JP2011166878A - 電動機駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電圧型PWMインバータによって交流電動機に発生するサージ電圧を抑制する。
【解決手段】電圧型PWMインバータは、インバータ出力電圧Vinvの立上がりにおいて、電圧が2段階に上昇するような条件で制御される。インバータ出力電圧Vinvがパワーケーブルを介して交流電動機に印加されると、交流電動機の端子間電圧Vmには、電動機系全体の電気的共振周期T1の交流電圧成分が発生する。この交流電圧成分の振幅を抑制するために、インバータ出力電圧Vinvの電圧立上がりでの時間遅れT0と、共振周期T1との関係を、好ましくは、T0=T1/2に設定する。
【選択図】図7
【解決手段】電圧型PWMインバータは、インバータ出力電圧Vinvの立上がりにおいて、電圧が2段階に上昇するような条件で制御される。インバータ出力電圧Vinvがパワーケーブルを介して交流電動機に印加されると、交流電動機の端子間電圧Vmには、電動機系全体の電気的共振周期T1の交流電圧成分が発生する。この交流電圧成分の振幅を抑制するために、インバータ出力電圧Vinvの電圧立上がりでの時間遅れT0と、共振周期T1との関係を、好ましくは、T0=T1/2に設定する。
【選択図】図7
Description
この発明は、電動機駆動装置に関し、より特定的には、パルス幅変調(PWM)に従って制御された電圧を交流電動機に印加するように構成された電動機駆動装置に関する。
従来より、PWM制御に従ったパルス電圧の集合からなる擬似正弦波電圧を出力するインバータ(電圧型PWMインバータ)によって交流電動機を制御するように構成された電動機駆動装置が広く用いられている。
このような電動機駆動装置では、インバータおよび交流電動機の間がパワーケーブルで接続される。その際に、インバータから出力されたパルス電圧の立上がりに応答した、モータ端子側での電圧立上がりにおいて、サージ電圧が発生することが知られている。サージ電圧が大きくなるとモータの絶縁が劣化する可能性があるため、サージ電圧を低減することが必要とされる。
特開2007−295649号公報(特許文献1)には、電圧型PWMインバータから出力されたパルス電圧がケーブルを介してモータ巻線へ伝搬される際にサージ電圧が発生するメカニズムが記載されており、さらに、サージ電圧を抑制するために、PWM出力電圧の最小パルス幅を制限することが記載されている。
また、特開2006−20430号公報(特許文献2)には、インバータによって駆動されるモータの巻線間に発生する部分放電の発生を抑制するのに最適な立上がり時間を決定し、この最適な立上がり時間と挿入リアクトルのインダクタンスの関係から最適リアクトル容量を決定し、その最適な容量のリアクトルをインバータとモータ巻線との間に設けるようなモータ駆動システムの設計手法が記載されている。
さらに、特開2002−204579号公報(特許文献3)には、インバータの制御によってサージ電圧を抑制するために、PWM信号により半導体スイッチング素子をオンオフする際に、インバータの出力線間電圧の変化幅が予め設定した所定値を超える場合に、PWM信号の位相をずらすことによりインバータの複数相の出力電圧が同時に変化しないようにする制御手法が記載されている。
また、特開平8−23682号公報(特許文献4)では、電動機を可変速駆動する電圧型PWMインバータにおけるサージ電圧抑制装置として、比較的長いケーブルで電圧型PWMインバータと交流電動機とが接続された構成において、交流電動機の入力端子に3相ダイオードブリッジ回路の交流端子を接続し、当該ブリッジ回路の直列端子の両端にコンデンサおよび抵抗器を並列接続したものが記載されている。
ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの電動車両に搭載された走行用モータを駆動制御する電動機駆動装置は、車載性の面から小型化が強く要求される。これにより、電圧型PWMインバータのスイッチング周波数が高周波化される傾向にあることから、電動機に生じるサージ電圧が大きくなる傾向がある。このため、電動機のコイル巻線間の絶縁確保のために、サージ電圧の低減は重要な課題である。
しかしながら、特許文献1〜3に従えば、サージ電圧抑制のためにモータ制御が複雑化してしまう。一方、特許文献4によるサージ電圧抑制装置では、ダイオードブリッジ回路を新たに配置する必要が生じるため、装置の小型化および低コスト化の面で問題である。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、制御の複雑化や新たな回路機器の配置を招くことなく、電圧型PWMインバータによって交流電動機に発生するサージ電圧を抑制することが可能な電動機駆動装置を提供することである。
この発明による電動機駆動装置は、インバータと、パワーケーブルと、制御装置とを備える。インバータは、複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフ制御によってパルス電圧を出力端子に生成するように構成される。パワーケーブルは、交流電動機の端子とインバータの出力端子との間を電気的に接続する。制御装置は、交流電動機を駆動するために、パルス電圧のパルス幅を制御するように複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフを制御するように構成される。制御装置は、パルス電圧の立上がり時に電圧が2段階に上昇するような条件で、複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフを制御する。そして、パルス電圧の1段階目の立上がりと2段階目の立上がりの時間差であるT0が、交流電動機の端子電圧におけるサージ波高値の設計上限値に応じて設定される定数kおよび、端子電圧に現れる交流電圧成分の周期T1とに対して、(T1/2)−kから(T1/2)+kの範囲内である。
好ましくは、k=k′・T1で表わされ、k′は、設計上限値の逆正弦関数値に応じて設定される定数である。
さらに好ましくは、k=T1/12、k=T1/6、または、T0=T1/2である。
この発明によれば、制御の複雑化や新たな回路機器の配置を招くことなく、電圧型PWMインバータによって交流電動機に発生するサージ電圧を抑制することができる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰返さないものとする。
図1は、本発明の実施の形態による電動機駆動装置の構成を説明する回路図である。
図1を参照して、本発明の実施の形態による電動機駆動装置は、直流電源5と、インバータ10と、パワーケーブル20と、制御装置30とを備える。
図1を参照して、本発明の実施の形態による電動機駆動装置は、直流電源5と、インバータ10と、パワーケーブル20と、制御装置30とを備える。
本発明の実施の形態による電動機駆動装置によって駆動される交流電動機50は、たとえば、電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車等の電気エネルギによって車両駆動力を発生する自動車をいうものとする)の駆動輪を駆動するためのトルクを発生するための走行用電動機である。あるいは、この交流電動機50は、エンジンによって駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよく、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。さらに、交流電動機50は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態において、「交流電動機」は、交流駆動の電動機、発電機および電動発電機(モータジェネレータ)を含むものである。
直流電源5は、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の再充電可能な蓄電装置により構成される。
インバータ10は、複数の電力用半導体スイッチング素子Q1〜Q6を含む、直流−交流電力変換器である。本発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。
インバータ10は、電源配線7およびアース線6の間に並列に設けられる、U相上下アーム15と、V相上下アーム16と、W相上下アーム17とから成る。U,V,W相上下アーム15〜17は、電源配線7およびアース線6の間に中間ノードNu〜Nwを介して直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相上下アーム15は、スイッチング素子Q1,Q2から成り、V相上下アーム16は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、W相上下アーム17は、スイッチング素子Q5,Q6から成る。また、スイッチング素子Q1〜Q6に対して、逆並列ダイオードD1〜D6がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q1〜Q6のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号SG1〜SG6によって制御される。
インバータ10のU相端子19U、V相端子19VおよびW相端子19Wは、U相上下アーム15、V相上下アーム16およびW相上下アーム17のそれぞれの中間ノードNu〜Nwとそれぞれ電気的に接続される。以下では、U相端子19U、V相端子19VおよびW相端子19Wの各々について、「インバータ端子」とも称する。
交流電動機50は、たとえば3相の永久磁石型同期電動機であり、図示しないロータおよびステータを有する。ステータには、U相コイル巻線51U、V相コイル巻線51V、およびW相コイル巻線51Wが巻回されている。U相コイル巻線51U、V相コイル巻線51V、およびW相コイル巻線51Wの一端は、中性点55によって相互に接続されている。
U相コイル巻線51U、V相コイル巻線51V、およびW相コイル巻線51Wの他端は、交流電動機50のU相端子55U、V相端子55VおよびW相端子55Wと電気的に接続される。以下では、U相端子55U、V相端子55VおよびW相端子55Wの各々について、「モータ端子」とも称する。
パワーケーブル20は、U相ケーブル21と、V相ケーブル22と、W相ケーブル23とを含む。U相ケーブル21は、インバータのU相端子19Uとモータ端子55Uとを電気的に接続する。同様に、V相ケーブル22は、インバータのV相端子19Vとモータ端子55Vとを電気的に接続し、W相ケーブル23は、インバータのW相端子19Wとモータ端子55Wとを電気的に接続する。
インバータ10には、交流電動機50に流れるモータ電流(相電流)を検出するための電流センサ24が配置される。電流センサ24の検出値は制御装置30へ出力される。なお、三相のモータ電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように電流センサ24を配置すれば、残りの1相は、演算によって求めることも可能である(iu=−(iv+iw))。
交流電動機50には、図示しないロータの回転角ANGを検出するための回転角センサ(レゾルバ)25が配置される。回転角センサ25の検出値は制御装置30へ出力される。なお、回転角センサ25については、回転角ANGを制御装置30にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
さらに、電圧センサ26によって、インバータ10の直流側電圧VH(以下、単に直流電圧VHと表記する)が検出される。検出された直流電圧VHは、制御装置30へ出力される。
制御装置30は、電子制御ユニット(ECU)により構成され、予め記憶されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウ
ェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動機駆動装置の動作を制御する。
ェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動機駆動装置の動作を制御する。
制御装置30は、入力されたトルク指令値Trqcom、電圧センサ26によって検出された直流電圧VH、電流センサ24によって検出されるモータ電流、および、回転角センサ25によって検出される回転角ANGに基づいて、交流電動機50がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するようにインバータ10を制御する。すなわち、インバータ10を上記のように制御するためのスイッチング制御信号SG1〜SG6を生成して、インバータ10へ出力する。
インバータ10は、交流電動機50のトルク指令値が正(Trqcom>0)の場合には、制御装置30からのスイッチング制御信号SG1〜SG6に応答した、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するように交流電動機50を駆動する。また、インバータ10は、交流電動機50のトルク指令値が零の場合(Trqcom=0)には、スイッチング制御信号SG1〜SG6に応答したスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換してトルクが零になるように交流電動機50を駆動する。これにより、交流電動機50は、トルク指令値Trqcomによって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
さらに、交流電動機50が搭載された電動車両の回生制動時には、交流電動機50のトルク指令値Trqcomは負に設定される(Trqcom<0)。この場合には、インバータ10は、スイッチング制御信号SG1〜SG6に応答したスイッチング動作により、交流電動機50が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧)によって、直流電源5を充電する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
制御装置30によるインバータ10の制御について、さらに説明する。
図2を参照して、制御装置30は、交流電動機50の電流フィードバックにより、各相の電圧指令170を生成する。電圧指令170は、各相間で位相が120度ずつずれた正弦波電圧である。詳細には、トルク指令値に従って設定される電流指令値に対する、実際のモータ電流(検出値)の偏差に基づいて、電圧指令170の振幅および位相が制御される。
図2を参照して、制御装置30は、交流電動機50の電流フィードバックにより、各相の電圧指令170を生成する。電圧指令170は、各相間で位相が120度ずつずれた正弦波電圧である。詳細には、トルク指令値に従って設定される電流指令値に対する、実際のモータ電流(検出値)の偏差に基づいて、電圧指令170の振幅および位相が制御される。
制御装置30は、各相の電圧指令170を、所定周波数の搬送波160と比較する。搬送波160は、所定周波数の三角波やのこぎり波によって構成することができるが、図2では、三角波が例示される。
そして、搬送波160および電圧指令170の電圧比較に基づいて、インバータ10の各相のスイッチング素子のオンオフを制御するように、スイッチング制御信号SG1〜SG6が生成される。この結果、インバータ10の出力電圧Vinv(線間)として、疑似正弦波電圧としてのパルス幅変調電圧180が生成される。パルス幅変調電圧180は、パルス幅が制御されたパルス電圧の集合となっている。すなわち、インバータ10は、いわゆる電圧型PWMインバータである。
このインバータ出力電圧Vinvは、パワーケーブル20を介して、交流電動機50へ印加される。図3には、インバータ10から見た負荷側(交流電動機50側)の等価回路図が示される。図3には、U相およびV相間の等価回路が代表的に示される。
図3を参照して、インバータ10は、端子19Uおよび19Vの間に、図2のパルス幅変調電圧180に相当するインバータ出力電圧Vinvを発生させる。
車載用途では、パワーケーブル20は、1〜2m程度の長さであるので、その等価回路20♯は、集中回路定数により取り扱うことができる。すなわち、等価回路20♯は、U相ケーブル21のインダクタンス成分、V相ケーブル22のインダクタンス成分、U相ケーブル21およびV相ケーブル22の各静電容量、ケーブル間の静電容量等が合成された、LC回路となる。同様に、交流電動機50のU相およびV相間の等価回路50♯は、中性点55を介して接続されるU相コイル巻線51UおよびV相コイル巻線51Vのインダクタンス成分と、各コイル巻線およびコイル巻線間での静電容量とが並列接続されたLC回路となる。
したがって、インバータ出力電圧Vinvがそのままモータ端子55U,55Vの端子間に現れることはなく、交流電動機50の端子間電圧Vm(線間電圧に相当)は、これらのLC回路での共振によって発生した交流成分が、インバータ出力電圧Vinvに相当するパルス電圧に重畳された波形となることが理解される。なお、以下では、端子間電圧Vmを、単にモータ電圧Vmとも称する。
本発明の実施の形態による電動機駆動装置は、主に、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の走行用モータを搭載した電動車両への適用を想定している。車両搭載型の電動機駆動装置では、小型化の要求のために、インバータ10におけるスイッチング周波数(インバータ出力電圧の立上がり時間の逆数に相当)が比較的高周波となる。また、上述のように、パワーケーブル20の長さも1〜2m程度に止まる。
このため、車両搭載型の電動機駆動装置では、特許文献1に記載されるような、パワーケーブルを伝搬したインバータの出力電圧(パルス電圧)がモータ端子で反射することによって生じるサージ電圧の挙動とは異なる、サージ電圧の特性が現れることが発明者らの実験により確かめられた。
図4および図5により、インバータ10のスイッチング周波数に対するインバータ出力電圧Vinvの波形の違いを説明する。図4および図5には、サージ電圧が発生する、パルス電圧の立上がり時における波形が示される。
図4を参照して、インバータ10のスイッチング周波数が比較的低い場合には、パルス電圧の立上がりは、一次遅れ波形となる。すなわち、インバータ出力電圧Vinvは、スイッチング素子のオン/オフに応答して、回路時定数に従って単調に上昇する挙動を示す。
図5を参照して、インバータ10のスイッチング周波数が高くなると、パルス電圧の立上がりは、単純な一次遅れ波形ではなく、振動成分が重畳された形となる。すなわち、インバータ出力電圧Vinvは、2段階に立上がる挙動を示すようになる。以下では、パルス電圧の1段階目の立上がりと2段階目の立上がりの時間差を遅れ時間T0と定義することとする。この時間差T0は、主に、インバータ10のスイッチング周波数に依存して変化することが、発明者らによって確認されている。
図6には、図5に示したインバータ出力電圧Vinvが交流電動機50に印加されたときのモータ電圧Vmの波形図が示される。
図6を参照して、モータ電圧Vmには、インバータ出力電圧Vinvに対して、周期T1の共振電圧が重畳した波形となっている。この共振周期T1は、インバータ10から見た、パワーケーブル20および交流電動機50全体の電気的共振周期、すなわち、図3に示した等価回路20♯,50♯による電動機系の共振周期に相当する。そして、この共振電圧の影響により、モータ電圧Vmの最高値であるサージ電圧波高値Vsgは、最大で、インバータ10の直流電圧VHの2倍となる。
発明者らは、モータ電圧Vmに生じるサージ電圧波高値が、上記の遅れ時間T0および共振周期T1の関係に応じて変化することに着目して、T0,T1の調整によってサージ電圧を抑制する設計手法を提供するものである。
次に図7を用いて、交流電動機50でのサージ電圧特性について説明する。
図7を参照して、インバータ出力電圧Vinvは、パルス電圧の立上がりが、上述したように遅れ時間T0で2段階に上昇する。すなわち、インバータ出力電圧Vinvは、時間差T0の2つのパルス電圧Vi1およびVi2の重ね合わせと理解することができる。
図7を参照して、インバータ出力電圧Vinvは、パルス電圧の立上がりが、上述したように遅れ時間T0で2段階に上昇する。すなわち、インバータ出力電圧Vinvは、時間差T0の2つのパルス電圧Vi1およびVi2の重ね合わせと理解することができる。
すなわち、パルス電圧Vi1は、1段階目の立上がりタイミングである時刻t0から、T0が経過する時刻t1までの間に電圧V1だけ上昇する。同様に、パルス電圧Vi1は、時刻t1から時刻t2までの間に電圧V2だけ上昇する。なお、V1+V2は、インバータ出力電圧Vinvの振幅、すなわち、直流電圧VHに相当する。
そして、パルス電圧Vi1に対して、電動機系の共振周期T1の交流電圧が重畳されたパルス電圧Vm1が現れ、パルス電圧Vi2に対して、共振周期T1の共振波形が重畳されたパルス電圧Vm2が現れるものとする。この結果、モータ電圧Vmは、これらのパルス電圧Vm1およびVm2の重ね合わせたものに相当する。したがって、モータ電圧Vmにも、パルス電圧Vm1およびVm2にそれぞれ重畳される交流電圧の和に相当する交流電圧成分が重畳される。以下では、電動機系の共振周期T1によって生じるこの交流電圧成分をサージ電圧成分Vsとも表記する。このサージ電圧成分Vsの振幅が大きいほど、モータ電圧Vmの最大値、すなわち、サージ電圧波高値Vsgが高くなる。
ここで、パルス電圧Vm1およびVm2について、直流電圧V1およびV2に交流電圧Vr1およびVr2がそれぞれ重畳されたものと考えると、交流電圧Vr1およびVr2の間の位相差θは、パルス電圧Vi1およびVi2の間の時間差T0と同等であり、下記(1)式で示される。
θ=(T0/T1)・360[°] ・・・(1)
交流電圧Vr1,Vr2を等振幅の正弦波電圧と仮定すると、Vr1=sin(ω1・t)、Vr2=sin(ω1・t−θ)とすることができる(なお、ω1=360°/T1)。
交流電圧Vr1,Vr2を等振幅の正弦波電圧と仮定すると、Vr1=sin(ω1・t)、Vr2=sin(ω1・t−θ)とすることができる(なお、ω1=360°/T1)。
したがって、Vr1およびVr2の和で示されるサージ電圧成分Vsの振幅は、三角関数の和積公式(sinA+sinB=2・sin((A+B)/2)・cos((A−B)/2)より、cos(θ/2)に比例することが理解される。
図8には、位相差θとサージ電圧波高値の理論値V♯との関係特性が示される。
図8の横軸は、位相差θ[°]を示す。(1)式に示したように、位相差θは、インバータ出力電圧Vinvに現れる遅れ時間T0に依存する。すなわち、θ=180[°]のとき、T0=T1/2である。
図8の横軸は、位相差θ[°]を示す。(1)式に示したように、位相差θは、インバータ出力電圧Vinvに現れる遅れ時間T0に依存する。すなわち、θ=180[°]のとき、T0=T1/2である。
図8の縦軸に示される、理論値V♯は、サージ電圧波高値Vsgを直流電圧VHで除算したものに相当する。すなわち、交流電圧Vr1およびVr2が、位相差180[°]で互いに打ち消し合うときは、サージ電圧成分Vsの振幅が0となるので、V♯=1.0(最小値)となる。一方、交流電圧Vr1およびVr2の位相差が0[°]または360[°]、すなわち両者が同位相であるときには、サージ電圧成分Vsの振幅がVHとなるので、V♯=2.0(最大値)となる。
そして、位相差0〜180[°],180〜360[°]の区間では、サージ電圧成分Vsの振幅がcos(θ/2)に比例することから、V♯=1.0+|cos(θ/2)|で示すことができる。
図8のグラフより、サージ電圧抑制の観点からは、位相差θ=180[°]、すなわち、インバータ出力電圧に生じる遅れ時間T0と、電動機系の共振周期T1との間には、T0=T1/2の関係が成立することが最も好ましいことが理解できる。
また、理論値V♯に関して、サージ電圧波高値の設計上限値Vrを設定することで、位相差θの許容範囲Δθ[°]が、下記(2)式により規定される。
180−Δθ<θ<180+Δθ ・・・(2)
ただし、Δθ=sin-1(Vr−1.0)
たとえば、Vr=1.25のとき、Δθ≒15[°]となるので、(2)式にθ=(T0/T1)・360を代入すると、T0の範囲として下記(3)式が得られる。
ただし、Δθ=sin-1(Vr−1.0)
たとえば、Vr=1.25のとき、Δθ≒15[°]となるので、(2)式にθ=(T0/T1)・360を代入すると、T0の範囲として下記(3)式が得られる。
T1/2−T1/12<T0<T1/2+T1/12 ・・・(3)
また、Vr=1.5のとき、Δθ=30[°]となるので、T0の範囲として下記(4)式が得られる。
また、Vr=1.5のとき、Δθ=30[°]となるので、T0の範囲として下記(4)式が得られる。
T1/2−T1/6<T0<T1/2+T1/6・・(4)
このようにして、サージ波高値を設計上限値Vrより低く抑制するための、インバータ出力電圧に生じる遅れ時間T0と、電動機系の共振周期T1との関係式を導出することができる。
このようにして、サージ波高値を設計上限値Vrより低く抑制するための、インバータ出力電圧に生じる遅れ時間T0と、電動機系の共振周期T1との関係式を導出することができる。
具体的には、遅れ時間T0について、上記(3),(4)式を包括する下記(5)式が導出される。
T1/2−k<T0<T1/2+k・・(5)
ただし、k=T1・sin-1(Vr−1.0)/360
上述のように、遅れ時間T0については、インバータ10のスイッチング周波数を変化させることによって調整することができる。一方、電動機系の共振周期T1については、パワーケーブル20および交流電動機50の回路定数が影響するので、たとえば、パワーケーブル20の設計によって調整することができる。
ただし、k=T1・sin-1(Vr−1.0)/360
上述のように、遅れ時間T0については、インバータ10のスイッチング周波数を変化させることによって調整することができる。一方、電動機系の共振周期T1については、パワーケーブル20および交流電動機50の回路定数が影響するので、たとえば、パワーケーブル20の設計によって調整することができる。
図9には、パワーケーブル20の断面図の一例が示される。
図9を参照して、パワーケーブル20は、U相ケーブル21、V相ケーブル22およびW相ケーブル23を、絶縁テープ29によって締結するように構成されている。
図9を参照して、パワーケーブル20は、U相ケーブル21、V相ケーブル22およびW相ケーブル23を、絶縁テープ29によって締結するように構成されている。
U相ケーブル21は、導線21♯を絶縁材26♯によって被覆することで構成される。同様に、V相ケーブル22は、導線22♯を絶縁材27♯によって被覆することで構成され、W相ケーブル23は、導線23♯を絶縁材28♯によって被覆することで構成される。
各相ケーブルを被覆する絶縁材26♯〜28♯の厚み、あるいは材質(誘電率)によって、等価回路20♯での容量を変えることができる。たとえば、絶縁材26♯〜28♯の厚みを増加させると、静電容量の減少によって共振周波数が上昇するので、共振周期T1は短くなる。同様に、絶縁材26♯〜28♯の材質(誘電率)を変化させることによっても、共振周期T1を調整できる。
また、絶縁テープ29による締結力を強めることとすれば、各相ケーブル21〜23間の距離が減少することにより、ケーブル間(相間)の静電容量が増加するので、共振周期T1は長くなる。
なお、インバータ10のスイッチング周波数を変化させることが困難である場合には、インバータ出力電圧に生じる遅れ時間T0の調整が困難であるが、パワーケーブル20での調整(設計)により共振周期T1を変化させることによって、サージ電圧の抑制を図ることができる。
また、インバータ10のスイッチング周波数およびパワーケーブル20の両方に調整の余地がある場合には、上記(5)式が成立するような電動機駆動装置の設計が相対的に容易になる。可能であれば、交流電動機50の回路定数の設計に調整を加えてもよい。
以上説明したように、本実施の形態による電動機駆動装置によれば、インバータ出力電圧に生じる遅れ時間T0と、電動機系の共振周期T1との関係を適切化する設計によって、制御の複雑化や新たな回路機器の配置を招くことなく、交流電動機に生じるサージ電圧を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、電動車両に搭載される交流電動機の駆動装置について説明したが、本発明の適用はこのような構成に限定されるものではない。すなわち、図5および図6に示した様な、インバータ出力電圧の立上がり特性(2段階)および、モータ電圧のサージ特性(共振波形の重畳)が生じるような条件で使用される駆動装置であれば、交流電動機の用途を限定することなく、本発明の適用が可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、電圧型PWMインバータを含む電動機駆動装置に適用することができる。
5 直流電源、6 アース線、7 電源配線、10 インバータ、15〜17 各相上下アーム、19U,19V,19W インバータ端子(U,V,W相)、20 パワーケーブル、20♯ 等価回路(パワーケーブル)、21 U相ケーブル、21♯〜23♯ 導線、22 V相ケーブル、23 W相ケーブル、24 電流センサ、25 回転角センサ、26 電圧センサ、26♯〜28♯ 絶縁材、29 絶縁テープ、30 制御装置、50 交流電動機、50♯ 等価回路(交流電動機)、51U,51V,51 コイル巻線(U,V,W相)、55 中性点、55U,55V,55 モータ端子(U,V,W相)、160 搬送波、170 電圧指令、180 パルス幅変調電圧、ANG ロータ回転角、D1〜D6 逆並列ダイオード、iv,iw モータ電流(相電流)、Nu,Nv,Nw 中間ノード、Q1〜Q6 電力用半導体スイッチング素子、SG1〜SG6 スイッチング制御信号、T0 時間差(電圧立上がり)、T1 共振周期(電動機系)、Trqcom トルク指令値、VH 直流電圧(インバータ直流側)、Vi1,Vi2 パルス電圧、Vinv インバータ出力電圧、Vm モータ電圧(端子間電圧)、Vm1,Vm2 パルス電圧(モータ電圧)、Vr 設計上限値(サージ波高値)、Vsg サージ電圧波高値、Δθ 位相差範囲、θ 位相差。
Claims (5)
- 複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフ制御によってパルス電圧を出力端子に生成するためのインバータと、
交流電動機の端子と前記インバータの出力端子との間を電気的に接続するパワーケーブルと、
前記交流電動機を駆動するために、前記パルス電圧のパルス幅を制御するように前記複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフを制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記パルス電圧の立上がり時に電圧が2段階に上昇するような条件で、前記複数の電力用半導体スイッチング素子のオンオフを制御し、
前記パルス電圧の1段階目の立上がりと2段階目の立上がりの時間差であるT0が、前記交流電動機の端子電圧におけるサージ波高値の設計上限値に応じて設定される定数kおよび、前記端子電圧に現れる交流電圧成分の周期T1とに対して、(T1/2)−kから(T1/2)+kの範囲内である、電動機駆動装置。 - k=k′・T1で表わされ、k′は、前記設計上限値の逆正弦関数値に応じて設定される定数である、請求項1記載の電動機駆動装置。
- k=T1/12である、請求項1または2記載の電動機駆動装置。
- k=T1/6である、請求項1または2記載の電動機駆動装置。
- T0=T1/2である、請求項1または2記載の電動機駆動装置。
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JP2012239358A (ja) * | 2011-05-13 | 2012-12-06 | Nippon Soken Inc | 制御装置 |
WO2022185834A1 (ja) * | 2021-03-03 | 2022-09-09 | 株式会社デンソー | インバータの制御装置 |
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-
2010
- 2010-02-05 JP JP2010024214A patent/JP2011166878A/ja not_active Withdrawn
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