以下、添付図面に従って本発明に係るプリント装置の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
[プリント装置の全体構成]
図1はそれぞれ本発明の第1実施形態に係るプリント装置10を模式的に現した内部透視図であり、シート供給カセットから印画媒体を供給する状態に関して示している。
図1に示すように、このプリント装置10は、かまぼこ状のレンズ群を有したいわゆるレンチキュラーレンズが表面に形成されたレンズ面とその反対側の面である印画面を備えた透明樹脂製の印画媒体(以下、「レンチキュラーシート」という)12を鉛直方向に搬送して印画する縦置きの3Dプリンタであり、主としてシート収納部100と、印画部200と、空送部300とから構成されている。レンチキュラーシート12の材質は、サーマルヘッド260の印画動作に対応した熱耐性を有する可撓性の部材からなる。この部材は透明樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル(PMMA)である。また、レンチキュラーシート12の厚みは任意であるが、例えば0.3mmである。
また、このプリント装置10は、R(受像層)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、W(ホワイト)のインクリボンを使用した昇華型プリンタであり、印画カラー毎に上昇(印画時)と下降(印画開始位置への逆送)とを繰り返し行うものである。
このプリント装置10には、システムコントローラ400(図15参照)が配設され、制御手段によりプリント装置10の各部の動作が制御される。制御系については、後に詳述する。
<シート収納部>
図2は上記シート収納部100の詳細な構成を示す斜視図である。図3、4は、上記シート収納部100の詳細な構成を示す側面図である。
このシート収納部100は、主としてシート収納本体110と、固定板111と、圧板112と、シート供給カセット150とから構成されている。シート収納本体110にシート供給カセット150が着脱自在に装着できるようになっており、シート収納本体110は固定板111に対して回動自在に配設されている。
シート収納本体110は、図2〜4に示すように、底部の回転軸120を中心に揺動自在に配設され、カセット退避機構434により揺動できるように構成されている。カセット退避機構434は、図3に示すように主としてソレノイド122と、バネ123と、リンク機構124と、付勢ばね125と、ストッパ126(図4参照)とから構成されている。
ソレノイド122は、例えばプル型ソレノイドであり、ピストン122aが上下動(図3では上下方向に移動)されるように構成される。付勢ばね125は、例えばコイルバネであり、その両端が固定板111及び壁110aに配設され、回転軸120を中心に反時計回りに回転する方向の力をシート収納本体110に付勢する。
リンク機構124は、レバー124aと、回動軸124bと、アーム124cとから構成されている。レバー124a及びアーム124cは、回動軸124bを中心に回動可能に配設される。レバー124aにはバネ123及びピストン122aが連結され、バネ123の付勢力によりレバー124aは回動軸124bを中心に時計回りに回動され、ピストン122aが下方向に引き込まれることによりレバー124aは回動軸124bを中心に反時計回りに回動される。
通常はソレノイド122への通電がオンにされており、ピストン122aは下方向に引き込まれている。ピストン122aは下方向に引き込まれている場合には、アーム124cが圧板112を介してシート収納本体110を押圧する。これにより、回転軸120を中心に時計回りに回転する方向の力がシート収納本体110に付勢される。シート収納本体110が鉛直位置に保持された時にシート収納本体110と当接する位置にはストッパ126(図4参照)が配設され、シート収納本体110がストッパ126に当接することでシート収納本体110の時計回りの回動が停止される。
ソレノイド122への通電がオフにされると、バネ123によりレバー124aが回動軸124bを中心に時計回りに回動され、ピストン122aが上方向に引き上げられ、アーム124cが時計回りに回動される。これにより、アーム124cがシート収納本体110を押圧する力が除かれ、付勢ばね125の付勢力により、シート収納本体110が回転軸120を中心に反時計回りに回動される。シート収納本体110が所定の角度(例えば、30°)だけ傾いた時にシート収納本体110と当接する位置にストッパ(図示せず)が配設され、シート収納本体110がこのストッパに当接することでシート収納本体110の反時計回りの回動が停止される。
なお、カセット退避機構434の具体的構成は図示したものに限らない。シート収納本体110を回転軸120を中心に時計回りあるいは反時計回りに回動させうる機構であれば、どのような機構を用いてもよい。また、ソレノイド122として、プル型ソレノイドではなく、プッシュ型ソレノイド、プッシュプル型ソレノイドを用いてもよい。また、付勢バネによりシート収納本体110に回転軸120を中心に時計回りに回動する方向の力を付勢し、リンク機構によりシート収納本体110を回転軸120を中心に反時計回りに回動させてもよい。
図4はシート収納部100の側面概略図である。
シート供給カセット150内に収納されたレンチキュラーシート12は、シート収納本体110側のL字型の圧板112上に載置される。
圧板112は、2本のガイド軸116(図2参照)により、正面と背面との方向(図4上で左右方向)に1自由度で支持されており、図示しないモータを含む圧板駆動機構により移動できるようになっている。
また、図4に示すように圧板112は、弾性部材118を介してカセット内のレンチキュラーシート12を押圧するが、常に一定の圧力で押圧するように圧板112の位置が制御されている。
図5及び図6はそれぞれシート供給カセット150の斜視図であり、図5はシート供給カセット150のカセットカバー152を開け、100枚〜200枚の積層されたレンチキュラーシート12をカセット150内に挿入する様子を示しており、図6はレンチキュラーシート12をカセット150内に挿入した後、カセットカバー152を閉じた状態を示している。
このシート供給カセット150の正面には、フィードローラ190(図2参照)が挿入される開口154が形成され、一方、背面のカセットカバー152には、L字型の圧板112(図4参照)が挿入される圧板開口156が形成されている。
また、シート供給カセット150の上面には、カセット内から1枚のレンチキュラーシート12を排出するための排出口158が形成される。排出口158は、中央の幅が最も狭く、両端に行くに従い幅が広くなるように形成され、排出口158の略中央部の幅Wは、1枚のレンチキュラーシート12のシート厚tよりも広く、2枚のレンチキュラーシート12のシート厚2tよりも狭くなるように形成される。中央の幅が最も狭く、両端に行くに従い幅が広くなるように排出口158が形成されるのは、圧板112(後に詳述)によりレンチキュラーシート12の略中央部が押圧されるため、これに応じて両端が撓むことを考慮したためである。
シート供給カセット150の側面には、鉛直方向に凸条160が形成されている。シート供給カセット150は、シート供給カセット150の凸条160が、シート収納本体110の側面に形成された凹溝114に係合することにより、シート収納本体110の所定位置に位置決めされる。
フィードローラ190(図2参照)は、圧板112により一定の圧力で押圧されたレンチキュラーシート12をシート供給カセット150から排出する。なお、圧板112の位置は、圧板112が常に一定の圧力でレンチキュラーシート12を押圧するように制御される。
フィードローラ190は、図7に示すように、断面がD形状(Dカット)の棒状の部材であり、フィードローラ190は、フィードローラ190とレンチキュラーシート12との摩擦係数μ2が、レンチキュラーシート12間の摩擦係数μ1より大きくなるような材質、例えばゴム等で形成される。
図示しない検出手段によりシート供給カセット150がシート収納本体110に挿入されていないことが検出されている場合には、直線部190aが圧板112と対向するようにフィードローラ190の回転方向の位置が制御される。この場合には、フィードローラ190とレンチキュラーシート12が接触しないため、シート供給カセット150のシート収納本体110への挿入が妨げられることは無い。シート供給カセット150のシート収納本体110へ挿入されると、図7に示すようにレンチキュラーシート12が圧板112により押圧され、フィードローラ190の回転が可能な待機状態となる。
レンチキュラーシート12が押圧された状態でフィードローラ190が給送方向に回転駆動されると、図8に示すように、フィードローラ190と当接するレンチキュラーシート12がフィードローラ190の回転に応じて移動され、レンチキュラーシート12がシート供給カセット150の排出口158から送り出される。排出口158は、その幅Wがシート厚tよりも広く、2枚分のシート厚2tよりも狭くなるように形成されており、これにより排出口158からは1枚のレンチキュラーシート12のみが送り出される。
フィードローラ190がさらに回転し、図9に示すように直線部190aがレンチキュラーシート12に対向する位置に達すると、回転が停止するように制御される。これにより、レンチキュラーシート12は、シート供給カセット150から一定量だけ(例えば、レンチキュラーシート12の下流側端部が搬送ローラ212及びキャプスタン214に挟持されうる位置まで)送り出される。また、このときレンチキュラーシート12にはフィードローラ190が当接しないようになる(フィードローラ190からの摩擦力が作用しないようになる)。
<印画部>
図1及び図2に示すように印画部200は、主として印画時等にレンチキュラーシート12を搬送するシート搬送機構431(図15参照)と、R、Y、M、C、Wのインクリボンが装填されたリボン交換ガトリング機構250と、サーマルヘッド260とから構成されている。
シート搬送機構431は、主としてフィードローラ190と、搬送ローラ212と、キャプスタン214と、クランパ220(以上、図1参照)と、クランパ220を移動させるクランパ搬送部230(図10参照)とから構成されている。
フィードローラ190によりシート供給カセット150から一定量だけ送り出されたレンチキュラーシート12は、図9に示すようにその先端部が搬送ローラ212の位置に到達する。ここで、搬送ローラ212に対してレンチキュラーシート12を介してキャプスタン214を圧着させるとともに、搬送ローラ212を駆動することにより、レンチキュラーシート12を搬送することができる。なお、フィードローラ190を設けず、その代わり手差しにより1枚ずつレンチキュラーシート12の先端部が搬送ローラ212の位置に到達してもよい。
この搬送ローラ212及びキャプスタン214によるレンチキュラーシート12の搬送は、最下位の所定の位置で待機しているクランパ220にレンチキュラーシート12の先端が到達するまで行われる。尚、クランパ220は、一対のクランプ部材がばねにより常時閉じる方向に付勢されているが、上記待機状態ではカム等により一対のクランプ部材は、ばねの付勢力に抗して開いた状態で待機している(図1参照)。
レンチキュラーシート12の先端が上記クランパ220に到達すると、レンチキュラーシート12の先端はクランパ220により挟持され、キャプスタン214(図1参照)は搬送ローラ212から退避させられる。その後、レンチキュラーシート12は、クランパ搬送部230によりクランパ220とともに搬送(昇降)させられる。
図10は上記クランパ220及びクランパ搬送部230の概略構成を示す平面図である。
図1に示した空送部300の上端部には、それぞれ駆動モータ302から減速機構304を介して駆動される一対の駆動プーリ306が設けられ、プラテンローラ262の近傍には一対の従動プーリ308が設けられている。
これらの駆動プーリ306と従動プーリ308との間には駆動ベルト310が巻き付けられており、図10に示すように駆動ベルト310間には、クランパ220が図示しないボルトにより固定されている。
また、駆動ベルト310に沿ってクランパ220を鉛直方向に案内するガイドレール312が配設され、更に最下位の所定の位置で待機しているクランパ220に対して、レンチキュラーシート12を案内する樹脂製ガイド314が配設されている。尚、樹脂製ガイド314の代わりにゴム製ガイドとしてもよい。
一対の樹脂製ガイド314の幅は、レンチキュラーシート12の幅よりも所定のクリアランス分だけ広くなっており、樹脂製ガイド314は、レンチキュラーシート12が鉛直方向に沿うように案内する。
また、プラテンローラ262の入口側には、プラテンローラ262と平行に3つのフォトセンサ320A,320B,320Cが配設され、レンチキュラーシート12の配送路を挟んでフォトセンサ320A,320B,320Cと対向する位置に図示しない発光ダイオード(LED)が配設されている。
フォトセンサ320A,320B,320Cにより検出されるレンチキュラーシート12の検出信号は、フォトセンサ光軸が、レンチキュラーシート12のレンズの中心と一致する場合に最大値となり、レンズ間の谷に位置する場合に最小となる。従って、3つのフォトセンサ320A,320B,320Cの検出信号に基づいてレンチキュラーシート12の傾き(アジマス角)を検知することができる。
レンチキュラーシート12のアジマス調整(アジマス角を0にする調整)は、レンチキュラーシート12の先端をクランパ220により挟持した後、3つのフォトセンサ320A,320B,320Cの検出信号を監視しながら左右一対の駆動プーリ306をそれぞれ独立に駆動し、クランパ220をアジマス調整分だけ僅かに傾けることにより行う。
上記のようにしてアジマス調整をした後、クランパ220を上昇させることによりレンチキュラーシート12を印画開始位置に搬送し、その後、サーマルヘッド260による印画を開始させる。1色分の印画が終了すると、駆動プーリ306を逆転させてクランパ220を下降させ、レンチキュラーシート12を再び印画開始位置に戻す戻し動作が行われる。
レンチキュラーシート12を挟持したクランパ220は、ガイドレール312に沿って垂直方向に直線的に上下動する。また、レンチキュラーシート12は、印画時は垂直方向に沿って上昇ないし下降するため、レンチキュラーシート12にはその自重による撓み(薄型のレンチキュラーシート12など剛性の低い印画媒体には特に顕著に発生する)がほとんど発生しない。このため、印画時にレンチキュラーシート12がプリント装置10の部材と接触してレンズ面や印画面に傷が付くことが防止され、立体視に致命的欠陥が生じた商品が発生することが防止される。
<リボン交換ガトリング機構及びサーマルヘッド>
図11はリボン交換ガトリング機構250の概略図である。
図11に示すようにリボン交換ガトリング機構250は、リボンケージホルダ252と、リボンケージ254とを有しており、リボンケージホルダ252は、リボンケージホルダ252及びリボンケージ254の中心軸と平行に配設されたリボンケージホルダ揺動軸252Aを中心に揺動できるようになっている。
サーマルヘッド260は、リボンケージホルダ252内に設けられており、リボンケージホルダ揺動軸252Aと同軸の軸上に回動自在に設けられた、ヘッド圧着部材257の先端に配設されている。このヘッド圧着部材257を回動させることにより、印画時にインクリボン及びレンチキュラーシート12を介してプラテンローラ262に当接する印画位置に移動させられるとともに、インクリボンの切替えやレンチキュラーシート12の逆送時にはプラテンローラ262から退避する退避位置(図1、11参照)に移動させられる。
また、サーマルヘッド260は、後述するように3D画像用の多視点画像(この実施の形態では6視点画像)に応じて駆動され、インクリボン上のインクを昇華させてレンチキュラーシート12に転写する。
リボンケージホルダ252は、リボンケージホルダ揺動軸252Aを中心にして揺動(回動)させることにより、図12に示す印画位置と、図13に示すメンテナンス位置との間で移動できるようになっている。
プリント装置10のフレーム11の蓋11a、11b(図13参照)を上下に開き、リボンケージホルダ252を図12に示す印画位置から時計回りに略90°回転させることにより、図13に示すメンテナンス位置となる。サーマルヘッド260は、リボンケージホルダ252のメンテナンス位置への移動に連動してヘッド圧着部材257と共に移動し、サーマルヘッド260の発熱素子260b(図14参照)が外部から触れられる位置まで移動する。これにより、サーマルヘッド260の掃除や交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。したがって、良好な印画品質が維持される。また、ヘッド圧着部材257及びリボンケージホルダ252の回動中心は、共にリボンケージホルダ揺動軸252Aであるため、構造を簡潔にし、省スペース化することができる。
一方、リボンケージ254は、図11に示すようにリボンケージ回転受け253によりリボンケージホルダ252に回転自在に支持されている。リボンケージ254には、5対の巻取りリール255、供給リール256が等間隔に配設されており、5対のリールには、それぞれR、Y、M、C、Wのインクリボンがセットされる。リボンケージ254は、ガトリング機構により所望のリボンがサーマルヘッド260の位置にくるように回転させられる。
サーマルヘッド260の位置に移動させられた一対の巻取りリール255、供給リール256のうちの巻取りリール255は、印画時にレンチキュラーシート12の移動速度よりも若干速い速度で摩擦クラッチを介してインクリボンを巻き取り、供給リール256にはインクリボンに所定のバックテンションが作用するようにブレーキがかけられている。
これにより、印画時にレンチキュラーシート12が移動すると、このレンチキュラーシート12の移動に連動して(同期して)インクリボンが給送される。
図14は、サーマルヘッド260がプラテンローラ262に当接された印画位置におけるリボン交換ガトリング機構250の詳細を示す図である。
ヘッド圧着部材257は、主として、リボンケージホルダ揺動軸252Aに揺動自在に配設されたアーム257aと、アーム257aから略垂直に突出するように形成されたサーマルヘッド取付部257b及び位置決め板257cとから構成されている。
サーマルヘッド260は、ヘッド本体260aと、発熱素子260bと、取り付けアーム260cと、位置決めピン260dとで構成されている。
ヘッド本体260aは、主として、弾性部材258を介してアーム257aに配設されるとともに、弾性部材259を介してサーマルヘッド取付部257bに配設される。また、ヘッド本体260aには、取り付けアーム260cが一体形成され、取り付けアーム260cの先端に形成された長孔には、サーマルヘッド取付部257bに形成されたピンが挿入される。これにより、サーマルヘッド260は、ヘッド圧着部材257に対して位置が調整自在に配設される。
ヘッド本体260a及び発熱素子260bは、弾性部材258によりプラテンローラ262に押圧させる方向の力が付勢される。これにより、簡単な構造で、発熱素子260bがプラテンローラ262に圧接される。また、ヘッド本体260a及び位置決めピン260dは、弾性部材259によりサーマルヘッド取付部257bと略直行する方向、すなわち弾性部材258による付勢力と略直交する方向の力が付勢される。これにより、位置決めピン260dがプラテン軸262Aに圧接される。これにより、印画位置においてサーマルヘッド260がプラテンローラ262に対して位置決めされ、略直交する2方向から圧接される。
ヘッド圧着部材257は、図12及び図13に示すようにリボンケージホルダ揺動軸252Aを中心にしてリボンケージホルダ252と共に回動可能であると共に、リボンケージホルダ揺動軸252Aを中心にしてリボンケージホルダ252と独立して回動可能である。ヘッド圧着部材257のみを図14において時計回りに回動させることにより、ヘッド圧着部材257の先端に配設されたサーマルヘッド260を、プラテンローラ262に当接させる印画位置から退避位置へと移動させる。ここで、退避位置とは、リボンケージ254を回転させて他の色のインクリボンと交換する場合に、巻取りリール255及び供給リール256にセットされたインクリボンと干渉しない位置である。
インクリボンが交換され、所望のインクリボンがサーマルヘッド260の位置にくるようにリボンケージ254が回転させられると、ヘッド圧着部材257が図14において反時計回りに回動される。
リボンケージ254には、5対の巻取りリール255、供給リール256に対応して5つの位置決めピン254aが配設されている。位置決めピン254aは、供給リール256に隣接して配設されており、位置決め板257cの先端に形成された切り欠きに位置決めピン254aが嵌合することにより、リボンケージ254が回転方向に位置決めされる。これにより、サーマルヘッド260を退避位置に移動させたとしても、巻取りリール255、供給リール256を印画位置に正しく戻すことができる。
ヘッド圧着部材揺動軸257A及びプラテンローラ262は、フレーム11に配設されている。また、リボンケージ254はヘッド圧着部材257と位置決めピン254aを介してフレーム11に対して位置決めされる。したがって、プラテンローラ262とリボンケージ254とは、プラテンローラ262、フレーム11、ヘッド圧着部材揺動軸257A、ヘッド圧着部材257、位置決めピン254aの経路で位置決めされる。
また、プラテンローラ262とサーマルヘッド260とは、プラテンローラ262、プラテン軸262A、位置決めピン260dの経路で位置決めされる。このように、サーマルヘッド260とリボンケージ254とが、プラテンローラ262を基準として位置決めされるため、サーマルヘッド260とリボンケージ254、すなわち巻取りリール255、供給リール256との相対位置の精度が高くなる。したがって、インクリボンがたるむ、インクリボンにしわがよる等の不具合を防止し、良好な印画品質を維持することができる。
[プリント装置の制御系の説明]
次に、上記構成のプリント装置10の制御系について説明する。
図15はプリント装置10の要部構成を示すブロック図である。
プリント装置10は、システムコントローラ400、プログラム格納部402、バッファメモリ404、センサ部406、操作部408、通信インターフェース(通信I/F)410、制御部420、機構部430、ヘッドドライバ440、及びサーマルヘッド260から構成されている。
システムコントローラ400は、3Dプリント用のプログラムにより各部を統括制御する部分であり、CPU(中央処理装置)などが考えられる。ROMなどのコンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体で構成されたプログラム格納部402には、3Dプリント用のプログラムが格納され、システムコントローラ400はプログラム格納部402に格納されているプログラムを適宜読み出して実行する。
バッファメモリ404は、図示しないパーソナルコンピュータ(PC)から通信I/F410を介して受信した印画データを一時的に格納する部分である。
通信I/F410に接続されるPCは、3Dカメラ等により撮影された同一被写体を撮影したカラーの2視点画像(左右画像)を取得し、これらの左右画像から特徴が一致する特徴点のずれ量(画素間のずれ量(視差量))を画素毎に算出する。算出した視差量を3Dプリント用に調整した後、調整した視差量を補間して6視点画像を生成する。PCは、R、G、Bの6視点画像を、更にY、M、Cに色変換し、色変換された6視点画像から1枚分のY信号、M信号、及びC信号を生成する。これらのY信号、M信号、及びC信号が印画データとしてPCから通信I/F410を介してバッファメモリ404に格納される。
尚、上記PCの画像処理機能をプリント装置10に内蔵させるようにしてもよい。
センサ部406は、図13に示したフォトセンサ320A〜320Cや機構部430での各種部材の位置や回転角等を検出するセンサを含み、それぞれ検出した検出信号をシステムコントローラ400に出力する。
操作部408は電源スイッチ、プリント開始スイッチ、プリント枚数等を設定するスイッチ等から構成され、操作部408での操作による信号は、システムコントローラ400に入力される。
機構部430は、シート搬送機構431、ヘッド移動機構432、インクリボン駆動機構433、カセット退避機構434、及び圧板駆動機構435から構成されている。
シート搬送機構431は、図1等に示したフィードローラ190、搬送ローラ212、キャプスタン214、クランパ220、駆動モータ302等を含むクランパ搬送部230(図10)から構成されている。
また、制御部420は、シート搬送制御部421、ヘッド移動制御部422、インクリボン制御部423、及びカセット制御部424から構成されている。
システムコントローラ400は、印画シーケンスに応じて制御部420にそれぞれ制御信号を出力し、制御部420を介して機構部430を駆動制御する。
これにより、シート搬送制御部420は、シート供給カセット150内からレンチキュラーシート12を排出させるとともに、印画時にレンチキュラーシート12を上昇/下降させる搬送を行う。
ヘッド移動機構432は、図14で説明したようにリボンケージホルダ揺動軸252Aと同軸の回動軸を有するヘッド圧着部材257を回動させることにより、ヘッド圧着部材257の先端に配設されたサーマルヘッド260を、プラテンローラ262に当接させる印画位置と退避位置との間で移動させる。
インクリボン駆動機構433は、図14に示したリボン交換ガトリング機構250のリボンケージ254を回転させる機構と、リボンケージ254に配設された5対の巻取りリール255、供給リール256を駆動するリール駆動機構とから構成されている。
カセット退避機構434は、図2〜4で説明したようにソレノイド122等を備え、システムコントローラ400からの指令によりシート収納本体110を揺動させる。
圧板駆動機構435は、図4で説明したように圧板112を移動させるもので、システムコントローラ400からの指令により圧板112を移動させ、カセット内のレンチキュラーシート12に一定の押圧力が加わるようにしている。
サーマルヘッド260は、レンチキュラーシート12の搬送方向と直交する方向に多数の発熱素子が配列されている。システムコントローラ400は、バッファメモリ404に格納された印画データに基づいて、1ラインごとに印画データに対応する濃度となるようにヘッドドライバ440を介して各発熱素子の温度を制御し、インクリボンのインクを昇華させてレンチキュラーシート12に転写させ、続いてシート搬送機構431によりレンチキュラーシート12を1ライン分送り、以下同様にして次々と各ラインの熱転写を行わせる。
[プリント装置の動作の説明]
次に、プリント装置10の動作について説明する。
図16はプリント装置10の印画時の処理動作を示すフローチャートであり、以下、このフローチャートに従って説明する。この印画処理はシステムコントローラ400によって制御される。この印画処理をシステムコントローラ400に実行させるためのプログラムはプログラム格納部402に記憶されている。
[ステップS10]
PCから通信I/F410を介して3Dプリント用の印画データがバッファメモリ404に格納された後、操作部408のプリント開始スイッチがオンされると、印画が開始される。尚、印画開始等の指示は、通信I/F410に接続されたPC側から入出するようにしてもよい。
[ステップS12]
印画開始が指示されると、まず、システムコントローラ400はフィードローラ190を1回転させ、シート収納本体110からレンチキュラーシート12を一定量だけ送り出す。このとき、レンチキュラーシート12の先端は、搬送ローラ212に到達している。
[ステップS14]
システムコントローラ400は、キャプスタン214を搬送ローラ212に圧着させ、搬送ローラ212とキャプスタン214との間でレンチキュラーシート12を挟持させる。尚、事前にキャプスタン214を搬送ローラ212に圧着させておき、ステップS12でのレンチキュラーシート12の送り出し時に搬送ローラ212とキャプスタン214との間にレンチキュラーシート12を挿入させるようにしてもよい。
[ステップS16]
続いて、システムコントローラ400は、搬送ローラ212を一定時間だけ駆動し、レンチキュラーシート12をクランパ220まで搬送させる。このとき、クランパ220は、最下位の所定の位置で待機しており、レンチキュラーシート12の先端がクランパ220に当接すると、搬送ローラ212は空転する。また、レンチキュラーシート12をクランパ220に当接させることにより、レンチキュラーシート12の粗い位置決めが行われている。
[ステップS18]
システムコントローラ400は、カム等を駆動して一対のクランプ部材をばねの付勢力により閉じさせ、レンチキュラーシート12をクランパ220に挟持させる。続いて、図13で説明したようにアジマス調整を行う。
[ステップS20]
システムコントローラ400は、クランパ搬送部230を駆動してクランパ220に挟持されたレンチキュラーシート12を印画開始位置に搬送させる。印画開始位置は、例えば、レンチキュラーシート12の搬送後、図10に示したフォトセンサ320A〜320Cの出力信号が所定の値(例えば、ピーク値)に達した位置とすることができる。これにより、レンチキュラーシート12のレンズ位置と6視点画像の印画位置との相対位置の調
整が行われる。
[ステップS22]
システムコントローラ400は、ヘッド移動制御部422を介してヘッド移動機構432を制御し、Rインクリボンとレンチキュラーシート12を挟んでサーマルヘッド260をプラテンローラ262に圧接させる。
すなわち、システムコントローラ400は、ヘッド圧着部材257を図14において反時計回りに回動させ、位置決め板257cの先端に形成された孔に位置決めピン254aが嵌合させ、サーマルヘッド260を弾性部材258及び弾性部材259を介してプラテンローラ262に位置決めしたうえで圧接させる。これにより、サーマルヘッド260が印画位置に配置される。
[ステップS24]
システムコントローラ400は、図17に示すように、シート搬送制御部421を介して駆動モータ302を回転させてクランパ220を駆動し、レンチキュラーシート12を印画方向FWに進めていく。それと同期して、インクリボン駆動機構433がレンチキュラーシート12の移動速度よりも若干速い速度で巻取りリール255にインクリボンを巻き取りながら、サーマルヘッド260に通電して発熱させ、Rインクリボンからレンチキュラーシート12に受容層が転写される。
[ステップS25]
システムコントローラ400は、Rインクリボンによる受容層形成が終了したか否かを判断する。例えば、システムコントローラ400は、レンチキュラーシート12が印画開始位置から所定の量だけ送り出されたか否かに応じてこれを判断する。Yesの場合はS26に進み、Noの場合はS24に戻る。
[ステップS26]
システムコントローラ400は、受容層の転写終了後、ヘッド移動制御部422を介してヘッド移動機構432を制御し、サーマルヘッド260をインクリボンと干渉しない位置まで移動させる。
すなわちシステムコントローラ400は、ヘッド圧着部材257のみを図17において時計回りに回動させることにより、ヘッド圧着部材257の先端に配設されたサーマルヘッド260を印画位置から図18に示す退避位置に移動させる。
[ステップS27]
システムコントローラ400は、カセット制御部424を介して、カセット退避機構434を制御し、図18に示すようにシート収納本体110を初期位置から退避位置に移動させ、退避位置でシート収納本体110を保持させる。
すなわち、システムコントローラ400によりソレノイド122への通電がオフにされると、リンク機構124による付勢力がシート収納本体110から除去され、付勢ばね125により回転軸120を中心に反時計回りに回転する方向の力がシート収納本体110に付勢される。ピストン122aが下端に位置する場合には、リンク機構124が壁110aを押圧する力が除かれ、付勢ばね125の付勢力により、シート収納本体110が回転軸120を中心に図18において反時計回りに回動され、所定の角度αだけ回動した位置で保持される。
[ステップS28]
システムコントローラ400は、シート搬送制御部421を介して、シート搬送機構431を制御し、レンチキュラーシート12を印画方向FWとは反対の戻し方向REV、すなわちサーマルヘッド260側からシート収納本体110側に移動させることを開始し、レンチキュラーシート12が印刷開始位置(頭出し位置)に達するまで移動を継続する。ステップS27でシート収納本体110が所定の角度だけ傾動されているため、レンチキュラーシート12がシート収納本体110と干渉することがない。
またシステムコントローラ400は、インクリボン制御部423を介してインクリボン駆動機構433を制御し、最初にセットされる色のインクリボンの位置までリボン交換ガトリング機構250を回転させる。ここでは、最初の色はYとするが、その他の色であってもよい。また、Y以外の色のインクリボンが採用されてもよい。
[ステップS29]
システムコントローラ400は、ステップS22と同様の方法によりサーマルヘッド260を印画位置に配置する。ヘッド移動機構432により、交換後のインクリボンとレンチキュラーシート12を挟んでサーマルヘッド260がプラテンローラ262に圧接された後、駆動モータ302を回転させ、クランパ220を駆動しレンチキュラーシート12を印画方向FWに進めていく。それと同期して、インクリボン駆動機構433がレンチキュラーシート12の移動速度よりも若干速い速度で巻取りリール255にインクリボンを巻き取りながら、サーマルヘッド260に通電して発熱させ、カラーインクリボンからレンチキュラーシート12の印画面に加熱した色材が転写され画像が形成される。
[ステップS30]
システムコントローラ400は、セットされたカラーインクリボンによる全ての色の転写が終了したか否かを判断する。これは上記ステップS25と同様にして判断できる。Yesの場合はS32、Noの場合はS31に進む。
[ステップS31]
システムコントローラ400は、シート搬送制御部421を介してシート搬送機構431を制御し、レンチキュラーシート12を印刷開始位置(頭出し位置)に達するまで戻し方向REVに移動させる。
またシステムコントローラ400は、インクリボン制御部423を介してインクリボン駆動機構433を制御し、次にセットされる色のインクリボンの位置までリボン交換ガトリング機構250を回転させる。ここでは、Y,M,C,Wの順にリボン交換ガトリング機構250を回転させるものとするが、その他の順序であってもよい。また、Y,M,C,W以外の色のインクリボンが採用されてもよい。シート頭出しとインクリボンの交換後、S29に戻って、次にセットされたインクリボンによるレンチキュラーシート12の印画面への色の転写が行われる。以下同様、セットされた色のインクリボンによる印画、当該インクリボンによる印画終了の判断、当該印画終了の判断に応じたインクリボン交換およびレンチキュラーシート12の頭出しが、全ての色のインクリボンについて行われる。
[ステップS32]
システムコントローラ400は、全色印画後、レンチキュラーシート12の前後端部の一定領域を図示しないカッタでカットし、図示しない排出機構によりレンチキュラーシート12を排出して印画動作終了となる。排出機構は任意である。
[ステップS33]
システムコントローラ400は、全てのシートについての印画が終了したか否かを判断する。Yesの場合、本処理を終了する。Noの場合、システムコントローラ400は、カセット制御部424を介してカセット退避機構434を制御し、シート収納本体110に収納されたシート供給カセット150を鉛直位置に保持する。
すなわち、システムコントローラ400によりソレノイド122への通電がオンにされると、リンク機構124により回転軸120を中心に時計回りに回転する方向の力がシート収納本体110に付勢される。シート収納本体110は、付勢ばね125の付勢力に抗して、回転軸120を中心に時計回りに所定の角度α(例えば30°)だけ回動し、シート収納本体110は搬送路50上の鉛直位置(初期位置)にて停止する。これにより、図1と同様、シート収納本体110は、鉛直位置に復帰する。
したがって、レンチキュラーシート12の最初の印画動作(図17)、戻し動作(図18)、次の印画動作(図17)にわたってレンチキュラーシート12をストレートパスで搬送することができるとともに、レンチキュラーシート12の搬送経路の短縮化(装置の小型化)が図られている。
そしてS10に戻って次のシートの給送が開始される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、リボンケージホルダがメンテナンス位置へ回動するのに伴い、ヘッド圧着部材と共にサーマルヘッドが回動され、サーマルヘッドの発熱素子が外部から触れられるように露出されるため、サーマルヘッドの掃除や交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。したがって、良好な印画品質が維持される。
また、本実施の形態によれば、サーマルヘッドを印画位置と退避位置とに移動させるヘッド圧着部材の回動軸と、リボンケージホルダの回動軸とを共通にしたため、簡単かつ省スペース化された構造でサーマルヘッドを印画位置と退避位置との間で移動させることができる。
また、本実施の形態によれば、サーマルヘッドを退避位置から印画位置に戻す時には、各巻取りリール及び供給リールの組に対応して供給リールに隣接して配設された位置決めピンに対してヘッド圧着部材が位置決めされるため、サーマルヘッドを印画位置に正しく戻すことができる。また、リボンケージ(巻取りリール、供給リール)とサーマルヘッドとを相対的に高い精度で位置決めすることができるため、インクリボンがたるむ、インクリボンにしわがよる等の不具合を防止し、良好な印画品質を維持することができる。
なお、本実施の形態では、レンチキュラーシート12を鉛直方向に搬送して印画する縦置きの3Dプリンタを例に説明したが、水平方向にレンチキュラーシート12を往復搬送して印画する横置きの3Dプリンタでもよい。
また、本実施の形態では、弾性部材259を用いて位置決めピン260dをプラテン軸262Aに圧接させて、サーマルヘッド260をプラテンローラ262に対して位置決めしたが、サーマルヘッド260とプラテンローラ262との位置決めの方法はこれに限られない。例えば、位置決めピン260dをプラテンローラ262に圧接させてもよいし、ヘッド本体260aに長孔を形成し、長孔内部にプラテン軸262Aを回転自在に挿入させてもよい。
また、本実施の形態では、蓋11a、11bを上下に開き、リボンケージホルダ252をリボンケージホルダ揺動軸252Aを中心にして印画位置から時計回りに略90°回転させることにより、サーマルヘッド260の発熱素子260bを露出させ、メンテナンスを行ったが、サーマルヘッドのメンテナンスのためには、リボンケージホルダ252がリボンケージホルダ揺動軸252Aを中心に回動自在であればよく、蓋11a、11bを上下に開いてサーマルヘッド260を露出させることは必須ではない。
リボンケージホルダが回動自在でない場合には、プラテンローラ、キャプスタン等サーマルヘッドの外側に配設された部材が邪魔になり、装置を分解等することなくサーマルヘッドの発熱素子を清掃することはできない。しかしながら、リボンケージホルダを回転自在にすることにより、プラテンローラ、キャプスタン等の他の部材からサーマルヘッドを離間し、サーマルヘッドの清掃等が可能となる。
本発明の適用範囲はインクリボンを使用した昇華型プリンタに限定されず、印画媒体もレンズ面と印画面を有するレンチキュラーシートに限定されない。例えば、フォトセンサでレンズ位置検出を行わずにアジマス調整可能であれば、印画面のみを有しレンズ面の張り合わされていない媒体に印画されてもよい。本発明は、印刷媒体を搬送路に沿って往復させながら印刷媒体に画像を形成する各種方式(例えばサーモオートクローム(TA)プリンタ、インクジェットプリンタ、溶融型熱転写方式、銀塩写真(熱現像転写)方式、ゼロインク(登録商標))にも適用されうる。