JP2011162388A - 廃液からアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法 - Google Patents

廃液からアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】使用後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料とし、次の(a)〜(c)の順に処理する。(a) 廃液に含まれるフッ化水素酸に過剰の酸化ケイ素化合物を反応させ、ケイフッ化水素酸に変換する。(b) (a)でケイフッ化水素酸に変換した後の廃液に、過剰のアルカリ金属塩を添加し、アルカリ金属ケイフッ化物を製造する。(c) (b)によりアルカリ金属ケイフッ化物を製造した後、分離した液とアルミニウム化合物、または、ホウ素化合物とを反応させ、液に含まれるケイフッ化水素酸の構成元素であるフッ素を非揮発性のフルオロアルミン酸または高沸点性のホウフッ化水素酸に変換してから、蒸留法によって硝酸を製造する。
【効果】高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体や太陽電池関係のシリコンを基材とする産業において、シリコン母材の加工やシリコン基盤の洗浄に使用された後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液から、有価物である高純度の、ケイフッ化ナトリウムに代表されるアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法に関するものである。
半導体や太陽電池関係のシリコンを基材とする産業では、基盤洗浄、加工工程において、フッ化水素酸と硝酸の混酸が多量に使用されている。それに伴い、使用後の廃液量も増加しており、環境問題及び資源の有効利用の観点からその適切な処理が望まれている。そして、その処理も産業廃棄物として処理するのではなく、フッ素資源の有効利用のため、その廃液を原料として有価物であるフッ化物を高純度に製造する方法とともに硝酸の回収方法の確立が求められている。
半導体、シリコン基板、及び太陽電池の製造工程では、シリコンの加工や洗浄のために、フッ化水素酸と硝酸を適宜な濃度になるよう混合し、混酸として使用している。この使用された後の混酸の廃液は、水酸化カルシウムのようなカルシウム化合物と反応させ、難溶性のフッ化カルシウム等の化合物としてフッ素を固定分離した後、硝酸分を水酸化ナトリウム等で中和してから活性汚泥法で処理されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、それぞれの処理で発生した汚泥は、産業廃棄物として埋め立て処理や焼却処理される。これらの処理方法については、いろいろな手法がすでに提案されている(例えば、特許文献2、3参照)が、それらは、廃水処理のためのフッ化水素酸と硝酸を処理する方法で、廃液中のフッ素を原料として、工業用薬品であるケイフッ化ナトリウムで代表されるアルカリ金属ケイフッ化物を製造することと硝酸の回収に関しては、検討されてはいない。
特開2001−276890号公報
特開2003−159593号公報
特開2006−142148号公報
本発明は、半導体や太陽電池関係のシリコンを基材とする産業で、シリコン母材の加工やシリコン基盤の洗浄において使用された後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料として、有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法を提供することを目的とするものである。
一般に、半導体や太陽電池関係のシリコンを基材とする産業では、シリコン母材の加工やシリコン基盤の洗浄を行うために、濃度50重量%程度のフッ化水素酸と濃度70重量%程度の硝酸を混合し適当な濃度に調整された混酸が使用されている。
そして、使用された後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液には、その利用度により変化するが、未反応のフッ化水素酸と反応で生成したケイフッ化水素酸、及び硝酸が含まれている。
廃液中のフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、及び硝酸のそれぞれを単なる蒸留法で単離することは、水溶液中で共存している場合、それぞれの成分が作用し合った数多くの沸騰状態があるため、非常に困難である。また、水酸化カルシウムのようなカルシウム化合物と反応させてフッ素を分離する場合は、難溶解性のフッ化カルシウムとケイフッ化カルシウムの両方が同時に生成するので、それらの混合物になってしてしまい、得られたものの工業用薬品としての価値は低い。
また、塩化ナトリウムのようなアルカリ金属化合物と反応させて、ケイフッ化ナトリウムのようなアルカリ金属ケイフッ化物としてフッ素を分離する場合は、廃液中に存在するフッ化水素酸も反応してアルカリ金属フッ化物であるフッ化ナトリウムやアルカリ金属酸性フッ化物である酸性フッ化ナトリウムが生成して混入し、純度を低下させ、工業用薬品としての価値を低下させる問題がある。
本発明者等は、鋭意研究の結果、シリコン母材の加工やシリコン基盤の洗浄において使用された後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料として、有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法を見出した。すなわち、工業用薬品として有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造するための、操作の手順、原料化合物の選定、原料化合物の量、原料化合物の投入方法、反応温度、蒸留方法について種々検討し、以下に示すように、工業的に確立する方法を完成するに至った。
すなわち、本発明は、廃液からアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法に関するものであって、使用後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料とし、次の(a)〜(c)の順に処理することによって、有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造することを特徴とするものである。
(a) 廃液に含まれるフッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させ、ケイフッ化水素酸に変換する。
(b) (a)でケイフッ化水素酸に変換した後の廃液に、アルカリ金属塩を添加し、アルカリ金属ケイフッ化物を製造する。
(c) (b)によりアルカリ金属ケイフッ化物を製造した後、分離した液とアルミニウム化合物、または、ホウ素化合物とを反応させ、液に含まれるケイフッ化水素酸の構成元素であるフッ素を非揮発性のフルオロアルミン酸または高沸点性のホウフッ化水素酸に変換してから、蒸留法によって硝酸を製造する。
上記の場合において、廃液に含まれるフッ化水素酸と酸化ケイ素化合物とを、酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.18〜0.35倍で反応させることが望ましい。このようにすると、酸化ケイ素化合物とフッ化水素酸の反応において、酸化ケイ素化合物を過剰に添加することで化学平衡をケイフッ水素酸の生成方向へ促進させることができる。
また、アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属のモル数がケイフッ化水素酸のモル数に対して2.04〜3.40倍であることが望ましい。このようにすると、アルカリ金属塩とケイフッ化水素酸との反応において、アルカリ金属塩を過剰に添加することでアルカリ金属ケイフッ化物が生成される方向へ促進させることができる。
また、反応温度を35〜70℃の間で調整することが望ましい。このようにすると、高純度で大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶が得られるので、アルカリ金属ケイフッ化物を遠心ろ過機等のろ過機で反応液と分離する作業が円滑になり、工業的製法として有利になる。
さらに、アルカリ金属塩の水溶液を反応温度が35〜70℃になるようにあらかじめ加熱して投入することが望ましい。このようにすると、アルカリ金属ケイフッ化物の結晶がより大きく成長し、高純度でより大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶を得ることができるので、より有利である。
本発明をさらに詳細に説明する。本発明による廃液からアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法は、廃液中の未反応のフッ化水素酸からケイフッ化水素酸を製造する工程(a)と、アルカリ金属ケイフッ化物を製造する工程(b)と、硝酸を製造する工程(c)とからなり、これらを(a)、(b)、(c)の順に処理することにより、本発明の目的とする有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造することができる。
以下、工程(a)〜(c)についてさらに詳細に説明する。
(工程(a):廃液中の未反応のフッ化水素酸からケイフッ化水素酸を製造する)
廃液中の未反応のフッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させてケイフッ化水素酸を製造する。
フッ化水素酸が残ると後工程のアルカリ金属ケイフッ化物を製造する過程で、アルカリ金属塩の一部がフッ化水素酸と反応し、アルカリ金属フッ化物やアルカリ金属酸性フッ化物が生成して混入し、アルカリ金属ケイフッ化物の純度が低減するため、フッ化水素酸は完全にケイフッ化水素酸にすることが好ましい。使用し得る酸化ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を挙げることができる。
そして、本発明の目的である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物を製造するためには、反応させる酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.18〜0.35倍であることが望ましい。
これは、酸化ケイ素化合物として二酸化ケイ素の例を示す式(1)における酸化ケイ素化合物とフッ化水素酸の反応において、酸化ケイ素化合物を過剰にして化学平衡をケイフッ化水素酸が生成される方向へ促進させるためであり、次のアルカリ金属ケイフッ化物を製造する工程(b)において、高純度のアルカリ金属ケイフッ化物を得ることに関しての重要事項であるということができる。
なお、0.18倍以下であるとフッ化水素酸を完全にケイフッ化水素酸に変換できず、0.35倍以上の場合は経済的でない。
Figure 2011162388
実際には、反応槽中において廃液を攪拌しながら、酸化ケイ素化合物を添加して行き、フッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させてケイフッ化水素酸とし、過剰の酸化ケイ素化合物はろ過して除去する。
(工程(b):アルカリ金属ケイフッ化物を製造する)
廃液中の未反応のフッ化水素酸からケイフッ化水素酸を製造する工程(a)でケイフッ化水素酸に変換した後の廃液に、アルカリ金属塩を添加し、アルカリ金属ケイフッ化物を製造する。使用し得るアルカリ金属塩としては、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
アルカリ金属塩の添加方法は、固体の状態で投入しても良いが、適当な濃度の水溶液にして添加する方が、反応を制御しやすい。また、アルカリ金属塩の投入は、全量を一度に行っても良いが、アルカリ金属ケイフッ化物の析出と分離を何回かに分けながら段階的に行っても良い。
アルカリ金属塩の投入量は、アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属のモル数でケイフッ化水素酸のモル数に対し、2.04〜3.40倍投入するのが望ましい。
これは、本発明の目的である高純度のアルカリ金属塩を得るためには、アルカリ金属塩とケイフッ化水素酸との反応〔式(2)〕において、アルカリ金属塩を過剰に添加することで化学平衡をアルカリ金属ケイフッ化物が生成される方向へ促進させるためである。
アルカリ金属塩添加量がケイフッ化水素酸のモル数に対して2.04倍を下回ると、ケイフッ化水素酸をアルカリ金属ケイフッ化物として完全に回収できない。また、3.40倍を上回ることは、経済的でない。
Figure 2011162388
アルカリ金属ケイフッ化物を製造する場合において、反応温度を35〜70℃の間で調整するのが望ましい。このようにすると、高純度で大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶が得られるので、アルカリ金属ケイフッ化物を遠心ろ過機等のろ過機で反応液と分離する作業が円滑になり、工業的製法として有利になる。
反応温度が35℃未満であると、得られるアルカリ金属ケイフッ化物の結晶の粒子が小さくなり、反応液との分離が困難になる。また、反応温度が70℃以上になると、反応液からケイフッ化水素酸及び硝酸が蒸発すること、さらに、熱エネルギーを過剰に加えることになるので、現実的ではない。
また、反応温度の調整は、反応装置を加熱して制御しても良いが、アルカリ金属塩の水溶液を反応温度が35〜70℃になるようにあらかじめ加熱して投入すると、アルカリ金属ケイフッ化物の結晶がより大きく成長し、高純度でより大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶を得ることができるので、より有利である。
以上のように製造されたアルカリ金属ケイフッ化物を、遠心分離機等のろ過機で分離した後、乾燥してアルカリ金属ケイフッ化物の粉体を得る。そして、分離された反応液は、次工程(c)の「硝酸を製造する工程」に使用するか、上述のアルカリ金属塩のうちのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩のいずれかと反応させ、アルカリ金属硝酸塩の水溶液にしてアルカリ金属源として使用することができる。
(工程(c):硝酸を製造する)
アルカリ金属ケイフッ化物を製造する工程(b)において、アルカリ金属ケイフッ化物を分離した液中には、揮発成分としては、残留するケイフッ化水素酸と硝酸が存在している。
これらを単なる蒸留法で分離することは、上述したように、それぞれの成分が作用し合った数多くの沸騰状態があるため、非常に困難であるから、式(3)及び式(4)に示すように、ケイフッ化水素酸をアルミニウム化合物またはホウ素化合物と反応させて、その構成元素であるフッ素を非揮発性のフルオロアルミン酸または高沸点性のホウフッ化水素酸に変換してから蒸留することにより、低沸点物である硝酸をケイフッ化水素酸を含有することなく容易に分離できる。
ここに、使用し得るアルミニウム化合物としては、アルミニウム金属、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム等を挙げることができ、また、使用し得るホウ素化合物としては、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等を挙げることができる。
蒸留方法としては、減圧蒸留やその他の蒸留法で行うことができる。また、蒸留装置は、硝酸等の酸性物に耐久性のあるフッ素樹脂等の材質で構成されておれば良い。
Figure 2011162388
Figure 2011162388
請求項1記載の発明によれば、半導体や太陽電池関係のシリコンを基材とする産業において、シリコン母材の加工やシリコン基盤の洗浄に使用された後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料として、有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造することができる。
請求項2記載の発明によれば、フッ化水素酸と酸化ケイ素化合物との反応において、化学平衡をケイフッ化水素酸が生成される方向へ促進させることができるので、高純度のアルカリ金属ケイフッ化物を得るためのケイフッ化水素酸を製造することができる。
請求項3記載の発明によれば、アルカリ金属塩とケイフッ化水素酸との反応において、化学平衡をアルカリ金属ケイフッ化物が生成される方向へ促進させることができるので、高純度のアルカリ金属ケイフッ化物を製造することができる。
請求項4記載の発明によれば、高純度で大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶が得られるので、アルカリ金属ケイフッ化物を遠心ろ過機等のろ過機で反応液と分離する作業が円滑になり、工業的製法として有利になる。
請求項5記載の発明によれば、アルカリ金属ケイフッ化物の結晶がより大きく成長し、高純度でより大きなアルカリ金属ケイフッ化物の結晶を得ることができるので、より有利である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)
表1に示す組成のシリコン洗浄廃液500kgを、2mのポリエチレン製反応器に計り採り、攪拌しながら、フッ化水素酸量のモル数の0.24倍の二酸化ケイ素粉末24.1kgを投入し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にし、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、16.3重量%であった。
Figure 2011162388
(ケイフッ化ナトリウムの製造)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)で得られたろ過液を攪拌しながら、70℃に加熱した20重量%硝酸ナトリウム溶液600kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.44倍)を50分かけて滴下した。滴下終了後、2時間攪拌した。そのとき、反応熱も発生して、反応温度は49℃になった。反応液を1日間放冷した。その後、結晶を遠心ろ過機で分離し、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム83kgを得た。
その分析結果は、純度99.8重量%、平均粒子径(d50)が87μmであった。
また、ろ過液中の硝酸の濃度は、20.5重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は1.8重量%であった。
(硝酸の製造)
(ケイフッ化ナトリウムの製造)で得られたケイフッ化ナトリウムを分離した後のろ過液を、0.5mのポリエチレン製反応器に250kg計り採り、水酸化アルミニウム7.3kgを少しずつ投入した後、6時間攪拌した。
その液100kgをフッ素樹脂製の蒸留装置で蒸留し、50〜110℃の間の留出液65kgを得た。
その留出液を分析したところ、硝酸濃度は25.6重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は0.05重量%以下であった。
(実施例2)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)
表2に示す組成のシリコン洗浄廃液200kgを、1mのポリエチレン製反応器に計り採り、攪拌しながら、フッ化水素酸量のモル数の0.22倍の二酸化ケイ素粉末6.78kgを投入し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にし、過剰分の二酸化ケイ素をろ過機で分離した。
ろ過液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、13.4重量%であった。
Figure 2011162388
(ケイフッ化カリウムの製造)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)で得られたろ過液190kgを、本体が1mの鉄製で内面がポリプロピレンライニングされたジャケット付反応器に計り採り、反応器のジャケットに減圧蒸気を流して液温を40℃に加熱した。次に、液を攪拌しながら、炭酸水素カリウムの粉末39.4kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.25倍)を炭酸ガスの発生を調整しながら、少しずつ添加した。添加終了後、2.5時間攪拌した。そのとき、反応熱も発生して、反応温度は60℃になった。その後、反応液を1日間放冷した。そして、結晶を遠心ろ過機で分離した後、乾燥させて、ケイフッ化カリウム35.5kgを得た。
その分析結果は、純度99.2重量%、平均粒子径(d50)が83μmであった。
また、ろ過液中のケイフッ化水素酸を分析したところ、その濃度は0.80重量%であった。
(硝酸の製造)
(ケイフッ化カリウムの製造)で得られたケイフッ化カリウムを分離した後のろ過液を、0.5mのポリエチレン製反応器に100kg計り採り、ホウ酸6.8kgを少しずつ投入した後、6時間攪拌した。
その液100kgをフッ素樹脂製の蒸留装置で蒸留し、50〜95℃の間の留出液59kgを得た。
その留出液を分析したところ、硝酸濃度は19.3重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は0.05重量%以下であった。
(実施例3)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)
表3に示す組成のシリコン洗浄廃液500kgを、2mのポリエチレン製反応器に計り採り、攪拌しながら、フッ化水素酸量のモル数の0.27倍の二酸化ケイ素粉末6.09kgを投入し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素を完全にケイフッ化水素酸にした。
その液を分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は0.01重量%以下で、ケイフッ化水素酸の濃度は、8.4重量%であった。
Figure 2011162388
(ケイフッ化ナトリウムの製造)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)で得られた液を攪拌しながら、実施例1の(ケイフッ化ナトリウムの製造)で得たケイフッ化ナトリウムを分離した液に水酸化ナトリウムを加えて調整した20重量%硝酸ナトリウム溶液334kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.65倍)を50℃に加熱して、1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、1.5時間攪拌をした。そのとき、反応熱も発生して、反応温度は62℃になった。その後、反応液を1日間放冷した。そして、結晶を遠心ろ過機で分離し、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム50.1kgを得た。
その分析結果は、純度99.7重量%、平均粒子径(d50)が104μmであった。
また、ろ過液中の硝酸の濃度は、18.1重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は0.60重量%であった。
(硝酸の製造)
(ケイフッ化ナトリウムの製造)で得たケイフッ化ナトリウムを分離した後のろ過液を、0.5mのポリエチレン製反応器に250kg計り採り、硫酸アルミニウム水和物26kgを少しずつ投入した後、5時間攪拌した。
その液100kgをフッ素樹脂製の蒸留装置で蒸留し、50〜85℃の間の留出液62kgを得た。
その留出液を分析したところ、硝酸濃度は24.6重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は0.05重量%以下であった。
次に、上記実施例に対する比較例について、詳細に説明する。
(比較例1)
(フッ化水素酸をケイフッ化水素酸にする)
表4に示す組成のシリコン洗浄廃液500kgを、2mのポリエチレン製反応器に計り採り、攪拌しながら、フッ化水素酸量のモル数の0.17倍の二酸化ケイ素粉末14.6kgを投入し、二酸化ケイ素を溶解させてフッ化水素をケイフッ化水素酸にした。
分析して確認したところ、フッ化水素酸の濃度は1.1重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は、14.7重量%であった。
Figure 2011162388
(ケイフッ化ナトリウムの製造)
前記液を攪拌しながら、室温で20重量%硝酸ナトリウム溶液600kg(ケイフッ化水素酸のモル数の2.0倍)を50分かけて滴下し、滴下終了後、2時間攪拌をした。そのとき、反応熱も発生したが、反応温度は32℃にとどまった。その後、反応液を1日間放冷した。そして、実施例1のときの3倍の時間をかけて結晶を遠心ろ過機で分離し、乾燥させて、ケイフッ化ナトリウム65kgを得た。
その分析結果は、純度84.4重量%、平均粒子径(d50)が15μmであった。
また、X線回折分析で調査したところ、ケイフッ化ナトリウムの他に、フッ化ナトリウム、酸性フッ化ナトリウムが含まれており、工業用薬品として要求される品位を大きく下回ることが判明した。
また、ろ過液中の硝酸の濃度は、18.7重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は2.7重量%であった。
(硝酸の製造)
(ケイフッ化ナトリウムの製造)で得られたケイフッ化ナトリウムを分離した後のろ過液100kgを、フッ素樹脂製の蒸留装置で蒸留し、50〜110℃の間の留出液75kgを得た。
その留出液を分析したところ、硝酸濃度は21.6重量%で、ケイフッ化水素酸の濃度は3.52重量%であった。また、フッ化水素が0.4重量%含まれていた。したがって、得られたものは工業薬品としては、低価値であることが判明した。

Claims (5)

  1. 使用後のフッ化水素酸と硝酸の混酸の廃液を原料とし、次の(a)〜(c)の順に処理することによって、有価物である高純度のアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造することを特徴とする、廃液からアルカリ金属ケイフッ化物と硝酸を製造する方法。
    (a) 廃液に含まれるフッ化水素酸を酸化ケイ素化合物と反応させ、ケイフッ化水素酸に変換する。
    (b) (a)でケイフッ化水素酸に変換した後の廃液に、アルカリ金属塩を添加し、アルカリ金属ケイフッ化物を製造する。
    (c) (b)によりアルカリ金属ケイフッ化物を製造した後、分離した液とアルミニウム化合物、または、ホウ素化合物とを反応させ、液に含まれるケイフッ化水素酸の構成元素であるフッ素を非揮発性のフルオロアルミン酸または高沸点性のホウフッ化水素酸に変換してから、蒸留法によって硝酸を製造する。
  2. 廃液に含まれるフッ化水素酸と酸化ケイ素化合物とを、酸化ケイ素化合物のケイ素のモル数がフッ化水素酸のモル数に対して0.18〜0.35倍で反応させ、ケイフッ化水素酸に完全に変換せしめることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属のモル数がケイフッ化水素酸のモル数に対して2.04〜3.40倍であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 反応温度を35〜70℃の間で調整することを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. アルカリ金属塩の水溶液を反応温度が35〜70℃になるようにあらかじめ加熱して投入することを特徴とする請求項1記載の方法。
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