以下、図1から図11を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る試料ステージのステージ機構の構成図である。
ステージ機構10は、半導体ウェハ(図示せず)が搭載される試料ホルダ133を、図1に示すX−Y座標系上の任意の座標位置に位置決めするものである。図示の例では、ステージ機構10は、次のような構成になっている。
ベース100上にはYベース110が固定され、Yベース110には、試料ホルダ133を備えたトップテーブル130をY方向に沿って移動案内するための案内機構としてのYガイド111が設けられている。図示の例では、Yガイド111は、Yベース110の上面に、X方向の中央部(図示せず)とその両端側それぞれとに1本ずつ固定配置された、合計3本の案内レール111’からなる。各案内レール111’は、互いに平行で、Y方向に沿って延びている。Yテーブル112は、この3本の案内レール111’によって、Yベース110上をY方向に移動可能に支持されている。その一方で、Yテーブル112は、このYガイド111によって、Yベース110上でのX方向の移動を拘束されている。
また、Yベース110には、このY方向に可動自在なYテーブル112をYベース110に対して停止保持するためのYブレーキレール114が設けられている。Yブレーキレール114は、Yベース110のX方向の両端側それぞれに固定され、Y方向に延びている。Yテーブル112のX方向の両端側には、Yブレーキレール114とともにY方向に関しての制動機構を構成するYブレーキ機構115が、後述するブレーキパッドをYブレーキレール114に対向させて固設されている。
さらに、Yベース110のX方向の端部とYテーブル112の対応するX方向の端部との間には、Yテーブル112をYベース110に対してY方向の任意位置に移動位置させるためのYリニアモータ113がそれぞれ設けられている。各Yリニアモータ113は、支持体113fに支持された軸状の固定子113sに可動子113mが係合している構成になっている。各Yリニアモータ113は、例えばシャフトモータによって構成され、その固定子113sは、同極同士を接合した複数の永久磁石を連設してなるシャフトになっており、その可動子113mは、このシャフトと遊嵌する電磁コイルを備えたスライダになっている。各Yリニアモータ113は、支持体113fが固定子113sであるシャフトの延設方向をY方向にしてベース100又はYベース110に固定され、可動子113mがYテーブル112のX方向の端部に固定された構成になっている。各Yリニアモータ113は、可動子113mの電磁コイルを磁極変化させて、固定子113sの永久磁石との間で可動子113mに対して推力や制動力を作用させ、可動子113mひいてはYテーブル112をY方向の任意位置に移動位置させることができる。なお、図1では、Yリニアモータ113は、Yテーブル112のX方向両端部それぞれに設けられているが、これらは必要な推力や制動力があれば、いずれか一方のX方向端部にのみ設けた構成であってもよい。
また、Yテーブル112の上面には、試料ホルダ133が設けられたトップテーブル130のY方向と直交するX方向についての案内機構としてのXサブガイド116が設けられている。Xサブガイド116は、Yテーブル112のY方向の両端側にそれぞれ1本ずつ、合計2本の案内レール116’が、互いに平行に、X方向に延設された構成となっている。
このXサブガイド116には、トップテーブル130の下面に設けられたXサブテーブル(図1では、図面上に現れない)が係合している。Xサブテーブルは、トップテーブル130の下面側に一体的に連結されている。これにより、Xサブテーブル及びトップテーブル130は、Xサブガイド116によってYテーブル112に対してのY方向の移動が拘束され、Xサブガイド116に沿ったX方向の直線運動が許容されている。
同様に、ベース100上には、Yベース110のY方向の両端側にそれぞれ位置させて、Xベース120が固定されて設けられている。各Xベース120には、試料ホルダ133が設けられたトップテーブル130をX方向に沿って移動案内するための案内機構としてのXガイド121が設けられている。図示の例では、Xガイド121は、Xベース120の上面に固定配置された、X方向に沿って延びている案内レール121’からなる。
Xテーブル122は、各Xベース120の案内レール121’ によって、Xベース120上をX方向に移動可能に支持されている。その一方で、Xテーブル122は、このXガイド121により、Xベース120上でのY方向の移動を拘束されている。
また、各Xベース120には、このX方向に可動自在なXテーブル122をXベース120に対して停止保持するためのXブレーキレール124が設けられている。Xブレーキレール124は、X方向に延びている。Xテーブル122のY方向の両端側には、Xブレーキレール124とともにX方向に関しての制動機構を構成するXブレーキ機構125が、後述するブレーキパッドをXブレーキレール124に対向させて固設されている。
さらに、各Xベース120とXテーブル122の対応するY方向の端部との間には、Xテーブル122をXベース120に対してX方向の任意位置に移動位置させるためのXリニアモータ123がそれぞれ設けられている。各Xリニアモータ123は、支持体123fに支持された軸状の固定子123sに可動子123mが係合している構成になっている。各Xリニアモータ123は、例えばシャフトモータによって構成され、その固定子123sは、同極同士を接合した複数の永久磁石を連設してなるシャフトになっており、その可動子123mは、このシャフトと遊嵌する電磁コイルを備えたスライダになっている。各Xリニアモータ123は、支持体123fが固定子123sであるシャフトの延設方向をX方向にしてベース100又はXベース120に固定され、可動子123mがXテーブル122のX方向の端部に固定されている。各Xリニアモータ123は、可動子123mの電磁コイルを磁極変化させて、固定子123sの永久磁石との間で可動子123mに対して推力や制動力を作用させ、可動子123mひいてはXテーブル122をX方向の任意位置に移動位置させることができる。なお、図1では、Xリニアモータ123は、Xテーブル122のY方向両端部それぞれに設けられているが、これらは必要な推力や制動力があれば、いずれか一方のY方向端部にのみ設けた構成であってもよい。
また、Xテーブル122の上面には、試料ホルダ133が設けられたトップテーブル130のX方向と直交するY方向についての案内機構としてのYサブガイド126が設けられている。Yサブガイド126は、Xテーブル122のX方向の両端側にそれぞれ1本ずつ合計2本の案内レール126’が、互いに平行に、Y方向に延設された構成となっている。
このYサブガイド116には、トップテーブル130の下面に設けられたYサブテーブル(図1では、図面上に現れない)が係合している。Yサブテーブルは、トップテーブル130の下面側に一体的に連結され、Yサブテーブル及びトップテーブル130は、Yサブガイド126によってXテーブル122に対するX方向の移動が拘束され、Xテーブル122に対してのYサブガイド126に沿ったY方向の直線運動が許容されている。
さらに、Xテーブル122には、トップテーブル130の下面に設けられた前述のXサブガイドが貫通されるY方向に延びた長孔127が形成されている。これにより、Xサブガイド及びトップテーブル130は、Xテーブル122とは独立に、この長孔127内を長手方向(Y方向)に沿って移動できるようになっている。
ステージ機構10では、Xテーブル122,Yテーブル112が、それぞれ対応するXガイド121,Yガイド111に沿って移動することにより、トップテーブル130のX方向及びY方向の2次元移動が可能となる。そして、トップテーブル130の上には、その2次元移動位置をレーザ干渉計(図示せず)により計測するための固定ミラー(Xミラー131、Yミラー132)、試料が載置される試料ホルダ133が設けられている。
なお、上述したステージ機構10の構成では、リニアモータは、固定子に複数の永久磁石を連設し、可動子を電磁コイルで構成したシャフトモータにより構成したが、その構成は、例えば固定子に複数の電磁コイルを連設し、可動子を永久磁石で構成したシャフトモータであってもよい。さらに、リニアモータ自体も、シャフトモータに限定されるものではなく、直線移動可能な可動子を備えたものであればよい。
図2は、Xテーブル及びYテーブルにそれぞれ設けられた各ブレーキ機構の取り付け位置を示す概略図である。
ステージ機構10は、Xテーブル122及びYテーブル112それぞれを、図中の破線矢印で示すようにX方向及びY方向に関して移動変位させて、このXテーブル122及びYテーブル112それぞれと係合しているトップテーブル130を、XY座標上の任意の座標位置に位置決めする。その位置決めは、Xリニアモータ123及びYリニアモータ113それぞれの推力・制動制御、Xブレーキ機構125及びYブレーキ機構115それぞれの作動制御によって行われる。
図1で説明したとおり、ステージ機構10には、Xブレーキ機構125はXテーブル122のY方向の両端側122a,122bそれぞれに対応して、Yブレーキ機構115はYテーブル112のX方向の両端側112a,112bそれぞれに対応して、図2に示すように合計4つのブレーキ機構125a,125b,115a,115bが設けられている。各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bは、アクチュエータの変位に応動させてブレーキパッドをブレーキレール124a,124b,114a,114bに対して進退させることによって、ブレーキレール124a,124b,114a,114bを押圧して制動力を発生させたり、その発生させた制動力を解除したりする。アクチュエータとしてはピエゾアクチュエータ301が用いられ、そのピエゾ素子に対する印加電圧の大きさを調整することにより、その制動力を制御できる構成になっている。
図3は、図1及び図2に示したブレーキ機構の構成図であり、図3(a)は、ブレーキ機構をテーブルの移動方向と直交する方向に眺めた正面図、図3(b)は、ブレーキ機構をテーブルの移動方向に眺めた側面図である。なお、ここでは、ブレーキ機構125aの構成を例に詳述するが、他のブレーキ機構125b,115a,115bの構成については、ブレーキ機構125aの構成と同様なので、その説明は省略する。
図3において、ピエゾアクチュエータ301は、その内部に積層型のピエゾ素子(図示せず)が実装され、このピエゾ素子に電圧を印加することによって、先端部301tが軸方向に伸びる構成になっている。ピエゾアクチュエータ301は、ホルダ302に形成された取付部(図示せず)に固定ボルト(図示せず)によって一体的に組み付けられている。
ホルダ302は、Xテーブル122の底面に取り付けられている。また、ホルダ302には、ピエゾアクチュエータ301の先端部301tの軸方向変位を後述のブレーキパッド307の進退に変換するためのリンクレバー303が取り付けられている。リンクレバー303には、シャフト孔302pが形成され、このシャフト孔302pには、スリーブ304を介してシャフト305の一端側305aが組み込まれ、リンクレバー303及びシャフト305は一体的に係合されている。その一方で、このシャフト305の他端側305bは、予め組み込まれているホルダ302の軸受306に係合され、この軸受306によって、リンクレバー303及びシャフト305は一体的に回動可能にホルダ302に支持されている。
リンクレバー303は、シャフト305を中心に、一方端側がピエゾアクチュエータ301の先端部301tと当接する当接部303aになっており、他方端側がブレーキパッド307を取り付ける取付部303bとなっている。リンクレバー303には、その当接部303aがピエゾアクチュエータ301の先端部301tと常時当接していて離間しないように、図示しないバネによって、矢印Aの方向に一定の付勢力(モーメント)が加わるようになっている。これによって、リンクレバー303の当接部303aとピエゾアクチュエータ301の先端部301tとは常時当接する状態になり、ピエゾアクチュエータ301に駆動電圧が印加されなくなり、ピエゾアクチュエータ301の先端部301tが退行するときでも、リンクレバー303の当接部303aはピエゾアクチュエータ301の先端部301tに当接している。そして、リンクレバー303は、シャフト305を中心に、取付部303bが形成されている他方端側への長さL2が当接部303aが形成されている一方端側への長さL1よりも長く、ピエゾアクチュエータ301の先端部301tの変位を取付部303bで増幅して取り出せる構成になっている。その上で、リンクレバー303の取付部303bには、パッド本体308をブレーキレール124に対向させた状態でブレーキパッド307を取り付けるためのブラケット312が固定されている。
ブレーキパッド307は、ブレーキレール124の表面と当接して制動力を発生させるパッド本体308と、ブラケット312に連結固定され、パッド本体308を一体的に保持するパッドホルダ309とを有する。パッド本体308は、例えばSUS(ステンレス鋼)によって形成され、その表面形状(ブレーキ制動面形状)は中央部がその周辺部に対して突出した曲面形状になっている。また、裏面には、パッドホルダ309との固定ボルトが締結されるボルト孔が穿設されている。
これに対し、パッドホルダ309は、パッド本体308の取付側の面が凹部構造になっており、凹部には、固定ボルトの挿通孔が形成された板バネ310がその周縁部を係止されて凹部の底面との間に形成された空間に圧縮バネ311を介在させて支持され、取り付けられている。
ブレーキパッド307は、パッド本体308の裏面をパッドホルダ309の板バネ310に当接させて、板バネ310及び圧縮バネ311によるパッド本体308の支持力、すなわちパッドホルダ309による支持力が一定となるようにして、固定ボルトによりパッドホルダ309に連結されている。
このようなパッド本体308とパッドホルダ309との一体構造によって構成されたブレーキパッド307は、図示せぬ固定ボルトにより、リンクレバー303の取付部303b側のブラケット312に組み付け固定される。
その上で、ブレーキ機構125aは、ホルダ30に設けた取付用ボルト孔(図示せず)を利用して、図3に示すようにXテーブル122に取り付けられる。この際、ブレーキ機構125aは、ピエゾアクチュエータ301に駆動電圧を印加しない状態で、パッド本体308のブレーキ制動面(当接面)とXブレーキレール124のブレーキ被制動面124uとの間に微小なギャップを設けるようにして、ブレーキパッド307はブラケット312に組み付け固定されている。これにより、ブレーキ機構125aが制動オフのときには、パッド本体308のブレーキ制動面とXブレーキレール124のブレーキ被制動面124uとの間にはギャップを生じていて、ブレーキパッド307はXブレーキレール124のブレーキ被制動面124uに対し非接触状態になり、Xテーブル122が移動する際、ブレーキパッド307のパッド本体308をXブレーキレール124に引き摺らないようになっている。
このように構成された各ブレーキ機構では、X軸用のブレーキ機構125a、125bはXテーブル122のX方向の変位に対して制動力を発生させ、Y軸用のブレーキ機構115a、115bはYテーブル112のY方向の変位に対して制動力を発生させる。その際、X軸用,Y軸用のいずれのブレーキ機構とも、対応するテーブルの一方の端部側に設けられたブレーキ機構125a,115aに生じる推力(詳細は後述する)の発生方向と、他方の端部側に設けられたブレーキ機構125b,115bに生じる推力の発生方向とが互いに反対方向となるように、それぞれの推力の発生方向を図2に実線矢印で記載したようにして互いの向きを反対にして設置されている。
このように、X軸用,Y軸用それぞれのテーブル122(112)の移動方向に対してテーブル122(112)の両端側それぞれに設けられた2つのブレーキ機構125a,125b(115a,115b)の推力を、テーブル122(112)の移動方向に沿って反対向きにすることで、互い推力の大きさが釣り合い、その上でブレーキ制動力が加わるので、トップテーブル130の停止位置がずれることがなくなる。なお、ブレーキ制動力と推力の発生原理に関しては後述する。
以上の構造により、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bは、ピエゾアクチュエータ301への駆動電圧のON/OFFに基づく先端部301tの進退変位に応動して、リンクレバー303は、図中の矢印Bで示すように、シャフト305を中心にして反時計回り/時計回り方向に回動変位する。このリンクレバー303の回動変位は、ブラケット312を介し、ブレーキレール124,114のブレーキ被制動面124u,114に対しての、ブレーキパッド307のパッド本体308の当接又は離間変位に変換される。これにより、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bはそれぞれ独立に、ピエゾアクチュエータ301へ駆動電圧を印加(ON)すれば、パッド本体308は対応するブレーキレール124,114のブレーキ被制動面124u,114uを押圧し、ピエゾアクチュエータ301への駆動電圧を遮断(OFF)すれば、パッド本体308は対応するブレーキレール124,114のブレーキ被制動面124u,114uから離間する。また、このようにして、パッド本体308をブレーキレール124,114のブレーキ被制動面124u,114uに対して当接又は離間変位させる際は、ピエゾアクチュエータ301で発生する先端部301tの変位をリンクレバー303によってレバー比(L2/L1)を掛けた量に拡大して、ブレーキレール124,114に対してのブレーキパッド307のパッド本体308の変位に変換している。
このような各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bの構造から、図3に示すように、ブレーキ機構125aの動作時(ピエゾアクチュエータ301への駆動電圧の印加時)におけるブレーキパッド307によるブレーキレール124に対しての押圧力313は、ブレーキレール124aの表面、すなわちブレーキ被制動面124uの法線Pに対して、所定の角度θで傾いて作用する。そのため、ブレーキパッド307によるブレーキレール124aに対する押圧力313については、この所定の角度θに応じて、ブレーキ被制動面124uの法線方向の垂直分力314とブレーキ被制動面124uの面内の水平分力315とに分解される。すなわち、この法線方向の垂直分力314を、ブレーキ機構125aが取り付けられているXテーブル122に働かせることで、ブレーキレール124aとの間で、ブレーキ機構125aが取り付けられているテーブル122に制動を加えることになる。なお、ここでは、このブレーキ被制動面124uの法線方向の垂直分力314のことを、便宜的に制動力314とも称することとする。その一方で、ブレーキ機構125aには、このブレーキ被制動面124uに対しての押圧力313の水平分力315と釣り合うように、反作用としてのモータ推力316が生じることになる。そして、このモータ推力316の発生に応動して、Xテーブル122にはブレーキレール124aの延設方向、すなわちX方向への移動が生じることになる。
すなわち、ピエゾアクチュエータ301に駆動電圧を印加した際の、ブレーキパッド307によるブレーキレール124aに対しての押圧力313は、リンクレバー303に対し荷重として作用し、これに伴いリンクレバー303には変形が生じる。ところが、ブレーキパッド307はブレーキレール124aに対して不動であるため、この変形が、ブレーキ機構125aが取り付けられているXテーブル122を、ブレーキレール124aの延設方向(Y方向)に沿って移動させてしまうことになる。
したがって、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bの動作時の、Xテーブル122のX方向の移動、Yテーブル112のY方向の移動は、ブレーキパッド307の押圧力313に基づくリンクレバー303の変形量に応じた移動距離でなされることになる。その移動距離については、リンクレバー303の剛性によって変化する。
一方、ブレーキパッド307によるブレーキ被制動面124u,114uに対しての押圧力313は、ピエゾアクチュエータ301に印加する駆動電圧と、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との間のギャップとに相関する。ピエゾアクチュエータ301の特性から、その駆動電圧(前述したピエゾ素子に対する印加電圧)の増大に応じて、ブレーキパッド307によるブレーキ被制動面124u,114uに対しての押圧力313は大きくなる。また、ピエゾアクチュエータ301に印加する駆動電圧が同一の大きさの電圧である場合、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との間のギャップが0の場合の押圧力313が最大となり、ギャップの増大とともにその押圧力313は減少する。
したがって、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bについては、押圧力313によって制動力314とモータ推力316が決定される。換言すれば、ピエゾアクチュエータ301の駆動電圧の大小と、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との間のギャップの寸法とにより、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bの作動時に反作用として生じるモータ推力316の大きさが変化し、リンクレバー303の変形量、及びテーブル122,112の実際の移動距離が変化することになる。
以上のように、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bは、各々作動時、ブレーキレール124,114の延設方向の移動に対して制動力314及びモータ推力315を発生させる。そのため、Xテーブル122,Yテーブル112毎に、一方のブレーキ機構125a,115aに生じるモータ推力の発生方向315と他方のブレーキ機構125b,115bに生じる推力の発生方向とは、互いに反対方向となるように各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bは設置されている。その際には、Xテーブル122,Yテーブル112毎、2つのブレーキ機構125a・125b,115a・115bのモータ推力316を同等とすることが重要となる。
しかしながら、Xテーブル122,Yテーブル112毎の、2つのブレーキ機構125a・125b,115a・115bの制動力314を同等にするためには、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との間のギャップが、ブレーキレール124,114上におけるテーブル122,112の移動位置や、ブレーキ機構125a,125b、115a,115bそれぞれで異なることが課題となる。
そのため、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との間のギャップが異なると、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bそれぞれのピエゾアクチュエータ301に同じ駆動電圧を与えた場合でも、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bそれぞれのブレーキレール124,114に発生する押し付け力が異なってしまう。この結果、このようにブレーキ押し付け力が異なると、ブレーキ動作時の移動量も異なり、ステージの位置ずれの要因となる。
そこで、上述した各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bは、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触を検知するための検知機構400を備えた構成になっている。
図4は、ブレーキ機構に設けられた、ブレーキパッドとブレーキレールとの接触検知を行う検知機構の実施例の構成図である。
図4(a)は、ブレーキパッドとブレーキレールとの接触検知を行う検知機構の一実施例の構成図である。
本実施例の場合、検知機構400は、ブレーキパッド307のパッド本体308が前述のSUS(ステンレス鋼)の如くの導電性の材質で形成されることに着目し、電流検出回路401からパッド本体308に微弱な電流を流し、このパッド本体308が同じく導電体で構成されたブレーキレール124と接触したときの電位の変化を検知することによって、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触を検出する構成になっている。
ただし、この場合、電流検出回路401からパッド本体308に流した微弱電流が、別経路を通ってブレーキレール124,114以外の他部に流れ、誤検知、誤計測を引き起こさないように、例えば、パッド本体308を保持するブレーキパッド307のパッドホルダ309、又はブレーキパッド307をリンクレバー303に取り付けるためのブラケット312は、非導電性の材質、例えばセラミック等で形成されている。また、ブレーキレール124,114は、少なくともそのブレーキ被制動面124uが導電性の材質で形成され、接地電位と接続されている。
本実施例によれば、電流検出回路401が、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との当接/離間を、微弱電流の導通/遮断に基づく電圧変化として検知し、その検知信号を図示せぬブレーキ制御装置(後述する測長SEMシステムでは、ステージ制御装置1012に含まれる)に供給する。
図4(b)は、ブレーキパッドとブレーキレールとの接触検知を行う検知機構の別の実施例の構成図である。
本実施例の場合、検知機構400は、ブレーキパッド307によるブレーキレール124,114に対する押圧力313がリンクレバー303に対し荷重として作用することに着目し、リンクレバー303に貼り付けた歪みゲージ411により、ブレーキパッド307によるブレーキレール124,114の押圧時にリンクレバー303に生じる歪みを検出することによって、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触を検出する構成になっている。歪みゲージ411は、ブリッジボックス412経由で歪み計413に接続されている。
本実施例によれば、歪み計413が、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との当接/離間を、ブリッジボックス412経由で歪みゲージ411がインピ−ダンス変化に基づいた電圧変化として検知し、その検知信号を図示せぬブレーキ制御装置に供給する。
図4(c)は、ブレーキパッドとブレーキレールとの接触検知を行う検知機構のさらに別の実施例の構成図である。
本実施例の場合、検知機構400は、ブレーキ機構125aを動作させて、ブレーキパッド307がブレーキレール124,114と接触した際に、ブレーキパッド307の構成部品の一つである板ばね310がわずかにδだけ図4(c)に示すように変位することに着目し、パッドホルダ309の凹部底面と板ばね310の対抗面との間の距離に連動して静電容量が変化する静電容量センサ421をブレーキパッド307に設け、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触を検出する構成になっている。静電容量センサ421は、静電容量測定回路422に接続されている。
本実施例によれば、静電容量測定回路422が、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との当接/離間を、静電容量センサ421の静電容量変化に基づいた電圧変化で検知し、その検知信号を図示せぬブレーキ制御装置に供給する。
なお、ブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触検知を行う検知機構としては、これら実施例以外にも、光学センサや磁気センサ等を用いる構成も可能である。
次に、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bのアクチュエータとしてのピエゾアクチュエータ301について詳述する。
図5は、ピエゾアクチュエータの駆動電圧の大きさに対する伸長量の関係を示したグラフである。
図5に示すように、ピエゾアクチュエータ301では、その駆動電圧の大きさと伸長量とが比例関係にある。そのため、ピエゾアクチュエータ301に対して印加する駆動電圧の大きさを増大すれば、ピエゾアクチュエータ301の伸長量は増加し、先端部301t側の突出量も増加する。
図6は、ピエゾアクチュエータに供給する既定の駆動指令の一実施例を示すグラフである。
各ブレーキ機構125a,125b,115a,115bのピエゾアクチュエータ301には、各ブレーキ機構125a,125b,115a,115b個別に、図示せぬブレーキ制御装置から、ピエゾアクチュエータ301に印加する駆動電圧からなる既定の駆動指令がそれぞれ供給される。
本実施例では、ブレーキ制御装置は、Xブレーキ機構125a,125b又はYブレーキ機構115a,115bのブレーキ制御処理において、図6に示すように、低い電圧から目標電圧まで一定の変化率でその駆動電圧を増加させるような駆動指令を、Xブレーキ機構125a,125b又はYブレーキ機構115a,115bの、各ピエゾアクチュエータ301に個別に供給する。本実施例の場合は、例えば30ミリ秒といった時間範囲内で、ピエゾアクチュエータ301の駆動電圧を図6に示すように低い電圧から目標電圧まで徐々に増加させるような駆動指令を出力する。
なお、ここで、目標電圧とは、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bそれぞれが目標とする規定の制動力314を生じさせるために十分な、ブレーキ機構125a,125b,115a,115bそれぞれのピエゾアクチュエータ301の駆動電圧を指す。また、目標とする規定の制動力314は、この目標とする規定の制動力314を生じさせるための目標とする規定の押圧力313に該当する。すなわち、目標電圧とは、この目標とする規定の押圧力313を生じさせるために十分なピエゾアクチュエータ301の伸長量を得るためのピエゾアクチュエータ301の駆動電圧の大きさである。
図7は、ブレーキ機構それぞれのピエゾアクチュエータに図6に示す既定の駆動指令の電圧を印加したときの、各ピエゾアクチュエータの駆動電圧と伸長状態との関係の説明図である。なお、図中に示した、ピエゾアクチュエータの駆動電圧と伸長量との間の特性は、Xテーブル122の移動に係りXブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301を駆動するときも、Yテーブル112の移動に係りYブレーキ機構115a,115bそれぞれのピエゾアクチュエータ301を駆動するときも同様であるので、ここではXテーブル122の移動に係りXブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301を駆動したときを例に説明する。
ブレーキ制御装置により、Xブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301個別に、図6に示すような、ピエゾアクチュエータ301の駆動電圧を低い電圧から目標電圧まで徐々に増加させるような既定の駆動指令を出力していくと、Xブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301は、駆動指令に基づく駆動電圧の上昇に対応して、図7に示す関係で、それぞれの伸長量は増加し、それぞれの先端部301t側の突出量も増加していく。そして、ある駆動指令の駆動電圧Vで、ブレーキ機構125a,125bの中の少なくとも一方のブレーキパッド307がブレーキレール124に対して離間状態から接触状態になったものとする。ブレーキ制御装置は、このブレーキパッド307の接触を、ブレーキ機構125a,125bそれぞれに設けられた、図4に示した検知機構400から供給される検知信号に基づいて検出することができる。
ここで、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125aについて、ブレーキパッド307とブレーキレール124aとの接触時における駆動指令の駆動電圧Vとして、Va(図7中に、501で矢示した○符号で表す)を取得したものとする。同様にして、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125bについては、ブレーキ機構125aの場合と同様にして、ブレーキレール124aとの接触時における駆動指令の駆動電圧Vとして、Vb(図7中に、502で矢示した×符号で表す)を取得したものとする。
ところで、ブレーキ機構125a,125bそれぞれが所定の大きさの制動力314をブレーキレール124a,124bそれぞれに対して生じさせるためには、ブレーキ機構125a,125bそれぞれは所定の大きさの押圧力313をブレーキレール124a,124bそれぞれに対して生じさせる必要がある。また、ブレーキ機構125a,125bそれぞれがブレーキレール124a,124bそれぞれに対して生じさせる押圧力313の大きさは、前述したようにリンクレバー303の剛性が判明している場合は、それぞれのブレーキパッド307がブレーキレール124aに対して不動になったときからリンクレバー303にピエゾアクチュエータ301から作用させた荷重の大きさに対応する。また、その際におけるピエゾアクチュエータ301からリンクレバー303に作用させた荷重の大きさは、ピエゾアクチュエータ301の先端部301tがリンクレバー303の当接部303aに接触してからのピエゾアクチュエータ301のさらなる伸長量に対応し、ピエゾアクチュエータ301の伸長量が増加すれば、リンクレバー303に作用する荷重も増大する。
そこで、図7では、Xブレーキ機構125a,125bそれぞれが所定の同じ大きさの制動力314をXブレーキレール124a,124bそれぞれに対して生じさせたときの、Xブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301それぞれに対しての駆動指令の駆動電圧Vを、Vat(図中に、503で矢示した△符号で表す),Vbt(図中に、504で矢示した逆△符号で表す)で表している。
ここで、Xブレーキ機構125a,125b間で、所定の同じ大きさの制動力314を発生させるための駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtが異なり、それぞれのピエゾアクチュエータ301の伸長量が異なってしまっているのは、前述したとおり、押圧力313の大きさが、それぞれのブレーキパッド307がブレーキレール124aに対して不動になったときからリンクレバー303にピエゾアクチュエータ301から作用させた荷重の大きさに対応するためである。
図7に示す例では、Xブレーキ機構125a,125b間で、それぞれのピエゾアクチュエータ301の先端部301tがリンクレバー303の当接部303aに接触するときの駆動電圧Va, Vbが異なり、この電圧差Vb−Vaは、それぞれのピエゾアクチュエータ301のブレーキレール124a,124bに接触するまでの伸長量の差(図中に、505で矢示する)に置き換えることができる。そして、この伸長量の差505は、Xブレーキ機構125aの当初のブレーキパッド307とブレーキレール124aとの間のギャップと、Xブレーキ機構125bの当初のブレーキパッド307とブレーキレール124bとの間のギャップとの、ギャップ差に対応している。
ここで、実際のブレーキパッド307とブレーキレール124とのギャップは、ピエゾアクチュエータ301の変位をリンクレバー303で拡大しているため、ピエゾアクチュエータ301の伸長量と同じ量ではない。しかし、Xブレーキレール124a,124bそれぞれで使用する変位拡大機構としてのリンクレバー303は同じものであるため、変位の拡大率は同じであり、ピエゾアクチュエータ301の伸長量の差分505を調整することは、ブレーキパッド307それぞれとXブレーキレール124a,124bそれぞれとの間のギャップ差を調整することと同じである。そのため、Xブレーキ機構125aとXブレーキ機構125bとの間でそれぞれのピエゾアクチュエータ301の伸長量の差505が分かれば、Xテーブル122の移動位置やXテーブル122の両端側それぞれのブレーキ間で異なる、ブレーキパッド307とブレーキレール124との間のギャップの差分を調整できることになる。
図7に示した例では、Xブレーキ機構125bに対して、Xブレーキ機構125aとの伸長量の差分505と同等の伸長量(図中に、506で矢示する)を得るための電圧を規定の駆動電圧Vt(図7の場合は、Vt=Vat)に対して追加し、最終駆動指令の駆動電圧Vbtとすることで、Xブレーキ機構125bに対して不足していた伸長量を調整することができることを表している。このとき、伸長量の差分505と同等の伸長量506を得るための電圧は、図4に示したピエゾアクチュエータ301の駆動電圧に対する伸長量の関係から求めることができる。
図8は、本実施例に係るステージ機構のブレーキ制御処理を示すフローチャートである。
ブレーキ制御装置は、Xテーブル122,Yテーブル112それぞれについて、Xリニアモータ123,Yリニアモータ113の作動によるXガイド121,Yガイド111に沿った移動が行われた場合には、該当するブレーキ機構125a,125b,115a,115bそれぞれに対して、図8に示すようなブレーキ制御処理を行う。なお、このブレーキ制御処理は、Xテーブル122を移動させた場合とYテーブル112を移動させた場合とで対象とするブレーキ機構125,115が異なるだけなので、ここではXテーブル122を移動させた場合を例に説明し、さらにそのブレーキ機構125a,125bに対しての個別のブレーキ制御処理も、ブレーキ機構125aとブレーキ機構125bとで同様なので、ブレーキ機構125aに対してのブレーキ制御処理を例に説明する。
ブレーキ制御装置は、図示せぬ移動制御装置によるXリニアモータ123の駆動制御によって、Xテーブル122がXガイド121上のX方向位置xiにXリニアモータ123の駆動を停止して移動位置されたとき、又はこのXリニアモータ123の駆動を停止してX方向位置xiに移動位置される直前に、Xテーブル122のXブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301に対して、図8に示すようなブレーキ制御処理を開始する。なお、このブレーキ制御処理を開始する際には、Xブレーキ機構125a,125bは、そのブレーキパッド307がブレーキレール124a,124bの被制動面124uに対して離間した状態(非接触状態)になっている。これは、ブレーキ制御装置がXリニアモータ123の駆動によってXテーブル122をX方向位置xiに向けて移動開始する際、移動中にブレーキレール124a,124bに対してブレーキパッド307を引き摺らないように、Xブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301に、駆動電圧をOFFにする駆動指令を既に供給しているためである。以下は、前述したように、Xブレーキ機構125aを例に説明する。
上述した状態で、ブレーキ制御装置は、Xテーブル122のブレーキ機構125aに対するブレーキ制御処理を開始するにあたり、図6に示すような、一定の変化率で駆動電圧が増加する既定の駆動指令をブレーキ機構125aのピエゾアクチュエータ301に印加するため、図8に示すように、駆動指令の駆動電圧を当初の低い電圧にした上で(ステップS801)、この駆動指令の駆動電圧VをXブレーキ機構125a(125b)のピエゾアクチュエータ301に印加する(ステップS802)。
そして、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125aのブレーキパッド307がブレーキレール124aに接触しているか否かを、ブレーキ機構125aに備えられている図4に示した検知機構400から供給される検知信号に基づいて判別し(ステップS803)、未だ接触していない場合には、図6に示すような、一定の変化率で駆動電圧が増加する既定の駆動指令の次の駆動電圧に駆動指令の駆動電圧Vを更新し(ステップS804)、今度は、この駆動指令の駆動電圧VをXブレーキ機構125a(125b)のピエゾアクチュエータ301に印加する(ステップS802)。
このようにして、ブレーキ制御装置は、図6に示すような、一定の変化率で駆動電圧が増加する既定の駆動指令をブレーキ機構125aのピエゾアクチュエータ301に印加し(ステップS802〜S804)、ある駆動指令の駆動電圧Vaで、ブレーキ機構125aのブレーキパッド307がブレーキレール124aに接触したのを判別すると(ステップS803)、他のブレーキ機構としてのブレーキ機構125bよりも先にブレーキパッド307がブレーキレール124に接触したか否かにつき、同様なブレーキ制御処理が個別に行われているブレーキ機構125bとの関連で判別する(ステップS805)。
これにより、先に検出した場合には、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125aについての最終駆動指令の駆動電圧Vatを、当初から規定されている最終駆動指令の電圧Vt(ただし、Vt>Va)にし(ステップS806)、他のブレーキ機構としてのブレーキ機構125bのブレーキパッド307がブレーキレール124bに接触したか否かにつき、同様なブレーキ制御処理が個別に行われているブレーキ機構125bとの関連で判別する(ステップS807)。これにより、先に検出した場合には、ブレーキ機構125aの駆動指令の駆動電圧は、他のブレーキ機構としてのブレーキ機構125bのブレーキパッド307がブレーキレール124bに接触したのが確認されるまで、ブレーキパッド307がブレーキレール124に接触したときの駆動指令の駆動電圧のままで、ブレーキレール124aに対する押圧力313や、制動力314並びに水平分力315を生じさせないようになっている。
これに対し、後から検出した場合には、ブレーキ制御装置は、先にブレーキパッド307がブレーキレール124bに当接したブレーキ機構125bのブレーキパッド当接時における駆動指令の駆動電圧Vbを、同様なブレーキ制御処理が個別に行われているブレーキ機構125bとの関連で取得し、当初から規定されている最終駆動指令の駆動電圧Vtからその差電圧Vba(=Vb−Va)に対応する伸長分をさらに伸長させるための追加駆動電圧を算出し、ブレーキ機構125aについての最終駆動指令の駆動電圧Vatを、当初から規定されている最終駆動指令の駆動電圧Vtにこの追加駆動電圧を加えた駆動電圧にする(ステップS806)。この場合、差電圧Vbaは、ブレーキ機構125aと他のブレーキ機構125bとの間での、ブレーキパッド307とブレーキレール124との間のギャップの差に該当する。また、ブレーキ制御装置は、追加駆動電圧を算出するにあたって、予めテーブルとして記憶してある、図4に示したピエゾアクチュエータ301の駆動電圧に対する伸長量の関係を利用することができる。
そして、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125a及び他のブレーキ機構125bが共にブレーキパッド307をブレーキレール124に接触させている状態になっていれば、ブレーキ機構125aに関しては、ステップS806又はステップS808の処理で得られた最終駆動指令の電圧Vtをブレーキ機構125aのピエゾアクチュエータ301に印加する(ステップS809)。なお、この場合における最終駆動指令の電圧Vatの印加方法は、他のブレーキ機構125bの最終駆動指令の電圧Vbtの印加方法と同じでありさえすれば、例えば。現在における駆動指令電圧Vaからこの最終駆動指令の電圧Vatに到るまで、駆動指令の印加電圧を図6に示した一定の変化率で駆動指令の電圧をさらに増加しながら印加していってもよいし、又は、現在における駆動指令の電圧Vaからいきなり最終駆動指令の電圧Vatを印加してもよい。
なお、ブレーキ制御装置は、ブレーキ機構125aに対する上述したステップS801〜S809の処理からなるブレーキ制御処理を、他のブレーキ機構125bについても同様に個別に行っているため、ブレーキ機構125a, 125bそれぞれによる押圧力313、及びこれら押圧力313に基づいた制動力314やモータ推力315は、Xテーブル122のXブレーキ機構125aとXブレーキ機構125bとの間で、互いの均衡を取りながら発生させることができる。
また、ブレーキ機構125a, 125bそれぞれのギャップの相違に応じて、ブレーキ機構125a, 125bいずれか一方のブレーキパッド307のブレーキレール124に対する接触が他方のブレーキパッド307のブレーキレール124に対する接触よりもピエゾアクチュエータ301の伸長量が不足によって遅れる場合であっても、両者間にブレーキ制動力の差が生じることを抑制できる。
この結果、ブレーキパッド307とブレーキレール124とのギャップ差による各ブレーキ機構125a, 125bの制動力の差違はなくなり、ブレーキ動作によるステージの位置ずれを減らすことができる。
なお、上述したブレーキ制御装置によるブレーキ制御処理では、所定の大きさの制動力314をブレーキレール124a,124bそれぞれに対して生じさせるために、ブレーキ制御装置は、予め規定されている最終駆動指令の駆動電圧Vtを有している構成としたが、その代わりに、ブレーキパッド307のブレーキレール124に対する接触時からのピエゾアクチュエータ301の所定伸長量を有している構成としてもよい。この場合、ブレーキ制御装置は、ステップS806,S808では、ブレーキ機構125aのブレーキパッド307がブレーキレール124aに接触したときの駆動指令の駆動電圧Va,Vbから、ピエゾアクチュエータ301をこの所定伸長量だけさらに伸長させたときの駆動指令の駆動電圧を最終駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtとして算出することができる。
また、ブレーキ制御装置は、上述したステップS801〜S809の処理によって取得したブレーキ機構125a,125bそれぞれの最終駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtを、その内部の記憶部にXリニアモータ12の作動による現在のXテーブル122のX軸上における移動位置xiに対応させて記憶しておくことにより、Xテーブル122のX軸上における移動位置xiに対応したブレーキ機構125a,125bそれぞれの最終駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtに関する最終駆動指令テーブルを作成するようにしておけば、別の試料観察時におけるXテーブル122のX軸上の移動位置xが、この最終駆動指令テーブルに最終駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtが記憶されているX軸上の移動位置xiである場合には、この記憶されている最終駆動指令の駆動電圧Vat,Vbtを、ブレーキ機構125a,125bそれぞれのピエゾアクチュエータ301にいきなりステップ状に印加して作動せることも可能である。
次に、上述したステージ機構10を備えた試料ステージを含む測長SEMについて説明する。
図9は、測長SEMにおけるステージ位置決め状態と測長シーケンスにおける各処理との関係を模式的に示す位置の時間応答波形である。
測長SEMにおけるステージの位置決め状態には、測長の各処理を行うための条件に合わせてステージ移動状態T1(図中に、901で矢示した時間帯)、測定点を近くの参照パターンからの相対位置情報から特定するアドレッシングが可能な状態T2(図中に、902で矢示した時間帯)、測定点を高倍率で撮像して焦点を合わせるオートフォーカスが可能な状態T3(図中に、903で矢示した時間帯)、測長用の高倍パターン検出が可能な状態T4(図中に、904で矢示した時間帯)がある。測長シーケンスにおいては、ステージ移動状態T1からアドレッシングが可能な状態T2、アドレッシングが可能な状態T2からオートフォーカスが可能な状態T3と、測長処理を行うためには、ステージの位置決め状態が、測長シーケンスにおける各処理が可能な振動振幅及びドリフト量の許容範囲内に収まっている必要がある。
図10は、本発明の一実施の形態に係る測長SEMシステムの概略全体構成を示す図である。
図10に示すように、測長SEMシステムでは、真空ポンプ1001により真空排気可能な試料室1002内に、前述したステージ機構10が搭載されている。また、試料室1002の上部には、測長を行う電子顕微鏡1003が搭載され、電子顕微鏡1003はシステム制御装置1010によって制御される。各部の操作や画像の表示は、コンピュータ1011を用いて行う構成になっている。ステージ機構10は、システム制御装置1010からの操作に基づいた制御の下でステージ制御装置1012により制御され、前述したステージ状態T1〜T4がシステム制御装置1010に送信されることで、測長処理との同期が取られる。このステージ制御装置1012は、ステージ機構10のXテーブル122及びYテーブル112の移動に係り、前述したブレーキ制御装置としての機能も備えている。
態がシステム制御装置1010に送信されることで、測長処理との同期が取られる。
図11は、本発明の一実施形態からなる測長SEMの制御処理の一例を示すフローチャートである。
図11において、ステージ制御装置1012は、まず、目標位置に対して、試料ステージ(前述した、試料が試料ホルダ133に搭載されたトップテーブル130が該当)の移動を行い(ステップS1101)、試料ステージの目標位置への到達を、前述したXテーブル122及びYテーブル112のこの目標位置に対応する指示位置への移動位置決め完了により判断し(ステップS1102)、前述のブレーキ制御装置として、Xテーブル122の移動位置決めが完了するとXテーブル122に設けられた複数のXブレーキ機構125について、Yテーブル112の移動位置決めが完了するとYテーブル112に設けられた複数のYブレーキ機構115について、図8に示したブレーキ制御処理をそれぞれ実行する(ステップS1103)。
その後、ステージ制御装置1012は、上述したステップS1101〜ステップS1103に該当する状態T1から、アドレッシング可能状態T2となるまで待ち(ステップS1104)、試料ステージの振動振幅及びドリフト量がアドレッシングを行うための許容範囲の条件C1を満たせば、アドレッシング可能状態T2となったことをシステム制御装置1010に通知する(ステップS1105)。また、ステージ制御装置1012は、このアドレッシング可能状態T2から継続して、同様に、オートフォーカス可能状態となるまでの待ち(ステップS1106)、振動振幅及びドリフト量がオートフォーカスを行うための許容範囲の条件C2(条件C1よりも厳しい)を満たしたことによりオートフォーカス可能状態T3となったことをシステム制御装置1010に通知する(ステップS1107)。さらに、ステージ制御装置1012は、このオートフォーカス可能状態T3から継続して、同様に、高倍パターン検出可能状態となるまでの待ち(ステップS1108)、振動振幅及びドリフト量が高倍パターン検出を行うための許容範囲の条件C3(条件C2よりも厳しい)を満たしたことにより高倍パターン検出可能状態T4となったことをシステム制御装置1010に通知する(ステップS1109)。そして、ステージ制御装置1012は、その後、システム制御装置1010から高倍パターン検出処理が終了したことの通知を受けた場合には(ステップS1110)、前述のステップS1103の実行によりブレーキ作動状態になっているXテーブル122及びYテーブル112のXブレーキ機構125それぞれ及びYブレーキ機構115それぞれをOFFして、非作動状態にする(ステップS1111)。
ステージ制御装置1012は、上記ステップS1101〜ステップS1111の処理を、試料上の側長点が変わる毎に繰り返す。
なお、上述した実施例では、測長点毎に、ステップS1103で示したブレーキ制御処理で図8に示したブレーキ制御処理を行い、Xブレーキ機構125及びYブレーキ機構115それぞれのブレーキパッド307とブレーキレール124,114との接触を検知し、ブレーキギャップを調整することとしたが、一度求めた最適な駆動指令(すなわち、最終駆動指令)を測長点と対応付けて記憶しておき、次回以降は同駆動指令を位置決め後に使用することで、高速・高精度な位置決めを実現する実施例も構成可能である。