以下、図面に沿って、本発明に係る実施形態のシート給送装置を備えた画像形成装置について説明する。なお、本発明に係るシート給送装置は、シートを取り扱うシート取り扱い装置に組み込まれて、シートを処理するシート処理部にシートを供給するように構成されている。シート取り扱い装置には、シートに画像を形成する画像形成装置、シート束を綴じる綴じ装置、シートやシート束に孔を開ける穿孔装置、シート束を折り曲げる折り装置等があるが、以下の実施形態では画像形成装置に適用した例について説明する。
画像形成装置には、複写機、レーザビームプリンタ(LBP)、ファクシミリ及びこれらの複合機等の電子写真方式、或いは静電記録方式のものがある。本発明に係るシート給送装置を備えた画像形成装置は、本実施形態ではLBPとして説明するが、LBPに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ等であってもよい。
まず、本実施形態におけるレーザビームプリンタ1について説明する。図2は、本発明に係る画像形成装置としてのLBP1の概略断面図である。このLBP1は、大きく、画像形成プロセス部、クリーニング部、シート給送装置、二次転写部、及び定着排紙部から構成されている。以下、各部について詳細に説明する。
[画像形成プロセス部]
図2に示すように、LBP1は、LBP本体100と、このLBP本体100に対して着脱自在なプロセスカートリッジ103a,103b,103c,103dを備えている。これらプロセスカートリッジ103a〜103dは同一構造であるが、異なる色、即ちイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(Bk)のトナーによる画像を形成する点で相違している。
プロセスカートリッジ103a〜103dは、現像ユニット104a,104b,104c,104dと、クリーナユニット105a,105b,105c,105dとから構成されている。このうち現像ユニット104a〜104dは、現像ローラ106a,106b,106c,106dと、現像材塗布ローラ107a,107b,107c,107dと、トナー容器とを備えている。
一方、クリーナユニット105a〜105dは、感光体ドラム101a,101b,101c,101dと、帯電ローラ102a,102b,102c,102dとを有している。更に、クリーナユニット105a〜105dは、ドラムクリーニングブレード108a,108b,108c,108dと、廃トナー容器とを有している。
プロセスカートリッジ103a〜103dの鉛直方向下方にはスキャナユニット109が配置されており、スキャナユニット109は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム101a〜101dに対して行う。感光体ドラム101a〜101dは、帯電ローラ102a〜102dによって所定の負極性の電位に帯電された後、スキャナユニット109によってそれぞれ静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像ユニット104a〜104dによって反転現像されて負極性のトナーが付着され、それぞれにY,M,C,Bkのトナー像が形成される。
中間転写ベルトユニット110は、中間転写ベルト110eが駆動ローラ110fとテンションローラ110gとに張架されており、テンションローラ110gが矢印T方向に張力をかけている。中間転写ベルト110eの内側には、感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに対向する位置に一次転写ローラ110a,110b,110c,110dが配設されて、不図示のバイアス印加部により転写バイアスを印加する構成となっている。感光体ドラム101a〜101dが図2の時計回り方向に回転し、中間転写ベルト110eが反時計回りに回転し、更に、一次転写ローラ110a〜110dに正極性のバイアスが印加される。これにより、各感光体ドラム101a〜101d上に形成されたトナー像は、感光体ドラム101a上のトナー像から順次中間転写ベルト110e上に一次転写され、4色のトナー像が重なった状態で二次転写部113まで搬送される。なお、感光体ドラム101a〜101d及び中間転写ベルトユニット110等により、シート給送装置120(500)から送り出されたシートSに画像を形成する画像形成部が構成されている。
[クリーニング部]
トナー像転写後に感光体ドラム101a〜101dの各表面に残ったトナーは、対応するドラムクリーニングブレード108a,108b,108c,108dによって除去され、廃トナー容器に回収される。また、シートSへの二次転写後に中間転写ベルト110e上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置111によって除去される。除去されたトナーは、不図示の廃トナー搬送路を通過し、装置奥面部に配置された不図示の廃トナー回収容器へと回収される。
[シート給送装置]
シート給送装置120は、LBP本体100に装着された状態で、カセット中板201上(シート積載部上)に積載されるシートを順次送り出す給送ローラ121と、LBP本体100に対して図2の手前方向から着脱可能な給紙カセット200とを備える。シート給送装置120より1枚ずつ分離されたシートSは、レジストローラ対114に搬送される。給紙カセット200は、シートSを積載して昇降可能なシート積載部としてのカセット中板201を有してLBP本体(装置本体)100に着脱自在に構成されている。
[二次転写部と定着排紙部]
シートSは、レジストローラ対114により二次転写部113に搬送される。二次転写部113では、二次転写ローラ113aに正極性のバイアスを印加することで、搬送されたシートSに、中間転写ベルト110e上の4色のトナー像を二次転写する。トナー像転写後のシートSは、定着部115に搬送され、定着ローラ115aと加圧ローラ115bとによって加熱、加圧され、その表面にトナー像を定着される。トナー像を定着されたシートSは、排紙ローラ対117に向けて搬送され、そのまま排紙トレイ118上に排出される。
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る第1の実施形態について、図1〜図7及び図10を参照して説明する。ここでは、レーザビームプリンタ1に備えたシート給送装置120について、詳細に説明する。
なお、図1は、移動部材としてのラック204と、センサとしてのフォトインタラプタ210a,210bとの位置関係を示す図である。図3は、図2におけるシート給送装置120の拡大図である。図4は、図3におけるシート給送装置120を背面方向から見た状態で示す斜視図であり、図4には図3、図5の図示方向(矢印X,Y)を示している。図5は、図3におけるシート給送装置120の背面図である。図6は、加圧駆動部としての加圧駆動ユニット300の拡大斜視図である。図7は、フォトインタラプタ210a,210bの信号の組み合わせを図示した表である。図10は、加圧駆動モータ305の制御に係る制御ブロック図である。
図2及び図3に示すように、シート給送装置120は主に、LBP本体100に取り付けられた給送ローラ121と、LBP本体100に対して着脱可能な給紙カセット200とから構成されている。給紙カセット200の後面壁200a(図4参照)には検知用突起部220が配設されており、LBP本体100側における検知用突起部220の移動軌跡上にはフォトインタラプタ221が固定されている。給紙カセット200がLBP本体100に装着されると、給紙カセット側の検知用突起部220が、LBP本体100に取り付けられたフォトインタラプタ221によって検知される。
検知用突起部220とフォトインタラプタ221とにより、LBP本体100における給紙カセット200の有無を検知する有無検知部が構成されている。即ち、検知用突起部220がフォトインタラプタ221に検知されることにより、本体制御部801(図10参照)が、LBP本体100に給紙カセット200が装着されたと判断する。
図4に示すように、給紙カセット200には、シート束の後端を規制する後端規制板251が配設されている。シート束の後端とはつまり、シート供給方向(図4の左方向)の上流側端部である。後端規制板251にはレバー252が配設されており、ユーザがレバー252を操作することにより、後端規制板251がシート供給方向の上流側、下流側にスライド移動するように構成される。
給紙カセット200には、シート束の幅方向を規制するサイド規制板261,263が設けられている。サイド規制板261にはレバー262が配設されている。サイド規制板261,263は、ユーザがレバー262を操作することにより、シート給送方向と直交する方向(幅方向)に連動してスライド移動するように構成されている。給紙カセット200には、シートが積載されるカセット中板201が回動支点207を支点として回動自在となるように配設されている。図3に示すように、カセット中板201の下側には、カセット中板201を押し上げるリフト部としての加圧レバー202が配設されている。加圧レバー202の先端は、装置中央部でカセット中板201に接触している。
加圧レバー202は、図3における装置奥側、即ち図5における手前側で、加圧アーム203に連結されている。加圧アーム203のシート搬送方向の後方(図5の右方向)には、移動部材であるラック204が後面壁200aに対して図5左右方向にスライド可能に支持されている。加圧アーム203の突起部203aと、ラック204のシート搬送方向の前方に設けられた突起部204aとには、弾性部材である中板バネ205の一端と他端とがそれぞれに掛けられている。この中板バネ205は引っ張りコイルバネであり、加圧アーム203及び加圧レバー202を介して、カセット中板201に積載されたシートSを給送ローラ121に押し付ける力を付与している。加圧アーム203とラック204とは、中板バネ205によって連結されることにより、加圧レバー202がカセット中板201を押し上げる際に、各部の作動量の誤差を吸収する。
ラック204は下方に向いた歯部204bを有しており、この歯部204bは、給紙カセット200の後面壁200aに回転自在に支持されたピニオンからなるカセットギヤ206に噛み合っている。このカセットギヤ206は、加圧駆動ユニット300(図6)の駆動力をラック204に伝達する。加圧駆動ユニット300は、カセット中板201に連係するラック(移動部材)204を介してカセット中板201を上昇させてカセット中板201上(シート積載部上)のシートSを給送ローラ121に圧接させる加圧駆動部を構成している。
加圧駆動ユニット300は、図6に示すように、ギヤ301,302,303,304と、加圧駆動モータ305とを備えている。加圧駆動ユニット300は、LBP本体100に取り付けられており、不図示の駆動前フレームと駆動後ろフレームとによって保持され、これら2つのフレームの間にギヤ等の駆動機構を配置して構成されている。
駆動伝達ギヤ301は、カセットギヤ206に噛み合っており、加圧駆動ユニット300の動力をカセットギヤ206に伝達することで、ラック204をスライド移動させる。加圧駆動モータ305の回転軸には、ウォームギヤ302が取り付けられている。順次配列されたウォームギヤ302、減速ギヤ303、減速ギヤ304及び駆動伝達ギヤ301は、互いに隣同士で噛み合って歯車列を形成している。減速ギヤ303、減速ギヤ304及び駆動伝達ギヤ301は、それぞれ不図示の軸に回転自在に取り付けられている。
ウォームギヤ302を回転軸に固着された加圧駆動モータ305は、駆動前フレーム及び駆動後ろフレームにおける対応する部位に固定されている。ラック204は、予め設定された所定距離だけ離して突出形成された被検知部としての2つの(複数の)検知用突起部204c,204dを備えている。LBP本体100における検知用突起部204c,204dの移動軌跡に対応する位置には、2つの(複数の)センサとしてのフォトインタラプタ210a,210bが、予め設定された所定距離だけ離して位置決め固定されている。なお、上記検知用突起部204c,204dと上記フォトインタラプタ210a,210bとにより、検知部が構成されている。この検知部は、ラック204と共に移動する検知用突起部204c,204dをフォトインタラプタ210a,210bで検知することに基づき(つまり、応答信号の組み合わせに基づき)、ラック204の移動位置を多段階に検知する。
次に、図10を参照して、LBP本体100の加圧駆動モータ制御に係る制御系について説明する。
図10に示すように、制御系は、LBP本体100に備えられた本体記憶部800及び本体制御部801を有している。不図示の操作部でユーザにより入力されたシートサイズ及び坪量等のデータは、本体記憶部800に伝えられ、フォトインタラプタ221及びフォトインタラプタ210a,210bからの検知信号は、本体制御部801にそれぞれ伝えられる。
本体制御部801は、加圧駆動モータ305に駆動信号を送信すると共に、加圧駆動モータ305の駆動状態(回転方向等)をフィードバックの形で受ける。本体制御部801は、検知用突起部204c,204dとフォトインタラプタ210a,210bとからなる検知部の検知信号に基づいて、加圧駆動ユニット(加圧駆動部)300の作動を制御する制御部を構成している。この本体制御部801は、後述するように、フォトインタラプタ210a,210bからの検知信号の組み合わせに応じて、シート種別に対応した給紙圧を付与可能なラック204の移動位置を判定する。なお、給紙圧とは、カセット中板201上に積載されているシートSと給送ローラ121との圧接圧であり、カセット中板201を給送ローラ121に向けて所定の加圧力で付勢することにより生じる。
以下、ラック204の作動位置とフォトインタラプタ210a,210bの応答との関係について、図1及び図7を用いて説明する。
図1(a)は、ホームポジションにおけるラック204の位置であり、図7における応答Aに相当する。同様に図1(b)は、ホームポジションと後述する第1の加圧位置との間におけるラック204の位置の一例であり、図7における応答Bに相当する。図1(c)は、第1の加圧位置におけるラック204の位置であり、図7における応答Cに相当する。図1(d)は、第2の加圧位置におけるラック204の位置であり、図7における応答Dに相当する。図1(e)は、給紙カセット200をLBP本体100に挿入(装着)した際のラック204の位置であり、図1(a)と同じ応答Aに相当する。即ち、本実施形態において、図7における応答Aは2種類のラック位置を持つことになる。なお、ホームポジションとは、ラック204が加圧位置へ移動する前や加圧位置から戻る際の位置であり、LBP本体100が給紙動作を行わないときのラック204の停止位置である。ラック204がホームポジションにあるとき、給送ローラ121とシートSとを離間させた状態であっても、給送ローラ121とシートSとを当接させた状態であってもよい。給送ローラ121とシートSとを当接させた状態の場合には、給紙圧が発生しないように、加圧位置での圧よりも軽微な圧で給送ローラ121とシートSとが圧接するように設定されている。ここで、軽微な圧とは、給送ローラ121が回転してもシートを給送しない程度の圧である。
給紙カセット200がLBP本体100に挿入された際、検知用突起部204dはフォトインタラプタ210aによって検知される。この際、ユーザによって入力されたシートサイズ及び坪量等のデータから、本体記憶部800に記録されたデータテーブルから、必要な給紙圧を付与するための加圧力が読み出される。
以下に、必要な加圧力が小さい場合と必要な加圧力が大きい場合、それぞれについて説明する。
[必要な加圧力が低い場合]
必要な加圧力が小さい場合として、例えばシートの密度(坪量)が小さい又はシートのサイズが小さい場合が挙げられる。LBP本体100が印刷待機状態にあるとき、ラック204は、図1(a)のホームポジション、又は図1(e)のカセット装着時の位置にある。この際、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号は、図7の応答Aの組み合わせである。
そして、プリントジョブがLBP本体100に入力されると、加圧駆動モータ305(図6)が駆動を開始する。加圧駆動モータ305が駆動すると、その駆動力は、ウォームギヤ302、減速ギヤ303、減速ギヤ304を介して駆動伝達ギヤ301に伝達される。駆動伝達ギヤ301は、カセットギヤ206に噛み合っているため、駆動伝達ギヤ301の回転運動は、カセットギヤ206を介してラック204の直線運動に変換される。従って、加圧駆動モータ305が始動すると、ラック204は、図1及び図5に示す矢印P1方向へ移動する。このラック204を矢印P1方向へ移動させる加圧駆動モータ305の回転方向を正転とする。
加圧駆動モータ305が正転すると、検知用突起部204dは、フォトインタラプタ210aによって検知されなくなる(図1(b)、図7の応答B)。その後、更に加圧駆動モータ305が回転し、ラック204が矢印P1方向へ移動すると、検知用突起部204dはフォトインタラプタ210bによって検知される。このとき、フォトインタラプタ210aは検知しない(図1(c)、図7の応答C)。フォトインタラプタ210a,210bの各検知信号は、本体制御部801に伝達される。すると、本体制御部801は、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号、即ち図7における応答Cに基づいて、加圧駆動モータ305の回転を停止させる。
上述のように加圧駆動モータ305が正転して、ラック204が矢印P1方向に移動することにより、加圧アーム203は、中板バネ205に引っ張られて図5の時計回り方向(矢印H方向)に回動させられる。加圧アーム203が矢印H方向に回動することで、加圧アーム203の一端に連結されている加圧レバー202によって、カセット中板201が図3に示すように押し上げられる。これにより、カセット中板201上に積載されているシートSが給送ローラ121に圧接されて、シートSと給送ローラ121との間に所定の給紙圧が発生し、反力が発生する。
この反力は、加圧駆動ユニット300に逆転方向の回転力として伝わるが、ウォームギヤ302の進み角と摩擦角の関係から加圧駆動ユニット300は逆転しないように構成されている。即ち、ウォームホイールとしての減速ギヤ303とウォームギヤ302との噛み合いによって、加圧駆動モータ305の逆転が防止される。従って、加圧アーム203が加圧レバー202を介してカセット中板201を加圧することで、シートSを給送ローラ121に加圧する給紙圧が、所定の給紙圧に保持される。この状態は、プリントジョブが完了するまで保持される。この状態におけるラック204の位置を第1の加圧位置とする(図1(c)、図7の応答C)。
プリントジョブが終了すると、加圧駆動モータ305は、ラック204を矢印P2方向に移動させる方向に回転を始める。このラック204を矢印P2方向に移動させる加圧駆動モータ305の回転方向を逆転とする。加圧駆動モータ305が逆転すると、ラック204は矢印P2方向(図1、図5)へ移動を始め、検知用突起部204dが、フォトインタラプタ210bによって検知されなくなる(図1(b)、図7の応答B)。
その後、更に加圧駆動モータ305が回転し、ラック204が矢印P2方向へ移動すると、検知用突起部204dは、フォトインタラプタ210aによって検知される。このとき、フォトインタラプタ210bは検知しない(図1(a)、図7の応答A)。フォトインタラプタ210a,210bの検知信号が本体制御部801に伝達されると、本体制御部801は、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号、即ち図7における応答Aに基づいて、加圧駆動モータ305の回転を停止させる。
ラック204が矢印P2方向に移動するとき、中板バネ205は、シートSが給送ローラ121に圧接している間は作用長が短くなっていく。そして、シートSと給送ローラ121とが離間すると、ラック204の矢印P2方向への移動に連動して、中板バネ205によってラック204に連結された加圧アーム203が、図5における反時計回り(矢印I方向)に回動する。加圧アーム203が矢印I方向に回動することで、加圧アーム203の一端に連結された加圧レバー202で支えているカセット中板201が下降される。これにより、カセット中板201上に積載されているシートSは、給送ローラ121から離間する。
加圧駆動モータ305は、検知用突起部204dがフォトインタラプタ210aに検知された瞬間に停止される。このため、加圧駆動モータ305が逆転して停止したときのラック204の位置、即ち給送ローラ121とシートSとが離間して停止した位置(図1(a))は、給紙カセット200挿入時の位置(図1(e))よりも図1において右側にある。よって、加圧駆動モータ305を逆転させたときにラック204が戻りすぎてしまうことを防止することができる。このプリントジョブ終了後に加圧駆動モータ305が逆転し、ラック204が停止した位置をホームポジション(図1(a))とし、これが次のプリントジョブを待っている状態である。
[必要な加圧力が大きい場合]
次に、必要な加圧力が大きい場合、例えばシートの密度が大きい又はシートサイズが大きいときの作動について説明する。即ち、LBP本体100が印刷待機状態にあるとき、ラック204は、加圧力が低い場合と同様に、図1(a)のホームポジション、又は図1(e)のカセット装着時の位置にある。このとき、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号は、図7の応答Aの組み合わせである。プリントジョブがLBP本体100に入力されると、前述の加圧力が低い場合と同様に加圧駆動モータ305が正転を開始して、ラック204を矢印P1方向に移動させる。すると、検知用突起部204dがフォトインタラプタ210aによって検知されなくなる(図1(b)、図7の応答B)。
その後、検知用突起部204dがフォトインタラプタ210bに検知されて(図1(c)、図7の応答C)、第1の加圧位置に達するが、加圧駆動モータ305は、本体制御部801により回転を継続させられる。そして、検知用突起部204dがフォトインタラプタ210bに、検知用突起部204cがフォトインタラプタ210aにそれぞれ検知される位置に達する(図1(d)、図7の応答D)。
フォトインタラプタ210a,210bの検知信号、即ち図7における応答Dに基づき、本体制御部801によって加圧駆動モータ305の回転が停止される。ここで、図1(b)と図1(c)とを比べると判るように、図1(c)に示すラック204は、図1(b)に示すラック204よりも右方向(矢印P1方向)に移動しており、その移動量の差分だけ中板バネ205を余分に引っ張っていることになる。
このため、加圧アーム203は、図1(b)よりも図1(c)の場合の方が中板バネ205によって強い力で引っ張られ、加圧レバー202を介してカセット中板201を強く押し上げていることになり、加圧力を大きくすることができる。この状態は、プリントジョブ終了まで保持される。このときのラック204の位置を、第2の加圧位置とする。プリントジョブが終了すると、加圧力が低い場合と同様に、加圧駆動モータ305は逆転を始める。その後、ホームポジション(図1(a)、図7の応答A)までラック204が矢印P2方向へ移動した後、加圧駆動モータ305は停止される。
次に、LBP本体100が稼動中に電源が遮断された場合について説明する。本実施系において、フォトインタラプタ210a、210bの検知パターンは図7に記載の4通りである。以下にこの4通りのステータスにおいて電源が遮断され、復帰したときの制御について説明する。
即ち、LBP本体100に電源が再供給されたときに図7の応答Aを本体制御部801が検知した際、ラック204の位置は、ホームポジション(図1(a))又は給紙カセット200がLBP本体100に挿入されたときの状態(図1(e))となっている。この場合、シートSに給紙圧は与えられていない。そのため、ラック204を移動させる必要はない。
図7における応答Bを検知したとき、ラック204は、ホームポジションと第1の加圧位置との間(図1(b)、図7の応答B)に位置している。LBP本体100の電源が入った(再供給、再給電)際、本体制御部801は、その状態を判別すると加圧駆動モータ305を逆転させ、ラック204を矢印P2方向へ移動させる。その後、ホームポジションまで、即ち検知用突起部204dがフォトインタラプタ210aにより検知される位置に達すると、加圧駆動モータ305は停止される。
図7における応答C又は応答Dを検知したとき、本体制御部801は、プリントジョブ終了時の動作と同様にして加圧駆動モータ305を逆転させ、ラック204を矢印P2方向に移動させる。その後、ホームポジションまで、即ち検知用突起部204dがフォトインタラプタ210aに検知される位置に達すると、加圧駆動モータ305は停止される。
本実施形態においては、図1(b)の状態、即ち図7における応答Bの状態を加圧位置と定義しておらず、ホームポジションと第1の加圧位置との中間の状態と定義している。この理由について、図12及び図13を参照して、以下に説明する。
図12は、図1(b)、即ち図7における応答Bの状態を第1の加圧位置と定義し、図1(c),(d)をそれぞれ第2の加圧位置、第3の加圧位置と定義した際のラック204とフォトインタラプタ210a,210bとの位置関係を示す図である。この例におけるラック204は、図1に示したものと検知用突起部204c,204dの形状がやや異なり、図1の場合に比べて検知用突起部204cが幅広く形成され、検知用突起部204dは更に幅広く形成されている。
図12(a)は、ホームポジションにおけるラック204の位置であり、図13における応答Aに相当する。図12(b)は、第1の加圧位置におけるラック204の位置であり、図13における応答Bに相当する。図12(c)は、第2の加圧位置におけるラック204の位置であり、図13における応答Cに相当する。図12(d)は、第3の加圧位置におけるラック204の位置であり、図13における応答Dに相当する。
図12(e)は、加圧位置から加圧駆動モータ305を逆転させた際に、図13における応答Aが検知されたときのラック204の位置であり、即ち見かけ上ホームポジションとして検知される位置である。これについては、後で詳しく述べる。
図13は、フォトインタラプタ210a,210bによる検知信号の組み合わせを示した表である。図12におけるそれぞれのラック204の位置との対応は、上述の通りである。
プリントジョブが入力され、シートの種類、シートサイズに応じた加圧位置までラックを移動させる動作は、前述の通りである。ここでは、ラック204をホームポジションに戻す際の動作について説明する。
例えば加圧力が低い設定、即ち第1の加圧位置でプリントジョブを終了した状態を想定する。このとき、ラック204は図12(b)の位置にあり、フォトインタラプタ210a,210bの応答は図13における応答Bとなる。プリントジョブが終了すると、前述の通り加圧駆動モータ305は逆転を開始し、ホームポジション(図12(a)、図13の応答A)までラック204を戻そうとする。しかし、フォトインタラプタ210aが検知用突起部204dを検知しなくなった位置、即ち図12(e)の位置で、図13における応答Aを検知する。
図13における応答Aを検知した瞬間、本体制御部801は、加圧駆動モータ305を停止し、ホームポジションとして認識してしまう(見かけのホームポジション)。しかし、第1の加圧位置(図12(b))と見かけのホームポジション(図12(e))との差はほとんどなく、給紙圧はほとんど抜けていない状態である。そのため、シートの癖付きを防止するという観点からシートSを給送ローラ121から離間させるには、更に加圧駆動モータ305を逆転させる必要がある。
また、LBP本体100の電源が入った際に図13における応答Bを検知したときには、第1の加圧位置(図12(b)、図13の応答B)まで加圧駆動モータ305を正転させ、そこから逆転させなければならないため、制御が複雑になる。
以上の理由から第1の実施形態では、シートSが給送ローラ121から離間し次のプリントジョブを待つ位置をホームポジションとし、確実にホームポジションを検知することで装置の信頼性を高めるために、図7の応答Bは加圧位置として定義していない。しかし、前述のような制御の複雑さが許容できる場合、又はシートSと給送ローラ121とを離間させる必要がない場合等には、上述した図13のように応答Bを加圧位置として定義することも可能である。
このように、本第1の実施形態におけるシート給送装置120は、シートの種類及びシートサイズに応じて給紙圧を適切に調整できるように構成されており、同時にホームポジションの設定も可能となっている。
なお、本実施形態では、検知用突起部204c,204d及びフォトインタラプタ210a,210bをそれぞれ2つずつ設けた例として説明したが、これに限定されるものではない。つまり、検知用突起部及びフォトインタラプタそれぞれの数を増やすことで、更に細かな加圧力の設定を可能とすることができる。また、フォトインタラプタの検知パターンも任意に設定することが可能である。
以上の本実施形態によると、フォトインタラプタの検知パターンによってラック204の位置を検知することで、フォトインタラプタの数よりも多くの位置を検知することができる。つまり、フォトインタラプタ210a,210b夫々の検知信号に応じてラック204の位置を段階的に検知することで、シート種別に応じた給紙圧の設定と、ラック204の位置の基準となるホームポジションの設定とを可能とし、装置の信頼性を向上できる。また、フォトインタラプタ210a,210b夫々の検知信号を組み合わせることで、実際のセンサの個数よりも多くのラック204の位置を検知することができ、従って、センサ数を増やすことなく、低コスト化を図ることができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態のシート給送装置500(図2、図3参照)について、図1、図7〜図9及び図11を参照して説明する。図8は、本実施形態の給紙カセット600(図2、図3参照)の有無確定までの処理を示すフローチャート、図9は、シート給送装置500の図1における背面方向から見た斜視図である。図11は、本実施形態における加圧駆動モータ305の制御系を示すブロック図である。なお、本実施形態において、先の第1の実施形態におけるシート給送装置120と同一部分については、同一符号を付してその部分の説明は省略する。
本第2の実施形態では、第1の実施形態では独立して存在していた給紙カセット200の有無を検知するセンサ(フォトインタラプタ221)を、ラック204の作動位置を検知するフォトインタラプタ210a,210bで兼用する構成としている。即ち、図9に示すように、本実施形態におけるシート給送装置500には、独立した給紙カセット600の有無を検知するセンサは存在しない。つまり、図11に示すように、本実施形態の制御系では、図10では存在していたフォトインタラプタ221が削除されている。そのため、本実施形態では、フォトインタラプタ210a,210bの検知パターンによって給紙カセット600の有無を検知する。
給紙カセット600がLBP本体100に挿入されている場合、ラック204がホームポジションと第1の加圧位置との間にある場合(図1(b))以外は、フォトインタラプタ210a,210bの何れかで検知用突起部204c又は204dが検知される。即ち、図7における応答A,C,Dの場合に、図11に示す本体制御部801は、給紙カセット600がLBP本体100に装着されていると判断する。
次に、フォトインタラプタ210a,210bいずれにも検知信号が無い状態、つまり図7における応答Bのときの給紙カセット600の有無を確定する処理について、図8を参照して説明する。
即ち、本実施形態において、LBP本体100に電源が供給されている間は、本体記憶部800に給紙カセット600の有無情報が記憶されている。そのため、具体的には電源が入った(再供給)ときにフォトインタラプタ210a,210bの何れからも検知信号が発信されない場合、もしくはラック204の移動中に給紙カセット600がLBP本体100から取り外された場合が対象となる。
即ち、ステップS1でLBP本体100に電源が入った場合、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号が無く(S1、S2:No)、加圧駆動モータ305が回転していなければ(S3:No)、加圧駆動モータ305を逆転させる(S8)。つまり、ラック204を矢印P2方向(図1)に移動させる方向に回転させる。
ここで、第1の加圧位置からホームポジションまで到達する時間をt1とするとき、t2>t1を満たす時間t2の経過後(S9)に、本体制御部801は、フォトインタラプタ210aの検知信号の有無を判断する(S10)。その結果、フォトインタラプタ210aの検知信号が無い場合(S10:No)、本体制御部801は、給紙カセット600(図9)がLBP本体100に挿入されていないと判断する(S11)。
一方、加圧駆動モータ305が回転を開始してから時間t2以内にフォトインタラプタ210aに検知信号が得られた場合(S10:Yes)、本体制御部801は、検知用突起部204dがフォトインタラプタ210aによって検知されたと判断する。そして、本体制御部801は、給紙カセット600がLBP本体100に挿入されていると判断し(S7)、その瞬間のラック204の位置をホームポジション(図1(a))と判断する。
次に、ラック204の移動中に給紙カセット600がLBP本体100から引き出された場合について説明する。
即ちラック204がホームポジションと第1の加圧位置との間にあり(図1(b)、図7の応答B)、フォトインタラプタ210a,210bの検知信号が無く(S1、S2:No)、加圧駆動モータ305が回転している際(S3:Yes)、以下の判断を行う。つまり、このとき加圧駆動モータ305は正転もしくは逆転しているため、本体制御部801は、まず加圧駆動モータ305が正転しているとみなし(S4:Yes)、ステップS5に進む。
そして、ホームポジションから第1の加圧位置に達するまでの時間をt3とし、加圧駆動モータ305が正転を開始してから、t4>t3を満たす時間t4までの間、待機する(S5)。更に、時間t4までの間にフォトインタラプタ210bに検知信号がない場合(S6:No)、本体制御部801は、給紙カセット600がLBP本体100に装着されていない状態と判断する(S11)。
また、ステップS4で加圧駆動モータ305は逆転しているとみなした場合(S4:No)、本体制御部801は、以下のように判断する。即ち、上記と同様、加圧駆動モータ305が逆転を開始してから時間t2経過後(S9)にフォトインタラプタ210aに検知信号が無いと判断した場合(S10:No)、給紙カセット600がLBP本体100に装着されていないと判断する(S11)。
以上のように本実施形態では、フォトインタラプタ210a,210bの検知パターンと加圧駆動モータ305の制御とにより、給紙圧の調整とホームポジションの設定、及び給紙カセット600の装着の有無を検知することができる。これにより、カセット有無検知機構を独立して構成することが不要となり、低コスト化を実現することができる。
即ち、本実施形態において、本体制御部801は、LBP本体100への電源の切断後に再給電された場合、加圧駆動ユニット300を所定時間作動(t2、t4)させた際に、検知信号の発生の仕方で次のように判断(判定)する。つまり、本体制御部801は、フォトインタラプタ210a,210bの何れからも検知信号が発信されないときには、給紙カセット600が装着されていないと判定する。また、本体制御部801は、フォトインタラプタ210a,210bのうちの何れかが検知信号を発信したときには、給紙カセット600は装着されていると判定する。
このように、フォトインタラプタ210a,210bの何れも信号を発しないときには、加圧駆動ユニット300を一旦作動させることで、給紙圧の付与と同時に給紙カセット600の有無を検知することができる。即ち、給紙カセット600の有無を検知する仕様のシート給送装置500を備えたレーザビームプリンタ1において、給紙カセット600の有無を検知する独立した機構を省略することができ、更なる低コスト化を図ることができる。