JP5073713B2 - ガイドワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ガイドワイヤ、特に血管のような体腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
ガイドワイヤは、例えばPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するのに使用される。PTCA術に用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端をバルーンカテーテルの先端より突出させた状態にて、バルーンカテーテルと共に目的部位である血管狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
血管は、複雑に湾曲しており、バルーンカテーテルを血管に挿入する際に用いるガイドワイヤには、適度の曲げに対する柔軟性と復元性、基端部における操作を先端側に伝達するための押し込み性およびトルク伝達性(これらを総称して「操作性」という)、さらには耐キンク性(耐折れ曲がり性)等が要求される。
また、ガイドワイヤは、血管分岐を選択するために、医師がガイドワイヤの先端部を所望の形状に曲げて使用することが多く、ガイドワイヤの先端部には、所望の形状に曲げることができる(リシェイプ)特性が要求される。
ところで、従来のガイドワイヤは、芯材が実質的に1種の材料から構成されており、ガイドワイヤの操作性を高めるために、比較的弾性率の高い材料が用いられ、その影響としてガイドワイヤ先端部の柔軟性は失われている。また、ガイドワイヤの先端部の柔軟性を得るために、比較的弾性率の低い材料を用いると、ガイドワイヤの基端側における操作性が失われる。このように、必要とされる可撓性および操作性を、1種の芯材で満たすことは困難とされていた。
このような欠点を改良するため、各種特性を満足するように、複数の金属線を、例えば管状接続部材等を用いて接続したガイドワイヤが提案されている。しかし、このようなガイドワイヤでは、各金属線同士の間での高い結合強度を得るのには、その構造が複雑となり、製造に多大な手間と時間とを要するという問題がある。
本発明の目的は、接合強度が高く、操作性に優れたガイドワイヤを提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(5)の発明により達成される。
(1) 先端側に配置され、Ni−Ti系合金で構成された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤと、
前記第1ワイヤの先端側に配置され、希望通りの形状を形作ることができ、かつその形状を維持することができるようNi合金で構成された線状の第3ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤとは、溶接により連結されていることを特徴とするガイドワイヤ。
(2) 前記第3ワイヤは、前記第1ワイヤを先端側に延長するように配置されている上記(1)に記載のガイドワイヤ。
(3) 前記第1ワイヤの先端と前記第3ワイヤの基端とが、端面同士の突き合わせ溶接により連結されてなるものであり、外径が0.2〜1.2mmである上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
(4) 前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金で構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
(5) 前記Ni合金は、Ni−Cr系合金またはNi−Co系合金である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
前記第1ワイヤの先端側に、前記第3ワイヤが溶接により連結されているのが好ましい。
前記第3ワイヤは、弾性を有し、かつ、リシェイプ可能な線材で構成されているのが好ましい。
前記ガイドワイヤは、その軸方向の途中から先端方向に向かって外径が漸減する外径漸減部を有するのが好ましい。
前記第1ワイヤと前記第3ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部の途中に位置するのが好ましい。
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間に第4ワイヤを有し、前記第4ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部は、前記外径漸減部の途中に位置するのが好ましい。
各前記ワイヤ同士の接続端面は、いずれも、前記ガイドワイヤの軸方向に対しほぼ垂直になっているのが好ましい。
前記溶接は、突き合わせ抵抗溶接によるものであるのが好ましい。
各前記ワイヤ同士の溶接部が、いずれも生体内の位置となるように用いられるのが好ましい。
以上述べたように、本発明によれば、簡単な構成で、優れた各種特性(例えば、押し込み性、トルク伝達性、耐キンク性等)が得られるとともに、第1ワイヤと第3ワイヤとの結合強度が高いので、優れた操作性が得られる。
また、各ワイヤの構成材料を適宜選択することにより、前記効果がより向上する。
本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す縦断面図である。 図1に示すガイドワイヤにおける第2ワイヤと第4ワイヤとを接続する手順を示す図である。 本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。 本発明のガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。 本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す縦断面図である。
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のガイドワイヤの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すガイドワイヤにおける各ワイヤ同士を接続する手順を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図1中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる。
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテルに挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第4ワイヤ6と、第4ワイヤ6の基端側に配置された第2ワイヤ3と、第4ワイヤ6の先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の先端側に配置された第3ワイヤ5と、螺旋状のコイル4とを有している。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
第1ワイヤ2は、可撓性を有する線材である。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
本実施形態では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が漸減している。これにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
なお、図示の構成では、第1ワイヤ2は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第1ワイヤ2のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
また、第1ワイヤ2は、図示と異なり、その一部に外径が長手方向に沿って一定の部分があってもよい。例えば、第1ワイヤ2は、先端方向へ向かって外径が漸減するテーパ状のテーパ部が長手方向に沿って複数個所に形成され、これらのテーパ部とテーパ部との間に外径が長手方向に沿って一定の部分が形成されているようなものでもよい。このような場合でも、前記と同様の効果が得られる。また、第1ワイヤ2は、図示と異なり、その先端側の部分の外径が長手方向に沿って一定のものでもよい。
第1ワイヤ2の構成材料は、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であるのが好ましい。より好ましくは超弾性合金である。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2にその復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
擬弾性を示す合金(擬弾性合金)には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
第4ワイヤ6の基端側には、第2ワイヤ3が配置(設置)されている。第2ワイヤ3は、弾性を有する線材である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましい。
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されている。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた挿入操作性が得られる。
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができるが、ステンレス鋼またはコバルト系合金であるのが好ましい。第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
これらの第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との間には、第4ワイヤ6が配置(設置)され、各ワイヤ2、3、6の端部同士が、それぞれ溶接により連結(接続)されている。第4ワイヤ6は、弾性を有する線材である。第4ワイヤ6の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
第4ワイヤ6は、その第1ワイヤ2に対する溶接による接合性が、第2ワイヤ3の第4ワイヤ6に対する溶接による接合性より高い材料で構成されている。第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを直接溶接により連結させた場合でも、これらの溶接部には、十分な結合強度が得られるが、第4ワイヤ6を上記の材料で構成することにより、第4ワイヤ6と第2ワイヤ3との溶接部16には高い結合強度(溶接性)が得られ、また、第4ワイヤ6と第1ワイヤ2との溶接部17には、それと同等以上の特に高い結合強度が得られる。よって、ガイドワイヤ1は、優れた操作性が得られる。
このような第4ワイヤ6の構成材料は、前述した各ワイヤ2、3、6の接合性の関係に応じて適宜選択可能であり、例えば、ニッケル基合金(Niを主とするNi系合金)、超弾性合金、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができる。さらにNiを主成分または合金成分として固溶体を形成する合金が好ましく、例えば、Ni−Cr系合金、Ni−Cu系合金、Fe−Ni系合金などが挙げられる。
溶接部17における結合強度をより向上させる観点からは、第4ワイヤ6の構成材料は、第1ワイヤ2の構成材料に含まれる元素のうちの少なくとも1種を含むものであるのが好ましく、第1ワイヤ2の構成材料が超弾性合金、特に、Ni−Ti系合金である場合には、ニッケル基合金(Niを主とするNi系合金)が好適である。
一方、溶接部16における結合強度をより向上させる観点からは、第4ワイヤ6の構成材料は、第2ワイヤ3の構成材料に含まれる元素のうちの少なくとも1種を含むものであるのが好ましく、第2ワイヤ3の構成材料がステンレス鋼またはコバルト系合金である場合には、第4ワイヤ6の構成材料は、クロムまたはコバルトを主とする金属材料(合金)が好適である。
このようなことから、第1ワイヤ2を超弾性合金(特に、Ni−Ti系合金)で構成し、第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成する場合には、第4ワイヤ6の構成材料は、Niを主とするNi系合金が好ましく、Ni−Cr系合金またはNi−Co系合金が最適である。これにより、溶接部16における結合強度は高くなり、また、溶接部17における結合強度は、それと同等以上の特に高いものとなり、その結果、ガイドワイヤ1は、その耐久性が特に優れ、かつ、極めて安全性が高いものとなる。
また、Ni−Cr系合金またはNi−Co系合金の弾性率は、超弾性合金の弾性率と、ステンレス鋼やコバルト系合金の弾性率との中間の値を示すものが好ましく、このようなガイドワイヤ1では、その長手方向(軸方向)の途中から先端方向に向かって剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が緩やかに減少することとなる。その結果、溶接部16、17付近の耐キンク性(耐折れ曲がり性)が向上し、ガイドワイヤ1は、優れた操作性が得られる。
また、第1ワイヤ2の先端部には、第3ワイヤ5の基端部が好ましくは溶接により連結(接続)されている。第3ワイヤ5は、弾性を有し、かつ、リシェイプ可能な線材である。ここで、「リシェイプ可能」とは、線材を所望の形状に曲げて形状を保持できることを言う。
ガイドワイヤ1は、通常、血管分岐を選択するために、医師がガイドワイヤ1の先端部を所望の形状に曲げて使用することが多いが、このようにガイドワイヤ1がリシェイプ可能な第3ワイヤ5を有することにより、ガイドワイヤ1の先端部のリシェイプ(形状付け)を容易かつ確実に行うことができる。その結果、ガイドワイヤ1を生体内に挿入する操作の際の操作性が格段に向上する。
なお、図示の構成では、第3ワイヤ5は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。第3ワイヤ5のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
また、第3ワイヤ5は、図示と異なり、その一部に外径が長手方向に沿って一定の部分があってもよい。例えば、第3ワイヤ5は、先端方向へ向かって外径が漸減するテーパ状のテーパ部が長手方向に沿って複数個所に形成され、これらのテーパ部とテーパ部との間に外径が長手方向に沿って一定の部分が形成されているようなものでもよい。このような場合でも、前記と同様の効果が得られる。また、第3ワイヤ5は、図示と異なり、その先端側の部分の外径が長手方向に沿って一定のものでもよい。
第3ワイヤ5は、希望通りの形状を形作ることができ、かつその形状を維持することができるようなものであり、その構成材料(素材)には、ニッケル基合金を使用することができる。
このような第3ワイヤ5の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
この第3ワイヤ5の長手方向(軸方向)の全長(全体)および第1ワイヤ2の一部を覆うように、コイル4が設置(配置)されている。このコイル4は、線材(細線)を螺旋状に巻回してなる部材で構成されている。図示の構成では、第3ワイヤ5は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第3ワイヤ5は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。
なお、図示の構成では、コイル4は、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士の間にやや隙間が空いているが、図示と異なり、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士が隙間なく密に配置されていてもよい。
コイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成しても良い。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成しても良い。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜500mm程度であるのが好ましい。
コイル4の基端部および先端部は、それぞれ、固定材料11および12により第3ワイヤ5(ガイドワイヤ1の先端部)および第1ワイヤ2に固定されている。また、コイル4の中間部(先端寄りの位置)は、固定材料13により第3ワイヤ5に固定されている。固定材料11、12および13は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料11、12および13は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管内壁の損傷を防止するために、固定材料12の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
本実施形態では、このようなコイル4が設置されていることにより、第3ワイヤ5は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
なお、本実施形態の場合、コイル4は、線材の横断面が円形のものを用いているが、これに限らず、線材の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
また、コイル4は、図1に示すような構成、すなわち、第3ワイヤ5の長手方向の全長と第1ワイヤ2の長手方向の途中までを覆うような構成に限らず、例えば、第3ワイヤ5の長手方向の途中までを覆うような構成であってもよいし、第3ワイヤ5の長手方向のほぼ全長、または第4ワイヤ6の長手方向の途中まで覆うような構成であってもよい。
以上のようなガイドワイヤ1は、その外周面(外表面)の全部または一部を覆う合成樹脂の図示しない被覆(プラスティックジャケット)を有していてもよい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。このような被覆の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーン樹脂、その他各種のエラストマー、またはこれらの複合材料が好ましく用いられる。特に、第1ワイヤ2と同等またはそれ以下の可撓性、柔軟性を有するものが好ましい。また、このような被覆を設ける個所は、特に限定されず、例えば、ガイドワイヤ1のほぼ全体に設けられていても良く、ガイドワイヤ1の一部(例えば第1ワイヤ2、第4ワイヤ6および第2ワイヤ3の外周面)のみに設けられていても良い。
また、ガイドワイヤ1の外周面の全部または一部には、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との接触により発生する摩擦を抑える処理が施されていてもよい。これにより、カテーテル内壁との摩擦が抑えられ、カテーテル内での第2ワイヤ3の操作性は、より良好なものとなる。この処理としては、例えば、ガイドワイヤ1の外周面に、親水性材料または疎水性材料による被膜(図示せず)を設けることができる。
この被膜を構成する親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、被膜を構成する疎水性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン系の材料等が挙げられる。
このガイドワイヤ1では、第3ワイヤ5と第1ワイヤ2、第1ワイヤ2と第4ワイヤ6、および、第4ワイヤ6と第2ワイヤ3とは、それぞれ、溶接により互いに連結(固定)されている。これにより、第4ワイヤ6と第2ワイヤ3との溶接部(接続部)16は、高い結合強度(接合性)が得られ、第4ワイヤ6と第1ワイヤ2との溶接部(接続部)17は、溶接部16と同等以上の高い結合強度(接合性)が得られ、よって、ガイドワイヤ1は、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力が確実に第4ワイヤ6、第1ワイヤ2、第3ワイヤ5へと伝達される。
上述したように、本発明では、第4ワイヤ6を特徴のある材料、すなわち、第4ワイヤ6の第1ワイヤ2に対する溶接による接合性が、第2ワイヤ3の第4ワイヤ6に対する溶接による接合性より高くなるような材料で構成したことにより、溶接部16において高い結合強度(溶接性)が得られ、また、溶接部17において、それと同等以上の高い結合強度(溶接性)が得られている。
本実施形態では、第2ワイヤ3の第4ワイヤ6に対する接続端面31、第4ワイヤ6の第2ワイヤ3に対する接続端面52、第4ワイヤ6の第1ワイヤ2に対する接続端面51、第1ワイヤ2の第4ワイヤ6に対する接続端面22、第1ワイヤ2の第3ワイヤ5に対する接続端面21、および、第3ワイヤ5の第1ワイヤ2に対する接続端面61は、いずれも、ガイドワイヤ1の軸方向(長手方向)に対しほぼ垂直な平面になっているが、これにより、各接続端面21、22、31、51、52、61を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1の製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
なお、図示の構成と異なり、各接続端面21、22、31、51、52、61は、ガイドワイヤ1の軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
各ワイヤ2、3、5、6同士の溶接の方法としては、特に限定されず、例えば、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。これにより、各溶接部16、17、18は、それぞれ、より高い結合強度が得られる。
このようなガイドワイヤ1では、第3ワイヤ5、第1ワイヤ2および第4ワイヤ6の外径は、溶接部16と溶接部17との間(外径漸減部15の基端151)から溶接部17、18を跨いで溶接部18より先端側の位置(外径漸減部15の先端152)まで、先端方向へ向かって漸減している。換言すれば、ガイドワイヤ1は、その軸方向(長手方向)の途中から先端方向へ向かって外径が漸減する外径漸減部15を有しており、溶接部16は、外径漸減部15より基端側に位置し、溶接部17、18は、それぞれ、外径漸減部15の基端151と外径漸減部15の先端152との間(外径漸減部15の途中)に位置している。これにより、溶接部16、17、18を含むその付近の部位は、先端方向に向かって剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)がより緩やかに減少するようになる。よって、ガイドワイヤ1は、互いに弾性率が異なる材料で構成された第2ワイヤ3と第4ワイヤ6、第1ワイヤ2と第4ワイヤ6、および、第1ワイヤ2と第3ワイヤ5とが連結(接合)された溶接部16、17、18を含むその付近の部位においても、長手方向に沿って剛性がより緩やか(滑らか)に変化するものとなる。その結果、溶接部16、17、18付近の耐キンク性(耐折れ曲がり性)がより向上し、ガイドワイヤ1は、より優れた操作性が得られる。
本実施形態では、外径漸減部15は、その外径が先端方向に向かってほぼ一定の減少率で連続的に減少するテーパ状をなしている。換言すれば、外径漸減部15のテーパ角度は、長手方向に沿ってほぼ一定になっている。これにより、本実施形態のガイドワイヤ1では、特に、溶接部17、18を含むその付近の部位において、長手方向に沿った剛性変化をさらに緩やか(滑らか)にすることができる。
このような外径漸減部15の長さは、特に限定されないが、10〜1000mm程度であるのが好ましく、20〜300mm程度であるのがより好ましい。
なお、外径漸減部15は、図示の構成と異なり、外径漸減部15の先端方向に向かっての外径の減少率(外径漸減部15のテーパ角度)は、長手方向に沿って変化していても良く、例えば、外径の減少率が比較的大きい個所と比較的小さい個所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。なお、その場合、外径漸減部15の先端方向に向かっての外径の減少率がゼロになる個所があってもよい。
また、外径漸減部15の先端152は、第3ワイヤ5の先端の位置であるが、このような構成に限らず、外径漸減部15の先端152は、第3ワイヤ5の長手方向の途中の位置、または第1ワイヤ2の途中の位置でもよい。すなわち、第3ワイヤ5や第1ワイヤ2の先端側の部分は、先端方向に向かい外径が漸減していなくても良い。
また、外径漸減部15の基端151は、第2ワイヤ3の長手方向の途中の位置、第1ワイヤ2の長手方向の途中の位置、または第3ワイヤ5の長手方向の途中の位置であってもよい。
以下、図2を参照して、各ワイヤ同士を突き合わせ抵抗溶接の一例であるバットシーム溶接により接合する場合の手順について説明する。なお、各ワイヤ同士を接合する方法は、ほぼ同様であるので、以下では、第2ワイヤ3と第4ワイヤ6とをバットシーム溶接により接合する場合を代表して説明する。同図には、第2ワイヤ3と第4ワイヤ6とをバットシーム溶接により接合する場合の手順<1>〜<4>が示されている。
手順<1>では、図示しないバット溶接機に固定(装着)された第2ワイヤ3と第4ワイヤ6とが示される。
手順<2>にて、第2ワイヤ3と第4ワイヤ6とは、バット溶接機によって、所定の電圧を印加されながら第4ワイヤ6の基端側の接続端面52と第2ワイヤ3の先端側の接続端面31とが加圧接触される。この加圧接触により、接触部分には溶融層が形成され、第2ワイヤ3と第4ワイヤ6とは強固に接続される。
手順<3>にて、加圧接触することによって変形された接続箇所(溶接部16)の突出部分を削除する。
上記手順<1>〜<3>を繰り返して、第3ワイヤ5、第1ワイヤ2、第4ワイヤ6および第2ワイヤ3を、それぞれ、溶接(接合)する。
次いで、手順<4>にて、接続箇所(溶接部17、18)を含む部位を研磨して外径が先端方向に向かって漸減する外径漸減部15を形成する。なお、各ワイヤ2、3、5、6同士を溶接する工程では、必要に応じて、前記手順<3>を省略して、この手順<4>において、接合箇所の突出部分を削除するとともに、外径漸減部15を形成するようにしてもよい。
なお、本実施形態で示したように、第1ワイヤ2と第4ワイヤ6、および、第3ワイヤ5と第1ワイヤ2との接合も溶接によるものが好ましいが、その他の任意の方法を用いることもできる。
図3および図4は、それぞれ、本発明のガイドワイヤ1をPTCA術に用いた場合における使用状態を示す図である。
図3および図4中、符号40は大動脈弓、符号50は心臓の右冠状動脈、符号60は右冠状動脈開口部、符号70は血管狭窄部である。また、符号30は大腿動脈からガイドワイヤ1を確実に右冠状動脈に導くためのガイディングカテーテル、符号20はその先端部分に拡張・収縮自在なバルーン201を有する狭窄部拡張用のバルーンカテーテルである。
図3に示すように、ガイドワイヤ1の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入する。さらに、ガイドワイヤ1を進め、先端から右冠状動脈内に挿入し、先端が血管狭窄部70を超えた位置で停止する。これにより、バルーンカテーテル20の通路が確保される。なお、このとき、ガイドワイヤ1の溶接部16、17、18は、いずれも大動脈弓40またはその近傍(生体内)に位置している。
次に、図4に示すように、ガイドワイヤ1の基端側から挿通されたバルーンカテーテル20の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、さらにガイドワイヤ1に沿って進め、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入し、バルーンが血管狭窄部70の位置に到達したところで停止する。
次に、バルーンカテーテル20の基端側からバルーン拡張用の流体を注入して、バルーン201を拡張させ、血管狭窄部70を拡張する。このようにすることによって、血管狭窄部70の血管に付着堆積しているコレステロール等の堆積物は物理的に押し広げられ、血流阻害が解消できる。
<第2実施形態>
次に、本発明のガイドワイヤの第2実施形態について説明する。
図5は、本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す縦断面図である。なお、説明の都合上、図5中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図5中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる。
以下、図5に示すガイドワイヤ1’について説明するが、前記第1実施形態のガイドワイヤ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のガイドワイヤ1’では、第4ワイヤが省略されたこと以外は、前記第1実施形態のガイドワイヤ1と同様である。
すなわち、本実施形態のガイドワイヤ1’では、第1ワイヤ2の先端側に第3ワイヤ5’が配置され、第3ワイヤ5’と第1ワイヤ2および第1ワイヤ2と第2ワイヤとが、それぞれ互いに溶接により連結されている。
このような第1ワイヤ2の構成材料は、前記第1実施形態における第1ワイヤ2と同様である。すなわち、第1ワイヤ2の構成材料は、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であるのが好ましく、超弾性合金であるのがより好ましい。
一方、第3ワイヤ5’の構成材料は、前記第1実施形態における第3ワイヤ5と同様である。すなわち、第3ワイヤ5’の構成材料には、ニッケル基合金(Niを主とするNi系合金)を使用することができる。
第1ワイヤ2は、その第3ワイヤ5’に対する溶接による接合性が、第2ワイヤ3の第1ワイヤ2に対する溶接による接合性とほぼ同等もしくはより高い材料で構成されている。これにより、第3ワイヤ5’と第1ワイヤ2との溶接部17’には、より高い結合強度が得られる。なお、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部14においても、十分な結合強度が得られており、よって、ガイドワイヤ1’は、優れた操作性が得られる。
本実施形態では、第3ワイヤ5’の第1ワイヤ2に対する接続端面51’、第1ワイヤ2の第3ワイヤ5’に対する接続端面21は、いずれも、ガイドワイヤ1の軸方向(長手方向)に対しほぼ垂直な平面になっているが、これにより、各接続端面21、51’を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1’の製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
なお、図示の構成と異なり、各接続端面21、51’は、ガイドワイヤ1’の軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
このような第3ワイヤ5’は、任意の目的で設けることができるが、例えば、ガイドワイヤ1’の先端部のリシェイプ性を確保する目的で設けられる。
この場合、第3ワイヤ5’の構成材料には、希望通りの形状を形作ることができ、かつその形状を維持することができるようなものとして、Niを主とするNi系合金(ニッケル基合金)が用いられる。第3ワイヤ5’をニッケル基合金で構成することにより、特に優れたリシェイプ性が発揮される。また、第1ワイヤ2をNi−Ti系合金で構成する場合には、第3ワイヤ5’の第1ワイヤ2との溶接による接合性もさらに向上する。
この第3ワイヤ5’の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
また、溶接部17’は、外径漸減部15の基端151と外径漸減部15の先端152との間(外径漸減部15の途中)に位置しており、図示のように、第3ワイヤ5’は、そのほぼ全長に渡り先端方向へ向かって外径が連続的に漸減するテーパ状をなしている。上述したような第3ワイヤ5’の構成材料の弾性率は、第1ワイヤ2の構成材料の弾性率より大きいものであるが、第3ワイヤ5’を図示の構成とすることにより、ガイドワイヤ1’の先端部の剛性が極端に大きくなるのを防止することができる。
なお、第3ワイヤ5’のテーパ状部分のテーパ角度は、長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化していてもよい。
また、第3ワイヤ5’は、図示と異なり、その一部に外径が長手方向に沿って一定の部分があってもよい。例えば、第3ワイヤ5’は、先端方向へ向かって外径が漸減するテーパ状のテーパ部が長手方向に沿って複数個所に形成され、これらのテーパ部とテーパ部との間に外径が長手方向に沿って一定の部分が形成されているようなものでもよい。このような場合でも、前記と同様の効果が得られる。また、第3ワイヤ5’は、図示と異なり、その先端側の部分の外径が長手方向に沿って一定のものでもよい。
なお、本実施形態で示したように、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合も溶接によるものが好ましいが、その他の任意の方法を用いることもできる。
このようなガイドワイヤ1’も、前記第1実施形態のガイドワイヤ1と同様にして使用することができる。
以上、本発明のガイドワイヤを図示の各実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
1 ガイドワイヤ
2 第1ワイヤ
21 接続端面
22 接続端面
3 第2ワイヤ
31 接続端面
4 コイル
5 第3ワイヤ
51 接続端面
52 接続端面
6 第4ワイヤ
61 接続端面
11、12、13 固定材料
16、17、18 溶接部
15 外径漸減部
151 外径漸減部の基端
152 外径漸減部の先端
1’ ガイドワイヤ
5’ 第3ワイヤ
51’ 接続端面
14、17’ 溶接部
20 バルーンカテーテル
201 バルーン
30 ガイディングカテーテル
40 大動脈弓
50 右冠状動脈
60 右冠状動脈開口部
70 血管狭窄部

Claims (5)

  1. 先端側に配置され、Ni−Ti系合金で構成された線状の第1ワイヤと、
    前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい材料で構成された線状の第2ワイヤと、
    前記第1ワイヤの先端側に配置され、希望通りの形状を形作ることができ、かつその形状を維持することができるようNi合金で構成された線状の第3ワイヤとを備え、
    前記第1ワイヤと前記第3ワイヤとは、溶接により連結されていることを特徴とするガイドワイヤ。
  2. 前記第3ワイヤは、前記第1ワイヤを先端側に延長するように配置されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
  3. 前記第1ワイヤの先端と前記第3ワイヤの基端とが、端面同士の突き合わせ溶接により連結されてなるものであり、外径が0.2〜1.2mmである請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
  4. 前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金で構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のガイドワイヤ。
  5. 前記Ni合金は、Ni−Cr系合金またはNi−Co系合金である請求項1ないし4のいずれかに記載のガイドワイヤ。
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