JP2011167133A - β−1,3−キシラナーゼおよびその利用 - Google Patents

β−1,3−キシラナーゼおよびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】β−1,3−キシラナーゼを大量かつ容易に製造し、その利用法を提供する。
【解決手段】Thermotoga neapolitana DSM4359由来またはVibrio sp. AX-4由来のβ−1,3−キシラナーゼに対して、特定のシグナル配列を連結する。
【選択図】なし

Description

本発明は、β−1,3−キシラナーゼおよびその利用に関し、特に、Thermotoga neapolitana DSM4359またはVibrio sp. AX-4由来のβ−1,3−キシラナーゼ、およびその利用に関する。
β−1,3−キシラナーゼは、β−1,3−キシランを加水分解する酵素で、β−1,3−キシロオリゴ糖を生成する酵素である。近年、これらのβ−1,3−キシロオリゴ糖が癌細胞のアポトーシス誘導活性を有することが明らかになり、これらβ−1,3−キシロオリゴ糖を作製するための手段としてのβ−1,3−キシラナーゼに対して注目が集まりつつある。
上述したβ−1,3−キシロオリゴ糖を製造するためにはβ−1,3−キシラナーゼを大量に入手する必要があるが、β−1,3−キシラナーゼを発現する生物は、自然界において僅かの種類しか知られていない。
例えば、特許文献1には、ビブリオ アルギノリティクスB−107(Vibrio alginolyticus B−107)由来のβ−1,3−キシラナーゼが、特許文献2には、アルカリゲネス属菌株XY−234(Alcaligenes sp. XY−234)由来のβ−1,3−キシラナーゼが、特許文献3には、ビブリオ属菌株AX−4由来のβ−1,3−キシラナーゼが記載されている。そして、これらの特許文献では、各微生物の培養産物から分離・採取したβ−1,3−キシラナーゼを用いて、β−1,3−キシランを分解することが記載されている。
しかしながら、これらの技術において、培養産物から得られるβ−1,3−キシラナーゼの量は僅かであって、工業的にβ−1,3−キシラナーゼを利用するためには不十分な量であった。
そこで、当該問題を解決するために、β−1,3−キシラナーゼを大腸菌の形質転換体によって大量発現させようとする試みがなされた。
例えば、特許文献4には、ビブリオ属菌株XY−214からβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子をクローニングして当該遺伝子を大腸菌に導入し、得られた大腸菌の形質転換体を用いてβ−1,3−キシラナーゼを製造する技術が記載されている。また、非特許文献1には、Vibrio sp. AX-4からβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子をクローニングして当該遺伝子を大腸菌に導入し、得られた大腸菌の形質転換体を用いてβ−1,3−キシラナーゼを製造する技術が記載されている。
特開2000−157262号公報(2000年6月13日公開) 特開平10−295372号公報(1998年11月10日公開) 特開2001−86999号公報(2001年4月3日公開) 特開2001−275680号公報(2001年10月9日公開)
Masashi Kiyohara et al., Biochem J., (2005), 388, p949-957
しかしながら、大腸菌を用いてβ−1,3−キシラナーゼを強制発現させる場合には、(1)大腸菌の菌体内に蓄積されたβ−1,3−キシラナーゼを精製する工程が必要である、(2)β−1,3−キシラナーゼの発現量が不十分である、(3)組換え生産させたβ−1,3−キシラナーゼが大腸菌内で封入体を形成し、可溶化酵素の収量が極めて低い、(4)封入体の活性化が工業的に困難である、などの多くの問題点を有している。
また、β−1,3−キシラナーゼは、特殊な細菌からしか見出されておらず、真核生物由来の細胞で発現・分泌することは困難であることが予測される。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、β−1,3−キシラナーゼを組換えにより分泌生産させることで、大量、安価かつ容易に製造し、その利用法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、β−1,3−キシラナーゼに特定のシグナル配列を連結させることによって、大量のβ−1,3−キシラナーゼを糸状菌(例えば、麹菌(例えば、アスペルギルスオリザなど))などを宿主として発現・分泌させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のポリヌクレオチドは、上記課題を解決するために、以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、以下の(d)〜(f)の何れかのポリヌクレオチドであることを特徴としている。つまり、
(a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質;
(b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(d)酵素領域をコードする配列番号10または12に示す塩基配列と、シグナル配列をコードする配列番号14、16、18または20に示す塩基配列とを有するポリヌクレオチド;
(e)上記(d)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)上記(d)のポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本発明のポリヌクレオチドは、上記課題を解決するために、配列番号10または12に示す塩基配列を有するポリヌクレオチドであることを特徴としている。
本発明のタンパク質は、上記課題を解決するために、以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質であることを特徴としている。つまり、
(a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質;
(b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
本発明の形質転換体は、上記課題を解決するために、本発明のポリヌクレオチド、または、本発明の組換えベクターを含むことを特徴としている。
本発明の形質転換体は糸状菌であればよく、例えば、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、ノイロスポラ属、リゾプス属、ムコール属、モナスカス属、リゾムコール属、モルチエラ属、セファロスポリウム属であることが好ましい。アスペルギルス属としては、例えば、アスペルギルスオリザ、アスペルギルスソーヤ、アスペルギルスジャポニカス、アスペルギルスカワチ、アスペルギルスアワモリ、アスペルギルスウサミ、アスペルギルスシロウサミ、アスペルギルスサイトイ、アスペルギルスグラウカス、アスペルギルスニガー、アスペルギルスニードランス、アスペルギルステレウス、アスペルギルスフラバス、または、アスペルギルスフミガタスであることが好ましい。
本発明のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造方法は、上記課題を解決するために、本発明の形質転換体を用いることを特徴としている。
本発明のキシロオリゴ糖の製造方法は、上記課題を解決するために、本発明の形質転換体の培養産物を用いることを特徴としている。
本発明のキシロオリゴ糖の製造方法では、上記培養産物は、培養上清であることが好ましい。
本発明であれば、発現させたβ−1,3−キシラナーゼを、菌体外へ「数g/L−培地」レベルで大量に分泌することができる。
また、β−1,3−キシラナーゼは菌体外へ分泌されるので、β−1,3−キシラナーゼを精製する工程を低コスト化、簡略化または省略することができる。
Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を麹菌にて発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示す。 Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を麹菌にて発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示す。 Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。 Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。 Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。 Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による、β−1,3−キシランの分解産物の経時変化を示す。 大腸菌用の発現ベクターの構造を示す模式図である。 大腸菌にて発現させたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。 celBss−Thxylの至適温度の検討結果を示すグラフである。 celBss−Thxylの温度安定性の検討結果を示すグラフである。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また、明細書中で「A〜B」と記載されていれば「A以上、B以下」を意図し、本明細書中で「および/または」と記載されていれば、いずれか一方または両方を意図する。
〔1.ポリヌクレオチド〕
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、ポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、以下の(d)〜(f)の何れかのポリヌクレオチドである。つまり、
(a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質;
(b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(d)酵素領域をコードする配列番号10または12に示す塩基配列と、シグナル配列をコードする配列番号14、16、18または20に示す塩基配列とを有するポリヌクレオチド;
(e)上記(d)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)上記(d)のポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
また、本実施の形態のポリヌクレオチドは、配列番号10または12に示す塩基配列を有するポリヌクレオチドである。
配列番号10に示す塩基配列とは、コドンが改変されたThermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子の塩基配列である。配列番号10のようにコドンを改変することによって、麹菌内におけるポリヌクレオチドの発現量を上昇させることができる。また、配列番号11に示すアミノ酸配列とは、配列番号10に示す塩基配列がコードするアミノ酸配列である。つまり、配列番号10および11は、プロセッシングが生じてシグナル配列が除去された後の、Thermotoga neapolitana DSM4359由来の成熟型β−1,3−キシラナーゼに対応するものである。
配列番号12に示す塩基配列とは、コドンが改変されたVibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子の塩基配列である。配列番号12のようにコドンを改変することによって、麹菌内におけるポリヌクレオチドの発現量を上昇させることができる。また、配列番号13に示すアミノ酸配列とは、配列番号12に示す塩基配列がコードするアミノ酸配列である。つまり、配列番号12および13は、プロセッシングが生じてシグナル配列が除去された後の、Vibrio sp. AX-4由来の成熟型β−1,3−キシラナーゼに対応するものである。
配列番号14〜配列番号21はシグナル配列に対応する塩基配列またはアミノ酸配列であって、当該シグナル配列が存在するが故に、成熟型β−1,3−キシラナーゼタンパク質は菌体外へ分泌され得る。
本実施の形態のポリヌクレオチドでは、例えば、amyBシグナル配列(amyB signal sequence)、glaBシグナル配列(glaB signal sequence)、celAシグナル配列(celA signal sequence)、または、celBシグナル配列(celB signal sequence)を用いることが好ましい。具体的には、amyBシグナル配列の塩基配列が配列番号14に示され、そのアミノ酸配列が配列番号15に示される。glaBシグナル配列の塩基配列が配列番号16に示され、そのアミノ酸配列が配列番号17に示される。celAシグナル配列の塩基配列が配列番号18に示され、そのアミノ酸配列が配列番号19に示される。celBシグナル配列の塩基配列が配列番号20に示され、そのアミノ酸配列が配列番号21に示される。
上述したように、本実施の形態のポリヌクレオチドは、(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
この場合、本実施の形態のポリヌクレオチドは(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質をコードしていればよく、具体的なコドンは特に限定されない。よって、(a)〜(c)の何れかに記載のアミノ酸配列をコードする全てのポリヌクレオチドが本発明に含まれる。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(a)に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含するが、酵素領域とシグナル配列とは、直接連結されていてもよく間接的に連結されていてもよい。つまり、つまり、酵素領域とシグナル配列との間には他のアミノ酸(例えば、リンカーなど)が存在していてもよい。当該他のアミノ酸の種類および数としては特に限定されない。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の構造を野生型に保つという観点からは、酵素領域とシグナル配列とは、直接連結される方が好ましいといえる。
タンパク質中における酵素領域とシグナル配列との位置関係は特に限定されず、何れがN末端側に配置されてもよい。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を効率的に菌体外へ分泌するという観点からは、酵素領域のN末端側にシグナル配列が配置されることが好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(b)に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含するが、このとき、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸のタンパク質内における位置は特に限定されない。また、「1個若しくは数個」とは、具体的には10個以内であることが好ましく、6個以内であることが更に好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(c)に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含するが、当該ポリヌクレオチドは、(a)に記載のタンパク質と相同性の高いタンパク質をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。具体的には、本実施の形態のポリヌクレオチドは、(a)に記載のタンパク質と70%以上の相同性を有するタンパク質をコードするものであることが好ましく、80%以上の相同性を有するタンパク質をコードするものであることが更に好ましく、90%以上の相同性を有するタンパク質をコードするものであることが更に好ましく、95%以上の相同性を有するタンパク質をコードするものであることが最も好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、公知の方法で求めることができる。具体的にはGENETYX−WIN(株式会社ゼネティックス社製)を用いて、一致するアミノ酸配列の割合(%)として相同性を算出することが可能である。アミノ酸配列の相同性は、比較するアミノ酸配列同士を最適な状態にアラインメントした上で決定することが可能である。つまり、比較するアミノ酸配列同士を最適な状態にアラインメントするために、アミノ酸の付加または欠失(例えば、ギャップ等)を考慮することが可能である。
また、上述したように、本実施の形態のポリヌクレオチドは、(d)〜(f)の何れかのポリヌクレオチドであることが好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(d)のポリヌクレオチドを包含するが、酵素領域とシグナル配列とは、直接連結されていてもよく間接的に連結されていてもよい。つまり、つまり、酵素領域をコードする塩基配列とシグナル配列をコードする塩基配列との間には他の塩基配列(例えば、リンカーなど)が存在していてもよい。当該他の塩基配列の種類および塩基数としては特に限定されない。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の構造を野生型に保つという観点からは、酵素領域をコードする塩基配列とシグナル配列をコードする塩基配列とは、直接連結される方が好ましいといえる。
本実施の形態のポリヌクレオチド中における酵素領域をコードする塩基配列とシグナル配列をコードする塩基配列との位置関係は特に限定されず、何れが5’末端側に配置されてもよい。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を効率的に菌体外へ分泌するという観点からは、酵素領域をコードする塩基配列の5’末端側にシグナル配列をコードする塩基配列が配置されることが好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(e)のポリヌクレオチドを包含する。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドの融解温度(Tm値)から15℃、好ましくは10℃、更に好ましくは5℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。例えば、一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。更に具体的には、上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている周知の方法で行うことができる。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、(f)のポリヌクレオチドを包含するが、当該ポリヌクレオチドは、(d)に記載のポリヌクレオチドと相同性の高いポリヌクレオチドであることが好ましい。具体的には、本実施の形態のポリヌクレオチドは、(d)に記載のポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであることが好ましく、80%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであることが更に好ましく、90%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであることが更に好ましく、95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであることが最も好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、上述したポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが連結されていてもよい。その他のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとしては特に限定されないが、標識(例えば、ヒスチジンタグ、Strep(II)タグ、MycタグまたはFLAGタグなど)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、GFPまたはMBPなど)をコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。これらのヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが連結される部位は特に限定されるものではなく、例えば、翻訳されるタンパク質のN末端側であっても、C末端側でもあってもよい。シグナル配列が切断・除去されるという観点からは、シグナル配列とは反対側に連結されることが好ましい。
本実施の形態のポリヌクレオチドは、周知の方法に基づいて作製することが可能である。例えば、化学合成法またはPCR法などによって作製することが可能である。コドンの改変に関しても、適宜周知の方法に基づいて行うことが可能である。例えば、市販のキット(KOD−Plus−Site Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)、Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit(Clonetech製)、QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene製)など)を用いてコドンを改変することが可能である。なお、これらの方法の詳細は、当業者にとって周知である。
タンパク質がβ−1,3−キシラナーゼ活性を有するか否かは、in silico解析では予測できず、タンパク質を取得して適宜公知の方法によって活性を測定することによって確認することが可能である。例えば、タンパク質とβ−1、3−キシランとを混合して反応させ、反応産物中にβ−1,3−キシランの分解産物であるβ−1、3−キシロオリゴ糖が生成されているか否かを薄層クロマトグラフィーで検出することによって、確認することが可能である。なお、当該確認方法の詳細に関しては、実施例中に説明した。
〔2.タンパク質〕
本実施の形態のタンパク質は、以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質である。つまり、
(a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質;
(b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質;
(c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
各配列番号が意図するところは、既に〔1.ポリヌクレオチド〕にて説明したので、ここでは説明を省略する。
本実施の形態のタンパク質は、(a)に記載のタンパク質を包含するが、酵素領域とシグナル配列とは、直接連結されていてもよく間接的に連結されていてもよい。つまり、つまり、酵素領域とシグナル配列との間には他のアミノ酸(例えば、リンカーなど)が存在していてもよい。当該他のアミノ酸の種類および数としては特に限定されない。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の構造を野生型に保つという観点からは、酵素領域とシグナル配列とは、直接連結される方が好ましいといえる。
タンパク質中における酵素領域とシグナル配列との位置関係は特に限定されず、何れがN末端側に配置されてもよい。成熟型のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を効率的に菌体外へ分泌するという観点からは、酵素領域のN末端側にシグナル配列が配置されることが好ましい。
本実施の形態のタンパク質は、(b)に記載のタンパク質を包含するが、このとき、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸のタンパク質内における位置は特に限定されない。また、「1個若しくは数個」とは、具体的には10個以内であることが好ましく、6個以内であることが更に好ましい。
本実施の形態のタンパク質は、(c)に記載のタンパク質を包含するが、このとき、(a)に記載のタンパク質との相同性が高いことが好ましい。具体的には、本実施の形態のタンパク質は、(a)に記載のタンパク質と70%以上の相同性を有することが好ましく、80%以上の相同性を有することが更に好ましく、90%以上の相同性を有することが更に好ましく、95%以上の相同性を有することが最も好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、公知の方法で求めることができる。具体的にはGENETYX−WIN(株式会社ゼネティックス社製)を用いて、一致するアミノ酸配列の割合(%)として相同性を算出することが可能である。アミノ酸配列の相同性は、比較するアミノ酸配列同士を最適な状態にアラインメントした上で決定することが可能である。つまり、比較するアミノ酸配列同士を最適な状態にアラインメントするために、アミノ酸の付加または欠失(例えば、ギャップ等)を考慮することが可能である。
本実施の形態のタンパク質は、上述したタンパク質のみからなるものであってもよいが、その他のアミノ酸またはタンパク質が連結されていてもよい。その他のアミノ酸またはタンパク質としては特に限定されないが、標識(例えば、ヒスチジンタグ、MycタグまたはFLAGタグなど)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、GFPまたはMBPなど)などが挙げられる。これらのアミノ酸またはタンパク質が連結される部位は特に限定されるものではなく、例えば、翻訳されるタンパク質のN末端側であっても、C末端側でもあってもよい。シグナル配列が切断・除去されるという観点からは、シグナル配列とは反対側に連結されることが好ましい。
〔3.組換えベクター〕
本実施の形態の組換えベクターは、本発明のポリヌクレオチドを含有するものである。
本発明のポリヌクレオチドに関しては既に説明したので、ここでは説明を省略する。
本実施の形態の組換えベクターを構成するベースとなるベクターとしては特に限定されない。例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、アデノウイルスまたはレトロウイルスなどを使用することが可能であるが、これらに限定されない。
宿主として麹菌を用いることを考慮すれば、ベクターとしてプラスミドを用いることが好ましく、本来、大腸菌用のベクターとして開発されたpUC119(宝ホールディングス社製)をシャトルベクターに改変して用いることが更に好ましいといえる。また、公知のコトランスフォーメーション用のベクターも用いることができる。
本実施の形態の組換えベクターは、導入される宿主に応じた、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)および選択マーカーを含有することが好ましい。
プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)、または、麹菌由来のsodMプロモーターなどを用いることが可能であるが、これらに限定されない。麹菌内で所望のタンパク質を大量に発現させるという観点からは、sodM、ヘモリシン遺伝子、melO、melB、pepA、xynG1、xynG2、xynF1、No.8AN、No.9AO、histone H2A、agdA、glaA、amyB、TEF1、pgkA、eno1、glaB、catA、catB、glaB、cruciform binding protein遺伝子、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ遺伝子、または、small V-ATPase遺伝子のプロモーターを用いることが更に好ましいといえる。また、これらのプロモーター内のシス因子を増幅した改良プロモーター、および、これらのプロモーターと、異種プロモーター内のシス因子とを融合させた改良プロモーターを用いることも可能である。
ターミネーターとしては、T7ターミネーター、または、麹菌由来のglaBターミネーターなどを用いることが可能であるが、これらに限定されない。麹菌内で効率よく転写を終結させるという観点からは、glaB、amyA、amyB、またはglaAのターミネーターを用いることが更に好ましいといえる。
選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、または、麹菌(例えば、アスペルギルスオリザなど)由来の硝酸還元酵素遺伝子(例えば、niaDなど)などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。形質転換された麹菌を正確に選択するという観点からは、硝酸還元酵素遺伝子(例えば、niaDなど)、sC、argB、pyrG、amdS、trpC、ptrA、met、hisA、leuA、leuB、benA、oliC、G418耐性遺伝子、hygromycin耐性遺伝子、Phleomycin耐性遺伝子、または、Bleomycin耐性遺伝子を用いることが更に好ましいといえる。
〔4.形質転換体〕
本実施の形態の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の組換えベクターを含むものである。換言すれば、本実施の形態の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の組換えベクターが導入されたものである。本発明のポリヌクレオチドおよび本発明の組換えベクターに関しては既に説明したので、ここでは説明を省略する。
本発明のポリヌクレオチドまたは組換えベクターが導入される宿主としては特に限定されず、例えば、大腸菌(例えば、Escherichia coliなど)Bacillus属、Brevibacillus属、酵母(例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe、Candida属酵母、Pichia属などを含むメタノール資化性酵母など)、昆虫細胞、線虫(例えば、Caenorhabditis elegansなど)、アフリカツメガエル(例えば、Xenopus laevisなど)の卵母細胞、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)、各種ヒト培養細胞、または、麹菌(例えば、アスペルギルスオリザ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルスソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルスカワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルスアワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルスサイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルスグラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルスニードランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルスジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルスウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルスシロウサミ(Aspergillus shirousamii)、アスペルギルステレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルスフラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルスフミガタス(Aspergillus fumigatus)など)などを用いることが可能である。β−1,3−キシラナーゼタンパク質を菌体外へ分泌された状態で大量に製造するという観点からは、宿主として麹菌を用いることが好ましく、麹菌の中でもアスペルギルスオリザ、アスペルギルスソーヤ、アスペルギルスアワモリ、またはアスペルギルスニガーを用いることが更に好ましく、アスペルギルスオリザを用いることが最も好ましい。なお、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」には、細胞、組織および器官だけでなく、生物個体も含まれる。
上述した宿主に対して本発明のポリヌクレオチドまたは組換えベクターを導入する方法は特に限定されず、適宜公知の方法に従えばよい。例えば、電気穿孔法、アグロバクテリア法、パーティクルガン法、リチウムクロライド法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、または、PEG−カルシウム法などの公知の方法を好適に用いることができる。なお、これらの方法の詳細は、当業者に周知である。
〔5.β−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造方法〕
本実施の形態のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造方法は、本発明の形質転換体を用いる方法である。本発明の形質転換体に関しては既に説明したので、ここでは説明を省略する。
具体的には、本実施の形態のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造方法は、少なくとも、本発明の形質転換体を培養するための培養工程を有することが好ましい。また、本実施の形態のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造方法は、上記培養工程以外に、当該培養工程にて生じた培養産物(固体および液体の混合物)から培養上清(液体)を回収するための回収工程、および/または、培養産物または培養上清を加熱するための加熱工程を有することが更に好ましい。
回収工程および加熱工程は培養工程の後で行われる工程であって、これらの工程の一方のみを行う場合には、「培養工程→回収工程」または「培養工程→加熱工程」の順番で各工程を行えばよい。これらの工程の両方を行う場合には、何れを先に行っても良い。つまり、「培養工程→回収工程→加熱工程」の順番で行うことも可能であるし、「培養工程→加熱工程→回収工程」の順番で行うことも可能である。以下に、各工程について説明する。
(A.培養工程)
培養工程では、本発明の形質転換体が培養される。そして、培養工程において、β−1,3−キシラナーゼタンパク質が発現するとともに、当該タンパク質が形質転換体の菌体外へ分泌される。
具体的な培養方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることが可能である。例えば、液体培養法または固体培養法などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。より多くのβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を製造するという観点からは、液体培養法を用いることが好ましい。
培養工程で用いられる培地の栄養源としては、通常の培養に用いられる栄養源を用いることが可能である。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、またはピルビン酸などを使用することが可能であるが、これらに限定されない。窒素源としては資化可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、または大豆粕アルカリ抽出物などが使用されるが、これらに限定されない。上記栄養源に加えて、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどを培地に加えることも可能である。
培養される形質転換体が麹菌である場合には、培地としてGPY培地またはCSL培地を用いることが好ましく、CSL培地を用いることが更に好ましい。実施例において明示しているように、CSL培地を用いれば、GPY培地を用いる場合と比較して、約10倍量のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を製造することができる。
培養工程によって、β−1,3−キシラナーゼタンパク質と形質転換体の菌体とが混在した培養産物を得ることができる。このとき、当該β−1,3−キシラナーゼタンパク質は菌体外へ分泌されているので、培養産物とβ−1,3−キシランを混合するだけで、β−1,3−キシランを分解することができる。
(B.回収工程)
上述した培養工程にて得られる培養産物は、β−1,3−キシラナーゼタンパク質と形質転換体の菌体とを含んでいる。このとき、β−1,3−キシラナーゼタンパク質は、菌体外へ分泌されて培地中に存在している。したがって、培養産物から菌体を除去して培養上清を得れば、より純度の高いβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を得ることが可能となる。
回収工程は菌体と培養上清とを分離できる工程であればよく、具体的な方法は特に限定されない。例えば、遠心分離法またはフィルター濾過法などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。
(C.加熱工程)
本発明に用いているThermotoga neapolitana DSM4359は超好熱性細菌であって、至適生育温度は、80℃〜90℃である。そして、当該細菌に由来するタンパク質は耐熱性が高く、加熱しても失活し難いという利点を有している。
加熱工程では、培養産物または培養上清を加熱することによって、β−1,3−キシラナーゼタンパク質以外のタンパク質を失活させる。つまり、加熱工程を行うことによって、培養産物または培養上清から、不必要な酵素の活性を除去することができる。
加熱工程は、培養産物または培養上清を加熱することができる工程であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
加熱温度は特に限定されないが、例えば、60℃〜85℃が好ましく、70℃〜85℃が更に好ましく、80℃〜85℃が最も好ましい。加熱時間は特に限定されないが、例えば、0.5時間〜20時間が好ましく、0.5時間〜5時間が更に好ましく、0.5時間〜1時間が最も好ましい。上記構成であれば、β−1,3−キシラナーゼタンパク質を失活させること無く、他の酵素を確実に失活させることができる。
〔6.キシロオリゴ糖の製造方法〕
本実施の形態のキシロオリゴ糖(より具体的には、β−1,3−キシロオリゴ糖)の製造方法は、本発明の形質転換体の培養産物を用いる方法である。更に好ましくは、上記培養産物として培養上清を用いる。
上述したように、本発明の形質転換体の培養産物および培養上清は、β−1,3−キシラナーゼタンパク質を含んでいる。したがって、当該β−1,3−キシラナーゼタンパク質を用いてβ−1,3−キシランを分解することによって、様々な重合度のβ−1,3−キシロオリゴ糖を製造することができる。
製造されるβ−1,3−キシロオリゴ糖には、β−1,3−キシランの分解によって生じる全てのβ−1,3−キシロオリゴ糖が含まれる。例えば、キシロビオース(2糖類)、キシロトリオース(3糖類)、キシロテトラオース(4糖類)、キシロペンタオース(5糖類)およびキシロヘキサオース(6糖類)などを製造することができるが、これらに限定されない。勿論、本実施の形態のキシロオリゴ糖の製造方法は、キシロース(1糖類)も製造することができる。
後述する実施例(例えば、図6参照)から明らかなように、本実施の形態のキシロオリゴ糖の製造方法は、2糖類および3糖類の生産性が高く、3糖類の生産性が最も高い。したがって、本実施の形態のキシロオリゴ糖の製造方法は、2糖類および3糖類の製造方法として利用することが好ましく、3糖類の製造方法として利用することが更に好ましいといえる。
本実施の形態のキシロオリゴ糖の製造方法は、本発明の形質転換体の培養産物中に含まれるβ−1,3−キシラナーゼタンパク質によってβ−1,3−キシランを分解するので、培養産物または培養上清と、β−1,3−キシランとを反応させる反応工程を有することが好ましい。
反応工程に用いる培養産物または培養上清の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した培養工程を有する方法によって製造されることが好ましく、追加工程として回収工程および/または加熱工程を有する方法によって製造されることが更に好ましいといえる。培養工程、回収工程および加熱工程に関しては既に説明したので、ここでは説明を省略する。
反応工程に用いられるβ−1,3−キシランの供給源は特に限定されないが、藻類の細胞壁中には多量のβ−1,3−キシランが含有されているので、供給源として藻類を用いることが好ましい。β−1,3−キシランの供給源として藻類を用いる場合には、細胞壁からβ−1,3−キシランを抽出するために、藻類を熱水処理(例えば、100℃にて1時間の煮沸)することが好ましい。熱水処理を行うタイミングは特に限定されないが、例えば、上述した加熱工程にて行うことが好ましい。当該構成によれば、β−1,3−キシロオリゴ糖を製造するための工程を簡略化することができる。
加熱工程において同時に藻類の熱水処理を行う場合には、「培養工程→加熱工程→回収工程」の順番で各工程を行うことが好ましい。上記構成によれば、回収工程において形質転換体および藻類の両方を除去できるので、不純物が除去された形態のβ−1,3−キシロオリゴ糖を製造することができる。
製造されたβ−1,3−キシロオリゴ糖の用途としては特に限定されないが、例えば、癌細胞のアポトーシス誘導剤として用いることが可能である。
<1.麹菌用発現プラスミドの作製>
<1−1.niaD遺伝子の大腸菌ベクターへの組み込み>
麹菌アスペルギルスオリザ由来の硝酸還元酵素遺伝子niaD(配列番号1)の末端に制限酵素認識部位(PstIおよびHindIII)を導入するために、プライマーA、プライマーB、LA−Taq(タカラバイオ社製)および鋳型としての麹菌ゲノムDNAを用いて、PCR反応を行った。
PCR反応は、96℃(5分間)の変性反応を1サイクル行った後、96℃(20秒間)の変性反応、60℃(30秒間)のアニーリング反応および72℃(5分間)の伸長反応からなる反応サイクルを30サイクル行い、最後にPCR増幅産物を72℃(7分間)にて保持するというものであった。
・プライマーA:5’-aactgcagaacaggccccaaattcaattaattgca-3’ (配列番号2)
・プライマーB:5’-cccaagctttggatttcctacgtcttcaatacaaacc-3’(配列番号3)
得られたPCR増幅産物を制限酵素PstIおよびHindIIIを用いて37℃にて処理した後、PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分離した。その後、アガロースゲルから、niaD遺伝子を切り出した。niaD遺伝子の切り出しには、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用い、具体的な方法は、当該キットに貼付のプロトコールに従った。
DNA Ligation kit ver.1(タカラバイオ社製)を用いて、niaD遺伝子を大腸菌プラスミドpUC119(タカラバイオ社製)に挿入した。当該大腸菌プラスミドpUC119を用いて、大腸菌(E. coli)JM109株を形質転換した。
以上のようにして、niaD遺伝子がpUC119内に挿入されたプラスミドpNIA2を得た。プラスミドpNIA2は、制限酵素認識部位(PstIおよびSalI)を用いて、当該プラスミド内に目的の遺伝子を挿入することができる。
<1−2.glaBターミネーターのpNIA2への組み込み>
麹菌由来のglaBターミネーター(配列番号4)のpNIA2への挿入方法を以下に説明する。
glaBターミネーターの末端に制限酵素認識部位(SalIおよびXhoI)を導入するために、プライマーC、プライマーD、LA−Taq(タカラバイオ社製)および鋳型としての麹菌ゲノムDNAを用いて、PCR反応を行った。
PCR反応は、96℃(5分間)の変性反応を1サイクル行った後、96℃(20秒間)の変性反応、60℃(30秒間)のアニーリング反応および72℃(5分間)の伸長反応からなる反応サイクルを30サイクル行い、最後にPCR増幅産物を72℃(7分間)にて保持するというものであった。
・プライマーC:5’-acgcgtcgacatgtactttccagtgcgtgtagtctactctg-3’(配列番号5)
・プライマーD:5’-acgcctcgagctgcagatcggctgaagttaggagcggccattgtc-3’(配列番号6)
得られたPCR増幅産物を制限酵素SalIおよびXhoIを用いて37℃で処理した後、PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分離した。その後、アガロースゲルから、glaBターミネーターを切り出した。glaBターミネーターの切り出しには、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用い、具体的な方法は、当該キットに貼付のプロトコールに従った。
DNA Ligation kit ver.1(タカラバイオ社製)を用いて、glaBターミネーターをpNIA2の制限酵素認識部位(SalI)に挿入した。当該pNIA2を用いて、大腸菌(E. coli)JM109株を形質転換した。
以上のようにして、glaBターミネーターがpNIA2内に挿入されたプラスミドpNIATを得た。プラスミドpNIATは、制限酵素認識部位(PstIおよびSalI)を用いて、当該プラスミド内に目的の遺伝子を挿入することができる。
<1−3.sodMプロモーターのpNIATへの組み込み>
麹菌由来のsodMプロモーター(配列番号7)のpNIATへの挿入方法を以下に説明する。
sodMプロモーターの末端に制限酵素認識部位(SalIおよびPstI)を導入するために、プライマーE、プライマーF、LA−Taq(タカラバイオ社製)および鋳型としての麹菌ゲノムDNAを用いて、PCR反応を行った。
PCR反応は、96℃(5分間)の変性反応を1サイクル行った後、96℃(20秒間)の変性反応、60℃(30秒間)のアニーリング反応および72℃(5分間)の伸長反応からなる反応サイクルを30サイクル行い、最後にPCR増幅産物を72℃(7分間)にて保持するというものであった。
・プライマーE:5’-aactgcagctgcagttatgtactccgtactcggttgaattattaatc-3’(配列番号8)
・プライマーF:5’-acgcgtcgactttgggtggtttggttggtattctggttgagggttttgag-3’(配列番号9)
得られたPCR増幅産物を制限酵素SalIおよびPstIを用いて37℃で処理した後、PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって分離した。その後、アガロースゲルから、sodMプロモーターを切り出した。sodMプロモーターの切り出しには、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)を用い、具体的な方法は、当該キットに貼付のプロトコールに従った。
DNA Ligation kit ver.1(タカラバイオ社製)を用いて、sodMプロモーターをpNIATの制限酵素認識部位(PstI−SalI間)に挿入した。当該pNIATを用いて、大腸菌(E. coli)JM109株を形質転換した。
以上のようにして、sodプロモーターがpNIAT内にサブクローニングされたプラスミドpNMBを得た。プラスミドpNMBは、制限酵素認識部位(SalI)を用いて、当該プラスミド内に目的の遺伝子を挿入することができる。そして、pNMBは、麹菌の中で、制限酵素認識部位(SalI)内に挿入された遺伝子を大量に発現させることができる。
<2.pNMBへのβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子の挿入>
<2−1.β−1,3−キシラナーゼ遺伝子のコドン改変>
Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子、および、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子は、GenBankの情報に基づいて、周知のPCR法によって入手した。なお、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子は、Accession number:CP000916(REGION:617474..618514)として、また、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子は、Accession number:AB121027として、本願出願時にGenBankに登録されていた。
なお、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質が実際にβ−1,3−キシラナーゼ活性を有することは、本発明者によって初めて明らかにされたことである。
Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子、および、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子は、ネイティブの塩基配列(コドン)では麹菌内での発現量が低い。そこで、麹菌内で発現可能なように、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子、および、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子のコドンを、試行錯誤しながら改変した。なお、改変したのはコドンであって、当該コドンに対応するアミノ酸配列は、ネイティブのままであった。
コドンの改変は、公知手法を用いたタカラバイオ株式会社の人工合成遺伝子作成サービス(http://catalog.takara-bio.co.jp/jutaku/basic_info.asp?catcd=B1000482&subcatcd=B1000484&unitid=U100004083)により、シグナル配列を除いた成熟領域をコードする遺伝子領域のみに対して人工合成によって行った。
配列番号10に、コドンを改変したThermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子の塩基配列を示す。また、配列番号11に、当該β−1,3−キシラナーゼ遺伝子のアミノ酸配列を示す。配列番号22に、コドンを改変する前の上記遺伝子の塩基配列を示す。なお、配列番号10および11は、プロセッシングが生じて後述するシグナル配列が除去された後の、成熟型β−1,3−キシラナーゼに対応するものである。
配列番号12に、コドンを改変したVibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子の塩基配列を示す。また、配列番号13に、当該β−1,3−キシラナーゼ遺伝子のアミノ酸配列を示す。配列番号23に、コドンを改変する前の上記遺伝子の塩基配列を示す。なお、配列番号12および13は、プロセッシングが生じて後述するシグナル配列が除去された後の、成熟型β−1,3−キシラナーゼに対応するものである。
上述したようにコドンを改変することによって、タンパク質の発現量が凡そ100倍〜1000倍増加した。
<2−2.β−1,3−キシラナーゼ遺伝子へのシグナル配列の付加>
上述したThermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号10)、および、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号12)の各々の5’末端側に4種類のシグナル配列を連結した。
シグナル配列としては、amyBシグナル配列(amyB signal sequence)、glaBシグナル配列(glaB signal sequence)、celAシグナル配列(celA signal sequence)、または、celBシグナル配列(celB signal sequence)を用いた。
amyBシグナル配列の塩基配列を配列番号14に示し、アミノ酸配列を配列番号15に示す。glaBシグナル配列の塩基配列を配列番号16に示し、アミノ酸配列を配列番号17に示す。celAシグナル配列の塩基配列を配列番号18に示し、アミノ酸配列を配列番号19に示す。celBシグナル配列の塩基配列を配列番号20に示し、アミノ酸配列を配列番号21に示す。
配列番号14、16、18、20にて示されるDNA断片の各々を周知の方法にて全合成した。また、これらのDNA断片の各々に対する相補DNA断片を周知の方法にて全合成した。上記DNA断片の各々と、当該DNA断片に対する相補DNA断片とを混合して、2本鎖のDNA断片を作成した。
市販のキット(宝ホールディングス製のMighty Cloning Kit(Blunt End))を用いて、2本鎖DNA断片の各々を、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号10)、または、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号12)の5’末端側に直接連結した。
つまり、配列番号14と配列番号10との融合遺伝子(配列番号15と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号16と配列番号10との融合遺伝子(配列番号17と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号18と配列番号10との融合遺伝子(配列番号19と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号20と配列番号10との融合遺伝子(配列番号21と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号14と配列番号12との融合遺伝子(配列番号15と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号16と配列番号12との融合遺伝子(配列番号17と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号18と配列番号12との融合遺伝子(配列番号19と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号20と配列番号12との融合遺伝子(配列番号21と配列番号13との融合タンパク質をコード)を作製した。
また、コドン改変を行っていないThermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号22)、または、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(配列番号23)についても、同様に融合遺伝子を作成した。
つまり、配列番号14と配列番号22との融合遺伝子(配列番号15と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号16と配列番号22の融合遺伝子(配列番号17と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号18と配列番号22との融合遺伝子(配列番号19と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号20と配列番号22との融合遺伝子(配列番号21と配列番号11との融合タンパク質をコード)、配列番号14と配列番号23との融合遺伝子(配列番号15と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号16と配列番号23との融合遺伝子(配列番号17と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号18と配列番号23との融合遺伝子(配列番号19と配列番号13との融合タンパク質をコード)、配列番号20と配列番号23との融合遺伝子(配列番号21と配列番号13との融合タンパク質をコード)を作製した。
<2−3.発現プラスミドの作製>
上述したpNMBを、制限酵素SalIにて37℃で処理した。次に、DNA Blunting Kit(宝ホールディングス製)を用いて、処理後のpNMBを平滑末端化させた。さらに、バクテリア由来アルカリホスファターゼ(宝ホールディングス製)を添加して、50℃で30分間反応させた。得られた反応産物をWizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ製)を用いて精製し、これをベクターとして用いた。
TaKaRa BKL Kit(Blunting Kination Ligation Kit)(宝ホールディングス製)を用いて、上述した融合遺伝子をリン酸化し、これをインサートとした。TaKaRa BKL Kitのマニュアルに従って、上述のベクターとインサートとをライゲーションした。ライゲーション産物を用いて大腸菌(E. coli)JM109株を形質転換した。形質転換体からプラスミドを調製し、融合遺伝子の読み枠がsodMプロモーターと正方向になるように挿入されたプラスミドを、目的遺伝子の発現プラスミドとして用いた。
<3.麹菌の形質転換体の作製、および当該形質転換体の培養>
周知のPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99−104,(1989)参照)にしたがって、上記発現プラスミドを用いて、アスペルギルスオリザのniaD変異株(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−17707として寄託済み)を形質転換した。
硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek−Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で生育できる株を選択することにより、発現プラスミドを保持する形質転換体を得た。
上記形質転換体をポテトデキストロース培地中で胞子形成させ、当該胞子を回収した。500mLの三角フラスコに入った100mL GPY液体培地(2%グルコース、1%ポリペプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)、または、500mLの三角フラスコに入った100mL CSL液体培地(6%Corn steep liquor(シグマ製)、2%グルコース)に、最終胞子濃度1×10/mLとなるように植菌した。
30℃で3日間の液体培養を行った後、培養液を酵素サンプルとして用いた。なお、β−1,3−キシラナーゼタンパク質は、菌体外へ分泌されて培養液中に存在する。
<4.麹菌によるβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の発現>
上記<3>の培養液をSDS−PAGEによって分析し、培養液中に分泌されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を確認した。
図1に、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(コドン改変型)を麹菌にて発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示す。
図1において、「M」はマーカーを示し、「C」は対照としてのネガティブコントロールを示し、、レーン1〜4は、GPY液体培地を用いた培養液100μLを分析した結果を示し、レーン5〜8は、CSL液体培地を用いた培養液10μLを分析した結果を示す。また、レーン1および5は、amyBシグナル配列を用いた場合の分析結果を示し、レーン2および6は、glaBシグナル配列を用いた場合の分析結果を示し、レーン3および7は、celAシグナル配列を用いた場合の分析結果を示し、レーン4および8は、celBシグナル配列を用いた場合の分析結果を示す。
図1から明らかなように、CSL液体培地を用いた場合は、β−1,3−キシラナーゼタンパク質の発現量が、GPY液体培地を用いた場合の最大で約20倍であった。
β−1,3−キシラナーゼタンパク質の分泌量は、celBシグナル配列を用いた場合が最も多く、celAシグナル配列を用いた場合が2番目に多く、amyBシグナル配列を用いた場合が3番目に多く、glaBシグナル配列を用いた場合が4番目に多かった。
デンシトメーターを用いた公知の手法に従って、SDS−PAGEのバンドを定量したところ、GPY培地を用いた場合に培地中に分泌されていたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の量は、amyBシグナル配列を用いた場合が約199mg/Lであり、glaBシグナル配列を用いた場合が約161mg/Lであり、celAシグナル配列を用いた場合が約215mg/Lであり、celBシグナル配列を用いた場合が約250mg/Lであった。一方、CSL培地を用いた場合に培地中に分泌されていたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の量は、amyBシグナル配列を用いた場合が約1.25g/Lであり、glaBシグナル配列を用いた場合が約1.09g/Lであり、celAシグナル配列を用いた場合が約1.51g/Lであり、celBシグナル配列を用いた場合が約3.12g/Lであった。
図2に、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(コドン改変型)を麹菌にて発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示す。
図2において、「M」はマーカーを示し、「C」はネガティブコントロールを示す。また、レーン1〜3は、GPY液体培地を用いて培養した培養液50μLを分析した結果を示す。レーン1は、glaBシグナル配列を用いた場合の分析結果を示し、レーン2は、celAシグナル配列を用いた場合の分析結果を示し、レーン3は、celBシグナル配列を用いた場合の分析結果を示す。
図2から明らかなように、β−1,3−キシラナーゼタンパク質の分泌量は、glaBシグナル配列を用いた場合が最も多く、celBシグナル配列を用いた場合が2番目に多く、celAシグナル配列を用いた場合が3番目に多かった。
SDS−PAGEのバンドをデンシトメーターによって定量したところ、GPY培地を用いた場合に培地中に分泌されていたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の量は、glaBシグナル配列を用いた場合が約312mg/Lであり、celAシグナル配列を用いた場合が約266mg/Lであり、celBシグナル配列を用いた場合が約281mg/Lであった。
比較対照として、コドンを改変していないThermotoga neapolitana DSM4359またはVibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質についても、麹菌にて発現させた。上述したのと同様にGPY液体培地あるいはCSL液体培地を用いて培養した培養液をSDS−PAGEによって分析し、デンシトメーターによって定量したところ、いずれも検出限界以下(3mg/mL以下)であった。つまり、コドン改変を行えば、ネイティブな遺伝子配列を用いた場合と比較して、酵素の生産量を飛躍的に上昇させ得ることが明らかになった。
<5.麹菌を用いた、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の基質特異性>
GPY液体培地を用いた培養した培養液を酵素(β−1,3−キシラナーゼタンパク質)として用い、当該酵素の各種多糖類(具体的には、β−1,3−キシラン、β−1,4−キシラン、ラミナラン(laminalin)、β−1,4−マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アビセル(Avicel))に対する分解活性(基質特異性)を検討した。
具体的には、反応溶液として、5μLの1M Na−Phosphate Buffer(pH7.0)、50μLの基質(1%、10mg/mL)、25μLの酵素、および、20μLの水を混合したものを用いた。
上記反応溶液を、37℃にて1時間反応させた後、98℃にて15分間加熱し酵素を失活させた。加熱後の反応溶液は4℃に保温し、当該反応溶液のうちの2μLを薄層クロマトグラフィーによって分析し、上記基質の分解の有無と、分解産物の同定とを行った。なお、薄層クロマトグラフィーにはメルク社製のTLC Silica gel 60 F254を用い、展開溶液としてはn-butanol:acetic acid:water(10:5:1)を用いた。また、分解産物の検出(発色)には、ジフェニルアミン・アニリン・リン酸試薬を用いた。
図3に、Vibrio sp. AX-4のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。
図3において「3X」はβ−1,3−キシランを示し、「4X」はβ−1,4−キシランを示し、「3G」はラミナランを示し、「4M」はβ−1,4−マンナンを示し、「CMC」はカルボキシメチルセルロースを示している。また、「NC」は、酵素に関するネガティブコントロール(水)を示している。また、「X1」はキシロースを示し、「X2」は2糖類(β−1,3−キシロビオース)を示し、「X3」は3糖類(β−1,3−キシロトリオース)を示している。また、「Front line」は、移動した展開溶液の先端を示している。
図3から明らかなように、celAシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(celAss−Vibxyl)、celBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(celBss−Vibxyl)、および、glaBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(glaBss−Vibxyl)を用いた場合には、何れもβ−1,3−キシランが特異的に分解されて、様々なβ−1,3−キシロオリゴ糖が形成された。また、β−1,3−キシロオリゴ糖の中では、特に2糖類および3糖類の形成量が多かった。
<6.麹菌を用いた、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の基質特異性>
<6−1.培養産物が有する酵素活性>
GPY液体培地またはCSL液体培地を用いて培養した培養産物(菌体および培地の両方を含む)を酵素(β−1,3−キシラナーゼタンパク質)として用い、当該酵素の各種多糖類(具体的には、β−1,3−キシラン、または、β−1,4−キシラン)に対する分解活性(基質特異性)を検討した。
具体的には、反応溶液として、20μLの500mM Tris−HCl(pH6.8)、100μLの基質(1%)、および、80μLの酵素を混合したものを用いた。
上記反応溶液を、80℃にて16時間反応させた後、98℃にて10分間加熱し酵素を失活させた。加熱後の反応溶液は4℃に保温し、当該反応溶液のうちの2μLを薄層クロマトグラフィーによって分析し、上記基質の分解の有無と、分解産物の同定とを行った。なお、薄層クロマトグラフィーにはメルク社製のTLC Silica gel 60 F254を用い、展開溶液としてはn-butanol:acetic acid:water(10:5:1)を用いた。また、分解産物の検出(発色)には、ジフェニルアミン・アニリン・リン酸試薬を用いた。
図4に、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。
図4において、「β−1,4−Xylo−oligo std.」とは、β−1,4−キシランの分解によって生じる各種オリゴ糖を示し、「β−1,3−Xylo−oligo std.」とは、β−1,3−キシランの分解によって生じる各種オリゴ糖を示す。「IF4 niaD−(GPY)」とは、形質転換していない宿主麹菌の培養液を示す。
図4から明らかなように、GPY液体培地を用いてamyBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(amyBss(GPY))、CSL液体培地を用いてamyBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(amyBss(CSL))、GPY液体培地を用いてglaBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(glaBss(GPY))、CSL液体培地を用いてglaBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(glaBss(CSL))、GPY液体培地を用いてcelAシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(celAss(GPY))、CSL液体培地を用いてcelAシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(celAss(CSL))、GPY液体培地を用いてcelBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(celBss(GPY))、および、CSL液体培地を用いてcelBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を発現させた場合(celBss(CSL))は、何れもβ−1,3−キシランが分解されて様々なβ−1,3−キシロオリゴ糖が形成されたが、β−1,4−キシランが分解されることは無かった。
<6−2.精製物が有する酵素活性>
CSL液体培地を用いた培養液からβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を精製し、当該精製物の各種多糖(具体的には、β−1,3−キシラン、β−1,4−キシラン、ラミナラン(laminalin)、β−1,4−マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アビセル(Avicel)、または、スターチ)に対する分解活性(基質特異性)を検討した。
まず、β−1,3−キシラナーゼタンパク質の精製方法について説明する。β−1,3−キシラナーゼタンパク質は、CSL液体培地を用いた培養液から陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって精製した。
具体的には、麹菌菌体を除去した培養上清(5mL)に、最終濃度20mMになるようにBis−Tris緩衝液(pH6.5)を加え、50mLとした。当該溶液を、予め20mM Bis−Tris緩衝液(pH6.5)にて平衡化した陰イオン交換カラム(HiTrap Q HP、5mL、GEヘルスケア製)に添加し、非吸着タンパク質が溶出しなくなるまで、上記緩衝液によって陰イオン交換カラムを洗浄した。
次に、500mM NaClを含む上記緩衝液を用いた連続濃度勾配(20カラムボリューム、流速2.5mL/min、分画容量2mL)によって、陰イオン交換カラムからタンパク質を溶出した。
各画分をβ−1,3−キシランに反応させて得られる分解産物をTLCにて分析することにより、酵素活性を測定した。さらに、各画分をSDS−PAGEで分析した。酵素活性を示し、かつ、SDS−PAGEによる分析において目的の位置に単一のバンドを示す画分を集めた。集めた画分を20mM リン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析し、透析後の画分をβ−1,3−キシラナーゼ精製酵素標品とした。
以上のようにして精製したβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を酵素として用い、当該酵素の各種基質に対する分解活性(基質特異性)を検討した。
具体的には、反応溶液として、5μLの1M Na−Phosphate Buffer(pH7.0)、50μLの基質(1%、10mg/mL)、25μLの酵素、および、20μLの水を混合したものを用いた。
上記反応溶液を、80℃にて24時間反応させた後、98℃にて15分間加熱し酵素を失活させた。加熱後の反応溶液は4℃に保温し、当該反応溶液のうちの2μLを薄層クロマトグラフィーによって分析し、上記基質の分解の有無と、分解産物の同定とを行った。なお、薄層クロマトグラフィーにはメルク社製のTLC Silica gel 60 F254を用い、展開溶液としてはn-butanol:acetic acid:water(10:5:1)を用いた。また、分解産物の検出(発色)には、ジフェニルアミン・アニリン・リン酸試薬を用いた。
図5に、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。
図5から明らかなように、celBシグナル配列が連結されたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を用いた場合(celBss−Thxyl)には、β−1,3−キシランが特異的に分解された。
<7.分解産物の特異性>
上述したように、本実施例のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質は、β−1,3−キシランを特異的に分解して様々な重合度のβ−1,3−キシロオリゴ糖を生成する。本実施例のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質が、これらのβ−1,3−キシロオリゴ糖のうちの何れを生成し易いかを判定するためには、短い反応時間によって得られる分解産物を特定する必要がある。つまり、大量の酵素にて長時間反応させれば、より分解が進んだ分解産物(例えば、キシロース)が蓄積されるので、分解産物の特異性を正確に判定することができない。そこで、分解産物を経時的に解析することにした。
<6−2>にて説明した、精製したβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を酵素として用い、β−1,3−キシランを分解した。
具体的には、反応溶液として、5μLの1M Na−Phosphate Buffer(pH7.0)、50μLのβ−1,3−キシラン(1%、10mg/mL)、25μLの酵素、および、20μLの水を混合したものを用いた。なお、ネガティブコントロールとしては、基質を含まない反応溶液(図6の「E」参照)、および、酵素を含まない反応溶液(図6の「3X」参照)を準備した。より具体的には、基質を含まない反応溶液とは、5μLの1M Na−Phosphate Buffer(pH7.0)、25μLの酵素、および、70μLの水を混合したものである。一方、酵素を含まない反応溶液とは、5μLの1M Na−Phosphate Buffer(pH7.0)、50μLのβ−1,3−キシラン(1%、10mg/mL)、および、45μLの水を混合したものである。
上記反応溶液を80℃にて反応させ、反応を開始してから15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後の各々において、反応溶液の一部をサンプリングした。サンプリングされた反応溶液は氷上で急冷し反応を停止した後に、分解産物の解析まで−25℃で保管した。当該反応溶溶液のうちの2μLを薄層クロマトグラフィーによって分析し、上記基質の分解の有無と、分解産物の同定とを行った。なお、薄層クロマトグラフィーにはメルク社製のTLC Silica gel 60 F254を用い、展開溶液としてはn-butanol:acetic acid:water(10:5:1)を用いた。また、分解産物の検出(発色)には、ジフェニルアミン・アニリン・リン酸試薬を用いた。
図6に、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質による、β−1,3−キシランの分解産物の経時変化を示す。図6において、「X1」は1糖類を示し、「X2」は2糖類を示し、「X3」は3糖類を示し、「X4」は4糖類を示し、「X5」は5糖類を示している。
反応を開始してから15分後、または、30分後の実験結果から明らかなように、本実施例のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質は、1糖類、2糖類および3糖類を生成する能力が高く、2等類および3糖類を生成する能力が更に高く、3糖類を生成する能力が最も高い。
<8.大腸菌を用いたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の製造と、当該β−1,3−キシラナーゼタンパク質の基質特異性>
参考例として、大腸菌にてβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を製造し、当該β−1,3−キシラナーゼタンパク質の基質特異性を検討した。その方法および結果を以下に説明する。
まず、Thermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子(Accession number:CP000916(REGION: 617474..618514))をPCR法によってクローニングした。なお、当該β−1,3−キシラナーゼ遺伝子は、推定のシグナル配列を含む野生型のβ−1,3−キシラナーゼの全長をコードしている。
次いで、クローニングしたβ−1,3−キシラナーゼ遺伝子を、市販されているpET22b(+)の制限酵素認識部位(NdeI−XhoI)に、発現可能に挿入した。なお、pET22b(+)の構造を図7に示す。
以上のようにして作製した発現ベクターを、周知の方法によって大腸菌E.coli BL21(DE3)導入し、大腸菌の形質転換体を作製した。
10mLの2×YT培地にて上記形質転換体を培養し、OD600が0.5〜1.0に達した時点で、0.1mMの濃度になるように培地に対してIPTGを加えた。IPTGを加えた後の培養温度は、25℃の場合と37℃の場合の2種類を用意した。
IPTGを加えてから3〜6時間培養した後、菌体を回収して、当該菌体内からβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を含む菌体内可溶性画分を調製した。なお、大腸菌において発現したタンパク質は菌体外へ分泌されないので、菌体内に蓄積されているβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を抽出する必要がある。
β−1,3−キシラナーゼタンパク質を含む菌体内可溶性画分の抽出には、BugBuster Master Mix(登録商標)(タカラバイオ株式会社製)を用いた。抽出の具体的な方法は、当該キットに貼付のプロトコールに従った。
抽出した菌体内可溶性画分のβ−1,3−キシラナーゼ活性、および精製酵素の比活性からタンパク質量を推定したところ、大腸菌を用いてβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を生産した場合には、培地1Lあたり数mgのβ−1,3−キシラナーゼタンパク質しか製造することができなかった。
上述したように抽出したβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の各種多糖(具体的には、β−1,3−キシラン、または、β−1,4−キシラン)に対する分解活性(基質特異性)を検討した。
具体的には、反応溶液として、10μLの酵素、25μLの基質(1%)、5μLの500mM Tris−HCl(pH6.8)および10μLの水を混合したものを用いた。
上記反応溶液を、37℃にて3時間反応させた後に80℃にて3時間反応させ、次いで98℃にて10分間加熱し、酵素を失活させた。加熱後の反応溶液は4℃に保温し、当該反応溶液のうちの2μLを薄層クロマトグラフィーによって分析し、上記基質の分解の有無と、分解産物の同定とを行った。なお、薄層クロマトグラフィーにはメルク社製のTLC Silica gel 60 F254を用い、展開溶液としてはn-butanol:acetic acid:water(10:5:1)を用いた。また、分解産物の検出(発色)には、ジフェニルアミン・アニリン・リン酸試薬を用いた。
図8に、大腸菌にて作製したThermotoga neapolitana DSM4359のβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(T.n.Xyn3)による各種基質の分解産物に関する、薄層クロマトグラフィーの結果を示す。
図8から明らかなように、大腸菌にて発現させた場合も麹菌によって発現させた場合も、β−1,3−キシラナーゼタンパク質はβ−1,3−キシランを特異的に加水分解し、その分解産物は類似していた。
<9.至適温度および温度安定性、ならびに、至適pHおよびpH安定性>
celBシグナル配列が連結された、Thermotoga neapolitana DSM4359ののβ−1,3−キシラナーゼタンパク質(celBss−Thxyl)の至適温度および温度安定性、ならびに、至適pHおよびpH安定性について検討を行った。
celBss−Thxylとしては、<6−2>にて説明した、精製したβ−1,3−キシラナーゼタンパク質を用いた。
至適温度を検討する場合には、様々な温度条件下にて、celBss−Thxylによってβ−1,3−キシランを分解し、10分間の分解によって生じる分解物(還元糖)の量比を、相対活性として算出した。
温度安定性を検討する場合には、様々な温度条件下にてcelBss−Thxylを10分間加熱し、加熱前の酵素活性と加熱後に残存している酵素活性との比を、相対活性として算出した。
至適pHを検討する場合には、様々なpH条件下にて、celBss−Thxylによってβ−1,3−キシランを分解し、10分間の分解によって生じる分解物(還元糖)の量比を、相対活性として算出した。なお、pHの調節には、Britton−Robinson広域緩衝液(pH3.0〜10.0)を使用した。
pH安定性を検討する場合には、様々なpH条件下にてcelBss−Thxylを4℃にて16時間インキュベートし、インキュベート前の酵素活性とインキュベート後に残存している酵素活性との比を、相対活性として算出した。なお、pHの調節には、Britton−Robinson広域緩衝液(pH3.0〜10.0)を使用した。
酵素反応によって生じた還元糖の量は、周知のソモギー・ネルソン(somogyi-Nelson)法にしたがって定量した。
具体的には、125μLの基質溶液(精製β−1,3−キシラン(1.0重量%)を水に溶解したもの)、50μLの250mM MESバッファー(pH6.5)、および、25μLの蒸留水をマイクロチューブに入れ、85℃にて15分間加熱した。その後、当該水溶液に50μLの酵素溶液を加え、10分間反応させた。
上記水溶液に250μLのアルカリ性銅試薬を加えて反応を停止するとともに、当該水溶液を100℃にて20分間加熱した。
加熱後の水溶液を氷上にて5分間冷却した後、500μLのネルソン試薬を加えて攪拌し、更に室温にて30分間放置した。
放置後の水溶液を、室温にて15,000gの条件下で、5分間遠心分離した。遠心分離後の水溶液から上清を分離し、当該上清の、660nmの波長の光に対する吸光度を測定した。
上記上清の吸光度と対照実験の吸光度との差から、還元糖の量を算出した。
以下に、各検討結果を示す。
図9は、celBss−Thxylの至適温度の検討結果を示すグラフである。図9に示すように、celBss−Thxylの至適温度は約85℃であることが明らかになった。
図10は、celBss−Thxylの温度安定性の検討結果を示すグラフである。図10に示すように、celBss−Thxylは、約85℃以下の温度にて安定であることが明らかになった。
また、celBss−Thxylの至適pHは約6.5であり、celBss−Thxylは、pH3.0〜10にて安定であることが明らかになった。具体的には、pH3.0〜10におけるcelBss−Thxylの残存活性は、91%以上であった。
なお、上述したcelBss−Thxylの至適温度および温度安定性、ならびに、至適pHおよびpH安定性は、大腸菌にて発現させたβ−1,3−キシラナーゼタンパク質の至適温度および温度安定性、ならびに、至適pHおよびpH安定性よりも優れていた。
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造に用いることができる。
FERM P−17707

Claims (9)

  1. 以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、以下の(d)〜(f)の何れかのポリヌクレオチド。
    (a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質。
    (b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
    (c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
    (d)酵素領域をコードする配列番号10または12に示す塩基配列と、シグナル配列をコードする配列番号14、16、18または20に示す塩基配列とを有するポリヌクレオチド。
    (e)上記(d)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
    (f)上記(d)のポリヌクレオチドと70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  2. 配列番号10または12に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド。
  3. 以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質。
    (a)配列番号11または13に示すアミノ酸配列からなる酵素領域と、配列番号15、17、19または21に示すアミノ酸配列からなるシグナル配列とを有するタンパク質。
    (b)上記(a)のタンパク質において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
    (c)上記(a)のタンパク質と70%以上の相同性を有し、かつ、β−1,3−キシラナーゼ活性を有するタンパク質。
  4. 請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  5. 請求項1若しくは2に記載のポリヌクレオチド、または、請求項4に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  6. 上記形質転換体が、アスペルギルスオリザ、アスペルギルスソーヤ、アスペルギルスジャポニカス、アスペルギルスカワチ、アスペルギルスアワモリ、アスペルギルスウサミ、アスペルギルスシロウサミ、アスペルギルスサイトイ、アスペルギルスグラウカス、アスペルギルスニガー、アスペルギルスニードランス、アスペルギルステレウス、アスペルギルスフラバス、およびアスペルギルスフミガタスからなる群より選択される少なくとも一つである請求項5に記載の形質転換体。
  7. 請求項5または6に記載の形質転換体を用いるβ−1,3−キシラナーゼの製造方法。
  8. 請求項5または6に記載の形質転換体の培養産物を用いるキシロオリゴ糖の製造方法。
  9. 上記培養産物は、培養上清である請求項8に記載のキシロオリゴ糖の製造方法。
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JP (1) JP2011167133A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014532425A (ja) * 2011-11-02 2014-12-08 ユニバーシティ プトゥラ マレーシア 生体高分子の製造方法

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