図1は本発明の一実施例としての変速機装置が組み込まれた動力出力装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2はオートマチックトランスミッション20の作動表を示し、図3はオートマチックトランスミッション20の油圧回路50の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられたロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ24と、このトルクコンバータ24の出力側に入力軸21が接続されると共にギヤ機構26およびデファレンシャルギヤ28を介して駆動輪18a,18bに出力軸22が接続され入力軸21に入力された動力を変速して出力軸22に伝達する有段の自動変速機としてのオートマチックトランスミッション20と、動力出力装置全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(以下、メインECUという)60とを備える。なお、実施例では、エンジン12とオートマチックトランスミッション20との間にトルクコンバータ24を介在させるものとしたが、これに限られず、種々の発進装置を採用しうる。
エンジン12は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16により運転制御されている。エンジンECU16は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。このエンジンECU16には、クランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサなどのエンジン12を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットル開度を調節するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU16は、メインECU60と通信しており、メインECU60からの制御信号によってエンジン12を制御したり、必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをメインECU60に出力する。
オートマチックトランスミッション20は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構30とラビニヨ式の遊星歯車機構40と三つのクラッチC1,C2,C3と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31はケースに固定されており、リングギヤ32は入力軸21に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の二つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備え、サンギヤ41aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に接続され、サンギヤ41bはクラッチC3を介してキャリア34に接続されると共にブレーキB1を介してケースに接続され、リングギヤ42は出力軸22に接続され、キャリア44はクラッチC2を介して入力軸21に接続されている。また、キャリア44はブレーキB2を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF1を介してケースに接続されている。
こうして構成されたオートマチックトランスミッション20では、図2に示すように、クラッチC1〜C3のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)とブレーキB1,B2のオンオフとの組み合わせによって前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。ニュートラルの状態は、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。また、前進1速の状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はワンウェイクラッチF1によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的大きな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア44が固定される。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進1速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進3速の状態は、クラッチC1,C3をオンとすると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はクラッチC1およびクラッチC3のオンによるラビニヨ式の遊星歯車機構40の一体回転により等速をもってリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進2速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進4速の状態は、クラッチC1,C2をオンとすると共にクラッチC3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は前進3速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進5速の状態は、クラッチC2,C3をオンとすると共にクラッチC1とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は増速して出力軸22に出力される。前進6速の状態は、クラッチC2とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC1,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からクラッチC2を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより増速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進5速よりも小さな減速比をもって増速して出力軸22に出力される。後進1速の状態は、クラッチC3とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1,C2とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達されると共にサンギヤ41bに入力される動力はブレーキB2によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより逆回転してリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的小さな減速比をもって減速して逆回転の動力として出力軸22に出力される。
オートマチックトランスミッション20のクラッチC1〜C3やブレーキB1,B2は、図3に部分的に示す油圧回路50によりオンオフされる。油圧回路50は、図示するように、エンジン12からの動力により作動油を圧送する機械式オイルポンプ52と、機械式オイルポンプ52により圧送された作動油の圧力(ライン圧PL)を調節するレギュレータバルブ54と、このレギュレータバルブ54を駆動するリニアソレノイド55と、ライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧してクラッチC1側に出力するリニアソレノイドSLC1と、同じくライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧しクラッチC3側に出力するリニアソレノイドSLC3と、同じくライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧しブレーキB1側に出力するリニアソレノイドSLB1などにより構成されている。なお、図3では、クラッチC1,C3とブレーキB1の油圧系のみを図示したが、その他のクラッチC2やブレーキB2についても同様の油圧系により構成することができる。
オートマチックトランスミッション20(油圧回路50)は、オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)29により駆動制御されている。ATECU29は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。ATECU29には、入力軸21に取り付けられた回転速度センサからの入力軸回転速度Ninや出力軸22に取り付けられた回転速度センサからの出力軸回転速度Nout,油温センサ39からの油温toなどが入力ポートを介して入力されており、ATECU29からは、リニアソレノイド55やリニアソレノイドSLC1,リニアソレノイドSLB1への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ATECU29は、メインECU60と通信しており、メインECU60からの制御信号によってオートマチックトランスミッション20(油圧回路50)を制御したり、必要に応じてオートマチックトランスミッション20の状態に関するデータをメインECU60に出力する。
メインECU60は、詳細には図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。メインECU60には、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSPやアクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル操作量Acc,ブレーキペダル65の踏み込みを検出するブレーキスイッチ66からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ68からの車速V,ノーマルモードやノーマルモードよりも変速マップにおけるアップシフト線やダウンシフト線が低車速側にシフトされたスポーツモードなどを含む複数のシフトモードのうちのいずれかを選択するためのシフトモードスイッチ69からシフトモードSMなどが入力ポートを介して入力されている。メインECU60は、前述したように、エンジンECU16やATECU29と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU16やATECU29と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
ここで、実施例の動力出力装置としては、エンジン12と、エンジンECU14と、オートマチックトランスミッション20と、ATECU29と、メインECU60とが該当し、変速機装置としては、オートマチックトランスミッション20と、ATECU29とが該当する。
次に、こうして構成された自動車10が備える実施例の動力出力装置の動作、特に、オートマチックトランスミッション20の変速段を変更する際の動作について説明する。図4は、ATECU29により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、5msec毎)に繰り返し実行される。
変速制御ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、プレサーボ中であるか否かを判定し(ステップS100)、プレサーボ中でないと判定されたときには、後述するプレサーボ起動判定処理を実行し(ステップS110)、起動と判定されたときには(ステップS120)、プレサーボ起動処理を実行して(ステップS130)、タイマーTをスタートさせ(ステップS140)、起動と判定されなかったときには(ステップS120)、プレサーボ起動処理を実行することなくステップS180に進む。ここで、変速制御ルーチンの説明を中断し、以下に、プレサーボ起動処理とプレサーボ起動判定処理について説明する。
ステップS130のプレサーボ起動処理は、ATECU29により図5に例示するプレサーボ起動処理ルーチンを実行することにより行なわれる。図5のプレサーボ起動処理ルーチンでは、まず、次の変速でオンすべきクラッチ(ブレーキの場合も含む)の図示しないピストンと摩擦板とのクリアランスを詰めるために作動油を急速充填するファストフィルを実行し(ステップS300)、その後に、ストロークエンド圧よりも若干大きなトルク相初期圧Piniで待機する(ステップS310)、ことにより行なわれる。この処理は、次の変速を素早く行なうために、事前に次の変速でオンされるクラッチを実質的なトルクの伝達がなされない範囲内で滑りを伴って係合させる処理である。したがって、プレサーボの最中にはクラッチに若干の発熱を伴うことになる。
ステップS110のプレサーボ起動判定処理は、ATECU29により図6のプレサーボ起動判定処理ルーチンを実行することにより行なわれる。図6のプレサーボ起動判定処理ルーチンでは、アクセル操作量Accや車速V,シフトモードSM,現在の変速段Sn,油温センサ39からの油温to,入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度Nin,残存熱量Qsなどの判定に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。ここで、アクセル操作量Accと車速VとシフトモードSMは、それぞれアクセルペダルポジションセンサ64と車速センサ68とシフトモードスイッチ69から検出されたものをメインECU60から通信により入力するものとした。また、現在の変速段Snは、変速処理が実行されたときに変速段の情報を保存しておくものとし、この保存した情報を入力するものとした。残存熱量Qsは、図7に例示する残存熱量演算処理ルーチンにより演算されたものを入力するものとした。残存熱量演算処理ルーチンでは、プレサーボ中のときには(ステップS500)、プレサーボ時用の単位時間当たり(この処理の実行時間間隔当たり)のクラッチの発熱量ΔQ1を計算すると共に(ステップS510)、計算した発熱量ΔQ1に前回の残存熱量Qsを加えることにより新たな残存熱量Qsを算出し(ステップS520)、変速中のときには(ステップS530)、変速時用の単位時間当たり(この処理の実行時間間隔当たり)のクラッチの発熱量ΔQ2を計算すると共に(ステップS540)、計算した発熱量ΔQ2に前回の残存熱量Qsを加えることにより新たな残存熱量Qsを算出し(ステップS550)、プレサーボ中でも変速中でもないときには、前回の残存熱量Qsに予め実験的に求めた放熱量ΔQsetを減じることにより新たな残存熱量Qsを算出する(ステップS560)、ことにより行なわれる。ここで、プレサーボ時の発熱量ΔQ1は、係合するクラッチのストロークエンド圧とプレサーボ中にクラッチに現在作用している油圧(例えば油圧指令)との差圧により求めることができる。また、変速時の発熱量ΔQ2は、例えば、次式(1)〜(3)により求めることができる。なお、式中の「Tc」は変速時に係合するクラッチのトルク容量を示し、「Pini」はトルク相初期圧を示し、「Ncv」は係合するクラッチの入力側と出力側との相対回転速度を示し、「Pc」は係合するクラッチに作用している油圧を示し、「A」は摩擦材の有効断面積を示し、「Δt」は本ルーチンの実行時間間隔を示し、「μ」は摩擦材の動摩擦係数を示し、「γ」は変速後のギヤ比を示し、「Ts」は係合するクラッチのトルクの分担分を示す。こうしてデータを入力すると、プレサーボ時予想発熱量Q1*と変速時予想発熱量Q2*とを設定すると共に(ステップS410)、入力した入力軸回転速度Ninを微分する(入力軸回転速度Ninをこの処理の実行時間間隔で除する)ことにより入力軸回転加速度Ainを計算する(ステップS420)。ここで、プレサーボ時予想発熱量Q1*は、前述したプレサーボ時の単位時間当たりの発熱量ΔQ1の平均発熱量とプレサーボの標準的な待機時間とを予め実験的に求めることにより、平均発熱量と待機時間とを乗算したものを設定することができる。また、変速時予想発熱量Q2*としては、例えば、前述した式(1)〜(3)を用いて計算される変速時の単位時間当たりの発熱量ΔQ2を変速開始から終了までに亘って積算することにより発熱量を算出したものを設定することができる。そして、シフトモードSMが素早い変速を要求するスポーツモードであるか否か(ステップS430)、アクセル操作量Accと車速Vは図8に例示する変速マップにおけるダウンシフト線(図8中の破線)を超えているか否か即ち所定時間以内に次の変速が予測されるか否か(ステップS440)、入力軸回転加速度Ainは値0よりも大きいか否か即ち加速中か否か(ステップS450)、現在の変速段Snが最高変速段(実施例では6段)でないか否か(ステップS460)、油温toは下限値tlと上限値thとにより定まる適正範囲内にあるか否か(ステップS470)、プレサーボ時予想発熱量Q1*と変速時予想発熱量Q2*と残存熱量Qsとの和が許容発熱量Qlim以下であるか否か(ステップS480)をそれぞれ判定し、いすれもが肯定的な判定のときにはプレサーボの起動を判定し(ステップS490)、いずれかに否定的な判定がなされたときにはプレサーボの起動を判定することなく、本ルーチンを終了する。ステップS480の判定では、上述したようにプレサーボ中はクラッチに発熱を伴うことから、プレサーボを起動しても、プレサーボ開始時に係合するクラッチに残存している熱量(残存熱量Qs)と次の変速時に予想される発熱量(Q2*)とを含めて許容範囲内に収まるか否かを判定することにより、クラッチを過大な熱負荷から保護しているのである。以上、プレサーボ起動処理とプレサーボ起動判定処理について説明した。
Q2=max(0,Tc×Ncv/A×Δt) …(1)
Tc=(Pc-Pini)×μ/A …(2)
Ncv=(Nin/Ts-γ×Nout/Ts)×2π/60 …(3)
変速制御ルーチンに戻って、プレサーボ起動処理が実行された以降には、プレサーボ待機し(ステップS150)、プレサーボ解除判定処理を実行し(ステップS160)、解除と判定されなかったときには(ステップS170)、次のステップS180の処理に進み、解除と判定されたときには(ステップS170)、プレサーボ中にも拘わらずプレサーボ解除処理を実行し(ステップS210)、本ルーチンを終了する。ここで、プレサーボ解除処理は、次の変速で係合するクラッチに作用させているトルク相初期圧Piniをドレンする処理である。また、プレサーボ解除判定処理は、ATECU29により図9のプレサーボ解除判定処理ルーチンを実行することにより行なわれる。以下に、プレサーボ解除判定処理について説明する。
プレサーボ解除判定処理ルーチンでは、アクセル操作量Accや車速V,現在の変速段Sn,残存熱量Qsなどの判定に必要なデータを入力する(ステップS600)。なお、アクセル操作量Accや車速V,現在の変速段Sn,残存熱量Qsの各データの入力については前述した。続いて、図4の変速制御ルーチンのステップS140でプレサーボ起動と共にスタートさせたタイマーTがクラッチの摩擦板の耐熱特性などから予め設定されたプレサーボの許容継続時間Tref以上か否か(ステップS610)、入力したアクセル操作量Accと車速Vとが図6のプレサーボ起動判定処理ルーチンのステップS440で超えたと判定されたダウンシフト線を割れたか否か(ステップS620)、プレサーボ起動判定処理ルーチンのステップS410で設定された変速時予想発熱量Q2*と残存熱量Qsとの和が許容発熱量Qlim以下であるか否か(ステップS630)をそれぞれ判定する。ここで、図6のプレサーボ起動判定処理ルーチンでは、プレサーボ時予想発熱量Q1*と変速時予想発熱量Q2*と残存熱量Qsとの和が許容発熱量Qlim以下である場合に限ってプレサーボ起動と判定するが、プレサーボ待機が想定よりも長時間に亘って継続したときにはクラッチの熱負荷が過大となる場合が生じる。本実施例では、こうした理由からプレサーボ解除条件の一つとしてステップS630の判定を設けているのである。なお、図7の残存熱量演算処理ルーチンのステップS510,S520に示すように、残存熱量Qsにはプレサーボ中にトルク相初期圧Piniで係合されるクラッチの発熱量ΔQ1が逐次積算されるから、ステップS630の変速時予想発熱量Q2*と残存熱量Qsとの和は、プレサーボ中のクラッチの発熱量ΔQ1の積算値と変速時予想発熱量Q2*とプレサーボ開始時における残存熱量Qsとの和を意味することになる。以上、プレサーボ解除判定処理について説明した。
変速制御ルーチンに戻って、ステップS120でプレサーボ起動と判定されなかったときや、ステップS170でプレサーボ解除と判定されなかったときには、アクセル操作量Accと車速Vとが図8に例示する変速マップにおける現在の変速段Snに対応するアップシフト線を超えたか否かによりアップシフト変速要求がなされているか否かを判定し(ステップS190)、アップシフト変速要求がなされているときには、アップシフト変速処理を実行して(ステップS200)、本ルーチンを終了し、アップシフト変速要求がなされていないときには、これで本ルーチンを終了する。なお、ダウンシフト変速要求がなされたときには、ダウンシフト変速処理が実行されるが、本発明の要旨をなさないから、説明は省略する。
アップシフト変速処理は、ATECU29により図10に例示するアップシフト変速処理ルーチンを実行することにより行なわれる。図10のアップシフト変速処理ルーチンでは、まず、プレサーボ中であるか否かを判定し(ステップS700)、プレサーボ中でないときには、アップシフト変速要求に応じてオンすべきクラッチに対してファストフィルを実行して(ステップS710)、低圧待機する(ステップS720)。なお、変速段の変更に伴ってオンしていたクラッチをオフするときにはそのクラッチに作用している油圧をドレンするドレン処理も行なわれる。一方、プレサーボ中のときには、既にファストフィルと低圧待機とが実行されているからそのまま次の処理に進む。続いて、所定のトルク相実行圧Ptorまでステップ状に増圧する油圧指令によりオンすべきクラッチに油圧を作用させて待機し(ステップS730)、トルク相が完了するのを待つ(ステップS740)。ここで、トルク相は、入力軸21の回転速度は変速前の変速段に応じた回転速度を維持した状態で入力軸21からのトルクを伝達するときに反力を受け持つクラッチが変速後の変速段に応じたものに変更される状態であり、イナーシャ相は、入力軸21の回転速度が変速後の変速段に応じた回転速度に変更される状態である。実施例では、オートマチックトランスミッション20の変速段のアップシフト変速は、トルク相とイナーシャ相の2相を伴って行なわれる。所定のトルク相実行圧Ptorは、前述したトルク相初期圧Piniよりも大きく、トルク相が完了するために必要十分な油圧より大きくイナーシャ相が開始するために必要十分な油圧より小さな圧力として実験的に求めたものを設定するものとした。したがって、プレサーボを伴って変速を行なうときには、プレサーボ時にクラッチに作用させる油圧をトルク相初期圧Piniとし、変速時にそのクラッチに作用させる油圧をトルク相初期圧Piniからトルク相実行圧Ptorまで上昇させることになる。なお、トルク相の完了は、トルク相実行圧Ptorをオンすべきクラッチに作用させてから実際にトルク相が略完了するまでに要する所要時間を予め実験的に求めておき、この所要時間が経過したか否かにより判定することができる。
トルク相が完了すると、エンジン12からの出力トルクを減少させるべき量として目標トルクダウン量ΔTeを設定し(ステップS750)、設定した目標トルクダウン量ΔTeでトルクダウン指令を出力する(ステップS760)。トルクダウン指令の出力は、この指令をメインECU60に送信することにより、トルクダウン指令を受信したメインECU60がエンジンECU16に対してトルクダウン指令を送信することにより行なわれる。トルクダウン指令を受信したエンジンECU16は、目標トルクダウン量ΔTeだけエンジントルクが減少するよう吸入空気量調節制御や燃焼噴射制御、点火制御を実行する。なお、ステップS740におけるトルク相の完了の判定をエンジン12の応答時間だけ早いタイミングで行なってトルクダウン指令を出力するものとすれば、実際にトルク相が完了したタイミングでエンジン12のトルクダウンを行なうことができる。ここで、目標トルクダウン量ΔTeとしては、前進1速から前進2速へアップシフト変速するときには、トルク相が完了してエンジン12からのトルクの反力を丁度ブレーキB1により受け持っている状態でエンジン12のトルクを減少させることによりイナーシャ相が開始されるのに必要なトルクダウン量として実験的に求めたものを設定するものとした。このように、オンすべきクラッチの油圧をトルク実行圧Ptorで保持している状態でエンジン12のトルクダウンによってイナーシャ相を開始させるのは、クラッチ圧(ブレーキ圧)の調圧はその機構上高い精度で行なうことが困難であることから、イナーシャ相の開始をオンすべきクラッチへの油圧の増圧によって行なうと、急激な係合により変速ショックが生じる場合があり、この変速ショックを抑制するために油圧の増圧を緩やかに行なうと、変速レスポンスが悪化するためである。
イナーシャ相が開始されると、イナーシャ相が完了するまで待つ(ステップS770)。イナーシャ相の完了は、例えば、入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度Ninを出力軸回転速度センサ38からの出力軸回転速度Noutで除することにより現在のギヤ比(減速比)を計算し、計算したギヤ比が目標ギヤ段のギヤ比に略一致するか否かを判定することにより行なうことができる。イナーシャ相が完了すると、メインECU60を介してエンジンECU16に送信したトルクダウン指令を解除すると共に(ステップS780)、オンすべきクラッチに作用させる油圧を最大として(ステップS790)、本ルーチンを終了する。
図11は、プレサーボを伴って変速する際の変速要求とプレサーボとエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと出力トルクToutと油圧指令Po*の時間変化の様子を示し、図12は、プレサーボを伴わずに変速する際の変速要求とプレサーボとエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと出力トルクToutと油圧指令Po*の時間変化の様子を示す。例えば現在の変速段Snが前進2速でプレサーボを伴って前進3速に変速する場合には、図11に示すように、時刻t11に変速マップの3−2ダウンシフト線を超えると、ファストフィルを実行し、ファストフィルを実行した後に、トルク相初期圧Piniで待機するプレサーボを起動する。そして、時刻t12に2−3アップシフト線を超えてアップシフト変速要求がなされると、前進2速から前進3速への変速に伴ってオフすべきブレーキB1に作用している油圧をドレンしながら前進3速時に係合するクラッチC3に作用させる油圧をトルク相初期圧Piniからトルク実行圧Ptorまで増圧して待機することによりトルク相が行われ、時刻t13にトルク相が完了すると、目標トルクダウン量ΔTeをもってエンジン12のトルクダウンを行なう。これにより、イナーシャ相が開始され、入力軸21の回転速度(入力軸回転速度Nin)は前進3速に応じた回転速度に向けて素早く下降する。時刻t14に入力軸回転速度Ninが前進3速に応じた回転速度に至ってイナーシャ相が完了すると、エンジン12のトルクダウンを解除すると共にクラッチC3に作用させる油圧を最大とする。一方、プレサーボを伴わずに前進2速から前進3速に変速する場合には、図12に示すように、時刻t21に変速マップの3−2ダウンシフト線を超えた後に、時刻t22に2−3アップシフト線を超えてアップシフト変速要求がなされると、前進3速時に係合するクラッチC3に対してファストフィルを実行して低圧待機し、時刻t23にブレーキB1に作用している油圧をドレンしながらクラッチC3に作用させる油圧をトルク実行圧Ptorまで増圧して待機することによりトルク相が行われ、時刻t24にトルク相が完了すると、目標トルクダウン量ΔTeをもってエンジン12のトルクダウンを行なう。したがって、プレサーボを伴って変速する場合には、プレサーボを伴わずに変速する場合に比して、ファストフィルの実行や低圧待機の実行に要する分だけ変速時間を短縮させることができる。また、図12の破線では、時刻t23でオンすべきクラッチC3に作用させる油圧を徐々に増圧することによりトルク相が行なわれると共にイナーシャ相が開始され、イナーシャ相が開始された後にエンジン12のトルクダウンを行なって変速段を変更する変速パターンの例を示している。この例では、クラッチの係合に伴う変速ショックが生じないように変速段の変更にはオンすべきクラッチに作用させる油圧の増圧を緩やかに行なっており、実施例に比して変速段の変更に長時間を要することがわかる。
以上説明した実施例の動力出力装置によれば、アクセル操作量Accと車速Vとが変速マップにおける現在の変速段Snに対応するダウンシフト線を超えたか否かなどにより所定時間以内の変速を予測するプレサーボ起動判定を行ない、変速が予測されたときには次の変速時にオンすべきクラッチにトルク相初期圧Piniを作用させて待機するプレサーボ起動を実行し、プレサーボ中にアクセル操作量Accと車速Vとが変速マップにおける現在の変速段Snに対応するアップシフト線を超えて変速が要求されたときにはクラッチに作用させる油圧をトルク相初期圧Piniからトルク相実行圧Ptorまで増圧することによりトルク相を実行すると共にトルク相実行圧Ptorで待機している状態でエンジン12のトルクダウンによってイナーシャ相を開始させることにより変速段を変更するから、オンすべきクラッチに作用させる油圧の増圧によってトルク相を行なうと共にイナーシャ相を開始させるものに比して、変速ショックを抑制しながら変速段の変更を迅速に行なうことができる。
また、実施例の動力出力装置によれば、プレサーボ起動判定条件の一つとして、プレサーボ時に予想されるクラッチの発熱量であるプレサーボ時予想発熱量Q1*と次の変速時に予想されるクラッチの発熱量である変速時予想発熱量Q2*とプレサーボ開始時にクラッチに残存している熱量である残存熱量Qsとの和が許容発熱量Qlimを超えるときには、プレサーボ起動を行なわないから、プレサーボ起動によってクラッチに過大な熱負荷が作用するのを抑制することができる。この結果、クラッチの摩擦材などに過大な熱耐性のものを採用する必要をなくすことができる。しかも、残存熱量Qsも考慮に入れるから、クラッチの熱負荷をより正確に把握して、プレサーボ起動を適切に実行することができる。
さらに、実施例の動力出力装置によれば、プレサーボ中に、変速時予想熱量Q2*と残存熱量Qs(プレサーボ開始時のクラッチの残存熱量とプレサーボ中にクラッチに生じる発熱量ΔQ1の積算値との和)との和が許容発熱量Qlimを超えたときには、プレサーボを解除するから、クラッチを過大な熱負荷からより確実に保護することができる。しかも、残存熱量Qsも考慮に入れるから、クラッチの熱負荷をより正確に把握して、プレサーボ解除を適切なタイミングで実行することができる。
実施例の動力出力装置では、プレサーボ時に予想されるクラッチの発熱量であるプレサーボ時予想発熱量Q1*と次の変速時に予想されるクラッチの発熱量である変速時予想発熱量Q2*とプレサーボ開始時にクラッチに残存している熱量である残存熱量Qsとの和が許容発熱量Qlim以下であることをプレサーボ起動判定条件の一つとしたが、プレサーボ開始時の残存熱量Qsについては考慮に入れないものとしても構わない。また、プレサーボ起動判定条件であるステップS430〜S480の判定のうちの一部を省略するものとしても差し支えない。
実施例の動力出力装置では、変速時予想熱量Q2*と残存熱量Qs(プレサーボ開始時のクラッチの残存熱量Qsとプレサーボ中にクラッチに生じる発熱量ΔQ1の積算値との和)との和が許容発熱量Qlim以下であることをプレサーボ起動判定条件の一つとしたが、プレサーボ開始時の残存熱量Qsについては考慮に入れないものとしても構わない。また、プレサーボ解除判定条件からステップS610〜S630の判定のうちの一部を省略するものとしても差し支えない。
実施例の動力出力装置では、入力軸回転加速度Ainは値0よりも大きいか否か即ち加速中か否かをプレサーボ起動判定条件の一つとしたが、出力軸回転速度Noutに基づいて出力軸回転加速度Aoutを演算し、入力軸回転加速度Ainに代えて出力軸回転加速度Aoutが値0よりも大きいか否かをプレサーボ起動判定条件の一つとするものとしてもよい。なお、入力軸回転加速度Ainを用いる場合も出力軸回転加速度Aoutを用いる場合も、加速中か否かを判定できればよいから、閾値としては値0に限られず値0よりも若干大きい値を用いても構わない。
実施例の動力出力装置では、シフトモードスイッチ69によりスポーツモードが選択されていることをプレサーボ起動判定条件の一つとしたが、シフトレバー61がアップシフト指示ポジションに操作される度に変速段が1段ずつ上げられダウンシフト指示ポジションに操作される度に変速段が1段ずつ下げられるマニュアルモードを備える動力出力装置では、このマニュアルモードが選択されていることをプレサーボ起動判定条件の一つとするものとしてもよい。この場合、アップシフト変速やダウンシフト変速の要求は運転者によってなされるため、変速マップにおけるダウンシフト線によって変速を予測することはできないが、マニュアルモードでは、通常、エンジン12の回転速度(入力軸回転速度Nin)が上限回転速度に至ったときに強制的にアップシフト変速を行なうことから、入力軸回転速度Ninに基づいてアップシフト変速を予測することができる。例えば、入力軸回転速度Ninが上限回転速度よりも若干低い所定回転速度以上のときにアップシフト変速を予測することができる。
実施例の動力出力装置では、トルク相を行なう際に、トルク相初期圧Piniからトルク相実行圧Ptorまでステップ状に増圧する油圧指令を設定してオンすべきクラッチに油圧を作用させるものとしたが、これに限定されるものではなく、勾配をもってトルク実行圧Ptorまで増圧する油圧指令を設定するものとしてもよい。
実施例の動力出力装置では、トルク相の完了をトルク相実行圧Ptorの経過時間に基づいて判定するものとしたが、トルク相が完了すると車両の加速度が減少することから、入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度Ninに基づいて演算される入力軸21の回転加速度や出力軸回転速度センサ38からの出力軸回転速度Noutに基づいて演算される出力軸22の回転加速度に基づいて車両の加速度が減少したか否かを判定することよりトルク相の完了を判定するものとしてもよい。この場合、トルク相が完了するときの車両の加速度の減少は、目標ギヤ段のギヤ比(減速比)が小さいほど小さく現われることから、前進1速から前進2速へのアップシフト変速や前進2速から前進3速へのアップシフト変速など比較的高いギヤ比の変速段に変更する場合に限定して実行することが望ましい。
実施例の動力出力装置では、イナーシャ相が開始されてから完了するまでオンすべきクラッチをトルク相実行圧Ptorで待機するものとしたが、トルク相実行圧Ptorで待機している状態でイナーシャ相が開始された後はイナーシャ相が完了する前にトルク相実行圧Ptorとは異なる油圧をオンすべきクラッチに作用させるものとしてもよい。
実施例の動力出力装置では、6段変速のオートマチックトランスミッション20を用いるものとしたが、変速段は6段に限定されるものではなく、3〜5段の変速段としたり、7段以上の変速段としてもよい。
実施例では、本発明を動力出力装置の形態として説明したが、自動変速機の制御装置の形態とするものとしてもよいし、変速機装置の形態とするものとしてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「動力源」に相当し、オートマチックトランスミッション20が「自動変速機」に相当し、リニアソレノイドSLC1,SLC3やリニアソレノイドSLB1などが「調圧器」に相当し、図4の変速制御ルーチンのステップS180の処理(変速判定処理)を実行するATECU29が「変速判定部」に相当し、変速制御ルーチンのステップS110の処理(図6のプレサーボ起動判定処理ルーチン)を実行するATECU29が「変速予測部」に相当し、図4の変速制御ルーチンや図5のプレサーボ起動処理ルーチン,図10のアップシフト変速処理ルーチンなどを実行するATECU29が「変速制御部」に相当する。また、エンジンECU16が「動力源用制御装置」に相当する。ここで、「動力源」としては、内燃機関としてのエンジン12に限定されるものではなく、電動機など、動力源として機能するものであれば如何なるタイプの動力源であっても構わない。「調圧器」としては、ライン圧から最適なクラッチ圧(ブレーキ圧)を生成してクラッチ(ブレーキ)をダイレクトに制御可能なダイレクト制御用のリニアソレノイドとして構成されたリニアソレノイドSLC1,SLC3,SLB1などに限定されるものではなく、パイロット制御用のリニアソレノイドを用いて別途コントロールバルブを駆動することによりライン圧からクラッチ圧(ブレーキ圧)を生成してクラッチ(ブレーキ)を制御するものなど、摩擦係合要素の係合圧を調圧できるものであれば如何なるものであっても構わない。また、「調圧器」としては、油圧を用いてクラッチやブレーキの係合圧を調節するものに限定されるものではなく、油圧以外の他の流体圧によりクラッチやブレーキの係合圧を調節するものや、電磁クラッチなど電磁力によってクラッチやブレーキの係合圧を調節するものなどとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。