JP4375951B2 - ガイドワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガイドワイヤ、特に血管のような体腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガイドワイヤは、例えばPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するのに使用される。PTCA術に用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端をバルーンカテーテルの先端より突出させた状態にて、バルーンカテーテルと共に目的部位である血管狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
【0003】
血管は、複雑に湾曲しており、カテーテルを血管に挿入する際に用いるガイドワイヤには、適度の可撓性、基端部における操作を先端側に伝達するための押し込み性およびトルク伝達性(これらを総称して「操作性」という)、さらには耐キンク性(耐折れ曲がり性)等が要求される。それらの特性の内、適度の柔軟性を得るための構造として、ガイドワイヤの細い先端芯材の回りに曲げに対する柔軟性を有する金属コイルを備えたものや、柔軟性・復元性を付与するため、ガイドワイヤの芯材にNi−Ti等の超弾性線を用いたものがある。
【0004】
従来のガイドワイヤは、芯材が実質的に1種の材料から構成されており、ガイドワイヤの操作性を高めるために、比較的弾性率の高い材料が用いられ、その影響としてガイドワイヤ先端部の柔軟性は失われている。また、ガイドワイヤの先端部の柔軟性を得るために、比較的弾性率の低い材料を用いると、ガイドワイヤの基端側における操作性が失われる。このように、必要とされる柔軟性および操作性を、1種の芯材で満たすことは困難とされていた。
【0005】
このような欠点を改良するため、例えば芯材にNi−Ti合金線を用い、その先端側と基端側とに異なった条件で熱処理を施し、先端部の柔軟性を高め、基端側の剛性を高めたガイドワイヤが提案されている。しかし、このような熱処理による柔軟性の制御には限界があり、先端部では十分な柔軟性が得られても、基端側では必ずしも満足する剛性が得られないことがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ワイヤ長手方向の剛性の変化が緩やかであり、操作性および耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。また、下記(7)〜(9)であるのが好ましい。
【0008】
(1) 先端側に配置された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤと、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きく、かつ、前記第2ワイヤの構成材料より弾性率が小さい材料で構成された線状の第3ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤの端部同士、および、前記第3ワイヤと前記第2ワイヤの端部同士は、それぞれ、溶接により連結されており、前記各ワイヤ同士の接続端面は、いずれも、前記ガイドワイヤの軸方向に対しほぼ垂直になっており、
前記第1ワイヤは、超弾性合金で構成され、前記第3ワイヤは、Niを主とするNi系合金で構成されていることを特徴とするガイドワイヤ。
【0009】
(2) 前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金で構成されている上記(1)に記載のガイドワイヤ。
【0010】
(3) 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部の途中に位置する上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0011】
(4) 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記第3ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部より基端側に位置する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0012】
(5) 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記外径漸減部の基端は、前記第2ワイヤの長手方向の途中に位置する上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0013】
(6) 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記外径漸減部の基端は、前記第1ワイヤの長手方向の途中に位置する上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0014】
(7) 各前記ワイヤ同士の接続端面は、いずれも、前記ガイドワイヤの軸方向に対しほぼ垂直になっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0015】
(8) 前記溶接は、突き合わせ抵抗溶接によるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0016】
(9) 各前記ワイヤ同士の溶接部が、いずれも生体内の位置となるように用いられる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のガイドワイヤの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すガイドワイヤにおける各ワイヤ同士を接続する手順を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図1中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる。
【0020】
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテルに挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、これらの間に配置された第3ワイヤ5と、第1ワイヤ2の先端側に配置された第4ワイヤ6と、螺旋状のコイル4とを有している。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
【0021】
第1ワイヤ2は、弾性を有する線材である。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0022】
本実施形態では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が漸減している。これにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
【0023】
なお、図示の構成では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第1ワイヤ2のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
【0024】
また、第1ワイヤ2は、図示と異なり、その一部に外径が長手方向に沿って一定の部分があってもよい。例えば、第1ワイヤ2は、先端方向へ向かって外径が漸減するテーパ状のテーパ部が長手方向に沿って複数個所に形成され、これらのテーパ部とテーパ部との間に外径が長手方向に沿って一定の部分が形成されているようなものでもよい。このような場合でも、前記と同様の効果が得られる。また、第1ワイヤ2は、図示と異なり、その先端側の部分の外径が長手方向に沿って一定のものでもよい。
【0025】
第1ワイヤ2の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む。)であるのが好ましい。より好ましくは超弾性合金である。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0026】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0027】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
【0028】
第3ワイヤ5の基端側には、第2ワイヤ3が配置(設置)されている。第2ワイヤ3は、弾性を有する線材である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましい。
【0029】
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されている。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた挿入操作性が得られる。
【0030】
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等のSUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができるが、ステンレス鋼またはコバルト系合金であるのが好ましい。第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
【0031】
これらの第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との間には、第3ワイヤ5が配置(設置)され、各ワイヤ2、3、5の端部同士が、それぞれ連結(接続)されている。第3ワイヤ5は、弾性を有する線材である。第3ワイヤ5の長さは、特に限定されないが、5〜100mm程度であるのが好ましい。
【0032】
第3ワイヤ5は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率が大きく、かつ、第2ワイヤ3の構成材料より弾性率が小さい材料で構成されている。これにより、ガイドワイヤ1は、その長手方向(軸方向)の途中から先端方向に向かって剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が緩やかに減少することとなる。その結果、各ワイヤ2、3、5同士の連結部(後述する溶接部16、17)付近の耐キンク性(耐折れ曲がり性)が向上し、ガイドワイヤ1は、優れた操作性が得られる。
【0033】
第3ワイヤ5の構成材料は、特に限定されず、ニッケル基合金(Niを主とするNi系合金)、擬弾性合金、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができる。特にその構成材料としては、Niを主成分または合金成分として固溶体を形成する合金が好ましく、例えば、Ni−Cr系合金、Ni−Cu系合金、Fe−Ni系合金などが挙げられる。更に、ニッケル基合金であるのがより好ましい。第3ワイヤ5をニッケル基合金で構成することにより、上記のような効果、すなわち、各ワイヤ2、3、5同士の連結部付近の耐キンク性がより向上する。
【0034】
また、本発明では、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成し、第3ワイヤ5をニッケル基合金で構成し、第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することが特に好ましい。これにより、ガイドワイヤ1は、先端側の部分が優れた柔軟性を有するとともに、基端側の部分が剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)に富んだものとなり、加えて、先端側から基端側にかけて剛性が緩やかに減少することとなる。その結果、ガイドワイヤ1は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管への追従性、安全性が向上するとともに、優れた耐キンク性も得られる。
【0035】
また、ニッケル基合金は、超弾性合金(特に、Ni−Ti系合金)、ステンレス鋼やコバルト系合金との接合性が高い材料でもあるため、第1ワイヤ2を超弾性合金(特に、Ni−Ti系合金)で構成し、第3ワイヤ5をニッケル基合金で構成し、第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することにより、各ワイヤ2、3、5同士間での高い接合性(接合強度)を得ることができ、その結果、ガイドワイヤ1の耐久性も向上する。
【0036】
また、第1ワイヤ2の先端部には、第4ワイヤ6の基端部が好ましくは溶接により連結(接続)されている。第4ワイヤ6は、可撓性を有し、かつ、リシェイプ可能な線材である。ここで、「リシェイプ可能」とは、線材を所望の形状に曲げて形状が保持できることを言う。
【0037】
ガイドワイヤ1は、通常、血管分岐を選択するために、医師がガイドワイヤ1の先端部を所望の形状に曲げて使用することが多いが、このようにガイドワイヤ1がリシェイプ可能な第4ワイヤ6を有することにより、ガイドワイヤ1の先端部のリシェイプ(形状付け)を容易かつ確実に行うことができる。その結果、ガイドワイヤ1を生体内に挿入する操作の際の操作性が格段に向上する。
【0038】
なお、図示の構成では、第4ワイヤ6は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第4ワイヤ6のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
【0039】
また、第4ワイヤ6は、図示と異なり、その一部に外径が長手方向に沿って一定の部分があってもよい。例えば、第4ワイヤ6は、先端方向へ向かって外径が漸減するテーパ状のテーパ部が長手方向に沿って複数個所に形成され、これらのテーパ部とテーパ部との間に外径が長手方向に沿って一定の部分が形成されているようなものでもよい。このような場合でも、前記と同様の効果が得られる。また、第4ワイヤ6は、図示と異なり、その先端側の部分の外径が長手方向に沿って一定のものでもよい。
【0040】
第4ワイヤ6は、リシェイプ可能であり、かつ、適度な可撓性(柔軟性)有していれば、その構成材料(素材)は、特に限定されず、例えば、ニッケル基合金、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、特にNiを主成分または合金成分として固溶体を形成する合金が好ましく、例えば、Ni−Cr系合金、Ni−Cu系合金、Fe−Ni系合金などが挙げられる。更に、ニッケル基合金であるのがより好ましい。第4ワイヤ6をニッケル基合金で構成することにより、適度な可撓性を維持しつつ、優れたリシェイプ性が得られる。また、第1ワイヤ2を超弾性合金(特に、Ni−Ti系合金)で構成する場合には、第4ワイヤ6の第1ワイヤ2との接合性も向上する。
【0041】
このような第4ワイヤ6の長さは、特に限定されないが、5〜50mm程度であるのが好ましい。
【0042】
この第4ワイヤ6の長手方向(軸方向)のほぼ全長(全体)を覆うように、コイル4が設置(配置)されている。このコイル4は、線材(細線)を螺旋状に巻回してなる部材で構成されている。図示の構成では、第4ワイヤ6は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第4ワイヤ6は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。
【0043】
なお、図示の構成では、コイル4は、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士の間にやや隙間が空いているが、図示と異なり、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士が隙間なく密に配置されていてもよい。
【0044】
コイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成しても良い。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成しても良い。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0045】
コイル4の基端部および先端部は、それぞれ、固定材料11および12により第4ワイヤ6および第1ワイヤ2(ガイドワイヤ1の先端部)に固定されている。また、コイル4の中間部(先端寄りの位置)は、固定材料13により第4ワイヤ6に固定されている。固定材料11、12および13は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料11、12および13は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管内壁の損傷を防止するために、固定材料12の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
【0046】
本実施形態では、このようなコイル4が設置されていることにより、第4ワイヤ6は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
【0047】
なお、本実施形態の場合、コイル4は、線材の横断面が円形のものを用いているが、これに限らず、線材の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
【0048】
また、コイル4は、図1に示すような構成、すなわち、第4ワイヤ6の長手方向のほぼ全長を覆うような構成に限らず、例えば、第4ワイヤ6の長手方向の途中までを覆うような構成であってもよいし、第1ワイヤ2の長手方向の途中または第3ワイヤ5の長手方向の途中まで覆うような構成であってもよい。
【0049】
以上のようなガイドワイヤ1は、その外周面(外表面)の全部または一部を覆う合成樹脂の図示しない被覆(プラスティックジャケット)を有していてもよい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。このような被覆の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーン樹脂、その他各種のエラストマー、またはこれらの複合材料が好ましく用いられる。特に、第1ワイヤ2と同等またはそれ以下の可撓性、柔軟性を有するものが好ましい。また、このような被覆を設ける個所は、特に限定されず、例えば、ガイドワイヤ1のほぼ全体に設けられていても良く、先端側の部分(第1ワイヤ2およびコイル4の外周面)のみに設けられていても良い。
【0050】
また、ガイドワイヤ1の外周面の全部または一部には、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との接触により発生する摩擦を抑える処理が施されていてもよい。これにより、カテーテル内壁との摩擦が抑えられ、カテーテル内での第2ワイヤ3の操作性は、より良好なものとなる。この処理としては、例えば、ガイドワイヤ1の外周面に、親水性材料または疎水性材料による被膜(図示せず)を設けることができる。
【0051】
この被膜を構成する親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニールピロリドン等が挙げられる。また、被膜を構成する疎水性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン系の材料等が挙げられる。
【0052】
このガイドワイヤ1では、第4ワイヤ6と第1ワイヤ2、第1ワイヤ2と第3ワイヤ5、および、第3ワイヤ5と第2ワイヤ3とは、それぞれ、溶接により互いに連結(固定)されている。これにより、第3ワイヤ5と第2ワイヤ3との溶接部(接続部)16、第1ワイヤ2と第3ワイヤ5との溶接部(接続部)17、および、第4ワイヤ6と第1ワイヤ2との溶接部(接続部)18は、いずれも、高い結合強度(接合強度)が得られ、よって、ガイドワイヤ1は、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力が確実に第1ワイヤ2に伝達される。
【0053】
本実施形態では、第2ワイヤ3の第3ワイヤ5に対する接続端面31、第3ワイヤ5の第2ワイヤ3に対する接続端面52、第3ワイヤ5の第1ワイヤ2に対する接続端面51、第1ワイヤ2の第3ワイヤ5に対する接続端面22、第1ワイヤ2の第4ワイヤ6に対する接続端面21、および、第4ワイヤ6の第1ワイヤ2に対する接続端面61は、いずれも、ガイドワイヤ1の軸方向(長手方向)に対しほぼ垂直な平面になっているが、これにより、各接続端面21、22、31、51、52、61を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1の製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
【0054】
なお、図示の構成と異なり、各接続端面21、22、31、51、52、61は、ガイドワイヤ1の軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
【0055】
各ワイヤ2、3、5、6同士の溶接の方法としては、特に限定されず、例えば、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。これにより、各溶接部16、17、18は、それぞれ、より高い結合強度が得られる。
【0056】
このようなガイドワイヤ1では、第4ワイヤ6、第1ワイヤ2および第3ワイヤ5の外径は、溶接部16と溶接部17との間(外径漸減部15の基端151)から溶接部17、18を跨いで溶接部18より先端側の位置(外径漸減部15の先端152)まで、先端方向へ向かって漸減している。換言すれば、ガイドワイヤ1は、その軸方向(長手方向)の途中から先端方向へ向かって外径が漸減する外径漸減部15を有しており、溶接部16は、外径漸減部15より基端側に位置し、溶接部17、18は、それぞれ、外径漸減部15の基端151と外径漸減部15の先端152との間(外径漸減部15の途中)に位置している。これにより、溶接部16、17、18を含むその付近の部位は、先端方向に向かって剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)がより緩やかに減少するようになる。よって、ガイドワイヤ1は、互いに弾性率が異なる材料で構成された第2ワイヤ3と第3ワイヤ5、第3ワイヤ5と第1ワイヤ2、および、第1ワイヤ2と第4ワイヤ6とが連結(接合)された溶接部16、17、18を含むその付近の部位においても、長手方向に沿って剛性がより緩やか(滑らか)に変化するものとなる。その結果、溶接部16、17、18付近の耐キンク性(耐折れ曲がり性)がより向上し、ガイドワイヤ1は、より優れた操作性が得られる。
【0057】
本実施形態では、外径漸減部15は、その外径が先端方向に向かってほぼ一定の減少率で連続的に減少するテーパ状をなしている。換言すれば、外径漸減部15のテーパ角度は、長手方向に沿ってほぼ一定になっている。これにより、本実施形態のガイドワイヤ1では、特に、溶接部17、18を含むその付近の部位において、長手方向に沿った剛性変化をさらに緩やか(滑らか)にすることができる。
【0058】
このような外径漸減部15の長さは、特に限定されないが、10〜1000mm程度であるのが好ましく、20〜300mm程度であるのがより好ましい。
【0059】
なお、外径漸減部15は、図示の構成と異なり、外径漸減部15の先端方向に向かっての外径の減少率(外径漸減部15のテーパ角度)は、長手方向に沿って変化していても良く、例えば、外径の減少率が比較的大きい個所と比較的小さい個所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。なお、その場合、外径漸減部15の先端方向に向かっての外径の減少率がゼロになる個所があってもよい。
【0060】
また、外径漸減部15の先端152は、第4ワイヤ6の先端の位置であるが、このような構成に限らず、外径漸減部15の先端152は、第4ワイヤ6の長手方向の中間の位置でもよい。すなわち、第4ワイヤ6の先端側の部分は、先端方向に向かい外径が漸減していなくても良い。
【0061】
また、外径漸減部15の基端151は、第2ワイヤ3の長手方向の途中の位置、第1ワイヤ2の長手方向の途中の位置、または第4ワイヤ6の長手方向の途中の位置であってもよい。
【0062】
以下、図2を参照して、各ワイヤ同士を突き合わせ抵抗溶接の一例であるバットシーム溶接により接合する場合の手順について説明する。なお、各ワイヤ同士を接合する方法は、ほぼ同様であるので、以下では、第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とをバットシーム溶接により接合する場合を代表して説明する。同図には、第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とをバットシーム溶接により接合する場合の手順▲1▼〜▲4▼が示されている。
【0063】
手順▲1▼では、図示しないバット溶接機に固定(装着)された第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とが示される。
【0064】
手順▲2▼にて、第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とは、バット溶接機によって、所定の電圧を印加されながら第3ワイヤ5の基端側の接続端面52と第2ワイヤ3の先端側の接続端面31とが加圧接触される。この加圧接触により、接触部分には溶融層が形成され、第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とは強固に接続される。
【0065】
手順▲3▼にて、加圧接触することによって変形された接続箇所(溶接部16)の突出部分を削除する。
【0066】
上記手順▲1▼〜▲3▼を繰り返して、第4ワイヤ6、第1ワイヤ2、第3ワイヤ5および第2ワイヤ3を、それぞれ、溶接(接合)する。
【0067】
次いで、手順▲4▼にて、接続箇所(溶接部17、18)を含む部位を研磨して外径が先端方向に向かって漸減する外径漸減部15を形成する。なお、各ワイヤ2、3、5、6同士を溶接する工程では、必要に応じて、前記手順▲3▼を省略して、この手順▲4▼において、接合箇所の突出部分を削除するとともに、外径漸減部15を形成するようにしてもよい。
【0068】
なお、本実施形態で示したように、第4ワイヤ6と第1ワイヤ2との接合も溶接によるものが好ましいが、その他の任意の方法を用いることもできる。
【0069】
図3および図4は、それぞれ、本発明のガイドワイヤ1をPTCA術に用いた場合における使用状態を示す図である。
【0070】
図3および図4中、符号40は大動脈弓、符号50は心臓の右冠状動脈、符号60は右冠状動脈開口部、符号70は血管狭窄部である。また、符号30は大腿動脈からガイドワイヤ1を確実に右冠状動脈に導くためのガイディングカテーテル、符号20はその先端部分に拡張・収縮自在なバルーン201を有する狭窄部拡張用のバルーンカテーテルである。
【0071】
図3に示すように、ガイドワイヤ1の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入する。さらに、ガイドワイヤ1を進め、先端から右冠状動脈内に挿入し、先端が血管狭窄部70を超えた位置で停止する。これにより、バルーンカテーテル20の通路が確保される。なお、このとき、ガイドワイヤ1の溶接部16、17、18は、いずれも大動脈弓40またはその近傍(生体内)に位置している。
【0072】
次に、図4に示すように、ガイドワイヤ1の基端側から挿通されたバルーンカテーテル20の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、さらにガイドワイヤ1に沿って進め、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入し、バルーンが血管狭窄部70の位置に到達したところで停止する。
【0073】
次に、バルーンカテーテル20の基端側からバルーン拡張用の流体を注入して、バルーン201を拡張させ、血管狭窄部70を拡張する。このようにすることによって、血管狭窄部70の血管に付着堆積しているコレステロール等の堆積物は物理的に押し広げられ、血流阻害が解消できる。
【0074】
以上、本発明のガイドワイヤを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、柔軟性に優れた先端部と剛性に富んだ基端部とを有し、押し込み性、トルク伝達性および追従性に優れたガイドワイヤが構成できる。特に、剛性変化が先端側に向かって緩やかであり、連結部(溶接部)付近におけるキンク(折れ曲がり)を防止することができる。
【0076】
また、各ワイヤ同士を溶接により連結したことにより、連結部(溶接部)の結合強度が高く、基端側のワイヤから先端側のワイヤへねじりトルクや押し込み力を確実に伝達することができる。
【0077】
このようなことから、本発明によれば、操作性および耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガイドワイヤの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すガイドワイヤにおける第2ワイヤと第3ワイヤとを接続する手順を示す図である。
【図3】本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【図4】本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 ガイドワイヤ
2 第1ワイヤ
21 接続端面
22 接続端面
3 第2ワイヤ
31 接続端面
4 コイル
5 第3ワイヤ
51 接続端面
52 接続端面
6 第4ワイヤ
61 接続端面
11、12、13 固定材料
16、17、18 溶接部
15 外径漸減部
151 外径漸減部の基端
152 外径漸減部の先端
20 バルーンカテーテル
201 バルーン
30 ガイディングカテーテル
40 大動脈弓
50 右冠状動脈
60 右冠状動脈開口部
70 血管狭窄部
Claims (6)
- 先端側に配置された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤと、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きく、かつ、前記第2ワイヤの構成材料より弾性率が小さい材料で構成された線状の第3ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤの端部同士、および、前記第3ワイヤと前記第2ワイヤの端部同士は、それぞれ、溶接により連結されており、前記各ワイヤ同士の接続端面は、いずれも、前記ガイドワイヤの軸方向に対しほぼ垂直になっており、
前記第1ワイヤは、超弾性合金で構成され、前記第3ワイヤは、Niを主とするNi系合金で構成されていることを特徴とするガイドワイヤ。 - 前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金で構成されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
- 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部の途中に位置する請求項1または2に記載のガイドワイヤ。 - 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記第3ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部より基端側に位置する請求項1ないし3のいずれかに記載のガイドワイヤ。 - 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記外径漸減部の基端は、前記第2ワイヤの長手方向の途中に位置する請求項1または2に記載のガイドワイヤ。 - 前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有し、
前記外径漸減部の基端は、前記第1ワイヤの長手方向の途中に位置する請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
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