JP2003277030A - カーボンナノチューブ集合体配列膜及びその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ集合体配列膜及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】導電性を有する各種基板材料の表面上に、カー
ボンナノチューブを形成する際に、従来この種の分野で
用いられてきた煩雑な手段であるマスキングやリソグラ
フィーといった技術を用いることなく、直接基板上に形
成されたカーボンナノチューブの凝集体及びその製造方
法の提供。 【解決手段】カーボンナノチューブが円錐状物質とし
て、密に成長・凝集させ、自己組織化された状態で得ら
れものであるカーボンナノチューブのサイズが、直径5
0nm以下(50nmを除く)であり、面密度が0.5~3.
0×109本/mm2の範囲にあり、かつ円錐状物質を形成して
いることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列
膜。炭化水素ガスをプラズマアシストCVD法により処理
し、カーボンナノチューブを円錐状物質として、蜜に成
長・凝集させ、自己組織化された状態で得られものであ
ることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列膜
及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス、金属、セ
ラミックスなどの耐熱性を有する各種基板材料の表面上
にカーボンナノチューブ(以下、CNTとも呼ぶ)のカ
ーボンナノチューブ集合体配列膜、その製造方法、カー
ボンナノチューブ集合体配列膜の形状を制御する方法、
及び電極用カーボンナノチューブ集合体配列膜に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】カーボンナノチューブは、炭素の同素体
であり、単層グラフフアイトであるグラフエンを丸めた
材料であり、直径が約0.5nm乃至10nmで、長さ
が約数μmの微細な材料である。冷陰極を初め半導体超
集積回路や繊維素材、水素吸蔵体などの広範囲にわたる
用途が知られており、将来性の材料として期待されてい
るものである。カーボンナノチューブの製法としては、
炭素棒を電極に用いて減圧下にアーク放電により炭素棒
の表面にカーボンナノチューブを成長させる方法、炭素
とコバルトなどの触媒金属を混合した混合物にレーザー
照射を行い、炭素を蒸発させて冷却した針状物の上にカ
ーボンナノチューブを成長させることが、知られている
(以下,CVD法ともいう)。この場合、得られるカー
ボンナノチューブは、基板上にランダムに存在する。CV
D法によりカーボンナノチューブ(CNT)を調製する場合、
Fe、Ni、Coなどの薄膜あるいはその直径が数十nmのCoな
どの金属微粒子を成長触媒として、プラズマ照射により
メタンガスを炭素源としてカーボンナノチューブをアル
ミナやシリコンなどの基板上に付着させ、カーボンナノ
チューブが調製されてきた(Chemical Phy
sics Letters 272 (1977) 178―
182)。得られるカーボンナノチューブは、基板上に
ランダムに存在する。電場を利用することにより、基板
に平行、45゜、垂直の状態で形成が行われる(App
l.Phys.Lett.Vol.76,No17.2
4 April 2000)。また、シリコン基板の表
面に多孔質のSi層を形成し、気化した状態の鉄を、マ
スクを介して供給し、鉄の表面にCVD法によりカーボ
ンナノチューブを形成することが行われている(SCI
ENCE 22 JANUARY 1999
VOL283 512)。また、シリコンウエハの上に
炭化ケイ素結晶をエピタキシャル成長させて、エッチン
グ処理によりシリコンウエハから分離し、酸素を含む状
態で高温として炭化ケイ素をカーボンナノチューブ変換
することも知られている(特開2000−10930
8)。従来、カーボンナノチューブ集合組織の形態を制
御するためには、これらの触媒物質をマスキングやリソ
グラフィーといった技術を用いて基板表面上にパターン
を形成して、カーボンナノチューブが基板の法線方向に
対して平行に配列したナノユーブ集合組織が得るための
カーボンナノチューブの組織形態を制御することが研究
されてきた。これらの方法は、工程が多工程になること
を避けることができず、また、装置も大掛かりになるも
のである。このことから、マスキングやリソグラフィー
といった技術を用いずに、基板上のカーボンナノチュー
ブ配列膜の組織形態を制御する方法が必要とされてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、カー
ボンナノチューブが円錐状物質として、密に成長・凝集
させ、自己組織化された状態で得られものであるカーボ
ンナノチューブのサイズが、従来知られている直径は5
0nmであり、本発明では50nm以下(50nmを除
く)であり、面密度が0.5~3.0×109本/mm2の範囲にあ
り、かつ円錐状物質を形成しているカーボンナノチュー
ブ集合体配列膜、カーボンナノチューブ集合体配列膜
が、二次元コンポジット薄膜を堆積させたシリコン基板
上に得られるものであるカーボンナノチューブ集合体配
列膜、シリコン、金属、導電性セラミックスなどの導電
性を有する各種基板材料の表面上に、カーボンナノチュ
ーブを形成する際に、従来この種の分野で用いられてき
た煩雑な手段であるマスキングやリソグラフィーといっ
た技術を用いることなく、直接基板上に形成されたカー
ボンナノチューブの凝集体からなる集合体配列膜及びそ
の製造方法を提供することである。また、カーボンナノ
チューブの円錐状物質の直径、密に成長・凝集させる面
密度についてカーボンナノチューブ集合体配列膜の形状
を制御する方法を提供することである。また、カーボン
ナノチューブ集合体配列膜、集合体配列の円錐状物質は
電子放出素子の電極用、フィールドエミッションディス
プレイの電極用として用いることができるカーボンナノ
チューブ集合体配列膜、集合体配列のカーボンナノチュ
ーブ円錐状物質を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
について鋭意研究し、カーボンナノチューブが円錐状物
質として、密に成長・凝集させ、自己組織化された状態
で得られものであるカーボンナノチューブのサイズが、
従来知られている直径は50nmであり、本発明のカーボ
ンナノチューブは50nm以下(50nmを除く)のも
のとして得られ、今回得られたカーボンナノチューブの
直径20nmのものである。また、その面密度が0.5~3.
0×109本/mm2の範囲にあり、また円錐状物質を形成して
いるものであり、かつ円錐状物質を形成しており、その
直径が1.5μm程度までの短い形状を有するカーボンナノ
チューブ集合体配列膜を得る事ができた。なお、従来は
カーボンナノチューブが円錐状物質を形成することは知
られていなかったものである。このことから明らかなよ
うに、前記の形状のカーボンナノチューブ及び面密度で
あり、かつ円錐状物質を形成しているカーボンナノチュ
ーブ集合体配列膜を、今回発明者らが始めて見出したも
のである。すなわち、従来ハステロイやステンレスなど
の合金基板、またはNiなどの単成分系基板上に熱フィラ
メントを併用したDCプラズマアシストCVD法で得られた
カーボンナノチューブの直径は、最小の物でも約50nmで
あった。これに対して、二次元コンポジット薄膜を堆積
させたシリコン基板上に、円錐状物質として、密に成長
・凝集させ、自己組織化された状態で得られたカーボン
ナノチューブのサイズは、従来知られているものより短
い直径約20nmのものを得る事ができた。これは、従来の
ものより半分以下の直径のカーボンナノチューブを調製
することができたものであることを確認している。そし
て、この値は実験を継続していくことによりさらに低い
値となるものと考えられる。更に、従来の基板上に得ら
れたカーボンナノチューブの面密度、例えばハステロイ
合金基板上に直接に熱フィラメントを併用したDCプラズ
マアシストCVD法で成長させたカーボンナノチューブの
面密度は、6.0~10.0×107本/mm2である。これにたいし
て、二次元コンポジット薄膜を堆積させたシリコン基板
上に得られるカーボンナノチューブの面密度は、0.5~3.
0×109本/mm2であり、従来の物より最大約50倍の面密度
でカーボンナノチューブを得ることができた。かつ、カ
ーボンナノチューブは、円錐状物質を形成しており、そ
の直径が1.5μm程度までの短い形状を有するカーボンナ
ノチューブ集合体配列膜をえたものである。また、カー
ボンナノチューブの成長触媒として働くことが知られて
いるNi、Co、Feなどの金属と、カーボンナノチューブの
成長触媒として作用しないMo、W、Taから成る二次元コ
ンポジット薄膜を、同時スパッタリング法によってガラ
ス、金属、セラミックスなどの耐熱性を有する各種基板
上に堆積させた後に、この表面を、カーボンナノチュー
ブの成長基板として利用して、プラズマアシストCVD法
によるカーボンナノチューブを製造すると、得られるカ
ーボンナノチューブは、従来の基板を用いる場合には見
られない状態である、直径50nm以下(50nmを除
く)であり、面密度が0.5~3.0×109本/mm2の範囲にあ
り、かつ円錐状物質を形成しており、その直径が1.5μm
程度、さらにはこれ以下の形状を有するカーボンナノチ
ューブ集合体配列膜であり、カーボンナノチューブが円
錐状に蓄積されている状態である、円錐状物質が蜜に成
長した状態で得られる。このようにして得られる円錐状
の物質は、カーボンナノチューブが凝集したものであ
り、自己組織化した状態で得られることを見出した。こ
のような円錐状のカーボンナノチューブが凝集された自
己組織化された膜は、きわめて良好な特性が得られるの
で、電極に用いる場合には、大変に好ましいことであ
り、寿命の延長が可能となる材料となる。また、希望す
るカーボンナノチューブの形状や密度について、コンポ
ジット成分の制御及び堆積時間を制御することにより、
得られる円錐状の物質を希望する範囲に制御できること
を見出した。また、前記のカーボンナノチューブ集合体
配列膜が、電子放出素子の電極用、又はフィールドエミ
ッションディスプレイの電極用として有効な材料である
ことを見出した。
【0005】本発明によると、以下の発明が提供され
る。 (1)カーボンナノチューブが円錐状物質として、密に
成長・凝集させ、自己組織化された状態で得られもので
あるカーボンナノチューブのサイズが、直径50nm以
下(50nmを除く)であり、面密度が0.5~3.0×109
/mm2の範囲にあり、かつ円錐状物質を形成していること
を特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列膜。 (2)二次元コンポジット薄膜を堆積させたシリコン基
板上に得られるものであることを特徴とする前記(1)
記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜。 (3)カーボンナノチューブの成長触媒と成長触媒では
ない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、同時スパ
ッタリング法により基板上に堆積させた後に、炭化水素
ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、カーボン
ナノチューブを円錐状物質として、蜜に成長・凝集さ
せ、自己組織化された状態で得られものであることを特
徴とするカーボンナノチューブ集合体配列膜。 (4)得られるカーボンナノチューブが円錐状物質とし
て、密に成長・凝集させ、自己組織化された状態で得ら
れものであるカーボンナノチューブのサイズが直径50
nm以下(50nmを除く)であり、面密度が0.5~3.0×1
09本/mm2の範囲にあり、また円錐状物質を形成している
ことを特徴とする前記(3)記載のカーボンナノチュー
ブ集合体配列膜。 (5)カーボンナノチューブの成長触媒がNi、Co、Feか
ら選ばれる金属であり、カーボンナノチューブの成長触
媒として作用しない金属元素が、Mo、W、Taから選ばれ
る二次元コンポジット薄膜であることを特徴とする前記
(3)記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜 (6)Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic%である(Ni-Mo系
コンポジット薄膜であることを特徴とする前記(3)又
は(5)記載のいずれかである カーボンナノチューブ
集合体配列膜。 (7)カーボンナノチューブの成長触媒と成長触媒では
ない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、同時スパ
ッタリング法により基板上に堆積させた後に、炭化水素
ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、カーボン
ナノチューブを円錐状物質として、密に成長・凝集さ
せ、自己組織化された状態のカーボンナノチューブ集合
体配列膜を製造することを特徴とするカーボンナノチュ
ーブ集合体配列膜の製造方法。 (8)カーボンナノチューブの成長触媒がNi、Co、Feか
ら選ばれる金属であり、カーボンナノチューブの成長触
媒として作用しない金属元素が、Mo、W、Taから選ばれ
る二次元コンポジット薄膜であることを特徴とする前記
(7)記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜の製造
方法。 (9)Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic%であるNi-Mo系コ
ンポジット薄膜であることを特徴とする前記(7)乃至
(8)記載のいずれかである カーボンナノチューブ集
合体配列膜の製造方法。 (10)カーボンナノチューブの成長触媒と成長触媒で
はない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、同時ス
パッタリング法により基板上に堆積させた後に、炭化水
素ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、カーボ
ンナノチューブを円錐状物質として、密に成長・凝集さ
せ、自己組織化された状態のカーボンナノチューブ集合
体配列膜の形状を制御する方法において、二次元コンポ
ジットの成分及び組成割合を特定するとともに、堆積時
間を調節することを特徴とするカーボンナノチューブを
円錐状物質の直径、密に成長・凝集させる面密度につい
てカーボンナノチューブ集合体配列膜の形状を制御する
方法。 (11)電子放出素子の電極用、又はフィールドエミッ
ションディスプレイの電極用である前記(1)乃至
(6)いずれか記載のカーボンナノチューブ集合体配列
膜。
【0006】
【発明の実施の形態及び実施例】本発明では、ガラス、
金属、セラミックスなどの耐熱性を有する各種基板を用
いることができる。具体的には、シリコン板、ハステロ
イ合金板、ステンレス板、石英ガラス板などを用いるこ
とができる。この基板の上に、Ni、Co、Feなどの金属と
Mo、W、Taから成る金属を、同時に、スパッタリング法
によって、二元系のコンポジット薄膜を形成する。コン
ポジットには、Mo−Ni、Mo―Co、Mo−Fe、
W−Ni、W−Co、W−Fe、Ta−Ni、Ta−C
o、Ta−Feの組み合わせが採用される。これらの組
成比は適宜変更して用いることができる。例えば、Ni
−Moでは以下のようにその組成比を変更して用いるこ
とができる。 A: Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) B: Ni 34 atomic% - Mo 66 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) これらは後に記載するように、得られるカーボンナノチ
ューブ集合体配列膜の性状を変化させることができ、こ
の観点から特定のカーボンナノチューブ集合体配列膜の
性状を得ようとするのであれば、Ni−Moの組成比を
変更させて所望のカーボンナノチューブ集合体配列膜の
性状の制御が可能となる。
【0007】二次元系のコンポジット薄膜を形成するた
めに、以下の方法を採用する。高周波マグネトロンスパ
ッタ法によりカーボンナノチューブの成長基板を作製す
る。特定の直径のMoターゲット上にNiの金属板を複
数枚、同心円状に載せ、それらとは離れて設置されてい
るシリコーンウエハの上にコンポジット膜を堆積させる
ことができる。コンポジット薄膜のNiとMo間の組成は、
Moターゲット上に載せるNi板の数を変えることでコント
ロールすることができる。コンポジットの組成は、蛍光
X線分析により評価する。2元系コンポジット薄膜の作
製は、高周波マグネトロンスパッタ法のほかパルスレー
ザーデポジション法をはじめ種々の物理蒸着法によって
行うことも可能である。
【0008】上記工程の実施例の手順は以下の通りであ
った。高周波マグネトロンスパッタ法によりカーボンナ
ノチューブの成長基板を作製した。まず直径100mmのMo
ターゲット上に5×15mm、厚さ1mmのNiの金属板を同心円
状に3枚から12枚載せて、シリコンウェハー上にコンポ
ジット膜を堆積させた。コンポジット薄膜のNiとMo間の
組成は、Moターゲット上に載せるNi板の数を変えること
でコントロールした。コンポジットの組成は、蛍光X線
分析により評価した。
【0009】本発明者らは、以下のコンポジット薄膜
を、作製した。 A: Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) B: Ni 34 atomic% - Mo 66 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) C: Ni 0 atomic% - Mo 100 atomic% (純Mo薄膜) D: Ni 100 atomic% - Mo 0 atomic% (純Ni薄膜)
【0010】このようにして得られるコンポジット薄膜
の基板上に、以下の装置に従ってプラズマアシストCVD
法によりカーボンナノチューブの蓄積を行う。装置の概
要は図5に示すとおりである。真空条件下に、原料ガス
としてメタンガスなどの炭化水素ガスを供給し、炭化水
素ガスをプラズマと接触させる。その際に、熱フイラメ
ントによる加熱を併用する。メタンガスを分解させて、
ホルダーの上に載置されている、薄膜を有する基板の表
面にカーボンナノチューブを成長させる。熱フィラメン
トを併用したDCプラズマアシストCVD法での蒸着は、一
般には以下の条件のもとで行われる。加熱フイラメント
には、例えば、タングステン材料からなるコイル状のも
のが使用される。フィラメント電流としては、4.5―5.5
Aの範囲であり、バイアス電圧により付加される装置が
用いられる。プラズマアシストCVD法には、前記熱フィ
ラメントを併用するものの他に、プラズマの発生源とし
てDC(直流)およびマイクロ波を用いたもの等があり、
これらの装置を用いることによっても、本発明のカーボ
ンナノチューブ集合体配列膜を得る事ができる。また、
装置内へ供給するガスは、メタン−窒素混合ガスが使用
される。メタンガス濃度は3%(ガス総供給量200ccm、
そのうちメタン:6ccm, 窒素:194ccm:ガスはチャンバ
ーに導入する前に混合して導入)から8%(総ガス供給
量200ccmのうちメタン16ccm, 窒素184ccm)の範囲であ
る。炭素ガス濃度を増大させると、ナノチューブの成長
速度を速くすることも可能である。
【0011】熱フィラメントを併用したDCプラズマアシ
ストCVD法での蒸着条件の実施例データをあげると以下
の通りである。 ・熱フィラメント(タングステン製。ワイヤー直径0.5m
m。直径約4mm−25巻のコイル状)への通電電流値:5A ・プラズマ電流:100mA ・バイアス電圧:約350V ・雰囲気:メタンガス濃度5% ・雰囲気圧:約13Torrに維持
【0012】前記の装置を用い、前記の条件により処理
することによって60分間堆積させたカーボンナノチュ
ーブが基板上に付着した状態を示すFE-SEM写真を示すと
以下の通りである(図1)。この図は基板組成と生成物
の形態との関係を示している。A,B、C,Dは、各基
板を表している。 A: Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) B: Ni 34 atomic% - Mo 66 atomic% (Ni-Mo系コンポジ
ット薄膜) C: Ni 0 atomic% - Mo 100 atomic% (純Mo薄膜) D: Ni 100 atomic% - Mo 0 atomic% (純Ni薄膜) 基板A上には、カーボンナノチューブ円錐状物質が密に
成長していることを示している(図A-a)。拡大写真を
見てみると、これらの円錐状物質は、直径約20nmのカー
ボンナノチューブが凝集(自己組織化)したものである
ことがわかる(図A-b)。基板Bには、カーボンナノチュ
ーブが卵形の状態で疎に成長していることを示している
(図B-a)。拡大写真を見てみると、これらの卵形物質
は、カーボンナノチューブが直径約20nmのカーボンナノ
チューブ自己組織体であることがわかる(図B-b)。基板C
(図C)、D(図D)上には、基板A、BでみられたようなCNT自
己組織体は全く観察されなかった。以上の結果から、生
成物の形態、密度は、Ni-Moナノコンポジット基板の組
成と深く関係しており、特定の好ましい形態のカーボン
ナノチューブ集合体は、Ni-Moナノコンポジット基板を
使用したときにのみに得られることを示している。
【0013】前記で好ましいとされたA(Ni 62 atomic
% - Mo 38 atomic% の組成のNi-Mo系コンポジットを堆
積させたシリコン基板)上に、CVD法により堆積時間を
ながくした場合のカーボンナノチューブが円錐状に蓄積
されている状態を示す、FE-SEM写真である(図2)。こ
の図は生成物のサイズと蒸着時間との関係を示している a 10分蒸着 b 20分蒸着 c 30分蒸着 d 60分蒸着 どの蒸着条件でも、円錐状(コーン状)に成長している
ことがわかる。しかし、それらのサイズや面密度は蒸着
時間により変化している。時間をながくすることによ
り、大きな円錐状の蓄積物を得られることがわかる。従
来ハステロイやステンレスなどの合金基板、またはNiな
どの単成分系基板上に熱フィラメントを併用したDCプラ
ズマアシストCVD法で得られたカーボンナノチューブの
直径は、最小の物でも約50nmであった。これに対して、
二次元コンポジット薄膜を堆積させたシリコン基板上
に、円錐状物質として、密に成長・凝集させ、自己組織
化された状態で得られたカーボンナノチューブのサイズ
は、直径約20nmのものである。このように、本発明によ
り、従来のものより半分以下の直径のカーボンナノチュ
ーブを調製することが可能である。そして、これらは、
反応条件によりさらに細いものを得ることができる。更
に、従来の基板上に得られたカーボンナノチューブの面
密度、例えばハステロイ合金基板上に直接に熱フィラメ
ントを併用したDCプラズマアシストCVD法で成長させた
カーボンナノチューブの面密度は、6.0~10.0×107本/mm
2である。これにたいして、二次元コンポジット薄膜を
堆積させたシリコン基板上に得られるカーボンナノチュ
ーブの面密度は、0.5~3.0×109本/mm2であり、従来の物
より最大約50倍の面密度でカーボンナノチューブを得る
ことができた。またカーボンナンノにより形成される円
錐状物質の直径が1.5μm以下の形状を有するものであ
る。この結果から、カーボンナノチューブの直径、面密
度、円錐状の生成物のサイズは蒸着時間を変化させるこ
とでコントロールすることができることが分かる。
【0014】図1Aに示した円錐状物質を透過電子顕微
鏡で観察した結果を示すと、図3に示したとおりであ
る。円錐状物質はカーボンナノチューブにより構成され
ており、カーボンナノチューブの先端には、微粒子が観
察される。これは、Ni-Mo系コンポジット薄膜に起因す
る微粒子が含まれていることを示している。これはカー
ボンナノチューブの成長触媒であると考えられる。
【0015】図4は、円錐状物質を構成するナノチュー
ブの透過電子顕微鏡写真、ナノチューブの先端に位置す
る粒子の電子線回折像ならびにEDS測定の結果を示す図
である。透過電子顕微鏡写真より円錐状物質を構成する
カーボンナノチューブは多層のカーボンナノチューブで
あることが分かる。また、電子線回折像ならびにEDS測
定結果から、ナノチューブ先端に含まれる粒子はNiであ
りMoは全く含まれていないことが明らかとなった。
【0016】本発明で得られる、生成物は、カーボンナ
ノチューブからなる円錐状物質であり、蜜に成長・凝集
させ、自己組織化された状態で得られものである。この
ような円錐状のカーボンナノチューブが凝集された自己
組織化された膜は、きわめて良好な特性が得られるした
がって、このような集合体配列の円錐状物質は電子放出
素子の電極、フィールドエミッションディスプレイの電
極として利用できる。特にナノチューブが凝集して円錐
状組織構造を形成していることから、従来問題とされて
いる電極の寿命が大幅に改善されるものである。
【0017】
【発明の効果】本発明で得られるカーボンナノチューブ
集合体配列膜のカーボンナノチューブは、円錐状をして
おり、かつ面密度も高い状態で得られる。カーボンナノ
チューブのサイズが、直径50nm以下(50nmを除
く)以下であり、面密度が0.5~3.0×109本/mm2の範囲に
あり、また円錐状物質の直径が1.5μm以下の形状を有す
ることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列膜
が得られる。円錐状の物質は、カーボンナノチューブが
凝集したものであり、自己組織化した状態で得られる。
このような円錐状のカーボンナノチューブが凝集された
自己組織化された膜は、きわめて良好な特性が得られる
したがって、このような集合体配列の円錐状物質は電子
放出素子の電極、フィールドエミッションディスプレイ
の電極として利用できる。特にナノチューブが凝集して
円錐状組織構造を形成していることから、従来問題とさ
れている電極の寿命が大幅に改善されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】60分間堆積させたカーボンナノチューブのFE
-SEM観察結果を示す図
【図2】62 atomic% - Mo 38 atomic% の組成のNi-Mo系
コンポジット薄膜を堆積させたシリコン基板上にCVD法
により種々の時間堆積させたカーボンナノチューブのFE
-SEM観察結果を示す図
【図3】円錐状物質の透過電子顕微鏡観察結果を示す図
【図4】円錐状物質を構成するナノチューブの透過電子
顕微鏡観察結果を示す図
【図5】プラズマアシストCVD法によりカーボンナノチ
ューブの蓄積を行う装置を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺嶋 和夫 茨城県つくば市東1−1−1 独立行政法 人 産業技術総合研究所つくばセンター内 Fターム(参考) 4G146 AA11 AB07 AC03A AC14A AC30A AD23 AD29 BA12 BA42 BB23 BC09 BC44

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カーボンナノチューブが円錐状物質とし
    て、密に成長・凝集させ、自己組織化された状態で得ら
    れものであるカーボンナノチューブのサイズが、直径5
    0nm以下(50nmを除く)であり、面密度が0.5~3.
    0×109本/mm2の範囲にあり、かつ円錐状物質を形成して
    いることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列
    膜。
  2. 【請求項2】二次元コンポジット薄膜を堆積させたシリ
    コン基板上に得られるものであることを特徴とする請求
    項1記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜。
  3. 【請求項3】カーボンナノチューブの成長触媒と成長触
    媒ではない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、同
    時スパッタリング法により基板上に堆積させた後に、炭
    化水素ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、カ
    ーボンナノチューブを円錐状物質として、蜜に成長・凝
    集させ、自己組織化された状態で得られものであること
    を特徴とするカーボンナノチューブ集合体配列膜。
  4. 【請求項4】得られるカーボンナノチューブが円錐状物
    質として、密に成長・凝集させ、自己組織化された状態
    で得られものであるカーボンナノチューブのサイズが直
    径50nm以下(50nmを除く)であり、面密度が0.5~
    3.0×109本/mm2の範囲にあり、また円錐状物質を形成し
    ていることを特徴とする請求項3記載のカーボンナノチ
    ューブ集合体配列膜。
  5. 【請求項5】カーボンナノチューブの成長触媒がNi、C
    o、Feから選ばれる金属であり、カーボンナノチューブ
    の成長触媒として作用しない金属元素が、Mo、W、Taか
    ら選ばれる二次元コンポジット薄膜であることを特徴と
    する請求項3記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜
  6. 【請求項6】Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic%である(Ni
    -Mo系コンポジット薄膜であることを特徴とする請求項
    3または5記載のいずれかである カーボンナノチュー
    ブ集合体配列膜。
  7. 【請求項7】カーボンナノチューブの成長触媒と成長触
    媒ではない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、同
    時スパッタリング法により基板上に堆積させた後に、炭
    化水素ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、カ
    ーボンナノチューブを円錐状物質として、密に成長・凝
    集させ、自己組織化された状態のカーボンナノチューブ
    集合体配列膜を製造することを特徴とするカーボンナノ
    チューブ集合体配列膜の製造方法。
  8. 【請求項8】カーボンナノチューブの成長触媒がNi、C
    o、Feから選ばれる金属であり、カーボンナノチューブ
    の成長触媒として作用しない金属元素が、Mo、W、Taか
    ら選ばれる二次元コンポジット薄膜であることを特徴と
    する請求項7記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜
    の製造方法。
  9. 【請求項9】Ni 62 atomic% - Mo 38 atomic%であるNi-
    Mo系コンポジット薄膜であることを特徴とする請求項4
    乃至5記載のいずれかである カーボンナノチューブ集
    合体配列膜の製造方法。
  10. 【請求項10】カーボンナノチューブの成長触媒と成長
    触媒ではない元素からなる二次元コンポジット薄膜を、
    同時スパッタリング法により基板上に堆積させた後に、
    炭化水素ガスをプラズマアシストCVD法により処理し、
    カーボンナノチューブを円錐状物質として、密に成長・
    凝集させ、自己組織化された状態のカーボンナノチュー
    ブ集合体配列膜の形状を制御する方法において、二次元
    コンポジットの成分及び組成割合を特定するとともに、
    堆積時間を調節することを特徴とするカーボンナノチュ
    ーブを円錐状物質の直径、密に成長・凝集させる面密度
    についてカーボンナノチューブ集合体配列膜の形状を制
    御する方法。
  11. 【請求項11】電子放出素子の電極用、又はフィールド
    エミッションディスプレイの電極用である請求項1乃至
    6いずれか記載のカーボンナノチューブ集合体配列膜。
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