施例1、比較例1及び参考例1において測定された、クリープ破壊寿命と歪量との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に記載される発明に限定されない。以下、熱可塑性樹脂成形品、クリープ破壊寿命の測定方法、及びクリープ破壊寿命の予測方法について順に説明する。
<熱可塑性樹脂成形品>
本発明において、クリープ破壊寿命の測定及び予測の対象となる熱可塑性樹脂成形品について、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂組成物、成形品の製造方法について順に説明する。
[熱可塑性樹脂]
本発明において、クリープ破壊寿命の測定及び予測の対象となる成形品の製造に使用される熱可塑性樹脂は特に制限されず、従来、種々の製品の製造に使用されている熱可塑性樹脂から適宜選択される。好適な熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等からなる芳香族ポリエステル;ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル;ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロン等のポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂(ホモ又はコポリマー);ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリアクリロニトリル;環状オレフィン系樹脂;(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート;AS樹脂;ABS樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン等のポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(4,4′−ビスフェノールエーテルスルホン)等のポリスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;液晶性ポリマー;フッ素樹脂等を挙げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
これらの熱可塑性樹脂の中では、ポリアセタール樹脂等のクリープ特性に優れる樹脂を用いるのがより好ましい。かかる樹脂に本発明の方法を適用した場合には、クリープ破壊寿命が非常に長い場合でも精度よく寿命を予測でき本発明の効果が顕著となる。以下、ポリアセタール樹脂について説明する。
〔ポリアセタール樹脂〕
ポリアセタール樹脂には、オキシメチレン基(−CHO−)を構成単位とするポリアセタールホモポリマー、及びオキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマーが含まれる。コポリマーにおいて、コモノマー単位には、オキシC2−6アルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基等のオキシC2−4アルキレン単位)が含まれる。コモノマー単位の含有量は、ポリアセタール系樹脂全体に対して、例えば、0.01〜30モル%、好ましくは0.03〜20モル%、さらに好ましくは0.03〜15モル%程度の範囲から選択できる。
ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマーである場合は、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマー等であってもよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール系樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化等により安定化してもよい。
ポリアセタール樹脂としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、トリオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール等の環状エーテルや環状ホルマールを重合することにより製造できる。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明において熱可塑性樹脂成形品の製造に用いる熱可塑性樹脂は、充填材を配合された熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂に配合する充填材は特に制限されず、従来から熱可塑性樹脂に使用される充填剤から適宜選択すればよい。従来公知の無機充填剤としては、繊維状充填材、粉粒状充填材、板状充填材等が挙げられる。
好ましい繊維状充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
また、粉粒状充填材としては、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられ、板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
また本発明において熱可塑性樹脂成形品の製造に用いる熱可塑性樹脂は、核剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加され、所望の特性を付与された熱可塑性樹脂組成物であってもよい。
[熱可塑性樹脂成形品の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を用いて、従来公知の成形方法で得ることができる。従来公知の成形方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押出成形、ブロー成形等種々の成形方法を挙げることができる。
<クリープ破壊寿命の測定方法>
本発明のクリープ破壊寿命の測定方法は、ノッチ(切り欠き)を有する試験片を用いて行う。試験片としてノッチを有するものを用いることにより、クリープ試験機において一定荷重を与えた場合のクリープ破壊時間のバラつきを低減することができる。
クリープ破壊寿命を測定するための試験片の形状は、ノッチを形成可能であり、クリープ試験機により把持され一定歪を与えることが可能なものであれば特に制限されない。好適な試験片の形状としては、例えば、ASTM引張り試験片やISO引張り試験片等が挙げられる。
ノッチの位置及び数は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。例えば、試験片の形状がISO引張り試験片である場合には、標線間の中央部に左右対称にノッチを設けるのが好ましい。
ノッチの形状は、本発明の目的が阻害されない限り特に制限されず、U字型ノッチ、V字型ノッチ、キーホール型ノッチ等の従来から熱可塑性樹脂の試験片に用いられているノッチの形状から適宜選択することができる。これらのノッチ形状の中では、ノッチ底の形状を制御しやすいことから、V字型ノッチを採用することが好ましい。
一定歪を与えることが可能なクリープ試験機は市販のものを用いればよく、例えば、株式会社オリエンテックにより製造されているクリープ試験機を用いることが出来る。
本発明のクリープ破壊寿命の測定方法において、試験時の歪量及び温度は特に制限されず、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜定めることができる。試験時の歪量は材料の降伏歪より小さいのが好ましい。歪量が材料の降伏歪以上の場合、試験片の塑性変形による影響を受けやすくなる。試験時の温度は、成形品の実使用温度であっても実使用温度より高い温度であってもよい。試験時の温度が実使用温度よりも高い場合、樹脂が、熱劣化で物性が低下する・ガラス転移を跨ぐ・軟化する・溶融するといった、著しい物性変化を生じない範囲でなるべく高い温度で試験を行うのが好ましい。試験温度を高くすることによりクリープ破壊を促進することができるためである。具体的な試験温度は、ポリアセタール樹脂の場合、60℃以上140℃以下が好ましく、80℃以上120℃以下がより好ましい。
本発明の方法において、クリープ試験機により測定される一定歪下のクリープ破壊時間は、クリープ試験機においてロードセルにより測定される反発力(N)が急激に低下する時間を確認することにより測定することが出来る。反発力が急激に低下した場合に試験片が破断する場合と破断しない場合とがあるが、いずれの場合であってもクリープ破壊時間とする。
[クリープ破壊寿命の予測方法]
次いで、クリープ破壊寿命の予測方法について説明する。本発明の熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の予測方法は、以下に説明する1)から4)の手順を含むものである。
まず、手順1)は、ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片に一定歪を与え、クリープ破壊寿命を予測する温度条件下において、2点以上の歪量についてクリープ破壊寿命を測定する手順である。手順1)におけるクリープ破壊寿命の測定方法は、クリープ破壊寿命の測定方法の項目において前述した通りである。
手順1)においては、後述する手順2)において、寿命曲線を導出するために、2点以上の歪量についてクリープ破壊寿命を測定する。手順3)で導出する寿命曲線の精度の点で、手順1)におけるクリープ破壊寿命の測定は、3点以上の歪量について行うのがより好ましく、4点以上の歪量について行うのが特に好ましい。なお、手順1)において、異なる条件でのクリープ破壊の測定に用いる試料は、同一の熱可塑性樹脂材料により製造されたものを用いる。
手順2)は、手順1)で得られた歪量とクリープ破壊寿命のデータから、前記熱可塑性樹脂成形品の寿命曲線を導出する手順である。手順1)で得られたデータに基づき寿命曲線を導出する方法は特に制限されないが、手順1)で得られた、歪量とクリープ破壊寿命との関係のデータについて、所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって所定の形式の近似関数を求めるのが好ましい。近似関数の形式としては特に限定されず、べき乗近似、対数近似、線形近似、多項式近似、指数近似等が挙げられる。
手順3)は、クリープ破壊寿命を予測したい熱可塑性樹脂成形品の歪量を測定する手順である。クリープ破壊寿命を予測する対象の熱可塑性樹脂の成形品の歪量の測定方法は特に制限されない。好適な歪量の測定方法としては、種々の歪ゲージを用いる方法や、高解像度のカメラを用いて被計測物の表面の変形を記録し、記録されたデータから被計測物の3次元変形情報を取得するコリレーションシステム等が挙げられる。
手順4)は、手順3)で測定された、クリープ破壊寿命を予測したい熱可塑性樹脂成形品の歪量と、手順2)で導出された寿命曲線とから、前記熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の推定値を読み取る手順である。手順3)で測定された熱可塑性樹脂成形品の歪量に基づき、手順2)で導出された寿命曲線からクリープ破壊寿命を読み取る方法は特に制限されず、クリープ破壊寿命の軸と、歪量の軸とを有する座標面上に作成された寿命曲線から目視で読み取ってもよく、寿命曲線に関する近似関数に、手順3)で測定された熱可塑性樹脂成形品の歪量を代入して算出してもよい。
本発明によれば、以上説明した1)から4)の手順を行うことにより、インサート成形品、圧入構造を有する成形品、クリップ、バネ等の一定歪条件において使用される成形品の寿命予測を、容易且つ高精度で行うことが可能となる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔実施例1〕
熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂(ジュラコン(登録商標)M90−44、ポリプラスチックス株式会社製)を用いて製造した、ISO引張り試験片の標線間の中央部に対称に2つのノッチを有する試験片を用いて、株式会社オリエンテック社製のクリープ試験機(CP6−M−500)により、4条件の歪量について、温度80℃での、空気中でのポリアセタール樹脂のクリープ破壊寿命を測定した。得られたクリープ破壊寿命の測定結果を、横軸をクリープ破壊寿命とし、縦軸を歪量とする図1のグラフに示す。なお、図1のグラフにおいて横軸を対数軸とした。
実施例1のクリープ破壊寿命の測定結果に基づき、マイクロソフト(登録商標)エクセル(登録商標)により対数近似を行い、寿命曲線を導出した。寿命曲線を図1に示す。
〔比較例1〕
試験片がノッチを有さないことの他は、実施例1と同様にして、5条件の歪量について、空気中でのポリアセタール樹脂のクリープ破壊寿命を測定した。クリープ破壊寿命の測定結果を図1に示す。
〔参考例1〕
高さ20mm、半径12mmの円柱状の金属製のインサートを内部に備え、金属インサートの外周に高さ20mm、肉厚2.4mmの樹脂部を有する、ウェルドなしのインサート成形品を試料として用いて、80℃でのクリープ破壊寿命を測定した。クリープ破壊寿命の測定は、試料10個を用いて、熱風乾燥機内で試料の半数が破壊を起こすまで放置する事により行い、試料の50%がクリープ破壊した日数をクリープ破壊寿命とした。試験の結果、クリープ破壊寿命は700日(16,800時間)であった。参考例1の試験結果を、歪量1.2%、クリープ破壊寿命16,8000時間としてプロットした。
図1より、実施例1のノッチを有する試験片を用いた場合では精度の高い測定結果が得られ、実施例1の結果に基づき、対数近似により導出した寿命曲線から予測されるクリープ破壊寿命と、参考例1による実際の一定歪下でのクリープ破壊寿命の測定結果とがよく一致することが確認された。
また、比較例2のノッチを有さない試験片を用いてクリープ破壊寿命を測定した場合には、クリープ破壊寿命の測定結果が大きくバラつき、精度の高い寿命曲線を導出できないことが分かる。

Claims (4)

  1. ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片に一定歪を与える、クリープ破壊寿命の測定方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂がポリアセタール樹脂である、請求項1記載のクリープ破壊寿命の測定方法。
  3. 以下の1)から4)の手順を含む、熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の予測方法。
    1)ノッチを有する熱可塑性樹脂の試験片に一定歪を与え、クリープ破壊寿命を予測する温度条件下において、2点以上の歪量についてクリープ破壊寿命を測定する手順、
    2)手順1)で得られた歪量とクリープ破壊寿命のデータから、前記熱可塑性樹脂成形品の寿命曲線を導出する手順、
    3)前記熱可塑性樹脂成形品の歪量を測定する手順、及び、
    4)手順3)で測定された前記熱可塑性樹脂成形品の歪量と、前記寿命曲線とから、前記熱可塑性樹脂成形品のクリープ破壊寿命の推定値を読み取る手順。
  4. 前記熱可塑性樹脂成形品がポリアセタール樹脂の成形品である、請求項3記載のクリープ破壊寿命の予測方法。
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