JP2011162806A - 無電解めっきを行うための前処理液 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、樹脂基材およびガラス材などが混在する樹脂基体に対する金属めっきにおいて、乾式法による密着促進前処理や金属被膜形成を行うことなく、低粗化表面に対して高い密着性を有するめっき被膜を与える湿式法に用いる前処理液、並びに前記前処理液を用いた表面処理方法、金属めっき被膜形成方法及びプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本願発明は、樹脂基体の表面に無電解めっきを行うための前処理液として用いるコンディショナーであって、カチオンポリマー、水及び5〜200g/Lのビフルオリド塩を含有することを特徴とする、前処理液を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂基体、特にプリント配線基板用樹脂基板に対する無電解金属めっきの前処理に用いる前処理液、並びにこれを用いたプリント配線基板の製造方法に関する。
プリント配線基板の層間の電気的接続は、スルーホールと呼ばれる微細貫通穴を介して行うのが一般的である。このスルーホール内(ガラスクロス/樹脂部)に導電被膜を形成する方法として、カチオン系界面活性剤を主成分とする前処理液(コンディショナー)による前処理後、パラジウムを主成分とする触媒を付与し、無電解めっき法によってめっき被膜を形成する湿式法が一般的である。また高性能半導体パッケージ基板に代表される高密度プリント配線基板では、機能性絶縁樹脂材料を用いたビルドアップ法が適用されており、また配線形成方法としてアディティブ法、特に無電解銅めっきをシード層とするセミアディティブ法が広く用いられている。
一般に樹脂基体と導電被膜の密着性を向上させるため、湿式法では、溶剤を主成分とする処理液による樹脂膨潤工程を経て過マンガン酸塩を主成分とする処理液による粗化工程により樹脂を酸化分解させ粗化形状を形成し、その後中和処理工程にてマンガン除去を行う一連のデスミア/粗化工程にてアンカーが形成される。続いて前処理液によるコンディショニング、触媒付与工程を経て無電解めっき処理を行い、密着性を有する導電被膜が形成される。無電解めっき用触媒としては、触媒活性に優れたパラジウムが幅広く用いられており、樹脂基体を触媒(Sn・Pd混合コロイド)溶液に浸漬することにより、樹脂基体表面にSn・Pd混合コロイドを吸着させ、アクセレーター処理によって触媒活性化を行い、樹脂基体表面に無電解めっき処理による導電被膜を形成する。
しかしながら、アンカー効果を主とした密着性付与方法では、樹脂基体表面の粗化度が低下した場合、基体と金属被膜との密着性が低下し、高い密着性を有するめっき被膜を得ることが困難である。また前処理液を構成している酸・アルカリ・カチオン系界面活性剤の種類や樹脂材料等によっても密着性は大きく影響を受ける。特に、高性能半導体パッケージでは、ICチップ性能の向上に伴う高速信号化、高周波化が進展しており、パッケージ基板を構成する配線の微細化及び平坦な表面を持つ配線形成が求められているが、従来のセミアディティブ法における無電解銅めっき方法では、低粗化表面への高い密着性を有する導電被膜を形成することが困難であり、材料表面の平坦化に限界がある。このような背景から、樹脂材料、樹脂粗度表面に影響を受けずに基体と金属被膜間に高い密着強度を付与することができる表面処理方法および無電解めっきプロセスの開発が強く望まれている。
特許文献1には、SiO粒子等の粒子状配合物が配合された電気絶縁性樹脂から成る樹脂層の導体パターン形成面にプラズマ処理等の親水化処理を施した後、フッ酸化合物溶液に接触せしめ、前記導体パターン形成面近傍に存在する粒子状配合物を除去するガラスエッチング処理を施し、次いで無電解めっき及び電解めっきを施して所定厚さの金属層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法が記載されている。しかし特許文献1の方法では、親水化処理のためにプラズマ処理、オゾン処理又はコロナ放電処理等を行う必要があり、特殊な設備を必要とする。
特許文献2には、(a)約10〜約50g/Lのポリ燐酸ナトリウム、(b)0〜約5g/LのNa−EDTA、(c)約5〜約20g/Lの燐酸三カリウム、(d)0.5〜約2g/LのAntarox BL300、(e)0〜約2g/LのSynperonic NP−10、(f)約1〜約5g/Lのイミダゾール誘導体を基礎とする第四アンモニウム化合物、(g)0〜約2g/Lの二フッ化アンモニウムからなり、pHが無機酸で約1.0〜約4.0の範囲に調整されている、非金属基体に金属コーティングを施すに先立ち当該基体をクリーニングしコンディショニングするための溶液が記載されている。しかし特許文献2は、密着性に関し何ら着目しておらず、また特許文献2に記載の量の二フッ化水素アンモニウムを添加しても後述の比較例に示すように密着性が充分ではない。
特許文献3には、1またはそれ以上のポリオール化合物、1またはそれ以上のグリコールエーテル、水、フッ化物塩、および任意に添加剤を含む、基体からポリマー物質を除去するための組成物が記載されている。しかし特許文献3には、本発明の前処理液及びプリント配線基板の製造方法は記載されていない。
特開2003−338683号公報 特表平6−505770号公報 特開2002−38197号公報
本発明は、樹脂基体に対する無電解金属めっきにおいて、乾式法による密着促進前処理や金属被膜形成を行わなくても樹脂基体の低粗化表面に対して高い密着性を有する金属めっき被膜を与えることができる、無電解めっきを行うための前処理液を提供すること、並びに前記前処理液を用いた表面処理方法、金属めっき被膜形成方法及びプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため、前処理液にカチオンポリマー、水及び特定量のビフルオリド塩を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本願発明は、樹脂基体の表面に無電解めっきを行うための前処理液であって、カチオンポリマー、水及び5〜200g/Lのビフルオリド塩を含有することを特徴とする、前処理液を提供する。ビフルオリド塩は、二フッ化水素アンモニウム、二フッ化水素カリウム及び二フッ化水素ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。前処理液は、さらにノニオン系界面活性剤及び/又はキレート剤を含有し得る。さらに前記樹脂基体はプリント配線基板用樹脂基板であってもよく、かかるプリント配線基板用樹脂基板はスルーホール、ブラインドビアまたはその両方を有していてもよい。また、本願発明は、無電解めっきを行う前に、樹脂基体の表面を前記前処理液により処理することを含む、プリント配線基板の製造方法も提供する。また、本願発明は、樹脂基体を前記前処理液と接触させて、樹脂基体の表面を処理する工程;前処理液で処理された樹脂基体を触媒溶液と接触させることにより、樹脂基体表面に触媒を吸着させる工程;および触媒が吸着している樹脂基体を無電解めっき処理する工程;を含む、樹脂基体上に金属めっき被膜を形成する方法も提供する。
樹脂基体を無電解めっきする場合に、無電解めっきを行うための前処理液として本発明の前処理液を使用すると、本発明における特定量のビフルオリド塩を含まない前処理液を使用した場合、または本発明の前処理液を使用しない場合と比較して、無電解めっきで得られた金属めっき被膜は、樹脂基体の表面が低粗化表面であったとしても、樹脂基体に対する高い密着性を有するという有利な効果が得られる。本発明によるこの高い密着性は、乾式法による密着促進前処理や金属被膜形成を行わなくても達成されうる。
実施例11で作製した前処理液を用いた場合のスルーホール内の化学銅付き回り性を示す写真である。 実施例12で作製した前処理液を用いた場合のスルーホール内の化学銅付き回り性を示す写真である。 実施例13で作製した前処理液を用いた場合のスルーホール内の化学銅付き回り性を示す写真である。
本明細書を通じて使用される略語は、他に明示されない限り、次の意味を有する。
g=グラム;mg=ミリグラム;℃=摂氏度;m=メートル;cm=センチメートル;μm=マイクロメートル;nm=ナノメートル;L=リットル;mL=ミリリットル;dm=平方デシメートル;mol=モル;N=ニュートン。全ての数値範囲は境界値を含み、さらに任意の順序で組み合わせ可能である。
本発明の前処理液は、コンディショナーとも呼ばれるめっきの前処理液であり、カチオンポリマー、水及び5〜200g/Lのビフルオリド塩を含有することを特徴とする。
ビフルオリド塩は、分子内に電離可能なFHFを有する化合物である。ビフルオリド塩を構成する陽イオン成分は特に限定されるものではない。具体的には、ビフルオリド塩は、二フッ化水素アンモニウム(NHF・HF)、二フッ化水素カリウム(KF・HF)、二フッ化水素ナトリウム(NaF・HF)等を挙げることができる。本発明の前処理液は、ビフルオリド塩を、5〜200g/Lの範囲で、好ましくは5〜50g/Lの範囲で、より好ましくは7.5〜15g/Lの範囲で、または0.09〜3.5mol/Lの範囲で、好ましくは0.09〜0.9mol/Lの範囲で、より好ましくは0.13〜0.26mol/Lの範囲で含有する。ビフルオリド塩が5g/Lより少ないと、後述する比較例に示すように密着性が充分でないことから、好ましくない。また、200g/Lより多いと、前処理液中にノニオン系界面活性剤等を溶解させる場合に、ノニオン系界面活性剤等が溶解しにくくなるため好ましくない。
本発明の前処理液は、必須構成要素としてカチオンポリマーを含有する。カチオンポリマーとは、陽イオン界面活性剤ともいい、水中で電離して有機陽イオンとなる界面活性剤であり、前処理液中では樹脂基体の表面上の電荷を中和しプラスの電荷を持たせるための役割を担う。カチオンポリマーの分子量は約300〜1000であることが好ましい。好ましいカチオンポリマーの例としては、ポリジアミノジメチルアンモニウム塩、ポリジアリルジアルキルアンモニウム塩、ポリビニルピリジン4級塩等の高分子4級アミン化合物、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が挙げられ、この中でもポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミドの共重合体、ポリエチレンイミンが特に好ましい。
カチオンポリマーは、前処理液に対し、好ましくは0.5〜2.0g/L、より好ましくは0.5〜1.0g/L添加することが好ましい。
本発明の前処理液に含まれる水の例としては、蒸留水、脱イオン水などが挙げられる。
本発明の前処理液は、さらにノニオン系界面活性剤を含有してもよい。ノニオン系界面活性剤は、非イオン性界面活性剤ともいい、水中でイオン性を示さない界面活性剤であり、前処理液中ではカチオンポリマーの分散剤としての役割、および前処理液の表面張力を下げる役割を担う。好ましいノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレングリコール、アルキルアルコールエトキシレートが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤は、前処理液に対し、好ましくは1〜10g/L、より好ましくは1〜5g/L添加することが好ましい。
本発明の前処理液は、さらにキレート剤を含有してもよい。キレート剤は、金属イオンに結合してキレート化合物を生成する複数の供与原子をもつ試薬であり、前処理液中では前処理液中に溶け込む金属イオンとキレート化合物をつくる役割を担う。好ましいキレート剤の例としては、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン等のモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のトリアルキルアミン、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられ、この中でもモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アンモニアが特に好ましい。なお、キレート剤の種類及び量によって前処理液のpHが異なる。キレート剤は、前処理液に対し、好ましくは2.0〜20g/L、より好ましくは2.0〜15g/L添加することが好ましい。
本発明の前処理液には、その他に任意成分として、pH調整剤等の通常の添加剤を必要に応じて添加することができる。
本発明の前処理液は、樹脂基体の表面に無電解めっきを行うための前処理液として用いられる。樹脂基体は、樹脂をその構成成分の一つとして含み、かつその表面で無電解めっきが行われうるのであれば、その材質、形状、大きさなどは特に限定されるものではない。例えば、樹脂基体としてはプリント配線基板が挙げられる。プリント配線基板はガラスクロス/樹脂部を有しうる。また、プリント配線基板は、スルーホールと呼ばれる微細貫通穴、ブラインドビアと呼ばれる微細非貫通穴、またはその両方を有することができる。スルーホール及びブラインドビアの穴の平均直径に制限はないが、スルーホールの平均直径は一般に0.2〜0.9mmであり、ブラインドビアの平均直径は一般に50〜100μmであり得る。また、高性能半導体パッケージ基板に代表される高密度プリント配線基板では、樹脂基体として機能性絶縁樹脂材料基板が用いられる。本発明において樹脂基体の「表面」には、樹脂基体に存在する穴の内壁面も含まれる。例えば、プリント配線基板の「表面」には、プリント配線基板に存在しうるスルーホール、ブラインドビアの穴の内壁面も含まれる。
樹脂基体を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリイミド、ABS、ポリフェニルエーテル、ポリスルフォン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレン、液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂基体は樹脂のみで構成される基体であってよく、または樹脂と樹脂以外の物質、例えば、ガラス繊維、ガラス繊維のクロス、他の無機物質、または紙などとの複合体として構成される基体であってもよい。
本発明における無電解めっき方法は、外部からめっき浴に電気エネルギーを与えずに、めっき浴中で還元剤を用いて触媒活性な表面に金属を析出させるめっき方法であって、当業者に通常知られている方法であることができる。例えば、無電解めっき方法は、めっき処理される樹脂基体を触媒溶液と接触させることにより、樹脂基体表面に触媒を吸着させる工程;および触媒が吸着している樹脂基体を無電解めっき処理して、樹脂基体上に金属めっき被膜を形成する工程を含むことができる。また、必要に応じて、無電解めっき方法は、触媒を吸着させる工程の前に、樹脂基体を脱脂、洗浄するためのいわゆるデスミア工程および/または樹脂基体の表面を粗化する粗化工程、ソフトエッチング工程、並びに酸による洗浄工程などを含むことができる。なお、これらデスミア工程、粗化工程、ソフトエッチング工程、酸による洗浄工程には、それぞれ、当該技術分野で知られた通常の処理溶液を使用することができる。
本発明において、「樹脂基体の表面に無電解めっきを行うための前処理液として使用される」とは、無電解めっき方法において、樹脂基体表面に触媒を吸着させる工程の前のいずれかの工程において、本発明の前処理液が樹脂基体を処理するための処理液として使用されることを意味する。例えば、無電解めっき方法において、デスミア工程、粗化工程、ソフトエッチング工程、および/または酸による洗浄工程などの追加の工程が行われる場合には、これらの工程のうちの任意の工程の前および/または後の段階で、本発明の前処理液が前処理液として使用されうる。
本発明の他の態様においては、本発明の前処理液により樹脂基体の表面を処理する、樹脂基体の表面処理方法が提供される。本発明の樹脂基体の表面処理方法において、「樹脂基体の表面を本発明の前処理液により処理する」には、当該処理方法で得られた樹脂基体を最終的に無電解めっき処理して得られる樹脂基体上の金属めっき被膜が本発明の有利な効果を奏する限りは、前処理液を樹脂基体に接触させる任意の方法が適用可能である。例えば、本発明の前処理液により樹脂基体の表面を処理することは、処理される樹脂基体を前処理液中に浸漬すること、または処理される樹脂基体に前処理液をスプレー等することによって行われうる。本発明の樹脂基体の表面処理方法において処理される樹脂基体は、後に無電解めっき処理が行われる樹脂基体であれば特に限定されるものではなく、上述のようなデスミア工程、粗化工程、ソフトエッチング工程、および/または酸による洗浄工程などが行われた樹脂基体であってよいし、これらの工程が行われていない樹脂基体であってもよい。
本発明の他の態様においては、樹脂基体を本発明の前処理液と接触させて、樹脂基体の表面を処理する工程;
前処理液で処理された樹脂基体を触媒溶液と接触させることにより、樹脂基体表面に触媒を吸着させる工程;および
触媒が吸着している樹脂基体を無電解めっき処理する工程;
を含む、樹脂基体上に金属めっき被膜を形成する方法が提供される。
場合によっては、本発明の樹脂基体上に金属めっき被膜を形成する方法においては、樹脂基体表面に触媒を吸着させる工程の前であって、本発明の前処理液と接触させて樹脂基体の表面を処理する工程の前または後で、上述のようなデスミア工程、粗化工程、ソフトエッチング工程、および/または酸による洗浄工程などが行われうる。また、場合によっては、触媒を吸着させる工程の後に触媒活性化を行うアクセレーター処理がなされてもよい。
樹脂基体、例えば、プリント配線基板は、本発明の前処理液による前処理後に、樹脂基体を触媒溶液に浸漬することにより、樹脂基体表面に触媒を吸着させるなどの触媒付与工程を経て、任意にアクセレーター処理によって触媒活性化を行い、樹脂基体表面に無電解めっき処理を行うことで、高い密着性を有する導電被膜を形成することができる。この場合、無電解めっき用触媒としては、好ましくは触媒活性に優れた触媒が用いられ、例えばパラジウムを含む触媒を用いることができる。
本発明において、無電解めっきは、これに限定されるわけではないが、銅、ニッケルまたは銅ニッケル合金などの無電解めっきであることができる。
本発明の前処理液の表面処理方法を用いた無電解銅めっきの例として、次の方法が挙げられる。
まず、45℃に加温した上記本発明の前処理液に樹脂基体を5分間浸漬し、被処理物の表面に触媒を付与するための表面調整を行う。この樹脂基体の表面を、30℃の過硫酸ソーダで・1分間ソフトエッチングを行い、次いで表面を室温で1分間酸洗浄し、エッチングにより生じたスマット塩を除去する。その後被処理物を触媒溶液、例えば45℃のSn・Pdコロイド触媒溶液に4分間浸漬し、被処理物表面に触媒を付与する。そして、室温で5分間アクセレーター液に浸漬するなどして、Sn等の除去およびPdを金属化する触媒活性化を行う。この触媒活性化した被処理物に対し通常の無電解めっき、例えば25℃、20分間の無電解銅めっきを行い、樹脂基体上に銅被膜を形成する。
次に、実施例および比較例をあげて、本発明を具体的に説明する。以下の実施例および比較例における密着強度及び表面粗さは次のようにして評価された。
(1)密着強度
無電解銅めっきによって得られた樹脂基体上に銅めっき被膜を有する被めっき材において、さらにその表面を室温で3分間脱イオン水により水洗いし、加熱乾燥(120℃、30分間)を行った後、被めっき材の無電解銅被膜の表面を硫酸を含むアシッドクリーナー(液温35℃、2分)に浸漬後、酸洗浄し、電解銅めっき(エレクトロポジットEP1100)により電解銅めっき処理を行った。得られた電解銅めっき被膜の表面を室温で3分間脱イオン水により水洗を行った後、加熱乾燥(180℃、60分間)を行った。得られた銅めっき被膜は膜厚が20〜25μmであり、このめっき被膜を1cm幅に切断し、プリント配線板試験方法JIS C5012に準拠し、角度90度、引き上げ速さ50mm/分でINSTRON 5564試験機により下地樹脂とめっき被膜の密着強度を測定した。
(2)表面粗さ(Ra)
被処理物である樹脂基体を溶剤を主成分とする樹脂膨潤液(サーキュポジット MLB211)で液温70〜80℃、5〜10分間浸漬後、過マンガン酸塩を主成分とする液(サーキュポジットMLB213)で液温70〜80℃、5〜20分間浸漬し粗化形状を形成させ、中和処理液(サーキュポジットMLB216−5)で液温45℃、5〜10分間浸漬させマンガンを除去した後、表面粗さ測定機 WYKO NT8000 により、処理された樹脂基体の表面粗さ(Ra)を測定した。
実施例1〜10
被処理物である樹脂基体として、下記の樹脂基板1〜3を用いた。
樹脂基板
樹脂基板1:Ra:590−630 (nm)
樹脂基板2:Ra:480−500 (nm)
エポキシ樹脂基板3:Ra: 900−1000 (nm)
カチオンポリマー、キレート剤、ノニオン界面活性剤、及び水を含む下記の前処理液原液(A)及び(D)を用い、表1に示す割合でビフルオリド塩として二フッ化水素アンモニウム(NHF・HF)を添加して前処理液浴を作製した。樹脂基板1〜3を過マンガン酸塩でデスミア/粗化処理を行い、続いて表3に示す前処理液に45℃、5分浸漬させた。その後、過硫酸ソーダにてソフトエッチングを行い酸で洗浄後、Sn・Pd混合コロイド(キャタポジット44 キャタリスト)による触媒付与処理及びアクセレレーター溶液(アクセレレーター19E)による触媒活性化を行った後、無電解銅めっき溶液(キューポジット 328 カッパーミックス コンセントレート)に25℃、20分浸漬して無電解銅めっきを行った。その後、電解銅めっき処理を行い、密着性試験に供した。その評価結果を表1に併記する。
前処理液原液
(下記の(A)〜(D)は、いずれもロームアンドハース電子材料株式会社製。カチオンポリマー、キレート剤、ノニオン界面活性剤、及び水を含有している。)
(A)コンディショナー ニュートラライザー3320
(B)クリーナーコンディショナー 231
(C)サーキュポジット 860
(D)クリーナーコンディショナー XP2285
Figure 2011162806
実施例11〜13
表2に示す割合で上記前処理液原液(B)〜(D)に二フッ化水素アンモニウムを添加して前処理液浴を作製した。被処理物として、ガラスクロス混在のエポキシ樹脂の両面に銅箔18μmが積層されている板厚1.6mmの両面版(日立化成工業株式会社製のFR-4)にドリルで直径0.9mmのスルーホールあけた樹脂基板4を用いた他は実施例1と同様の操作を行い、無電解銅めっきを行った。その後、スルーホール基板を研磨し、スルーホール内の化学銅付き回り性をバックライト法によって観察した。結果を図1〜3に示す。
Figure 2011162806
実施例11〜13より、スルーホールを有する基板に本発明の前処理液を適用しても問題なくめっきが行われたことがわかる。
実施例14〜19
実施例1の二フッ化水素アンモニウムを11.4g/L(0.2mol/L)用いる代わりに、表3に示す割合で各ビフルオリド塩を添加した前処理液浴を作製し、実施例1と同様の操作で無電解銅めっきを行った。各試験結果を表3に併記する。
Figure 2011162806
比較例1〜16
実施例1のニフッ化水素アンモニウムを11.4g/L(0.2mol/L)用いる代わりに、表4に示す各化合物を添加した前処理液浴を作製し、実施例1と同様の操作で無電解銅めっきを行った。各種試験結果を表4に併記する。なお、比較例13〜16は、硫酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを調整した。
Figure 2011162806
Figure 2011162806
比較例17〜18
実施例1のニフッ化水素アンモニウムを11.4g/L(0.2mol/L)用いる代わりに、表5に示す化合物を添加した前処理液浴を作製し、実施例1と同様の操作で無電解銅めっきを行った。各種試験結果を表5に併記する。なお、前記化合物添加後の前処理液原液AはpHが3.93であり、前記化合物添加後の前処理液原液DはpHが9.97であったため、それぞれ硫酸又は水酸化ナトリウムを用いて前処理液浴のpHを調整した。
Figure 2011162806
実施例1〜19より、本願発明の前処理液を用いると樹脂基板の表面粗さや前処理液原液の種類に依存せず、高い密着性を有することがわかる。また実施例1と比較例1、9〜12の比較より、二フッ化水素アンモニウムを添加した前処理液は二フッ化水素アンモニウムを添加しない場合(比較例1)やビフルオリド塩ではない化合物を添加した場合(比較例9〜12)に比べ、ピール強度が高く、密着性が高いことがわかる。また、比較例13〜18より、二フッ化水素アンモニウムの代わりにビフルオリド塩ではない化合物を添加剤として用いた場合は、前処理液のpH値を実施例と同等にしても、高い密着性が得られないことがわかる。また、実施例5と比較例7および実施例6と比較例8の比較より、二フッ化水素アンモニウムの量が5g/Lより低いと密着性が低いことがわかる。また、実施例16〜19より、ビフルオリド塩として二フッ化水素カリウム、二フッ化水素ナトリウムを用いた場合にも、二フッ化水素アンモニウムと同様に高いピール強度及び密着性が得られることがわかる。

Claims (5)

  1. 樹脂基体の表面に無電解めっきを行うための前処理液であって、カチオンポリマー、水、及び5〜200g/Lのビフルオリド塩を含有することを特徴とする、前処理液。
  2. ビフルオリド塩が、二フッ化水素アンモニウム、二フッ化水素カリウム、及び二フッ化水素ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1記載の前処理液。
  3. さらにノニオン系界面活性剤及び/又はキレート剤を含有する、請求項1又は2記載の前処理液。
  4. 樹脂基体が、スルーホール、ブラインドビアまたはその両方を有するプリント配線基板用樹脂基板である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前処理液。
  5. 無電解めっきを行う前に、樹脂基体の表面を請求項1〜3のいずれか1項記載の前処理液により処理することを含む、プリント配線基板の製造方法。
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