以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、ガイドワイヤの構成例を示す縦断面図、図2は、図1に示すガイドワイヤにおける第1ワイヤと第2ワイヤとを接続する手順を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図1中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる(後述する図5〜7についても同様)。
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテルに挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、螺旋状のコイル4とを有している。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
第1ワイヤ2は、弾性を有する線材である。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
図示の構成では、第1ワイヤ2は、その先端側の部分に、先端方向へ向かって外径が漸減する外径漸減部22を有している。これにより、第1ワイヤ2の外径漸減部22では、剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
なお、図示の構成では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第1ワイヤ2のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
図示の構成では、外径漸減部22は、その外径が先端方向に向かってほぼ一定の減少率で連続的に減少するテーパ状をなしている。換言すれば、外径漸減部22のテーパ角度は、長手方向に沿ってほぼ一定になっている。これにより、外径漸減部22の長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。なお、このような構成と異なり、外径漸減部22の先端方向に向かっての外径の減少率(外径漸減部22のテーパ角度)は、長手方向に沿って変化していても良く、例えば、外径の減少率が比較的大きい個所と比較的小さい個所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。なお、その場合、外径漸減部22の先端方向に向かっての外径の減少率がゼロになる個所があってもよい。
第1ワイヤ2の基端側の部分は、外径が長手方向に沿ってほぼ一定になっている。なお、図示と異なり、第1ワイヤ2は、ほぼ全長に渡り外径が先端方向に向かって漸減するようなもの、すなわち、そのほぼ全体が外径漸減部22になっているようなものでもよい。
第1ワイヤ2の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であるのが好ましく、超弾性合金であるのがより好ましい。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線がいずれの形状のものも含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
第1ワイヤ2の基端部には、第2ワイヤ3の先端部が連結(接続)されている。第2ワイヤ3は、弾性を有する線材である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましい。
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されている。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた挿入操作性が得られる。
また、第1ワイヤおよび/または第2ワイヤは、異なる材料にて内・外層を形成する等、いわゆる複合材料にて構成され得る。このような場合においても、第1ワイヤよりも第2ワイヤの剛性のほうが高いことが好ましい。
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等のSUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができる。
この中でも、コバルト系合金は、ワイヤとしたときの弾性率が高く、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成された第2ワイヤ3は、特に優れたトルク伝達性を有し、座屈等の問題を極めて生じ難い。コバルト系合金としては、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものを用いてもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金を用いるのがより好ましい。このような組成の合金を、第2ワイヤ3の構成材料として用いることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、常温における変形においても可塑性を有するため、例えば、使用時等に所望の形状に容易に変形することができる。また、このような組成の合金は、弾性係数が高く、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度であることにより、座屈の発生を十分に防止しつつ、小径化することができ、所定部位に挿入するのに十分な柔軟性と剛性を備えるものとすることができる。
Co−Ni−Cr系合金としては、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等が好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種を含むことにより、第2ワイヤ3の強度のさらなる向上等を図ることができる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素を含む場合、その(置換元素全体の)含有量は30wt%以下であるのが好ましい。
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換してもよい。例えば、Niの一部をMnで置換してもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等を図ることができる。また、Crの一部をMoおよび/またはWで置換してもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等を図ることができる。Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金が特に好ましい。
Co−Ni−Cr系合金の具体的な組成としては、例えば、<1>40wt%Co−22wt%Ni−25wt%Cr−2wt%Mn−0.17wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、<2>40wt%Co−15wt%Ni−20wt%Cr−2wt%Mn−7wt%Mo−0.15wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、<3>42wt%Co−13wt%Ni−20wt%Cr−1.6wt%Mn−2wt%Mo−2.8wt%W−0.2wt%C−0.04wt%Be−残部Fe、<4>45wt%Co−21wt%Ni−18wt%Cr−1wt%Mn−4wt%Mo−1wt%Ti−0.02wt%C−0.3wt%Be−残部Fe、<5>34wt%Co−21wt%Ni−14wt%Cr−0.5wt%Mn−6wt%Mo−2.5wt%Nb−0.5wt%Ta−残部Fe等が挙げられる。本発明でいうCo−Ni−Cr系合金とはこれらの合金を包含する概念である。
また、第2ワイヤ3の構成材料として、ステンレス鋼を用いた場合、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
また、本発明では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを異種の合金で構成することが好ましく、また、第1ワイヤ2が、第2ワイヤ3の構成材料より弾性率が小さい材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1は、先端側の部分が優れた柔軟性を有するとともに、基端側の部分が剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)に富んだものとなる。その結果、ガイドワイヤ1は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管への追従性、安全性が向上する。
また、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との具体的な組合せとしては、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成し、第2ワイヤ3をCo−Ni−Cr系合金またはステンレス鋼で構成することが特に好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
また、第1ワイヤ2を構成する超弾性合金としてNi−Ti系合金を用いることが、先端側の柔軟性と復元性の点から好ましい。
コイル4は、線材(細線)を螺旋状に巻回してなる部材であり、第1ワイヤ2の先端側の部分を覆うように設置されている。図示の構成では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。なお、図示の構成では、コイル4は、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士の間にやや隙間が空いているが、図示と異なり、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士が隙間なく密に配置されていてもよい。
コイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成しても良い。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成しても良い。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜500mm程度であるのが好ましい。
コイル4の基端部および先端部は、それぞれ、固定材料11および12により第1ワイヤ2に固定されている。また、コイル4の中間部(先端寄りの位置)は、固定材料13により第1ワイヤ2に固定されている。固定材料11、12および13は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料11、12および13は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管内壁の損傷を防止するために、固定材料12の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
図示の構成では、このようなコイル4が設置されていることにより、第1ワイヤ2は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
なお、図示の構成の場合、コイル4は、線材の横断面が円形のものを用いているが、これに限らず、線材の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
このガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3とは、溶接により互いに連結(固定)されている。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部(接続部)14は、高い結合強度(接合強度)が得られ、よって、ガイドワイヤ1は、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力が確実に第1ワイヤ2に伝達される。
図示の構成では、第1ワイヤ2の第2ワイヤ3に対する接続端面21と、第2ワイヤ3の第1ワイヤ2に対する接続端面31は、それぞれ、両ワイヤの軸方向(長手方向)にほぼ垂直な平面になっている。これにより、接続端面21、31を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1の製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
なお、図示の構成と異なり、接続端面21、31は、両ワイヤの軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との溶接の方法としては、特に限定されず、例えば、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。これにより、溶接部14は、より高い結合強度が得られる。
このようなガイドワイヤ1では、第2ワイヤ3は、溶接部14付近に、その横断面積が第1ワイヤ2の基端部23の横断面積より小さい小横断面積部32を有している。換言すれば、第2ワイヤ3は、接続端面31から、その基端側の所定の位置までの部分(小横断面積部32)の横断面積が第1ワイヤ2の基端部23の横断面積より小さくなっている。本実施形態では、小横断面積部32は、その外径が第1ワイヤ2の基端部23の外径より小さくなっていることにより、その横断面積が基端部23の横断面積より小さくなっている。すなわち、接続端面31の面積は、接続端面21の面積より小さい。
前述したように、第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2より弾性率が大きい材料で構成されているので、仮に第2ワイヤ3の先端部の外径が第1ワイヤ2の基端部23の外径と同じであった場合には、溶接部14を挟んでガイドワイヤ1の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が急激に変化する。これに対し、本発明では、第2ワイヤ3の先端部に小横断面積部32を設け、小横断面積部32での剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を小さくした(低下させた)ことにより、溶接部14を含むその付近の部位での剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の長手方向に沿った変化を緩やか(滑らか)にすることができ、ガイドワイヤ1は、優れた操作性が得られる。
また、図示の構成では、小横断面積部32は、小横断面積部32のその外径が先端方向へ向かって漸減する部分、すなわち、その横断面積が先端方向へ向かって漸減する部分を有している。これにより、小横断面積部32の基端から小横断面積部32の先端までの間で剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって漸減させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の長手方向に沿った変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
なお、図示の構成では、小横断面積部32は、その全長に渡り外径(横断面積)が先端方向へ向かって漸減するテーパ状をなしているが、小横断面積部32は、例えばその先端部に外径(横断面積)が一定の部分があってもよく、さらには、この外径が一定の部分の先端側に、外径が溶接部14に向かって漸増する部分があってもよく、これらの場合でも、上記と同様の効果が得られる。これらの構成の具体例については、後に詳述する。
小横断面積部32の長さ(図1中のLで示す長さ)は、特に限定されないが、3〜1000mm程度であるのが好ましく、3〜300mm程度であるのがより好ましい。Lが前記範囲にあると、溶接部14を含むその付近の部位において、長手方向に沿った剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
また、小横断面積部32は、第2ワイヤ3の先端(接続端面31)における曲げ剛性が、第1ワイヤ2の基端(接続端面21)における曲げ剛性にほぼ等しくなるように形成されているのが好ましい。これにより、溶接部14を含むその付近の部位において、長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。なお、第2ワイヤ3の先端における曲げ剛性は、接続端面31の断面2次モーメント(接続端面31の形状、寸法のみから定まる)をI2とし、第2ワイヤ3の構成材料のヤング率をE2としたとき、E2I2で得られ、第1ワイヤ2の基端における曲げ剛性は、接続端面21の断面2次モーメント(接続端面21の形状、寸法のみから定まる)をI1とし、第1ワイヤ2の構成材料のヤング率をE1としたとき、E1I1で得られる。
また、図示の構成のガイドワイヤ1は、溶接部14の外周に形成される段差を埋める段差埋め部材6を有している。これにより、第1ワイヤ2の基端の外径より第2ワイヤ3の先端の外径が小さいことにより形成される溶接部14の外周の段差が解消されるので、この段差によるガイドワイヤ1の摺動性の低下を防止することができる。
図示の構成では、段差埋め部材6は、小横断面積部32の外周を覆い、その外径が長手方向に沿ってほぼ一定であるとともにその内径が先端方向に向かって漸減していることにより、溶接部14および小横断面積部32を含むその付近におけるガイドワイヤ1の外径を長手方向に沿ってほぼ一定にするような形状をなしている。これにより、段差がガイドワイヤ1の摺動性に与える影響をより確実に解消することができる。
段差埋め部材6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料を用いることができるが、ガイドワイヤ1の剛性への寄与が少ないように、比較的柔軟な材料(例えば、半田、プラスティック、ろう等)であるのが好ましい。また、段差埋め部材6の形態は、図示の構成に限らず、例えば、コイル状の部材であってもよい。
なお、図示の形態では、溶接部14は、コイル4の基端よりも基端側に位置しているが、図示と異なり、溶接部14がコイル4の基端よりも先端側に位置していても良い。
また、第1ワイヤの剛性が第2ワイヤの剛性より弱い場合、図1中の接続端面31、21の大きさが逆の場合もある。
図5は、本発明のガイドワイヤの好適な実施形態を示す縦断面図である。以下、この図を参照して本実施形態のガイドワイヤについて説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図5に示すように、小横断面積部32は、その外径が先端方向へ向かって漸減する第1の部分32Aと、第1の部分32Aより先端側に位置し、その外径が先端方向へ向かって漸増する第2の部分32Bとを有している。第1の部分32Aと第2の部分32Bとの境界部の外周面は、段差のない連続した湾曲面(なだらかな面)を構成している。このような構成としたことにより、当該境界部への応力集中が防止または緩和され、ねじれやキンクがより確実に防止される(耐キンク性が向上する)。
第2の部分32Bの最大外径は、その先端の接続端面31にあり、この最大外径は、第1ワイヤ2の基端(接続端面21)の外径にほぼ等しい。すなわち、図5に示す小横断面積部32では、図1に示す構成に比べ、溶接部14の溶接面の面積をより大きくすることができ、溶接強度を向上することができる。その結果、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中や強度不足による溶接部14の破損をより確実に防止することができる。
また、このような小横断面積部32において、第1の部分32Aの長さをLA、第2の部分32Bの長さをLBとしたとき、LAはLBより大きい。すなわち、第1の部分32Aのテーパ角度は、第2の部分32Bのテーパ角度より小さい。
具体的には、第1の部分32Aの長さLAは、第2の部分32Bの長さLBの0.1〜1000倍程度であるのが好ましく、1.0〜1000倍程度であるのがより好ましく、1.0〜50倍程度であるのがさらに好ましい。このような条件とすることにより、溶接部14への応力集中を抑制し、スムーズな剛性移行を実現できる。
なお、図5に示す小横断面積部32においても、小横断面積部32の外周を前述の段差埋め部材6で覆ってもよく、これにより、前記と同様の効果が得られる。
図6は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す縦断面図である。以下、この図を参照して本実施形態のガイドワイヤについて説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態のガイドワイヤ1”が有する小横断面積部32は、第1の部分32Aと第2の部分32Bとの間に、その外径がほぼ一定の第3の部分32Cを有し、それ以外は、前記図5に示す構成と同様である。この第3の部分32Cの外径は、小横断面積部32の中で、最も小径の部分となる。
この図6に示す小横断面積部32も、前記図5に示す小横断面積部32と同様の作用・効果を有するが、特に、第3の部分32Cを設けたことにより、小横断面積部32中での最小径部分が一定の長さ(下記LC)連続して存在することとなるため、図5に示す構成に比べ、小横断面積部32中の最小径部分への応力集中が緩和または分散され、その結果、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、小横断面積部32中の最小径部分のねじれ、キンク、破損等をより確実に防止することができる。
なお、第3の部分32Cは、第1ワイヤ2の基端部23付近とほぼ同じ剛性を有することが好ましい。また、第3の部分32Cの外径は、第1ワイヤ2の基端部23付近とほぼ同じ剛性を有するような外径であるので、小横断面積部32から第1ワイヤ2の基端部23へスムーズな剛性の移行が実現される。
第1の部分32Aと第3の部分32Cとの境界部の外周面および第3の部分32Cと第2の部分32Bとの境界部の外周面は、それぞれ、段差のない連続した湾曲面(なだらかな面)を構成している。これにより、前記と同様の効果が得られる。
第1の部分32Aの長さLAと、第2の部分32Bの長さLBの好ましい関係は、前記と同様である。また、これらと第3の部分32Cの長さLCとの関係は、特に限定されないが、LB≦LC≦LAまたはLB≦LA≦LCとするのが好ましい。
さらに、本実施形態において、第1の部分32Aの長さLAは、第2の部分32Bの長さLBの0.1〜1000倍程度であるのが好ましく、0.1〜10倍程度であるのがより好ましい。このような条件とすることにより、溶接部14への応力集中を抑制し、スムーズな剛性移行を実現できる。
また、小横断面積部32の強度を維持しつつ、最小径部分への応力集中の緩和または分散効果を十分に得るために、第3の部分32Cの長さLCは、0.1〜200mm程度であるのが好ましく、1〜50mm程度であるのがより好ましい。
なお、図6に示す小横断面積部32においても、小横断面積部32の外周を前述の段差埋め部材6で覆ってもよく、これにより、前記と同様の効果が得られる。
以下、図2を参照して、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを突き合わせ抵抗溶接の一例であるバットシーム溶接により接合する場合の手順について説明する。同図には、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とをバットシーム溶接により接合する場合の手順<1>〜<3>が示されている。
手順<1>では、図示しないバット溶接機に固定(装着)された第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが示される。
手順<2>にて、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、バット溶接機によって、所定の電圧を印加されながら第1ワイヤ2の基端側の接続端面21と第2ワイヤ3の先端側の接続端面31とが加圧接触される。この加圧接触により、接触部分には溶融層が形成され、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは強固に接続される。
手順<3>にて、加圧接触することによって変形された接続箇所(溶接部14)の突出部分を削除する。次いで、第2ワイヤ3の溶接部14の基端側の部分、すなわち第2ワイヤ3の先端部を研磨して、例えば図1、図5または図6に示すような所望の形状の小横断面積部32、すなわち外径が先端方向に向かって漸減するまたはこのような部分を有する小横断面積部32を形成する。
なお、予め第2ワイヤ3の先端部を研磨して所望の形状の(外径が先端方向に向かって漸減するまたはこのような部分を有する)小横断面積部32を形成したものを、第1ワイヤ2と加圧接触させて溶接しても良い。
図3および図4は、それぞれ、本発明のガイドワイヤ1”をPTCA術に用いた場合における使用状態を示す図である。
図3および図4中、符号40は大動脈弓、符号50は心臓の右冠状動脈、符号60は右冠状動脈開口部、符号70は血管狭窄部である。また、符号30は大腿動脈からガイドワイヤ1”を確実に右冠状動脈に導くためのガイディングカテーテル、符号20はその先端部分に拡張・収縮自在なバルーン201を有する狭窄部拡張用のバルーンカテーテルである。
図3に示すように、ガイドワイヤ1”の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入する。さらに、ガイドワイヤ1”を進め、先端から右冠状動脈内に挿入し、先端が血管狭窄部70を超えた位置で停止する。これにより、バルーンカテーテル20の通路が確保される。なお、このとき、ガイドワイヤ1”の溶接部14は、大動脈弓40の基部付近(生体内)に位置している。
次に、図4に示すように、ガイドワイヤ1”の基端側から挿通されたバルーンカテーテル20の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、さらにガイドワイヤ1”に沿って進め、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入し、バルーンが血管狭窄部70の位置に到達したところで停止する。
次に、バルーンカテーテル20の基端側からバルーン拡張用の流体を注入して、バルーン201を拡張させ、血管狭窄部70を拡張する。このようにすることによって、血管狭窄部70の血管に付着堆積しているコレステロール等の堆積物は物理的に押し広げられ、血流阻害が解消できる。
図7は、ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。以下、この図を参照して本構成例のガイドワイヤについて説明するが、前述した実施形態等との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
本構成例のガイドワイヤ1’では、第1ワイヤ2が、外径漸減部22と該外径漸減部22より基端側に設けられた外径漸減部24とを有している。このように、第1ワイヤ2には、複数の部位に外径漸減部が形成されていてもよい。
また、本構成例では、溶接部14に、外周方向に突出する突出部15が形成されている。このような突出部15が形成されることにより、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との接合面積が大きくなり、これらの接合強度は、特に高いものとなる。これにより、ガイドワイヤ1’は、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力がより確実に第1ワイヤ2に伝達される。
また、突出部15が形成されることにより、例えば、X線透視下で、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部14をより容易に視認することが可能となる。その結果、X線透視像を確認することにより、血管内などにおけるガイドワイヤ1’、カテーテルの進行状況を容易かつ確実に把握することができ、施術時間の短縮、安全性の向上に寄与することができる。
また、上述したように、第1ワイヤ2、第2ワイヤ3は、通常、異なる弾性率を有する材料で構成されている。このため、突出部15が設けられることにより、術者が、ガイドワイヤ1’の弾性率が比較的大きく変化する部位を容易かつ確実に認識することが可能となる。その結果、ガイドワイヤ1’は、操作性に優れたものとなり、施術時間の短縮、安全性の向上に寄与することができる。
突出部15の高さは、第1ワイヤ2や第2ワイヤ3の外径によるので特に限定されないが、0.001〜0.3mmであるのが好ましく、0.005〜0.05mmであるのがより好ましい。突出部15の高さが前記下限値未満であると、第1ワイヤ2、第2ワイヤ3の構成材料などによっては、前述した効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、突出部15の高さが前記上限値を超えると、バルーンカテーテルに挿入するルーメンの内径が決まっているので、突出部15の高さと比較して、基端側の第2ワイヤ3の外径を細くせざるを得なくなり、第2ワイヤ3の物性を十分に発揮するのが困難になる場合がある。
図7に示す構成では、突出部15は、その縦断面における一方側(図7中上側)およびその反対側(図7中下側)の輪郭形状がそれぞれ略円弧状をなし、突出部15の最大外径部に溶接部14が位置している。これにより、溶接部14の溶接面の面積を大きくとることができ、より高い結合強度(溶接強度)が得られるという利点がある。
ただし、本発明では、突出部15の形状および突出部15に対する溶接部14の位置はこれに限定されないことは、言うまでもない。例えば、突出部15は、縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ、例えば台形、三角形等の非円形(非円弧形状)でもよい。また、突出部15は、溶接部14の溶接面(接続端面21、31)を境に基端側と先端側とが非対称の形状をなしていてもよい。また、突出部15は、突出部15に対する溶接部14の溶接面の軸方向の位置が、図7に示すような中央部ではなく、基端側(第2ワイヤ3側)あるいは先端側(第1ワイヤ2側)に偏った位置にあるものでもよい。このような構成とすることにより、溶接部14への応力集中を防止または緩和することができ、よって、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中による溶接部14の破損をより確実に防止することができる。
また、本構成例のガイドワイヤ1’では、その外表面(外周面)側に、被覆層7を有している。このように、ガイドワイヤ1’、1”や図1に示すガイドワイヤ1は、その外表面(外周面)の全部または一部を覆う被覆層を有するものであってもよい。このような被覆層7は、種々の目的で形成することができるが、その一例として、ガイドワイヤ1’の摩擦(摺動摩擦)を低減し、摺動性を向上させることによってガイドワイヤ1’の操作性を向上させることがある。
このような目的のためには、被覆層7は、摩擦を低減し得る材料で構成されているのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1’とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1’の操作性がより良好なものとなる。また、ガイドワイヤ1’の摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1’をカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1’のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に溶接部付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーンゴム、その他各種のエラストマー(例えば、ポリアミド系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー)またはこれらの複合材料が挙げられるが、そのなかでも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が好ましく、PTFEがより好ましい。
また、摩擦を低減し得る材料の他の好ましい例としては、親水性材料または疎水性材料が挙げられる。これらのうちでも特に、親水性材料が好ましい。
この親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1’とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1’の摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1’の操作性がより良好なものとなる。
また、このような被覆層7が設けられることにより、前述した段差埋め部材6を省略または簡略化することもできる。すなわち、被覆層7は、溶接部14付近の段差を覆い隠すように形成されるので、段差埋め部材6を省略または簡略化した場合であっても、前記段差によるガイドワイヤ1’の摺動性の低下を十分に防止することができる。
このような被覆層7の形成箇所は、ガイドワイヤ1’の全長でも、長手方向の一部でもよいが、溶接部14および小横断面積部32を覆うように、すなわち溶接部14および小横断面積部32を含む箇所に形成されているのが好ましい。
被覆層7は、溶接部14および小横断面積部32を含む部位の付近におけるガイドワイヤ1’の外径が、長手方向に沿ってほぼ一定となるよう形成されている。すなわち、被覆層7は、小横断面積部32および突出部15を被覆して、実質的に均一な外径になっている。なお、使用上支障のないようななだらかな外径の変化も「実質的に均一な外径」に含むものとする。
被覆層7の厚さは、特に限定されないが、通常は、厚さ(平均)が1〜20μm程度であるのが好ましく、2〜10μm程度であるのがより好ましい。被覆層7の厚さが薄すぎると、被覆層7の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、被覆層7の剥離が生じるおそれがあり、また、被覆層7の厚さが厚すぎると、ワイヤの物性を阻害することがあり、また被覆層7の剥離が生じるおそれがある。
なお、本発明では、ガイドワイヤ本体(第1ワイヤ2、第2ワイヤ3、コイル4等)の外周面(表面)に、被覆層7の密着性を向上するための処理(化学処理、熱処理等)を施したり、被覆層7の密着性を向上し得る中間層を設けたりすることもできる。
また、被覆層7は、各部位でほぼ一定の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、被覆層7は、少なくともコイル4を被覆する領域(第1被覆層)と、該領域より基端側の領域(第2被覆層)とで、構成材料が異なるものであってもよい。また、第1被覆層、第2被覆層は、図示のように、両者が長手方向に連続して形成されたものであってもよいが、第1被覆層の基端と第2被覆層の先端とが離間していてもよく、あるいは、第1被覆層と第2被覆層とが部分的に重なっていてもよい。
図8は、ガイドワイヤにおける第2ワイヤの小横断面積部の他の構成例を示す斜視図である。
図8(a)に示す第2ワイヤ3の小横断面積部32は、その外径が縮径しておらず、小横断面積部32より基端側の部分と外径が同じになっている。この小横断面積部32は、中空部321を有しており、この中空部321の内径は、先端方向に向かって漸増している。すなわち、中空部321は、円錐(または円錐台)のような形状になっている。このような中空部321が形成されていることにより、小横断面積部32は、第1ワイヤ2の基端部23より横断面積が小さいと共に、先端方向に向かって横断面積が漸減しており、その剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)も先端方向に向かって漸減している。本発明では、小横断面積部32がこの図8(a)に示す形態のような場合でも、前述した実施形態と同様の効果が得られる。さらに、中空部321を形成し、外径を変化させないで横断面積を小さくしたことにより、段差埋め部材6を設けなくても、第1ワイヤ2の基端部23との溶接部14に段差が生じないという利点もある。なお、中空部321は、角錐(または角錐台)のような形状であっても良い。また、この場合、第2ワイヤ3の中空部321内に第1ワイヤ2の基端部23の一部が挿入するように溶接されることにより、溶接部14前後の剛性がより滑らかに変化するので、耐キンク性がより向上する。
図8(b)に示す第2ワイヤ3の小横断面積部32は、角錐台(6角錐台)のような形状になっており、その横断面の多角形(正6角形)の大きさが先端方向に向かって徐々に小さくなることにより、先端方向に向かって横断面積が漸減しており、その剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)も先端方向に向かって漸減している。小横断面積部32がこの図8(b)に示す形態のような場合でも、前述した実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明のガイドワイヤを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。