JP2004065796A - ガイドワイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガイドワイヤ1は、先端側に配置された線状の第1ワイヤ2と、基端側に配置され、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤ3とを備える。第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、溶接により連結されている。溶接部14の基端側近傍には、第1ワイヤ2の外周を覆う剛性付与部材7が設置されており、第1ワイヤ2の基端部23付近の曲げ剛性が高められている。第1ワイヤ2は、超弾性合金で構成されているのが好ましく、第2ワイヤ3は、ステンレス鋼で構成されているのが好ましい。第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接は、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガイドワイヤ、特に血管のような体腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガイドワイヤは、例えばPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するのに使用される。PTCA術に用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端をバルーンカテーテルの先端より突出させた状態にて、バルーンカテーテルと共に目的部位である血管狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
【0003】
血管は、複雑に湾曲しており、バルーンカテーテルを血管に挿入する際に用いるガイドワイヤには、曲げに対する適度の柔軟性および復元性、基端部における操作を先端側に伝達するための押し込み性およびトルク伝達性(これらを総称して「操作性」という)、さらには耐キンク性(耐折れ曲がり性)等が要求される。それらの特性の内、適度の柔軟性を得るための構造として、ガイドワイヤの細い先端芯材の回りに曲げに対する柔軟性を有する金属コイルを備えたものや、柔軟性および復元性を付与するためガイドワイヤの芯材にNi−Ti等の超弾性線を用いたものがある。
【0004】
従来のガイドワイヤは、芯材が実質的に1種の材料から構成されており、ガイドワイヤの操作性を高めるために、比較的弾性率の高い材料が用いられ、その影響としてガイドワイヤ先端部の柔軟性は失われている。また、ガイドワイヤの先端部の柔軟性を得るために、比較的弾性率の低い材料を用いると、ガイドワイヤの基端側における操作性が失われる。このように、必要とされる柔軟性および操作性を、1種の芯材で満たすことは困難とされていた。
【0005】
このような欠点を改良するため、例えば芯材にNi−Ti合金線を用い、その先端側と基端側とに異なった条件で熱処理を施し、先端部の柔軟性を高め、基端側の剛性を高めたガイドワイヤが提案されている。しかし、このような熱処理による柔軟性の制御には限界があり、先端部では十分な柔軟性が得られても、基端側では必ずしも満足する剛性が得られないことがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ワイヤ長手方向の剛性の変化が緩やかであり、操作性および耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。また、下記(7)〜(13)であるのが好ましい。
【0008】
(1) 先端側に配置された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤとを備えたガイドワイヤであって、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部の先端側近傍に前記第1ワイヤの外周を覆うように設置され、前記第1ワイヤの基端部付近の曲げ剛性を高める剛性付与部材を有することを特徴とするガイドワイヤ。
【0009】
(2) 前記剛性付与部材は、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率の大きい材料で構成されている上記(1)に記載のガイドワイヤ。
【0010】
(3) 前記剛性付与部材は、管状またはコイル状の部材である上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0011】
(4) 前記剛性付与部材の外径は、前記第2ワイヤの先端部の外径とほぼ同じかまたはやや小さい上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0012】
(5) 前記剛性付与部材の曲げ剛性が前記ガイドワイヤの軸方向に沿って一定である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0013】
(6) 前記剛性付与部材の曲げ剛性が先端方向に向かって漸減している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0014】
(7) 前記第1ワイヤは、超弾性合金で構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0015】
(8) 前記第2ワイヤは、ステンレス鋼で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0016】
(9) 前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの接続端面は、それぞれ、両ワイヤの軸方向にほぼ垂直になっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0017】
(10) 前記第1ワイヤの少なくとも先端側の部分を覆う螺旋状のコイルを有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0018】
(11) 前記溶接部は、前記コイルの基端より基端側に位置する上記(10)に記載のガイドワイヤ。
【0019】
(12) 前記溶接は、突き合わせ抵抗溶接によるものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0020】
(13) 前記溶接部が生体内の位置となるように用いられる上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のガイドワイヤの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すガイドワイヤにおける第1ワイヤと第2ワイヤとを接続する手順を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図1中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる。
【0023】
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテルに挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、螺旋状のコイル4とを有している。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
【0024】
第1ワイヤ2は、弾性を有する線材である。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましい。
【0025】
本実施形態では、第1ワイヤ2は、その先端側の部分に、先端方向へ向かって外径が漸減する外径漸減部22を有している。これにより、第1ワイヤ2の外径漸減部22では、剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
【0026】
なお、図示の構成では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第1ワイヤ2のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
【0027】
本実施形態では、外径漸減部22は、その外径が先端方向に向かってほぼ一定の減少率で連続的に減少するテーパ状をなしている。換言すれば、外径漸減部22のテーパ角度は、長手方向に沿ってほぼ一定になっている。これにより、外径漸減部22の長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。なお、このような構成と異なり、外径漸減部22の先端方向に向かっての外径の減少率(外径漸減部22のテーパ角度)は、長手方向に沿って変化していても良く、例えば、外径の減少率が比較的大きい個所と比較的小さい個所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。なお、その場合、外径漸減部22の先端方向に向かっての外径の減少率がゼロになる個所があってもよい。
【0028】
第1ワイヤ2の基端側の部分は、外径が長手方向に沿ってほぼ一定になっている。なお、図示と異なり、第1ワイヤ2は、ほぼ全長に渡り外径が先端方向に向かって漸減するようなもの、すなわち、そのほぼ全体が外径漸減部22になっているようなものでもよい。
【0029】
第1ワイヤ2の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であるのが好ましく、超弾性合金であるのがより好ましい。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0030】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線がいずれの形状のものも含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0031】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
【0032】
第1ワイヤ2の基端部には、第2ワイヤ3の先端部32が連結(接続)されている。第2ワイヤ3は、弾性を有する線材である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0033】
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されている。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた挿入操作性が得られる。
【0034】
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等のSUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができるが、ステンレス鋼であるのが好ましい。第2ワイヤ3をステンレス鋼で構成することにより、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
【0035】
また、本発明では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを異種の合金で構成することが好ましく、また、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成し、第2ワイヤ3をステンレス鋼で構成することが特に好ましい。これにより、ガイドワイヤ1は、先端側の部分が優れた柔軟性を有するとともに、基端側の部分が剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)に富んだものとなる。その結果、ガイドワイヤ1は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管への追従性、安全性が向上する。
【0036】
また、第1ワイヤ2を構成する超弾性合金としてNi−Ti系合金を用いることが、先端側の柔軟性と復元性の点から好ましい。
【0037】
コイル4は、線材(細線)を螺旋状に巻回してなる部材であり、第1ワイヤ2の先端側の部分を覆うように設置されている。図示の構成では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。なお、図示の構成では、コイル4は、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士の間にやや隙間が空いているが、図示と異なり、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士が隙間なく密に配置されていてもよい。
【0038】
コイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成しても良い。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成しても良い。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜500mm程度であるのが好ましい。
【0039】
コイル4の基端部および先端部は、それぞれ、固定材料11および12により第1ワイヤ2に固定されている。また、コイル4の中間部(先端寄りの位置)は、固定材料13により第1ワイヤ2に固定されている。固定材料11、12および13は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料11、12および13は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管内壁の損傷を防止するために、固定材料12の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
【0040】
本実施形態では、このようなコイル4が設置されていることにより、第1ワイヤ2は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
【0041】
なお、本実施形態の場合、コイル4は、線材の横断面が円形のものを用いているが、これに限らず、線材の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
【0042】
以上のようなガイドワイヤ1は、その外周面(外表面)の全部または一部を覆う合成樹脂の図示しない被覆(プラスティックジャケット)を有していてもよい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。このような被覆の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーン樹脂、その他各種のエラストマー、またはこれらの複合材料が好ましく用いられる。特に、第1ワイヤ2と同等またはそれ以下の可撓性、柔軟性を有するものが好ましい。また、このような被覆を設ける個所は、特に限定されず、例えば、ガイドワイヤ1のほぼ全体に設けられていても良く、先端側の部分(第1ワイヤ2およびコイル4の外周面)のみに設けられていても良い。
【0043】
また、ガイドワイヤ1の外周面の全部または一部には、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との接触により発生する摩擦を抑える処理が施されていてもよい。これにより、カテーテル内壁との摩擦が抑えられ、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性は、より良好なものとなる。この処理としては、例えば、ガイドワイヤ1の外周面に、親水性材料または疎水性材料による被膜(図示せず)を設けることができる。
【0044】
この被膜を構成する親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、被膜を構成する疎水性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン系の材料等が挙げられる。
【0045】
このガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3とは、溶接により互いに連結(固定)されている。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部(接続部)14は、高い結合強度(接合強度)が得られ、よって、ガイドワイヤ1は、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力が確実に第1ワイヤ2に伝達される。
【0046】
本実施形態では、第1ワイヤ2の第2ワイヤ3に対する接続端面21と、第2ワイヤ3の第1ワイヤ2に対する接続端面31は、それぞれ、両ワイヤの軸方向(長手方向)にほぼ垂直な平面になっているが、これにより、接続端面21、31を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1の製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
【0047】
なお、図示の構成と異なり、接続端面21、31は、両ワイヤの軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
【0048】
第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との溶接の方法としては、特に限定されず、例えば、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。これにより、溶接部14は、より高い結合強度が得られる。
【0049】
このようなガイドワイヤ1は、溶接部14の先端側近傍に第1ワイヤ2(基端部23)の外周を覆うように設置された剛性付与部材7を有している。この剛性付与部材7が設置されていることにより、第1ワイヤ2の基端部23付近におけるガイドワイヤ1の曲げ剛性が高められている。
【0050】
前述したように、第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2より弾性率が大きい材料で構成されているので、第2ワイヤ3の先端部32の曲げ剛性は、第1ワイヤ2の基端部23の曲げ剛性より大きい。よって、剛性付与部材7が無いと仮定した場合には、溶接部14を挟んでガイドワイヤ1の曲げ剛性が急激に変化するが、本発明では、剛性付与部材7により第1ワイヤ2の基端部23付近の曲げ剛性が高められているので、第2ワイヤ3の先端部32の曲げ剛性との差が少ない。したがって、ガイドワイヤ1では、溶接部14を含むその付近の部位での曲げ剛性の長手方向に沿った変化を緩やか(滑らか)にすることができる。その結果、溶接部14付近における耐キンク性(耐折れ曲がり性)が向上し、ガイドワイヤ1は、優れた操作性が得られる。このような剛性付与部材7による効果は、ガイドワイヤ1のねじり剛性についても同様である。
【0051】
本実施形態では、剛性付与部材7は、管状(円筒状)の部材で構成されている。この剛性付与部材7の外径(特に基端部の外径)は、第2ワイヤ3の先端部32の外径とほぼ同じかまたはやや小さくなっている。すなわち、第1ワイヤ2の基端部23の外径は、第2ワイヤ3の先端部32の外径より小さくなっている。そして、剛性付与部材7の基端面は、第2ワイヤ3の接続端面31(先端面)に当接している。このような構成により、曲げ、ねじりの力が第2ワイヤ3と剛性付与部材7との間で確実に伝達され、溶接部14を含むその付近の部位における長手方向に沿った剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
【0052】
本実施形態では、剛性付与部材7の内径および外径は、長手方向(軸方向)に沿ってほぼ一定になっており、よって、剛性付与部材7の曲げ剛性は、ガイドワイヤ1の長手方向(軸方向)に沿って一定になっている。
【0053】
剛性付与部材7の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、コバルト系合金、半田材、ろう材等の各種金属材料や、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等の各種樹脂材料(プラスティック)を用いることができる。
【0054】
また、剛性付与部材7の構成材料は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率の大きい材料であるのが好ましい。これにより、第1ワイヤ2の基端部23の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)をより大きくすることができ、その結果、ガイドワイヤ1の長手方向に沿った剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
【0055】
また、剛性付与部材7の構成材料は、第2ワイヤ3の構成材料とほぼ同じ弾性率、もしくはより大きな弾性率を有する材料であってもよい。これにより、第1ワイヤ2の基端部23の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)をより大きくすることができ、その結果、ガイドワイヤ1の長手方向に沿った剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
【0056】
剛性付与部材7の固定方法は、特に限定されず、溶接、ろう接、接着剤による接着、カシメ等の方法が挙げられる。なお、剛性付与部材7は、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを溶接した後に設置してもよく、第1ワイヤ2の基端部23に剛性付与部材7を設置した後に第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを溶接してもよい。さらに、剛性付与部材7は、別個に製造した部材を装着する方法に限らず、例えば、第1ワイヤ2の基端部23の外周に、溶射により盛り付けるようにして形成してもよい。
【0057】
剛性付与部材7の長さは、特に限定されないが、5〜30mm程度であるのが好ましく、10〜20mm程度であるのがより好ましい。
【0058】
なお、剛性付与部材7の形状(形態)は、図示の構成に限らず、例えばコイル状のものでもよい。
【0059】
また、本実施形態では、溶接部14は、コイル4の基端よりも基端側に位置しているが、図示と異なり、溶接部14がコイル4の基端よりも先端側に位置していても良い。
【0060】
以下、図2を参照して、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを突き合わせ抵抗溶接の一例であるバットシーム溶接により接合する場合の手順について説明する。同図には、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とをバットシーム溶接により接合する場合の手順▲1▼〜▲3▼が示されている。
【0061】
手順▲1▼では、図示しないバット溶接機に固定(装着)された第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが示される。
【0062】
手順▲2▼にて、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、バット溶接機によって、所定の電圧を印加されながら第1ワイヤ2の基端側の接続端面21と第2ワイヤ3の先端側の接続端面31とが加圧接触される。この加圧接触により、接触部分には溶融層が形成され、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは強固に接続される。
【0063】
手順▲3▼にて、加圧接触することによって変形された接続箇所(溶接部14)の突出部分を削除する。次いで、第1ワイヤ2の先端側より剛性付与部材7(図示せず)を挿通して装着する。
【0064】
図3および図4は、それぞれ、本発明のガイドワイヤ1をPTCA術に用いた場合における使用状態を示す図である。
【0065】
図3および図4中、符号40は大動脈弓、符号50は心臓の右冠状動脈、符号60は右冠状動脈開口部、符号70は血管狭窄部である。また、符号30は大腿動脈からガイドワイヤ1を確実に右冠状動脈に導くためのガイディングカテーテル、符号20はその先端部分に拡張・収縮自在なバルーン201を有する狭窄部拡張用のバルーンカテーテルである。
【0066】
図3に示すように、ガイドワイヤ1の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入する。さらに、ガイドワイヤ1を進め、先端から右冠状動脈内に挿入し、先端が血管狭窄部70を超えた位置で停止する。これにより、バルーンカテーテル20の通路が確保される。なお、このとき、ガイドワイヤ1の溶接部14は、大動脈弓40の基部付近(生体内)に位置している。
【0067】
次に、図4に示すように、ガイドワイヤ1の基端側から挿通されたバルーンカテーテル20の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、さらにガイドワイヤ1に沿って進め、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入し、バルーンが血管狭窄部70の位置に到達したところで停止する。
【0068】
次に、バルーンカテーテル20の基端側からバルーン拡張用の流体を注入して、バルーン201を拡張させ、血管狭窄部70を拡張する。このようにすることによって、血管狭窄部70の血管に付着堆積しているコレステロール等の堆積物は物理的に押し広げられ、血流阻害が解消できる。
【0069】
図5は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す縦断面図である。以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの他の実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0070】
本実施形態のガイドワイヤ1’は、剛性付与部材7’の形状が異なること以外は前述した実施形態と同様である。本実施形態では、剛性付与部材7’は、その外径が先端方向に向かって漸減している。よって、剛性付与部材7’は、その剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が先端方向に向かって漸減している。これにより、本実施形態では、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2への長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができ、より優れた操作性および耐キンク性が得られる。
【0071】
また、本実施形態のガイドワイヤ1’では、剛性付与部材7の先端と第1ワイヤ2との境界部、および、剛性付与部材7の基端と第2ワイヤ3との境界部は、それぞれ、段差のない滑らかな連続面を構成している。これにより、ガイドワイヤ1’は、摺動抵抗が低減され、より優れた摺動性が得られる。
【0072】
以上、本発明のガイドワイヤを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0073】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、先端側に配置された第1ワイヤと、第1ワイヤの基端側に配置され、第1ワイヤより弾性率の大きい材料で構成された第2ワイヤとを設けたことにより、柔軟性に優れた先端部と剛性に富んだ基端部とを有し、押し込み性、トルク伝達性および追従性に優れたガイドワイヤが構成できる。
【0074】
また、第1ワイヤと第2ワイヤとを溶接により連結したことにより、連結部(溶接部)の結合強度が高く、第2ワイヤから第1ワイヤへねじりトルクや押し込み力を確実に伝達することができる。
【0075】
また、第1ワイヤの基端部付近の曲げ剛性を高める剛性付与部材を設けたことにより、溶接部を含むその付近の部位の長手方向に沿った剛性変化が穏やかであり、溶接部付近におけるキンク(折れ曲がり)を確実に防止することができる。
【0076】
このようなことから、本発明によれば、操作性および耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガイドワイヤの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すガイドワイヤにおける第1ワイヤと第2ワイヤとを接続する手順を示す図である。
【図3】本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【図4】本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【図5】本発明のガイドワイヤにおける第2ワイヤの小横断面積部の他の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、1’ ガイドワイヤ
2 第1ワイヤ
21 接続端面
22 外径漸減部
23 基端部
3 第2ワイヤ
31 接続端面
32 先端部
4 コイル
7、7’ 剛性付与部材
11、12、13 固定材料
14 溶接部
20 バルーンカテーテル
201 バルーン
30 ガイディングカテーテル
40 大動脈弓
50 右冠状動脈
60 右冠状動脈開口部
70 血管狭窄部
Claims (6)
- 先端側に配置された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤとを備えたガイドワイヤであって、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部の先端側近傍に前記第1ワイヤの外周を覆うように設置され、前記第1ワイヤの基端部付近の曲げ剛性を高める剛性付与部材を有することを特徴とするガイドワイヤ。 - 前記剛性付与部材は、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率の大きい材料で構成されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
- 前記剛性付与部材は、管状またはコイル状の部材である請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
- 前記剛性付与部材の外径は、前記第2ワイヤの先端部の外径とほぼ同じかまたはやや小さい請求項1ないし3のいずれかに記載のガイドワイヤ。
- 前記剛性付与部材の曲げ剛性が前記ガイドワイヤの軸方向に沿って一定である請求項1ないし4のいずれかに記載のガイドワイヤ。
- 前記剛性付与部材の曲げ剛性が先端方向に向かって漸減している請求項1ないし4のいずれかに記載のガイドワイヤ。
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