JP2011156807A - 樹脂積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】帯電防止性、耐擦傷性、透明性及び赤外線遮蔽性に優れた表面層を有する樹脂積層体を高生産性で、また環境負荷が少ない方法で製造する方法を提供する。
【解決手段】型上に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、前記硬化塗膜層の上に機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、前記硬化多膜層が形成された型と他の型を、前記多膜層の形成された面が内側になるように2枚の型の面を向かい合わせて鋳型を作製する第三の工程、前記鋳型に樹脂原料を注入し前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、及び前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程、を有する樹脂積層体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ディスプレー前面板等の用途に好適な、透明性、帯電防止性または赤外線遮蔽性、耐擦傷性、膜密着性、環境安全性に優れた板状等の形状の樹脂積層体の製造方法に関する。
アクリル樹脂は、透明性、耐衝撃性、易成形性等が良好である点に特徴を有しており、工業用資材、建築用資材等として広く使用されている。近年では、その透明性と耐衝撃性から、CRTや液晶テレビ等の各種ディスプレーの前面板として使用されるに至っている。しかし、他の樹脂と同様に、アクリル樹脂はガラスと比較して柔らかいため、引掻き等による傷が発生し易い場合がある。また、アクリル樹脂は表面固有抵抗が高いため、静電気による埃の付着に起因して、透明性が低下し易い場合がある。さらに、アクリル樹脂は赤外線遮蔽性能を全く示さない。
これらの課題に対し、アクリル樹脂基材上に種々の機能性層を積層することが行われている。
耐擦傷性を向上させる方法としては、多官能(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を用い、架橋被膜を基材表面に形成することが知られている。しかし、従来の架橋被膜は、帯電防止能を全く示さないか、不十分な場合が多い。
またこの架橋被膜に帯電防止剤を添加して、帯電防止性能を付与する方法が提案されているが、帯電防止性と耐擦傷性がトレードオフの関係である。
耐擦傷性を低下させずにアクリル板樹脂基材に帯電防止性能を付与する方法として、フィルムに予め帯電防止層を形成し、ハードコート層の上に転写させることによって、耐擦傷性と帯電防止性能を付与する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この方法によると、転写フィルムをオフラインで作る必要があり、工程数が増えてしまう。
一方、省エネルギーの観点から、太陽光や赤外線光源からの熱線をカットする対策が多数提案されている。特に建築物や車両の窓から室内に照射する太陽光から熱線をカットすることにより、快適性の向上や冷房効率の向上が期待できる。
近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、溶媒として有機溶剤を使用する溶剤型から、分散媒として水を使用する水分散型への転換が望まれている。また、有機溶剤を使用すると、防爆設備・回収設備が必要となり、コストがかかる。さらに、製品安全性の観点からも、有機溶剤が製品に残留することによる性能の悪化、または使用時に悪影響を及ぼす可能性がある。
しかしながら、塗膜原料に分散媒として水を用いると、それを基材に塗布した時、塗布面が十分な親水性を持たない場合、良好な塗布層の表面形状が得られないという問題がある。そのため、親水性の下塗り剤を用いて、塗布層の表面形状を良好に保つ方法が提案されている(特許文献2)が、この方法では下塗り剤を塗る工程が増えてしまう。
特開2007−111975号公報 特開2009−84454号公報
本発明の目的は、帯電防止性、耐擦傷性、透明性及び赤外線遮蔽性に優れた表面層を有する樹脂積層体を高生産性で、また環境負荷が少ない方法で製造する方法を提供することにある。
本発明は、型上に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、
前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、
前記硬化多膜層が形成された型と他の型を、前記多膜層の形成された面が内側になるように2枚の型の面を向かい合わせて鋳型を作製する第三の工程、
前記鋳型に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、
及び、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程、を有する樹脂積層体の製造方法である。
また、走行する一対の相対するエンドレスベルトの向かい合う面の少なくとも一方の面に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、前記多膜層の形成されたエンドレスベルトを含む一対のエンドレスベルトの向かい合う面側の幅方向の両端部付近にガスケットを配設し、前記一対のエンドレスベルト及びガスケットから構成される鋳型を作製する第三の工程、前記鋳型に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程、を有する連続的樹脂積層体の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、型面を転写した樹脂積層体が得られるので、異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、密着性に優れ、かつ十分な帯電防止性能又は赤外線遮蔽性能を示すと共に耐擦傷性および透明性にも優れた表面層を有する樹脂積層体を高い生産性で、また環境負荷が少ない方法で製造できる。
本発明を実施するための装置の一例を示す概略図である。 本発明を実施するための装置の型周辺の配置の一例を示す見取図である
本発明は、以下の工程を有する樹脂積層体の製造方法である。
型上に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、
前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、
前記硬化多膜層が形成された型と他の型を、前記多膜層の形成された面が内側になるように2枚の型の面を向かい合わせて鋳型を作製する第三の工程、
前記鋳型に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、
及び、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程。
本発明における光硬化性樹脂混合物について説明する。
光硬化性樹脂混合物中には、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が含まれる。
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールのポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物における、多価アルコール/多価カルボン酸又はその無水物/(メタ)アクリル酸の好ましい組合せとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の具体例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;ウレタンポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」又は「アクリ」を意味する。
光硬化性樹脂混合物には、生産性の観点から、分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を重合するための光開始剤を添加することが好ましい。
光開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物;などが挙げられる。光開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
光開始剤の添加量は、光硬化性樹脂混合物100質量%中、紫外線照射による硬化性の観点から0.1質量%以上が好ましく、硬化塗膜層の良好な色調を維持する観点から10質量%以下が好ましい。
光硬化性樹脂混合物には、必要に応じて、分子中に1つの官能基を有する単量体、レベリング剤、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分をさらに添加できる。得られる樹脂積層体の透明性の観点から、その添加量は、光硬化性樹脂混合物100質量%中、10質量%以下が好ましい。
前記混合物を硬化させて形成される硬化塗膜層の膜厚は、0.5μm〜100μmであることが好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度を有し外観も良好である。0.5μm以上では十分な表面硬度が発現し、100μm以下では膜固有の着色等が問題とならず外観が良好となるとともに、帯電防止性能又は赤外線遮蔽性能が良好となる。より好ましくは、0.5μm〜30μmである。
次に、本発明における、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料について説明する。
本発明では、環境負荷低減・設備のコスト、製品の安全の観点より、分散媒として、実質的に有機溶剤を含まず、水を用いる水系塗料とする。該水系塗料は、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む。
機能性化合物は、帯電防止機能、及び、または赤外線遮蔽機能を有する化合物である。
帯電防止機能を有する化合物としては、π電子共役系導電性有機化合物、導電性微粒子等の電子伝導型の化合物及びイオン伝導型の有機化合物が挙げられる。これらの中で、環境の変化を受け難く導電性能が安定し、特に低湿環境下でも良好な導電性能を発現できる点で、π電子共役系導電性有機化合物、及び導電性微粒子等の電子伝導型の化合物が好ましい。
π電子共役系導電性有機化合物の具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン及び混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)が挙げられる。これらの中で、ポリチオフェンが好ましい。
前記水系塗料の固形分成分のうち、帯電防止機能を有する化合物の割合は、π電子共役系導電性有機化合物を使用する場合、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。前記化合物を0.5%以上とすることにより、前記化合物が塗膜中に分散して効率よいネットワークが形成し易いため、透明性を維持しつつ帯電防止性能をより良好に発現することができる。一方、20%以下とすることにより、分散化の効率をより良好にすることができる。
導電性微粒子の具体例としては、カーボン系微粒子、金属系微粒子、金属酸化物系微粒子及び導電被覆系微粒子が挙げられる。
カーボン系微粒子としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボン粉末、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等のナノカーボン類、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等のカーボン繊維及び膨張化黒鉛粉砕品のカーボンフレークが挙げられる。
金属系微粒子としては、例えば、アルミニウム、銅、金、銀、ニッケル、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タングステン、タンタル等の金属及びそれらの金属を含有する合金の粉末並びに金属フレーク、鉄、銅、ステンレス、銀メッキ銅、黄銅等の金属繊維が挙げられる。
金属酸化物系微粒子としては、例えば、酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛及び五酸化アンチモンが挙げられる。
導電被覆系微粒子としては、例えば、球状又は針状の酸化チタン、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ等の各種微粒子の表面を酸化錫、ATO、ITO等の帯電防止成分で被覆した導電性微粒子及び金、ニッケル等の金属で表面処理されたポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂微粒子が挙げられる。
前記導電性微粒子は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
導電性微粒子の一次粒子の平均粒径としては1nm以上が好ましい。また該平均粒径は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、80nm以下が特に好ましい。尚、導電性微粒子の平均粒径は光散乱法や電子顕微鏡写真観察による方法により測定できる。
前記水系塗料の固形分成分のうち、帯電防止機能を有する化合物の割合は、導電性微粒子を使用する場合、30〜90質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましい。前記化合物を30質量%以上とすることにより、前記化合物が塗膜中に分散して効率よいネットワークが形成し易いため、透明性を維持しつつ帯電防止性能をより良好に発現させることができる。一方、90質量%以下とすることにより、分散化の効率をより良好にすることができる。
次に、本発明における、赤外線遮蔽機能を有する化合物について説明する。
赤外線遮蔽機能を有する化合物としては、透明性維持の観点からアンチモン錫酸化物(ATO)やインジウム錫酸化物(ITO)等の導電性微粒子が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用しても良い。
前記導電性微粒子は、塗膜の透明性を維持する点で、粒子の平均粒径が300nm以下のものが好ましく、200nm以下のものがより好ましい。
ITOやATO等の導電性微粒子は、赤外線遮蔽効果に優れるが、溶媒に安定的に分散しにくいため、凝集すると赤外線遮蔽効果や透明性が十分に発現しないという課題があるが、導電性ポリマーを共存させることにより、前記微粒子を溶媒に分散化または可溶化でき、透明性、導電性、及び赤外線遮蔽性能に優れる塗膜を形成できることができる。
本発明で使用される導電性ポリマーは、π共役系高分子であれば特に制限させずに用いることができる。導電性ポリマーの透明性は膜厚に依存するが、全光線透過率30%以上となる厚みで用いることが好ましい。導電性ポリマーとしては、例えば、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含む導電性ポリマーを挙げることができる。この中でも特に、チエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを含む骨格を有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。これらはスルホン酸及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーであることが好ましく、例えばポリアニリンスルホン酸が挙げられる。なお、前記導電性ポリマーは、前記機能性化合物の一つとして扱う。
前記水系塗料の固形分成分のうち、赤外線遮蔽機能を有する化合物の割合は、導電性微粒子を使用する場合、50〜99質量%であることが好ましく、60〜99質量%であることがより好ましい。前記化合物を50質量%以上とすることにより、前記化合物が塗膜中に分散して効率よいネットワークが形成し易いため、透明性を維持しつつ赤外線遮蔽性能をより良好に発現させることができる。一方、99質量%以下とすることにより、分散化の効率をより良好にすることができる。
次に、前記水系塗料に使用する、アニオン系界面活性剤について説明する。
アニオン系界面活性剤としては、カルボキシレート型、サルフェート型、スルホネート型、ホスフェート型が適しており、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等が挙げられるが、中でもジアルキルスルホコハク酸塩が、塗膜外観の観点で好ましい。
前記水系塗料の固形分成分のうち、アニオン系界面活性剤の割合は、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。アニオン系界面活性剤が0.05重量%以上とすることで、前記水系塗料の硬化塗膜層に対してぬれ性が良く、塗膜外観が良好となり、10重量%以下とすることで、製膜性、成形性、強度をより向上させ、硬化塗膜層または樹脂基材への密着性を確保することができる。
前記水系塗料は親水性ポリマーを含有してもよい。
親水性ポリマーとしては、水溶性バインダーを用いることが可能であり、例えば、ポリビニルアルコール(ケン化度60%以上のポリビニルアセテート)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体及びその塩、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルホスホン酸及びその塩、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリ(メタクリロイロキシプロパンスルホン酸)及びその塩、ポリビニルスルホン酸及びその塩、ポリ(メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのポリマーは、親水性を損なわない限りにおいて、コポリマーであっても良く、また1種単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記水系塗料の固形分成分のうち、機能性化合物としてπ電子共役系導電性有機化合物を使用する場合、親水性ポリマーの割合は、80〜99.5質量%であることが好ましく、82〜99質量%であることがより好ましい。親水性ポリマーを80質量%以上にすることにより、製膜性、成形性、強度をより向上させ、硬化塗膜層または樹脂基材への密着性を確保することができ、また99.5質量%以下とすることで、機能性化合物の溶解性、分散性の低下を少なくすることができ、機能性を維持することができる。
前記水系塗料の固形分成分のうち、機能性化合物として帯電防止機能を有する化合物である導電性微粒子を使用する場合、親水性ポリマーの割合は、10〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。親水性ポリマーを10質量%以上にすることにより、製膜性、成形性、強度をより向上させ、硬化塗膜層または樹脂基材への密着性を確保することができ、70質量%以下とすることで、機能性化合物の溶解性、分散性の低下を少なくすることができ、機能性を維持することができる。
前記水系塗料の固形分成分のうち、機能性化合物として赤外線遮蔽機能を有する化合物として、ATOやITO等の導電性微粒子を使用する場合、親水性ポリマーの割合は、1〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましい。親水性ポリマーを1質量%以上にすることにより、製膜性、成形性、強度をより向上させ、硬化塗膜層または樹脂基材への密着性を確保することができ、50質量%以下とすることで、前記化合物の溶解性、分散性の低下を少なくすることができ、機能性を維持することができる。
更に前記水系塗料には、必要に応じて、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の公知の各種物質を添加して用いることができる。
前記水系塗料を塗工して形成される機能層の膜厚は、10nm〜5μmであることが好ましい。かかる範囲においては、十分な機能を発現し、外観も良好である。
樹脂基材としては、樹脂原料の注型重合を行い形成されたものを用いることができる。樹脂原料の詳細については、後述する。樹脂基材の厚みは、樹脂原料や用途に応じて適宜最適の厚みとすればよいが、生産性の観点から、0.5mm〜15mmが好ましい。
次に、本発明の第一の工程における硬化塗膜層の形成方法について詳細に説明する。
まず、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を型へ塗布する。型への光硬化性樹脂混合物の塗布方法は、エアーナイフコート法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、フィルムカバー法及びディッピング法などが挙げられる。次いで、光硬化性樹脂混合物を硬化する。紫外線を照射することにより、硬化塗膜層を形成する。光硬化性樹脂混合物に溶剤が含まれる場合は、塗布後に乾燥と紫外線硬化を行う。この紫外線照射には、紫外線ランプを使用すればよい。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、蛍光紫外線ランプ等が挙げられる。
硬化塗膜層を形成するための紫外線照射条件としては、例えば、ピーク照度100mW/cm以上及び積算光量10mJ/cm以上の条件が挙げられる。
型を構成する部材としては、例えば、鏡面を有するステンレス板もしくはガラス板、又は表面に凹凸を有するステンレス板もしくはガラス板等を使用できる。
次いで、第二の工程として、硬化塗膜層の上に、前記水系塗料を湿式塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する。
硬化塗膜層の上への塗布方法は、一層目と同じく、エアーナイフコート法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、フィルムカバー法及びディッピング法などが挙げられる。塗膜後、必要に応じて乾燥工程を設けてもよい。
次いで、第三の工程として、多膜層が形成された面が内側になるように用いて、鋳型を作製する。
鋳型の作製は、例えば、上記の多膜層を有する型と他の型を向かい合わせ、これら2枚の型の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合物、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物等からなる中空形状物をガスケットとして挟み込み、クランプで固定して、鋳型を組立てる等の工程により行うことができる。また、連続的に注型重合(キャスト重合)する方法として、図1に示すような対向して走行する2枚のステンレス製エンドレスベルトを型として、それらエンドレスベルトの間で樹脂原料を注型重合して樹脂板を製造する方法が知られている。本発明においてもこのようなエンドレスベルトを型とする成型方法が、生産性の点で最も好ましい方法である。エンドレスベルトを用いた連続製造方法については後述する。
このように鋳型を作製した後、第四の工程として、鋳型に樹脂原料を注入し、該樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する。
樹脂原料としては、公知の各種の重合性原料を使用できる。例えば、アクリル系樹脂基材を注型重合で製造する場合は、その樹脂原料として、(メタ)アクリル酸のエステル類単独の単量体、又はこれを主成分とする単量体の重合物、或いは、この単量体とこの単量体の重合物との混合物を含有するシロップ等を挙げることができる。
また、このようなアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸のエステル類の単独重合物、又はこれを主な単量体成分とする共重合物を例示することができる。(メタ)アクリル酸のエステル類としては、メタクリル酸メチルを例示することができる。例えば、メタクリル酸メチルを主な単量体成分として共重合する場合、その他の単量体成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。メタクリル酸メチル単量体又はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物中に、メタクリル酸メチル単量体又はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物の一部重合物を含む場合は、メタクリル酸メチル単量体又はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物に前記重合物を溶解させてもよいし、或いはメタクリル酸メチル単量体又はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物を一部重合させてもよい。
アクリル系樹脂原料を重合するための開始剤としては、一般的に用いられるアゾ系の開始剤、パーオキサイド系開始剤等が挙げられ、これらの開始剤を用いて公知の方法により注型重合を行う。アクリル系樹脂原料には、その他目的に応じ、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料等を添加することができる。
重合終了後、第五の工程として、注型重合により形成された樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を、鋳型から剥離する。このようにして得られる樹脂積層体は、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、剥離性も良く、生産性に優れている。なお、剥離を容易とするため、型の表面に離型剤を塗布する等、離型処理を施していても良い。
以上のようにして製造される樹脂積層体には、必要に応じて、例えば硬化塗膜層の表面に反射防止層などの他の機能層を設けることもできる。例えば、反射防止層を形成する場合、反射防止用塗料を樹脂積層体に塗布、乾燥させて形成する方法(湿式法)、或いは、蒸着法やスパッタリング法などの物理気相堆積法などが挙げられる。また、硬化塗膜層の表面は平坦でもマット状でも良い。また防汚膜をさらに積層してもよい。
次に、エンドレスベルトを用いた樹脂積層体の連続製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1の装置において、上下に配置した一対の相対するエンドレスベルト1、2(ステンレス鋼、SUS304)を型とし、エンドレスベルト1、2は、それぞれ主プーリ3、4、5、6で張力が与えられ、同一速度で走行する。上下対になったキャリアロール7は、走行するエンドレスベルト1、2を水平に支持し、該ベルトの走行方向と直角方向かつ該ベルト面の垂直方向から該ベルト面に対して線荷重をかける。
走行する一対の相対するエンドレスベルト1、2の向かい合う面の少なくとも一方の面(ここではエンドレスベルト2)に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する(第一の工程)。すなわち塗布された前記光硬化性樹脂混合物15は、高圧水銀灯により硬化されて硬化塗膜層が形成される(図2)。この時、光硬化性樹脂混合物はエアーナイフ16で所定の厚みとなるように規制される。
次いで、前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料17を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する(第二の工程)。この時、機能層はエアーナイフ18で所定の厚みとなるように規制される。
次に、前記多膜層の形成されたエンドレスベルトを含む一対のエンドレスベルト1、2の向かい合う面側の幅方向の両端部付近にガスケット12を配設し、前記一対のエンドレスベルト及びガスケット12から構成される鋳型を作製する(第三の工程)。すなわち前記ベルトの向かい合う面側の幅方向の両端部付近には弾力性のある二個のガスケット12が配設されて前記両端部がシールされ、鋳型を構成する。これにより鋳型の空間部が形成されている。ここで「幅方向」とは、エンドレスベルトの走行方向と直角方向かつ該ベルト面に水平な方向をいう。
そして、エンドレスベルト1との会合直前に重合性原料注入装置14から前記鋳型(エンドレスベルト1、2の間の空間部)に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する(第四の工程)。注入された樹脂原料は、エンドレスベルト1、2の走行に伴い、第一重合ゾーン8において温水スプレー9による加熱によって重合を開始し、次いで第二重合ゾーン10において遠赤外線ヒーターで加熱されて重合を完結し、冷却ゾーン11で冷却される。
第一重合ゾーンの重合温度や重合時間等は、注型重合する樹脂原料の組成に応じて適宜最適となる条件を選択すればよく、例えば、上記例示したアクリル系樹脂を樹脂原料とする場合は、30℃〜90℃が好ましく、重合時間は10分〜40分程度とすることが好ましい。ただし、この範囲の温度や時間に限定されるものではない。例えば、始めは低温で重合を行い、次いで温度を上昇させて重合を継続させる方法等も用いることができる。その後、第二重合ゾーンにおいて、100℃〜130℃程度の高温条件で10分〜30分加熱して重合を完結させることも好ましい。
冷却ゾーン11で冷却された後、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離し、走行方向(矢印)13に連続的に取り出す(第五の工程)。
このように、エンドレスベルトを用いた連続製造装置により樹脂積層体を連続的に製造することが可能となる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。ここで、実施例、比較例で使用した化合物の略称は以下の通りである。
「MMA」:メタクリル酸メチル
「C6DA」:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
「TAS」:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合混合物(大阪有機化学工業(株)製)
「BEE」 :ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)社製)
「アクリライトMR」:ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名)
<帯電防止剤>
帯電防止剤としては、π共役性有機導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェン(「PEDOT/PSS」;スタルク社製、バイトロンPシリーズ(商品名))1.3質量%水分散液を用いた。
<赤外線遮蔽剤>
金属微粒子としては、スズ含有酸化インジウム粒子を用いた。該スズ含有酸化インジウム粒子は、富士チタン工業社製、商品名:type B−(H)、粒子径:30nm(以下、ITO粒子と記す)である。
<親水性ポリマー>
親水性ポリマーとしては、水系アクリル樹脂エマルションと水系ポリエステル樹脂エマルションを用いた。該水系アクリル樹脂エマルションは、三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤナールMX−1845、樹脂分40質量%である。該水系ポリエステル樹脂エマルションは、東洋紡績(株)製 MD−1200、樹脂分36質量%である。
<導電性ポリマー>
「ポリアニリンスルホン酸」:(三菱レイヨン(株)社製、aquaPASS−01x(商品名))
<界面活性剤>
「ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム」:(三井サイテック(株)製、アニオン系)
「BYK−348」:ポリエーテル変性シロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製、ノニオン系)
「FC−4430」:ノニオン性フッ素系界面活性剤(住友3M)
<超音波ホモジナイザー処理条件>
超音波ホモジナイザー処理は、SONIC社製、vibra cellを用い、定格出力:30ワット/cm2、発振周波数:20kHzの条件で実施した。
なお、特に断りがない限り、全ての試薬は市販の特級相当品を使用した。また、実施例における物性の評価は下記の方法に基づいて行った。
(評価方法)
<塗膜外観>
○:製膜後、はじくことなく塗れた
×:製膜後、はじきが発生した
<臭気>
○:周辺の雰囲気異常なし
×:周辺の雰囲気への影響大
<全光線透過率及びヘーズ>
日本電色製HAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7136に示される測定法に準拠して、全光線透過率及びヘーズを測定した。
<灰付着性試験>
樹脂積層体の硬化塗膜層を有する面を乾いた面布で10回摩擦した後、硬化塗膜層を有する面を、平面上のたばこの灰に一定の距離を隔てて近づけた際の、灰の付着性の評価を行った。
○:10mmの距離まで近づけても灰が付着しない。
×:10mmの距離で灰が付着する。
<樹脂積層体の表面抵抗値>
超絶縁抵抗計(TOA製、商品名:ULTRA MEGOHMMETER MODEL SM−10E)を使用し、測定温度23℃、50%相対湿度の条件で、樹脂積層体の硬化塗膜層側について印加電圧500Vで1分後の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。測定用の試料としては、予め23℃、50%相対湿度で1日間調湿したものを用いた。
<日射透過率(赤外線遮蔽性能)>
JISR3106に示される測定法に準拠して、340〜1800nmの範囲で計算した日射透過率を示す。
<耐擦傷性>
擦傷試験の前後における傷の状態をもって評価した。#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドを積層体の硬化塗膜層表面上に置き、9.8Nの荷重下で、20mmの距離を100回往復擦傷し、擦傷後の傷の状態を目視で観察した。
○:傷が少ない。
×:傷が無数にある。
<耐湿性試験>
40℃、95%RH(相対湿度)の条件下に10日間サンプルを放置した後、硬化塗膜層の外観を目視で観察し、次の2段階で評価した。
○:変化なし。
×:ブリード物で外観低下。
<密着性試験>
初期、耐湯試験後、耐湿試験後の密着性を、碁盤目剥離試験(JIS K5600−5−6)により評価した。耐湯試験後とは、樹脂積層体を60℃の温水中で4時間浸漬した後とし、耐湿試験後とは、樹脂積層体を40℃95%相対湿度の雰囲気下に7日間放置した後とした。
○:硬化塗膜層の樹脂基材からの剥離無し。
×:硬化塗膜層の樹脂基材からの剥離あり。
<鋳型剥離性試験>
樹脂積層体を10枚作製し、鋳型から樹脂積層体を剥離するときの、剥離しやすさを評価した。
○:鋳型から樹脂積層体を容易に剥離できる。
×:鋳型に樹脂積層体の一部が残る。
<表面欠陥>
樹脂積層体の表層(面積300mm×300mm)の異物数を目視により観察した。
○:異物ゼロ。
×:異物が無数に存在。
[実施例1]
型となるステンレス(SUS304)板上に、TAS50質量部、C6DA50質量部、BEE1.5質量部からなる光硬化性樹脂混合物を、エアーナイフコート法により厚みが20μmになるように塗布した。
ここで、エアーナイフコーティングについて図面を参照して詳細に説明する。図2において、SUS304表面から5mm離れた位置で、SUS304の走行方向に対して下向きよりも上流側に5°傾けてなるよう配したエアーノズル16の下を、3.0m/分のスピードで1度通過させ光硬化性樹脂混合物15を20μmになるように塗布した。この時エアーノズル16は、スリット型エアーノズルであってスリットクリアランス0.15mm、エア風量1m/minであった。
その後、出力160W/cmの高圧水銀灯下17cmの位置を、光硬化性樹脂混合物の塗布面を上にして2.0m/分のスピードで1度通過させ硬化させた。硬化状態は良好であった。
(帯電防止機能を有する化合物を含む水系塗料の調製)
・帯電防止剤:PEDOT/PSS 1.3%水分散液 19質量%
・親水性ポリマー:ダイヤナールMX−1845 40%水分散液 12質量%
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.1質量%
・水 69質量%
上記を室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、帯電防止機能を有する化合物を含む水系塗料を調製した。
前記硬化塗膜層の上に、上記帯電防止機能を有する化合物を含む水系塗料を、エアーナイフコート法により塗布し、膜厚約0.3μmの帯電防止層を得た。エアーナイフコーティングについては、光硬化性樹脂混合物を塗工した方法と同じである。
このようにして形成した多膜層を有するステンレス板を1枚と、別のステンレス板を用意し、多膜層が内側になるように対向させ、周囲を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した(面積;300×300mm)。この鋳型内に、重量平均分子量220000のMMA重合物20質量部とMMA単量体80質量部の混合物100質量部、AIBN0.05質量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.005質量部からなる樹脂原料を注入し、対向するステンレス板の間隔を2.5mmに調整し、80℃の水浴中で1時間、次いで130℃の空気炉で1時間重合した。その後、冷却して、ステンレス板から、得られた樹脂板を剥離することにより、片面に多膜層を有する板厚2mmのアクリル樹脂積層体を得た。
得られたアクリル樹脂積層体は透明性に優れており、さらに、異物による外観欠陥も無く、良好な外観を有するものであった。また、その表面抵抗率値は2.0×1013Ω/□であり、灰付着性試験を行った結果、灰は樹脂板表面に付着しなかった。擦傷性も良好であった。また耐湿試験後もアクリル系樹脂積層体の外観に変化は無かった。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜5]
表1に示す原料組成を採用したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
(赤外線遮蔽機能を有する化合物を含む水系塗料の調製)
・赤外線遮蔽剤:ITO粒子 46質量%
・水溶性導電性ポリマー:ポリアニリンスルホン酸 0.5質量%
・親水性ポリマー:ダイヤナールMX−1845 6.4質量%
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.1質量%
・水 47質量%
上記を室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、赤外線遮蔽機能を有する化合物を調製した。
このようにして得た化合物を採用したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜5]
表1に示す原料組成を採用したこと以外は、実施例と同様にしてアクリル樹脂積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜6では、本発明の樹脂積層体においては、十分な帯電防止性能、及び、または赤外線遮蔽性能、耐擦傷性および透明性が実現され、塗膜外観も良好であることがわかった。
また、鋳型剥離性も良く、高い生産性を有していた。
一方、表1に示すように、比較例1〜4では、機能層の形成の際、いずれもはじき不良となり塗膜外観が悪く膜厚が測定できず、また密着性の評価ができなかった。比較例5では、有機溶剤のイソプロピルアルコール(IPA)使用による臭気の周辺雰囲気への影響の点で不十分であった。
Figure 2011156807
Figure 2011156807
本発明によって得られた、硬化塗膜層を少なくとも一部の表面に有する樹脂積層体は、耐擦傷性、透明性などに優れ、ディスプレー前面板、携帯電話の面板など各種用途に好適である。
1、2 エンドレスベルト
3、4、5、6 主プーリー
7 キャリアロール
8 第一重合ゾーン
9 温水スプレー
10 第二重合ゾーン
11 冷却ゾーン
12 ガスケット
13 走行方向
14 原料注入装置
15 光硬化性樹脂混合物
16、18 エアーナイフ
17 水系塗料

Claims (4)

  1. 型上に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、
    前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、
    前記硬化多膜層が形成された型と他の型を、前記多膜層の形成された面が内側になるように2枚の型の面を向かい合わせて鋳型を作製する第三の工程、
    前記鋳型に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、
    及び、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程、を有する樹脂積層体の製造方法。
  2. 前記アニオン系界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸塩である請求項1に記載の樹脂積層体の製造方法。
  3. 前記機能性化合物とは、帯電防止機能及び赤外線遮蔽機能の内の少なくともいずれかを有する化合物である請求項1または2に記載の樹脂積層体の製造方法。
  4. 走行する一対の相対するエンドレスベルトの向かい合う面の少なくとも一方の面に、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性樹脂混合物を塗布し、光照射し前記混合物を硬化させて硬化塗膜層を形成する第一の工程、前記硬化塗膜層の上に、機能性化合物及びアニオン系界面活性剤を含む水系塗料を塗工し、機能層を形成することによって、多膜層を形成する第二の工程、前記多膜層の形成されたエンドレスベルトを含む一対のエンドレスベルトの向かい合う面側の幅方向の両端部付近にガスケットを配設し、前記一対のエンドレスベルト及びガスケットから構成される鋳型を作製する第三の工程、前記鋳型に樹脂原料を注入し、前記樹脂原料の注型重合を行い樹脂基材を形成する第四の工程、前記樹脂基材上に前記多膜層が積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第五の工程、を有する連続的樹脂積層体の製造方法。
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