JP2011155314A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造段階及び実装段階において漏れ電流が増大するのを抑制して、製造時と実装時とにおける歩留りを飛躍的に向上させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
【解決手段】陽極体の上に酸化皮膜を形成するステップと、上記酸化皮膜の上に導電性高分子から成る固体電解質層を形成するステップと、上記固体電解質層の上に陰極引出層を形成するステップと、上記陰極引出層を形成した陽極体を樹脂製のハウジングで覆うステップと、を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、固体電解質層は、化学酸化重合することによって形成され、上記固体電解質層を形成するステップ中、又は、上記固体電解質層を形成するステップの後であって上記固体電解質層上に陰極引出層を形成するステップの前に、230℃以上の温度で熱処理をするステップを有し、上記熱処理をするステップは、酸素の不存在下で行うことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に漏れ電流を低減し、電気的特性に優れた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
近年、電子機器の小型・高性能化に伴い、製品体積あたりの静電容量が大きく、かつESRの低い固体電解コンデンサが求められるようになってきた。このようなことを考慮して、固体電解質としてTCNQ錯塩やポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子を用いた固体電解コンデンサが開発されている。これらの導電性高分子は、従来の固体電解コンデンサに用いられてきた電解質である二酸化マンガン等に比べて高い導電率を有することから、固体電解コンデンサの低ESR化に大きく寄与することができる。
しかしながら、上記固体電解コンデンサにおいては、エージング処理前後において、漏れ電流が大きくなって歩留りが低下するという課題を有していた。以下、場合別けして、その理由を述べる。
(1)エージング処理前において漏れ電流が大きくなるという理由
上記導電性高分子を用いて固体電解質を作製する方法としては、電解酸化重合法と化学酸化重合法とが広く知られている。上記電解酸化重合法は導電率が高く、結果として低ESRのコンデンサを製造する方法として有効な方法であるが、通電のための電極を素子に接触させる必要があるということから、特に小型サイズの固体電解コンデンサの製造には不向きであるという欠点を有している。これに対して、上記化学酸化重合法は、多孔質化された弁金属内部に含浸された溶液から固体電解質が得られるため、複雑な製造設備を必要とすることなく、汎用性の高い製造方法として認知されている。
上記化学酸化重合法を用いて固体電解質を作製する場合、前述した導電性高分子の中で、ポリチオフェン、特に3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いた場合には、高い導電率による低ESR化や、遅い重合反応による材料の高収率性などから、ポリピロールなどを用いた場合に比べて優れた性能を発揮する。このように、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いて化学酸化重合する場合には、その酸化剤として過硫酸アンモニウム塩や第二鉄塩、さらにドーパントとして有機スルホン酸を用いることが有効で、特に好ましいのはパラトルエンスルホン酸第二鉄に代表される有機スルホン酸第二鉄塩である。
しかし、当該材料を用いた化学酸化重合においては、生成した固体電解質に不純物(残留ドーパント成分である、鉄塩や過剰な有機スルホン酸や未反応モノマーやポリマーとモノマーの中間体であるオリゴマーなど)が含まれるため、コンデンサとしての信頼性、特に高温高湿に対する耐性が著しく劣るという問題がある。但し、このような問題は、有機スルホン酸第二鉄を用いた場合の特有ではなく、塩酸化剤、ドーパントとして他の材料を用いた場合も同様に生じる。
このようなことを考慮して、生成した固体電解質を有機溶媒もしくは純水等で洗浄するような方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
しかしながら、固体電解質を有機溶媒もしくは純水等で洗浄した場合には、洗浄によって不純物が除去されるため、これらの物質が存在していた領域が空隙となる。そして、このような空隙が生じることにより、特に誘電体として機能する弁金属酸化皮膜が露出すると、その後の工程で塗布されるカーボンが弁金属酸化皮膜に直接接触することがある。この場合、カーボンは導電性高分子と異なり、漏れ電流を遮断する自己修復性を有しない材料であることから、弁金属酸化皮膜との接触は漏れ電流の増大を招き、歩留りが低下するという課題を有していた。
(2)エージング処理後において漏れ電流が大きくなる理由
固体電解コンデンサは、弁金属からなる陽極体6の表面に、誘電体酸化皮膜、固体電解質層、カーボン層、銀層を順に形成してコンデンサ素子を作製した後、トランスファーモールド処理と、エージング処理とを順次実施することにより作製する。上記エージング処理は、固体電解コンデンサを基板等に実装する際の耐性を確保するために行われる処理であり、具体的には、実装時と同等の熱ストレスを固体電解コンデンサに加える、所謂、熱スクリーニングが主な手法であった(下記特許文献2参照)。
ここで、近年、環境面を考慮して、鉛を含まない半田(スズ合金から成る鉛フリー半田)による電子部品の実装が具体化してきている。当該半田は従来の鉛含有半田に比べて融点が高く、部品実装において、固体電解コンデンサが高温度に長時間晒されることになるため、これに合わせて固体電解コンデンサの耐熱性を向上させる必要があった。具体的には最高温度250〜260℃の実装温度に対して故障を生じない実力が求められている。
しかしながら、250℃〜260℃といった温度領域は固体電解質に含まれる不純物が分解、ガス化する領域であり、これと同等の熱スクリーニングをトランスファーモールド処理後に実施すると、上記ガス化による内圧上昇により、パッケージにクラックが生じたり、誘電体酸化皮膜が損傷して、漏れ電流不良が増大し、歩留りが低下するという課題を有していた。
特開2002−158144号公報 特開平5−055090号公報
上述の如く、固体電解コンデンサにおいては、製造段階(エージング処理前後の段階)において、漏れ電流が大きくなって、歩留りが低下するという課題を有していた。
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、製造コストが上昇するのを抑制しつつ、漏れ電流が増大するのを抑制して、歩留りを飛躍的に向上させることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
本発明は、陽極体の上に酸化皮膜を形成するステップと、上記酸化皮膜の上に導電性高分子から成る固体電解質層を形成するステップと、上記固体電解質層の上に陰極引出層を形成するステップと、上記陰極引出層を形成した陽極体を樹脂製のハウジングで覆うステップと、を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、固体電解質層は、化学酸化重合することによって形成され、上記固体電解質層を形成するステップ中、又は、上記固体電解質層を形成するステップの後であって上記固体電解質層上に陰極引出層を形成するステップの前に、230℃以上の温度で熱処理をするステップを有し、上記熱処理をするステップは、酸素の不存在下で行うことを特徴とする。
このように陰極引出層を形成するステップの前に230℃以上の温度で熱処理を行なうと、当該熱処理時に固体電解質に含まれる不純物が分解、ガス化するため、ハウジング形成後に高温で熱スクリーニングを実施しても、ガスは殆ど発生せず、固体電解コンデンサの内圧上昇が抑えられる。この結果、熱スクリーニング時にハウジングにクラックが生じたり、酸化皮膜が損傷するのを抑制でき、漏れ電流不良の増大が抑止できる。
上記熱処理をするステップにおいて、酸素の不存在下で熱処理を行なうことが望ましく、この酸素の不存在下としては真空雰囲気下、不活性ガス雰囲気下が例示できる。
このように、酸素の不存在下で熱処理を行なえば、熱処理時に固体電解質層が酸化劣化するのが抑制されるので、ESRが大きくなるのを抑えることができる。尚、本明細書において、真空雰囲気下とは、10−2Pa以下であることを意味する。
本発明によれば、製造コストの高騰や大型化を招来することなく、漏れ電流が増大するのを抑制して、固体電解コンデンサの製造歩留りを飛躍的に向上させることができるという優れた効果を奏する。
本発明の固体電解コンデンサの縦断面図。
〔第1の形態〕
本発明の第1の形態について、図1を用いて、以下に説明する。尚、図1は本発明の方法により作製した固体電解コンデンサの断面図である。
図1に示すように、固体電解コンデンサ1はコンデンサ素子4を有しており、このコンデンサ素子4は、弁金属であるTa(タンタル)から成る陽極体6を備えている。この陽極体6の表面には、誘電体酸化被膜7と、固体電解質層8と、カーボン層9と、銀層10(カーボン層9と銀層10とで陰極引出層を構成している)が順に形成されている。また、上記コンデンサ素子4はエポキシ樹脂製のハウジング5にて覆われており、且つ、上記コンデンサ素子4に取り付けられたリードフレーム2,3がハウジング5の周面に沿って2段に折曲される構造となっている。
ここで、上記固体電解コンデンサを、以下のようにして作製した。
先ず、弁金属(valve metal)であるタンタルの粉末を加圧成形し焼結した多孔質の陽極体6を作製した後、この陽極体6を0.01〜1.0重量%のリン酸水溶液から成る電解液中で電解化成処理し、その表面にTa2O5からなる誘電体酸化皮膜7を形成した。
次に、化学酸化重合法を用いて、上記誘電体酸化皮膜7上に固体電解質層8を形成した。具体的には、3,4−エチレンジオキシチオフェン、パラトルエンスルホン酸第二鉄、及び、1−ブタノールから成る化学重合液に、前記誘電体酸化皮膜7が形成された陽極体6を浸漬した後、大気中において60℃で10分間乾燥させるという処理を複数回繰り返して行ない、誘電体酸化皮膜7上にポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンから成る固体電解質層8を形成した。
次いで、1−ブタノールから成る溶媒に、シランカップリング剤の一種である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5重量%添加した洗浄溶液にて、上記固体電解質層8の表面洗浄を行なった。この後、空気中において200℃で10分間加熱処理を行なった。更に、外部陰極層となるカーボン層9と銀層10とを浸漬処理によって順次形成してコンデンサ素子を作製した後、このコンデンサ素子をリードフレーム2,3に実装し、更に、エポキシ樹脂によるトランスファーモールド処理と、エージング処理とを順次実施することにより、定格25V−15μFの固体電解コンデンサを作製した。
〔第2の形態〕
本発明の第2の形態について、以下に説明する。尚、第2の形態により作製された固体電解コンデンサは第1の形態のものと略同様の構造であり、以下の説明では、第1の形態と異なる点についてのみ説明する。
表面洗浄後の熱処理の温度を260℃とした他は、上記第1の形態と同様にして、定格25V−15μFの固体電解コンデンサを作製した。
〔第1実施例〕
(実施例1)
実施例1の固体電解コンデンサとしては、上記第1の形態で説明した固体電解コンデンサと同様にして作製したものを用いた。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサA1と称する。
(実施例2)
上記洗浄処理において、洗浄溶液の溶媒として純水を用いた他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサA2と称する。
(実施例3)
上記洗浄処理において、洗浄溶液の溶媒として1−ブタノールと純水との混合溶媒(両者の重量比率は1:1)を用いた他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサA3と称する。
(比較例1)
上記洗浄処理において、洗浄溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しない他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、比較コンデンサX1と称する。
(比較例2)
上記洗浄処理において、洗浄溶液の溶媒として純水を用いると共に、洗浄溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しない他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、比較コンデンサX2と称する。
(実験)
本発明コンデンサA1〜A3及び比較コンデンサX1、X2をそれぞれ500個作製し、これら固体電解コンデンサの漏れ電流による特性歩留りを調べたので、その結果を表1に示す。漏れ電流による特性歩留りは、陰極端子と陽極端子との間に25Vの定電圧を印加して約120秒後の漏れ電流を測定し、38μA以上のものを不良品とした。

表1より明らかなように、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した本発明コンデンサA1〜A3は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加していない比較コンデンサX1、X2に比べて特性歩留りが向上していることが確認でき、特に、洗浄溶媒に1−ブタノールと純水との混合溶媒を用いた本発明コンデンサA3は、特性歩留りが飛躍的に向上していることが確認できる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
固体電解質層を有機溶媒もしくは純水等で洗浄した比較コンデンサX1、X2では、洗浄によって不純物が除去されるため、これらの物質が存在していた領域が空隙となって、誘電体酸化皮膜が露出する。そうすると、その後の工程で塗布されるカーボン層と誘電体酸化皮膜とが直接接触することがある。この結果、漏れ電流が増加する。これに対して、固体電解質層の洗浄溶液にシランカップリング剤が添加された本発明コンデンサA1〜A3では、洗浄によって空隙が生じた場合であっても、電気絶縁性のシランカップリング剤で当該空隙を埋めることができるので、カーボン層と誘電体酸化皮膜とが直接接触するのを抑制できる。この結果、漏れ電流の増加を抑えることができるという理由によるものと考えられる。
また、洗浄溶媒に1−ブタノールと純水との混合溶媒を用いた本発明コンデンサA3の特性歩留りが特に向上するのは、有機溶媒に対するシランカップリング剤の溶解度は高く、しかも、有機溶媒は固体電解質に対する濡れ性に優れているという有機溶媒を用いた利点と、不純物(洗浄工程において除去する必要性のある物質で鉄塩や過剰な有機スルホン酸や未反応モノマーやオリゴマー等)は純水への溶解度が高いという純水を用いた利点とが共に発揮されるという理由によるものと考えられる。
以上のことから、洗浄溶液には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加することが望ましく、また、洗浄溶液の溶媒としては1−ブタノールと純水との混合溶媒を用いるのが特に望ましいことが理解できる。
〔第2実施例〕
(実施例1)
実施例1の固体電解コンデンサとしては、上記第2の形態で説明した固体電解コンデンサと同様にして作製したものを用いた。但し、洗浄は実施していない。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサB1と称する。
(実施例2)
固体電解質層8を形成した後の熱処理を窒素ガス中において行なった他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサB2と称する。
(実施例3)
上記固体電解質層8を作製した後に、シランカップリング剤の一種である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5重量%添加した洗浄溶液にて、上記固体電解質層8の表面洗浄を行ない、その後に窒素ガス中において260℃で10分間熱処理を行なった他は、上記実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下、本発明コンデンサB3と称する。
(比較例)
固体電解質層8を形成した後の熱処理を空気中200℃10分で行った他は、上記実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製した。
このようにして作製した固体電解コンデンサを、以下比較コンデンサY1と称する。
(実験)
本発明コンデンサB1〜B3、前記本発明コンデンサA1及び比較コンデンサY1をそれぞれ10000個作製し、これら固体電解コンデンサの等価直列抵抗(以下、ESRと称する)の平均値、LC特性歩留り、及び、リフロー半田付け後の漏れ電流不良数を調べたので、その結果を表2に示す。尚、ESRの測定は100kHz/20℃での環境下で測定した。また、LC歩留りとは、各固体電解コンデンサのLC値が、容量(C)×電圧(V)×0.1以上のものを不良品とした場合の良品の割合である。また、漏れ電流不良数は、リフロー半田付け(鉛フリー半田を使用)後、陰極端子と陽極端子との間に25Vの定電圧を印加して約120秒後の漏れ電流を測定し、1mA以上のものを不良品とした。

表2より明らかなように、本発明コンデンサB1〜B3、本発明コンデンサA1は、比較コンデンサY1と比較して、リフロー半田付け後の漏れ電流不良数が格段に少なくなっており、特に、本発明コンデンサB1〜B3では、リフロー半田付け後の漏れ電流不良が全く生じていないことが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
比較コンデンサY1では、熱処理時の温度が200℃であるため、トランスファーモールド処理後に、260℃といった温度領域で熱スクリーニングを実施すると、固体電解質に含まれる不純物が分解、ガス化して、固体電解コンデンサの内圧が上昇する。この結果、パッケージにクラックが生じたり、誘電体酸化皮膜が損傷して、漏れ電流不良が増大する。これに対して、本発明コンデンサB1〜B3では、熱処理時の温度が260℃であるため、当該熱処理時に固体電解質に含まれる不純物が分解、ガス化する。このため、トランスファーモールド処理後に熱スクリーニングを実施しても、ガスは殆ど発生せず、固体電解コンデンサの内圧上昇が抑えられる。この結果、パッケージにクラックが生じたり、誘電体酸化皮膜が損傷するのを抑制できるので、漏れ電流不良の増大が抑止できる。尚、本発明コンデンサA1は熱処理時の温度が200℃であるが、洗浄により素子表面上の不純物を除去しているので、ガス発生をある程度抑制できる。但し、本発明コンデンサB1〜B3と比較すると、ガス発生抑制機能は劣るので、漏れ電流不良が若干生じている。
また、本発明コンデンサB1は、本発明コンデンサB2、B3に比べて、ESRの平均値が大きくなっていることが認められる。これは、本発明コンデンサB1は、空気中で熱処理を行なっているので、固体電解質層の酸化劣化が生じる。これに対して、本発明コンデンサB2、B3では、窒素ガス中で熱処理を行なっているので、固体電解質層8の酸化劣化が抑制されるという理由によるものと考えられる。
更に、本発明コンデンサB1、B2は、本発明コンデンサB3に比べて、LC歩留りが低下していることが認められる。これは、本発明コンデンサB3では不純物除去が、洗浄→熱処理と2ステップになっている一方で、本発明コンデンサB1、B2は熱処理のみ1ステップになっている。したがって、本発明コンデンサB3では、洗浄によりガス化成分である不純物がある程度除去された後に熱処理が行なわれるため、熱処理時のガス化が抑えられ、誘電体酸化皮膜の損傷を抑制できるのに対して、本発明コンデンサB1、B2では不純物が除去されない状態で熱処理が行なわれるため、熱処理時のガス化によって誘電体酸化皮膜が損傷するという理由によるものと考えられる。
以上のことから、ESRが高くなったり、LC歩留りが低下するのを抑制しつつ、ユーザでの高温リフロー半田付け後の漏れ電流不良を抑制するには、洗浄(シランカップリング剤添加)を行い、且つ、窒素ガス中において260℃で熱処理を行なうのが好ましいことが理解できる。
(その他の事項)
(1)シランカップリング剤としては、上記実施例に示したものの他、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランが例示される。
(2)上記実施例では、誘電体酸化皮膜上に固体電解質層を形成した後に熱処理を行なっているが、このような方法に限定するものではなく、誘電体酸化皮膜上に固体電解質層を形成する工程内で熱処理を行なっても良い。具体的には、誘電体酸化皮膜上に固体電解質層を形成する工程において、最後の乾燥処理を行なわずに熱処理を行なう(熱処理が乾燥処理を兼ねる)というような方法であっても良い。
(3)上記実施例では熱処理を窒素ガス中で行なったが、これに限定するものではなく、例えば、アルゴンガス雰囲気、或いは、真空中で行なっても良い。
(4)上記実施例では熱処理を260℃で行なっているが、230℃以上であれば同様の効果を奏することを確認した。但し、余り高温で行なうと、ポリマーの熱分解が開始するという不都合が生じるため、熱処理の温度は300℃以下であるのが望ましい。
(5)弁作用を有する金属としては上記Ta(タンタル)に限定されず、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)等であってもよく、また、固体電解質層としてはポリチオフェン系の導電性ポリマーに限定されず、ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリフラン系等の導電性ポリマーや二酸化マンガン等であってもよい。
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末のメモリ等のバックアップ用電源などに適用することができる。
1:固体電解コンデンサ
2:リードフレーム
3:リードフレーム
4:コンデンサ素子
5:ハウジング
6:陽極体
7:誘電体酸化被膜
8:固体電解質層
9:カーボン層
10:銀層

Claims (4)

  1. 陽極体の上に酸化皮膜を形成するステップと、上記酸化皮膜の上に導電性高分子から成る固体電解質層を形成するステップと、上記固体電解質層の上に陰極引出層を形成するステップと、上記陰極引出層を形成した陽極体を樹脂製のハウジングで覆うステップと、を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、
    固体電解質層は、化学酸化重合することによって形成され、
    上記固体電解質層を形成するステップ中、又は、上記固体電解質層を形成するステップの後であって上記固体電解質層上に陰極引出層を形成するステップの前に、230℃以上の温度で熱処理をするステップを有し、
    上記熱処理をするステップは、酸素の不存在下で行うことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 上記酸素の不存在下とは真空雰囲気下である、請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 上記酸素の不存在下とは不活性ガス雰囲気下である、請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 上記固体電解質層は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを化学酸化重合することによって形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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