JP2011156402A - X線ct装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被検体への造影剤注入量およびX線による被曝をより低減させつつ、より短時間で心筋パーフュージョン像を作成することが可能なX線CT装置である。
【解決手段】X線CT装置1は、被検体Pに造影剤を持続的に注入して、注入開始直後から注入された造影剤が心筋に到達して増加し、さらに一定値に飽和したとみなせる状態になるまでを濃度遷移期間と定義すると、濃度遷移期間を経た後、心筋部における造影剤の濃度が一定とみなせる濃度一定期間を得るスキャン制御装置18と、濃度一定期間および濃度遷移期間に心電図同期で造影CT画像データを収集する画像取得ユニット24cと、スライス方向の造影CT画像データの解像度を低減させるスライス厚加算ユニット24bと、濃度一定期間および濃度遷移期間に収集された、解像度を低減させた造影CT画像データから血流画像を生成する血流画像生成ユニット24eと、を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、造影剤を持続的に注入して冠動脈造影CT画像や心筋造影CT画像等の造影CT画像を撮影し、得られた造影CT画像を用いて心筋パーフュージョン像を生成するX線CT装置に関する。
X線CT装置を用いた心臓の造影検査では、造影剤が患者である被検体に持続的に注入され、造影CT画像が収集される。そして、収集された造影CT画像から冠動脈や心内腔壁運動像等が作成されて診断に供される。
又、X線CT装置を用いて心筋の血流動態(パーフュージョン:perfusion )の検査や脳組織内等の器官についてのパーフュージョン検査が実施されている。これらのパーフュージョン検査においては、造影剤を短時間で注入するボーラス注入によりダイナミック撮影を行い、得られたダイナミック造影CTデータを解析することによりパーフュージョン像を生成する試みが従来から研究によりなされている。
しかし、通常、このようなパーフュージョン像の撮影は単独検査ではなく、造影検査の一環として実施される。例えば、心筋パーフュージョン像の撮影の場合には、心筋パーフュージョン像のスキャンとは別に冠動脈、心内腔壁運動のような心機能解析のためのスキャンも実施される。このため、心筋パーフュージョン像のスキャンが長時間に亘り、X線による被検体の被曝の増加に繋がるような検査方法は受け入れ難く、X線CT装置による長時間のダイナミック撮影は実用化されていないのが現状である。このような背景から、脳組織内の毛細血管の血流動態についての検査では、一時に被検体に造影剤が注入され、より短時間で撮影が行なわれる(例えば特許文献1参照)。つまり、被検体に注入される造影剤の濃度変化に時間的なピークが形成されるような手法で造影剤が注入され、脳組織内の毛細血管に造影剤が移行するタイミングでX線CT装置による撮像が実施される。そして、X線CT装置による撮像により得られたCT画像を用いて、脳組織内の毛細血管における造影剤の時間的な濃度変化に基づいて血流動態に関する情報が求められる。
特開2003−116843号公報
従来の一時に被検体に造影剤が注入して血流動態に関する情報を求める手法では、撮像時間とともに被検体の被曝時間の増加を抑制できるものの、血流動態以外の器官、例えば冠動脈の画像や心機能解析データの収集のためには、別途X線による撮像が必要となる。このため、より一層の撮影時間の短縮化が求められる。
さらに、心筋パーフュージョン像や心筋画像の撮影のために、スキャンがそれぞれ実施されるため、撮影時間の増加とともに造影剤の注入回数および注入量も増加することとなる。しかし、被検体への造影剤の注入可能な量には上限があり、この結果、撮像時間や撮像回数も制限を受けることになる。このため、心筋パーフュージョン像の撮影時間を長時間確保することが困難になるという問題がある。
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、被検体への造影剤注入量およびX線による被曝をより低減させつつ、より短時間で心筋パーフュージョン像を作成することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
本発明に係るX線CT装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、被検体に造影剤を持続的に注入して、注入開始直後から注入された造影剤が心筋に到達して増加し、さらに一定値に飽和したとみなせる状態になるまでを濃度遷移期間と定義すると、前記濃度遷移期間を経た後、前記心筋部における前記造影剤の濃度が一定とみなせる濃度一定期間を得る手段と、前記濃度一定期間および前記濃度遷移期間に心電図同期で造影CT画像データを収集する手段と、スライス方向の前記造影CT画像データの解像度を低減させるスライス厚加算手段と、前記濃度一定期間および前記濃度遷移期間に収集された、前記解像度を低減させた造影CT画像データから血流画像を生成する血流画像生成手段と、を有することを特徴とするものである。
本発明に係るX線CT装置においては、被検体への造影剤注入量およびX線による被曝をより低減させつつ、より短時間で心筋パーフュージョン像を作成することができる。
本発明に係るX線CT装置の実施の形態を示す構成図。 被検体の心臓、心筋内、冠状動脈内における造影剤の振る舞いをモデル化した図。 図2に示すモデルをパラメータを用いて概念的に表現した図。 図1に示す造影剤注入装置8により被検体に造影剤が持続的に静注されることによる冠動脈および心筋部における造影剤の時間的な濃度変化を示す図。 図1に示すX線CT装置1により心筋パーフュージョン像を生成する際の手順の一例を示すフローチャート。 図1に示すX線CT装置により心筋の造影CT画像データに対してマトリクスの縮小処理を実行して得られる画像の一例を示す図。 図1に示すX線CT装置により心筋の造影CT画像データから心筋パーフュージョン像を生成する手順と、得られた心筋パーフュージョン像を示す図。 図1に示すX線CT装置により心筋パーフュージョン像の断面変換処理により得られたオブリーク断面画像の一例を示す図。 図1に示すX線CT装置により心筋パーフュージョン像と心筋の画像とを合成させて得られた画像の一例を示す図。 図1に示すX線CT装置の画像表示部に血流画像を自動的に表示条件を設定して表示させた例を示す図。
本発明に係るX線CT装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るX線CT装置の実施の形態を示す構成図である。
X線CT装置1は、ガントリ部2およびコンピュータ装置3とから構成される。ガントリ部2は、X線管4、高電圧発生装置5、X線検出器6、データ収集部7(DAS;Data Aquisition System)、造影剤注入装置8および心電計9とを有する。X線管4とX線検出器6とは、高速で且つ連続的に回転する図示しない回転リングに被検体Pを挟んで互いに対向する位置に搭載される。
造影剤注入装置8は、コンピュータ装置3からの制御信号により制御され、一定の条件に従って被検体Pに造影剤を持続的に注入する機能を有する。造影剤注入装置8は、造影剤の被検体P内における振る舞いに基づいて、被検体Pに注入する造影剤の量および濃度を制御することができる。
図2は、被検体の心臓、心筋内、冠状動脈内における造影剤の振る舞いをモデル化した図である。
被検体P内部では、図示しない大動脈から冠状動脈10が分岐し、分岐した冠状動脈10からさらに毛細血管11が分岐する。毛細血管11は心筋12内に導かれ、心筋12は毛細血管11と心筋細胞13とから構成される。心筋細胞13には間質14という領域が存在し、間質14と毛細血管11との間で血液が出入りできる構造となっている。
このため、被検体Pに造影剤を注入すると、造影剤は血液とともに大動脈から冠状動脈10に、冠状動脈10から毛細血管11へと導かれる。さらに、造影剤が毛細血管11内において血液とともに流れて心筋細胞13に到達すると、造影剤の一部は毛細血管11から心筋細胞13内の間質14に流入する。また、心筋細胞13内の間質14に流入した血液の一部は、再び心筋細胞13から流出して毛細血管11内へと移動する。
従って、大動脈や冠状動脈10中における造影剤の血液中の濃度と、心筋細胞13内や毛細血管11内における造影剤の血液中の濃度とは、異なる値となりかつ造影剤の移動により時間的に変化する。被検体P内の各所における造影剤の血液中の濃度は、造影剤が毛細血管11から心筋細胞13内の間質14に流入する際における移行定数と、造影剤が心筋細胞13内の間質14から毛細血管11に流入する際における移行定数とから決定される。
すなわち、時刻tにおける心臓左室内腔内あるいは冠状動脈血中における造影剤の濃度をCa(t)、毛細血管11および心筋細胞13を含めた心筋12内のある領域を単位領域として、心筋12における血液中の造影剤の濃度(毛細血管11中と心筋細胞13内の造影剤の平均の濃度)をCmyo(t)、造影剤が毛細血管11から心筋細胞13内の間質14に流入する際における移行定数をK1、造影剤が毛細血管11から心筋細胞13内の間質14に流出する際における移行定数をk2とすると、Ca(t)およびCmyo(t)は移行定数K1および移行定数k2で決定される。
図3は、図2に示すモデルをパラメータを用いて概念的に表現した図である。
図3に示すように、ある時刻tにおいて、濃度Ca(t)の造影剤が移行係数K1に比例した量で毛細血管11から心筋細胞13の間質14に移動する一方、心筋細胞13の間質14からは、濃度Cmyo(t)の造影剤が移行係数k2に比例した量で毛細血管11内に移動する。そして、造影剤の移動後の濃度Ca(t)およびCmyo(t)が移行定数K1および移行定数k2で決定される。
従って、ある時刻tにおける心筋12内における造影剤の濃度Cmyo(t)は、間質14に流入する造影剤の量と間質14から流出する造影剤の量の差で表現できることから式(1)が成立する。
一方、従来から、一定の条件で被検体Pに造影剤を静注すると、冠状動脈中および心筋12内における造影剤の血液中の濃度が一定とみなせる濃度一定期間が現れることが知られている。
図4は、図1に示す造影剤注入装置8により被検体に造影剤が持続的に静注されることによる冠動脈および心筋部における造影剤の時間的な濃度変化を示す図である。
図4において、縦軸は造影剤の濃度Cを示し、横軸は時間tを示す。また、図4中の実線は、冠動脈中における造影剤の濃度Ca(t)の時間変化を示すデータであり、点線は、心筋細胞13および毛細血管11で構成される心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)の時間変化を示すデータである。
図4に示すように、例えば始めのt1秒間は注入速度x1[cc/sec]で持続的に造影剤を注入し、その後のt2秒間は注入速度x2[cc/sec]で造影剤を持続的に注入すると、冠動脈血中における造影剤の濃度Ca(t)が一定とみなせる区間T1(濃度一定期間)および心筋領域における造影剤の濃度Cmyo(t)が一定とみなせる区間Tが得られる。この例では、注入速度3cc/秒で20秒間に渡って静注し、引き続き注入速度1.5cc/秒で30秒を行うものとしている。
このため、心筋領域における造影剤の濃度Cmyo(t)が一定とみなせる区間T1において心電図同期で心筋部のX線CTデータを収集すれば、その後のX線CTデータを用いた各種処理により血流画像を生成することが容易となる。そこで、造影剤注入装置8は、一定の条件に従って、単位時間当たり所要の量の造影剤を被検体P内に注入し、冠動脈血中および心筋部における造影剤の濃度Ca(t)、Cmyo(t)が一定とみなせる状態を得ることができるようにされる。
尚、造影剤の注入条件は、冠動脈中の造影剤の濃度Ca(t)がX線CTデータの収集の間に一定となるように、経験的に決まる方法であるため、注入速度には多少の相違が存在する。この造影剤の静注の際における注入速度等の推奨条件は例えば「八町淳、輪湖正:螺旋走査型CTにおける最適造影検査の方法の検討、日獨医報第40巻第2号1995年」等の文献に記載されている。
ただし、現実には、図4に示すように冠動脈中の造影剤の濃度Ca(t)が一定とならない区間T2が存在する場合もある。このような場合であっても、冠動脈中の造影剤の濃度Ca(t)の時間変化が一定であり線形性を有するとみなせる状態であれば、血流画像の生成に用いることができるため、冠動脈中の造影剤の濃度Ca(t)の時間変化が一定となるように、造影剤注入装置8により造影剤の注入条件が調整される。
ところで、被検体Pに造影剤を持続的に注入して、注入開始直後から注入された造影剤が心筋に到達して増加し、冠動脈血中における造影剤の濃度Ca(t)および心筋領域における造影剤の濃度Cmyo(t)がそれぞれ一定値に飽和したとみなせる状態になるまでを濃度遷移期間Ttと定義すると、濃度遷移期間Ttでは、心筋領域における造影剤の濃度Cmyo(t)が冠動脈血中、特に左室内腔における造影剤の濃度Ca(t)よりも十分小さくなり、式(2)に示す近似式が成立し得る。
[数2]
Ca(t)>>kCmyo(t) ……(2)
従って、式(2)が成立する濃度遷移期間Ttでは、式(1)は式(3)のように近似することができる。
さらに、式(3)の両辺を時間積分すると、式(4)が得られる。
従って、式(4)から式(5)が導かれる。
式(5)は、濃度遷移期間Ttにおける冠動脈血中、特に左室内腔の造影剤の濃度Ca(t)および特定の心筋部位A(冠動脈血が左室内腔における血流である場合には左室心筋の心筋部位、以下、特定心筋部位と称する)の造影剤の濃度Cmyo(t)を求めることができれば、特定心筋部位AにおけるK1を一般的にパトラックプロット法(グラフィカルプロット法)と呼ばれる手法で求めることができることを示している。
一方、心電計9は、被検体Pに接着させた図示しない電極と接続される。心電計9は、被検体Pから電極を介して心電信号(ECG信号)を検出し、検出したECG信号から被検体Pの心電図を生成してコンピュータ装置3に与える機能を有する。
そして、高電圧発生装置5はコンピュータ装置3からの制御信号により冠動脈および心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)、Ca(t)が一定あるいは線形性を有する間に、心電図に同期してX線管4に管電流や管電圧を供給し、X線検出器6で被検体Pを透過したX線を検出できるように構成される。さらに、X線検出器6で検出されたX線検出信号はデータ収集部7に与えられてデジタル化され、コンピュータ装置3に与えられる。
また、造影剤が心筋左心室内腔内等の部位を通過して心筋に到達するタイミングを知るために、特定心筋部位をモニタすべく、遷移期間において特定心筋部位上の任意のスライス位置からのX線データをダイナミック収集する機能がX線CT装置1に備えられる。この遷移期間においてダイナミック収集された特定心筋部位におけるデータもデータ収集部7を経てコンピュータ装置3に与えられる。
尚、造影剤が心筋に到達し、濃度遷移期間Ttから区間T1(濃度一定期間)に変わるタイミングを知るための技術の例としては、例えば、特開2003−245275号公報に開示されている。
すなわち、造影剤濃度(又はCT値)が所定の閾値に達したか否かを判定する方法、造影剤濃度(又はCT値)をグラフ化し、グラフの接線の傾斜角度が所定の角度に達したか否かを判定する方法、あるいは造影剤濃度(又はCT値)をグラフ化し、グラフがピークに達したか否かを判定する方法等の任意の方法により自動的に造影剤が心筋に到達するタイミングを設定する技術が開示されている。ただし、この方法によらず、心電同期CT画像や図4に示すような造影剤濃度の時間変化曲線をグラフ表示させて、ユーザが任意に造影剤が心筋に到達するタイミングを目視により把握できるように構成してもよい。
コンピュータ装置3は、画像処理装置15、画像表示部16、入力部17およびスキャン制御装置18とから構成される。スキャン制御装置18は、心電計9により収集された心電図に基づいて高電圧発生装置および造影剤注入装置8に制御信号を与えて制御することにより心電図同期CTの収集を実行させる機能を有する。
特に、スキャン制御装置18には、上述した濃度遷移期間Ttから区間T1(濃度一定期間)に変わるタイミングを任意の方法で検出する機能が備えられる。そして、スキャン制御装置18により、図示しない寝台を停止させて濃度遷移期間Ttにおいて特定心筋部位Aからのデータを収集することにより心電図同期CT画像を生成するプリスキャンと、図示しない寝台を移動させて濃度一定期間である区間T1において心筋全体からのデータを収集することにより心電図同期CT画像を生成する本スキャンを実行することができるように構成される。
また、画像処理装置15は、制御部19を中枢として、データ収集部7から出力される生データを補正処理等を経て投影データに変換する前処理部20、投影データを記憶するメモリ部21、投影データからCT画像データを再構成する画像再構成部22、CT画像データを保管する記憶装置23、記憶装置23からCT画像データを読み込んで心筋パーフュージョン像を生成する心筋パーフュージョン像生成システム24とから構成される。
心筋パーフュージョン像生成システム24は,画像取得ユニット24a、スライス厚加算ユニット24b、マトリクス縮小ユニット24c、マスク処理ユニット24d、血流画像生成ユニット24e、オブリーク断面変換ユニット24f、画像合成ユニット24gおよび表示処理ユニット24hを備える。
画像取得ユニット24aは、記憶装置23から造影剤による心筋の造影CT画像データを読み込んで取得する機能と、取得した造影CT画像データを他の心筋パーフュージョン像生成システム24の構成要素に与える機能とを有する。
スライス厚加算ユニット24bは、画像取得ユニット24aから心筋の造影CT画像データを受けて隣接するスライス間の造影CT値を加算し、あるいは平均をとることによりスライス方向の造影CT画像データの解像度を下げる機能を有する。
マトリクス縮小ユニット24cは、画像取得ユニット24aから心筋の造影CT画像データを受けて、造影CT値に対して加算処理および加算平均処理の一方を施すことによりマトリクスを縮小する機能を有する。
マスク処理ユニット24dは、画像取得ユニット24aから心筋の造影CT画像データを受けてマスク処理を行うことにより、心筋部のうち血流が存在する領域を抽出する機能を有する。すなわち、マスク処理ユニット24dは、心筋領域部分を決定する領域決定ユニットとして機能する。
血流画像生成ユニット24eは、マスク処理ユニット24dにより抽出された血流領域における血流画像を生成する機能を有する。ここで、血流画像の生成方法について説明する。
図4に示すように、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)が一定とみなせる場合には、式(1)の左辺が0となるため、式(6)が得られる。
式(6)より式(1)は式(7)のように表される。
さらに式(7)を変形すると式(8)が得られる。
式(8)において、冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)が一定とみなせる場合には、通常の胸痛を有する患者に対して発症から数時間以内など、心筋部への血流が全くないなどの壊死のない状況下では、心筋は生きており、k2は正常の範囲にあると判断されるのでk2もCa(t)と同様に一定とみなせ、式(9)に示すように移行定数K1は、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)に比例することになる。
さらに、移行定数K1は、血流濃度中おける造影剤の割合を示す値(extraction fraction)をE、血流動態の指標となる単位時間、単位重量中における血流量である血流パーフュージョン(blood perfusion [ml/100g/min])をFとすると、K1=E×Fの関係にあることが知られている。
従って、式(10)に示すように、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)は、心筋部における血流パーフュージョンFに比例することとなる。
つまり、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)は、血流パーフュージョンFの相対値を示していることが分かる。従って、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)を求めることができれば、血流パーフュージョンFの相対値を知ることができる。
ここで、造影剤を注入して得られる心筋の造影CT画像データのCT値は、心筋組織成分である心筋のみのCT値と造影剤成分の画像のCT値との合計となる。従って、心筋の造影CT画像データから心筋のみのCT値を減算すれば、造影剤成分の画像のCT値と比例的関係にある心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)を求めることができる。
そこで、血流画像生成ユニット24eには、マスク処理ユニット24dにより抽出された血流領域において、心筋の造影CT画像データから心筋のみのCT値を減算することにより血流パーフュージョンFの相対値Rを表す造影剤成分の画像を血流画像の1つである血流相対画像として生成する機能が備えられる。つまり、血流画像生成ユニット24eは、心筋における相対的な血流量の情報として血流相対画像を求める血流情報取得ユニットとしての機能を兼ねている。
尚、冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)が一定ではないとみなせる場合には、式(8)から式(9)を導くことができない。しかし、冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)の時間変化率が一定であるか、造影剤の濃度とCT値との間に線形性がある場合には、この冠動脈血中の造影剤の濃度の時間的な変化率に基づいて補正係数を求め、求めた補正係数を用いて造影剤成分の血流相対画像を補正することができる。例えば式(11)に示すようにある時刻t0における冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t0)を基準として時刻tにおける冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)との比を補正係数α(t)として、補正係数α(t)を造影剤成分の血流相対画像のCT値に乗じることにより補正することができる。
[数11]
α(t)=Ca(t)/Ca(t0) ……(11)
このため、血流画像生成ユニット24eには、冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)が一定ではない場合には、補正係数α(t)を求めて造影剤成分の血流相対画像を補正する機能が備えられる。
さらに、式(5)において、濃度遷移期間Ttの時刻tにおける左室内腔等の冠動脈血中の造影剤濃度Ca(t)および特定心筋部位Aの造影剤濃度Cmyo(t)は、前述のように濃度遷移期間Ttに収集した特定部位Aにおける心電図同期CT画像から求めることができる。従って、特定心筋部位AにおけるK1の値も求めることができる。
ここで、特定心筋部位AにおけるK1の値をK1aとする一方、血流相対画像として求めた特定心筋部位Aにおける血流パーフュージョンFの相対値RをRaとすると、前述のようにK1=E×Fの関係にあることから対応部位における血流パーフュージョンFの相対値RにK1a/(E×Ra)を乗じれば対応部位における血流パーフュージョンFの相対値Rを血流パーフュージョンFの絶対値に変換することができる。つまり、K1a/(E×Ra)を補正値とみなし、血流相対画像を補正値で補正することにより血流絶対画像(血流値画像とも言う)に変換することができる。この場合、E=1.0としてK1aを血流とみなしても良い。
尚、補正値であるK1a/(E×Ra)は、濃度遷移期間における複数のCT像に基づいて求めた造影剤の濃度の変化速度を表している。
さらに、この対応部位における血流絶対画像と、他の心筋パーフュージョンの断層像における心筋部の画像強度には、値の連続性等の関連性があるため、他の心筋断面における血流パーフュージョンFの相対値Rにも同様にK1a/(E×Ra)を乗じれば心筋全体の断層像に対して、血流パーフュージョンFの相対値Rを血流パーフュージョンFの絶対値に変換することができる。
すなわち、濃度遷移期間において求めた心筋の血流絶対画像を用いて、濃度一定期間において求めた同一スライス位置の心筋画像との値の関係を求めることにより、濃度一定期間において求めた心筋全体にわたる血流相対画像を血流絶対画像に変換することができる。そして、このようにして、心筋における血流画像を相対値から絶対値に変換し、心筋全体にわたる局所心筋血流の絶対値の分布画像を得ることができる。
このため、血流画像生成ユニット24eには、濃度遷移期間Ttに収集した特定部位Aにおける心電図同期CT画像を画像取得ユニット24aから受けて、特定心筋部位AにおけるK1の値を求める機能と、求めたK1を用いて血流パーフュージョンFの相対値Rを血流パーフュージョンFの絶対値に変換することにより血流絶対画像を生成する機能とが備えられる。
従って、血流画像生成ユニット24eは、補正値としてK1a/(E×Ra)を求める補正値算出ユニットとしての機能を兼ねている。
オブリーク断面変換ユニット24fは、血流画像生成ユニット24eにより生成された心筋の血流画像の断面を変換し、任意の断面における断面画像、例えば心筋の長手方向を軸とする環状の断面画像を生成する機能を有する
画像合成ユニット24gは、マトリクス縮小処理およびスライス間における造影CT値の加算前の解像度の高い心筋の画像、すなわち、画像取得ユニット24aから受けた心筋の造影CT画像データのうちマスク領域の画像データと血流画像生成ユニット24eにより生成された心筋の血流画像とを合成した画像を生成し、マスク領域の画像データと心筋の血流画像とを重ね合わせして同位置画面上にそれぞれの画像の透明度等の任意の値を調整して表示できるようにする機能を有する。
表示処理ユニット24hは、血流画像生成ユニット24e、オブリーク断面変換ユニット24fおよび画像合成ユニット24gによりそれぞれ生成された血流画像、オブリーク断面画像、合成画像等の各画像を表示させるための画像信号を画像表示部16に与えて表示させる機能と、表示された各画像において血流画像が視認できるような表示条件を設定する機能を有する。
また、表示処理ユニット24hは、画像の表示条件を設定する際には、画像表示部16に表示条件の設定を指示するための画像を表示させる一方、入力部17から画像の表示条件の指示を取得するように構成される。
画像の適切な表示条件の例としては、例えば表示させる画素値の下限を心筋のCT値とする一方、表示させる画素値の上限を心筋のCT値に心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)を加算した値とし、血流画像のみを選択的に表示させるような表示方法の他、画素値が心筋のCT値から心筋のCT値に心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)を加算した値までの範囲である部分を画素値に応じたカラー表示とする表示方法が挙げられる。この場合、入力部17からの情報を受け取って、画素値の上限をデフォルト値から微調整できるようにすることもできる。
そのために、表示処理ユニット24hには、例えば、造影剤で染影された心筋部に対応する値及び心筋に対応する値に基づいて階調および色調の少なくとも一方の変換処理を行う際のウィンドウレベル値を設定する機能を備えることもできるし、造影剤で染影された心筋部に対応する値と心筋に対応する値との間の値を有する画素が強調されるように階調および色調の少なくとも一方の変換処理を行う際のウィンドウレベル値を設定する機能を備えることもできる。
次に、X線CT装置1の作用について説明する。
図5は、図1に示すX線CT装置1により心筋パーフュージョン像を生成する際の手順の一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まずステップS1において、スキャン制御装置18からの制御信号により造影剤注入装置8が制御され、図4に示すように、造影剤注入装置8から一定の条件に従って造影剤が持続的に被検体Pに注入される。
そして、ステップS2において、スキャン制御装置18の制御により図示しない寝台を停止させたプリスキャンが実行される。そして、造影剤が心筋左心室内腔内等の部位を通過して心筋に到達するタイミングを知るために、特定心筋部位をモニタすべく、心筋領域における造影剤の濃度Cmyo(t)が左室内腔における造影剤の濃度Ca(t)よりも十分に小さい遷移期間において特定心筋部位上の任意のスライス位置の造影CT画像データが心電同期でダイナミック収集される。
すなわち、被検体Pに接着して設けられた図示しない電極を介して心電計9によりECG信号が検出される。そして、心電計9により心電図が取得され、スキャン制御装置18に与えられる。さらに、心電計9により取得された心電図に基づいてスキャン制御装置18から制御信号が高電圧発生装置5に与えられる。このため、心電波形に同期して高電圧発生装置5からX線管4に管電流や管電圧が供給され、被検体PにX線が照射される。
被検体Pに照射され、被検体Pを透過したX線は、X線検出器6で検出される。X線検出器6の出力であるX線検出信号はデータ収集部7に与えられてデジタル化された生データが生成される。データ収集部7は、生成した生データを前処理部20に与え、前処理部20は生データに各種補正処理等の前処理を施して投影データに変換する。前処理部20において得られた投影データは、メモリ部21において一時的に保存された後、画像再構成部22に与えられる。そして、画像再構成部22において、投影データからCT画像データが再構成され、再構成されたCT画像データは記憶装置23に書き込まれて保存される。
尚、被検体Pには造影剤が注入されるため、記憶装置23に保存されるCT画像データは造影CT画像データとなる。また、心電図と同期されてCT画像が収集されるため、心筋の収縮あるいは拡張期において心筋各部の同一期における心筋の造影の体軸横断画像が得られる。そして、記憶装置23に保存された造影CT画像データは、画像取得ユニット24aにより取得され、心筋パーフュージョン像生成システム24に与えられる。
さらに、遷移期間を経過すると、被検体Pの動脈血中における造影剤の濃度Ca(t)が一定あるいは時間的な変化率が一定とみなせる状態となる。また、心筋部の造影剤の濃度Cmyo(t)についても一定とみなせる状態となる。
このため、スキャン制御装置18により、上述した任意の方法で自動的に造影剤が心筋に到達するタイミングが検出される。ただし、心電同期CT画像や図4に示すような造影剤濃度の時間変化曲線をグラフ表示させて、ユーザが任意に造影剤が心筋に到達するタイミングを目視により把握するようにしてもよい。
そこで、ステップS3において、スキャン制御装置18の制御により、必要に応じて一定のディレイ時間が経過したタイミングで、図示しない寝台を移動させた本スキャンが開始される。そして、心筋部の造影剤の濃度Cmyo(t)が一定とみなせる期間において、心電同期で心筋全体の造影CT画像データが収集される。このとき、心筋の診断用として、必要に応じて心筋の収縮から拡張までの一連の周期において、同一周期の各スライスにおける体軸横断画像のセットが取得され、取得された各体軸横断画像の断面変換により心筋の短軸横断像(short axis)、長軸水平断層像(horizontal long axis)、長軸垂直断層像(vertical long axis)等の各種画像が得られる。
そして、このように収集され、種々の断面変換された心筋の造影CT画像データから心筋パーフュージョン像生成システム24により心筋パーフュージョン像を生成することができる。
ここで、心筋の造影CT画像データの解像度のまま心筋パーフュージョン像を生成しようとすると、ノイズの影響を受ける恐れがある。そこで、心筋パーフュージョン像の生成の前処理として、必要に応じて解像度の低減化処理が心筋の造影CT画像データに施される。
すなわち、ステップS4において、スライス厚加算ユニット24bは、画像取得ユニット24aから心筋の造影CT画像データを受けて隣接する複数のスライスにおける造影CT値を加算し、あるいは平均をとることによりスライス方向の造影CT画像データの解像度低減化処理を行う。例えば、心筋の造影CT画像データのスライス厚は0.5mm程度であることが一般的であり、心筋パーフュージョン像の生成用として心筋の造影CT画像データを用いるために、スライス厚が3mm、5mmあるいは10mm程度となるようにスライス方向の解像度が低下せしめられる。
さらに、ステップS5において、マトリクス縮小ユニット24cは、各スライスにおける心筋の造影CT画像データの造影CT値を加算し、あるいは平均をとることによりマトリクスの縮小処理を実行する。
図6は、図1に示すX線CT装置1により心筋の造影CT画像データに対してマトリクスの縮小処理を実行して得られる画像の一例を示す図である。
図6(a)は、マトリクス縮小処理前における心筋の造影CT画像データを示し、図6(b)は、マトリクス縮小処理後における心筋の造影CT画像データを示す。
図6(a)に示すように、マトリクス縮小処理前における心筋の造影CT画像データは例えば664マトリクスであり、単位ピクセル当たりのセルサイズは0.3mmである。このような664マトリクスの心筋の造影CT画像データにおいて、隣接あるいは近傍の造影CT値が加算ないし平均化され、図6(b)に示すような256マトリクスで単位ピクセル当たりのセルサイズが0.778mmの心筋の造影CT画像データが得られる。
尚、スライス厚の加算処理およびマトリクス縮小処理の処理順序は逆であってもよく、任意である。
次に、ステップS6において、解像度の低減化処理が完了すると、マスク処理ユニット24dにより心筋の造影CT画像データに対してマスク処理が施され、心筋の造影CT画像データのうち、血流が存在する領域が抽出される。
続いてステップS7において、血流画像生成ユニット24eにより、マスク処理後の血流が存在する領域における造影CT画像データから心筋のCT値が減算されて心筋パーフュージョンの相対値で表された血流相対画像が心筋パーフュージョン像として生成される。
図7は、図1に示すX線CT装置1により心筋の造影CT画像データから心筋パーフュージョン像を生成する手順と、得られた心筋パーフュージョン像を示す図である。
図7(a)は、解像度の低減化処理後の各スライスにおける心筋の造影CT画像データである。図7(a)に示すような心筋の各造影CT画像データに対してマスク処理ユニット24dによりマスク処理が施されて、図7(b)に示すような血流が存在する領域が抽出される。図7(b)は、左室心筋を中心にCT値が0から150の間となるようにマスク処理を施した例である。血流が存在する領域が抽出されたことが確認できる。
さらに、図7(b)に示すように抽出された造影CT画像データから心筋のCT値の減算処理が血流画像生成ユニット24eにより実行され、造影剤成分の画像が得られる。図7(c)は、血流画像生成ユニット24eによる減算処理で得られた造影剤成分の画像、すなわち心筋パーフュージョン像であり、心筋のCT値を34として一律に造影CT画像データから引算(バックカット)した例である。この計算により心筋成分を画像から除去する。
また、冠動脈血中の造影剤の濃度Ca(t)が一定とみなせない場合には、血流画像生成ユニット24eにより式(11)に示すように補正係数α(t)が求められ、造影剤成分の画像に補正係数α(t)が乗じられて補正される。
次に、ステップS8において、血流画像生成ユニット24eにより、濃度遷移期間Ttにおいてダイナミック収集された特定心筋部位A上のスライス位置の造影CT画像データに基づいて心筋パーフュージョンの相対値が血流パーフュージョンの絶対値に変換される。そのためにまず、濃度遷移期間Ttの時刻tにおける左室内腔の造影剤濃度Ca(t)および特定心筋部位Aの造影剤濃度Cmyo(t)が濃度遷移期間Ttにおいてダイナミック収集された心電図同期CT画像から求められる。
濃度遷移期間Ttでは、式(2)に示す近似式が成立し、式(5)により特定心筋部位AにおけるK1がパトラックプロット法と呼ばれる手法で左室内腔の造影剤の濃度Ca(t)および特定心筋部位Aの造影剤の濃度Cmyo(t)から求められる。そして、特定心筋部位AにおけるK1の値K1aおよび血流パーフュージョンFの相対値RaからK1a/(E×Ra)が求められ、対応部位における血流パーフュージョンFの相対値RにK1a/(E×Ra)を乗じることにより血流パーフュージョンFの絶対値が得られる。この結果、血流相対画像から血流絶対画像が得られる。
尚、血流絶対画像と血流相対画像とは表示上は実質的に同一であり、血流絶対画像に割り当てられる画素値が血流パーフュージョンFの絶対値に関連付けられる点のみ相異する。
また、対応部位における血流絶対画像と、他の心筋パーフュージョンの断層像における心筋部の画像強度には、値の連続性等の関連性があるため、他の心筋断面における血流パーフュージョンFの相対値Rにも同様にK1a/(E×Ra)が乗じられて、心筋全体の断層像に対して、血流パーフュージョンFの相対値Rが血流パーフュージョンFの絶対値に変換される。このようにして、心筋における血流画像は相対値から絶対値に変換され、心筋全体にわたる局所心筋血流の絶対値の分布画像が血流画像生成ユニット24eにより得られる。
そして、このように生成された心筋パーフュージョン像は診断に供される。さらに、必要に応じて、診断容易化のため、心筋パーフュージョン像に各種処理が施される。
例えば、ステップS9において、オブリーク断面変換ユニット24fにより心筋パーフュージョン像の断面を変換処理が施されて、心筋パーフュージョン像のオブリーク断面画像が生成される。尚、このステップS9は、ステップS3の後に実施してもよい。
図8は、図1に示すX線CT装置1により心筋パーフュージョン像の断面変換処理により得られたオブリーク断面画像の一例を示す図である。
心筋は、長軸と短軸を有する楕円面状の形状であるため、図8に示すように、心筋パーフュージョン像を心筋の長手方向を軸とする環状の断面画像に変換することにより、診断容易化に繋げることができる。
さらに、心筋パーフュージョン像を心筋の画像と合成させて表示させることにより、診断の際における利便性を向上させることができる。この場合、心筋パーフュージョン像に合成させる心筋の画像は、ステップS4、ステップS5におけるマトリクス縮小処理およびスライス間における造影CT値の加算前の解像度の高い心筋の画像を用いることが、より効果的である。
そこで、ステップS10において、画像合成ユニット24gは、マトリクス縮小処理およびスライス間における造影CT値の加算前の解像度の高い心筋の画像を画像取得ユニット24aから受けて、心筋パーフュージョン像と合成した画像を生成する。
図9は、図1に示すX線CT装置1により心筋パーフュージョン像と心筋の画像とを合成させて得られた画像の一例を示す図である。
図9(a)は、画像取得ユニット24aにより取得されたマトリクス縮小処理およびスライス間における造影CT値の加算前の解像度の高い心筋の画像であり、図9(c)は、解像度低下処理後の心筋の画像から得られた心筋パーフュージョン像である。そして、図9(a)に示す高解像度の心筋画像と図9(c)に示す低解像度の心筋パーフュージョン像とを合成させることにより、図9(b)に示すような心筋および血流を示すFusion画像を得ることができる。このように、心筋画像と血流画像とを合成させることにより、診断を容易化することができる。
さらに、血流画像生成ユニット24e、オブリーク断面変換ユニット24fおよび画像合成ユニット24gによりそれぞれ生成された血流画像、オブリーク断面画像、合成画像等の各画像は、表示処理ユニット24hに与えられる。そして、表示処理ユニット24hから各画像を表示させるための画像信号が画像表示部16に与えられて表示される。
ここで、ユーザは入力部17から各画像の表示条件の自動設定を指示することができる。そのために、表示処理ユニット24hから例えば、電子ボタンを表示させるための画像信号が画像表示部16に与えられる。
図10は、図1に示すX線CT装置1の画像表示部16に血流画像を自動的に表示条件を設定して表示させた例を示す図である。
図10に示すように画像表示部16の画面には、造影CT画像30、表示条件の自動設定を指示するための自動(AUTO)ボタン31および輝度スケール32が表示される。つまり、図10は、血流画像をグレースケールで識別できるように輝度表示させる場合の例を示す。
入力部17の操作により自動(AUTO)ボタン31を押すと、入力部17から表示条件の自動設定の指示が表示処理ユニット24hに与えられる。そうすると、表示処理ユニット24hにより輝度スケール(ウィンドウレベル)の上限値WU、下限値WL、上限値と下限値との間のウィンドウレベル幅WWが自動的に血流画像を表示させるために適切な値に設定される。
すなわち、心筋のCT値(34程度)をA、心筋部における造影剤の濃度Cmyo(t)をB、微調整のための任意の値をβとすると、例えばWU=A+B、WL=A+β(従ってWW=B−β)と設定したり、あるいはWL=A+β、WW=A+β+Bと設定することができる。この結果、輝度スケールが心筋部の血流画像の表示に適切な値に設定され、図10に示すように心筋の血流画像がグレースケールにより輝度表示される。
この時、WLとWLの間以外の値は、黒等の一定輝度にして画像上から除去する。又は、WLとWLの間とWLとWL以外の部分の間とで、異なる階調変換特性を持たせて、WLとWLの間の値が強調されて表示されるようにする。尚、好適には、WLの値の部分が黒(輝度値0又は極めて低い輝度値)で表示されるように階調変換処理を行うことにより、血流の少ない部分を良好に把握することが可能である。
尚、図10では心筋部の血流画像に他の部位を重畳表示されている。表示条件を決定するA、B、β等の値は入力部17の操作によりマニュアルで微調整できるようにすることもできる。Aの値は心筋のCT値に限らず、臨床目的に応じて変更することもできる。Bの値は経験的にデフォルト値として定めることができる。
この他、WUとWLの範囲をカラー表示させることにより心筋部の血流画像を識別できるように表示させることも可能である。カラー表示させる場合には、例えば16段階に視覚的に分けたり、識別したい段階に応じて16段階以上または16段階以下の階調を有するようにしてもよい。
また、自動(AUTO)ボタン31については、例えば画像の表示処理を実行するアプリケーションプログラムにより、心筋の血流表示や心筋の血流解析を行う特定のアプリケーションを起動させたときなどに表示させることができる。ただし、特定のハードウェアによるハードキーを入力部17に設けて自動(AUTO)ボタン31としてもよい。
また、図5のフローチャートに示す手順の他、各ステップの順序を変更したり、一部のステップを省略して心筋パーフュージョン像を生成することもできる。例えばS1→S2→S3→S4→S5→S7→S8→S9→S6→S10という手順、S1→S2→S3→S9→S7→S8→S10という手順、S1→S2→S3→S9→S4→S5→S6→S7→S8→S10という手順が挙げられる。
以上のようなX線CT装置1は、一定条件下での造影剤持続注入により収集された冠動脈造影CTデータや心筋造影CTデータには心筋部における血流動態の指標となる心筋パーフージョンに関する情報が含まれているため、冠動脈造影CTデータや心筋造影CTデータからデータ処理により心筋パーフージョンに関する情報を抽出して画像化するものである。具体的には、X線CT装置1は、造影剤を被検体Pに静注して心筋部や冠動脈血中で造影剤が一定の濃度Ca(t)で流れている期間に心筋部造影CT画像を取得し、取得した心筋部造影CT画像から心筋のCT値を減算して得られる造影剤成分の分布画像が血流パーフュージョンFと比例的な関係にあることから造影剤成分の分布画像を相対的な血流パーフュージョンFを示す血流パーフュージョン像とみなすものである。
このため、X線CT装置1によれば、被検体への造影剤注入量およびX線による被曝をより低減させつつ、より短時間で心筋パーフュージョン像を作成することができる。すなわち、従来は、心筋画像取得用のスキャンとは個別に血流情報取得用のスキャンが行なわれていたが、X線CT装置1によれば、血流情報取得用のスキャンを追加することなく心筋画像取得用のスキャンで得られた冠動脈造影CT画像データや心筋造影CT画像データ等の情報から血流情報をも取得することができる。このため、スキャン回数の低減により被検体の被曝時間を低下させるとともに造影剤の投入量を低減させて、より短時間で心筋パーフュージョン像を作成することができる。
さらに、造影剤濃度の遷移期間中に収集した心電同期CT画像データを利用して近似的に未知数を求めることにより心筋血流画像の相対値を絶対値に変換できるため、臨床上有用な血流の絶対値画像や心筋全体にわたる局所心筋血流量分布画像を作成することができる。このとき、造影剤濃度の遷移期間中には、従来から造影剤が心筋に到達するタイミングを知るために、そもそもデータがダイナミック収集されているため、血流画像生成のための撮影時間や被爆量の増加に繋がることはない。
この結果、従来、ルーチン検査では不可能だったCTによる心筋パーフュージョン検査や局所心筋血流の絶対値測定が可能になるため、心疾患の救急時だけでなく日常検査においてもCT検査のみで患者の治療方針を決定できる情報を提供できるようになる。
尚、以上において、心筋の造影CT画像データから心筋のみのCT値を減算することにより血流画像を生成したが、臨床目的に応じて心筋のCT値に一定の値を加減乗除した値、すなわち心筋のCTから得られる一定値を心筋の造影CT画像データから減算することにより血流画像を生成してもよい。
1 X線CT装置
2 ガントリ部
3 コンピュータ装置
4 X線管
5 高電圧発生装置
6 X線検出器
7 データ収集部
8 造影剤注入装置
9 心電計
10 冠状動脈
11 毛細血管
12 心筋
13 心筋細胞
14 間質
15 画像処理装置
16 画像表示部
17 入力部
18 スキャン制御装置
19 制御部
20 前処理部
21 メモリ部
22 画像再構成部
23 記憶装置
24 心筋パーフュージョン像生成システム
24a 画像取得ユニット
24b スライス厚加算ユニット
24c マトリクス縮小ユニット
24d マスク処理ユニット
24e 血流画像生成ユニット
24f オブリーク断面変換ユニット
24g 画像合成ユニット
24h 表示処理ユニット
P 被検体

Claims (6)

  1. 被検体に造影剤を持続的に注入して、注入開始直後から注入された造影剤が心筋に到達して増加し、さらに一定値に飽和したとみなせる状態になるまでを濃度遷移期間と定義すると、前記濃度遷移期間を経た後、前記心筋部における前記造影剤の濃度が一定とみなせる濃度一定期間を得る手段と、
    前記濃度一定期間および前記濃度遷移期間に心電図同期で造影CT画像データを収集する手段と、
    スライス方向の前記造影CT画像データの解像度を低減させるスライス厚加算手段と、
    前記濃度一定期間および前記濃度遷移期間に収集された、前記解像度を低減させた造影CT画像データから血流画像を生成する血流画像生成手段と、
    を有することを特徴とするX線CT装置。
  2. 前記スライス厚加算手段は、前記濃度一定期間に収集された前記造影CT画像データの隣接するスライス間の造影CT値を加算することにより前記解像度を低減させる構成とすることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
  3. 前記スライス厚加算手段は、前記濃度一定期間に収集された前記造影CT画像データの造影CT値に対して加算処理および加算平均処理の一方を施してマトリクスサイズを縮小することにより前記解像度を低減させる構成とすることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
  4. 前記解像度を低減させた造影CT画像データから生成された血流画像と、前記解像度を低減させる前の造影CT画像データとを重ね合わせして同位置画面上にそれぞれの画像の透明度等の任意の値を調整して表示できるように合成する画像合成手段をさらに有することを特徴とする請求項2または3に記載のX線CT装置。
  5. 前記造影剤で染影された前記心筋部に対応する値及び心筋に対応する値に基づいて階調および色調の少なくとも一方の変換処理を行う際のウィンドウレベル値を設定する表示処理手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
  6. 前記造影剤で染影された前記心筋部に対応する値と心筋に対応する値との間の値を有する画素が強調されるように階調および色調の少なくとも一方の変換処理を行う際のウィンドウレベル値を設定する表示処理手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
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