JP2011153062A - Cntワイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性や歩留まりが高いCNTワイヤの製造方法を提供すること。
【解決手段】表面にFe−Al層を有する基板上に、CNTを複数形成する工程と、複数のCNTの一部を引き出す工程とを有することを特徴とするCNTワイヤの製造方法であって、蛍光X線測定に基づき算出したFe−Al層の組成比Fe/Alと、蛍光X線測定に基づき算出したFe−Al層の膜厚とが、下記の条件1、条件2、及び条件3のうちのいずれかを充足することを特徴とする。条件1:組成比Fe/Alは0.52〜0.75の範囲にあり、且つFe−Al層の膜厚は4〜7.9nmの範囲にある。条件2:組成比Fe/Alは0.23〜0.52の範囲にあり、且つFe−Al層の膜厚は5.8〜7.9nmの範囲にある。条件3:組成比Fe/Alは0.52以下であり、且つFe−Al層の膜厚は5.8nm以下であり、且つFe膜厚が1.6nmより厚い範囲にある。
【選択図】図1

Description

本発明は、CNT(カーボンナノチューブ)ワイヤの製造方法に関する。
カーボンナノチューブ(以下、CNTとする)は、1991年にNECの飯島氏によって発見された新しい炭素材料である。このCNTは、炭素原子がsp2結合した六員環のネットワークを有する黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する、直径数nm〜数十nmのチューブ状の炭素素材である。
CNTは非常に安定した化学構造を有し、CNTを構成する六方格子の螺旋度によって、良導体にも半導体にもなるなど、様々な特性を有することが確認されている。また、CNTは、電気的特性、熱伝導性、及び機械的強度に優れており、これらの特徴を活かして、現在では、熱機器分野、電気、電子機器分野などへの応用研究が盛んに行われている。
CNTは、上記のとおり、微細な構造を有するため、そのままでは、取り扱い性や加工性が悪い。このため、肉眼で確認しながら取り扱うことが可能な大きさのCNTの集合体を製造することが試みられている。このCNTの集合体としては、例えば、複数のCNTから成るCNTワイヤが挙げられる。さらに、このCNTワイヤを用いて、CNTの織布やシートを製造できる。
CNTワイヤは、次のように製造できる。まず、基板上にCNT合成用の金属触媒層を形成し、次に、炭化水素系のガスを炭素源として供給して、化学気相堆積法により、基板上に垂直に配向成長したCNT膜(複数のCNTから成る膜)を合成する。そして、この膜からCNT自身が連なった糸を引き出し(紡糸)、必要に応じて撚りをかけ、CNTからなるワイヤを製造する(特許文献1〜3)。
上記特許文献1の技術において、金属触媒は、鉄、ニッケル及びコバルトの中から選ばれる少なくとも1種の金属である。また、上記特許文献2の技術において、金属触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、鉄合金、コバルト合金、ニッケル合金、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、またはこれらの組み合わせである。また、上記特許文献3の技術において、金属触媒は、電子ビーム蒸発でシリコンウエハまたはガラスの基板上に堆積させた、厚さ5nmの鉄膜である。
特許第3868914号公報 WO2005/102924号公報 特表2008−523254号公報
上記特許文献1〜3を含む従来の技術では、基板上の垂直配向膜から、CNTが連なった糸を安定して紡糸することができず、CNTワイヤの生産性や歩留まりが低かった。
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、生産性や歩留まりが高いCNTワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のCNTワイヤの製造方法は、表面にFe−Al層を有する基板上に、CNTを複数形成する工程と、複数のCNTの一部を引き出す工程とを有する。本発明のCNTワイヤの製造方法において、蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層の組成比Fe/Alと、蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層の膜厚と、蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層のFe膜厚とは、下記の条件1、条件2、及び条件3のうちのいずれかを充足する。
条件1:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.52〜0.75の範囲にあり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、4〜7.9nmの範囲にある。
条件2:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.23〜0.52の範囲にあり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、5.8〜7.9nmの範囲にある。
条件3:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.52以下であり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、5.8nm以下であり、且つ前記Fe−Al層のFe膜厚が1.6nmより厚い範囲にある。
本発明のCNTワイヤの製造方法では、基板上にCNTを複数形成するための触媒として、上述した条件1、条件2、及び条件3のうちのいずれかを充足する組成比及び膜厚のFe−Al層を用いる。Fe−Al層における組成比及び膜厚が、条件1、条件2、及び条件3のうちのいずれかを充足することにより、基板上に複数形成されたCNTを用いてCNTワイヤを製造するときの生産性や歩留まりが高い。
前記Fe−Al層のFe膜厚とは、後述するFe−Al層のFe換算での膜厚(M1)を意味する。
前記条件2において、Fe−Al層の組成比Fe/Alが、0.30〜0.52の範囲にあることが好ましい。この範囲にあることにより、CNTワイヤを製造するときの生産性や歩留まりが一層高い。また、条件2において、Fe−Al層の膜厚が5.8〜7.5nmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあることにより、CNTワイヤを製造するときの生産性や歩留まりが一層高い。
本発明のCNTワイヤの製造方法では、予め表面にFe−Al層が形成された基板を用いてもよいし、製造方法の一部として、基板の表面にFe−Al層を形成する工程を有していてもよい。
本発明において、Fe−Al層は、例えば、スパッタ又は蒸着により形成することができる。
CNTワイヤの製造方法を表す説明図である。 金属触媒層の組成と紡糸可否との関係を表すグラフである。 CNTワイヤを表す電子顕微鏡写真である。
本発明の実施形態を説明する。
1.基板の用意
直径6インチ、厚さ650μmのP型シリコン基板を熱酸化して、その表面に厚さ100nmの酸化膜を形成した。酸化膜の厚みは、走査型電子顕微鏡を用いて測定した。
次に、スパッタリング装置を用いて、基板の表面(熱酸化膜上)に、金属触媒層を形成した。金属触媒層の形成は、表1に示すように、S1〜S27の27種類の条件でそれぞれ行った。
S1〜S18、S20〜S27の条件は、Fe−Al(合金)から成る金属触媒層(以下、Fe−Al層とする)を形成する条件であり、S19の条件は、鉄のみから成る金属触媒層を形成する条件である。スパッタリングによるFe−Al層の形成では、Alのターゲットの上にFeのターゲットを乗せ、それらの面積比を変えることにより、Fe−Al層の組成比を調整した。
表1のS1〜S18、S20〜S27の条件におけるFe−Al層の組成比、膜厚は、以下のように算出する。まず、厚み既知のFe層の蛍光X線測定を行い、Fe固有のピーク面積強度を求める。これを、複数種類の厚みのFe層についてそれぞれ行い、Fe膜厚と、Fe固有のピーク面積強度との検量線を作成しておく。同様に、Al層についても、Al膜厚と、蛍光X線測定スペクトルにおけるAl固有のピーク面積強度との検量線を作成しておく。
次に、基板上に形成したFe−Al層の蛍光X線測定を行う。その測定スペクトルにおいて、Fe固有のピーク面積強度と、Al固有のピーク面積強度とをそれぞれ求める。そして、このFe固有のピーク面積強度を、先に作成しておいたFeの検量線に当てはめて、Fe−Al層のFe換算での膜厚(以下、M1とする)を算出する。また、Al固有のピーク面積強度を、先に作成しておいたAlの検量線に当てはめて、Fe−Al層のAl換算での膜厚(以下、M2とする)を算出する。このM1とM2との和を、Fe−Al層の膜厚とする。また、M1/M2を、Fe−Al層の組成比Fe/Alとする。
表1のS19は、Feのみから成る層(Fe層)である。このFe層の膜厚は、以下のように算出する。基板上に形成したFe層の蛍光X線測定を行う。その測定スペクトルにおいて、Fe固有のピーク面積強度を求める。そして、このFe固有のピーク面積強度を、先に作成しておいたFeの検量線に当てはめて、Fe層の膜厚を算出する。
なお、蛍光X線測定スペクトルからピーク面積強度を求めるときは、ベースラインを引いておき、そのベースラインよりも上の部分の面積を求める。
2.CNTの合成
S1〜S27の各条件で金属触媒層を形成した基板のそれぞれを用いて、CNTを合成した。具体的には、以下のようにした。基板を電気炉に挿入し、電気炉内に、水蒸気、アルゴン、及び水素を流した。アルゴンの流量は300cc/minとし、水素の流量は50cc/minとし、水蒸気の流量は、電気炉から出たArガス中に占める水蒸気濃度が60ppmとなる量とした。
その状態で電気炉内を昇温してゆき、CNT合成温度(700℃)に達した後、電気炉内にエチレンガスを10cc/minの流量で流し、基板上にCNTを合成した。合成時間は10分間とした。
合成終了後、電子顕微鏡で基板上を観察したところ、S1〜S27の条件で金属触媒層を形成した基板については、基板上でCNTが合成され、CNTの垂直配向膜が形成されていた。合成されたCNTは、その一端が基板に固定されており、基板に対して垂直方向に均一に配向していた。また、個々のCNTの直径は10〜30nm程度であり、CNTの長さは約100〜300μmであった。
3.CNTワイヤの製造試験
CNTが合成された基板(S1〜S27の条件で金属触媒層を形成した基板)のそれぞれについて、CNTワイヤの製造試験を行った。具体的には、図1(a)に示すように、基板上に配向しているCNTのマトリックスにおいて、基板の端部にあるCNTの束の一端を引出し具でつまみ、CNTの配向方向とは直交する方向に引出した。このとき、図1(b)〜図1(c)に示すように、CNTの束が安定して長くつながり、CNTワイヤが製造できるか(紡糸できるか)否かを試験した。試験は、各条件の基板について、それぞれ、2〜4回行った。
上記表1に、試験結果を示す。表1の「紡糸可否」において、○は紡糸できたことを表し、×は紡糸できなかったことを表す。また、図2に、S1〜S18、S20〜S27におけるFe膜厚、及びAl膜厚と、紡糸可否との相関関係を示す。図2において、○は紡糸できたことを表し、○が大きいほど、紡糸できた割合が高いことを表す。また、図2において、×は紡糸できなかったことを表す。また、図3に、紡糸できた場合に製造されたCNTワイヤを示す。図3に示すCNTワイヤは、引き出したCNTの束に撚りを掛け、撚り線にしたものである。
表1及び図2に示すように、Fe−Al層の組成比が0.52〜0.75の範囲にあり、且つFe−Al層の膜厚が7.9nm以下4nm以上の範囲にある場合(条件1を充足する場合)に、紡糸できる確率が高かった。
また、Fe−Al層の組成比が0.23〜0.52の範囲にあり、且つFe−Al層の膜厚が5.8〜7.9nmの範囲にある場合(条件2を充足する場合)に、紡糸できる確率が高かった。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、Fe−Al層は蒸着により形成してもよい。
また、Fe−Al層のFe換算膜厚は、蛍光X線測定スペクトルにおける、Fe固有のピークの高さに基づいて算出することができる。同様に、Fe−Al層のAl換算膜厚は、蛍光X線測定スペクトルにおける、Al固有のピークの高さに基づいて算出することができる。なお、ピークの高さを求めるときは、蛍光X線測定スペクトルにベースラインを引いておき、ピークのトップからそのベースラインまでの長さをピークの高さとする。
また、Fe−Al層を形成するために用いるスパッタターゲットは、全体として均一な組成のFe−Al合金であってもよい。この場合、合金におけるFe/Al比を変化させることにより、Fe−Al層の組成比を調整することができる。

Claims (3)

  1. 表面にFe−Al層を有する基板上に、CNTを複数形成する工程と、
    前記複数のCNTの一部を引き出す工程と、
    を有するCNTワイヤの製造方法であって、
    蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層の組成比Fe/Alと、蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層の膜厚と、蛍光X線測定に基づき算出した前記Fe−Al層のFe膜厚とが、下記の条件1、条件2、及び条件3のうちのいずれかを充足することを特徴とするCNTワイヤの製造方法。
    条件1:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.52〜0.75の範囲にあり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、4〜7.9nmの範囲にある。
    条件2:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.23〜0.52の範囲にあり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、5.8〜7.9nmの範囲にある。
    条件3:前記Fe−Al層の組成比Fe/Alは、0.52以下であり、且つ前記Fe−Al層の膜厚は、5.8nm以下であり、且つ前記Fe−Al層のFe膜厚が1.6nmより厚い範囲にある。
  2. 前記基板の表面に、前記Fe−Al層を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のCNTワイヤの製造方法。
  3. 前記Fe−Al層は、スパッタ又は蒸着により形成された層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のCNTワイヤの製造方法。
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