JP2011149893A - 微小部x線計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料が搭載される基板(基材)の元素と、試料に含まれる元素が同一でも、安定して、微小部分の成分計測が可能な微小部X線計測装置を提供する。
【解決手段】X線発生装置と、放出されるX線を50μm径以下の断面積に収束照射するX線光学素子と、蛍光X線を検出するX線検出器と、光学像を撮像可能な光学顕微鏡と画像認識機能を備え、試料を二次元で移動して位置決めが可能で、かつ、高さ方向にその位置調整が可能な試料相対移動機構とを備え、試料の特定位置における蛍光X線計測が可能であり、かつ、基材の上に置かれた測定試料からの蛍光X線も計測可能な微小部X線計測装置では、X線の照射位置と前記X線検出器との間の蛍光X線の光路を蛍光X線の減衰を抑制する構造(真空又はヘリウム置換)とし、かつ、基材上の測定試料が基材と同一の金属元素を含んでも、測定試料の同一の金属元素の含有が判定可能なデータ処理機能を備えたデータ処理部を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学顕微鏡による座標計測から測定位置を決定し、試料が搭載され基板(基材)に含まれる元素と試料に含まれる元素が同一であっても安定した微小部分の計測が可能な微小部X線計測装置に関する。
大きな試料の微小部分又は各種基板に搭載された微小試料の測定方法については、例えば、顕微赤外分光法、顕微ラマン分光法、電子ビーム励起蛍光X線分析法など、様々な方法が開発されている。これらの中でも、赤外分光法とラマン分光法は、特に、有機材料の計測に用いられている。また、電子ビーム分析法は無機材料や金属の計測に一般的に用いられ、特に、真空中での計測により、アルミニウム(Al)のような軽元素でも計測が可能であり、多用されている。しかしながら、電子ビーム分析法では、試料を真空中に挿入する必要があるため、計測のスループットの向上が難しいと共に、特に、大型の試料、又は、大型基板上の試料の計測に適用するには困難があった。
そこで、従来、例えば、以下の特許文献1にも記載されるように、半導体製造工程での成膜制御のため、微小部の計測を目的とした高感度・高計測スループットを企図したX線計測装置が開発されている。この特許文献1の装置では、膜厚を高精度で制御するため、計測する一点(微小部)での計測時間が5秒〜20秒程度と、比較的長い時間を必要とする。一方、以下の特許文献2、特許文献3や特許文献4により知られるように、光学計測とX線計測を併用した装置が開発されているが、光学顕微鏡による計測を重視した装置では、X線計測部分に光学素子を使用せず、蛍光X線の発生効率や基板からの背景ノイズが考慮されておらず、そのため、特に、微小金属の計測能力としては、マイクログラムからミリグラム程度でしかなく、ナノグラム程度の微小な量の金属の計測は不可能であった。
特開2006−153767号公報 国際公開WO2009/093341号パンフレット 特開2009−198485号公報 特開2009−258114号公報
ところで、大型の試料、又は、大型の基板に搭載された試料の蛍光X線計測は、大気中で行うことが必要となるが、しかしながら、その場合、大気中でのX線の減衰が問題となる。
また、微小部分のX線測定を行うためには、X線ビームを微小な断面積に収束させるX線光学素子と共に、光学顕微鏡が必要であり、更には、これらに対し、蛍光X線計測用のX線検出器を含めた配置上の工夫が必要となる。
そこで、本発明では、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、その目的は、試料が搭載される基板(基材)に含まれる元素と、当該試料に含まれる元素が同一であっても、安定して、微小部分の成分計測が可能な微小部X線計測装置を提供することである。
本発明は、上述したように、大型の試料、又は、大型の基板(基材)に搭載された試料の蛍光X線計測は、大気中で行うことが必要であることに鑑みて達成されたものであり、特に、以下に述べる発明者による知見によりものである。即ち、蛍光X線計測を大気中で行う場合、例えば、軽元素金属であるアルミニウム(Al)から放出される蛍光X線(特性X線エネルギーは、1.5keV)は、大気中を1mm進む毎に、その約20%が減衰する。他方、鉄(Fe)や銅(Cu)などの遷移金属元素から放出される蛍光X線(特性X線エネルギーは、それぞれ、6.8keV、8.0keV)は、大気中を数mm程度の距離を進んでも殆ど減衰しない。従って、試料から検出器の検出素子までの距離(蛍光X線の大気パス(光路))を極力、短く、例えば、5mm以下に設定することによれば、1.5keV程度の蛍光X線で大気中の透過率を30%程度にすることができ、これにより、アルミニウム(Al)よりも原子番号の大きな元素の蛍光X線を検出することが可能となる。
そこで、本発明では、上述した発明者により知見に基づき、上記の目的を達成するため、まず、X線発生装置と;当該X線発生装置から放出されるX線を測定試料上で50μm径以下の断面積に収束照射するX線光学素子と;前記測定試料から放出される蛍光X線を検出するX線検出器と;X線照射位置の光学像を撮像可能な光学顕微鏡と;そして、前記試料を二次元で走査し、位置決めが可能であり、かつ、高さ方向に空気パスが5mm以下になるようにその位置調整が可能な試料相対移動機構とを備え、前記光学顕微鏡による画像認識機能により、前記試料の特定位置における蛍光X線計測が可能であり、かつ、基材の上に置かれた測定試料からの蛍光X線を計測することも可能な微小部X線計測装置において、前記X線光学素子により50μm径以下の断面積に収束照射されたX線の照射位置と前記X線検出器との間の蛍光X線の光路を、当該蛍光X線の減衰を抑制するための構造とする共に、更に、前記基材上に置かれた前記測定試料が当該基材と同一の金属元素を含んでいても、前記測定試料の当該同一の金属元素の含有を判定を可能にするデータ処理機能を備えたデータ処理部を備えている微小部X線計測装置が提供される。
また、本発明では、前記に記載した微小部X線計測装置において、前記50μm径以下の断面積に収束照射されたX線の照射位置と前記X線検出器との間の蛍光X線の光路を、真空にすることが好ましく、又は、前記50μm径以下の断面積に収束照射されたX線の照射位置と前記X線検出器との間の蛍光X線の光路を、ヘリウムにより置換することが好ましい。又は、前記X線発生装置においてX線を発生する金属は、原子番号24のクロム(Cr)、原子番号42のモリブデン(Mo)から47の銀(Ag)まで、又は、74のタングステン(W)から79の金(Au)までの各元素の単体、又は、複数の元素を含む合金又は積層膜であることが好ましく、前記X線光学素子の内部空間を、真空排気又はヘリウム置換することが好ましい。
また、本発明では、前記に記載した微小部X線計測装置において、前記X線検出器を、1個又は複数個のX線光子のエネルギー弁別機能をもつ半導体X線検出素子により構成したことが好ましく、更には、前記光学顕微鏡は、当該光学顕微鏡の中心軸に、前記X線検出素子を挿入可能な孔を備えており、かつ、当該光学顕微鏡の光軸を照射X線ビームの中心軸と同軸にすることが好ましい。加えて、前記光学顕微鏡にカセグレン型の反射光学顕微鏡を用い、前記試料に対向する副鏡面裏面の照射X線ビームと前記光学顕微鏡の光軸の同軸中心軸の周囲に、単数又は複数のX線検出素子を備えることが好ましく、更に、前記試料から発散・放出される蛍光X線の発散角を抑制する手段を備えることが好ましい。
上述した本発明によれば、大型試料又は大型基板に搭載された試料の顕微鏡画像を認識して特定微小部分の元素を蛍光X線計測することを可能にすると共に、料が搭載される基板(基材)に含まれる元素と、当該試料に含まれる元素が同一であっても、安定して、微小部分の成分計測が可能な微小部X線計測装置を提供することを可能にするという、実用的にも優れた効果を発揮する。
本発明の実施例1になる微小部X線計測装置の概略構成を示す全体斜視図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置における試料からの蛍光X線の計測を説明する図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置において、蛍光X線計測を行う試料位置の座標を決定するフローを示す図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置において、CrターゲットのX線発生装置(X線管)を用いて計測したガラス基板上試料の測定例(測定例1)を示すX線スペクトルを含む図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置において、CrターゲットのX線発生装置(X線管)を用いて計測したガラス基板上試料の他の測定例(測定例3)を示すX線スペクトルを含む図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置において、CrターゲットのX線発生装置(X線管)を用いて計測した、表面にAl微小金属粉が存在するガラス基板上試料の測定例(測定例3)を示すX線スペクトルを含む図である。 記実施例1の微小部X線計測装置において、CrターゲットのX線発生装置(X線管)を用いて計測した上記測定例2と測定例3、及び、その差分を示すX線スペクトルを含む図である。 原子番号24のクロミウム(Cr)から原子番号29の銅(Cu)までの遷移金属元素のKα及びKβスペクトルの例を示す図である。 上記実施例1の微小部X線計測装置において、測定座標が複数点存在する場合の微小部XRF(蛍光X線)計測のフローを示す図である。 本発明の実施例2になる微小部X線計測装置を示す正面図である。 本発明の実施例2になる微小部X線計測装置を示す側面図である。 上記実施例2の微小部X線計測装置におけるX線及び可視光光学系の構成を示す縦方向断面図である。 上記実施例2の微小部X線計測装置におけるX線及び可視光光学系の構成を示す横方向断面図である。 本発明の実施例3になる微小部X線計測装置の内部構成を示す縦方向断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1になるX線計測装置の全体構成を示す斜視図である。ここでは図示されていない筐体の内部には、X線発生装置1、X線検出器3、そして、光学顕微鏡4が搭載されている。X線発生装置1で発生したX線を微小面積に収束するためのX線光学素子2には、ポリキャピラリ型の素子を用い、かつ、当該ポリキャピラリ型のX線光学素子2を、X線発生装置1に、直接、取り付けている。これにより、X線発生装置1で発生したX線は、上記ポリキャピラリ型のX線光学素子2の働きにより、例えば、50μm以下の微小断面積に収束され、そして、試料相対移動機構(移動テーブル)6上に載置された試料5を照射する。なお、上記X線発生装置1及びポリキャピラリ型のX線光学素子2によるX線の照射位置に対する、上記試料5の位置制御は、試料移動制御部61により行う。
なお、本実施例におけるポリキャピラリ型のX線光学素子2は、X線発生装置1においてモリブデン(Mo)金属をX線ターゲットとしてX線を発生したエネルギー17.5keVのX線に対しては、これを15μmの径に収束し、エネルギー8.0keVのX線に対しては25μmの径に収束する働きを有する。また、X線発生装置1においてX線を発生する金属ターゲットとしては、原子番号42の上述したモリブデン(Mo)から原子番号47の銀(Ag)まで、又は、原子番号74のタングステン(W)から原子番号79の金(Au)までの各元素を、単体、又は、複数、合金又は積層膜として用いてもよい。
また、上記X線発生装置1の加速電圧・電流、更には、X線シャッタなどの制御は、X線発生制御部11で行う。また、上記ポリキャピラリ型のX線光学素子2により収束されたX線の照射位置の確認は、光学顕微鏡4により行う。即ち、顕微鏡光源43から出た光は、上記光学顕微鏡4を通って試料5に照射され、そして、当該試料5からの反射・散乱光は、上記光学顕微鏡4に取り付けられたCCDユニット42上に試料像を結像し、もって、電気信号として顕微鏡制御部41へ送られる。
そして、図示されない筐体は、やはり図示されていない位置制御機構により、三次元座標(図のX−Y−Zを参照)上での位置を自由に選択して計測位置として設定される。このうち、X−Yは、基板である試料5上の二次元座標であり、Zは筐体の高さであり、これは、当該基板と光学顕微鏡4の焦点位置とにより調整が行われる。
続いて、添付の図2を用いて、実施例1になるX線計測装置の、更に詳細な構造について説明する。試料5には、上記X線発生装置1及びX線光学素子2により、X線が照射される。この時、X線発生装置1で発生したX線は、上述したように、X線光学素子2を通過することにより、小さな照射面積に収束される。なお、このX線光学素子2の内部は、真空に排気され、又は、ヘリウムにより置換されており、これにより、その内部を通過するX線の減衰を防ぐ構造となっている。
一方、X線が照射された試料(基板)5上の微小部位51から放出される蛍光X線32は、X線検出器3により捕らえ、検出器制御部31により、蛍光X線エネルギーに対するX線光子数のヒストグラムに変換されてデータ処理装置7に送られる。これにより、光学顕微鏡4で捕らえた試料5は、試料相対位置移動機構6による移動により、X線発生装置1で発生したX線がX線光学素子2により収束・照射される位置に移動し、この時に発生する蛍光X線をX線検出器3により捕らえ、データ処理装置7において、捕らえた蛍光X線の光子エネルギー分布(スペクトル)の解析を行い、もって、X線が照射された部位の元素分析が行われる。なお、このとき、試料の微小部位51からX線検出器3までの距離を5mm以下にすることによれば、試料の微小部位51から発生するがエネルギー1.0keVの特性X線であっても、空気中での減衰を抑制することができ、これを検出することが可能となる。
特に、本実施例では、X線発生装置1のX線ターゲットとして、モリブデン(Mo)を用いた場合には、印加電圧50kV、電流0.5mAの動作条件で、300McpsのX線が試料5の微小部位51に照射される。この時、原子番号が42のモリブデン(Mo)から原子番号47の銀(Ag)までの金属をX線ターゲットとすると、照射されるX線の中に、Lαの特性X線が混入する。なお、このLαの特性X線は、MoLαでは、X線エネルギーが2.29keVであり、AgLαではX線エネルギーが2.98keVであり、即ち、アルミニウム金属(Al)の蛍光X線励起エネルギーである1.56keVに近く、アルミニウム金属(Al)から高い効率でAlKαの蛍光X線を放出させることが可能である。一方、MoKα及びAgKαの特性X線は、遷移金属の励起に有効であり、一般的に用いられる金属元素であるAlと共に、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等の遷移金属の微小部蛍光X線分析に有効であり、高感度の計測を可能にする。
次に、添付の図3には、本発明のX線計測装置においてX線計測を行うための座標測定のフローを示す。
図からも明らかなように、XRF(蛍光X線)測定位置検出が開始されると、まず、測定位置の番号(m)をm=0に設定し(ステップS31)、続いて、その値mを1だけ増加させる(m=m+1)(ステップS32)。次に、測定位置の番号(m)の座標(例えば、(mx,my))まで座標移動を行い(ステップS33)、続いて、Z位置の調整を行う(ステップS34)。まず、光学測定を行い(ステップS35)、微粒子の存在の有無を判定する(ステップS36)。その結果、微粒子の存在が有と判定された場合は(図の「Yes」)、その座標を記録し(ステップS37)、その後、上述したmの値によって、全ての測定が終了したか否かを判定する(ステップS38)。他方、微粒子の存在が無と判定された場合は(図の「No」)、直ちに、上記ステップS37へ移行する。
そして、上記ステップS37における判定の結果、測定は未だ終了していない(図の「No」)と判定された場合には、処理は、再び、上記ステップS32へ戻り、他方、全ての測定が終了した(図の「Yes」)と判定された場合には、微粒子が存在する座標を、記録された座標の先頭に配置し(ステップS39)、更に、M0=m+1として(ステップS40)として、処理を終了する。
なお、上記のフローチャートは、蛍光X線測定を行う位置の座標を決定するため、可視光を用いて行う一例を示している。なお、座標を決定するためには、上述した可視光以外にも、例えば、赤外線や紫外線を用いる方式も可能である。又は、X線計測座標を可視光で決定した直後にX線計測を行うことも可能である。
更に、添付の図4〜図6には、上記図1及び図2に示した構成のX線計測装置を用いて測定した蛍光X線の光子エネルギー分布の一例を示す。なお、この測定例の場合、X線発生装置で発生したX線の光子エネルギーは5.4keVである。
図4は、試料に含まれる元素の特性X線のエネルギーと、一定時間の測定により検出される光子の計測データが示されており、この図4のデータにより、計測領域に含まれる元素の種類と量とが測定することが出来る。そして、本発明になる計測装置では、特に、大気中のX線パスを5mm以下に設定することにより、大気中での蛍光X線の減衰を抑制することが可能となり、その結果、図4に示すように、ナトリウム(Na)の検出をも可能となった。なお、カルシウム(Ca)やバリウム(Ba)の蛍光X線は、大気中ではほとんど減衰することがないことから、高感度で測定することが可能である。
次に、図5と図6を用い、試料微粒子と同一の原子種が基板に含まれている場合の検出方法について説明する。
多くの分野において基板として用いられる材料には、ガラスが存在する。かかるガラスでは、一般に使われるものとして、アルミナ硅酸塩があり、これは、アルカリ金属・アルカリ土類金属と、アルミナ・シリカの混合物としてその組成が与えられる。ここで用いたガラス基板の蛍光X線スペクトルの例を図5に示す。
この図5に示したスペクトルには、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、リン(P)、僅かな量の硫黄(S)、塩素(Cl)、更には、大気中のアルゴン(Ar)が計測されている。また、この測定結果から、ガラス中に含まれる元素として、AlとSiが計測される。なお、P、S、Clは、ガラス表面の処理によって付着したものが計測されたものである。
ここで、上述したガラス基板の表面上にAl金属粉を分散し、基板位置を移動することにより、当該Al金属粉を上記X線照射領域内に導入し、蛍光X線を上記と同一の条件で測定し、それにより得られた結果が図6に示されている。
そこで、これら計測されたスペクトルの差を取ると、添付の図7の中に「差分スペクトル」で示すような差分スペクトルが得られる。なお、この例では、現れたピークは、Alの微小金属粉によるピークであり、即ち、微小異物を検出できたこととなる。なお、この方法によれば、本実施例になる装置により測定した結果、1ng程度のAl微小金属粉の検出が可能であった。
ここで、本発明で用いた微小金属粉の検出について、その確からしさ(確実性)について説明する。X線の検出は、検出器により、当該検出器に入射するX線の光子を計測することにより行われるが、その数(N)の計測精度は、計測統計誤差(1σ)として、Nの2乗根が与えられる。また、X線の計測では、検出器自体から、又は、電子回路から発生する背景ノイズが必ず観測される。そして、微小異物からの蛍光X線の計測強度は、金属微粒子を含む計測値(N1)と、それを含まない計測値(N0)との差(N1−N0)として与えられるが、それぞれの計測値は、√N1、√N0の計測統計誤差(1σ)を含む。従って、微小金属粒子からの蛍光X線強度がnσの水準で測定されたと判断するためには、以下の式(1)を用いる。
n=(N1−N0)/(√N1+√N0)・・・(1)
n=1では、正規分布関数では68%の確率で「微小金属異物があり」と判定することが出来、その確率は、n=2の場合には95%となり、更に、n=3の場合には99.7%となる。一例として、N1とN0とが、それぞれ、1000と900の場合には、n=1.6と、そして、N1とN0とが、それぞれ、500と400の場合には、n=2.4となり、微小金属粒子からの計測強度(N1−N0)が同一であっても、後者の方がその背景蛍光X線ノイズ強度が低いため、確からしい検出となる。また、計測強度(N1−N0)は微小金属粒子からの蛍光X線強度であり、金属粒子重量に凡そ比例する値である。
そこで、複数種の遷移金属粒子が検出される場合には、次のような処理を行うことにより、データ精度の向上を図る。なお、多用される遷移金属元素としては、原子番号24のクロミウム(Cr)〜原子番号29の銅(Cu)が挙げられるが、各元素に対して励起される2種類の蛍光X線のうち、Kβと呼ばれる高エネルギー側のX線が、原子番号が1だけ大きなKαと呼ばれる低エネルギー側のスペクトルと重なる。この様子を、添付の図8に示す。従って、元素毎の蛍光X線が検出された場合は、Kαの他に必ずKβが存在するものとして、計測したスペクトルデータ上で処理する。同様に、更に原子番号の大きな元素に対しては、複数のLαとLβがあるものとして処理する。これにより、計測データの精度向上を図る。
次に、複数点のデータを用いて、基板に含まれる元素の影響を抑制する方法について説明する。ここで用いる蛍光X線検出器は、所謂、エネルギー分散型(ED)検出器を用い、マルチチャンネルアナライザーに対するスペクトルが、デジタルで、データ処理装置7のメモリーに蓄積される。従って、ここで述べる演算は、非常に高速で実行される。
基板上に複数点の計測データがある場合、必ずしも各測定点に対して金属微粒子のない計測を行うことなく、基板からの蛍光X線スペクトルを推定することが可能である。基板の種類は既知であるものとする。例えば、ガラスの場合は、一般に、その組成はアルカリ金属(Na、K等)、アルカリ土類金属(Ca、Ba等)とアルミニウム(Al)及びシリコン(Si)と酸素(O)である。従って、微粒子の蛍光X線測定を行ったとき、微粒子がこれらの元素でない遷移金属元素(例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)の場合は、微粒子を構成する元素以外は、基板由来の元素からの蛍光X線であると判断することができる。従って、微粒子を含んだ測定のうち、本来は基板に含まれない元素が検出される場合、基板に含まれる元素の蛍光X線スペクトルは、基板からのものであると判断することができる。
例えば、複数の計測金属微粒子が基板由来の元素と同様な場合は、複数のスペクトルを比較し、例えば、アルミニウム(Al)に対応するスペクトルの蛍光X線強度を比較し、最も小さい数値のものを基板由来の蛍光X線強度と仮定し、上記の式(1)によってn値を計算する。同様に、最大のAl蛍光X線のn値が、閾値nt(例えば、nt=2.0)以上の場合、最低のAl蛍光X線強度を、基板からの蛍光X線強度とする。その結果、全ての計測におけるn値が閾値nt以下の場合は、金属微粒子の存在しない場所における蛍光X線強度を、基板からの蛍光X線強度とする。このようにして、基板からの蛍光X線強度を求めることにより、常に、金属微粒子が存在する(有)点と存在しない(無)点の2点について計測した場合と比較し、高速に計測を行うことが可能となる。なお、この時の測定の一例を、添付の図9に示す。
この図9のフローにも示すように、微小部XRF(蛍光X線)計測が開始されると、まず、測定位置の番号(m)をm=0に設定し(ステップS91)、続いて、その値mを1だけ増加させる(m=m+1)(ステップS92)。次に、測定位置の番号(m)の座標(例えば、(mx,my))まで座標移動を行い(ステップS93)、続いて、Z位置の調整を行う(ステップS94)。その後、XRF(蛍光X線)計測が行われ(ステップS95)、その結果得られるデータにより、mデータの最小値を摘出する(ステップS96)。その後、k=0、M1=mとし(ステップS97)、次に、kを1ずつ増加させながら(k=k+1)(ステップS98)、全測定n値を算出して(ステップS99)、図の左側に示す表を作成する。その後、全てのデータ処理の終了を確認し(ステップS100、S101)、その後、処理を終了する。
添付の図10〜図13には、本発明の実施例2になる微小部X線計測装置が示されており、ここでは、以下に、上述した実施例1になる微小部X線計測装置との相違点について主に説明する。即ち、この実施例2になる微小部X線計測装置では、上述した実施例1になる微小部X線計測装置とは異なり、光学顕微鏡の光軸と、試料に照射されるX線の光学軸とを一致させている。かかる構成を採用することによれば、上述した実施例1では個別のユニットとしていたものを一体化することが可能となる。
即ち、図10は、実施例2になる微小部X線計測装置の正面図であり、図11は、その側面図である。また、図12及び図13は、それぞれ、その内部構成を示すための縦方向及び横方向の断面図である。
これらの図からも明らかなように、実施例2になる微小部X線計測装置では、光学顕微鏡としてカセグレン反射鏡を用いている。このカセグレン型光学顕微鏡8の鏡筒44には、試料又は試料基板の光学像を観察するためのCCDユニット42、顕微鏡光源43、及び、X線発生装置1が取り付けられている。
かかる構成の微小部X線計測装置では、X線管13で発生するX線は、X線焦点16から放出され、X線シャッタ室15の内部に設置されたX線シャッタ14を通過し、そして、ポリキャピラリX線光学素子21を通してX線計測点24を照射する。このとき、ポリキャピラリX線光学素子21を通過するX線は、光学素子の働きにより、X線計測点24に収束する。また、X線の通過する経路の大部分を占めるX線シャッタ室15、X線光学素子保持内筒22の内部に設置されたポリキャピラリX線光学素子21、及び、X線検出器チャンバ35は、真空排気管25からの排気により真空に保たれる。これにより、空気によるX線の吸収を抑制する。
X線計測点で発生した蛍光X線は、X線透過窓23を通り、X線検出器チャンバ35の内部に設置されたX線検出素子33に入射し、電気信号に変換され、図12には図示されていない信号線を介して検出器制御部31に入力され、そして、データ処理装置7において蛍光X線スペクトルが得られる。
一方、顕微鏡光源43を出た可視光は、プリズム45により反射されると共に、カセグレン型光学顕微鏡8により、副鏡保持バー83に設置されたカセグレン副鏡82及びカセグレン主鏡81により反射収束し、X線と同様に、X線計測点24に収束・照射する。計測点24の光学像は、カセグレン副鏡82、カセグレン主鏡81及びプリズム47を通して、CCDユニット42上に試料像を投射する。
図13を参照しながら、X線検出器チャンバ35の内部におけるX線検出素子34の配置について、以下に詳細に説明する。
X線検出器チャンバ35の中央部には、ポリキャピラリX線光学素子21が配置され、その周囲には、X線検出素子34が取り付けられている。本実施例では、4個のX線検出素子が取り付けられた例が示されている。このX線検出素子の数は、予想される蛍光X線の強度で決定され、そして、ベリリウム(Be)製の箔を用いたX線透過窓23とX線検出器チャンバ35とは、例えば、溶接又は接着により密封され、ポリキャピラリX線光学素子21及びX線検出器チャンバ35は真空排気され、真空に保たれている。これにより、試料から発生する蛍光X線の行路のうち、X線透過窓23とX線検出素子34の部分での空気によるX線の吸収を抑制する。
また、X線検出器チャンバ35の外周部には、可視光透過窓26が設けられており、試料像の照明及び観察を行うための結像光学系への光路を構成する当該実施例2では、X線が照射される軸と観察用顕微鏡の光軸とが一致している点に特徴があり、これによれば、装置の製造時における調整によって可視光焦点とX線焦点の位置を固定することが出来ることから、取り付けや調整が容易な微小部X線計測装置が提供できるというメリットが得られる。
添付の図14には、本発明の実施例3になる微小部X線計測装置が示さされており、ここでも、以下に、上述した実施例2になる微小部X線計測装置との相違点について主に説明する。即ち、この図14に示す微小部X線計測装置では、上記実施例2の微小部X線計測装置で採用したカセグレン型光学顕微鏡とは異なり、屈折レンズの中央光軸部分に孔を開設し、そこにポリキャピラリX線光学素子21を装着することにより、試料観察用光学系と試料照射X線光学系の軸とを一致させている。さらに、上述した構成により、蛍光X線の検出は、上記実施例2とは異なり、別ユニットとして、対物レンズ48の周囲に配置される。即ち、この実施例3では、蛍光X線検出器36の蛍光X線入射側に、ポリキャピラリ蛍光X線光学素子37を取り付けることにより、検出器に入射するX線の取り込み立体角を増加させ、もって、高感度の計測が可能な装置を実現するものである。
本実施例でも、X線光学素子保持内筒22及び蛍光X線光学素子保持内筒38の内部は、真空排気又はヘリウム置換されており、これにより、これらの内部に設置されているポリキャピラリX線光学素子21及びポリキャピラリ蛍光X線光学素子37の内部を通過するX線の減衰を防いでいる。
1…X線発生装置、2…X線光学素子、3…X線検出器、4…光学顕微鏡、5…試料、試料基板、6…試料相対移動機構、7…データ処理装置、8…カセグレン型光学顕微鏡、11…X線発生制御部、12…X線管シールド、13…X線管、14…X線シャッタ、15…X線シャッタ室、16…X線焦点、17…試料照射X線、21…ポリキャピラリX線光学素子、22…X線光学素子保持鏡筒、23…X線透過窓、31…検出器制御部、32…蛍光X線、34…X線検出素子、35…X線検出チャンバ、36…蛍光X線検出器、37…ポリキャピラリ蛍光X線光学素子、38…蛍光X線光学素子保持鏡筒、41…顕微鏡制御部、42…CCDユニット、43…顕微鏡光源、44…鏡筒、45…プリズム、48…対物レンズ、51…試料、61…試料移動制御部、81…カセグレン主鏡、82…カセグレン副鏡、83…副鏡保持バー。

Claims (7)

  1. X線発生装置と;
    当該X線発生装置から放出されるX線を測定試料上で50μm径以下の断面積に収束照射するX線光学素子と;
    前記測定試料から放出される蛍光X線を検出するX線検出器と;
    X線照射位置の光学像を撮像可能な光学顕微鏡と;そして、
    前記試料を二次元で走査し、位置決めが可能であり、かつ、高さ方向にその位置調整が可能な試料相対移動機構とを備え、かつ、基材の上に置かれた測定試料からの蛍光X線を計測することが可能な微小部X線計測装置において、
    前記X線光学素子と前記X線検出器が真空又はヘリウム(He)中に保持され、前記ヘリウム又は真空のX線を透過する隔壁と、50μm径以下の断面積に収束照射されたX線の照射位置が前記光学顕微鏡による画像認識機能により特定位置に移動可能であるとともに、前記隔壁と前記X線の照射位置の間隔を5mm以下に設定可能であり、更に、
    前記基材上に置かれた前記測定試料が当該基材と同一の金属元素を含んでいても、前記測定試料の当該同一の金属元素の含有を判定可能にするデータ処理機能を備えたデータ処理部を備えていることを特徴とする微小部X線計測装置。
  2. 前記請求項1に記載した微小部X線計測装置において、X線光学素子とX線光子のエネルギー弁別機能をもつ1又は複数の半導体X線検出素子を真空排気またはヘリウム(He)置換した同一のチャンバ内に備え、前記X線発生装置から前記X線光学素子の中間及び大気中に設置された試料に対向するチャンバの面の全部又は一部がX線を透過する隔壁であることを特徴とする請求項1の微小部X線計測装置。
  3. 前記請求項1又は2に記載した微小部X線計測装置において、前記X線発生装置においてX線を発生する金属は、原子番号24のクロミウム(Cr)、原子番号42のモリブデン(Mo)から47の銀(Ag)まで、又は、74のタングステン(W)から79の金(Au)までの各元素の単体、又は、複数の元素を含む合金又は積層膜であることを特徴とする微小部X線計測装置。
  4. 前記請求項1又は2に記載した微小部X線計測装置において、前記X線検出器を、別個のチャンバに1個又は複数個のX線光子のエネルギー弁別機能をもつ半導体X線検出素子により構成し、当該X線検出器を1個又は複数個用いたことを特徴とする微小部X線計測装置。
  5. 前記請求項4に記載した微小部X線計測装置において、前記光学顕微鏡は、当該光学顕微鏡の中心軸に、前記X線検出素子を挿入可能な孔を備えており、かつ、当該光学顕微鏡の光軸を照射X線ビームの中心軸と同軸にしたことを特徴とする微小部X線計測装置。
  6. 前記請求項5に記載した微小部X線計測装置において、前記光学顕微鏡にカセグレン型の反射光学顕微鏡を用い、前記試料に対向する副鏡面裏面の照射X線ビームと前記光学顕微鏡の光軸の同軸中心軸の周囲に、単数又は複数のX線検出素子を備えたことを特徴とする微小部X線計測装置。
  7. 前記請求項5に記載した微小部X線計測装置において、更に、前記試料から発散・放出される蛍光X線の発散角を受光光学素子により抑制する手段を備えたことを特徴とする微小部X線計測装置。
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